特許第5905538号(P5905538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905538停電発生時における電源系統切替え機能を有する電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905538
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】停電発生時における電源系統切替え機能を有する電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20160407BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20160407BHJP
   H02H 9/02 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   H02J9/06
   H02J3/00 150
   H02H9/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-158055(P2014-158055)
(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-36216(P2016-36216A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2015年7月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友和
【審査官】 石川 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−512956(JP,A)
【文献】 特開2006−094599(JP,A)
【文献】 特開平04−322138(JP,A)
【文献】 特開平10−164772(JP,A)
【文献】 特開2002−064936(JP,A)
【文献】 実開平04−072844(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0215646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 3/00
H02H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源系統に接続され、複数の電源系統のそれぞれの停電状態を検出する停電検出回路と、
複数の電源系統に接続された複数の接点と1つの出力端子を備え、前記停電検出回路が複数の電源系統のうちの少なくとも1つの電源系統の停電を検出した際に、前記停電検出回路の停電検出結果に応じて、停電が検出された電源系統を除いた他の電源系統のうちの1つに接続された接点と前記出力端子とを接続するように切り替える第1切り替え部と、
複数の電源系統からの突入電流を抑制する充電回路を具備し、前記第1切り替え部の出力端子に接続された1つの入力端子を備え、前記第1切り替え部における電源系統の切り替えに同期して、前記入力端子を前記充電回路の入力側の接点に一定の期間接続するように切り替える第2切り替え部と、
前記第2切り替え部の出力端子に接続された電力変換回路と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第2切り替え部は、前記充電回路と並列に接続されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2切り替え部から前記電力変換回路に流れる電流を検出する電流検出回路をさらに備え、
前記停電検出回路は、前記電流検出回路が検出した電流に基づいて前記第2切り替え部を制御することにより、前記充電回路を接続する前記一定の期間を決定する、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に停電発生時に電源系統を切替えて負荷への電力供給を継続させる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換回路を使用した電源装置で、電源系統と平滑コンデンサに電圧差が生じた場合に発生する平滑コンンサへの突入電流を抑制する方法として、電力変換回路に突入電流が流れないようにバイパスする方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図1に従来の電力変換装置の構成図を示す。電源系統60は交流電源であり、リアクトルL1及びL2を介して電力変換装置40に交流電力が供給される。電力変換回路40の出力である直流電力は平滑コンデンサ70に与えられ、平滑化された電力が負荷50に与えられる。
【0004】
上記の従来技術では、電源系統60と平滑コンデンサ70に電圧差が生じた場合、先ず電力変換回路40に接続されているスイッチSW1をオフする。そうすると突入電流はダイオードD1〜D4を介して流れるため、突入電流は電力変換回路40に流れ込むことはない。しかしながら、突入電流に耐えうるダイオードD1〜D4を準備する必要があり、また、電源系統60が3相交流の場合は、合計6個のダイオードが必要になりコスト及び小型化の点で問題があった。
【0005】
電力変換回路を使用した電源装置で、停電発生時でも負荷への電力供給を継続させるため、メインの電源系統以外に複数の非常用の電源系統を有する装置が知られている。図2に従来の電源装置の構成を示す。電源系統として、第1電源系統60−1,第2電源系統60−2,・・・,第n電源系統60−nの合計n個の電源系統が並列に接続されて構成されている。n個の電源系統は、それぞれ停電検出回路10に接続され、停電検出回路10はn個の電源系統のそれぞれの停電の有無を検出する。また、第1電源系統60−1,第2電源系統60−2,・・・,第n電源系統60−nのそれぞれには第1充電回路30−1,第2充電回路30−2,・・・,第n充電回路30−nが接続されている。さらに、第1充電回路30−1,第2充電回路30−2,・・・,第n充電回路30−nの出力側はそれぞれ電源系統の切替スイッチ20の接点x,y,・・・,zに接続されている。
【0006】
停電検出回路10は、n個の電源系統の停電の有無を検出し、検出結果に基づいて電源系統の切り替えスイッチ20を切り替える。例えば、最初に電源系統の切り替えスイッチ20が入力側の接点xと出力側の端子OUT20を接続して、第1電源系統60−1からの電力を電力変換回路40に供給していたとする。このとき、停電検出回路10が第1電源系統60−1に停電が発生したことを検出すると、停電検出回路10は電源系統の切り替えスイッチ20を制御して、第2電源系統60−2から電力を供給するように、入力側の接点yと出力側の端子OUT20を接続するように切り替える。同様に、停電検出回路10が第2電源系統60−2に停電が発生したことを検出すると、停電検出回路10は電源系統の切り替えスイッチ20を制御して、第n電源系統60−n(n≧3)から電力を供給するように、入力側の接点zと出力側の端子OUT20を接続するように切り替える。
【0007】
図2に示した従来の電源装置では、停電が生じた電源系統から、停電が生じていない健全な電源系統へ切り替える際、電源系統の切り替えスイッチ20における切り替え動作に遅れがあるため、電力変換回路40内の平滑コンデンサ41が放電され、電源系統と平滑コンデンサ41との間に電位差が生じる場合がある。このとき、電位差が生じた状態で電源系統を切り替えると、平滑コンンサへ突入電流が流れ、電力変換回路40内のスイッチング素子等を破損させるという問題がある。
【0008】
ここで、電源系統の切り替えに伴って平滑コンデンサに流れる突入電流について図3のタイミングチャートを用いて説明する。図3は、停電の発生に伴う電源系統の切り替え時における平滑コンデンサの電圧と平滑コンデンサへの突入電流の時間的変化を示している。まず、時刻t10に至るまで、第1電源系統60−1から電力が供給され、電力変換回路40内の平滑コンデンサ41は電圧V0まで充電されていたとする。次に、時刻t10において停電が発生したとすると、平滑コンデンサ41に充電された電圧は徐々に放電され平滑コンデンサ41の電圧が時間と共に低下する。
【0009】
図2に示すように、第1電源系統60−1に停電が発生すると、停電検出回路10が停電を検出し、第2電源系統60−2が選択されるように電源系統の切り替えスイッチ20を制御する。しかしながら、停電の検出から電源系統の切り替えスイッチ20のスイッチングまでには所定の時間を要するため、第2電源系統60−2に切り替わる時点である時刻t11までには平滑コンデンサ41の電圧はV1まで低下する。時刻t11において電源系統が第1電源系統60−1から第2電源系統60−2に切り替わると、平滑コンデンサ41の電圧の低下分である電位差(=V0−V1)の大きさに応じて平滑コンデンサ41に充電が行われ、平滑コンデンサ41に突入電流が流れる。この時、平滑コンデンサ41への充電が時刻t12に完了するとすれば、第2電源系統60−2に切り替わる時刻t11から時刻t12までの時間が短いほど、平滑コンデンサ41に大きな突入電流が流れることになる。この突入電流の最大値をI0maxとする。
【0010】
図2に示すように、一般的には電源系統60−1,60−2,・・・,60−nに直列に充電回路30−1,30−2,・・・,30−nを設け、電源系統の切り替えの際の突入電流を抑制する方法が知られている。しかしながら、複数の電源系統のそれぞれに充電回路が必要になり、コスト及び小型化の点で問題があった。
【0011】
また、図4に示すように、電源系統が、停電した第1電源系統60−1から停電が発生していない健全な第2電源系統60−2へ切り替わり、第2充電回路30−2にて平滑コンデンサへの突入電流を抑制した後も、継続的に充電回路を介して電力が供給される為、充電回路を構成する限流抵抗やインダクタンス等の部品によって電源系統の電圧降下が生じ、電力変換効率が悪くなるという問題がある。さら、部品自体が発熱するため、素子の寿命や周囲の回路へ影響を及ぼすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−135758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、部品点数の増加や電源系統の電圧降下、電力変換装置の発熱の増加を回避しながら、停電発生時の電源系統の切り替えを安定的に行うことが可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、複数の電源系統に接続され、複数の電源系統のそれぞれの停電状態を検出する停電検出回路と、複数の電源系統に接続された複数の接点と1つの出力端子を備え、停電検出回路が複数の電源系統のうちの少なくとも1つの電源系統の停電を検出した際に、停電検出回路の停電検出結果に応じて、停電が検出された電源系統を除いた他の電源系統のうちの1つに接続された接点と出力端子とを接続するように切り替える第1切り替え部と、複数の電源系統からの突入電流を抑制する充電回路を具備し、第1切り替え部の出力端子に接続された1つの入力端子を備え、第1切り替え部における電源系統の切り替えに同期して、入力端子を充電回路の入力側の接点に一定の期間接続するように切り替える第2切り替え部と、第2切り替え部の出力端子に接続された電力変換回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置によれば、部品点数の増加や電源系統の電圧降下、電力変換装置の発熱の増加を回避しながら、停電発生時の電源系統の切り替えを安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の電力変換装置の構成図である。
図2】充電回路を備えた従来の電力変換装置の構成図である。
図3】従来の電力変換装置における平滑コンデンサの電圧及び突入電流のタイミングチャートである。
図4】充電回路を備えた従来の電力変換装置の構成図である。
図5】本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成図である。
図6】本発明の実施例1に係る電力変換装置における平滑コンデンサの電圧及び突入電流並びに充電回路切替信号のタイミングチャートである。
図7】本発明の実施例1に係る電力変換装置の動作手順を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の実施例2に係る電力変換装置の構成図である。
図9】本発明の実施例2に係る電力変換装置の動作手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る電力変換装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0018】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係る電力変換装置について図面を用いて説明する。図5は、本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成図である。本発明の実施例1に係る電力変換装置は、複数の電源系統60−1,60−2,・・・,60−nに接続され、複数の電源系統のそれぞれの停電状態を検出する停電検出回路1と、複数の電源系統に接続された複数の接点a,b,・・・,cと1つの出力端子OUT2を備え、停電検出回路1が複数の電源系統のうちの少なくとも1つの電源系統の停電を検出した際に、停電検出回路1の停電検出結果に応じて、停電が検出された電源系統を除いた他の電源系統のうちの1つに接続された接点と出力端子OUT2とを接続するように切り替える第1切り替え部2と、複数の電源系統からの突入電流を抑制する充電回路31を具備し、第1切り替え部2の出力端子OUT2に接続された1つの入力端子IN3を備え、第1切り替え部2における電源系統の切り替えに同期して、入力端子IN3を充電回路の入力側の接点「e」に一定の期間接続するように切り替える第2切り替え部3と、第2切り替え部3の出力端子に接続された電力変換回路4と、を有することを特徴とする。
【0019】
第1電源系統60−1で停電が生じ、停電検出回路1によって停電が検出された場合、第1切り替え部2の出力端子OUT2に接続される接点を接点「a」から接点「b」へと切り替える。これと同期して、第2切り替え部3の入力端子IN3に接続される接点を接点「d」から接点「e」へと切り替えて、充電回路31を有効にする。即ち、電源系統と電力変換回路4との間に充電回路31が接続された状態とする。第1切り替え部2の切り替えにて第1電源系統60−1から第2電源系統60−2へ切り替わる際に動作遅れ時間が生じると、平滑コンデンサ41の電荷が減少し、平滑コンデンサ41の両端電圧が低下する。これにより、第2電源系統60−2と平滑コンデンサ41の両端電圧に電位差が生じるが、充電回路31が有効になっている為、平滑コンデンサ41へ大きな突入電流が流れることはなく、平滑コンデンサ41を第2電源系統60−2の電位まで安全に充電することができる。ここで、充電回路31を抵抗(充電抵抗)を用いて構成することができる。
【0020】
一定の期間、第2切り替え部3にて充電回路31を有効にした後は、第2切り替え部3の入力端子IN3に接続される接点を接点「e」から接点「d」へと切り替えて充電回路31を無効にする。即ち、電源系統と電力変換回路4との間に充電回路を介在させることなく、直接接続されるようにする。これにより充電回路31による電圧降下や充電回路自体の発熱を防止することができる。
【0021】
さらに、第2電源系統60−2においても停電が生じた場合は、上記手順により第2電源系統60−2から第n電源系統60−n(m≧3)へ切り替える。これにより、1つの充電回路31を複数の電源系統に接続することができ、少ない部品で平滑コンデンサへの突入電流を抑制することができる。
【0022】
各電源系統の停電状態を監視している停電検出回路1は、電力変換装置101の外部にあってもよく、例えば汎用の停電検出器等の信号を電力変換装置に入力して第1切り替え部2、及び第2切り替え部3を制御してもよい。
【0023】
電源系統は単相交流電源や3相交流電源、または直流電源、電気二重層コンデンサを代表とするエネルギー蓄積要素でもよい。
【0024】
第2切り替え部3を、充電回路31と並列に接続することによって、充電回路の有効/無効を1回のスイッチングで行えるため、切り替えの回数を減らすことができ、スイッチングノイズを防ぐことが可能である。
【0025】
上記のように、本発明の実施例1に係る電力変換装置においては、一定の期間において充電回路を通して電源系統から電力変換回路に電力を供給するようにしている。次に、充電回路を接続する「一定の期間」について説明する。図6に本発明の実施例1に係る電力変換装置における平滑コンデンサの電圧及び平滑コンデンサへの突入電流並びに充電回路切替信号のタイミングチャートを示す。ここで、充電回路切替信号とは、停電検出回路1から第2切り替え部3に対して、充電回路31の接続を切り替えるために、入力端子IN3と接点「d」または「e」との接続を切り替えるために配線12に送出される信号である。
【0026】
まず、時刻t0に至るまで、第1電源系統60−1から電力が供給され、電力変換回路4内の平滑コンデンサ41は電圧V0まで充電されていたとする。次に、時刻t0において停電が発生したとすると、平滑コンデンサ41に充電された電圧は徐々に放電され平滑コンデンサ41の電圧が時間と共に低下する。
【0027】
図5に示すように、第1電源系統60−1に停電が発生すると、停電検出回路1が停電を検出し、第2電源系統60−2が選択されるように電源系統の切り替えスイッチ2を制御する。しかしながら、停電の検出から電源系統の切り替えスイッチ20のスイッチングまでには所定の時間を要するため、第2電源系統60−2に切り替わる時点である時刻t1までには平滑コンデンサ41の電圧はV1まで低下する。時刻t1において第2電源系統60−2に切り替わると、平滑コンデンサ41の電圧の低下分である電位差(=V0−V1)の大きさに応じて平滑コンデンサ41に充電が行われ、平滑コンデンサ41に突入電流が流れる。この時、平滑コンデンサ41への充電が時刻t2に完了するとすれば、第2電源系統60−2に切り替わる時刻t1から時刻t2までの期間に、平滑コンデンサ41に突入電流が流れる。この突入電流の最大値をImaxとする。
【0028】
本発明の実施例1に係る電力変換装置においては、一定の期間において充電回路31を介して電源系統から電力変換回路4に電流が流れるようにしている。即ち、第1電源系統60−1から第2電源系統60−2へ切り替わった時刻t1から、平滑コンデンサ41への充電が完了する時刻t2までの期間において、停電検出回路1から第2切り替え部3へ送信する充電回路切替信号をLowレベルからHighレベルとする。その結果、時刻t1からt2までの期間において、充電回路31にて電流を消費することができるため、過大な突入電流の抑制が可能となる。即ち、充電回路31を介して電力変換回路4内の平滑コンデンサ41に流れる電流Imaxは、充電回路を介さない場合に流れる電流I0max図3参照)に比べて小さくすることができる。ここで、「一定の期間」を時刻tからtまでの期間とすることができる。また、時刻tからtまでの期間は、電源系統切り替え時の遅れ時間と平滑コンデンサの容量から計算することができる。
【0029】
さらに、本発明の実施例1に係る電力変換装置においては、平滑コンデンサ41への充電が完了した時刻t2において充電回路31の接続を解除するように、充電回路切替信号をHighレベルからLowレベルへ切り替える。即ち、停電検出回路1から配線12を介して第2切り替え部3に対して送出された充電回路切替信号によって入力端子IN3と接点「e」との接続を入力端子IN3と接点「d」との接続へ切り替える。その結果、平滑コンデンサ41への充電が完了した後は、電源系統から電力変換回路4へ流れる電流は充電回路31を経由しないため、充電回路31によって生じる定常的な電圧降下や発熱の発生を回避することができる。
【0030】
次に、本発明の実施例1に係る電力変換装置の動作手順について、図7に示したフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101において、停電検出回路1が第1電源系統60−1において停電が発生しているか否かを判断する。停電が検出されなかった場合は、ステップS101に戻って停電の検出を継続して行う。
【0031】
一方、停電検出回路1が第1電源系統60−1において停電が発生したことを検出した場合は、ステップS102において、電源系統を第2電源系統60−2に切り替える。具体的には、図5に示すように、停電検出回路1から配線11を介して第1切り替え部2に信号を送信して、出力端子OUT2に接続される接点を接点「a」から接点「b」に切り替える。なお、第2電源系統60−2も停電する場合も想定されるが、その場合は第n電源系統60−n(n≧3)に切り替えればよい。
【0032】
次に、ステップS103において、第2電源系統60−2に充電回路31を接続するように、停電検出回路1が第2切り替え部3を制御する。具体的には、図5に示すように、停電検出回路1から配線12を介して第2切り替え部3に対して入力端子IN3と接続される接点を接点「d」から接点「e」に切り替える。
【0033】
次に、ステップS104において、停電検出回路1が、電源系統を第1電源系統60−1から第2電源系統60−2に切り替えてから、充電回路31を第2電源系統60−2と電力変換回路4との間に介在させる「一定の期間」が経過したか否かを判断する。ここで、「一定の期間」は停電検出回路1に設けた記憶部(図示せず)に予め記憶するようにしてもよい。なお、上述したように、充電回路を接続する「一定の期間」とは平滑コンデンサ41に定常状態に比べて大きな電流が流れる期間である。
【0034】
ステップS104において、停電検出回路1が一定の期間が経過していないと判断した場合には、ステップS104に戻って、一定の期間が経過したか否かの判断を継続して行う。
【0035】
一方、ステップS104において、停電検出回路1が一定の期間が経過したと判断した場合には、ステップS105において、停電検出回路1は、第2電源系統60−2と充電回路31との接続を解除する。具体的には、図5に示すように、停電検出回路1から配線12を介して第2切り替え部3に対して入力端子IN3と接続される接点を接点「e」から接点「d」に切り替える。
【0036】
以上のように、本発明の実施例1に係る電力変換装置は、従来のように電源系統毎に充電回路を設けるのではなく、1つの充電回路のみを設けている。さらに、停電した電源系統から、停電していない健全な電源系統へ切り替えることによって流れる平滑コンデンサへの突入電流を抑制する為に、一定の期間充電回路を有効にした後は充電回路を無効にする、即ち充電回路の接続を解除することで充電回路での電圧降下や充電回路自体の発熱を防止することができる。
【0037】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係る電力変換装置について説明する。図8に本発明の実施例2に係る電力変換装置の構成図を示す。本発明の実施例2に係る電力変換装置102が実施例1に係る電力変換装置101と異なっている点は、第2切り替え部3から電力変換回路4に流れる電流を検出する電流検出回路5をさらに備え、停電検出回路1は、電流検出回路5が検出した電流に基づいて第2切り替え部3を制御することにより、充電回路31を接続する一定の期間を決定する点である。実施例2に係る電力変換装置102のその他の構成は、実施例1に係る電力変換装置101の構成と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0038】
実施例1に係る電力変換装置101においては、平滑コンデンサ41に定常状態よりも大きな電流が流れる一定の期間において、電源系統と電力変換回路4との間に充電回路31を接続して大きな突入電流が平滑コンデンサ41に流れることを抑制し、この一定の期間は停電検出回路1が予め記憶していた。一方、本発明の実施例2に係る電力変換装置102においては、第2切り替え部3から電力変換回路4に流れる電流を検出するために、第2切り替え部3と電力変換回路4との間に電流検出回路5を設けている。電流検出回路5が検出した電流に関するデータは停電検出回路1に送信され、停電検出回路1は、電流検出回路5が検出した電流に基づいて第2切り替え部3を制御し、第2切り替え部3における入力端子IN3と接点「d」または接点「e」との接続を切り替えている。
【0039】
例えば、第1電源系統60−1において停電が検出された場合、停電検出回路1は第1切り替え部2に出力端子OUT2に接続される接点を接点「a」から接点「b」に切り替えることによって、電源系統を第1電源系統60−1から第2電源系統60−2に切り替える。これと同時に、停電検出回路1は第2切り替え部3に配線12を介して充電回路切替信号を送信して入力端子IN3と接続する接点を接点「d」から接点「e」に切り替える。この時点が、充電回路31が接続される一定の期間の開始時点である。
【0040】
電源系統が、停電が発生した第1電源系統60−1から停電が発生していない第2電源系統60−2に切り替えられると、電力変換回路4内の平滑コンデンサ41には平滑コンデンサ41を充電するために定常状態よりも大きな電流が流れるが、平滑コンデンサ41の充電が完了すると、電流の値は定常状態に戻る。電流検出回路5は、平滑コンデンサ41に流れる電流を監視しており、検出した電流に関するデータを停電検出回路1に送信する。停電検出回路1は、電流の大きさが定常状態よりも大きな状態から定常状態に戻ったことを検出すると、停電検出回路1は第2切り替え部3に配線12を介して充電回路切替信号を送信して入力端子IN3と接続する接点を接点「e」から接点「d」に切り替える。この時点が、充電回路31が接続される一定の期間の終了時点である。
【0041】
次に、本発明の実施例2に係る電力変換装置の動作手順について、図9に示したフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS201において、停電検出回路1が第1電源系統60−1において停電が発生しているか否かを判断する。停電が検出されなかった場合は、ステップS201に戻って停電の検出を継続して行う。
【0042】
一方、停電検出回路1が第1電源系統60−1において停電が発生したことを検出した場合は、ステップS202において、電源系統を第1電源系統60−1から第2電源系統60−2に切り替える。具体的には、図7に示すように、停電検出回路1から配線11を介して第1切り替え部2に信号を送信して、出力端子OUT2に接続される接点を接点「a」から接点「b」に切り替える。なお、第2電源系統60−2も停電する場合も想定されるが、その場合は第n電源系統60−n(n≧3)に切り替えればよい。
【0043】
次に、ステップS203において、停電検出回路1が第2電源系統60−2に充電回路31を接続するように、第2切り替え部3を制御する。具体的には、図7に示すように、停電検出回路1から配線12を介して第2切り替え部3に対して入力端子IN3と接続される接点を接点「d」から接点「e」に切り替える。
【0044】
次に、ステップS204において、停電検出回路1が、電流検出回路5が検出した電流の値に基づいて、電力変換回路4内の平滑コンデンサ41への電流が閾値以下となっているか否かを判断する。ここで、閾値は平滑コンデンサ41に流れる定常状態の電流の値とすることができる。
【0045】
ステップS204において、平滑コンデンサ41への電流が閾値以下となっていないと判断した場合には、ステップS204に戻って、平滑コンデンサ41への電流が閾値以下となっているか否かの判断を継続して行う。
【0046】
一方、ステップS204において、停電検出回路1が、平滑コンデンサ41への電流が閾値以下となっていると判断した場合には、ステップS205において、停電検出回路1は、第2電源系統60−2と充電回路31との接続を解除する。具体的には、図7に示すように、停電検出回路1から配線12を介して第2切り替え部3に対して入力端子IN3と接続される接点を接点「e」から接点「d」に切り替える。
【0047】
以上のように、本発明の実施例2に係る電力変換装置においては、平滑コンデンサ41に流れる電流を直接検出しているので、平滑コンデンサ41に定常状態よりも大きな電流が流れる期間において、確実に充電回路31を介在させることができるので平滑コンデンサ41に流れる電流を抑制することができる。これと同時に、平滑コンデンサ41に流れる電流が定常状態に戻った後は充電回路31を介在させないようにしているため、充電回路31における発熱等を回避することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 停電検出回路
2 第1切り替え部
3 第2切り替え部
4 電力変換回路
5 電流検出回路
31 充電回路
41 平滑コンデンサ
50 負荷
60−1 第1電源系統
60−2 第2電源系統
60−n 第n電源系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9