特許第5905549号(P5905549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905549バラ積みされた物品を取出す物品取出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5905549
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】バラ積みされた物品を取出す物品取出装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
   B25J13/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-188050(P2014-188050)
(22)【出願日】2014年9月16日
【審査請求日】2015年8月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健文
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−127722(JP,A)
【文献】 特開2009−220248(JP,A)
【文献】 特開2011−230257(JP,A)
【文献】 特開2013−043256(JP,A)
【文献】 特開2007−276112(JP,A)
【文献】 特開2013−056402(JP,A)
【文献】 特開2007−313624(JP,A)
【文献】 再公表特許第2012/066819(JP,A1)
【文献】 特開2013−043232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10−13/08
G05B 19/403
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ積みされた物品を視覚センサで検出するとともに、前記視覚センサにより取得される視覚情報に基づいて前記物品をロボットにより一つずつ取出す物品取出装置であって、
前記ロボットは、
アームの先端に設けられる前記物品を保持可能なハンドと、
前記ハンドに作用する外力を検出可能な力センサと、を備えており、
当該物品取出装置は、
前記視覚センサにより取得される視覚情報に基づいて、前記物品を保持可能な前記ハンドの位置及び姿勢を保持位置姿勢として取得する視覚情報処理部と、
前記物品を保持する際に前記ハンドに作用する外力の目標値を設定する力目標値設定部と、
前記ハンドを前記保持位置姿勢に移動させるように前記ロボットを動作させるとともに、前記物品を保持するように前記ハンドを動作させる保持動作部と、
を備えており、
前記保持動作部は、前記物品を前記ハンドにより保持する際に、前記力センサにより検出される外力が、前記外力の目標値に近づくように前記ロボット又は前記ハンドに倣い動作を実行させるように構成される、
物品取出装置。
【請求項2】
前記力センサは、前記ロボットが前記ハンドを前記保持位置姿勢に移動させる際に、前記ハンドが前記物品に接触して生じる反力を検出するように構成されており、
前記保持動作部は、前記力センサによって検出される前記反力が予め定められる第1の閾値を超えたときに、前記ロボットを停止させるとともに、前記物品を保持するように前記ハンドを動作させるように構成される、
請求項1に記載の物品取出装置。
【請求項3】
前記力センサは、前記ハンドに作用する外力を、前記ハンドに対して位置及び姿勢が固定されたハンド座標系の各座標軸に関する成分に分解して取得するように構成されており、
前記力目標値設定部は、前記外力の目標値を、前記ハンド座標系の各座標軸に関する成分に分解して設定されるように構成されており、
前記保持動作部は、前記力目標値設定部によって設定された前記外力の目標値に基づいて、前記ロボット又は前記ハンドに前記倣い動作を実行させるように構成される、
請求項1又は2に記載の物品取出装置。
【請求項4】
前記保持動作部は、前記物品を前記ハンドにより保持する際に、前記力センサにより検出される前記外力が予め定められる第2の閾値を超えたときに、前記ハンドによる前記物品の保持動作を中断するとともに、前記物品を前記ハンドから解放するように前記ハンドを動作させるように構成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の物品取出装置。
【請求項5】
前記力センサにより検出される前記外力と、前記ハンドにより保持される前記物品の個数とを互いに関連付けて第1の記憶情報として記憶する記憶部と、
前記物品を前記ハンドにより取出したときに前記力センサにより検出される前記外力と、前記第1の記憶情報と、に基づいて、前記ハンドにより保持される前記物品の個数を判別する、物品個数判別部と、
をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の物品取出装置。
【請求項6】
前記バラ積みされた物品が異なる種類の物品を含んでいる場合に、前記力センサにより検出される前記外力と、前記ハンドにより保持される前記物品の種類とを互いに関連付けて第2の記憶情報として記憶する記憶部と、
前記物品を前記ハンドにより取出したときに前記力センサにより検出される前記外力と、前記第2の記憶情報と、に基づいて、前記ハンドにより保持される前記物品の種類を判別する物品種類判別部と、
をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の物品取出装置。
【請求項7】
前記ハンドが、開閉することにより前記物品を保持するチャックハンドであり、
前記保持動作部は、前記ハンドの開閉量を制御することにより、前記ハンドによる前記物品の保持動作を実行させるとともに、前記ハンドを開閉させて前記ハンドが前記物品に接触したときに、前記力センサにより検出される外力が前記外力の目標値に近づくように、前記ロボット又は前記ハンドに倣い動作を実行させるように構成される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の物品取出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラ積みされた物品をロボットにより取出す物品取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バラ積みされた物品をロボットにより取出す物品取出装置が公知である。物品取出装置において、カメラで撮像して得られた物品の二次元画像又は三次元測定器を用いて得られた三次元点集合に基づいて、物品の積載状態を視覚的に認識することが行われている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、対象物体の距離画像を利用して対象物体の位置及び姿勢を推定する位置姿勢計測装置が開示されている。この公知技術に係る位置姿勢計測装置においては、物体モデルと物体領域との距離を示す情報と、部分領域群のうち物体領域として設定されていない部分領域と物体モデルとの距離を示す情報とを比較して、比較の結果により物体領域に新たな部分領域を加えて物体領域を更新するとともに、更新後の物体領域の3次元点群に物体モデルを関連付けて、対象物体の位置及び姿勢を推定する。
【0004】
特許文献2には、位置及び姿勢が未知な対象物が置かれた供給部の三次元情報から、ロボットの把持機構で把持可能な対象物を含む把持領域を抽出する技術が開示されている。この公知技術によれば、対象物の供給部の三次元計測データから供給部の三次元情報を生成し、予め記憶された把持機構領域と把持部分領域とからなる把持領域を用い、把持部分領域の全体に物体が存在し、把持機構領域に物体が存在していない領域を、三次元情報から把持可能領域として抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−179909号公報
【特許文献2】特開2011−093058号公報
【特許文献3】特開2000−263481号公報
【特許文献4】特開2012−137421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された公知技術のように、視覚センサを用いて取得した視覚情報に基づいて物品の位置及び姿勢又はハンドの把持位置姿勢の検出を行う場合、誤検出、検出失敗又は検出誤差が発生する虞が常にある。例えば、一対の爪を有するチャックハンドにより物品を挟持する場合、ハンドの中心と物品の中心がずれていると、ハンドの一方の爪のみが物品に接触して、ハンドを閉塞することができなくなる。この場合、他方の爪と物品との間に間隙が形成されるので、物品の保持を失敗する可能性が高い。また、無理にハンドを閉塞しようとすれば、ロボット又はハンドに過負荷がかかり、或いは過剰な力により物品が損傷する虞がある。
【0007】
特許文献3には、動作の異常を検知するセンサをマニピュレータに設置し、マニピュレータが物品を取出す際にセンサが動作の異常を検知したときに、取出動作を停止し、マニピュレータを一旦退避させ、視覚認識装置で物品の検出を再度実行する技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3に開示された公知技術では、異常が検知される度にマニピュレータを退避させる必要があるので、実際には取出せる物品が存在するにもかかわらず、取出動作を終了することになる場合がある。例えば、ハンドが周囲の物品又はコンテナに干渉するのを防止するために、開放位置におけるハンドの中心を物品の中心からずらす場合がある。特許文献3に開示されたような技術では、ハンドの中心と物品の中心がずれている場合に異常があると検知されて物品の取出しが中断される。結果的に、潜在的に取出し可能な物品が存在するにもかかわらず、取出工程を中断してしまうことになる。
【0009】
したがって、視覚センサにより取得される視覚情報に基づいて、物品を安定して取出せる物品取出装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の1番目の発明によれば、バラ積みされた物品を視覚センサで検出するとともに、前記視覚センサにより取得される視覚情報に基づいて前記物品をロボットにより一つずつ取出す物品取出装置であって、前記ロボットは、アームの先端に設けられる前記物品を保持可能なハンドと、前記ハンドに作用する外力を検出可能な力センサと、を備えており、当該物品取出装置は、前記視覚センサにより取得される視覚情報に基づいて、前記物品を保持可能な前記ハンドの位置及び姿勢を保持位置姿勢として取得する視覚情報処理部と、前記物品を保持する際に前記ハンドに作用する外力の目標値を設定する力目標値設定部と、前記ハンドを前記保持位置姿勢に移動させるように前記ロボットを動作させるとともに、前記物品を保持するように前記ハンドを動作させる保持動作部と、を備えており、前記保持動作部は、前記物品を前記ハンドにより保持する際に、前記力センサにより検出される外力が、前記外力の目標値に近づくように前記ロボット又は前記ハンドに倣い動作を実行させるように構成される、物品取出装置が提供される。
本願の2番目の発明によれば、1番目の発明に係る物品取出装置において、前記力センサは、前記ロボットが前記ハンドを前記保持位置姿勢に移動させる際に、前記ハンドが前記物品に接触して生じる反力を検出するように構成されており、前記保持動作部は、前記力センサによって検出される前記反力が予め定められる第1の閾値を超えたときに、前記ロボットを停止させるとともに、前記物品を保持するように前記ハンドを動作させるように構成される、物品取出装置が提供される。
本願の3番目の発明によれば、1番目又は2番目の発明に係る物品取出装置において、前記力センサは、前記ハンドに作用する外力を、前記ハンドに対して位置及び姿勢が固定されたハンド座標系の各座標軸に関する成分に分解して取得するように構成されており、前記力目標値設定部は、前記外力の目標値を、前記ハンド座標系の各座標軸に関する成分に分解して設定されるように構成されており、前記保持動作部は、前記力目標値設定部によって設定された前記外力の目標値に基づいて、前記ロボット又は前記ハンドに前記倣い動作を実行させるように構成される、物品取出装置が提供される。
本願の4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明に係る物品取出装置において、前記保持動作部は、前記物品を前記ハンドにより保持する際に、前記力センサにより検出される前記外力が予め定められる第2の閾値を超えたときに、前記ハンドによる前記物品の保持動作を中断するとともに、前記物品を前記ハンドから解放するように前記ハンドを動作させるように構成される、物品取出装置が提供される。
本願の5番目の発明によれば、1番目から4番目のいずれかの発明に係る物品取出装置において、前記力センサにより検出される前記外力と、前記ハンドにより保持される前記物品の個数とを互いに関連付けて第1の記憶情報として記憶する記憶部と、前記物品を前記ハンドにより取出したときに前記力センサにより検出される前記外力と、前記第1の記憶情報と、に基づいて、前記ハンドにより保持される前記物品の個数を判別する、物品個数判別部と、をさらに備える、物品取出装置が提供される。
本願の6番目の発明によれば、1番目から4番目のいずれかの発明に係る物品取出装置において、前記バラ積みされた物品が異なる種類の物品を含んでいる場合に、前記力センサにより検出される前記外力と、前記ハンドにより保持される前記物品の種類とを互いに関連付けて第2の記憶情報として記憶する記憶部と、前記物品を前記ハンドにより取出したときに前記力センサにより検出される前記外力と、前記第2の記憶情報と、に基づいて、前記ハンドにより保持される前記物品の種類を判別する物品種類判別部と、をさらに備える、物品取出装置が提供される。
本願の7番目の発明によれば、1番目から6番目のいずれかの発明に係る物品取出装置において、前記ハンドが、開閉することにより前記物品を保持するチャックハンドであり、前記保持動作部は、前記ハンドの開閉量を制御することにより、前記ハンドによる前記物品の保持動作を実行させるとともに、前記ハンドを開閉させて前記ハンドが前記物品に接触したときに、前記力センサにより検出される外力が前記外力の目標値に近づくように、前記ロボット又は前記ハンドに倣い動作を実行させるように構成される、物品取出装置が提供される。
【0011】
これら及び他の本発明の目的、特徴及び利点は、添付図面に示される本発明の例示的な実施形態に係る詳細な説明を参照することによって、より明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、物品をハンドにより保持する工程において、力センサの検出値に基づいてロボット又はハンドが倣い動作するようになっている。それにより、ハンド又はロボットに過負荷が生じたり、物品の保持に失敗するのを防止でき、物品を安定して取出せるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る物品取出装置を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る物品取出装置の機能ブロック図である。
図3】一実施形態に係る物品取出装置により実行される一連の工程を示すフローチャートである。
図4A】倣い動作を説明する図である。
図4B】倣い動作を説明する図である。
図5A】倣い動作を説明する図である。
図5B】倣い動作を説明する図である。
図6A】倣い動作を説明する図である。
図6B】倣い動作を説明する図である。
図7A】保持位置姿勢の更新処理を説明する図である。
図7B】保持位置姿勢の更新処理を説明する図である。
図8】別の実施形態に係る物品取出装置の機能ブロック図である。
図9】保持される物品の個数と検出される外力との関係を示すグラフである。
図10】さらに別の実施形態に係る物品取出装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図示される構成要素は、本発明の理解を助けるために縮尺が適宜変更されている。また、同一又は対応する構成要素には、同一の参照符号が使用される。
【0015】
図1は、一実施形態に係る物品取出装置10を示す概略図である。物品取出装置10は、アーム22の先端にハンド21を備えたロボット2と、通信ケーブル13を介してロボット2に接続されていて、ロボット2を制御する制御信号を送出するロボット制御装置(単に「制御装置」とも称する。)3と、架台41に固定されていて、コンテナ11内にバラ積みされた物品12を検出する視覚センサ4と、を備えている。物品取出装置10は、視覚センサ4により取得される視覚情報に基づいて物品12をロボット2により1個ずつ取出すのに使用される。
【0016】
ロボット2は、例えば図示されるような6軸の垂直多関節ロボットである。しかしながら、ロボット2は、任意の他の構成を有するロボットであってもよい。ハンド21は、例えば互いに対向して設けられる一対の爪21aの開閉量を制御することにより物品12を保持し、或いは解放できるように形成されたチャックハンドである。それら爪21aは、任意の動力源、例えば電気モータ、又は流体圧式アクチュエータによって駆動される。或いは、ハンド21は、物品12を保持可能に形成された他のタイプのハンド、例えば吸引ノズル、吸着用磁石、吸着パッドなどであってもよい。
【0017】
ロボット2とハンド21との間には、力センサ23が取付けられている。力センサ23は、ハンド21に作用する外力を検出するのに使用される。力センサ23によって検出される外力の情報は、図示されない通信ケーブルなどの通信手段を介して制御装置3に送出される。
【0018】
力センサ23は、例えば6軸に関する情報を取得可能な6軸力センサである。或いは、力センサ23は、3軸に関する情報を取得可能な3軸力センサであってもよい。3軸力センサを用いてハンド21に作用する外力を測定する方法は、例えば特許文献4に記載されている。
【0019】
物品12を収容するコンテナ11は、ロボット2によりアクセス可能であるように、上方において開口した箱状の形態を有している。物品12は、コンテナ11内において不規則に配置されている。図1に示される実施形態においては、同一の種類の物品12がコンテナ11内に配置されている。しかしながら、物品取出装置10は、寸法又は形状が異なる複数の種類の物品を取出すようになっていてもよい。
【0020】
コンテナ11の上方に固定された視覚センサ4は、例えばコンテナ11によって形成される物品12の収容空間の概ね全体が撮像範囲内に収まるように設けられている。視覚センサ4は、例えば二次元カメラ、又は種々の三次元測定器である。三次元測定器は、例えば2台のカメラを用いるステレオ方式である。或いは、三次元測定器は、レーザスリット光でバラ積みされた物品12を走査する方式、プロジェクタなどの装置を用いてパターン光を物品12に対して投影する方式、投光器から出射された光が物品12の表面で反射され、受光器に入射するまでの飛行時間を計測する方式、などであってもよい。図示されない別の実施形態において、視覚センサ4は、ロボット2のアーム22の先端にハンド21とともに設けられていてもよい。
【0021】
視覚センサ4によって取得された視覚情報は、任意の通信手段、例えば通信ケーブル14を介して制御装置3に送出される。別の実施形態において、視覚センサ4により取得された視覚情報を処理する追加の制御装置が、ロボット2を制御する制御装置3とは別個設けられてもよい。
【0022】
制御装置3は、CPU、ROM、RAMなどのハードウェア構成を備えたデジタルコンピュータである。制御装置3は、キーボード、マウスなどの入力デバイス、及び液晶ディスプレイなどの表示手段との間で信号及びデータを送受信するインタフェースをさらに備えている。
【0023】
図2は、物品取出装置10の機能ブロック図である。物品取出装置10の制御装置3は、図示されるように、視覚情報処理部31と、力目標値設定部32と、力測定部33と、保持動作部34と、ロボット制御部35と、を備えている。
【0024】
視覚情報処理部31は、視覚センサ4により取得される視覚情報に基づいて、物品12を保持可能なハンド21の位置及び姿勢(以下、「保持位置姿勢」とも称する。)を計算する。視覚情報処理部31は、例えば予め記憶された物品12のモデルと、視覚情報とを照合することにより、物品12の位置及び姿勢を特定し、特定された物品12の位置及び姿勢に対するハンド21の位置及び姿勢を求めてもよい。或いは、視覚情報処理部31は、物品12の位置及び姿勢を特定することなく、ハンド21によって物品12を保持可能な位置及び姿勢を直接求めるようになっていてもよい。視覚情報処理部31により求められた保持位置姿勢は、ロボット制御部35に入力される。
【0025】
力測定部33は、力センサ23と協働して、ハンド21に作用する外力を測定する。ハンド21に作用する外力は、力センサによって測定される力から、ハンド21それ自体に起因して力センサ23に付与される力を減算して求められる。ハンド21に起因して力センサ23に付与される力は、予め記憶されたハンド21のマスプロパティに基づいて計算できる。
【0026】
力目標値設定部32は、物品12をハンド21により保持する際に同時に実行される倣い動作において用いられる力目標値及び関連する制御パラメータを設定する。力目標値及び制御パラメータは、例えば制御装置3に接続される入力デバイスを介してオペレータにより設定される。
【0027】
保持動作部34は、ハンド21により物品12を保持する際に必要な制御信号を生成する。例えば、保持動作部34は、ロボット制御部35に信号を送出し、ハンド21の爪21aを開閉させることによって、物品12を保持し、又は解放する。また、本実施形態に係る保持動作部34は、後述するようにロボット2又はハンド21に倣い動作を実行させるように構成されている。
【0028】
ロボット制御部35は、所定のプログラム又は検出情報に従ってロボットを動作させる。例えば、ロボット制御部35は、ハンド21を、視覚情報処理部31によって計算された保持位置姿勢まで移動させる。また、ロボット制御部35は、保持動作部34から入力される信号に従って、ロボット2及びハンド21を制御して物品12の保持動作を実行する。
【0029】
本実施形態に係る物品取出装置10によれば、物品12の保持動作を実行する際に、力測定部33により測定される外力が力目標値設定部32により設定される力目標値に近づくように、ロボット2又はハンド21に倣い動作を実行させる。具体的には、物品取出装置10は、下記の特性方程式(数式1)で表現される力制御を実行することによって、倣い動作を実行する。
【0030】
【数1】
【0031】
すなわち、数式1の特性方程式を満足するようにロボット2又はハンド21を動作させることによって、ハンド21の先端の位置を制御して、倣い動作を実行する。
【0032】
図4A及び図4Bは、本実施形態に従って倣い動作するハンド21の挙動を示している。図示されるハンド21は、爪21aにより物品12を挟持するタイプのハンドである。図4Aは、視覚情報から得られた保持位置姿勢に配置されたハンド21を示している。この状態において、ハンド21の中心軸線C1は、物品12の中心軸線C2からずれている。この状態でハンド21を上昇させたとしても、物品12をコンテナ11から取出すことはできない。また、爪21aを単純に閉塞しようとしても、物品12に接触している右側の爪21aのみに力が作用するので、ロボット2又はハンド21に過負荷が生じる虞がある。一般的なチャックハンドは、一対の爪を反対方向に移動させることによって爪を開閉するようになっているので、このような状況が起こり得る。
【0033】
それに対し、本実施形態に係る物品取出装置10においては、保持動作を実行する際に倣い動作が実行される。したがって、図4Bに示されるように、保持動作を実行する際に、ハンド21に作用する外力の作用方向にハンド21が移動させられる。すなわち、ハンド21の中心軸線C1と物品12の中心軸線C2とが一致するようにハンド21が移動する。したがって、物品12が一対の爪21aに隙間なく挟持されるようになり、安定した保持状態を実現できる。また、倣い動作を実行しながらロボット2及びハンド21を動作させるので、ロボット2及びハンド21に過負荷が生じるのを防止できる。
【0034】
ハンド21が吸着ハンドである場合の例を図5A及び図5Bに示す。図5Aに示される保持位置姿勢において、ハンド21の吸込部21cと物品12との間に隙間が生じている。そのため、十分な吸引力が発生せずに物品12を保持し損ねる虞がある。このような状態で、保持動作として吸込部21cが吸気を行うと、ハンド21に対して、図示されるようなトルクTが作用する。
【0035】
トルクTが作用する状態でロボット2又はハンド21に倣い動作を実行させると、ハンド21の吸込部21cと物品12との間に隙間がなくなるようにハンド21の姿勢が変更される(図5Bの状態)。それにより、物品12がハンド21によって安定して保持されるようになる。
【0036】
また、本実施形態に係る物品取出装置10によれば、倣い動作において、力測定部33によって検出される力が、力目標値設定部32によって設定される力目標値に近づくように力制御が実行される。力目標値は、例えばハンド座標系の各座標軸に関する成分に分解して設定される。ハンド座標系は、ハンド21に対して位置及び姿勢が固定された座標系である。その場合、力測定部33は、ハンド21に作用する外力を、ハンド座標系の各座標軸に関する成分に分解して測定できるように構成される。
【0037】
一般的に、次の数式2の特性方程式で表現される力制御を実行することによって、ハンド21に作用する外力が力目標値に近づくように倣い動作を実行できる。
【数2】
【0038】
図6Aは、保持位置姿勢に配置されたハンド21を示している。図6Aの保持位置姿勢におけるハンド21の爪21aを閉塞させた場合、爪21aの先端のみで物品12を保持することになる。そのため、爪21aと物品12との接触面積が小さくなり、物品12を安定して保持できない。
【0039】
そこで、本実施形態によれば、ハンド座標系のZ軸方向(図6Aの矢印の方向)における力目標値を小さく(例えば−1N)に設定する。そうすると、保持動作時に実行される倣い動作によって、ハンド21が物品12の表面に沿って(図6Bの矢印の方向に)移動しながら、爪21aが閉塞されるようになる。その結果、爪21aと物品12との接触面積が増大し、物品12を安定して保持できるようになる。
【0040】
なお、力目標値を調整して実行される倣い動作によって、あらゆる保持動作を安定して実行できるとは限らない。例えば、数式1及び数式2の仮想粘性係数を含む項によって、倣い動作は、ハンド21に作用する外力に対して遅れることになる。仮想粘性係数の項は、倣い動作をロバストにする効果があるものの、場合によっては、倣い動作が遅れてしまい、過剰な外力がハンド21に作用する場合もあり得る。過剰な外力の発生を防止するため、倣い動作時(すなわち、保持動作時)に力測定部33によって測定される外力が予め定められた閾値を超えたときに、保持動作部34が保持動作を中断するように構成されてもよい。その場合、保持動作部34は、保持動作を中断するとともに、物品12を解放するようにハンド21を動作させる。それにより、ロボット2及びハンド21に過負荷が生じるのを防止できるとともに、物品12が破損するのを防止できる。
【0041】
図3は、物品取出装置10において実行される一連の工程を示すフローチャートである。まず、ステップS301において、物品12の積載状態を検知するため、視覚センサ4を用いてコンテナ11内の物品12の視覚情報を取得する。視覚センサ4が二次元カメラである場合は、物品12の撮像が実行される。視覚センサ4が三次元測定器である場合は、物品12の距離画像が取得される。
【0042】
ステップS302では、視覚情報処理部31が、ステップS301で取得された視覚情報に基づいて、ハンド21の保持位置姿勢を計算する。次いで、ステップS303において、ロボット制御部35が、ハンド21を保持位置姿勢に移動させるようにロボット2を動作させる。
【0043】
ステップS303において実行されるアプローチ動作において、ハンド21が物品12に接触して生じる反力に基づいて、保持位置姿勢を更新してもよい。ハンド21に作用する反力は、力測定部33によって測定される外力から求められる。すなわち、ロボット2がハンド21を保持位置姿勢に向かって移動させる際に、ハンド21に作用する力が予め定められた閾値を超えたときに、ハンド21が物品12に接触したと判定する。ハンド21が物品12に接触したと判定されたら、ロボット2のアプローチ動作を終了する。
【0044】
図7Aは、視覚情報処理部31により計算されるハンド21の保持位置姿勢を示している。破線で示された保持位置姿勢にハンド21を移動しようとすれば、ハンド21が、取出されるべき物品12aの周囲に位置する物品12bに干渉してしまう。このような場合、ハンド21が物品12を保持できないと判定され、物品取出工程を中断することがある。
【0045】
そこで、ハンド21に作用する外力をモニタすることで、図7Bに示されるように、ハンド21が物品12bに接触した位置を更新された保持位置姿勢としてアプローチ動作を実行する。この場合、視覚情報に基づいて計算される保持位置姿勢よりも上方の位置で物品12aが保持されるので、保持動作を実行できるようになる。
【0046】
図3を再度参照すれば、ステップS304において、保持動作部34が、ロボット2及びハンド21により物品12の保持動作を実行する。このとき、前述した数式1又は数式2に従ってロボット2又はハンド21に倣い動作を実行させる。
【0047】
ステップS305では、物品12を保持したハンド21を移動させるようにロボット2を動作させ、物品12をコンテナ11から取出す。ロボット2により取出された物品は、さらにロボット2を動作させて所定の箇所(例えば搬送コンベヤ)に載置される。図3に示されるフローチャートによれば、物品取出装置10は、物品12を取出す度に物品12の視覚情報を取得する。しかしながら、取得された視覚情報から複数の物品12に対してそれぞれ保持位置姿勢を計算してもよい。その場合、物品取出装置10は、1個の物品12を取出した後、ステップS301には戻らずに、ステップS303に戻って次の物品12を連続して取出すように構成される。
【0048】
前述した物品取出装置10によれば、次のような有利な効果を奏することができる。
(1)物品12を保持する際に、ロボット2又はハンド21に倣い動作を実行させるので、視覚情報から計算される保持位置姿勢において、物品12を保持できない場合であっても、物品12を安定して保持できるようになる。
【0049】
(2)ハンド21が物品12に接触したときにハンド21が受ける反力を力測定部33で測定することによって、ハンド21が物品12に接触した位置を検出する。検出された接触位置をハンド21の保持位置姿勢として利用するので、視覚情報から計算された保持位置姿勢では物品12を保持できない場合であっても、物品12の取出工程を継続できる。
【0050】
(3)力測定部33によって測定される外力が予め定められる閾値を超えたときに、物品12の保持動作が中断されるようになっている。それにより、ロボット2又はハンド21に過負荷が生じるのを防止でき、また、物品12が破損するのを防止できる。
【0051】
図8は、別の実施形態に係る物品取出装置10の機能ブロック図である。本実施形態において、制御装置3は、図2に関連して前述した構成に加えて、記憶部36と、物品個数判別部37と、をさらに備えている。
【0052】
物品取出装置10は、物品12を1個ずつコンテナ11から取出すように形成されている。しかしながら、2個以上の物品12を同時に保持する場合がある。逆に、物品12の保持に失敗する場合もある。そこで、本実施形態においては、力測定部33によって測定される外力の検出値に基づいて、物品12の保持動作が正しく実行されたか否かを判定する。
【0053】
ところで、ハンド21には、加減速に応じた慣性力が作用するので、ハンド21により保持された物品12の質量を移動中に正確に測定するのは困難である。ロボット2を停止させれば物品12の質量を測定できるが、サイクルタイムの増大につながるので望ましくない。
【0054】
図9は、ハンド21により保持されている物品12の個数に応じて検出される外力を示すグラフである。図9の横軸は時間経過を、縦軸は力測定部33によって測定される外力をそれぞれ表している。図9の実線は、1個の物品12を保持したときにハンド21に作用する外力のデータであり、破線は、2個の物品12を同時に保持したときにハンド21に作用する外力のデータであり、点線は、物品12を保持していないときにハンド21に作用する外力のデータである。
【0055】
図示されるように、ロボット2動作中に取得される外力のデータは比較的大きいノイズを含んでいる。そこで、例えばt1からt2までの測定期間の平均値M0〜M2を基準にして物品12の個数を判別する。すなわち、ハンド21に作用する外力が、平均値M0を基準とする両矢印A0で示される領域に含まれる場合、ハンド21が物品12を保持し損ねたとみなす。また、外力が、平均値M1を基準とする両矢印A1で示される領域に含まれる場合、ハンド21が1個の物品12を保持しているとみなす。また、外力が、平均値M2を基準とする矢印A2が示す範囲に含まれる場合、ハンド21が2個以上の物品12を保持しているとみなす。
【0056】
記憶部36は、図9を参照して前述したようなハンド21によって保持される物品12の個数と、ハンド21に作用する外力との関係を示すデータを記憶する。
【0057】
物品個数判別部37は、記憶部36に記憶されたデータを参照し、力測定部33によって測定される外力から、ハンド21によって保持されている物品12の個数を判別する。
【0058】
本実施形態によれば、物品12を1個ずつ正確に保持しているか否かをロボット2の動作中に判定できる。それにより、サイクルタイムを増大させることなくハンド21によって保持された物品12の個数を判別できる。物品個数判別部37によって2個以上の物品12を保持していると判定されたときは、物品12を振り落とすようにロボット2を動作させたり、物品12を保持し直すようにロボット2を制御する。物品12が保持されていないと判定された場合も、物品12の保持動作を再実行するようにする。したがって、物品12を安定して取り出せるようになる。
【0059】
図10は、さらに別の実施形態に係る物品取出装置10の機能ブロック図である。本実施形態において、制御装置3は、図2に関連して前述した構成に加えて、記憶部36と、物品種類判別部38と、を更に備えている。
【0060】
本実施形態において、物品取出装置10は、力測定部33の測定結果に基づいて、物品12の個数ではなく、物品12の種類を判別できるように形成される。したがって、この場合、記憶部36は、ハンド21によって保持されている物品12の種類と、ハンド21に作用する外力との関係性を示すデータを記憶する。そして、物品種類判別部38は、記憶部36に記憶されたデータを参照して、ハンド21によって保持されている物品12の種類を判別する。
【0061】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、当業者であれば、他の実施形態によっても本発明の意図する作用効果を実現できることを認識するであろう。特に、本発明の範囲を逸脱することなく、前述した実施形態の構成要素を削除又は置換することができるし、或いは公知の手段をさらに付加することができる。また、本明細書において明示的又は暗示的に開示される複数の実施形態の特徴を任意に組合せることによっても本発明を実施できることは当業者に自明である。
【符号の説明】
【0062】
10 物品取出装置
11 コンテナ
12 物品
2 ロボット
21 ハンド
22 アーム
23 力センサ
3 ロボット制御装置
31 視覚情報処理部
32 力目標値設定部
33 力測定部
34 保持動作部
35 ロボット制御部
36 記憶部
37 物品個数判別部
38 物品種類判別部
4 視覚センサ
41 架台
【要約】
【課題】視覚センサにより取得される情報に基づいて、物品を安定して取出せる物品取出装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る物品取出装置10によれば、物品12をハンド21により保持する際に、アーム22とハンド21との間に設けられた力センサ23により検出されるハンド21に作用する外力が、力目標値設定部32によって設定される外力の目標値に近づくように、ロボット2又は前記ハンド21に倣い動作を実行させるように構成される。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10