特許第5905565号(P5905565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5905565
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/08 20060101AFI20160407BHJP
   A61G 5/02 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   A61G5/02 503
   A61G5/02 506
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-251377(P2014-251377)
(22)【出願日】2014年12月12日
【審査請求日】2015年11月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514034962
【氏名又は名称】株式会社 ドリーム・ダブル
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 敏晴
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−129053(JP,A)
【文献】 特開2006−198062(JP,A)
【文献】 特開2012−024467(JP,A)
【文献】 特開平11−318665(JP,A)
【文献】 特開2013−095276(JP,A)
【文献】 特開2010−195135(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3090804(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3121217(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/08
A61G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が装着された互いに接近及び離間可能に配置された左右一対の本体フレームと
前記本体フレーム間に配置され前記本体フレームと連結されて前記本体フレームの接近及び離間動作に連動して動作する座部フレームと、
前記座部フレームに固定され、後方から前方に向かって延出されるとともに、左右一対の前記本体フレームの接近動作に連動して上方に移動して互いに接近し、離間動作に連動して下方に移動して互いに離間する左右一対のアーム部と、
前記アーム部間に配設され前記アーム部が下方に移動することによって折り畳み状態から座面の高さ近くで着座可能な張設状態へと変位することが可能な座部と、
を備え、
前記本体フレームには後方から前方に向かって延出されて座面の高さ近くに配設される左右一対のサブフレームが形成され、左右の前記アーム部が下方に移動することでそれぞれ対応する左右の前記サブフレームに接近した位置に配置される車椅子において、
前記アーム部前記座部を張設させるために手で握った状態で上方から押動する握り部が形成され、同握り部は前記座部が着座可能な状態で前記アーム部の一部が前記座部側に向かって膨らんで、かつ前記座部よりも下側位置に配置されるように構成され、前記座部には前記握り部の形状に対応した手を挿入するための切り欠き部を形成したことを特徴とする車椅子。
【請求項2】
下方に移動した前記アーム部は前記サブフレームに形成されたフックによって受け止められることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記握り部は前記アーム部の端以外の位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車椅子。
【請求項4】
前記切り欠き部の周囲には補強部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車椅子。
【請求項5】
前記握り部は前記座部に覆われて前記切り欠き部内において上面側に露出しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車椅子。
【請求項6】
前記握り部は左右の前記アーム部を最も離間させた状態で水平方向に対して斜め下方向に向かって延出されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車椅子。
【請求項7】
前記本体フレームは離間方向に移動させられた際に前記座部フレームの作用によって離間動作の途中で離間方向への移動が制動されて一旦停止し、その停止位置で前記座部形成した切り欠き部上方に露出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折り畳み可能で格納や運搬に便利な車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から車椅子は車輪が装着された左右の本体フレームを互いに接近させて左右方向の間隔を縮めて折り畳むことで格納や運搬の便宜を図っている。このような折り畳み可能な車椅子の一例として特許文献1を挙げる。
車椅子が折り畳まれた状態から使用可能状態に変位させる操作について特許文献1を例に取ると一般に次のように行われる。作業者は、まず折り畳まれた状態の車椅子1の左右のアームレスト9を掴んでそれぞれ外方に離間するように押し広げ、フレーム群2〜5をそれぞれ左右に離間させるようにする。フレーム群2〜5がある程度左右方向に分かれて押し広げられた段階で座部8を支持する支棒7(アーム部に相当)位置を上方から体重をかけて押動するようにする。すると上方から押された力によってX型フレーム6が横長となる方向に開いて座部8が畳まれた状態から広がっていく。このX型フレーム6の開く動作に連動してフレーム群2〜5は更に左右に押し広げられることとなる。そして、十分X型フレーム6を開げた結果、それ以上フレーム群2〜5が左右に移動できなくなくなった状態(つまり座部8がしっかりと張った状態)が最もフレーム群2〜5が広がった状態となり、車椅子1として使用可能な際の形態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−56124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように折り畳まれた状態から使用可能状態に変位させる際の一連の操作においては、最終的に作業者が座部8を支持する支棒7位置を体重をかけて押動することでX型フレーム6が広がって座部8がしっかりと張った状態にする動作が含まれているが、このとき支棒7は徐徐にフレーム群2〜5、特に左右上側フレーム2,3に接近することとなる。その際に気をつけないと指や手の肉が支棒7と左右上側フレーム2,3の間に挟まれてしまうので注意が必要となる。特に急いで開く操作を行うと挟まれてしまう可能性が高くなってしまう。そのため、車椅子を折り畳み状態から使用状態にする場合に、その操作段階において作業者が指や手の肉が挟まれないように意識しなくてもよくなる技術が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、作業者が車椅子を折り畳み状態から使用状態にする場合に指や手の肉が挟まれない車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために手段1では、車輪が装着された互いに接近及び離間可能に配置された左右一対の本体フレームと、前記本体フレームの一部をなす座面の高さ近くに配設される左右一対のサブフレームと、前記本体フレーム間に配置され前記本体フレームの接近及び離間動作に連動して駆動される座部フレームと、前記座部フレームの一部をなし、前記本体フレームの離間動作に連動して互いに離間方向に移動し、それぞれ外方の前記サブフレームに接近する左右一対のアーム部と、前記アーム部間に配設され前記アーム部が互いに離間することによって折り畳み状態から座面の高さ近くで着座可能な張設状態へと変位することが可能な座部と、を備え、前記アーム部は長尺体がその途中で内方に向かって膨らんだ形体の握り部を有するように構成され、前記座部には前記握り部の形状に対応して切り欠き部を形成するようにしたことをその要旨とする。
【0006】
上記のような構成であれば、アーム部を押動して座部フレーム及び本体フレームを開かせていく際に、操作する人は座部に形成された切り欠き部に手を差し込み、アーム部の握り部を軽く握るようにしてこの押動操作をすることができる。操作する人の手はサブフレームから内側にオフセットした(離れた)位置に配置されることとなり、座部フレームを開いていってアーム部がサブフレームに接近していっても操作する人の手や指がアーム部とサブフレームの間に挟まれてしまうことがない。
ここに、握り部の形状は、湾曲状又は屈曲状に例えば長尺体が途中で湾曲させられて饅頭の側面形状ようななだらかな膨出状態としてもよく、例えば鉤の手のようにしっかりと角張ったような形状で膨出させるようにしてもよい。手でつかむことができるのであればそれほど厳密な形状的な要件は求められない。握り部は当初から長尺体と一体成形的に製造しても溶接によって別体として長尺体に連結させるようにしてもよい。握り部をなだらかに膨出させれば握りやすくなる。座部が張設状態となった際にアーム部の握り部の位置に手の入る十分な大きさの切り欠き部がサブフレームの間に構成されればその形状は特に限定されるものではない。
長尺体とは必ずしも直線のみをいうわけではなく、椅子のデザインによっては湾曲したアーム部となるケースもあり得る。長尺体をパイプ材以外の形状、例えば断面L字状の材やH字状の材で構成することも自由である。
切り欠き部の形状が握り部の形状に対応するとは、本発明の目的からいって精密に対応することを求めるものではない。握り部の形状に切り欠き部の外郭が概ね沿っていれば本発明の目的を達成できるからであり、座部が折り畳み可能であることからしてもそれほどの精度が必要とされていないことによる。例えば、多少切り欠き部の縁から下方の握り部が見え隠れしてもよいというほどの精度で構わないということである。
【0007】
また、手段2では、前記アーム部は前記握り部が形成された位置に前記長尺体が重複状に形成されていないことをその要旨とする。
このような構成とすると、操作する人が切り欠き部に手を差し込んだ際に誤って外寄りの長尺体をつかんでしまうことがなくなるためである。これによって切り欠き部内で手や指がアーム部とサブフレームの間に挟まれてしまうことがなくなる。
また、手段3では、前記握り部は前記アーム部の端位置には形成されていないことをその要旨とする。
つまり、前後に長尺体の本体部分を有してそれよりも内側に握り部が形成されているということである。このような構成であれば、アーム部の強度が落ちず、また操作もしやすいからである。
また、手段4では、前記切り欠き部の周囲には補強部が形成されていることをその要旨とする。
このような構成とすれば、特に握り部を握る際に一緒に掴まれることとなる切り欠き部の周囲が劣化して傷ついたり破れたりしにくくなる。補強部は弾性を有する素材、例えばゴムやスポンジで構成することがよい。
また、手段5では、前記握り部は前記座部に覆われて前記切り欠き部内において上面側に露出しないことをその要旨とする。
このような構成としれば、ユーザーが着座した際に常に握り部の上には座部が配置されるため、ユーザーの腿の裏側が握り部と接する場合であっても常に座部を介しているため握り部の固さや冷たさを直に感じることがない。特に握り部は握り部以外のアーム部部分よりも内側に配置されることからユーザーの腿の下方位置に必ず配置されるような関係となるためこのように構成することは重要である。この場合において握り部以外のアーム部部分も使用可能状態においては座部が上面に配置されることがよい。
【0008】
また、手段6では、前記握り部は左右の前記アーム部を最も離間させた状態で水平方向に対して斜め下方向に向かって延出されることをその要旨とする。
アーム部を最も離間させた状態とは要は左右の本体フレームが最も離間して車椅子が使用可能状態となってユーザーが着座できる状態ということになる。ユーザーが座部に着座すると張設状態ではあるもののその重さで座部は若干撓むこととなるが、その際にこのように握り部が斜め下方向に向かって延出されていれば着座した際に座部が撓んだとしても握り部に座部を接触させないようにすることが可能である。特に握り部は握り部以外のアーム部部分よりも内側に配置されることからユーザーの腿の下方位置に必ず配置されるような関係となるためこのように構成することは重要である。
また、手段7では、前記本体フレームは離間方向に移動させられた際に所定の離間位置で離間方向への移動が制動され、その位置で前記座部形成した切り欠き部が上方に露出することをその要旨とする。
このような構成であれば、初めは本体フレームを開いていき、本体フレームの開放方向への移動にブレーキがかかった段階で隠れていた座部の切り欠き部が露出されるため、切り欠き部に手を差し込み、アーム部の握り部を握るようにして座部フレームを開くという二段階の動作をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
上記各請求項の発明では、作業者が車椅子を本体フレームが接近した折り畳み状態から使用状態にする場合に、操作する人は座部に形成された切り欠き部に手を差し込み、アーム部の握り部を握ることができ、その結果アーム部と本体フレーム側のサブフレームとの間に手の指や肉が挟まれるような位置に手が配置されないため、手で座部フレームを押動する際に安心して操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例の車椅子の斜視図。
図2】同じ車椅子の座部付近の(a)は一部切り欠き平断面図、(b)は一部切り欠き底断面図。
図3】同じ車椅子の折り畳んだ状態の正面図。
図4】同じ車椅子の開いていく途中の正面図。
図5】同じ車椅子の使用可能状態に開いた状態の正面図。
図6】同じ車椅子の使用可能状態における右側の本体フレームとアームフレームとの位置関係を説明する一部切り欠き説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車椅子の一実施例について図面に基づいて説明する。
図1図3図5に示すように、車椅子1は左右一対の本体フレーム2を骨格として備えている。本体フレーム2は金属製の(本実施の形態ではアルミ合金製の)パイプ材を溶接して構築された平板状の枠体とされている。各本体フレーム2は前後に立設された前脚フレーム3及び後脚フレーム5とこれら両脚フレーム3,5と交差するサブフレームとしての中央フレーム6、肘掛フレーム7及び下部フレーム8を基本構成としている。中央フレーム6、肘掛フレーム7及び下部フレーム8は上下方向において平行に配置され、肘掛フレーム7の前端はなだらかに前脚フレーム3と接続されている。後脚フレーム5は上方に延出されて背もたれ布支持部9を構成するとともに、更に延出側の前方が後方に延出されてハンドル10を構成する。肘掛フレーム7の上にはクッション12が配設されている。本体フレーム2の後脚フレーム5には中央フレーム6付近から背もたれ布支持部9の上部にかけて可撓性のある背もたれ布14が配設されている。
【0012】
左右の前脚フレーム3と下部フレーム8の交差する位置にはそれぞれ前輪としてのキャスター11が配設されている。左右の後脚フレーム5と下部フレーム8の交差する位置にはそれぞれ後輪13が配設されている。肘掛フレーム7と中央フレーム6の間には補強用のアルミ合金製の側面プレート16が配設されている。下部フレーム8と中央フレーム6から斜め下方に延出される足乗せプレート用フレーム15の交差する位置には跳ね上げ式の足乗せプレート19が配設されている。左右の中央フレーム6にはそれぞれブラケット17に支持されたブレーキ装置18が配設されている。
本体フレーム2の間には金属製の(本実施の形態ではアルミ合金製の)座部フレーム20が配設されている。図3図5に示すように、座部フレーム20は棒状フレーム21を正面視においてX状に交差させた前後一対の交差体23を回動軸22によって連結し回動可能としたものである。棒状フレーム21の下端は下部フレーム8に対して軸受け28を介して回動可能に支持されている。後方側の交差体23の左右の棒状フレーム21と後脚フレーム5との間には回動軸24によって回り対偶に連結されたリンク体26が配設されている。前後に配置された棒状フレーム21の上端にはこれと直交するように前後に延出された左右一対のアーム部としてのパイプ製のアームフレーム25が固着されている。アームフレーム25間には可撓性のある布製の座部27が配設されている。
【0013】
図2(a)及び(b)に示すように、座部27の左右の縁における前後方向中央位置に切り欠き部30が形成されている。切り欠き部30は座部27の直線状の縁に対してちょうど小さな握り拳が出入りできる程度の大きさ(最も端よりでの前後幅8〜10cm、奥行き5〜6cm程度)の浅いU字状に切り欠かれた(くびれたような)形状とされている。切り欠き部30の内側の縁部分には厚みのある発泡ゴム製の補強体31が縫いつけられている。
図2(b)に示すようにアームフレーム25には座部27の切り欠き部30が形成されている位置に対応する位置に握り部33が形成されている。アームフレーム25は前後に直列に配置された直線状の長尺体としての小パイプ32を基本構造として、その間にU字状に湾曲した握り部33を溶接することで構成されている。つまり、アームフレーム25は一直線状に配置された小パイプ32が一部カットされてその間に握り部33を配置したように形成されている。図2(b)に示すように、前記棒状フレーム21は後方の小パイプ32に連結されている。図3図6に示すように、握り部33は棒状フレーム21の延出方向に沿って延出されている。
図2図5に示すように、中央フレーム6の裏面にはアームフレーム25を受けるためのフック35が配設されている。
【0014】
次にこのように構成された車椅子1の作用について説明する。
車椅子1が折り畳まれた状態とは、本発明では本体フレーム2が互いに接近し、座部フレーム20は図3のように棒状フレーム21が直立に近い状態で立ち上がってアームフレーム25が上方側で接近して畳まれており、座部27も2つ折りに畳まれた状態をいう。また、背もたれ布14も2つ折りに畳まれた状態となっている。この状態では座部27の切り欠き部30にはまだ手を入れられない。
このような状態を初期状態として、介護者が作業者として車椅子1を使用可能状態に変位させる場合には、まず本体フレーム2の例えばハンドル10や肘掛フレーム7を持って左右方向に開いていくこととなる。すると、本体フレーム2が開いていくのに同期して座部フレーム20が畳まれた状態から徐徐に開いていく。座部フレーム20が開いていくとともに接近していたアームフレーム25が離間していき、2つ折りに畳まれた座部27が開いていく。本体フレーム2を開放させていくと、図4のような開放状態で一旦ブレーキがかることになる。この段階では座部27は完全に開ききらない状態(まだ、座るには座部27がしっかりと開いておらず本体フレーム2は約70〜80%程度の開放状態)であるが切り欠き部30は十分露出した状態となる。
【0015】
このようなブレーキがかかる理由は次のような作用による。座部フレーム20の棒状フレーム21とリンク体26とのなす角度θは図3のように折り畳まれた状態では鈍角となっている。座部フレーム20が開いていくとリンク体26も徐徐に下方向へ開いていくが、それにともなって棒状フレーム21の横方向に移動するベクトルが大きくなっていく。このベクトルは棒状フレーム21を軸方向に圧縮する力となってリンク体26の下方向へ回動する際の抵抗となる(つまりリンク体26を上方向に回動するように押し戻す力となる)。このリンク体26を上方向に押し戻す力はリンク体26が回動して思案点位置に達するまで作用する。棒状フレーム21の横方向に移動するベクトルはリンク体26が思案点を通過することで今度は下方向への回動を推進する力となる。図4はリンク体26がちょうど思案点位置にある状態である。角度θは狭角となっている。
【0016】
このようなブレーキのかかった段階で作業者は切り欠き部30に手を差し込んで握り部33を軽く握り、自身の体重を上からアームフレーム25にかけるようにする。リンク体26が思案点を通過すると上記のように下方向への回動を推進する力が発生して座部フレーム20は横方向に開きやすくなるため、大きな力は不要となる。これによって、座部フレーム20はアームフレーム25が離間する方向(中央フレーム6に接近する方向)に扁平となるように更に開き、これと連動して本体フレーム2も左右方向に離間することとなる。図5に示すように、アームフレーム25の小パイプ32がフック35上に載置されることで開放動作は停止し(ロックされる)車椅子1は使用可能状態となる。この状態で座部27は着座可能なしっかりした張り具合となる。このとき、アームフレーム25の小パイプ32は中央フレーム6とごく近接した位置に配置されるが、アームフレーム25を押動した手は切り欠き部30内にあるため小パイプ32と中央フレーム6とによって挟まれてしまうことはない。
【0017】
以上のように車椅子1を使用可能状態として使用した後に逆に折り畳む場合には、作業者は例えば座部27の中央を持ち上げることで左右のアームフレーム25を接近させ、これに連動させてリンク体26を思案点の上側となる位置まで上方向に回動させるようにする(図4の状態)。すると、その後は本体フレーム2は軽い力で接近する方向に移動できるようになるため、例えばハンドル10や肘掛フレーム7を持って閉じていく(図3の状態)。
【0018】
上記のように構成することにより本実施例では次のような効果が奏される。
(1)車椅子1は最終的には座部27の上から作業者が座部フレーム20を体重をかけて押すことで座部27を張った使用可能状態状態とするわけであるが、その際に手は座部27の外寄りに形成した切り欠き部30に差し込まれて握り部33を握って行うことになるため、手の指や肉がアームフレーム25(小パイプ32)と中央フレーム6とによって挟まれてしまうことがない。
(2)単に座部27の上から押すだけの場合にくらべてしっかり握り部33を握ることができ体重をかける際に手が滑ってしまうことがなく、また、握り部33という把持する対象があるため操作もしやすくなる。
(3)小パイプ32は握り部33位置ではカットされたように存在しないため(つまり小パイプ32は切り欠き部30の内に露出することがない)、作業者が切り欠き部30に手を入れた際に誤って小パイプ32を握ってしまうことはあり得ず、小パイプ32と中央フレームによって手の指や肉が挟まれてしまうことが確実に防止されている。
(4)切り欠き部30の内側の縁部分は補強体31によって補強されているため、経年使用しても痛みにくい。
(5)本体フレーム2は左右に開いていくと切り欠き部30を露出させた段階で一旦移動することについてブレーキがかかるため、作業者はそれを合図に本体フレーム2の操作から座部27の操作にスムーズに移行することができる。
(6)車椅子1の使用可能状態で握り部33は水平方向ではなく、斜め下方に向かって延出される構成である。そのため、座部27にユーザーが着座しても(そして座部27が多少撓んでも)腿の裏側が握り部33に接することを特徴とするがなく、ユーザーにおいて握り部33が冷たく感じたり、腿に当たったりすることを防止することができる。
(7)車椅子1の使用可能状態で握り部33は座部27に覆われた下方位置に配置されるため、万一非常に重いユーザーが使用した場合でも腿に握り部33が直接接触せずに必ず間に座部27を介することとなり、握り部33が腿に冷たく感じることが防止される。
(8)握り部33のちょうど4本の指が当接する部分は緩やかな湾曲部とされており、なおかつ断面円形のパイプ体であるため、作業する人が握りやすくまた、強く握っても痛くない。
【0019】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・車椅子1の構成は上記は一例であって、上記以外の車椅子に適用することも自由である。ユーザーが自身で後輪を操作できるような車椅子でもよい。
・切り欠き部30の形状や大きさや位置は上記は一例であって、上記以外の形態で実施するようにしてもよい。
・上記では図4の状態で車椅子1の開放動作に一旦ブレーキがかかるようになっていたが、そのような機構は必ずしもなくともよい。
・握り部33の形状は上記は一例であって、上記以外の形態で実施するようにしてもよい。
・切り欠き部30が見えないように(一件すると切り欠いていないように)蓋を設けるようにしてもよい。
・切り欠き部30の周囲の座部27面に他の穴を形成するようにしてもよい。
・上記実施の形態では車椅子1の使用可能状態で中央フレーム6の内側の近接した隣接する位置にアームフレーム25が配置されて、両者は接触していないが、接触するような構成であってもよい。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0020】
1…車椅子、2…本体フレーム、6…サブフレームとしての中央フレーム、20…座部フレーム、25…アーム部としてのアームフレーム、27…座部、30…切り欠き部、32…長尺体としての小パイプ、33…握り部。
【要約】
【課題】作業者が車椅子を折り畳み状態から使用状態にする場合に指や手の肉が挟まれない車椅子を提供すること。
【解決手段】畳んだ状態の車椅子1においてこれを使用可能状態とする場合に、ある程度開いて露出した座部27の外寄りに形成した切り欠き部30に手を差し込んで握り部33を握って座部フレーム20のアームフレーム25を上方から押しながら開くことによって本体フレーム2を連動させて開放させるようにする。アームフレーム2が開放されるに従ってアームフレーム2は中央フレーム6に接近し、アームフレーム2が最も開放された状態でアームフレーム25の小パイプ32は中央フレーム6とごく近接した位置に配置されるが、アームフレーム25を押動した手は切り欠き部30内にあるため棒状フレーム21と中央フレーム6とによって挟まれてしまうことはない。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6