【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成すべく、鋭意検討を行った結果、下記式(1)
【化5】
で表されるカーボネート構成単位からなるポリカーボネート樹脂(A成分)、特定の離型剤、および特定のヒンダードフェノール系熱安定剤からなるポリカーボネート樹脂組成物が、高い生物起源物質含有率を示し、かつ耐熱性と熱安定性のいずれも良好で、優れた成形加工性を有し、かつ成形時に着色(黄変)および不透明化を伴わない事を見出し本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明によれば、
1.下記式(1)で表されるカーボネート構成単位からなるポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、ステアリン酸モノグリセリドである離型剤(B成分)0.01〜0.5重量部、およびヒンダードフェノール系熱安定剤(C成分)0.0005〜0.1重量部を含有してなるポリカーボネート樹脂組成物、
【化6】
2.式(1)で表されるカーボネート構成単位がイソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドローDーソルビトール)由来のカーボネート構成単位である前項1記載のポリカーボネート樹脂組成物、
3.ヒンダードフェノール系熱安定剤(C成分)が下記式(2)で表わされる構造(以下「−X
1」基と表わす)を含むヒンダードフェノール系熱安定剤である前項1記載のポリカーボネート樹脂組成物、
【化7】
(上記式(2)において、R
1は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R
2は炭素原子数4〜10のアルキル基であり、R
3は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基および炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、nは1〜4の整数である。)
4.ヒンダードフェノール系熱安定剤(C成分)が下記式(3)、下記式(4)、および下記式(5)で表わされる化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である前項
3記載のポリカーボネート樹脂組成物、
【化8】
(上記式(3)において、「−X
1」は前記式(2)で示される基であり、R
4は炭素原子数8〜30の酸素原子を含んでも良い炭化水素基である。)
【化9】
(上記式(4)において、「−X
1」は前記式(2)で示される基であり、R
5は水素原子または炭素原子数1〜25のアルキル基であり、mは1〜4の整数、kは1〜4の整数である。)
【化10】
(上記式(5)において、「−X
1」は前記式(2)で示される基であり、R
6、R
7、R
8およびR
9はそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であり、lは1〜4の整数である。)
5.ポリカーボネート樹脂(A成分)が、Cl含有量0〜50ppmで、かつ水分量0〜500ppmである前項1記載のポリカーボネート樹脂組成物、
6.該ポリカーボネート樹脂組成物より形成された0.03μm以下の算術平均表面粗さ(Ra)を有する、厚み2mmの平滑平板において、JIS K7105で測定されたヘーズが0〜3%であることを満足する前項1記載のポリカーボネート樹脂組成物、
7.該ポリカーボネート樹脂組成物より形成された0.03μm以下の算術平均表面粗さ(Ra)を有する、厚み2mmの平滑平板において、b値が0〜14であることを満足する前項1記載のポリカーボネート樹脂組成物、および
8.前項1記載のポリカーボネート樹脂組成物から形成された成形品、
が提供される。
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は、上記式(1)のカーボネート構成単位からなるポリカーボネート樹脂であり、ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が83%〜100%が好ましく、84%〜100%がより好ましい。特に好ましくは上記式(1)のカーボネート構成単位のみからなるホモポリカーボネート樹脂である。
【0016】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は、樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度の下限が0.20以上が好ましく、より好ましくは0.22以上であり、また上限は0.45以下が好ましく、より好ましくは0.37以下であり、さらに好ましくは0.34以下である。比粘度が0.20より低くなると本発明のポリカーボネート樹脂組成物より得られた成形品に充分な機械強度を持たせることが困難となる。また比粘度が0.45より高くなると溶融流動性が高くなりすぎて、成形に必要な流動性を有する溶融温度が分解温度より高くなってしまい好ましくない。また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は、250℃におけるキャピロラリーレオメータで測定した溶融粘度が、シェアレート600sec
ー1で0.4×10
3〜2.4×10
3Pa・sの範囲にあることが好ましく、0.4×10
3〜1.8×10
3Pa・sの範囲にあることがさらに好ましい。溶融粘度がこの範囲であると機械的強度に優れ、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形する際に成形時のシルバーの発生等が無く良好である。
【0017】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は、そのガラス転移温度(Tg)の下限が150℃以上が好ましく、より好ましくは155℃以上であり、また上限は200℃以下が好ましく、より好ましくは190℃以下であり、さらに好ましくは168℃以下であり、特に好ましくは165℃以下である。Tgが150℃未満だと耐熱性(殊に吸湿による耐熱性)に劣り、200℃を超えると本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形する際の溶融流動性に劣る。TgはTA Instruments社製 DSC (型式 DSC2910)により測定される。
【0018】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は、その5%減量開始温度の下限が330℃以上が好ましく、より好ましくは340℃以上であり、さらに好ましくは350℃以上であり、また上限は400℃以下が好ましく、より好ましくは390℃以下であり、さらに好ましくは380℃以下である。5%重量減少温度が上記範囲内であると、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形する際の樹脂の分解がほとんど無く好ましい。5%重量減少温度はTA Instruments社製 TGA (型式 TGA2950)により測定される。
【0019】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は、下記式(a)
【化12】
で表されるエーテルジオールおよび炭酸ジエステルとから溶融重合法により製造することができる。エーテルジオールとしては、具体的には下記式(b)、(c)および(d)
【化13】
【化14】
【化15】
で表されるイソソルビド、イソマンニド、イソイディッドなどが挙げられる。
【0020】
これら糖質由来のエーテルジオールは、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。イソソルビドは、でんぷんから得られるDーグルコースに水添した後、脱水を受けさせることにより得られる。その他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。
【0021】
特に、カーボネート構成単位がイソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドローDーソルビトール)由来のカーボネート構成単位を含んでなるポリカーボネート樹脂が好ましい。イソソルビドはでんぷんなどから簡単に作ることができるエーテルジオールであり資源として豊富に入手することができる上、イソマンニドやイソイディッドと比べても製造の容易さ、性質、用途の幅広さの全てにおいて優れている。
【0022】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は重合触媒の存在下、エーテルジオールと炭酸ジエステルとを混合し、エステル交換反応によって生成するアルコールまたはフェノールを高温減圧下にて留出させる溶融重合を行うことによって得ることができる。
【0023】
反応温度は、エーテルジオールの分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るために、できるだけ低温の条件を用いることが好ましいが、重合反応を適切に進める為には重合温度は180℃〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは180℃〜260℃の範囲である。
【0024】
また、反応初期にはエーテルジオールと炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、徐々に減圧にして反応後期には系を1.3×10
ー3〜1.3×10
ー5MPa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる方法が好ましい。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0025】
炭酸ジエステルとしては、水素原子が置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基またはアラルキル基、もしくは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、mークレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでも反応性、コスト面からジフェニルカーボネートが好ましい。
【0026】
炭酸ジエステルはエーテルジオールに対してモル比で1.02〜0.98となるように混合することが好ましく、より好ましくは1.01〜0.98であり、さらに好ましくは1.01〜0.99である。炭酸ジエステルのモル比が1.02より多くなると、炭酸エステル残基が末端封止として働いてしまい充分な重合度が得られなくなってしまい好ましくない。また炭酸ジエステルのモル比が0.98より少ない場合でも、充分な重合度が得られず好ましくない。
【0027】
重合触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二価フェノールのナトリウム塩またはカリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、含窒素塩基性化合物とアルカリ金属化合物とを併用して使用することが好ましい。
【0028】
これらの重合触媒の使用量は、それぞれ炭酸ジエステル成分1モルに対し、好ましくは1×10
ー9〜1×10
ー3当量、より好ましくは1×10
ー8〜5×10
ー4当量の範囲で選ばれる。また反応系は窒素などの原料、反応混合物、反応生成物に対し不活性なガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。更に、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
【0029】
本発明で用いる離型剤(B成分)は、
ステアリン酸モノグリセリドである
。
【0033】
本発明で用いる離型剤(B成分)の量はポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜0.5重量部であり、0.03〜0.5重量部が好ましく、0.03〜0.3重量部がより好ましく、特に0.03〜0.2重量部が好ましい。離型剤がこの範囲内にあると、不透明化を抑制しつつ離型性の向上を達成することができる。
【0034】
本発明で用いるヒンダードフェノール系熱安定剤(C成分)は、下記式(2)で表わされる構造を含むヒンダードフェノール系熱安定剤が好ましい。
【化16】
【0035】
上記式(2)中、R
1は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tertブチル基が好ましい。
【0036】
R
2は炭素原子数4〜10のアルキル基であり、炭素原子数4〜6のアルキル基が好ましく、特にイソブチル基、tertブチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0037】
R
3は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基および炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基であり、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基が好ましく、特に水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましい。nは1〜4の整数であり、1〜3の整数が好ましく、特に2が好ましい。
【0038】
上記式(2)で表わされる構造を「−X
1」基と表わした時、本発明で用いられるヒンダードフェノール系熱安定剤は、下記式(3)、(4)および(5)で表わされる化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0039】
【化17】
【化18】
【化19】
【0040】
上記式(3)において、R
4は炭素原子数8〜30の酸素原子を含んでも良い炭化水素基であり、炭素原子数12〜25の酸素原子を含んでも良い炭化水素基がより好ましく、特に炭素原子数15〜25の酸素原子を含んでも良い炭化水素基が好ましい。
【0041】
上記式(4)において、R
5は水素原子または炭素原子数1〜25のアルキル基であり、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基がより好ましく、特に炭素原子数1〜18のアルキル基が好ましい。mは1〜4の整数であり、1〜3の整数が好ましく、特に2が好ましい。kは1〜4の整数であり、3〜4が好ましく、特に4が好ましい。
【0042】
上記式(5)において、R
6、R
7、R
8およびR
9はそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であり、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。lは1〜4の整数であり、1〜3の整数が好ましく、特に2が好ましい。
【0043】
上記式(3)の好ましい具体例として、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル(アルキルは炭素数7〜9で側鎖を有する)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。
【0044】
上記式(4)の好ましい具体例として、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。
【0045】
上記式(5)の好ましい具体例として、3,9−ビス[2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが挙げられる。
【0046】
これらの中で、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが特に好ましい。
かかるC成分の化合物は、1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0047】
本発明で用いるヒンダードフェノール系安定剤(C成分)の量はポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.0005〜0.1重量部であり、0.001〜0.1重量部がより好ましく、0.005〜0.1重量部がさらに好ましく、0.01〜0.1重量部が特に好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤がこの範囲内にあると、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形する際の分子量低下や色相悪化などを抑える事ができる。
【0048】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、更にリン系熱安定剤を加えても良い。リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4ージーtertーブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6ージーtertーブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4ージーtertーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6ージーtertーブチル4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6ージーtertーブチル4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0049】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4ージーtertーブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0050】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0051】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−3,3’―ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6ージーtertーブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4ージーtertーブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
リン系熱安定剤の配合量はポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.5重量部が好ましく、0.005〜0.5重量部がより好ましく、0.005〜0.3重量部がさらに好ましく、特に0.01〜0.3重量部が好ましい。
【0053】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する際に、使用するポリカーボネート樹脂(A成分)に含まれるCl含有量は0〜50ppmが好ましく、0〜30ppmがより好ましく、特に0〜10ppmが好ましい。ポリカーボネート樹脂中のCl含有量は、全有機ハロゲン分析装置((株)ダイアインスツルメンツ製TOX−100型)を用いて石英管燃焼方式による酸化分解・電量滴定により測定することができる。
【0054】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する際に、ポリカーボネート樹脂(A成分)に含まれる水分量は0〜500ppmが好ましく、0〜300ppmがより好ましい。ポリカーボネート樹脂中の水分量は、水分気化装置及び微量水分測定装置(三菱化学(株)製)を用いてカールフィッシャー滴定法にて測定することができる。
【0055】
かかる範囲のCl含有量および水分量を有するポリカーボネート樹脂を使用して、溶融押出法等により本発明の樹脂組成物を製造する際に、色相が良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0056】
Cl含有量をかかる範囲内にするためには、前記のポリカーボネート樹脂の製造方法を用いることが好ましく、ハロゲン系溶媒に溶解し、メタノールでの再沈による精製を行ったり、ピリジンなどの酸結合剤を用いて、ハロゲン系溶媒中にて重合を行う溶液法によるポリカーボネートの製造方法を用いることは好ましくない。
【0057】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する際に、ポリカーボネート樹脂の水分量をかかる範囲内にするために、ポリカーボネート樹脂を乾燥する事が好ましい。乾燥条件としては100〜120℃で、10〜48時間程度が好ましい。
【0058】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造に当たっては、その製造法は特に限定されるものではない。しかしながら本発明の樹脂組成物の好ましい製造方法は押出機を用いて各成分を溶融混練する方法である。
【0059】
押出機としては特に二軸押出機が好適であり、原料中の水分や溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。
【0060】
また、押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど) などを挙げることができる。
【0061】
さらにB成分、C成分およびその他添加剤(以下の例示において単に“添加剤”と称する)の押出機への供給方法は特に限定されないが、以下の方法が代表的に例示される。
(i)添加剤をA成分の樹脂とは独立して押出機中に供給する方法。
(ii)添加剤とA成分の樹脂粉末とをスーパーミキサーなどの混合機を用いて予備混合した後、押出機に供給する方法。
(iii)添加剤とA成分の樹脂とを予め溶融混練してマスターペレット化する方法。
(iv)他の予備混合の方法として、樹脂と添加剤を溶媒中に均一分散させた溶液とした後、該溶媒を除去する方法。
【0062】
押出機より押出された樹脂組成物は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。更に外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂や光学用環状ポリオレフィン樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の低減、運送または輸送時に発生する微小粉の低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。またペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
【0063】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、通常前記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。更にペレットを経由することなく、押出機で溶融混練された樹脂を直接シート、フィルム、異型押出成形品、ダイレクトブロー成形品、および射出成形品にすることも可能である。
【0064】
射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0065】
また、本発明の樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、およびフィルムなどの形で利用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
【0066】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物により形成された成形品は、透明性および色相に優れる。ポリカーボネート樹脂組成物より形成された、その表面粗さ(Ra)が0.03μm以下の厚み2mmの平滑平板において、ヘーズが0〜
3%の範囲が好ま
しい。ヘーズはJIS K7105に従って測定することができる。また該平滑平板において、b値が0〜14の範囲が好ましく、0〜13の範囲がより好ましく、0〜12の範囲がさらに好ましく、0〜11の範囲が特に好ましい。b値は日本電色(株)製分光彩計SE−2000(光源:C/2)を用いて測定することができる。
【0067】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、用途に応じて各種の機能付与剤を添加してもよく、例えば可塑剤、光安定剤、重金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などである。さらに、本発明のポリカーボネート樹脂には、用途に応じて各種の有機および無機のフィラー、繊維などを複合化して用いることもできる。フィラーとしては例えばカーボン、タルク、マイカ、ワラストナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトなどを挙げることができる。繊維としては例えばケナフなどの天然繊維のほか、各種の合成繊維、ガラス繊維、石英繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0068】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、例えばポリ乳酸、脂肪族ポリエステルの他、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアクリル、ABS、ポリウレタンなど、各種の生物起源物質からなるポリマーならびに合成樹脂、ゴムなどと混合しアロイ化して用いることもできる。