【実施例】
【0036】
以下、本発明の廃水中の有害物質処理材(以下処理材という)とその製造方法について詳細に説明する。
【0037】
実施例1
活性多孔質珪酸カルシウム粒として、市販の軽量気泡コンクリート板(クリオン株式会社製、SiO
2:49.5%、CaO:35.3%、Al
2O
3:4.4%、Fe
2O
3:2.6%。SiO
2/CaO比=1.4)を乾燥、粉砕して粒径1.2mm以下、0.1mm以上に調整して得た珪酸カルシウム粒を使用した。また、マグネシウム原料として市販の軽焼マグネシア(宇部マテリアル株式会社製)、pH調整剤として市販の硫酸アルミニウム粉末(商品名:硫酸バンド)を使用した。
珪酸カルシウム粒40重量部、軽焼マグネシア30重量部、硫酸アルミニウム10重量部と水8重量部をリボンミキサーを用いて室温下で5分間攪拌混合後、密封容器中に12時間静置して水和反応させ、平均粒径0.3mm(0.1〜2.0mmに99wt%)、嵩比重0.80の粉粒状反応物(処理材1)を得た。
この粉粒状反応物の化学組成はSiO
2:14.5%、Al
2O
3:1.4%、CaO:11.9%、MgO:52.9%、Fe
2O
3:1.4%、SO
3:7.4%、水分:10.0%であった。また、この粒状反応物を微粉砕してX線粉末回折装置で分析した結果、水酸化マグネシウム、2水石膏、珪酸カルシウム水和物、シリカのピークが認められた。
【0038】
処理材1を1月間保存後の顕微鏡写真を
図1及び2を示す。
図1は表面層であり、ハイドロタルサイトを主とする層状マグネシウム化合物の結晶がほぼ全面にあり、結晶が成長していることが認められる。
図2は拡大写真であり、露出している活性多孔質珪酸カルシウムの結晶である。なお、処理材1の製造直後は、ハイドロタルサイトは出来立てで、結晶化度がまだ低いため、明瞭なピークが出ないが、いずれの実施例においても、数日すると明瞭なピークが認められる。
【0039】
実施例2
実施例1で使用したと同じ珪酸カルシウム粒、マグネシウム原料、硫酸アルミニウムを使用し、珪酸カルシウム粒10重量部、軽焼マグネシア3重量部、硫酸アルミニウム1重量部と水2重量部をリボンミキサーを用いて室温下で5分間攪拌混合後、密封容器中に12時間静置して水和反応させ、平均粒径0.3mm、嵩比重0.76の粉粒状反応物(処理材2)を得た。この粉粒状反応物の化学組成はSiO
2:21.3%、Al
2O
3:2.4%、CaO:16.5%、MgO:35.8%、Fe
2O
3:1.6%、SO
3:7.5%、水分:14.3%であった。また、この粉粒状反応物を微粉砕してX線粉末回折装置で分析した結果、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、2水石膏、珪酸カルシウム水和物、シリカのピークが認められた。
【0040】
実施例3
実施例1で使用したと同じ市販の軽量気泡コンクリート板を粉砕して粒径4.0〜1.2mmに調整した珪酸カルシウム粒を使用した。また、実施例1で使用したと同じマグネシウム原料、硫酸アルミニウムを使用した。
多孔質珪酸カルシウム4重量部、軽焼マグネシア3重量部、硫酸アルミニウム1重量部と水3重量部をスーパーミキサーを用いて室温下で2分間攪拌混合後、密封容器中に12時間静置して水和反応させ、平均粒径4mm、嵩比重0.91の粒状反応物(処理材3)を得た。この粒状反応物の化学組成はSiO
2:20.4%、Al
2O
3:5.1%、CaO:16.0%、MgO:39.6%、Fe
2O
3:1.8%、SO
3:16.7%、水分:25.2%であった。また、この粒状反応物を微粉砕してX線粉末回折装置で分析した結果、水酸化マグネシウム、2水石膏、珪酸カルシウム水和物、シリカのピークが認められた。
【0041】
実施例4
実施例3で使用したと同じ珪酸カルシウム粒とマグネシウム原料を使用し、多孔質珪酸カルシウム10重量部、軽焼マグネシア3重量部、硫酸アルミニウム1重量部と水3重量部をスーパーミキサーを用いて室温下で2分間攪拌混合後、密封容器中に12時間静置して水和反応させ、平均粒径4mm、嵩比重0.82の粒状反応物(処理材4)を得た。この粒状反応物の化学組成はSiO
2:26.8%、Al
2O
3:4.9%、CaO:21.8%、MgO:28.0%、Fe
2O
3:2.1%、SO
3:15.7%、水分:27.9%であった。また、この粒状反応物を微粉砕してX線粉末回折装置で分析した結果、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、2水石膏、珪酸カルシウム水和物、シリカのピークが認められた。
【0042】
実施例5
表1に示す市販の特級試薬を用いて調整した各種の重金属類を含む水溶液100mL中に、実施例1〜4で得られた処理材1〜4を各1gづつ添加し、その試験液を500mL用のポリ容器に入れ常温で24時間振とうした。振とう後、遠心分離を行い、上澄み液を1μmグラスフィルターで吸引ろ過した。次に、ろ液から30mL分取し、HNO
3を5mL添加してマイクロウェーブ分解した後、超純水で50mLにした。その分解液を10mL分取し、50mLに定容した後、ICP-MSで測定した。その時の濾液中の重金属濃度から求めた除去率を表1に示す。なお、表1において、空欄は未測定を意味する。
【0043】
重金属溶液の調製に使用した試薬
・As溶液:ヒ酸ナトリウム+亜ヒ酸ナトリウム(モル比1:1)
・Pb溶液:酢酸鉛
・F溶液:フッ化ナトリウム
・Se溶液:亜セレン酸ナトリウム+セレン酸ナトリウム(モル比1:1)
・Cd溶液:硫酸カドミウム
【0044】
【表1】
【0045】
実施例6
市販の塩化セシウム特級試薬を用いて調整したセシウム210mg/Lを含む水溶液200mL中に、実施例1および2で得られた処理材1、処理材2を各0.5gづつ添加し、その試験液を500mL用のポリ容器に入れ常温で24時間振とうした。振とう後、遠心分離を行い、上澄み液を1μmグラスフィルターで吸引ろ過した。ろ液を原子吸光分析装置で測定した。その時の濾液中の濃度からセシウムの吸着能力を求めた。吸着能力は処理材1g当たりのCs原子換算の吸着量(mg)で表わされ、処理材1は8mg/gであり、処理材2は6mg/gである。
【0046】
実施例7
酸性の亜鉛処理廃液100mL中に、実施例2および3で得られた処理材2、処理材3を各1gづつ添加し、その試験液を300mL用のポリ容器に入れ、常温で24時間振とうした。振とう後、遠心分離を行い、上澄み液を1μmグラスフィルターで吸引ろ過した。ろ液をICP-AES分析装置で測定した。その時の濾液中の濃度から求めた亜鉛の除去率を求めた。亜鉛の除去率は、処理材2は95%であり、処理材3は98%であった。なお、処理前の亜鉛処理廃液の水質は、亜鉛鉛濃度:730mg/L、pH:3.8である。
【0047】
実施例6
土壌10gに純水400mLを加え24時間振とうし、その後遠心分離・ろ過を行い土壌浸出水を作成した。この液に市販の酢酸(特級試薬)と、重金属の原子吸光分析用標準液を添加して、pH4.3で重金属濃度がAs:0.3mg/L、Se:0.3mg/L 、Cd:0.2mg/L 、Pb:1.5mg/Lの人工廃水を作成した。その試験液100mLをポリ容器に入れ、実施例3及び4で得られた処理材3及び4を各5gを加え24時間振とうした。振とう後、遠心分離を行い、上澄み液を1μmグラスフィルターで吸引ろ過した。次に、ろ液から30mL分取し、HNO
3を5mL添加してマイクロウェーブ分解した後、超純水で50mLにした。その分解液を10mL分取し、50mLに定容した後、ICP-MSで測定した。その時の濾液中の重金属濃度から求めた除去率(%)を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例7
重金属汚染土壌1kgに純水10Lを加え24時間振とうし、その後遠心分離・ろ過を行い土壌浸出水を作成した。この土壌浸出水中の重金属濃度は、As:0.19mg/L、Se:0.03mg/Lであった。この試験液1Lをポリ容器に入れ、実施例1で得られた処理材1を1g加え24時間振とうした。振とう後、遠心分離を行い、上澄み液を1μmグラスフィルターで吸引ろ過した。次に、ろ液から30mL分取し、HNO
3を5mL添加してマイクロウェーブ分解した後、超純水で50mLにした。その分解液を10mL分取し、50mLに定容した後、ICP-MSで測定した。その時の濾液中の重金属濃度は、As:0.001mg/L未満、Se:0.009mg/Lであった。
【0050】
実施例8
重金属汚染土壌1kgに純水10Lを加え24時間振とうし、その後遠心分離・ろ過を行い土壌浸出水を作成した。この土壌浸出水中の重金属濃度は、As:0.05mg/Lであった。この試験液1Lをポリ容器に入れ、実施例1で得られた処理材1を1g加え24時間振とうした。振とう後、遠心分離を行い、上澄み液を1μmグラスフィルターで吸引ろ過した。次に、ろ液から30mL分取し、HNO
3を5mL添加してマイクロウェーブ分解した後、超純水で50mLにした。その分解液を10mL分取し、50mLに定容した後、ICP-MSで測定した。その時の濾液中の重金属濃度は、As:0.001mg/L未満であった。
【0051】
実施例9
重金属汚染土壌100g中に、実施例2で得られた処理材2を7gと純水8mLを加え攪拌混合して処理土壌を作成し、ポリ容器中に密封して常温で24時間保存した。この処理土壌115gに対して純水1Lを添加し、ポリ容器に入れ6時間振とうした。振とう後、遠心分離を行い、上澄み液を1μmグラスフィルターで吸引ろ過した。次に、ろ液から30mL分取し、HNO
3を5mL添加してマイクロウェーブ分解した後、超純水で50mLにした。その分解液を10mL分取し、50mLに定容した後、ICP-MSで測定した。その時の濾液中の鉛濃度は、0.1mg/Lであった。
なお、処理土壌を作成する操作を省略し、重金属汚染土壌100gに純水1Lを添加し、上記と同様にしてろ液を得た場合の、鉛濃度は0.8mg/Lである。
【0052】
比較例
実施例9で使用したと同じ汚染土壌を使用し、市販のマグネシア系重金属不溶化材デナイト(太平洋セメント株式会社製)7gと純水8mLを加え攪拌混合して処理土壌を作成し、ポリ容器中に密封して常温で24時間保存した。この処理土壌中1に対して純水10を添加し、ポリ容器に入れ6時間振とうした。振とう後、遠心分離を行い、上澄み液を1μmグラスフィルターで吸引ろ過した。次に、ろ液から30mL分取し、HNO
3を5mL添加してマイクロウェーブ分解した後、超純水で50mLにした。その分解液を10mL分取し、50mLに定容した後、ICP-MSで測定した。その時の濾液中の鉛濃度は、0.4mg/Lであった。