【実施例1】
【0025】
図3(a)は、実施例1に係る圧電薄膜共振器の上面模式図の例である。
図3(b)は、
図3(a)のA−A間の断面模式図の例であり、
図3(c)は、
図3(a)のB−B間の断面模式図の例である。
図3(a)から
図3(c)を参照して、例えばSi基板からなる基板10上に、例えばRuからなる下部電極12が設けられている。下部電極12の膜厚は、例えば260nmである。基板10上および下部電極12上に、例えばAlNからなる第1圧電膜14が設けられている。第1圧電膜14の膜厚は、例えば0.6μmである。第1圧電膜14上に、温度補償膜として機能する例えばSiO
2からなる絶縁膜16が設けられている。絶縁膜16の膜厚は、例えば25nmである。絶縁膜16は、例えば第1圧電膜14の上面に接して設けられている。詳しくは後述するが、絶縁膜16の上面の平坦度は、下面の平坦度よりも小さくなっている。
【0026】
絶縁膜16上に、例えばAlNからなる第2圧電膜18が設けられている。第2圧電膜18の膜厚は、例えば0.6μmである。第2圧電膜18は、例えば絶縁膜16の上面に接して設けられている。第2圧電膜18上に、第1圧電膜14、絶縁膜16、および第2圧電膜18を挟み下部電極12と対向する領域を有して、例えばRuからなる上部電極20が設けられている。上部電極20の膜厚は、例えば260nmである。下部電極12と上部電極20とが対向する領域が共振部22となる。
【0027】
共振部22の下側であって、基板10と下部電極12との間には、ドーム形状の膨らみを有する空隙24が設けられている。ドーム形状の膨らみとは、空隙24の周辺部における空隙24の高さよりも、空隙24の中心部ほど空隙24の高さが高くなるような形状の膨らみをいう。下部電極12の下側には、後述する犠牲層をエッチングするための導入路26が設けられている。導入路26の先端付近は、第1圧電膜14、絶縁膜16、および第2圧電膜18で覆われてなく、導入路26の先端は孔部28となっている。また、第1圧電膜14、絶縁膜16、および第2圧電膜18には、下部電極12との電気的な接続を可能とするための開口部30が設けられている。
【0028】
次に、
図4(a)から
図4(h)を用いて、実施例1に係る圧電薄膜共振器の製造方法を説明する。
図4(a)から
図4(d)は、
図3(a)のA−A間に相当する断面模式図の例であり、
図4(e)から
図4(h)は、
図3(a)のB−B間に相当する断面模式図の例である。
【0029】
図4(a)および
図4(e)を参照して、基板10上に、例えばMgO(酸化マグネシウム)からなる犠牲層32を、例えばスパッタ法または蒸着法を用いて形成する。その後、例えば露光技術とエッチング技術を用いて、犠牲層32を、空隙24が形成されるべき領域に残存させる。犠牲層32の膜厚は、例えば20nmである。次いで、Arガス雰囲気中でRuターゲットをスパッタすることにより、基板10上および犠牲層32上に下部電極12を形成する。その後、露光技術とエッチング技術を用いて、下部電極12を所望の形状とする。このとき、下部電極12の一部は、犠牲層32を覆うような形状とする。
【0030】
図4(b)および
図4(f)を参照して、Ar/N
2混合ガス雰囲気中でAlターゲットをスパッタすることにより、基板10上および下部電極12上に第1圧電膜14を形成する。次に、Arガス雰囲気中でSiO
2ターゲットをスタッパすることにより、第1圧電膜14上に絶縁膜16を形成する。その後、絶縁膜16の上面にArプラズマを数十秒間照射し、絶縁膜16の上面を平坦化させる。
【0031】
図4(c)および
図4(g)を参照して、Ar/N
2混合ガス雰囲気中でAlターゲットをスパッタすることにより、絶縁膜16上に第2圧電膜18を形成する。次に、Arガス雰囲気中でRuターゲットをスパッタすることにより、第2圧電膜18上に上部電極20を形成する。なお、第1圧電膜14の形成、絶縁膜16の形成、絶縁膜16の上面の平坦化、第2圧電膜18の形成、および上部電極20の形成は、同一真空装置内で、真空を破ることなく連続して行う。その後、露光技術とエッチング技術を用いて、第1圧電膜14、絶縁膜16、第2圧電膜18、および上部電極20を所望の形状とする。さらに、露光技術とエッチング技術を用いて、導入路26の先端の孔部28を形成する。なお、孔部28は、下部電極12の形成と同時に形成することもできる。
【0032】
図4(d)および
図4(h)を参照して、犠牲層32をエッチングするためのエッチング液を孔部28から導入し、導入路26を経て犠牲層32を除去する。ここで、下部電極12、第1圧電膜14、絶縁膜16、第2圧電膜18、および上部電極20からなる積層膜の応力は、スパッタ条件の調整により圧縮応力となるように設定されている。このため、犠牲層32のエッチングが完了した時点で、積層膜は膨れ上がり、基板10と下部電極12との間に、ドーム形状をした膨らみを有する空隙24が形成される。
【0033】
次に、絶縁膜16の上面の平坦度について説明する。
図5は、絶縁膜16の上面の平坦度について表した断面模式図である。
図5を参照して、絶縁膜16の上面36は、第1圧電膜14の上面34(即ち、絶縁膜16の下面)に比べて平坦度が向上している。これは、
図4(b)および
図4(f)で説明したように、絶縁膜16を形成した後、絶縁膜16の上面にArプラズマを照射したためである。ここで、第1圧電膜14の上面34と絶縁膜16の上面36の平坦度を調べた。平坦度は、
図4(a)から
図4(h)で説明した製造方法により製造したウエハに対して、面内3箇所の合計15チップについて、第1圧電膜14まで形成した後の第1圧電膜14の上面34のRMS値と、絶縁膜16の平坦化を行った後の絶縁膜16の上面36のRMS値と、を測定した。その結果、測定した15チップの平均値で、第1圧電膜14の上面34のRMS値は1.7nmであったのに対し、絶縁膜16の上面36のRMS値は0.6nmであった。このように、絶縁膜16の上面36にArプラズマを照射することで、絶縁膜16の上面36の平坦度が向上し、RMS値が半分以下にできることが分かった。
【0034】
次に、平坦度が向上した絶縁膜16の上面36に形成された第2圧電膜18のc軸配向性を調べた。c軸配向性の調査は、第2圧電膜18のX線回折におけるロッキングカーブの半値幅を調べることで行った。その結果、第2圧電膜18の半値幅は、3°程度と良好な結果が得られた。比較例1に係る圧電薄膜共振器のように、平坦度の悪い絶縁膜54の上面62に第2圧電膜56を形成した場合、第2圧電膜56のc軸配向性が乱れてしまうが、実施例1に係る圧電薄膜共振器にように、平坦度が向上した絶縁膜16の上面36に第2圧電膜18を形成することで、第2圧電膜18のc軸配向性の乱れを抑制できることが分かった。
【0035】
次に、実施例1に係る圧電薄膜共振器の周波数の温度特性について測定した。
図6(a)は、実施例1に係る圧電薄膜共振器の周波数の温度特性の測定結果である。また、比較のために、
図6(b)に、絶縁膜16が設けられていない点を除いて実施例1に係る圧電薄膜共振器と同じ構造を有する比較例2に係る圧電薄膜共振器の周波数の温度特性の測定結果を示す。なお、温度特性の測定は、−35℃から85℃の間で20℃刻みで温度を変化させて、共振周波数と反共振周波数とを測定した。
【0036】
図6(a)および
図6(b)を参照して、比較例2に係る圧電薄膜共振器の共振周波数の温度係数は−27.3ppm/℃で、反共振周波数の温度係数は−32.1ppm/℃である。これに対し、実施例1に係る圧電薄膜共振器の共振周波数の温度係数は−17.6ppm/℃で、反共振周波数の温度係数は−20.4ppm/℃である。このように、実施例1に係る圧電薄膜共振器の共振周波数および反共振周波数の温度係数は、比較例2に係る圧電薄膜共振器の共振周波数および反共振周波数の温度係数に比べて、10ppm程度改善された結果となった。
【0037】
これは、絶縁膜16は例えばSiO
2からなり、第1圧電膜14および第2圧電膜18は例えばAlNからなるため、絶縁膜16の弾性定数の温度係数は、第1圧電膜14および第2圧電膜18の弾性定数の温度係数に対して逆の符号となる。このため、絶縁膜16が、下部電極12と上部電極20とが対向する領域であって、第1圧電膜14と第2圧電膜18との間に設けられていることで、周波数の温度特性が改善されたものである。なお、絶縁膜16は、下部電極12と上部電極20とが対向する領域(共振部22)の一部に設けられている場合でもよいが、周波数の温度特性を改善する観点からは、下部電極12と上部電極20とが対向する領域(共振部22)の全面を覆って設けられている場合が好ましい。
【0038】
以上説明してきたように、実施例1によれば、
図3(b)のように、基板10上に下部電極12が設けられ、下部電極12上に第1圧電膜14と第2圧電膜18とが設けられ、第2圧電膜18上に、第1圧電膜14と第2圧電膜18とを挟み下部電極12と対向する領域を有する上部電極20が設けられている。そして、下部電極12と上部電極20とが対向する領域であって、第1圧電膜14と第2圧電膜18との間に絶縁膜16が設けられていると共に、
図5のように、絶縁膜16の上面は下面よりも平坦になっている。このような圧電薄膜共振器は、
図4(a)から
図4(h)で説明したように、基板10上に下部電極12を形成し、下部電極12上に第1圧電膜14を形成し、第1圧電膜14上に絶縁膜16を形成する。そして、絶縁膜16の上面を平坦化する。その後、上面が平坦化された絶縁膜16上に第2圧電膜18を形成し、第2圧電膜18上に、第1圧電膜14と絶縁膜16と第2圧電膜18とを挟み下部電極12と対向する領域を有するように上部電極20を形成することで得ることができる。
【0039】
このように、下部電極12と上部電極20とが対向する領域で、第1圧電膜14と第2圧電膜18との間に絶縁膜16が設けられていることで、
図6(a)のように、周波数の温度特性を改善することができる。また、平坦度が向上した絶縁膜16の上面36に第2圧電膜18を形成しているため、第2圧電膜18のc軸配向性の乱れを抑制することができる。これにより、例えば共振先鋭度(Q値)の向上、電気機械結合係数(K
2)の向上、スプリアスの抑制等、圧電薄膜共振器の共振特性を良好なものとすることができる。したがって、実施例1によれば、周波数の温度特性が改善できると共に、圧電膜の配向性の乱れを抑制し、良好な共振特性を得ることができる。
【0040】
第2圧電膜18のc軸配向性の乱れを抑制する観点から、絶縁膜16の上面36のRMS値は、下面(即ち、第1圧電膜14の上面34)のRMS値に対して30%以上小さいことが好ましく、50%以上小さいことがより好ましく、80%以上小さいことがさらに好ましい。また、第2圧電膜18のc軸配向性の乱れを抑制する観点から、絶縁膜16の上面36のRMS値は、1.0nm以下の場合が好ましく、0.8nm以下の場合がより好ましく、0.6nm以下の場合がさらに好ましい。
【0041】
図4(c)および
図4(g)で説明したように、第1圧電膜14の形成と、絶縁膜16の形成と、絶縁膜16の上面の平坦化と、第2圧電膜18の形成とは、同一真空装置内で、真空を破ることなく連続して行われることが好ましい。これにより、第1圧電膜14と絶縁膜16との界面、および絶縁膜16と第2圧電膜18との界面に、不純物が付着することを抑制できる。即ち、不純物の付着が抑制された第1圧電膜14の上面に絶縁膜16を形成でき、平坦化され且つ不純物の付着が抑制された絶縁膜16の上面に第2圧電膜18を形成することができる。よって、良好な共振特性を得ることができる。
【0042】
図4(b)および
図4(f)では、絶縁膜16の上面の平坦化は、Arプラズマを照射することで行っているが、Arガス以外の不活性ガスのプラズマを照射する等、不活性ガスのプラズマを利用して行う場合でもよい。
【0043】
圧電膜は、第1圧電膜14と第2圧電膜18との2層からなり、絶縁膜16は、2層の圧電膜である第1圧電膜14と第2圧電膜18との間に設けられた1層からなる場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。圧電膜は、3層や4層など、2層以上の複数層である場合でもよい。この場合、絶縁膜16は、圧電膜のそれぞれの層の間に挟まれて設けられることとなる。つまり、圧電膜は少なくとも2層からなり、絶縁膜は少なくとも2層からなる圧電膜のそれぞれの層の間に設けられた構成の場合であればよい。
【0044】
絶縁膜16はSiO
2からなる場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。絶縁膜16は、温度補償膜としての機能を有するために、第1圧電膜14および第2圧電膜18の弾性定数の温度係数に対して逆の符号の温度係数を有する絶縁膜であれば、その他の材料からなる絶縁膜の場合でもよい。例えば、酸化シリコンに他の元素をドープしたような絶縁膜を用いることができる。即ち、絶縁膜16は、酸化シリコンを主成分とする絶縁膜を用いることができる。また、音速の温度係数が正となる材料で絶縁性があるものを用いることもできる。
【0045】
第1圧電膜14と第2圧電膜18とはAlNからなる場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。窒化アルミニウムや窒化アルミニウムに他の元素をドープしたような場合でもよい。即ち、第1圧電膜14と第2圧電膜18とは、窒化アルミニウムまたは不純物を添加した窒化アルミニウムからなる場合でもよい。また、窒化アルミニウムの他に、酸化亜鉛(ZnO)からなる場合や酸化亜鉛に他の元素をドープしたような場合でもよい。第1圧電膜14と第2圧電膜18とは、同じ材料からなる場合が好ましい。また、第1圧電膜14と第2圧電膜18との膜厚が異なる場合でもよい。この場合、第1圧電膜14と第2圧電膜18との間に設けられた絶縁膜16は、下部電極12側もしくは上部電極20側に偏って配置されることとなる。
【0046】
基板10は、Si基板からなる場合に限られず、ガラス基板やGaAs基板等のその他の基板を用いることができる。下部電極12および上部電極20は、Ruの他に、Al、Cu、Mo、W、Ta、Pt、Rh、Ir、Cr、Ti等の金属材料を用いることができる。
【0047】
図3(b)のように、基板10と下部電極12との間に、ドーム形状をした空隙24が形成されたFBARタイプの圧電薄膜共振器の場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。実施例1の変形例1に係る圧電薄膜共振器のように、基板10の一部を除去することで、基板10に空隙24が形成されたFBARタイプの圧電薄膜共振器の場合でもよい。また、実施例1の変形例2に係る圧電薄膜共振器のように、SMRタイプの圧電薄膜共振器の場合でもよい。
【0048】
図7は、実施例1の変形例1に係る圧電薄膜共振器の断面模式図の例である。
図7を参照して、基板10の一部が除去され、基板10の上面に凹部が形成されている。この凹部を覆うように、基板10上に、下部電極12が設けられている。これにより、下部電極12の下側に空隙24が形成される。下部電極12上に、第1圧電膜14、絶縁膜16、第2圧電膜18、および上部電極20が順次積層されていて、第1圧電膜14と絶縁膜16と第2圧電膜18とを挟み、下部電極12と上部電極20とが対向する領域(共振部)は、空隙24上に位置している。
【0049】
図7のように、基板10に空隙24が形成されたFBARタイプの圧電薄膜共振器の場合でも、下部電極12と上部電極20とが対向する領域であって、第1圧電膜14と第2圧電膜18との間に絶縁膜16が設けられると共に、絶縁膜16の上面が下面よりも平坦であることで、周波数の温度特性が改善できると共に、圧電膜の配向性の乱れを抑制し、良好な共振特性を得ることができる。なお、空隙24が、基板10の下面まで基板10を貫通したバイアホールである場合でもよい。
【0050】
図8は、実施例1の変形例2に係る圧電薄膜共振器の断面模式図の例である。
図8を参照して、基板10上に、低音響インピーダンス膜38と高音響インピーダンス膜40とがλ/4(λ:弾性波の波長)の膜厚で交互に積層された音響多層膜42が設けられている。音響多層膜42上には、下部電極12、第1圧電膜14、絶縁膜16、第2圧電膜18、上部電極20が順次設けられている。このように、SMRタイプの圧電薄膜共振器には空隙が設けられてなく、第1圧電膜14と絶縁膜16と第2圧電膜18とを挟み、下部電極12と上部電極20とが対向する領域(共振部)は、音響多層膜42上に位置している。
【0051】
図8のように、空隙の代わりに音響多層膜42が設けられたSMRタイプの圧電薄膜共振器の場合でも、下部電極12と上部電極20とが対向する領域であって、第1圧電膜14と第2圧電膜18との間に絶縁膜16が設けられると共に、絶縁膜16の上面が下面よりも平坦であることで、周波数の温度特性が改善できると共に、圧電膜の配向性の乱れを抑制し、良好な共振特性を得ることができる。
【実施例2】
【0052】
図9は、実施例2に係る圧電薄膜共振器の製造方法を示すフローチャートの例である。なお、実施例2に係る圧電薄膜共振器の上面図および断面図は、実施例1に係る圧電薄膜共振器と同じであり、
図3(a)から
図3(c)に示しているため、ここでは説明を省略する。また、製造方法を示す断面図も実施例1に係る圧電薄膜共振器と同じであり、
図4(a)から
図4(h)に示しているため、ここでは説明を省略する。
【0053】
図9を参照して、まず、基板10上であって、空隙24が形成されるべき領域に犠牲層32を形成する(ステップS10)。次いで、基板10上および犠牲層32上に下部電極12を形成し、所望の形状にパターン化する(ステップS12)。
【0054】
次いで、基板10上および下部電極12上に、第1圧電膜14を形成する(ステップS14)。次いで、第1圧電膜14の上面にArプラズマを照射し、第1圧電膜14の上面を平坦化させる(ステップS16)。次いで、上面を平坦化した第1圧電膜14上に、絶縁膜16を形成する(ステップS18)。次いで、絶縁膜16の上面にArプラズマを照射して、絶縁膜16の上面を平坦化させる(ステップS20)。
【0055】
次いで、上面を平坦化した絶縁膜16上に、第2圧電膜18を形成する(ステップS22)。次いで、第2圧電膜18上に、上部電極20を形成する(ステップS24)。第1圧電膜14の形成、第1圧電膜14の平坦化、絶縁膜16の形成、絶縁膜16の平坦化、第2圧電膜18の形成、および上部電極20の形成は、同一真空装置内で、真空を破ることなく連続して行う。次いで、第1圧電膜14、絶縁膜16、第2圧電膜18、および上部電極20を所望の形状にパターン化する(ステップS26)。次いで、犠牲層32をエッチングして、基板10と下部電極12との間に、ドーム形状をした膨らみを有する空隙24を形成する(ステップS28)。
【0056】
以上説明してきたように、実施例2では、第1圧電膜14を形成した後、第1圧電膜14の上面を平坦化し、上面が平坦化された第1圧電膜14上に絶縁膜16を形成している点で、実施例1とは異なる。実施例1では、
図5で説明したように、第1圧電膜14の上面34の平坦度は悪いが、実施例2では、第1圧電膜14の上面を平坦化しているため、第1圧電膜14の上面の平坦度が向上している。そして、実施例2では、平坦度が向上した第1圧電膜14の上面に絶縁膜16を形成しているため、絶縁膜16の形成が終了した時点での絶縁膜16の上面の平坦度は実施例1に比べて良好である。そして、絶縁膜16の上面をさらに平坦化しているため、実施例1に比べて、絶縁膜16の上面の平坦度はより向上している。よって、絶縁膜16の上面に形成する第2圧電膜18のc軸配向性の乱れをより抑制することができ、より良好な共振特性を得ることができる。
【0057】
第1圧電膜14の形成、第1圧電膜14の上面の平坦化、絶縁膜16の形成、絶縁膜16の上面の平坦化、および第2圧電膜18の形成は、同一真空装置内で、真空を破ることなく連続して行われることが好ましい。これにより、平坦化され且つ不純物の付着が抑制された第1圧電膜14の上面に絶縁膜16をでき、平坦化され且つ不純物の付着が抑制された絶縁膜16の上面に第2圧電膜18を形成することができる。よって、良好な共振特性を得ることができる。
【0058】
第1圧電膜14の上面の平坦化は、Arプラズマを照射する場合に限られず、Arガス以外の不活性ガスのプラズマを照射する等、不活性ガスのプラズマを利用して行われる場合でもよい。
【0059】
実施例2においても、実施例1の変形例1のように基板10に空隙24が形成されたFBARタイプの圧電薄膜共振器や、実施例1の変形例2のように空隙の代わりに音響多層膜42が設けられたSMRタイプの圧電薄膜共振器を用いることができる。
【0060】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。