(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905688
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】車載積雪量測定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20160407BHJP
G01F 23/292 20060101ALI20160407BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G01F23/292 Z
G08G1/13
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-198556(P2011-198556)
(22)【出願日】2011年9月12日
(65)【公開番号】特開2013-61726(P2013-61726A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 磯次
【審査官】
島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−184583(JP,A)
【文献】
特開2009−257805(JP,A)
【文献】
特開平11−031295(JP,A)
【文献】
特開2003−141234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G01F 23/292
G08G 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載積雪量測定装置であって、
制御部と、
前記車両の前方を撮像するカメラと、
各種情報データを通信する通信装置と、
GPSユニットと、
を備え、
前記カメラは、車両走行中において一定時間毎に前記車両の前方を撮像することによって、積雪量を目視可能にするために路線上の側方に所定間隔で設置されている視線誘導標を順に撮像していき、
前記制御部は、前記各視線誘導標について、
前記視線誘導標が撮像されている画像データを解析することによって積雪量を計測し、計測された積雪量に関するデータを積雪量計測データとして取得し、
前記GPSユニットから前記車両の位置情報データ、及び、前記視線誘導標の位置情報データを取得し、
前記積雪量計測データと、前記制御部に記録されている除雪作業時間テーブルとを比較演算して除雪作業時間を算出し、
前記通信装置は、前記各視線誘導標について、
前記積雪量計測データ、前記車両の位置情報データ、前記視線誘導標の位置情報データ、及び、前記除雪作業時間を管理センターに備えられたコンピュータに送信する、
ことを特徴とする車載積雪量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪車等の車両に搭載される車載積雪量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用ではないが、スノーポールの近傍にカメラを設置して、積雪量を監視する積雪量測定装置は知られている。この種の積雪量測定装置の一例を図に示す(特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来技術の積雪量測定装置全体の構成図である。
図5(A)は、
図4のセンサ機器部設置状況の説明図であり、
図5(B)は、
図5(A)の被計測物の説明図である。除雪作業開始システムとして説明されている積雪量測定装置100は、複数のセンサ機器部160と、携帯電話通信網161と、パソコンから成る管理機器部300と、除雪作業を管理する作業管理者や除雪作業に従事する作業従事者が保持携帯する携帯電話162と、によって構成されている。
図5(A)に示す通り、センサ機器部160は、基準ポール(スノーポール)である被計測物250に近接して設置されている電柱等の設置用ポール163に取り付けられ、被計測物250を撮像するカメラ(CCD)105と、積雪面との距離hbを計測するレーザー距離計164と、から成る。なお、レーザー距離計164は、地上高さHbに設置されている。
【0004】
積雪量の算出は、センサ機器部160から管理機器部300に、携帯電話通信網161を介して送られてきたカメラ105からの画像データから、被計測物250の基準着色帯165の露出部分を画像上計測して、基準高さHaまでの高さhaを演算し、Ha−haから積雪量データ(積雪値)を算出する。得られた積雪量データを基に、除雪の要否を判断し、除雪の必要があれば作業管理者や作業従事者の携帯電話162に連絡する。こうして、除雪対象箇所を巡回する必要なく、作業関係者がどのような状態でどこにいても、確実に且つ迅速に除雪作業の開始指示を受領でき、必要とする除雪作業を速やかに行うことができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−257805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
<特許文献1記載の欠点>
特許文献1記載の除雪作業開始システムである積雪量測定装置100のセンサ機器部160は、基準ポール(スノーポール)である被計測物250に近接して設置する固定式であるため、多くの設置箇所を必要とするため設置費用やメンテナンスに多大なコスト要することになる。また、特定地点での設置のため、積乱雲からもたらされる豪雪による積雪量の地域的変位を捉えることができず、現場での作業時間の変更を余儀なくされる等の欠点を生じていた。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両等に搭載され、積雪量を確実に測定して、除雪作業を適切に行わせることができる車載積雪量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る、車載積雪量測定装置は、下記
(1)を特徴としている。
(1) 車両に搭載される車載積雪量測定装置であって、
制御部と、
前記車両の前方を撮像するカメラと、
各種情報データを通信する通信装置と、
GPSユニットと、
を備え、
前記カメラは、
車両走行中において一定時間毎に前記車両の前方を撮像することによって、積雪量を目視可能にするために路線上の側方に所定間隔で設置されている視線誘導標を順に撮像していき、
前記制御部は、
前記各視線誘導標について、
前記視線誘導標が撮像されている画像データを解析することによって積雪量を計測し、計測された積雪量に関するデータを積雪量計測データとして取得し、
前記GPSユニットから前記車両の位置情報データ、及び、前記視線誘導標の位置情報データを取得し、
前記積雪量計測データと、前記制御部に記録されている除雪作業時間テーブルとを比較演算して除雪作業時間を算出し、
前記通信装置は、
前記各視線誘導標について、
前記積雪量計測データ、前記車両の位置情報データ、前記視線誘導標の位置情報データ、及び、前記除雪作業時間を管理センターに備えられたコンピュータに送信する、
こと。
【0009】
上記(1)の構成の車載積雪量測定装置によれば、車両に搭載でき、車両の動きに追従して複数の積雪量を計測できると共に、除雪作業管理者が、積雪量計測データをタイムリーに取得でき、適切な除雪作業を行うことができる。
また、地域毎の積雪状態が把握でき、よりきめの細かい除雪作業計画を立てることができる。
更には、積雪量計測データと共に除雪に必要な時間が提供されるため、除雪作業の効率向上に役立つことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両に搭載されたカメラの撮像による画像データに基づいて積雪量を計測しデータを送信するため、積雪量がタイムリーに管理センターでも把握できる。この結果、除雪作業現場にマッチングした除雪作業計画が立てられ、正確な作業時間の基に、適切な作業人数、作業機材等が投入でき、除雪作業の効率向上に役立つ車載積雪量測定装置を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の車載積雪量測定装置の一実施形態を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の車載積雪量測定装置を用いて積雪量を計測する方法を示す説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の車載積雪量測定装置を用いて積雪量計測手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、従来技術の積雪量測定装置全体の構成図である。
【
図5】
図5(A)は、
図4のセンサ機器部の設置状況説明図、
図5(B)は、
図5(A)の被計測物の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
<具体的構成>
図1は、本発明の車載積雪量測定装置の一実施形態を示す構成図である。
図1に基づいて、本発明の車載積雪量測定装置を説明する。
【0015】
車載積雪量測定装置1は、除雪車や道路作業車や積雪パトロール車等の車両20に搭載され、CPUやROM、RAM等から成る制御部2と、表示部3、操作部4、カメラ5、通信装置6とを含んで構成されている。また、制御部2には、電源11、車速センサ12、GPSユニット13、警報装置14、等が接続されている。
【0016】
制御部2は、カメラ5や車速センサ12、GPSユニット13等、から得られる各種情報データを取得し、プログラム等により解析、演算し、判断基準と成るデータに変換する。また、必要なデータの表示部3での表示、通信装置6や警報装置14の作動、等を指令する。表示部3は、モニタされた車載積雪量測定装置1の状態や車両20の位置やカメラ5からの映像等を表示する。操作部4は、車載積雪量測定装置1のON/OFFやその他必要な操作を行うことができ、操作用のボタンやダイアル(図示せず)等が設けられている。
【0017】
カメラ5は、CCD等を内蔵し、車両20の前方を撮像し、特に、積雪量を計測するために必要な画像データを取得する。また、カメラ5には、車両20の前方のにある後述する被計測物25の距離をレーザーやミリ波レーダー等で測定するための、距離測定装置を備えていても良い。通信装置6は、車載積雪量測定装置1で得られた各種データを、除雪管理者が所属する管理センター等に備えられたコンピュータ30に送信し、管理センター等からの指令を受信する。
【0018】
車速センサ12は、車両20の走行速度や走行距離を算出するためのパルス信号を制御部2に与える。GPSユニット13は、車両20の位置情報や距離情報や時間情報を制御部2に与える。警報装置14は、制御部2からの指令を受け、緊急時のサイレン音を鳴らしたり、危険状態等を知らせる警告音を発したりする。
【0019】
コンピュータ30は、車載積雪量測定装置1から送信されてきた各種データを整理、統合し、除雪作業に必要なデータを除雪管理者に提供する。除雪管理者は、取得されたデータから、除雪計画を立案し、除雪車の手配や除雪作業者に除雪の指示を与える。
【0020】
<積雪量測定>
図2は、積雪量を計測する方法を示す説明図である。
図2に基づいて積雪量を計測するる方法を説明する。
【0021】
車両20の頭部にカメラ5が取り付けてある。カメラ5は、車両20前方にあるスノーポール等の被計測物25を撮像する。被計測物25とは、積雪量を目視可能にするために、路線上の側方に一定間隔毎に設置されているスノーポール(視線誘導標)等である。積雪量(積雪高)L−T[cm]の測定方法は種々あるが、本発明では角度測定(三角法)を例にとって説明する。撮像された画像データから、被計測物25の基準高L[cm]と積雪面との高さH[cm]とのなす角度θを算出する。車両20と被計測物25との離間距離D[cm]との関係から、被計測物25の露出部分の高さT[cm]が算出される。算出されたT[cm]を用いて積雪量(積雪高)L−T[cm]が算出できる。
【0022】
車両20と被計測物25との離間距離D[cm]は、GPSユニット13から得られる車両20の位置情報データと、被計測物25毎に事前に登録されている位置情報データの差分から得られる。これ以外の手法として、カメラ5に搭載される距離計測計によって車両20と被計測物25との離間距離Dを測定しても良い。また、これら以外の手法として、離間距離D[cm]が未知であっても、被計測物25に車両20が接近する際にカメラ5から2つの時点においてそれぞれ得られる画像データに基づいて、角度θの変化量Δθと撮像間の走行距離ΔdからT[cm]を算出することもできる。
【0023】
被計測物25がスノーポールである場合は、直線で最大設置間隔50m、カーブでは5m〜40mと規定されているため、カメラ5からの撮像間隔は、車両20の走行速度にもよるが、5秒から1分間である。
【0024】
算出された積雪量計測データは、車両の位置情報データや被計測物の位置情報データと共に、管理センターのコンピュータ30に通信装置6を介して送信される。送信するにあたっては、電気通信回線(例えば、インターネット回線、衛星回線、携帯電話回線、移動体通信網、等)を利用する。
【0025】
また、除雪に必要な作業時間や作業機材や作業人数等を、除雪作業時間テーブルを利用して算出するこもできる。ここで述べる除雪作業時間テーブルとは、過去の除雪作業に関するデータのデータベースである。積雪量、積雪場所、積雪領域、除雪に要した除雪時間、作業人数、作業機材、等が記録されているテーブルである。
【0026】
除雪作業時間テーブルが、車載積雪量測定装置1の制御部2に記録されている場合は、制御部2で解析及び演算して算出された積雪量計測データと、除雪作業時間テーブルとを比較演算し、最適な除雪作業時間等を算出する。算出された除雪作業時間等は、車載積雪量測定装置1の通信装置6を介してコンピュータ30に送信される。また、コンピュータ30に除雪作業時間テーブルが記録されている場合は、積雪量計測データを送信することにより管理者側で最適な除雪作業時間等を算出できる。なお、取得された画像データを基に、管理センター等に所属する作業管理者が、過去の経験を踏まえながら、除雪作業計画を立てることも可能である。
【0027】
車載積雪量測定装置1は、車両20に搭載され、車両20が移動しながら一定の距離間隔で積雪量を計測できるため、きめの細かい除雪作業が可能となる。また、除雪作業を効率良く行うため、あらかじめ定められた領域毎に積雪量をマップ化することもできる。特に、積乱雲による積雪は、僅か100m離れた場所でも、積雪量の大きな差が出ることから、除雪作業に当たっては、現場の詳細な積雪量計測データの取得が必須であり、本発明の車載積雪量測定装置1を利用することにより、適切で安全な除雪作業が可能となる。
【0028】
<積雪量の計測を手順>
図3は、積雪量計測手順の一例を説明するフローチャートである。
【0029】
ステップ40[撮像]:一定時間毎にカメラ5で車両20前方を撮像する。
【0030】
ステップ41[被計測物判定]:車両20の前方に被計測物25が存在すると判定した場合は、次のステップに進む。
【0031】
ステップ42[計測]:カメラ5で取得された画像データを制御部2で解析、演算し、積雪量を計測し、計測されたデータを積雪量計測データとして制御部2で記憶する。
【0032】
ステップ43[位置情報取得]:GPSユニット13から取得できる車両20と被計測物25との位置情報データを制御部2で取得する。
【0033】
ステップ44[作業時間算出]:計測された積雪量計測データを基に、除雪作業時間テーブルと比較演算し、除雪に必要な作業時間や作業機材や作業人数等を算出する。
【0034】
ステップ45[通信]:積雪量計測データ、車両20の位置情報、被計測物25の位置情報、除雪作業時間等を管理センターのコンピュータ30に送信する。
【0035】
以上、本発明の実施形態の車載積雪量測定装置においては、車両20に搭載される車載積雪量測定装置1であり、CPUやROM、RAM等から成る制御部2と、必要な情報を表示する表示部3と、各種の操作を行う操作部4と、主として車両20の前方を撮像するカメラ5と、主として除雪作業に必要な各種情報データを通信する通信装置6と、を備え、カメラ5は、積雪量を目視可能とするためのスノーポール等の被計測物25を撮像し、撮像された画像データを制御部2で解析及び演算して積雪量を算出して積雪量計測データを取得し、通信装置6を介して積雪量計測データを管理センター等に備えられたコンピュータ30に送信することを特徴としている。
【0036】
この構成により、車両20に搭載でき、車両20の動きに追従して複数の積雪量を計測できると共に、除雪作業管理者が、積雪量計測データをタイムリーに取得でき、適切な除雪作業を行うことができる車載積雪量測定装置を提供できる。
【0037】
また、本発明の実施形態の車載積雪量測定装置においては、車載積雪量測定装置1には、GPSユニット13が接続され、GPSユニット13から取得できる車両20の位置情報データを制御部2で記憶させ、通信装置6を介して、積雪量計測データと共に位置情報データをコンピュータ30に送信することを特徴としている。この構成により、地域毎の積雪状態が把握でき、よりきめの細かい除雪作業計画を立てることができる車載積雪量測定装置を提供できる。
【0038】
また、本発明の実施形態の車載積雪量測定装置においては、制御部2で解析及び演算して算出された積雪量計測データと除雪作業時間テーブルとを比較演算し、最適な除雪作業時間を算出し、通信装置6を介して、コンピュータ30に送信することを特徴としている。この構成により、積雪量計測データと共に除雪に必要な時間、機材、人数が提供されるため、除雪作業の効率向上に役立つことができる車載積雪量測定装置を提供できる。
【0039】
そして、本発明の実施形態の車載積雪量測定装置においては、除雪作業時間テーブルは、予め制御部2に記録されていることを特徴としている。この構成により、車載積雪量測定装置1の通信装置6から、除雪作業に必要なデータが全て送信され、除雪作業管理者が、迅速な除雪作業指示を行うことができる車載積雪量測定装置を提供できる。
【0040】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0041】
本発明の実施形態にて述べる除雪管理者は、市町村の雪対策室等に勤務する除雪の責任者を指しているが、責任者に準ずる人でも良い。
【0042】
カメラ5からの撮像間隔を5秒から1分間と説明したが、特にこの間隔に限定する必要は無く、積雪量の計測や除雪作業計画に支障がない範囲で画像データが取得できれば良く、例えば2分、3分間隔でも良い。
【0043】
被計測物25は円筒形のポールとは限らない。被計測物25の頂点にデニリエータやサイン付の台形状板を取り付けた物もある。従って、被計測物25の基準高Lは、被計測物25の頂点でも、赤色や緑色等の反射シートの先端でも良い。車載積雪量測定装置1に対して各被計測物25の基準高Lを予め設定しておくことにより、基準高Lは、規定値として成立する。
【符号の説明】
【0044】
1 車載積雪量測定装置
2 制御部
5 カメラ
6 通信装置
13 GPSユニット
20 車両
25 被計測物
30 コンピュータ