(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の実施例1に係る内燃機関1においては、図示しないエアクリーナ等を介して外気(新気)が吸入されるが、該新気は吸気通路2を介して過給機3のコンプレッサ(インペラ)3Aに導かれて所定に圧縮された後、吸気通路2に介装されるインタークーラ4を介して所定に冷却されて、燃焼室(シリンダ)5内に導かれる。
【0017】
燃焼室5から排出される燃焼後のガスは、燃焼室5に臨んで開口される排気ポート(図示せず)を介して排気通路(排気マニホールド部分)6に導かれ、その後、過給機3の排気タービン3Bに回転エネルギを供給した後、排気通路7の下流に配設されている図示しない排気処理装置(酸化触媒、NOx低減触媒、ディーゼルパティキュレートフィルタなど)において所定の処理を受けて浄化され、大気中に排出される。
【0018】
ここで、本実施例では、燃焼後のガス(すなわち、排気)の一部を吸気(新気)と共に燃焼室5に再び導くことで、燃焼温度を低下させてNOxの低減を図るためのEGR装置100が設けられている。
【0019】
本実施例に係るEGR装置(システム)100(HPL−EGR:High Pressure Loop−EGR)は、排気タービン3Bの上流側において排気通路(排気マニホールド部分)6に連通されるEGR通路(排気還流通路)101を含んで構成され、該EGR通路101には当該EGR通路101を流れる排気(EGRガス:還流排気)を所定に冷却するためのEGRクーラ110が介装されている。
【0020】
EGRクーラ110のEGRガス流れ下流側において、EGR通路101は二股に分岐され、一方の比較的短い管長の高速用EGR通路102は、高速用EGRバルブ120が介装されると共に吸気通路2に接続されている。
【0021】
また、二股に分岐された他方の比較的長い管長の低速用EGR通路103は、第1低速用EGRバルブ130(EGRクーラ110側)、第2低速用EGRバルブ140(吸気通路2側)が介装されると共に吸気通路2に接続されている。
【0022】
更に、低速用EGR通路103には、第1EGR通路開閉バルブ150(第1EGR通路102との分岐部付近)、第2EGR通路開閉バルブ160(吸気通路2との接続部付近)が介装されている。
【0023】
このような構成を備えた本実施例に係るEGR装置100は、吸気通路とEGR通路において共鳴効果を利用して、(排気)煙(濃度)を悪化させることなく高EGR率を実現してNOx排出量を低減する。
【0024】
なお、共鳴効果とは、管内(吸気通路内やEGR通路内)の脈動と、管(吸気通路やEGR通路)の持つ固有振動数と、を同調させることによって得られる過給効果の意である(共鳴過給)。
【0025】
管(吸気通路やEGR通路)の固有振動数は、管長に応じて変化する。管長の長い管の固有振動数は低く(小さく)、管長の短い管の固有振動数は高く(大きく)なる。
【0026】
また、管の固有振動数は、レゾネータ(共鳴容器)を接続することによって変化させることが可能である。接続されるレゾネータの容積(長さ)に比例して、管の固有振動数を低下させることができる。
【0027】
ここで、内燃機関1の回転速度が低い場合には、吸気通路を流れる新気及びEGRガスの脈動、及びEGR通路を流れるEGRガスの脈動の周期が長いため、共鳴効果を得るためには、管(吸気通路及びEGR通路)の固有振動数を低く(小さく)設定する必要がある。
【0028】
この一方、内燃機関1の回転速度が高い場合には、吸気通路を流れる新気及びEGRガスの脈動、及びEGR通路を流れるEGRガスの脈動の周期が短いため、共鳴効果を得るためには、管(吸気通路及びEGR通路)の固有振動数を高く(大きく)設定する必要がある。
【0029】
このため、本実施例に係るEGR装置100では、内燃機関1の回転速度に応じて、EGRガスが流れるEGR通路を切り換えると共にレゾネータ容積を変化させることができる構成として、吸気通路及びEGR通路の固有振動数を変化させ、内燃機関1の広い回転速度域に亘って共鳴効果を有効に利用することができるようにすることで、共鳴による過給効果によって空気(新気)とEGRガスが燃焼室5へ入り易くなるため、ポンピングロスを増加させずに、空気量(新気)を稼ぎながら、より多くのEGRガスを燃焼室5内に導くことができ、以って黒煙排出濃度の悪化を抑制しながら効果的にNOx排出量を低減することができる。
【0030】
以下、本実施例に係るEGR装置100におけるEGR通路切り換え制御について説明する。
本実施例に係るEGR装置100では、内燃機関1の回転速度に応じて、高速用EGR通路102と、低速用EGR通路103と、を切り換えると共に、第1EGR通路開閉バルブ150、第2EGR通路開閉バルブ160の開閉を切り換えることで、内燃機関1の広い回転領域に亘って、黒煙排出量を抑制しながら高いEGR率を達成できるように構成されている。
【0031】
<内燃機関1の回転速度が高速域である場合>
高速域の場合には、
図1に示すように、高速用EGR通路102へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、高速用EGRバルブ120を目標EGR率に応じた開度に制御する一方で、低速用EGR通路103へのEGRガスの流れ込みを規制するために、第1EGR通路開閉バルブ150を閉じる。
また、低速用EGR通路103が吸気通路2に接続されるレゾネータとして機能しないように、第2EGR通路開閉バルブ160を閉じる。
【0032】
なお、かかる高速回転域において、良好な共鳴効果が得られるように、あらかじめ吸気通路2の寸法(径や長さなど)は、高速域にて固有振動数と、管内脈動と、が同調するように設定される。
【0033】
また、EGRガスについては、管長の短い高速用EGR通路102を流れることから管路の固有振動数は増加されている一方で、高速域でのEGRガスの周期が短い管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができる。
【0034】
なお、かかる高速域でのEGR率の制御は、高速用EGRバルブ120によって制御される。
【0035】
<内燃機関1の回転速度が中速域である場合>
中速域の場合には、
図2に示すように、高速用EGR通路102へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、高速用EGRバルブ120を目標EGR率に応じた開度に制御する。
【0036】
また、低速用EGR通路103のEGRガス入口側の第1EGR通路開閉バルブ150を開くと共に、低速用EGR通路103が吸気通路2に接続される側の第2EGR通路開閉バルブ160を開く。
【0037】
なお、低速用EGR通路103に介装される第1低速用EGRバルブ130と第2低速用EGRバルブ140は閉弁されている。
【0038】
これにより、低速用EGR通路103の入口から第1低速用EGRバルブ130までの容積を、高速用EGR通路102のレゾネータとして機能させると共に、低速用EGR通路103の出口から第2低速用EGRバルブ140までの容積を、吸気通路2のレゾネータとして機能させるようになっている。
【0039】
このように、レゾネータとして機能させることで、高速域において同調するよう設定されている吸気通路2及び高速用EGR通路102の固有振動数を低下させ、中速域において管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができるようになっている。
【0040】
<内燃機関1の回転速度が低速域である場合>
低速域の場合には、
図3に示すように、高速用EGRバルブ120を閉弁すると共に、低速用EGR通路103へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、第1EGR通路開閉バルブ150及び第2EGR通路開閉バルブ160を開くと共に、第1低速用EGRバルブ130及び第2低速用EGRバルブ140を開く。
【0041】
これにより、吸気通路2には、高速用EGR通路102の接続部から高速用EGRバルブ120までの比較的大きな容積(レゾネータ)が接続された状態となる。
【0042】
このように、吸気通路2に比較的大きなレゾネータを接続した状態とすることで、高速域において同調するよう設定されている吸気通路2の固有振動数を比較的大きく低下させ、低速域における管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができるようになっている。
また、EGRガスについては、管長の長い低速用EGR通路103を流れることから、管路の固有振動数が低下すると共に、低速域での周期の長いEGRガスの管内脈動と同調させることにより、共鳴効果を得ることができる。
【0043】
EGR率については、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140の少なくとも一方の開度を制御することで目標EGR率に制御することができる。但し、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140に限らず、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140、第1EGR通路開閉バルブ150、第2EGR通路開閉バルブ160の少なくとも一つの開度を制御することで目標EGR率に制御することもできる。
【0044】
なお、車両への搭載性などを優先して、吸気通路2及び高速用EGR通路102が高速域での同調に適した管長より短く設定された場合、共鳴点は高速域よりも更に高速側となるため、
図1に示したバルブの切り換え状態では、高速域において良好な共鳴効果を得ることができなくなることが想定される。
【0045】
このような場合には、例えば、第1低速用EGRバルブ130及び/或いは第2低速用EGRバルブ140を高速域での同調位置に設置することで(すなわち、レゾネータの容積の高速域にマッチした設定を行うことによって)、第1EGR通路開閉バルブ150及び/或いは第2EGR通路開閉バルブ160を開弁した状態として高速域において共鳴効果を得ることができる。
【0046】
以上で説明したように、本実施例に係るEGR装置100では、内燃機関1の回転速度に応じて、EGRガスが流れるEGR通路を切り換えると共にレゾネータ容積を変化させることができる構成として、吸気通路及びEGR通路の固有振動数を変化させ、内燃機関1の広い回転速度域にて共鳴効果を有効に利用することができるようにしたので、共鳴による過給効果によって空気(新気)とEGRガスを燃焼室5へ送り込み易くできるため、ポンピングロスを増加させずに、空気量(新気)を稼ぎながら、より多くのEGRガスを燃焼室5内に導くことができ、以って黒煙排出濃度の悪化を抑制しつつ効果的にNOx排出量を低減することができる。
【0047】
すなわち、実施例1によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、ポンピングロス等を増大させずに、高いEGR率での運転を実現することができ、以って排出黒煙濃度(パティキュレート)の増加を抑制しながらNOx排出量を効果的に低減することができるEGR装置を提供することができる。
【実施例2】
【0048】
実施例2に係るEGR装置200は、実施例1に係るEGR装置100に対して、構成の簡略化を図り低コスト化を促進した場合の構成例である。
実施例2に係るEGR装置200は、
図4、
図5に示すように、実施例1のEGR装置100に対してバルブの数を低減して簡略化している。具体的には、実施例1のEGR装置100に対して、低速用EGR通路103に介装される第1EGR通路開閉バルブ150、第2EGR通路開閉バルブ160が省略されて構成されている。
【0049】
<内燃機関1の回転速度が高速域である場合>
実施例2において、高速域の場合には、
図4に示すように、高速用EGR通路102へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、高速用EGRバルブ120を目標EGR率に応じた開度に制御する一方で、低速用EGR通路103へのEGRガスの流れ込みを規制するために、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140を閉じる。
【0050】
これにより、低速用EGR通路103の入口から第1低速用EGRバルブ130までの容積を、高速用EGR通路102のレゾネータとして機能させると共に、低速用EGR通路103の出口から第2低速用EGRバルブ140までの容積を、吸気通路2のレゾネータとして機能させる。
【0051】
なお、実施例2では、これらレゾネータの接続を考慮して、吸気通路2及び各EGR通路の管長は、目標の高速域での共鳴点より短い管長に設定されている。
【0052】
すなわち、レゾネータを接続することで、吸気通路2及び高速用EGR通路102の固有振動数を低下させ、高速域における管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができるようになっている。つまり、
図4に示すような状態としてレゾネータを接続したときに、高速域にて丁度良い共鳴効果が得られるように吸気通路2及び各EGR通路の管長や第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140の位置は設定されている。
【0053】
なお、EGR率については、高速用EGRバルブ120の開度を制御することで目標EGR率に制御することができる。
【0054】
<内燃機関1の回転速度が低速域である場合>
低速域の場合には、
図5に示すように、高速用EGRバルブ120を閉弁すると共に、低速用EGR通路103へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、第1低速用EGRバルブ130及び第2低速用EGRバルブ140を開く。
【0055】
これにより、吸気通路2には、高速用EGR通路102の接続部から高速用EGRバルブ120までの比較的大きな容積(レゾネータ)が接続された状態となる。
【0056】
このように、吸気通路2に比較的大きなレゾネータを接続した状態とすることで、高速域において同調するよう設定されている吸気通路2の固有振動数を比較的大きく低下させ、低速域における管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができるようになっている。
また、EGRガスについては、管長の長い低速用EGR通路103を流れることから、管路の固有振動数が低下すると共に、低速域での周期の長いEGRガスの管内脈動と同調させることにより、共鳴効果を得ることができる。
【0057】
EGR率については、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140の少なくとも一方の開度を制御することで目標EGR率に制御することができる。
【0058】
なお、実施例1や実施例2において、EGR通路、EGRバルブ、通路切換バルブを増設して、EGR通路やレゾネータ容積の切り換えの組み合わせを増やすことで、同調回転速度を細分化することができ、以ってよりきめ細かなEGR制御が可能となる。
【0059】
すなわち、実施例2によっても、簡単かつ安価な構成でありながら、ポンピングロス等を増大させずに、高いEGR率での運転を実現することができ、以って排出黒煙濃度(パティキュレート)の増加を抑制しながらNOx排出量を効果的に低減することができるEGR装置を提供することができる。
【0060】
また、実施例1や実施例2では、EGR通路は、低速用EGR通路103、高速用EGR通路102の二股に分岐させたが、これに限定されるものではなく、低速用EGR通路、中速用EGR通路、高速用EGR通路などの複数の通路を設け、同調回転速度を細分化し、よりきめ細かなEGR制御を行わせることができる。
【0061】
実施例1や実施例2に係るEGR装置によれば、新気の空気量を維持しながら高EGR率化を図ることができるため、排出黒煙濃度の増加を抑制することができると共に、吸気側の過給圧(ブースト圧)を上げる必要や排気側のエキマニ圧力を上げる必要がないため、内燃機関のポンピングロスを小さく維持することでき、以って燃費も所定に維持することができる。
【0062】
すなわち、実施例1や実施例2に係るEGR装置によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、ポンピングロス等を増大させずに、高いEGR率での運転を実現することができ、以って排出黒煙濃度(パティキュレート)の増加を抑制しながらNOx排出量を効果的に低減することができるEGR装置を提供することができる。
【実施例3】
【0063】
実施例3に係るEGR装置300は、実施例1に係るEGR装置100に対して、構成の簡略化を図り低コスト化を促進した場合の他の構成例である。
【0064】
実施例3に係るEGR装置300は、
図6、
図7に示すように、実施例2と同様、実施例1のEGR装置100に対してバルブの数を低減して簡略化している。具体的には、実施例1のEGR装置100に対して、低速用EGR通路103に介装される第1EGR通路開閉バルブ150、第2EGR通路開閉バルブ160が省略されて構成されている。
【0065】
但し、実施例3に係るEGR装置300は、実施例2に係るEGR装置200に対して、高速用EGRバルブ120、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140の配設位置が異なっている。
【0066】
すなわち、
図6、
図7に示すように、高速用EGRバルブ120は高速用EGR通路102の入口部付近に配設され、第1低速用EGRバルブ130は低速用EGR通路103の入口側に配設され、第2低速用EGRバルブ140は低速用EGR通路103の出口部(吸気通路2との接続部)付近に配設されている。
【0067】
<内燃機関1の回転速度が高速域である場合>
実施例3において、高速域の場合には、
図7に示すように、高速用EGR通路102へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、高速用EGRバルブ120を目標EGR率に応じた開度に制御する一方で、低速用EGR通路103へのEGRガスの流れ込みを規制するために、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140を閉じる。
【0068】
これにより、EGRガスは高速用EGR通路102を通過するため、管長は短くなるため固有振動数が上昇する。また、低速用EGR通路103は第1低速用EGRバルブ130の位置によって比較的短いレゾネータとして機能し、接続される高速用EGR通路102の固有振動数を低下させる。
【0069】
すなわち、低速用EGR通路103の入口から第1低速用EGRバルブ130までの容積を、高速用EGR通路102のレゾネータとして機能させる。なお、実施例3では、低速用EGR通路103の出口から第2低速用EGRバルブ140までの容積は少なく、吸気通路2に接続されるレゾネータとして機能しないようになっている。
【0070】
これにより、実施例3では、低速用EGR通路103の入口から第1低速用EGRバルブ130までの容積を高速用EGR通路102のレゾネータとして機能させることで高速用EGR通路102の固有振動数を低下させ、高速域における管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができるようになっている。つまり、
図7に示すような状態としたときに、高速域にて丁度良い共鳴効果が得られるように、吸気通路2及び各EGR通路の管長や第1低速用EGRバルブ130の位置は設定されている。
【0071】
EGR率については、高速用EGRバルブ120の開度を制御することで目標EGR率に制御することができる。
【0072】
<内燃機関1の回転速度が低速域である場合>
低速域の場合には、
図6に示すように、高速用EGRバルブ120を閉弁すると共に、低速用EGR通路103へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、第1低速用EGRバルブ130及び第2低速用EGRバルブ140を開く。
【0073】
これにより、低速用EGR通路103には、高速用EGR通路102の接続部から高速用EGRバルブ120までの比較的大きな容積(レゾネータ)が接続された状態となる。
【0074】
EGRガスは管長の長い低速用EGR通路103を通過するので管の固有振動数は低下する。また、高速用EGR通路102は、その管長をあらかじめEGR通路の固有振動数を低下させることが可能なレゾネータ長さ(容積)に設定されている。
【0075】
これにより、
図6に示したように、低速用EGR通路103に比較的大きなレゾネータを接続した状態とすることで、低速用EGR通路103の固有振動数を、低速域における管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができるようになっている。
【0076】
低速域でのEGR率制御については、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140の少なくとも一方の開度を制御することで目標EGR率に制御することができる。例えば、2つの第1低速用EGRバルブ130及び第2低速用EGRバルブ140を同時に作動させて制御する場合や、どちらか一方を全開とし他方の開度を制御するような場合などが考えられるが、EGR率制御と、内燃機関1の回転速度に応じたEGR通路の切り換えが可能であれば、どちらの方式を採用しても良いものである。
【0077】
なお、EGR通路の固有振動数は、EGR通路の管長と、接続されるレゾネータの容積(長さ)と、を切り換えることによって、管内脈動と同調させる方法について示したが、低速域と高速域に、それぞれ、EGR通路の固有振動数と、EGRガスの管内脈動と、が同調する構造であれば、どちらか一方の回転速度域のみレゾネータを接続するといった方法とすることもできる。
【0078】
その場合には、あらかじめ一方のEGR通路の長さを考慮し、管の固有振動数を高速域或いは低速域の管内脈動と同調させるようにする。そして、管内脈動と同調しない方のEGR通路については、EGR通路を使う回転速度域においてレゾネータを接続するようにして、管の固有振動数を変化させて管内脈動と同調させるようにすることができる。
【0079】
すなわち、実施例3によっても、内燃機関1の回転速度域に応じて、EGR通路を切り換えると共に、EGR通路に配設されるバルブの開閉を制御することにより、広い回転速度域に亘って共鳴効果を利用して、高いEGR率を達成することができる。
【0080】
そして、実施例3に係るEGR装置300によれば、新気の空気量を維持しながら高EGR率化を図ることができるため、排出黒煙濃度の増加を抑制することができると共に、吸気側の過給圧(ブースト圧)を上げる必要や排気側のエキマニ圧力を上げる必要がないため、内燃機関のポンピングロスを小さく維持することでき、以って燃費も所定に維持することができる。
【0081】
すなわち、実施例3に係るEGR装置によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、ポンピングロス等を増大させずに、高いEGR率での運転を実現することができ、以って排出黒煙濃度(パティキュレート)の増加を抑制しながらNOx排出量を効果的に低減することができるEGR装置を提供することができる。
【0082】
また、実施例3では、EGR通路は、低速用EGR通路103、高速用EGR通路102の二股に分岐させたが、これに限定されるものではなく、低速用EGR通路、中速用EGR通路、高速用EGR通路などの複数の通路を設けることで、同調回転速度を細分化し、よりきめ細かなEGR制御を行わせることもできる。
【実施例4】
【0083】
実施例4に係るEGR装置400は、実施例1に係るEGR装置100に対して、構成の簡略化を図り低コスト化を促進した場合の他の構成例である。
【0084】
実施例4に係るEGR装置400は、
図8、
図9に示すように、実施例2などと同様、実施例1のEGR装置100に対してバルブの数を低減して簡略化している。具体的には、実施例1のEGR装置100に対して、低速用EGR通路103に介装される第1EGR通路開閉バルブ150、第2EGR通路開閉バルブ160が省略されて構成されている。
【0085】
すなわち、
図8、
図9に示すように、高速用EGRバルブ120は高速用EGR通路102の入口部付近に配設され、第1低速用EGRバルブ130は低速用EGR通路103の入口側に配設され、第2低速用EGRバルブ140は低速用EGR通路103の出口側に配設されている。
【0086】
<内燃機関1の回転速度が高速域である場合>
実施例4において、高速域の場合には、
図9に示すように、高速用EGR通路102へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、高速用EGRバルブ120を目標EGR率に応じた開度に制御する一方で、低速用EGR通路103へのEGRガスの流れ込みを規制するために、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140を閉じる。
【0087】
これにより、EGRガスは高速用EGR通路102を通過するため、管長は短くなるため固有振動数が上昇する。また、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140は閉じているため、高速用EGR通路102の固有振動数に影響しないが、吸気通路2側の第2低速用EGRバルブ140の位置によって、低速域に接続されるレゾネータよりも短いレゾネータとして吸気通路2に接続され、高速域では吸気通路2の固有振動数を上昇させる。
【0088】
すなわち、実施例4では、吸気通路2及びEGR通路の固有振動数を上昇させ、高速域における管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができるようになっている。
【0089】
EGR率については、高速用EGRバルブ120の開度を制御することで目標EGR率に制御することができる。
【0090】
<内燃機関1の回転速度が低速域である場合>
低速域の場合には、
図8に示すように、高速用EGRバルブ120を閉弁すると共に、低速用EGR通路103へEGRクーラ110を通過したEGRガスが流れ込むように、第1低速用EGRバルブ130及び第2低速用EGRバルブ140を開く。
【0091】
EGRガスは管長の長い低速用EGR通路103を通過するので管の固有振動数は低下する。また、高速用EGR通路102は、高速用EGRバルブ120が閉弁されているため、低速用EGR通路103のレゾネータとして機能することはないが、吸気通路2のレゾネータとして機能するため、その管長をあらかじめ吸気通路2の固有振動数を所定に低下させることが可能なレゾネータ長さに設定し、接続される吸気通路2の固有振動数を低下させるようになっている。
【0092】
低速域では、吸気通路2及びEGR通路の固有振動数を低下させ、低速域における管内脈動と同調させて共鳴効果を得ることができるようになっている。
【0093】
なお、低速域でのEGR率制御については、第1低速用EGRバルブ130、第2低速用EGRバルブ140の少なくとも一方の開度を制御することで目標EGR率に制御することができる。例えば、2つの第1低速用EGRバルブ130及び第2低速用EGRバルブ140を同時に作動させて制御する場合や、どちらか一方を全開とし他方の開度を制御するような場合などが考えられるが、EGR率制御と、内燃機関1の回転速度に応じたEGR通路の切り換えが可能であれば、どちらの方式を採用しても良いものである。
【0094】
なお、吸気通路2の固有振動数は、接続されるレゾネータの容積(長さ)を切り換えることによって、管内脈動と同調させる方法について示したが、低速域と高速域に、それぞれ、吸気通路2の固有振動数と管内脈動とが同調する構造であれば、どちらか一方の回転速度域のみレゾネータを接続するといった方法とすることもできる。
【0095】
その場合には、あらかじめ吸気通路2の長さを考慮し、管の固有振動数を高速域或いは低速域の管内脈動と同調させるようにする。そして、管内脈動と同調しない回転速度域においてレゾネータを接続するようにして、管の固有振動数を変化させて管内脈動と同調させるようにすることができる。
【0096】
すなわち、実施例4によっても、内燃機関1の回転速度域に応じて、EGR通路を切り換えると共に、吸気通路2に接続されるレゾネータ容積(長さ)を切り換えるように、EGR通路に配設されるバルブの開閉を制御することにより、広い回転速度域に亘って共鳴効果を利用して、排出黒煙濃度を抑制しつつ高いEGR率を達成することができる。
【0097】
そして、実施例4に係るEGR装置300によれば、新気の空気量を維持しながら高EGR率化を図ることができるため、黒煙濃度の増加を抑制することができると共に、吸気側の過給圧(ブースト圧)を上げる必要や排気側のエキマニ圧力を上げる必要がないため、内燃機関のポンピングロスを小さく維持することでき、以って燃費も所定に維持することができる。
【0098】
すなわち、実施例4に係るEGR装置によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、ポンピングロス等を増大させずに、高いEGR率での運転を実現することができ、以って排出黒煙濃度(パティキュレート)の増加を抑制しながらNOx排出量を効果的に低減することができるEGR装置を提供することができる。
【0099】
また、実施例4では、EGR通路は、低速用EGR通路103、高速用EGR通路102の二股に分岐させたが、これに限定されるものではなく、低速用EGR通路、中速用EGR通路、高速用EGR通路などの複数の通路を設けることで、同調回転速度を細分化し、よりきめ細かなEGR制御を行わせることもできる。
【0100】
ここで、
図10に、本発明の実施例1において例示したような構成のEGR装置において、EGR通路長(管長)を変更した場合おけるエンジン回転速度に対する容積効率(ηv)のピーク(同調点)等の変化の様子を示す実験データの一例を示す。EGR管長としては、ベース長と、ベース長に対して120%に延長したものと、ベース長に対して80%に短縮したものと、を比較して示している。
【0101】
図10から、管長が短くなるに従って、エンジン回転速度に対する容積効率(ηv)のピーク(同調点)が高速側に移動していることがわかる。従って、運転状態に応じて、管長を切り換えることで、容積効率(ηv)延いては掃気効率を最適化することができることがわかる。
【0102】
また、
図11に、本発明の実施例1において例示したような構成のEGR装置において、EGR通路(102或いは103)に接続されるレゾネータ長さ(容積)を変更した場合おけるエンジン回転速度に対する容積効率(ηv)のピーク(同調点)等の変化の様子を示す実験データの一例を示す。レゾネータ長さとしては、ベース長と、ベース長に対して150%に延長したものと、ベース長に対して75%に短縮したものと、を比較して例示している。
【0103】
図11から、レゾネータ長さが短くなるに従って、エンジン回転速度に対する容積効率(ηv)のピーク(同調点)が高速側に移動していることがわかる。従って、運転状態に応じて、レゾネータ長さ(容積)を切り換えることで、容積効率(ηv)延いては掃気効率を最適化することができることがわかる。
【0104】
また、
図12に、本発明の実施例1において例示したような構成のEGR装置において、吸気管長(インタークーラー出口から吸気マニホールド入口までの長さ)を変更した場合おけるエンジン回転速度に対する容積効率(ηv)のピーク(同調点)等の変化の様子を示す実験データの一例を示す。吸気管長さとしては、ベース長と、ベース長に対して127%に延長したものと、ベース長に対して60%に短縮したものと、を比較して例示している。
【0105】
図12から、吸気管長が短くなるに従って、エンジン回転速度に対する容積効率(ηv)のピーク(同調点)が高速側に移動していることがわかる。従って、運転状態に応じて、レゾネータ長さ(容積)を切り換えることで、容積効率(ηv)延いては掃気効率を最適化することができることがわかる。
【0106】
ところで、上記各実施例では、EGR装置(システム)100〜400(HPL−EGR:High Pressure Loop−EGR)を備えて構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、EGR装置(システム)として低圧EGR装置(LPL−EGR:Low Pressure Loop−EGR)を備えた場合にも適用できるものである。
【0107】
上記各実施例では、内燃機関1の回転速度に応じて、EGR通路を切り換えたり、EGRバルブの開閉状態を切り換えることとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内燃機関1の負荷や温度(水温など)など内燃機関1の運転状態に応じて、EGR通路を切り換えたり、EGRバルブの開閉状態を切り換える構成とすることもできる。
【0108】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは勿論である。