(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光源等からの光ビームを用いて被測定物体の表面形態や内部形態を表す画像を形成するOCTが注目を集めている。OCTは、X線CTのような人体に対する侵襲性を持たないことから、特に医療分野や生物学分野における応用の展開が期待されている。たとえば眼科分野においては、眼底や角膜等の画像を形成する装置が実用化されている。
【0003】
特許文献1にはOCTを適用した装置が開示されている。この装置は、測定腕が回転式転向鏡(ガルバノミラー)により物体を走査し、参照腕に参照ミラーが設置されており、その出口に計測腕及び参照腕からの光束の干渉光の強度を分光器で分析する干渉器が設けられている。更に、参照腕は、参照光光束位相を不連続な値で段階的に変えるように構成されている。
【0004】
特許文献1の装置は、いわゆる「フーリエドメインOCT(Fourier Domain OCT)」の手法を用いるものである。すなわち、被測定物体に対して低コヒーレンス光のビームを照射し、その反射光と参照光とを重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル強度分布を取得してフーリエ変換を施すことにより被測定物体の深度方向(z方向)の形態を画像化するものである。なお、この手法は、特にスペクトラルドメイン(Spectral Domain)とも呼ばれる。
【0005】
更に、特許文献1に記載の装置は、光ビーム(信号光)を走査するガルバノミラーを備え、それにより被測定物体の所望の測定対象領域の画像を形成するようになっている。この装置は、z方向に直交する1方向(x方向)にのみ光ビームを走査するように構成されている。この装置により形成される画像は、光ビームの走査方向(x方向)に沿った深度方向(z方向)の2次元断層像となる。
【0006】
特許文献2には、信号光を水平方向(x方向)及び垂直方向(y方向)に走査(スキャン)することにより水平方向の2次元断層像を複数形成し、これら複数の断層像に基づいて測定範囲の3次元の断層情報を取得して画像化する技術が開示されている。この3次元画像化としては、たとえば、複数の断層像を垂直方向に並べて表示させる方法や(スタックデータなどと呼ばれる)、スタックデータに基づくボリュームデータ(ボクセルデータ)にレンダリング処理を施して3次元画像を形成する方法などがある。
【0007】
特許文献3、4には、他のタイプのOCT装置が開示されている。特許文献3には、被測定物体に照射される光の波長を走査(波長掃引)し、各波長の光の反射光と参照光とを重ね合わせて得られる干渉光を検出してスペクトル強度分布を取得し、それに対してフーリエ変換を施すことにより被測定物体の形態を画像化するOCT装置が記載されている。このようなOCT装置は、スウェプトソース(Swept Source)タイプなどと呼ばれる。スウェプトソースタイプはフーリエドメインタイプの一種である。
【0008】
また、特許文献4には、所定のビーム径を有する光を被測定物体に照射し、その反射光と参照光とを重ね合わせて得られる干渉光の成分を解析することにより、光の進行方向に直交する断面における被測定物体の画像を形成するOCT装置が記載されている。このようなOCT装置は、フルフィールド(full−field)タイプ、或いはインファス(en−face)タイプなどと呼ばれる。
【0009】
特許文献5には、OCTを眼科分野に適用した構成が開示されている。なお、OCTが応用される以前には、被検眼を観察するための装置として眼底カメラやスリットランプなどが使用されていた(たとえば特許文献6、特許文献7を参照)。眼底カメラは被検眼に照明光を照射し、その眼底反射光を受光することで眼底を撮影する装置である。スリットランプは、スリット光を用いて角膜の光切片を切り取ることにより角膜の断面の画像を取得する装置である。
【0010】
OCTを用いた装置は、高精細の画像を取得できる点、更には断層像や3次元画像を取得できる点などにおいて、眼底カメラ等に対して優位性を持つ。
【0011】
このように、OCTを用いた装置は被検眼の様々な部位の観察に適用可能であり、また高精細な画像を取得できることから、様々な眼科疾患の診断への応用がなされてきている。
【0012】
フーリエドメインOCTのように被測定物体をスキャンするタイプのOCTにおいて、スキャン時間の短縮、つまり計測時間の短縮が望まれている。特に眼科用OCTのように被測定物体が運動を伴う場合には、計測中に被測定物体が動いてしまうと、画像の精度や確度が低下するので、スキャン時間の短縮は重要な課題の一つとされている。スキャン時間の短縮を目的とする技術としては、たとえば特許文献8、9が知られている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明に係る光画像計測装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。この発明に係る光画像計測装置は、OCTを用いて被測定物体の断層像や3次元画像を形成する。この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0020】
以下の実施形態では、被測定物体は被検眼(眼底)とし、フーリエドメインタイプのOCTを適用してOCT計測を行う装置について説明する。特に、実施形態に係る装置は、スペクトラルドメインOCTの手法を用いるものである。なお、スペクトラルドメイン以外のタイプ、たとえばスウェプトソースOCTの手法を用いる光画像計測装置に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。
【0021】
〈第1の実施形態〉
この実施形態に係る光画像計測装置の光学系の構成の一例を
図1に示す。光画像計測装置1の光源2により出力された光は、レンズ3により屈折されてハーフミラー4に到達する。ハーフミラー4を透過した光は、被検眼Eに照射される信号光となる。一方、ハーフミラー4により反射した光は参照光となる。なお、スペクトラルドメインOCTでは、光源2として、広帯域の低コヒーレンス光源が用いられる。スウェプトソースOCTでは、光源2として、広帯域の波長掃引光源が用いられる。
【0022】
まず、信号光及びその光路について説明する。信号光の光路(信号光路)Aには、ガルバノミラー11と光学素子12が設けられている。ガルバノミラー11は、信号光を水平方向(x方向)に走査する。つまり、ガルバノミラー11は、信号光の進行方向をx方向において変化させる。
【0023】
ガルバノミラー11を経由した信号光は、光学素子12に入射する。光学素子12は、信号光路Aを、異なる光路長を有する複数の信号光路に分割する。この実施形態では、光学素子12は、信号光路Aを2つの信号光路A1、A2に分割する。
【0024】
光学素子12の構成の一例を
図2に示す。光学素子12は、正立プリズム12Aにおける最初の反射面12aにプリズム12Bを接続したものである。正立プリズム12Aは、一般的には倒立像を正立像に変換する光学素子である。この実施形態の光学素子12は、このような正立プリズム12Aに入射した信号光が最初に反射される面(反射面12a)に、プリズム12a(の傾斜面)を貼り付けたものとして構成される。
【0025】
それにより、入射した信号光は、この反射面12a(貼り付け面)において二分される。反射面12aを透過した成分は、入射した信号光の進行方向D
inと同じ進行方向D
out1を持つ光(第1の信号光)として光学素子12から出射する。一方、反射面12aにて反射された成分は、入射した信号光の進行方向D
inと比較し、(水平方向つまりx方向において)光軸に対して対称な進行方向D
out2を持つ光(第2の信号光)として光学素子12から出射する。したがって、光学素子12から出射する第1の信号光の進行方向D
out1と、第2の信号光の進行方向D
out2は、光軸に対して対象となる。
【0026】
光学素子12から出射した第1の信号光は、第1の信号光路A1に設けられたリレーレンズ13、14を経由してハーフミラー18に到達する。一方、光学素子12から出射した第2の信号光は、第2の信号光路A2に設けられたリレーレンズ15、16及び反射ミラー17を経由してハーフミラー18に到達する。
【0027】
ハーフミラー18は、第1の信号光と第2の信号光とを合成する。つまり、ハーフミラー18は、第1及び第2の信号光路A1及びA2を合成して信号光路A3を形成する。ハーフミラー18を透過した第1の信号光と、ハーフミラー18により反射された第2の信号光は、信号光路A3に設けられたガルバノミラー19により垂直方向(y方向)に走査される。ガルバノミラー19により偏向された信号光は、合焦レンズ20及び対物レンズ21を介して被検眼Eに入射して眼底Efに照射される。なお、合焦レンズ20は、信号光路A3(の光軸)に沿って移動可能とされており、眼底Efに対する光学系のフォーカスに用いられる。
【0028】
眼底Efに照射された信号光は、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる信号光の後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してハーフミラー4に導かれる。
【0029】
次に、参照光及びその光路について説明する。参照光の光路(参照光路)Bには、ハーフミラー31が設けられている。ハーフミラー31は、参照光路Bを第1の参照光路B1と第2の参照光路B2とに分割する。ハーフミラー31により反射された成分は第1の参照光路B1に導かれ、ハーフミラー31を透過した成分は第2の参照光路B2に導かれる。
【0030】
第1の参照光路B1に導かれた第1の参照光は、コリメータレンズ32により参照ミラー33の反射面に結像される。参照ミラー33に反射された第1の参照光は、同じ経路を逆向きに進行してハーフミラー4に導かれる。コリメータレンズ32及び参照ミラー33は、第1の参照光路B1の光軸に沿って移動可能とされている。ハーフミラー4から第1の信号光路A1を経由して眼底Efに至る光学的距離と、ハーフミラー4から第1の参照光路B1の参照ミラー33に至る光学的距離とがほぼ等しくなるように、参照ミラー33の位置が調整される。
【0031】
第2の参照光路B2には、反射ミラー34と、コリメータレンズ35と、参照ミラー36とが設けられている。第2の参照光路B2に導かれた第2の参照光は、反射ミラー34により反射された後、コリメータレンズ35により参照ミラー36の反射面に結像される。参照ミラー36に反射された第2の参照光は、同じ経路を逆向きに進行してハーフミラー4に導かれる。コリメータレンズ35及び参照ミラー36は、第2の参照光路B2の光軸に沿って移動可能とされている。ハーフミラー4から第2の信号光路A2を経由して眼底Efに至る光学的距離と、ハーフミラー4から第2の参照光路B2の参照ミラー36に至る光学的距離とがほぼ等しくなるように、参照ミラー36の位置が調整される。
【0032】
以上のように、ハーフミラー4には、第1の信号光路A1を経由した信号光の後方散乱光(第1の戻り光)と、第2の信号光路A2を経由した信号光の後方散乱光(第2の戻り光)と、第1の参照光路B1を経由した第1の参照光と、第2の参照光路B2を経由した第2の参照光とが戻ってくる。OCTに用いられる低コヒーレンス干渉光学系の原理により、第1の戻り光と第2の参照光とが干渉し、第2の戻り光と第2の参照光とが干渉する。なお、第1の信号光路A1と第2の信号光路A2との光路長の差は、光源1からの光のコヒーレント長よりも十分大きいものとする。
【0033】
ハーフミラー4により生成された干渉光は、干渉光路Cを導かれる。干渉光路Cにはハーフミラー41が設けられている。ハーフミラー4により反射された第1の干渉光は、第1の干渉光路C1に入射し、分光器42により分光(スペクトル分解)され、CCDイメージセンサ43の受光面に投影される。CCDイメージセンサ43は、たとえばラインセンサであり、分光された第1の干渉光の各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ43は、この電荷を蓄積して検出信号を生成し、これを出力する。なお、第1の干渉光は、第1の戻り光と第1の参照光との干渉により得られた光である。
【0034】
一方、ハーフミラー4を透過した第2の干渉光は、第2の干渉光路C2に入射し、反射ミラー44により反射され、分光器45により分光され、CCDイメージセンサ46の受光面に投影される。CCDイメージセンサ46は、たとえばラインセンサであり、分光された第2の干渉光の各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ46は、この電荷を蓄積して検出信号を生成し、これを出力する。なお、第2の干渉光は、第2の戻り光と第2の参照光との干渉により得られた光である。
【0035】
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。
【0036】
光画像計測装置1には、従来の眼科装置(眼底カメラ等)と同様に、アライメント光学系、フォーカス光学系、固視光学系が設けられている(いずれも図示せず)。アライメント光学系は、被検眼Eに対する装置光学系のxy方向における位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を被検眼Eに投影する。フォーカス光学系は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を眼底Efに投影する。固視光学系は、被検眼Eを所定方向に固視させるための固視標を眼底Efに投影する。
【0037】
光画像計測装置1の制御系の構成について説明する。制御系の構成の一例を
図3に示す。制御系は、制御部100を中心に構成される。制御部100は、主制御部101と記憶部102を有する。主制御部101は、光画像計測装置1の各部の制御を行う。記憶部102は、各種のデータを記憶する。記憶部102に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。また、記憶部102には、制御用のコンピュータプログラムや、演算処理用のコンピュータプログラムが予め記憶されている。主制御部101は、これらコンピュータプログラムに基づいて各種の制御や演算を実行する。
【0038】
主制御部101は、光源2の動作制御を行う。主制御部101は、ガルバノミラー11、19を独立に制御することで、xy方向において信号光を走査する。主制御部101は、合焦駆動部20Aを制御することで、合焦レンズ20を光軸に沿って移動させる。主制御部101は、参照駆動部33A、36Aを制御することで、コリメータレンズ32及び参照ミラー33を一体的に光軸に沿って移動させ、かつ、コリメータレンズ35及び参照ミラー36を一体的に光軸に沿って移動させる。主制御部101は、CCDイメージセンサ43、46の動作(感度、蓄積時間等)を制御する。
【0039】
各CCDイメージセンサ43、46は、干渉光を検出して電気信号(検出信号)を生成し、これを画像形成部110に送る。画像形成部110は、各CCDイメージセンサ43、46からの検出信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データをそれぞれ形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部110は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。画像形成部110は「形成部」の一例として機能する。画像形成部110は、たとえば、画像形成処理に特化した回路基板を含んで構成される。
【0040】
画像処理部120は、画像形成部110により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部120は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。画像処理部120は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Efの3次元画像の画像データ(ボリュームデータ)を形成する。更に、画像処理部120は、このボリュームデータに対してレンダリング処理を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。
なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。
【0041】
ユーザインターフェイス130には、表示部131と操作部132が含まれる。表示部131は、OCT画像や各種データを表示する。操作部132は、光画像計測装置1の操作や、これに対する情報入力に用いられる。操作部132には、光画像計測装置1の筐体や外部装置に設けられたボタンやキーが含まれる。表示部131と操作部132は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルモニタのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部132は、このタッチパネルディスプレイとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部132に対する操作内容は、電気信号として制御部132に入力される。また、表示部131に表示されたグラフィックユーザインターフェイス(GUI)と、操作部132とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
【0042】
光画像計測装置1は、次の構成要素を含む:
光源2からの光を信号光と参照光とに分割するハーフミラー4(第1の分割部);
この信号光の光路Aを、異なる光路長を有する複数(2つ)の信号光路A1及びA2に分割する光学素子12(第2の分割部);
複数(2つ)の信号光路A1及びA2を経由した複数(2つ)の信号光を合成するハーフミラー18(合成部);
参照光の光路Bを、複数(2つ)の信号光路A1及びA2に対応する光路長を有する複数(2つ)の参照光路B1及びB2に分割するハーフミラー31(第3の分割部);
ハーフミラー18により合成された複数(2つ)の信号光の眼底Efからの戻り光と、複数(2つ)の参照光路B1及びB2を経由した複数(2つ)の参照光とを重畳させて干渉光を生成するハーフミラー4(重畳部);
干渉光の光路Cを複数(2つ)の干渉光路C1及びC2に分割する第4の分割部と、
複数(2つ)の干渉光路C1及びC2のそれぞれに設けられ、当該干渉光路C1及びC2を導かれた干渉光を検出する複数(2つ)のCCDイメージセンサ43及び46(複数の検出部);
信号光を走査するガルバノミラー11及び19(走査部);
走査された信号光の戻り光を参照光に重畳させて得られた干渉光の複数(2つ)のCCDイメージセンサ43及び46による検出結果に基づいて、眼底Efの複数(2つ)の断層像を形成する画像形成部110(形成部)。
【0043】
ここで、走査部は、ハーフミラー4により生成された信号光を所定方向(x方向)に走査するガルバノミラー11(第1の走査部)と、ハーフミラー18により合成された信号光を所定方向(x方向)に直交する方向(y方向)に走査するガルバノミラー19(第2の走査部)とを含んでいる。
【0044】
このような光画像計測装置1によれば、光学素子12の特性、つまり光学素子12から出射する2つの信号光の進行方向が光軸に対して対称になるという特性と、光学素子12の前段側及び後段側にそれぞれガルバノミラー11及び19が設けられていることにより、同一の走査線に対して信号光を互いに逆方向に同時に走査することができる。
【0045】
具体例として、
図4に示すように、第1の信号光路A1を経由する第1の信号光を符号S1に示す態様で走査すると同時に、第2の信号光路A2を経由する第2の信号光を符号S2に示す態様で走査することができる。なお、このスキャン態様は、y方向走査用のガルバノミラー19を固定した状態で、x方向走査用のガルバノミラー11を+x方向に向けて走査することにより実現される。
【0046】
このように同一の走査線上を同時に逆方向にスキャン可能とすることにより、同一の走査線を反復的に走査する場合の計測時間を短縮することができる。なお、同一の走査線を反復的に走査することはOCT計測において頻繁に行われる。具体的には、当該走査線を複数回走査し、それにより得られた複数のデータに基づいて1枚の断層像を形成することで画質の向上が図られている。
【0047】
また、たとえば被検眼Eのように動きを伴う被測定物体を計測する場合において、同一の走査線を複数回スキャンする場合、被測定物体の動きにより複数回の走査の位置がずれるおそれがある。しかし、この実施形態に係る光画像計測装置1によれば走査に掛かる時間が半分になるので、被検体の動きの影響を受ける可能性が低くなる。
【0048】
なお、この実施形態では信号光、参照光及び干渉光をそれぞれ2つに分割しているが、3つ以上に分割するように構成することも可能である。その場合、計測時間や走査時間を更に短縮することが可能である。ただし、この分割数の増大は装置構成の複雑化を招くので、装置構成と計測時間との双方を考慮して分割数を決定することが望ましい。また、この実施形態では、ハーフミラー4が第1の分割部と重畳部を兼用しているが、適用する干渉光学系の構成に応じて分割部と重畳部は別々の部材であってもよい。
【0049】
〈第2の実施形態〉
上記実施形態では、同一の走査線を同時に逆方向にスキャンする構成について説明したが、この実施形態では、異なる走査線を同時にスキャンする構成について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成部分については説明を割愛することがある。
【0050】
この実施形態に係る光画像計測装置の構成例を
図5に示す。光画像計測装置200は、第1の実施形態の光画像計測装置1とほぼ同様の構成を有する。両者の主たる相異は、第1の実施形態のガルバノミラー11及び19の代わりに、ガルバノスキャナ201が設けられている点である。ガルバノスキャナ201は、ハーフミラー4により生成された信号光をxy平面上の任意の方向に走査する。ガルバノスキャナ201は、たとえば、信号光をx方向に走査するガルバノミラーと、y方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。ガルバノスキャナ201は、「第1の走査部」及び「第2の走査部」を兼用している。光画像計測装置200の制御系の構成も第1の実施形態とほぼ同様であり、その一例を
図6に示す。
【0051】
このような光画像計測装置200によれば、光学素子12の特性、つまり光学素子12から出射する2つの信号光の進行方向が光軸に対して対称になるという特性と、光学素子12の前段側に信号光を2次元的に走査するガルバノスキャナ201が設けられていることにより、異なる2つの走査線を同時に走査することができる。
【0052】
具体例として、
図7に示すように、第1の信号光路A1を経由する第1の信号光を符号S11に示す態様で走査すると同時に、第2の信号光路A2を経由する第2の信号光を符号S21に示す態様で走査することができる。更に、第1の信号光路A1を経由する第1の信号光を符号S12に示す態様で走査すると同時に、第2の信号光路A2を経由する第2の信号光を符号S22に示す態様で走査することができる。つまり、この実施形態では、xy平面の原点(光軸)を中心として点対称な位置に同時に2つの信号光を照射することができる。なお、
図7に示すスキャン態様は、y方向の走査を固定した状態でx方向の走査を行い、続いてx方向の走査とy方向の走査とを同時に行なって走査線の切り替えを行い、更にy方向の走査を固定した状態でx方向の走査を行うことにより実現される。
【0053】
このように複数の走査線上を同時にスキャン可能とすることにより、計測時間を短縮することができる。また、たとえば被検眼Eのように動きを伴う被測定物体の広い範囲を計測する場合において(たとえば3次元画像を形成する場合などにおいて)、当該範囲の走査に掛かる時間が半分になるので、被検体の動きの影響を受ける可能性が低くなる。また、走査対象領域の半分をスキャンするようにガルバノスキャナの振れ幅を制御すれば当該領域全体をスキャンすることが可能であるから、振れ幅の小さな低コストのガルバノミラーを用いることが可能である。
【0054】
なお、この実施形態に係る光画像計測装置200においても、信号光、参照光及び干渉光をそれぞれ3つ以上に分割するように構成することが可能である。また、この実施形態では、ハーフミラー4が第1の分割部と重畳部を兼用しているが、適用する干渉光学系の構成に応じて分割部と重畳部は別々の部材であってもよい。
【0055】
〈第3の実施形態〉
この実施形態では、被測定物体の偏光特性を計測可能な光画像計測装置について説明する。なお、上記実施形態と同様の構成部分については説明を割愛することがある。
【0056】
この実施形態に係る光画像計測装置の構成例を
図8に示す。光画像計測装置300は、第1の実施形態の光画像計測装置1とほぼ同様の構成を有する。両者の主たる相異は次の点である:
第1の実施形態の光学素子12の代わりに、最初の反射面(信号光を分割する面)301a(
図2の反射面12aに対応する)が偏光ビームスプリッタとしての機能を持つ光学素子301が設けられている;
第1の信号光路A1及び第2の信号光路A2に、それぞれ2分の1波長板(半波長板、λ/2板)302及び303が設けられている;
第1の実施形態のハーフミラー18の代わりに、偏光ビームスプリッタ304が設けられている。
【0057】
ハーフミラー4により生成された信号光は、光学素子301の反射面301aによりP偏光成分とS偏光成分とに分割される。P偏光成分は、反射面301aを透過する信号光の成分であり、第1の信号光路A1に導かれる。S偏光成分は、反射面301aにより反射される信号光の成分であり、第2の信号光路A2に導かれる。
【0058】
各2分の1波長板302及び303は、光軸を中心として回転可能とされている。2分の1波長板302は、第1の信号光路A1に入射したP偏光成分の偏向方向を、その回転角度に応じた方向に変化させる。2分の1波長板302の回転角度は、たとえば、偏光ビームスプリッタ304に到達する光がP偏光になるように決定される。
【0059】
また、2分の1波長板303は、第2の信号光路A2に入射したS偏光成分の偏向方向を、その回転角度に応じた方向に変化させる。2分の1波長板303の回転角度は、たとえば、偏光ビームスプリッタ304に到達する光がS偏光になるように決定される。
【0060】
偏光ビームスプリッタ304は、第1の信号光路A1を経由したP偏光の光を透過させ、かつ、第2の信号光路A2を経由したS偏光の光を反射する。それにより、これら2つの信号光が合成される。合成された信号光は、ガルバノミラー19、合焦レンズ20及び対物レンズ21を介して眼底Efに照射される。
【0061】
眼底Efによる信号光の後方散乱光は、往路と同様の経路を介してハーフミラー4に到達し、参照光に重畳される。それにより生成された干渉光は、第1の実施形態と同様に、分光器42及び45により分光され、CCDイメージセンサ43及び46により検出される。
【0062】
光画像計測装置300の制御系の構成の一例を
図9に示す。光画像計測装置300は、第1の実施形態の構成(
図3を参照)に加え、波長板駆動部302A及び303Aを有する。波長板駆動部302A及び303Aは、それぞれ2分の1波長板302及び303を独立に回転させる。
【0063】
画像形成部110は、CCDイメージセンサ43及び46からの電気信号を受けて、各CCDイメージセンサ43、46からの電気信号に基づく画像をそれぞれ生成する。この画像は、信号光が照射された領域における眼底Efの偏光特性を表す情報を含む。このようなOCT計測は偏光OCTなどと呼ばれ、たとえば、複屈折性を有する被測定物体からの後方散乱光の円偏光量を検出して、被測定物体における複屈折分布を取得するために用いられる。
【0064】
このような光画像計測装置300によれば、被測定物体の偏光特性の計測に掛かる時間を短縮することができる。
【0065】
なお、この実施形態では第1の実施形態に基づく構成について説明したが、第2の実施形態に基づく構成を適用することも可能である。
【0066】
〈変形例〉
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【0067】
たとえば、上記の実施形態においては、参照光の光路長を変更することにより、信号光路と参照光路との光路長差を変更しているが、この光路長差を変更する手法はこれに限定されるものではない。たとえば、信号光の光路に光路長変更部材(たとえばコーナーキューブ等)を配置することによって、当該光路長差を変更することが可能である。また、被測定物体に対して装置光学系を移動させることにより当該光路長差を変更することもできる。また、特に被測定物体が生体部位でない場合などには、被測定物体を深度方向(z方向)に移動させることにより光路長差を変更することも可能である。
【0068】
上記の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。
【0069】
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。