【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例によって本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例中の評価、測定は次のとおり実施した。
【0024】
(1)引裂強力
JIS L−1096−79−6.15.2シングルタング法により測定した。引裂強力が1.2kg以上を良好:○、1.0kg以上1.2kg未満を可:△、1.0kg未満を不良:×と判定した。
【0025】
(2)マーチンデール耐摩耗試験
JIS L−1096に規定されるマーチンデール法により5000回磨耗させた後の布帛の摩耗度合いを判定した。4.0級以上を良好:○、3.5級以上4.0級未満を可:△、3.5級未満を不良:×と判定した。
【0026】
(3)原糸強度(ST)・伸度(EL)
20℃、65%RHの雰囲気下で引張試験機により、試料長20cm、速度20cm/分の条件で測定したときの、破断時の強度及び伸度である。測定数は5とし、その平均を求めた。
【0027】
(4)複屈折率(Δn)
干渉顕微鏡(カールツァイスイエナ社製インターファコ干渉顕微鏡)を用い、干渉縞法により求めた。浸漬液は所望の屈折率としたものを用いた。得られた干渉縞の写真から、干渉縞の間隔及びそのずれから屈折率を下記式より算出した。
λd/D=(n−N)t
ただし、d:干渉縞のずれ、D:干渉縞の間隔、λ:測定光源波長、n:サンプルの屈折率、N:溶液の屈折率、t:サンプルの線径
サンプルの繊維軸方向に平行方向の屈折率、及び垂直方向の屈折率を求め下記式より算出した。
複屈折率(Δn)=平行方向屈折率−垂直方向屈折率
【0028】
(5)固有粘度
o−クロロフェノール溶液中、1.2g/100mlの濃度、および35℃の温度において測定した。
【0029】
(6)評価布帛の組織
組織:平織、密度:経−70本/2.54cm、緯−70本/2.54cmで得られた生機織物を、ついで常法にて精錬、プリセットした後に液流染色機にて110℃で処理した。
【0030】
(7)製糸性
図1記載の糸導にて8錘取り直延紡糸機1ワインダーにつき、1日あたりの糸切れ回数が2回以下を良好:○とし、3回以上で不良:×と判定した。
【0031】
(8)風合い
(6)項に記載の布帛に対し、熟練者による官能検査を実施した。官能検査において、風合いが優れているものを良好:○、硬すぎると判断したものを不良:×と判定した。
【0032】
[実施例1]
固有粘度0.90のポリエチレンテレフタレートを300℃で溶融し、口金下雰囲気温度を350℃とし、溶融ポリマーを吐出した。吐出された糸条は冷却された後に、紡糸油剤を給油され、表面速度2500m/分、表面温度90℃の第1ホットローラー1、表面速度4000m/分、表面温度100℃の第2ホットローラー2、表面速度4800m/分、表面温度145℃の第3ホットローラー3、表面速度4700m/分のゴデッドローラー4を介した後、捲取張力が15gとなるように捲取速度が制御された捲取機5にて84dtex/72フィラメントのポリエステルフィラメントを巻き取った。
この時のトータル延伸倍率は1.88倍(ゴデッドローラー4の速度/ホットローラー1の速度)、オーバーフィード率は2%(ゴデッドローラー4の速度/ホットローラー3の速度)とした。製糸プロセスの概略図を
図1に示す。
得られたポリエステルの強度:5.7cN/dtex、伸度:22%、ηF:0.80、△n:0.170であり、製糸性も良好であった。得られたポリエステルフィラメントを用いた布帛での耐摩耗性評価および布帛引裂強力は良好であり、資材用布帛に適したものが得られた。
【0033】
[実施例2]
得られる原糸を表1の通り84dtex/96フィラメントと変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステルフィラメントを得た。製糸性は良好であり、得られたポリエステルフィラメントを用いた布帛での耐摩耗性評価および布帛引裂強力も問題なく、良好な資材用布帛が得られた。
【0034】
[比較例1、2]
用いる原料ポリマーの固有粘度を変更することで得られた原糸のηFを表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法にて84dtex/72フィラメントの原糸を得た。
比較例1ではηFが低いため、得られた原糸を用いた布帛の耐摩耗性および引裂強力が不十分であった。また、比較例2ではηFが高すぎるためポリマー吐出部での単糸切れが起こり、製糸性が非常に悪かった。
【0035】
[比較例3、4]
延伸倍率を変更することで得られた原糸の強伸度を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法にて84dtex/72フィラメントの原糸を得た。
比較例3では原糸の強度が低く、得られた原糸を用いた布帛の耐摩耗性および引裂強力が不十分であった。また、比較例4では延伸倍率が高く、原糸の伸度が低いため延伸での糸切れが多かった。
【0036】
[比較例5、6]
原糸繊度およびフィラメントカウントを表1の通り変更し、実施例1と同様の方法にてフィラメント原糸を得た。
比較例5では原糸のDPFが低すぎるため製糸性が悪く、また得られた原糸を用いた布帛の耐摩耗性および引裂強力が不十分であった。また、比較例6では原糸のDPFが高すぎるため得られた原糸を用いた布帛の風合いが硬かった。
【0037】
[比較例7]
得られた原糸の△nを製糸条件の変更により表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法にて84dtex/72フィラメントの原糸を得た。比較例7では原糸の△nが高いため、耐摩耗性が劣るという結果になった。
【0038】
【表1】