特許第5905718号(P5905718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905718搬送治具、搬送方法、および搬送治具材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905718
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】搬送治具、搬送方法、および搬送治具材料
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20160407BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20160407BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   H05K3/34 509
   H05K3/34 507C
   H05K3/34 505B
   H05K13/02 V
   H05K13/04 Q
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-289257(P2011-289257)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138152(P2013-138152A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】311018404
【氏名又は名称】東新産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝司
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−183424(JP,A)
【文献】 特開平 8− 86993(JP,A)
【文献】 特開2006−245323(JP,A)
【文献】 特開2005−154572(JP,A)
【文献】 特開2000−261193(JP,A)
【文献】 特開2006−332187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を保持し搬送する搬送治具であって、
前記搬送対象物を保持する搬送ボードと、
前記搬送対象物と前記搬送ボードとの間に介在するように、前記搬送ボードの表面の少なくとも一部に貼付される第1接着面および前記搬送対象物が貼付される第2接着面を有するシート状粘着性部材と、を備え、
前記シート状粘着性部材の前記第1接着面は、強粘着性を有し、
前記シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記第1接着面の粘着性よりも相対的に弱い弱粘着性を有し、
前記シート状粘着性部材は、シリコーンゴムからなる基材の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を設けて前記第1接着面が形成され、
前記基材と前記粘着剤層とが互いに直接接している搬送治具。
【請求項2】
請求項に記載の搬送治具において、
前記シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記シリコーンゴムからなる基材の他面である搬送治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送治具において、
前記シート状粘着性部材の厚みが50μm〜1500μmである搬送治具。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の搬送治具において、
前記シリコーンゴムの硬度が50〜70度である搬送治具。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の搬送治具において、
前記第1接着面の対ステンレスで測定した粘着力が、0.8N/10mm以上である搬送治具。
【請求項6】
請求項1乃至いずれかに記載の搬送治具において、
前記搬送対象物は、電子部品または基板である搬送治具。
【請求項7】
請求項1乃至いずれかに記載の搬送治具において、
加熱処理を含む工程中の搬送に用いられる搬送治具。
【請求項8】
請求項1乃至いずれかに記載の搬送治具を用いた搬送方法であって、
前記搬送対象物を、前記搬送治具の前記搬送ボードに貼り付けられた前記シート状粘着性部材の前記第2接着面に貼付する第1貼付工程と、
前記第1貼付工程で貼付された前記搬送対象物を搬送する第1搬送工程と、
前記搬送対象物を前記シート状粘着性部材から外す第1取り外し工程と、
さらに、別の搬送対象物を前記シート状粘着性部材の前記第2接着面に貼付する第2貼付工程と、
前記第2貼付工程で貼付された前記搬送対象物を搬送する第2搬送工程と、
前記搬送対象物を前記シート状粘着性部材から外す第2取り外し工程と、を含む搬送方法。
【請求項9】
請求項に記載の搬送方法において、
前記第1取り外し工程または前記第2取り外し工程の後に、
使用した前記シート状粘着性部材を前記搬送ボードの前記表面から剥がす工程と、
新たなシート状粘着性部材を前記搬送ボードに貼付する工程と、を含み、
前記搬送治具を再生した後、さらに、別の搬送対象物を貼り付け、搬送する搬送方法。
【請求項10】
請求項またはに記載の搬送方法において、
前記第1貼付工程と前記第1取り外し工程の間、または前記第2貼付工程と前記第2取り外し工程の間に、
前記搬送治具に貼付された前記搬送対象物の処理工程を含む搬送方法。
【請求項11】
請求項10に記載の搬送方法において、
前記処理工程は、前記搬送対象物の加熱工程を含む搬送方法。
【請求項12】
搬送対象物を搬送する搬送方法に用いる搬送治具を構成する搬送治具材料であって、
前記搬送対象物を保持する搬送ボードと、
前記搬送ボードに貼付する第1シート状粘着性部材と、
前記搬送ボードに貼付する第2シート状粘着性部材と、を備え、
前記第1シート状粘着性部材および前記第2シート状粘着性部材は、いずれも前記搬送ボードの表面の少なくとも一部に貼付される第1接着面および前記搬送対象物が貼付される第2接着面を有するとともに、前記第1接着面は、強粘着性を有し、前記第2接着面は、前記第1接着面の粘着性よりも相対的に弱い弱粘着性を有し、
さらに、前記第1シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記第2シート状粘着性部材の前記第2接着面の粘着性と異なる強度を有し、
前記第1シート状粘着性部材または前記第2シート状粘着性部材は、シリコーンゴムからなる基材の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を設けて前記第1接着面が形成され、
前記基材と前記粘着剤層とが互いに直接接している搬送治具材料。
【請求項13】
請求項12に記載の搬送治具材料において、
前記第1シート状粘着性部材または前記第2シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記シリコーンゴムからなる基材の他面である搬送治具材料。
【請求項14】
請求項12または13に記載の搬送治具材料において、
前記第1シート状粘着性部材または前記第2シート状粘着性部材の厚みが50μm〜1500μmである搬送治具材料。
【請求項15】
請求項12乃至14いずれかに記載の搬送治具材料において、
前記シリコーンゴムの硬度が50〜70度である搬送治具材料。
【請求項16】
請求項12乃至15いずれかに記載の搬送治具材料において、
前記第1シート状粘着性部材および前記第2シート状粘着性部材の前記シリコーンゴムは、互いに異なる硬度を有する搬送治具材料。
【請求項17】
請求項12乃至16いずれかに記載の搬送治具材料において、
前記第1接着面の対ステンレスで測定した粘着力が、0.8N/10mm以上である搬送治具材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送治具、搬送方法、および搬送治具材料に関し、特に、搬送対象物の加熱処理を含む工程において使用する搬送治具、その搬送治具を用いた搬送方法、およびその搬送治具材料に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線基板へ部品を実装する際に使用する搬送治具の一例が特許文献1および特許文献2に記載されている。各特許文献に記載された装置では、プリント配線基板を剥離可能に貼着する弱粘着性接着剤層や弱粘着性接着剤パターンを治具ベースに形成し、プリント配線基板を保持して部品を実装する。弱粘着性接着剤層や弱粘着性接着層パターンは、シリコーン樹脂などからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3328248号公報
【特許文献2】特許3435157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の技術においては、弱粘着性接着剤層や弱粘着性接着層パターンは、治具ベースにシリコーン樹脂を固着させて形成されている。上記特許文献1において、同じ治具ベースを他のプリント配線基板の実装工程に繰り返し使用できることが記載されている。このように特許文献1に記載の治具では、搬送だけであれば繰り返し使用可能であるかもしれない。しかしながら、加工工程を経ると、粘着性が低下したり、特に、加熱処理を行うと、粘着性接着剤層と治具ベースとの接合部分が剥がれたりして、実質的に繰り返し使用は困難であるという問題点があった。
【0005】
さらに、上記特許文献2記載の技術にあっては、プリント配線基板の実装工程において繰り返し使用できることさえも記載されていない。さらに、半田工程等の加熱工程により、弱粘着性接着剤パターンが溶融することが記載されている。このことからも、特許文献2では、治具を繰り返し利用することは前提になっていない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、繰り返し使用に対する耐久性の高い搬送治具、その搬送治具を用いた搬送方法、およびその搬送治具材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
搬送対象物を保持し搬送する搬送治具であって、
前記搬送対象物を保持する搬送ボードと、
前記搬送対象物と前記搬送ボードとの間に介在するように、前記搬送ボードの表面の少なくとも一部に貼付される第1接着面および前記搬送対象物が貼付される第2接着面を有するシート状粘着性部材と、を備え、
前記シート状粘着性部材の前記第1接着面は、強粘着性を有し、
前記シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記第1接着面の粘着性よりも相対的に弱い弱粘着性を有し、
前記シート状粘着性部材は、シリコーンゴムからなる基材の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を設けて前記第1接着面が形成され
前記基材と前記粘着剤層とが互いに直接接している搬送治具が提供される。
【0008】
上記搬送治具において、前記シート状粘着性部材は、シリコーンゴムからなる基材の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を設けて前記第1接着面が形成されてもよい。
また、上記搬送治具において、前記シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記シリコーンゴムからなる基材の他面であってよい。
【0009】
上記搬送治具において、前記搬送対象物は、電子部品または基板でもよい。
また、上記搬送治具において、加熱処理を含む工程中の搬送に用いてもよい。
【0010】
本発明によれば、
上記搬送治具を用いた搬送方法であって、
搬送対象物を、前記搬送治具の前記搬送ボードに貼り付けられた前記シート状粘着性部材の前記第2接着面に貼付する第1貼付工程と、
前記第1貼付工程で貼付された前記搬送対象物を搬送する第1搬送工程と、
前記搬送対象物を前記シート状粘着性部材から外す第1取り外し工程と、
さらに、別の搬送対象物を前記シート状粘着性部材の前記第2接着面に貼付する第2貼付工程と、
前記第2貼付工程で貼付された前記搬送対象物を搬送する第2搬送工程と、
前記搬送対象物を前記シート状粘着性部材から外す第2取り外し工程と、を含む搬送方法が提供される。
【0011】
上記搬送方法において、前記第1取り外し工程または前記第2取り外し工程の後に、使用した前記シート状粘着性部材を前記搬送ボードの前記表面から剥がす工程と、新たなシート状粘着性部材を前記搬送ボードに貼付する工程と、を含むことができ、前記搬送治具を再生した後、別の搬送対象物を貼り付け、搬送することができる。
【0012】
上記搬送方法において、前記第1貼付工程と前記第1取り外し工程の間、または前記第2貼付工程と前記第2取り外し工程の間に、前記搬送治具に貼付された前記搬送対象物の処理工程を含むことができる。
また、上記搬送方法において、前記処理工程は、前記搬送対象物の加熱工程を含むことができる。
【0013】
本発明によれば、
搬送対象物を搬送する搬送方法に用いる搬送治具を構成する搬送治具材料であって、
前記搬送対象物を保持する搬送ボードと、
前記搬送ボードに貼付する第1シート状粘着性部材と、
前記搬送ボードに貼付する第2シート状粘着性部材と、を備え、
前記第1シート状粘着性部材および前記第2シート状粘着性部材は、いずれも前記搬送ボードの表面の少なくとも一部に貼付される第1接着面および搬送対象物が貼付される第2接着面を有するとともに、前記第1接着面は、強粘着性を有し、前記第2接着面は、前記第1接着面の粘着性よりも相対的に弱い弱粘着性を有し、
さらに、前記第1シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記第2シート状粘着性部材の前記第2接着面の粘着性と異なる強度を有し、
前記第1シート状粘着性部材または前記第2シート状粘着性部材は、シリコーンゴムからなる基材の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を設けて前記第1接着面が形成され
前記基材と前記粘着剤層とが互いに直接接している搬送治具材料が提供される。
【0014】
上記搬送治具材料において、前記第1シート状粘着性部材または前記第2シート状粘着性部材は、シリコーンゴムからなる基材の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を設けて前記第1接着面が形成されてもよい。
【0015】
上記搬送治具材料において、前記第1シート状粘着性部材または前記第2シート状粘着性部材の前記第2接着面は、シリコーンゴムからなる基材の他面であってよい。また、上記搬送治具材料において、前記第1シート状粘着性部材および前記第2シート状粘着性部材のシリコーンゴムは、互いに異なる硬度を有してもよい。
【0016】
以上、本発明の構成について説明したが、本発明は、これに限られず様々な態様を含む。
【0017】
本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0018】
また、本発明の方法には複数の手順を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の手順を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の方法を実施するときには、その複数の手順の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0019】
さらに、本発明の方法の複数の手順は個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある手順の実行中に他の手順が発生すること、ある手順の実行タイミングと他の手順の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、繰り返し使用に対する耐久性の高い搬送治具、その搬送治具を用いた搬送方法、およびその搬送治具材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る搬送治具の断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る搬送治具の平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る搬送治具で使用する粘着性シートの断面図である。
図4】比較例の搬送治具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る搬送治具1の概略を示す断面図である。
本発明の実施の形態に係る搬送治具1は、搬送対象物を保持し搬送する治具である。図1では、搬送対象物は、たとえば、フレキシブルプリント配線基板(Flexible Printed Circuits:FPC10)などの薄板のプリント配線基板を例に示してある。本発明の搬送対象物は、これに限定されるものではない。たとえば、電子部品または基板でもよい。搬送対象物としての基板は、たとえば、回路が形成された基板、銅箔のみが形成された基板、または電子部品実装後の基板でもよい。また、たとえば、半導体素子などの集積回路のパッケージ、半導体集積回路の製造工程で用いるウエハでもよい。なお、本実施形態のFPC10などの薄板のプリント配線基板の場合は、特に搬送ボード3から外しやすい。
【0024】
図1に示すように、搬送治具1は、FPC10を保持する搬送ボード3と、シート状粘着性部材(粘着性シート5)と、を備える。粘着性シート5は、FPC10と搬送ボード3との間に介在するように、搬送ボード3の表面3aの少なくとも一部に貼付される第1接着面5aおよびFPC10が貼付される第2接着面5bを有する。粘着性シート5の第1接着面5aは、強粘着性を有し、粘着性シート5の第2接着面5bは、第1接着面5aの粘着性よりも相対的に弱い弱粘着性を有する。
【0025】
図2は、図1の本発明の実施の形態に係る搬送治具1の平面図である。図1(a)および図1(b)は、それぞれ図2(a)および図2(b)の線X−Xについての断面図である。なお、図1および図2ともに、搬送治具1の搬送ボード3の一部を部分的に図示してある。また、各図において、本発明の本質に関わらない部分の構成については省略してあり、図示されていない。
【0026】
搬送ボード3は、表面3aに粘着性シート5を剥離可能に貼着して、その上に複数のFPC10を保持し、FPC10への部品の実装工程で使用する搬送治具1を構成する。FPC10への部品の実装工程が終了すると、搬送ボード3からFPC10は剥がされる。そして、再び、他のFPC10が載置されて部品の実装工程が行われることとなる。図1(a)および図2(a)では、縦長テープ状の粘着性シート5の上に、FPC10が横長方向に複数保持されている。一方、図1(b)および図2(b)では、縦長テープ状の粘着性シート5の上に、FPC10が縦長方向に保持されている。粘着性シート5の上に載せるFPC10の配置は、縦長方向または横長方向のいずれでもよい。また、FPC10の配置は縦長方向と横長方向が混在してもよい。
【0027】
図2に示すように、粘着性シート5は、たとえば、矩形のFPC10の横長手方向の長さより短く、かつ、FPC10の縦短手方向の長さより長い幅のテープ形状を有する。粘着性シート5が、搬送ボード3の表面3a上に、複数列貼着される。粘着性シート5は、厚さ50μm〜1500μm程度であり、簡単に裁断できる。必要に応じて、様々な形状に裁断することもできる。また、粘着性シート5を搬送ボード3の表面3aのどの位置にどのように貼着するかも、特に限定されない。
【0028】
たとえば、図2(a)に示すように、FPC10より少し小さく、FPC10の端が粘着性シート5よりもはみ出るように、FPC10と粘着性シート5のサイズを決定すると、粘着性シート5からFPC10を剥がしやすくなる。
【0029】
粘着性シート5の形状、サイズ、貼り付け位置などは、搬送ボード3に保持する搬送対象物の大きさ、形状、重さ、素材、搬送ボード3の使用時の設置角度や搬送移動速度、剥がし易さ等を考慮して、適宜決定されるのが望ましい。
【0030】
実装工程において、半田工程などの加熱工程を含む場合には、特に、搬送ボード3は、耐熱性を有するのが好ましい。搬送ボード3は、たとえば、ガラスエポキシ基板からなる。またはガラスやセラミックスでもよい。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態に係る搬送治具1で使用する粘着性シート5の断面図である。
本実施形態の例では、粘着性シート5は、すべてシリコーン系の部材からなるものについて説明する。
従来、粘着性シート5の基材には、シリコーンゴム以外の部材が利用されていたが、その場合、耐熱性がなく、特に、加熱処理工程を含む場合には、繰り返しの使用に耐えられないといった問題点があった。
【0032】
また、粘着性シート5の基材としてシリコーンゴムなどシリコーン樹脂からなるものも考えられるが、シリコーンゴムは搬送ボード3とそのままでは接着することが困難である。そのため、熱融着などにより搬送ボード3にシリコーンゴムを固着させる必要が生じる。その場合、シリコーンゴムと搬送ボード3の線膨張係数の違いなどにより、シリコーンゴムと搬送ボード3との接合部分に耐久性がなく、簡単に剥離が生じてしまう。そのため、加熱処理工程や、その繰り返し利用には耐えられるものではない。
【0033】
本発明では、粘着性シート5は、シリコーンゴムシートからなる基材7の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層9を設けて第1接着面5aが形成される。このように、すべてシリコーン系の部材で構成することで、その特性を生かし、搬送治具1の耐熱性および耐久性を実現できる。さらに、粘着性シート5の基材7を粘着剤層9の強粘着性により搬送ボード3に接着して固定するとともに、粘着性シート5の基材7の弱粘着性によりFPC10を剥離可能に貼着して保持できるようになっている。
【0034】
たとえば、本実施形態の搬送治具1において使用する粘着性シート5は、マクセルスリオンテック社製のオールシリコーンテープNo.6710 片面タイプ、厚さ100μm〜300μmを用いることができる。
【0035】
本実施形態において、シリコーンゴムからなる粘着性シート5のシリコーンゴム硬度が50〜70度のものが、搬送対象物を好適に保持できる。
【0036】
本発明の搬送治具1を構成する搬送治具材料は、キットとして準備できる。
本発明の搬送治具材料は、搬送対象物を保持する搬送ボード3と、第2接着面5bの粘着性の強度が異なる2つの粘着性シート5(第1シート状粘着性部材と第2シート状粘着性部材)とを備える。たとえば、異なる硬度50度と70度の粘着性シート5を準備し、搬送対象物に合わせて選択することで、適切な吸着力を実現できる。
【0037】
粘着性シート5の第2接着面5bは、接着剤層を設けず、粘着剤層9の第1接着面5aよりも相対的に弱粘着性を有する基材7のシリコーンゴムの表面そのままとなる。すなわち、粘着性シート5は、シリコーンゴムシートからなる基材7の他面を、第2接着面5bとする。このように、粘着性シート5の第1接着面5bは、第2接着面5bよりも相対的に強い強粘着性で搬送ボード3に貼着され、第2接着面5bは、第1接着面5aよりも相対的に弱い弱粘着性でFPC10を保持できる。
【0038】
本明細書において、粘着性シート5の第2接着面5bとなる基材7の他面、または粘着性シート5の第1接着面5aとなる粘着剤層9の表面の粘着物性は、「粘着力(剥離力)」と「タック(粘着性)」と「保持力」で示すことができる。本発明の「粘着性」とは、上記3つの物性「粘着力(剥離力)」と「タック(粘着性)」と「保持力」の少なくとも1つで評価できる。
【0039】
粘着性シート5または粘着剤層9の粘着力、タック、または保持力は、被着体の種類や被着体との接着面の状態や面積、搬送対象物の搬送時の周囲環境条件などにより変化するので、適宜、使用条件によって選択されるのが好ましい。粘着性シート5の第2接着面5bとなる基材7の他面の粘着性の強度は、搬送対象物を保持でき、かつ、搬送対象物を粘着性シート5から剥がすとき、搬送対象物を破損せずに剥がすことができる程度の吸着力で貼着できる弱粘着性を有することが望ましい。粘着性シート5の第1接着面5aとなる粘着剤層9の粘着性の強度は、搬送対象物を粘着性シート5から剥がすときに、粘着性シート5が搬送ボード3から剥がれたり、貼り付け位置がずれたりしない程度の強度の粘着性、すなわち、第2接着面5bより相対的に強い強粘着性を有することが望ましい。さらに、本実施形態において、粘着性シート5の第1接着面5aとなる粘着剤層9の粘着性の強度は、粘着性シート5を搬送ボード3から剥がして新しいものと交換する際、粘着剤層9が搬送ボード3の表面に糊残りしたり、搬送ボード3の表面3aが剥離したりしない程度の粘着性を上限とするのが望ましい。
【0040】
「粘着力(剥離力)」は、JIS Z1528に準拠した180度剥離試験法で測定することができる。試験条件は、たとえば、以下の条件を採用できる。
被着体:研磨済みステンレス板(厚さ1.5mm)、測定面を貼り付け
圧着:荷重19.6Nのローラーで1往復
放置時間:20分(室温23℃)
剥離速度:300mm/分
【0041】
「タック(粘着性)」は、JIS Z0237に準拠した傾斜式ボールタック試験(J.Dow法)で測定することができる。停止したボールNo.で評価する。ボールNo.が大きい程、タックも大きく粘着性が強いこととなる。たとえば、3回実施し、その平均値で評価できる。試験条件は、たとえば、以下の条件を採用できる。
傾斜角:30度
転がす剛球:直径1/32インチ〜1インチ(ボールNo.1〜32)
助走路距離:100mm
粘着面滑走距離:100mm
測定温度:室温23℃
【0042】
「保持力」は、JIS Z1528に準拠した試験で測定することができる。試験片の落下時間(分)またはズレ幅(mm)を測定することができる。試験条件は、たとえば、以下の条件を採用できる。
被着体:研磨済みステンレス板(厚さ1.5mm)、測定面を貼り付け
荷重9.8N
試験時間:24時間(40℃)
【0043】
基材7の厚さは、50μm〜1000μm程度とすることができる。FPC10の実装に使用する場合は、たとえば、100μm〜300μmとするのが好ましい。
基材7に使用するシリコーンゴムとしては、たとえば、KE−951、KE−550、KE−7611(信越化学製)等が使用されるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0044】
粘着剤層9は、シリコーン系粘着剤を塗布乾燥して形成できる。粘着剤層9の厚さは、0.1μm〜500μm程度とすることができる。
【0045】
上記シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層9に使用するシリコーン重合体は、乾燥温度が100〜160℃である付加型重合体、もしくは、縮合型重合体が望ましく、紫外線重合型は、その対シリコーン粘着力が低く、好ましくない。
【0046】
シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層9は、縮合型オルガノポリシロキサン、又は、分子中にハイドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン及び白金金属系触媒を主成分とするシリコーン系粘着剤組成物(付加反応型ポリオルガノシロキサン)を乾燥させて形成する。
【0047】
縮合型オルガノポリシロキサンとしては、たとえば、KR−100、X−40−3287、X−40−3212(信越化学製)、SH4280、SE4200、SD4284、Q2−7735(東レダウコーニング製)が使用されるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0048】
また、付加反応型ポリオルガノシロキサンとしては、たとえば、SD4560、SD4570、SD4580、SD4584、SD4585、SD4592、BY24−740(東レダウコーニング製)、X−40−3068、X−40−3102、X−40−3103、X−40−3104(信越化学製)が使用されるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0049】
また、縮合型ポリオルガノシロキサンの架橋剤としては、たとえば、ナイパーFF、ナイパーBO、ナイパーBMT−K40、ナイパーBMT−M(日本油脂製)が使用されるが、特に、これらに限定されるものではない。また、付加反応型ポリオルガノシロキサンの架橋剤としては、たとえば、BY24−741、RD−1、RD−2(東レダウコーニング製)が使用されるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0050】
また、上記架橋剤の配合量としては、上記粘着剤組成の0.1〜1.5重量部が好ましい。架橋剤の配合量が0.1重量部未満の場合、粘着剤層9が40℃保持力を保持できないため、好ましくない。また、1.5重量部を越えると、架橋密度が高くなり過ぎ、結果として、凝集力が高まり、40℃保持性が維持できないため、好ましくない。
【0051】
また、付加反応型ポリオルガノシロキサンの触媒としては、たとえば、SRX212キャタリスト(東レダウコーニング製)、CAT−PL−50T(信越化学製)が使用されるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0052】
また、上記触媒の配合量としては、上記粘着剤組成の0.1重量部以上が好ましい。触媒の配合量が0.1重量部未満の場合、シリコーン重合体の反応が促進しないため、好ましくない。
【0053】
また、本発明の粘着性シート5の粘着剤層9は、そのシリコーン系粘着剤の種類、架橋剤の種類や配合量、触媒の種類や配合量、および、厚さ等が異なっていてもよい。
【0054】
粘着性シート5の第1接着面5aに相当する粘着剤層9の表面は、対ステンレスで測定した粘着力が、0.8N/10mm以上、好ましくは1.96N/10mm以上であることが望ましい。この粘着力が0.8N/10mm未満では、被着体に粘着性シート5を固定する貼付け強度が低く、好ましくない。また、粘着剤層9の表面は、40℃で測定した保持力が、24時間で2mm以下であり、落下しないことが好ましい。
【0055】
粘着性シート5の総厚さは、50μm〜1500μmとすることができる。また、粘着性シート5の厚さは、切断加工し易い厚さであることが望ましい。
【0056】
粘着性シート5には、粘着剤層9の表面を保護するための剥離フィルム11が設けられている。
剥離フィルム11としては、たとえば、厚さが19〜100μmのビューレックス(帝人製)、セラピール(東レフィルム加工製)、ニッパシート(ニッパ製)等のシリコーン粘着剤用の剥離フィルムが使用されるが、特に、これらに限定されるものではない。
【0057】
また、粘着性シート5を剥離フィルム11から剥がす際の剥離力に関しては、0.90N/10mm以下、好ましくは、0.60N/10mm以下が望ましい。
【0058】
また、本発明の粘着性シート5は、基材7と粘着剤層9の間には、何も介在せず、互いに直接接着していることを特徴する。この構成ように粘着性シート5に介在層がないことで、粘着性シート5に可撓性を持たせたり、粘着性シート5と搬送対象物や搬送ボード3との接着性を向上させたりできる。
【0059】
本発明の搬送治具1は、たとえば、FPC10などの薄板のプリント配線基板の実装工程における搬送に使用できる。また、本発明の搬送治具1は、フリップチップ型やBGA(Ball grid array)などのパッケージをプリント配線基板に実装する工程に使用できる。さらに、本発明の搬送治具1は、電子デバイスの製造工程において、耐熱搬送トレイとして使用できる。さらに、本発明の搬送治具1は、半導体集積回路の製造工程において、半導体チップのダイシング工程時に、ウエハを固定する治具としても使用できる。さらに、本発明の搬送治具1は、プリント配線基板を検査するときに、検査装置内にプリント配線基板を固定する時に使用できる。このように、本発明の搬送治具1を利用して、様々な搬送対象物を搬送できる。さらに、本発明の搬送治具1を利用して搬送する、様々な搬送対象物に対し、様々な処理工程を施すことができる。
【0060】
このように構成された本発明の搬送治具1を用いた搬送方法であって、搬送対象物を搬送する搬送方法は、搬送対象物を、搬送治具1の搬送ボード3に貼り付けられた粘着性シート5の第2接着面5bに貼付する第1貼付工程と、第1貼付工程で貼付された搬送対象物を搬送する第1搬送工程と、搬送対象物を粘着性シート5から外す第1取り外し工程と、さらに、別の搬送対象物を粘着性シート5の第2接着面5bに貼付する第2貼付工程と、第2貼付工程で貼付された搬送対象物を搬送する第2搬送工程と、搬送対象物を粘着性シート5から外す第2取り外し工程と、を含む。
【0061】
ここで、第1搬送工程と第2搬送工程で搬送される搬送対象物は、同じ種類の搬送対象物でもよいし、異なる搬送対象物でもよい。また、複数種類の搬送対象物が混在してもよい。また、第1搬送工程と第2搬送工程で搬送される搬送対象物は、必ずしも別のものである必要はない。たとえば、第1搬送工程で搬送した搬送対象物を一旦外した後、同じ搬送対象物を第2貼付工程で貼付して第2搬送工程で搬送してもよい。
【0062】
さらに、本発明の搬送方法は、第1取り外し工程または第2取り外し工程の後に、使用した粘着性シート5を搬送ボード3の表面3aから剥がす工程と、新たな粘着性シート5を搬送ボード3に貼付する工程と、を含んでもよい。そして、搬送治具1を再生した後、別の搬送対象物を貼り付け、搬送してもよい。
【0063】
さらに、本発明の搬送方法は、第1貼付工程と第1取り外し工程の間、または第2貼付工程と第2取り外し工程の間に、搬送治具1に貼付された搬送対象物の処理工程を含むことができる。そして、処理工程は、搬送対象物の加熱工程を含んでもよい。
【0064】
以下、搬送治具1を利用してFPC10を搬送し、実装工程に使用する場合について、説明する。
本発明の搬送方法において、搬送治具1を利用した工程は、概略、以下の工程を含む。
(a1)粘着性シート5の搬送ボード3への貼付け
(a2)粘着性シート5上へのFPC10の配置、接着
(b1)チップ部品の半田付け処理
(b2)FPC10上へのチップ部品のマウント
(b3)リフロー高温加熱処理
(c1)冷却後、搬送ボード3からFPC10を剥がす
(c2)(b1)〜(b3)の繰り返し
(c3)粘着性シート5の特性劣化時時などの適切なタイミングで、粘着性シート5を搬送ボード3から剥がし、(a1)に戻る
(c4)搬送ボード3の特性劣化時に搬送ボード3を交換
【0065】
ここで、(a1)、(a2)は、搬送治具1の準備工程であり、(b1)〜(b3)がFPC10の実装工程であり、(c1)〜(c4)は、搬送治具1の再利用およびメンテナンス工程である。なお、上記工程は一例であり、これに限定されるものではない。
【0066】
詳細には、まず、搬送ボード3に粘着性シート5の剥離フィルム11を剥がして、粘着性シート5の粘着剤層9が搬送ボード3の表面3aに貼着するように貼付する。
【0067】
次に、搬送ボード3の上に、粘着性シート5を介して複数のFPC10を配置する。本発明で実装するプリント配線基板(FPC10)は、薄板のものであり、フレキシブルプリント配線基板を使用する。
そして、FPC10に実装する部品の搭載場所に、クリーム半田を塗布(所謂、メタルマスク印刷)する。そして、各FPC10上にチップ部品をマウントし、リフロー炉にて、高温加熱処理して、チップ部品を半田付けして実装工程を終了する。加熱処理は、たとえば、予備加熱160〜180℃で120秒間、本加熱220℃で60秒間、本加熱中ピーク時は260℃の高温で10秒間程度となる。
そして、冷却後、搬送ボード3からFPC10を剥がし、完成する。このとき、FPC10は搬送ボード3から簡単に剥がすことができ、また、搬送ボード3から粘着性シート5が剥がれたり貼り付け位置がずれたりすることもない。
【0068】
そして、搬送ボード3は、粘着性シート5をそのまま交換せずに、次の新たなFPC10を搬送ボード3上に粘着性シート5を介して配置し、FPC10の実装工程に使用できる。
繰り返し実装工程に使用した後、粘着性シート5の第2接着面5bの粘着性が低下し、搬送対象物を好適に保持できない状態になった場合等の適当なタイミングで、粘着性シート5を搬送ボード3から剥がし、新しい粘着性シート5に張り替えて、再び、搬送ボード3を使用できる。搬送ボード3が変形または破損するまで、粘着性シート5を張り替えるだけで、繰り返し使用できる。本実施形態では、搬送ボード3に粘着性シート5の粘着剤層9が糊残りすることなく、また、搬送ボード3表面3aを剥離させたりすることなく、粘着性シート5を剥がして、新しいものに交換できる。
【0069】
粘着性シート5の交換タイミングは、搬送治具1の使用条件(たとえば、搬送対象物の種類、サイズ、加熱処理の温度、時間、粘着性シート5の厚さ、サイズ等)により異なる。上述したように、たとえば、粘着性シート5の第2接着面5bの粘着性が弱り、搬送対象物を好適に搬送できなくなった場合、あるいは、粘着性シート5が破損または摩耗した場合に交換できる。
【0070】
本発明によれば、高温加熱工程を含むものにも使用できる。たとえば、プリント配線基板の実装工程における鉛フリーはんだなどのような、ピーク時260℃程度まで加熱されるような高温加熱工程を含むはんだリフロー工程での繰り返し使用にも耐えることができる。そして、搬送ボード3が破損するまで、粘着性シート5を張り替えてさらに繰り返し使用することが可能である。
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、繰り返し使用に対する耐久性の高い搬送治具、その搬送治具を用いた搬送方法、およびその搬送治具材料を提供できる。搬送ボード3に粘着性シート5を必要な形状に裁断して貼付するだけでよいので、簡単な作業工程でFPC10の実装工程の準備ができるので、作業コストを削減できる。また、搬送ボード3を繰り返し使用できるので、製造コストの削減にもつながる。
【0072】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
<1>
搬送対象物を保持し搬送する搬送治具であって、
前記搬送対象物を保持する搬送ボードと、
前記搬送対象物と前記搬送ボードとの間に介在するように、前記搬送ボードの表面の少なくとも一部に貼付される第1接着面および前記搬送対象物が貼付される第2接着面を有するシート状粘着性部材と、を備え、
前記シート状粘着性部材の前記第1接着面は、強粘着性を有し、
前記シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記第1接着面の粘着性よりも相対的に弱い弱粘着性を有する搬送治具。
<2>
<1>に記載の搬送治具において、
前記シート状粘着性部材は、シリコーンゴムからなる基材の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を設けて前記第1接着面が形成される搬送治具。
<3>
<2>に記載の搬送治具において、
前記シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記シリコーンゴムからなる基材の他面である搬送治具。
<4>
<1>乃至<3>いずれかに記載の搬送治具において、
前記搬送対象物は、電子部品または基板である搬送治具。
<5>
<1>乃至<4>いずれかに記載の搬送治具において、
加熱処理を含む工程中の搬送に用いられる搬送治具。
<6>
<1>乃至<5>いずれかに記載の搬送治具を用いた搬送方法であって、
搬送対象物を、前記搬送治具の前記搬送ボードに貼り付けられた前記シート状粘着性部材の前記第2接着面に貼付する第1貼付工程と、
前記第1貼付工程で貼付された前記搬送対象物を搬送する第1搬送工程と、
前記搬送対象物を前記シート状粘着性部材から外す第1取り外し工程と、
さらに、別の搬送対象物を前記シート状粘着性部材の前記第2接着面に貼付する第2貼付工程と、
前記第2貼付工程で貼付された前記搬送対象物を搬送する第2搬送工程と、
前記搬送対象物を前記シート状粘着性部材から外す第2取り外し工程と、を含む搬送方法。
<7>
<6>に記載の搬送方法において、
前記第1取り外し工程または前記第2取り外し工程の後に、
使用した前記シート状粘着性部材を前記搬送ボードの前記表面から剥がす工程と、
新たなシート状粘着性部材を前記搬送ボードに貼付する工程と、を含み、
前記搬送治具を再生した後、さらに、別の搬送対象物を貼り付け、搬送する搬送方法。
<8>
<6>または<7>に記載の搬送方法において、
前記第1貼付工程と前記第1取り外し工程の間、または前記第2貼付工程と前記第2取り外し工程の間に、
前記搬送治具に貼付された前記搬送対象物の処理工程を含む搬送方法。
<9>
<8>に記載の搬送方法において、
前記処理工程は、前記搬送対象物の加熱工程を含む搬送方法。
<10>
搬送対象物を搬送する搬送方法に用いる搬送治具を構成する搬送治具材料であって、
前記搬送対象物を保持する搬送ボードと、
前記搬送ボードに貼付する第1シート状粘着性部材と、
前記搬送ボードに貼付する第2シート状粘着性部材と、を備え、
前記第1シート状粘着性部材および前記第2シート状粘着性部材は、いずれも前記搬送ボードの表面の少なくとも一部に貼付される第1接着面および前記搬送対象物が貼付される第2接着面を有するとともに、前記第1接着面は、強粘着性を有し、前記第2接着面は、前記第1接着面の粘着性よりも相対的に弱い弱粘着性を有し、
さらに、前記第1シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記第2シート状粘着性部材の前記第2接着面の粘着性と異なる強度を有する搬送治具材料。
<11>
<10>に記載の搬送治具材料において、
前記第1シート状粘着性部材または前記第2シート状粘着性部材は、シリコーンゴムからなる基材の一面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を設けて前記第1接着面が形成される搬送治具材料。
<12>
<11>に記載の搬送治具材料において、
前記第1シート状粘着性部材または前記第2シート状粘着性部材の前記第2接着面は、前記シリコーンゴムからなる基材の他面である搬送治具材料。
<13>
<12>に記載の搬送治具材料において、
前記第1シート状粘着性部材および前記第2シート状粘着性部材の前記シリコーンゴムは、互いに異なる硬度を有する搬送治具材料。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
以下、本発明の搬送治具1について、実施例によって具体的に説明する。但し、本発明の搬送治具1はこれらに限定されるものではない。
搬送ボード3は、ニッカン工業株式会社社製のニカプレートLS−6706を用いた。サイズ縦250mm×横500mm。
粘着性シート5は、オールシリコーン粘着テープNo.6710(シングルコート)(マクセルスリオンテック社製)、テープ厚さ300μm、ゴム硬度70度のものを用いて、搬送ボード3の上に、貼着した。
【0074】
粘着性シート5の上に、複数のFPC10を配置して、リフロー実装処理工程を行った。処理工程が終了したら、FPC10をすべて粘着性シート5から剥がし、再び、複数のFPC10を配置してリフロー実装処理工程を同様に行った。リフロー実装処理は、千住金属工業株式会社のリフロー機エコリフローSNR−825 8ゾーンタイプを用いた。加熱工程は、ピーク温度、260℃10秒とした。
リフロー実装処理工程が終了するたびに、FPC10を取り替え、100回、これらの処理工程を繰り返し行った。
【0075】
処理を行うたびに、以下の項目について処理工程毎に毎回計測評価を行った。
(a)粘着性シート5の剥がれの有無と、剥がれ有りの場合の程度を目視で確認して評価
(b)搬送対象物表面の剥がれや搬送対象物に付属の部品などの剥がれの有無と程度を目視で確認して評価
(c)粘着性シート5の第1接着面5aの粘着性が良好か否かを評価
(d)搬送対象物の剥がしやすさが良好か否かを評価
(f)粘着性シート5の変形、変色、膨れなどの変化の有無を目視で確認して評価
【0076】
上記評価の結果から、100回のリフロー実装処理工程を繰り返しても、粘着性シート5の物性に大きな変化はなく、同じ粘着性シート5を繰り返して使用し続けることができることがわかった。また、搬送対象物であるFPC10が破損したり、粘着性シート5が搬送ボード3から剥がれたり貼り付け位置がずれたりすることもなく、FPC10を外すことができ、他のFPC10の実装工程に繰り返し利用することができた。
【0077】
そして、リフロー実装処理工程を、繰り返した後、適当なタイミングで粘着性シート5を搬送ボード3から剥がし、新しい粘着性シート5と交換し、搬送ボード3を再利用することができた。搬送ボード3に粘着性シート5の粘着剤層9が糊残りすることもなく、粘着性シート5を搬送ボード3から剥がすことができた。
【0078】
(比較例1)
図4に示すように、FPC10は、実施例1と同じものを使用した。搬送ボード3および粘着性シート5として、大晶電子社製のマジックレジンキャリアを使用した。
図4に示すように、比較例1では、シリコーンゴムからなる基材7を粘着性シート5とし、その第1接着面5bを搬送ボード3に直接、熱融着して構成されている。
比較例1では、搬送ボード3にシリコーンゴムの粘着性シート5が熱融着されているため、粘着性シート5を搬送ボード3から剥がすことはできず、搬送ボード3を再利用することはできなかった。
【0079】
(比較例2)
市販のシリコーンゴム固定用のアクリル系粘着剤を用いた両面テープを使用してシリコーンゴムからなる基材7を搬送ボード3に接着し、FPC10を貼り付けて実装工程を行った。高温の加熱工程により、1回で使用できなくなった。
【0080】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 搬送治具
3 搬送ボード
3a 表面
5 粘着性シート
5a 第1接着面
5b 第2接着面
7 基材
9 粘着剤層
10 FPC
11 剥離フィルム
図1
図2
図3
図4