(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905722
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】移動体IPのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/70 20130101AFI20160407BHJP
H04W 8/26 20090101ALI20160407BHJP
H04W 80/04 20090101ALI20160407BHJP
【FI】
H04L12/70 B
H04W8/26
H04W80/04
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-531386(P2011-531386)
(86)(22)【出願日】2009年10月8日
(65)【公表番号】特表2012-506180(P2012-506180A)
(43)【公表日】2012年3月8日
(86)【国際出願番号】EP2009007280
(87)【国際公開番号】WO2010043349
(87)【国際公開日】20100422
【審査請求日】2012年3月23日
【審判番号】不服2014-5584(P2014-5584/J1)
【審判請求日】2014年3月26日
(31)【優先権主張番号】08305698.6
(32)【優先日】2008年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】パパディミトリウ,ディミトリ
【合議体】
【審判長】
菅原 道晴
【審判官】
▲高▼橋 真之
【審判官】
中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】
Ishiyama, M. et al.,An analysis of mobility handling in LIN6,In Proceedings of 4th International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communication (WPMC ’01),2001,URL,http://www.wide.ad.jp/news/event/stanford2002/program.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/70-12/955
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のIPエッジ−IPネットワーク−第2のIPエッジ接続性を介して、移動体ノードと対応するノードとの間で通信し、該移動体ノード上のスタック内に構成されるユーザIPアドレスの層及びネットワークIPアドレスの層を備えるネットワークシステムであって、
ロケータ識別子の層が、前記スタック内において、前記ユーザIPアドレスの層と前記ネットワークIPアドレスの層との間に挿入され、
前記第1のIPエッジならびに前記第2のIPエッジが、第1のロケータ識別子および第2のロケータ識別子と関連付けられ、
前記システムが、移動体ノードを、複数のネットワークIPアドレス、および前記第1のロケータ識別子によって前記複数のネットワークIPアドレスから分離された1つのユーザIPアドレスと関連付けるようにさらに構成される、ネットワークシステム。
【請求項2】
前記ネットワークIPアドレスの層は、それぞれが物理層と、リンク層と、ネットワークIPアドレス層とからなる第1のスタックおよび第2のスタックを備え、前記第1のスタックおよび前記第2のスタックが、前記第1のロケータ識別子によって前記ユーザIPアドレスの層から分離されている、請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記システムが、第1のネットワークIPアドレスを有する第1のネットワーク空間領域から第2のネットワークIPアドレスを有する第2のネットワーク空間領域に遷移する間、それぞれ、前記第1スタックおよび前記第2のスタックの前記第1のネットワークIPアドレスならびに前記第2のネットワークIPアドレスを同時にアクティブに維持するように構成される、請求項2に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
マッピング機能を実行するために、第1のIPエッジ−IPネットワーク−第2のIPエッジ接続性を介して、スタック内に構成される1つのユーザIPアドレスの層及び複数のネットワークIPアドレスの層を有する移動体ノードと、対応するノードとの間で通信する際に使用する、IPエッジに関連するマッパシステムであって、
前記IPエッジの一意のロケータ識別子を格納する格納手段と、
前記移動体ノードが前記第1のIPエッジの作業フィールド内に配置されたときに、該ロケータ識別子を保持するロケータ識別子の層を前記スタックの前記ユーザIPアドレスの層と前記ネットワークIPアドレスの層との間に挿入できるように、前記ロケータ識別子を該移動体ノードに通信する手段と、
移動体ノードが前記第1のIPエッジの前記作業フィールド内に配置されたときに、前記ユーザIPアドレスの層に保持された前記移動体ノードのユーザIPアドレスを登録する手段と、
前記第2のIPエッジが、前記第2のIPエッジの作業フィールド内に配置された対応するノードからの要求に応じて、前記ユーザIPアドレスのアドレス解決要求を前記ユーザIPアドレスに関連する他のIPエッジに送信する手段と、
前記ネットワークIPアドレスの層のうちの1つに保持された1つのネットワークIPアドレスと、前記ユーザIPアドレスに対応する前記スタック内の前記ロケータ識別子の層に保持される前記ロケータ識別子とを受信して、前記1つのネットワークIPアドレスと前記ロケータ識別子とを前記対応するノードに転送する手段とを備える、マッパシステム。
【請求項5】
前記格納手段が、ユーザIPアドレスと、対応するネットワークIPアドレスと、ロケータ識別子とを有する表を維持し、オプションで、該ユーザIPアドレスと、該対応するネットワークIPアドレスと、該ロケータ識別子との対応関係のそれぞれに関するリース期間を含む、請求項4に記載のマッパシステム。
【請求項6】
アクセスシステム、詳細には、DSLAM、エッジルータのうちの1つに実装されるように構成された、請求項4または5に記載のマッパシステム。
【請求項7】
第1のIPエッジ−IPネットワーク−第2のIPエッジ接続性を介して、スタック内に構成された1つのユーザIPアドレスの層及び複数のネットワークIPアドレスの層を有する移動体ノードと、対応するノードとの間で通信する方法であって、
前記第1のIPエッジから前記移動体ノードにロケータ識別子を送信するステップと、
前記ロケータ識別子を保持するロケータ識別子の層を前記ユーザIPアドレスの層と前記ネットワークIPアドレスの層との間に挿入するステップと、
前記移動体ノードの前記ユーザIPアドレスの層に保持されたユーザIPアドレスを前記第1のIPエッジに送信するステップと、
前記移動体ノードの前記ユーザIPアドレスの位置を突き止めるための要求を前記対応するノードから前記第2のIPエッジに送信するステップと、
前記第2のIPエッジによって、アドレス解決要求を前記第1のIPエッジに送信するステップと、
前記第1のIPエッジによって、前記ネットワークIPアドレスの層の内の1つに保持された1つのネットワークIPアドレスと、前記移動体ノードの前記ユーザIPアドレスに関連する前記スタック内のロケータ識別子の層に保持されたロケータ識別子とを前記第2のIPエッジに送信するステップと、
前記第2のIPエッジによって、前記1つのネットワークIPアドレスと、前記移動体ノードに関連する前記ロケータ識別子とを前記対応するノードに転送するステップとを備える、方法。
【請求項8】
前記第2のIPエッジによって、アドレス解決要求を前記第1のIPエッジを含むIPエッジのセットに送信するステップをさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ユーザIPアドレス空間のIP表内で前記ユーザIPアドレスの調査を実行して、前記ユーザIPアドレスに対応するサブネットアドレスに基づいて、IPエッジを選択することによって、前記IPエッジの前記セットを決定するステップをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ロケータ識別子を同一に維持しながら、新しいネットワークIPアドレスが前記移動体ノードに割り当てられた場合、前記第1のIPエッジによって、更新を前記第2のIPエッジに送信するステップをさらに備え、前記更新が、前記移動体ノードに関連する前記新しいネットワークIPアドレスを備える、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
移動体ノードが第1のネットワークIPアドレスを有するあるネットワーク領域から第2のネットワークIPアドレスを有する別のネットワーク領域に遷移するとき、前記遷移周期の間、前記第1のネットワークIPアドレス及び前記第2のネットワークIPアドレスの両方の関連性をアクティブに維持するステップをさらに備える、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記移動体ノードの現在のネットワークIPアドレスが非アクティブであることが検出された場合、前記第1のIPエッジによって、更新を前記第2のIPエッジに送信するステップをさらに備える、請求項7乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ユーザIPアドレスと、前記対応するネットワークIPアドレスと、前記ロケータ識別子とを第2のIPエッジに関連する記憶装置内に格納し、オプションで、該ユーザIPアドレスと、該対応するネットワークIPアドレスと、該ロケータ識別子との対応関係のそれぞれに関するリース期間を格納するステップをさらに備える、請求項7乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記移動体ノードの前記ユーザIPアドレスの位置を突き止めるための前記要求を送信するステップの前に、前記ユーザIPアドレスが、DNSを介して前記対応するノードによって取得される、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のIPエッジから前記移動体ノードにロケータ識別子を前記送信するステップが、DHCPオプションの一部として、前記ロケータ識別子を前記移動体ノードに公表するステップにある、請求項7乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のIPエッジ−IPネットワーク−第2のIPエッジ接続性を介して、移動体ノードと対応するノードとの間で通信するためのネットワークシステムおよび方法に関し、この移動体ノードは、パケットを受信し続けながら、ネットワークに対するそのトポロジー的接続性を変更することが可能である。本発明は、さらに、移動体ノード/第1のIPエッジ部分において、かつ対応するノード/第2のIPエッジ部分においてマッピング機能を実行するためのマッパシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術では、IP移動度の問題を解決するための3つの基本的な機構を見出すことができる。すなわち、
移動体ノードがインターネットに対するその(1つまたは複数の)トポロジー的接続点を変更するにつれて、移動体ノードの番号を振り直すこと。結果として、ネットワークIPアドレスのこの変更は、既存のトランスポート、または識別子としてIPアドレスを使用しているプロトコル向けのより高いレベルの接続を中断することになる。
移動体ノードの番号を振り直して、移動体ノードの新しいトポロジー的ロケーションからその元のロケーションに戻るトンネルを作成すること。この手法は、ホームエージェントが移動体ノードの現在のロケーションを追跡し続けることを必要とし、結果として、三角形のルーティングをもたらす(対応するノードは、ホームエージェントを介して移動体ノードと通信しなければならない)。これは、対応するノードと移動体ノードとが、2つの連続する外部ネットワーク内にあった場合ですら、対応するノードは、常にホームエージェントを介して移動体ノードに達しなければならないという欠点を有する。
移動体ノードにその新しい(1つまたは複数の)接続点からそのプレフィックスを公開させること。この解決策の主な欠点は、移動体ノードが移動するにつれて、動的な更新がグローバルルーティングシステム内に導かれて、スケーラビリティの問題を引き起こすことである。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、インターネットなど、大規模なIPインフラストラクチャを介したその展開を可能にするために、拡張性のある形でIP移動度の問題を解決することである。この目的を達成するために、本発明によるネットワークシステムは、
ロケータ識別子空間がユーザIPアドレス指定空間とネットワークIPアドレス指定空間との間に挿入され、
第1のIPエッジならびに第2のIPエッジが、第1のロケータ識別子および第2のロケータ識別子と関連付けられ、
このシステムは、移動体ノードを、1つまたは複数のIPネットワークアドレス、および第1のロケータ識別子を介して、1つまたは複数のIPネットワークアドレスから
分離されたIPユーザアドレスと関連付けるようにさらに構成されるという点で優れている。
【0004】
ロケータ識別子空間をユーザIPアドレス指定空間とネットワークIPアドレス指定空間との間に挿入することによって、上位IPアドレス(すなわち、ユーザ空間IPアドレス)が識別子として使用されることが防止される。したがって、IPアドレス空間セマンティックは解決される。また、ロケータ識別子をIPエッジと関連付けることによって、ローカライゼーションの問題が解決される。ユーザIPアドレス指定空間とネットワークIPアドレス指定空間との間のセグメント化は、ネットワークグラフ内の移動体ノードのネットワーク位置をトランスポート接続識別のそのIPアドレス部分から
分離することによって、トランスポート接続連続性を確実にする。
【0005】
2つ以上のネットワークアドレスが移動体ノードと関連付けられることが可能なシステムを提供すること(すなわち、移動体ノード上で並列IPスタック/DLLスタック/PHYスタックの使用を可能にすること)によって、移動体ノードが、例えば、ある無線領域から別の無線領域に移動するとき、または同じ外部ネットワーク内で2つ(以上の)無線技術が利用可能であるとき、2つのネットワーク領域をアクティブに維持することが可能である。
【0006】
ネットワークシステムの1つの有利な実施形態によれば、このシステムは、移動体ノードを、それぞれが物理層と、リンク層と、IPネットワークアドレス層とからなる第1のスタックおよび第2のスタックと関連付けるように構成され、前記第1のスタックおよび前記第2のスタックは、第1のロケータ識別子を介してユーザアドレスから
分離されている。別の態様によれば、このシステムは、第1のIPネットワークアドレスを有する第1のネットワーク空間領域から第2のIPネットワークアドレスを有する第2のネットワーク空間領域に遷移する間、それぞれ、第1のスタックおよび第2のスタックの第1のIPネットワークアドレスならびに第2のIPネットワークアドレスを同時にアクティブに維持するように構成される。それぞれが物理層と、リンク層と、IPネットワークアドレス層とからなる第1のスタックおよび第2のスタックを提供することによって、前記第1のスタックおよび前記第2のスタックは、第1のロケータ識別子を介してユーザアドレスから
分離されており、同じ外部ネットワーク内で2つ以上の無線技術が利用可能であるとき、ある無線領域から別の無線領域に移動することが可能であり、これは、その間に連続性を保証する。第1のIPネットワークアドレスを有する第1のネットワーク空間領域から第2のIPネットワークアドレスを有する第2のネットワーク空間領域に移動する間、前記ネットワークアドレスは、同時にアクティブに維持されることが可能である。
【0007】
本発明は、さらに、マッピング機能を実行するために、第1のIPエッジ−IPネットワーク−第2のIPエッジ接続性を介して、移動体ノードと対応するノードとの間で通信する際に使用するためのマッパシステムであって、
IPエッジの一意のロケータ識別子を格納するための格納手段と、
移動体ノードがIPエッジの作業フィールド内に配置されたとき、ロケータ識別子を前記移動体ノードに通信するための手段と、
移動体ノードがIPエッジの作業フィールド内に配置されたとき、前記移動体ノードのユーザIPアドレスを登録するための手段と、
IPエッジの作業フィールド内に配置された対応するノードからの要求に応じて、ユーザアドレスのアドレス解決要求を前記ユーザアドレスに関連する別のIPエッジに送信するための手段と、
ネットワークアドレスと、前記ユーザアドレスに対応するロケータ識別子とを受信して、前記ネットワークアドレスと前記ロケータ識別子とを対応するノードに転送するための手段とを備えたマッパシステムに関する。かかるマッパシステムをネットワークエッジに導入することは、トンネリングのない解決策を有することを可能にする。要するに、このマッパシステムは、ユーザIPアドレスと、ネットワークIPアドレスと、ロケータ識別子との間の関連性が維持されて、必要に応じて、それらの関連性が利用可能であることを保証する。
【0008】
本発明のマッパシステムの1つの有利な実施形態によれば、この格納手段は、オプションで、前記対応関係のそれぞれに関するリース期間と共に、ユーザアドレスと、対応するネットワークアドレスと、ロケータ識別子とを有する表を維持する。もう1つの態様によれば、このマッパシステムは、以下のデバイス、すなわち、アクセスシステム、詳細には、DSLAM、エッジルータのうちの1つにおいて実施するように構成される。好ましくは、この格納手段は、オプションで、前記対応関係のそれぞれに関するリース期間と共に、ユーザアドレスと、対応するネットワークアドレスと、ロケータ識別子とを有する表を維持する。これは、必要な調査を制限することが可能であり、ユーザアドレスとロケータ識別子との間の既存のリンクの最新の大要を有することを可能にする。
【0009】
好ましい実施形態によれば、このマッパシステムは、以下のデバイス、すなわち、アクセスシステム、詳細には、DSLAM、エッジルータのうちの1つの中に配置される。
【0010】
最終的に、本発明は、第1のIPエッジ−IPネットワーク−第2のIPエッジ接続性を介して、対応するノードと、ユーザIPアドレスを有し、少なくとも1つのネットワークIPアドレスが割り当てられている移動体ノードとの間で通信するための方法であって、
第1のIPエッジから移動体ノードにロケータ識別子を送信するステップと、
移動体ノードのユーザアドレスを第1のIPエッジに送信するステップと、
移動体ノードのユーザアドレスの位置を突き止めるための要求を対応するノードから第2のIPエッジに送信するステップと、
第2のIPエッジによって、アドレス解決要求を第1のIPエッジに送信するステップと、
第1のIPエッジによって、ネットワークアドレスと、移動体ノードのユーザアドレスに関連するロケータ識別子とを第2のIPエッジに送信するステップと、
第2のIPエッジによって、前記ネットワークアドレスと、移動体ノードに関連するロケータ識別子とを対応するノードに転送するステップとを備えた方法に関する。
【0011】
本発明のシステム、本発明のマッパシステム、および本発明の方法は、ネットワーク移動度が、結果として、その他の上層および下層との交差層依存を引き起こさずに、詳細には、ネットワーク層レベルにおいて処理されることを可能にする。さらに、本発明は、ネットワーク内の転送面レベルにおいて何らの中間処理を必要とせずに、端末/移動体ノード駆動型のシステム/方法を提供する。
【0012】
1つの有利な実施形態によれば、本発明の方法は、
第2のIPエッジによって、アドレス解決要求を第1のIPエッジを備えたIPエッジのセットに送信するステップをさらに備える。
【0013】
別の態様によれば、本方法は、
ユーザアドレス空間のIP表内でユーザアドレスの調査を実行して、そのユーザアドレスに対応するサブネットアドレスに基づいて、IPエッジを選択することによって、IPエッジの前記セットを決定するステップをさらに備える。移動体ノードのあるユーザアドレスに関連するIPエッジを知るために、通常、ユーザアドレスの調査は、ユーザアドレス空間のIP表内で実行されることになり、対応するサブネットアドレスを有するIPエッジのセットが選択される。移動体ノードのあるユーザアドレスに関連する第1のIPエッジは、そのとき、IPエッジのこのセットの一部になる。アドレス解決要求は、次いで、第2のIPエッジによって、第1のIPエッジを備えるIPエッジのこのセットに送信されることが可能であり、当然、第1のIPエッジだけが応答することになる。これは、システムのスケーラビリティをさらに確実にする。
【0014】
本発明の方法の1つの可能な実施形態によれば、同じロケータ識別子を維持しながら、新しいネットワークアドレスが移動体ノードに割り当てられた場合、第1のIPエッジによって更新が第2のIPエッジに送信され、前記更新は、前記移動体ノードに関連する前記新しいネットワークアドレスを備える。さらに、移動体ノードが第1のIPネットワークアドレスを有するあるネットワーク領域から第2のIPネットワークアドレスを有する別のネットワーク領域に遷移するとき、遷移周期の間、前記第1のネットワークアドレスと前記第2のネットワークアドレスとの関連性がアクティブに維持されることが好ましい。さらに別の開発は、移動体ノードの現在のネットワークアドレスが非アクティブであることが検出された場合、第1のIPエッジによって更新を第2のIPエッジに送信することにある。
【0015】
1つの可能な実施形態によれば、移動体ノードのユーザアドレスは、DNSを介して、対応するノードによって取得される。
【0016】
1つの可能な実施形態によれば、この方法は、
ユーザアドレスと、対応するネットワークアドレスと、ロケータ識別子とを第2のIPエッジに関連する記憶装置内に格納するステップと、オプションで、前記対応関係のそれぞれに関するリース期間を格納するステップとをさらに備える。
【0017】
1つの可能な実施形態によれば、移動体ノードのユーザアドレスの位置を突き止めるための要求を送信する前に、前記ユーザアドレスは、DNSを介して、対応するノードによって取得される。
【0018】
1つの可能な実施形態によれば、第1のIPエッジから移動体ノードにロケータ識別子を送信するステップは、DHCPオプションの一部として、ロケータ識別子を移動体ノードに公表するステップにある。
【0019】
添付の図面は、本発明の現在好ましい非限定的な例示的実施形態を示すために使用される。添付の図面に関して読まれたとき、以下の詳細な説明から本発明の上記のおよびその他の利点、特徴、ならびに目的がより明瞭になり、本発明はよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明が実装され得る通信システムを示す、簡素化されたブロック図である。
【
図2】本発明のシステムの一実施形態における移動体ノード上のスタックの一実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の方法の一実施形態を例示する簡素化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、IPネットワーク17を介して、外部ネットワーク12内に配置された移動体ノード10と、例えば、私設網13内に配置された対応するノード11との間でデータを通信するための通信システムを示し、エッジルータまたはDSLAM など、エッジノード14、15は、IPネットワーク17に対するアクセスを提供する。エッジノード(すなわち、IPエッジ)は、基本的に、移動体ノードまたは対応するノードがIPネットワークに入ったとき、移動体ノードまたは対応するノードが理解する第1のノードである。さらに、この通信システムは、通常、IPネットワーク40上でネットワークアドレスを割り当てることが可能なダイナミックホストコンフィギュレーションプロトコル(dynamic host configuration protocol)(DHCP)サーバなど、アドレス割当てサーバ16を備える。
【0022】
本発明のシステムの一実施形態によれば、ロケータ識別子(ID)空間によって分離されたユーザIPアドレス指定空間とネットワークIPアドレス指定空間とが提供される。かかる実施形態を例示するために、
図2は、移動体ノード上の1つの可能なスタック20を示す。例示された実施形態では、それぞれ、2つの異なるネットワーク接続点28、29に関して、2つの移動体ノードネットワークスタック(21、22、23)、(21’、22’、23’)が存在する。第1のネットワークスタックは、アドレス層IP1(参照番号23)と、リンク層DLL(参照番号22)と、物理層PHY(参照番号21)とを備える。同様に、第2のネットワークスタックは、アドレス層IP2(23’)と、リンク層DLL(22’)と、物理層PHY(21’)とを備える。これらの2つの異なるネットワーク接続点28、29は、2つの異なるネットワーク空間アドレス領域に関連する。
【0023】
典型的には、移動体ノードは、IEE802.11および802.16e、もしくは3Gおよび802.11、または無線層技術の任意のその他の組合せなど、多様なDLLスタック/PHYスタックをサポートする。ネットワークスタックのIPアドレス23、23’は、例えば、DHCPv6またはSLAC(IPv6ステートレス・オートコンフィギュレーション(Stateless Autoconfiguration))を使用して、アドレス割当てサーバによって割り当てられたIPv6アドレスであり得る。ステートレス・オートコンフィギュレーションにおいて、そのデバイスが、そのデバイスが存在するネットワークの特性を決定することができるまで、デバイスは一時アドレスを生成し、次いで、その情報に基づいて、そのデバイスが使用することができる固定アドレスを作成する。マルチホームデバイス(multi−homed device)の場合、オートコンフィギュレーションは、それぞれのインターフェースに関して別々に実行される。ホストは、ステートレス・オートコンフィギュレーションを使用するとき、以下のステップを実行する。
1.リンクローカルアドレス生成。デバイスはリンクローカルアドレスを生成する。通常、これは、データリンク層(MAC)アドレスから導出されることになる。
2.リンクローカルアドレス独自性テスト。ノードは、そのノードが生成したアドレスがローカルネットワーク上ですでに使用されていないことを確実にするためにテストする。すでに使用されている場合、新しいアドレスが生成されるか、またはオートコンフィギュレーションは失敗して、別の方法が用いられる。
3.リンクローカルアドレス割当て。デバイスは、リンクローカルアドレスをそのIPインターフェースに割り当てる。このアドレスは、ローカルネットワーク上の通信のために使用されることが可能であるが、(リンクローカルアドレスは経路指定されていないため)より幅広いインターネット上で使用されることはできない。
4.ルータコンタクト(Router Contact)。ノードは、次に、その構成を続けることについてのより多くの情報に関してローカルルータに連絡することを試みる。これは、ルータによって周期的に送信されるルータ広告メッセージを聴取することによって、または次に何をすべきかについての情報に関して特定のルータ要請をルータに送信することによって行われる。
5.ルータ指示。ルータは、オートコンフィギュレーションをどのように進めるかについてノードに指示を与える。ルータは、このネットワーク上で「ステートフル」オートコンフィギュレーションが使用中であることをノードに伝えて、使用すべきDHCPサーバのアドレスをノードに伝えることが可能である。あるいは、ルータは、そのグローバルインターネットアドレスをどのように決定するかをホストに伝えることになる。
6.グローバルアドレス構成。そのネットワーク上でステートレス・オートコンフィギュレーションが使用中であると仮定すると、ホストは、グローバル一意(globally−unique)インターネットアドレスを用いて自らを構成することになる。このアドレスは、概して、ルータによってホストに提供されたネットワークプレフィックスから形成されて、第1のステップにおいて生成されたデバイスの識別子と組み合わされる。
【0024】
この方法は、マニュアルベースの構成とサーバベースの構成の両方に勝る多くの利点を有する。IPデバイスは新しいネットワークに移動して、ローカルサーバまたはネットワークプレフィックスの何らの知識なしに、有効なアドレスを取得することが可能であるため、この方法はIPデバイスの移動度をサポートする際に特に役立つ。同時に、この方法は、所望される場合、DHCPの(IPv6互換)バージョンを使用したIPアドレスの管理を依然として可能にする。
【0025】
複数のスタック実施形態により、2つのネットワークアドレスは、遷移の間、依然としてアクティブ状態であり得る。あるネットワーク空間アドレス領域から別のネットワーク空間アドレス領域への遷移(IP1−>IP2)は、通常、メークビフォーブレーク(make−before−break)を使用して実行される、すなわち、古い領域が中断される前に新しい領域がアクティブにされる。そのようにして、遷移はトランスポートレベルすなわち、TCPレベル/IPxレベル(参照番号24および25)でアドレス指定に影響を及ぼさない。
【0026】
ネットワークスタックの上部にロケータ識別子(Loc ID)24が挿入され、スタック20は、ユーザアドレスIPx層25と、TCP層26と、アプリケーション(APP)層27とで完成される。かかるロケータ識別子24は、通常、ネットワークIP層の拡張ヘッダとして符号化されることが可能であり、例えば、32ビットの名前空間から画定され得る。ロケータ識別子24は二重機能を有する。すなわち、ロケータ識別子は、一方で、ネットワークIPアドレスに関して、トランスポートレベルでユーザ通信の独立を可能にし、他方で、移動体ノードの位置を突き止めるのを円滑にする。ユーザ空間からのIPアドレスIPx(参照番号25)は、ネットワーキングアドレス指定空間と関係なく割り当てられる。
【0027】
移送プロトコルは、通常、TCPである点に留意されたいが、当業者は、DCCP(データグラム輻輳制御プロトコル(Datagram Congestion Control Protocol))など、接続破壊原理を使用した任意のその他の適切な移送プロトコルも使用され得る点を理解されよう。さらに、ネットワークIPおよびDLLヘッダはヘッダ圧縮の対象であり得る。
【0028】
次に、
図3を参照して、本発明の方法の一実施形態が例示される。第1のステップ31において、(ブロック14に示される)IPエッジ1に配置されたロケータ識別子(Loc ID)マッパ1は、例えば、DHCPオプションの一部として、ロケータ識別子(LOC ID1)を移動体ノードに公表する。例示された実施形態では、ロケータ識別子マッパ1はIPエッジ1に配置されるが、当業者は、この機能は、移動体ノードとIPネットワークとの間のどこにあってもよい点を理解されよう。かかるロケータ識別子マッパは、複数のサブネットが同じ外部ネットワークの一部である限り、それらの複数のサブネット間で共有され得る。移動体ノードおよび対応するノードのネットワークIPアドレスは、例えば、IETF(インターネット技術タスクフォース)において画定される現在のIPリース要求/応答機構に対する何らの変更なしに、DHCPを介して割り当てられる点にさらに留意されたい。
【0029】
第2のステップ32において、移動体ノード10は、そのユーザIPアドレスIPxをロケータ識別子マッパ1に登録する。これは、例えば、<Loc ID、IP2>タプルを補間する情報以外、何らのさらなる情報なしに格納された関連性であり得る。
【0030】
次に、対応するノード11は移動体ノード10と通信することを望むことが仮定される。対応するノード11は、まず、DNSを介して移動体ノード10に関連する名前を解決することになり、DSN調査の結果として、対応するノード11は、(図面に情報を詰め込み過ぎないよう、
図3に示されない)移動体ノード10のユーザアドレスIPxを受信する。当業者は、DNSシステムの変形形態を使用することも可能である点を理解されよう。
【0031】
次に、第3のステップ33において、対応するノードは、Loc IPx要求をエッジルータ、すなわち、(ロケータ識別子マッパ2を備えるブロック15として示される)IPエッジ2にエニーキャストする(anycasts)。この時点で、IPエッジ2は、通常、IPxまたはネットワークアドレスIP2に関連するIPエッジ1のロケーション識別子(Loc ID1)を知らない。
【0032】
IPエッジ2は、次に、まず、ユーザアドレスIPxに基づいて、IPエッジ1に関連するロケータ識別子マッパ1のIPアドレスを取り出すことになる。可能な方法によれば、IPエッジ2は、ユーザアドレス空間のIP表内でIPxの調査を実行する。この調査の結果は、対応するプロバイダ独立(PI)サブネットをホストしているIPアドレスのセットを提供する。IPxの場合、IPアドレスのこのセットは、IPエッジ1のIPアドレスを含むことになる。所与のPIサブネットは、様々なロケーションを介して区分化され得る点に留意されたい。N個の複数のロケーション、すなわち、例えば、N個の複数のロケータ識別子を有するアフィリエーション(Affiliation)Xに関するPIプレフィックスは、結果として、IPxに関して以下の調査結果をもたらすことになる。{IPエッジ1、...、IPエッジI、...、IPエッジN}
【0033】
第4のステップ34において、受信IPエッジ2は、IPxの調査の結果として見出されたIPエッジのセットにアドレス解決要求を送信する。これは、IPエッジ1とロケータ識別子マッパ1とを有するブロック14がこの要求を受信することになることを意味する。単一のクエリが複数のロケータ識別子マッパに達することになる非ゼロの確率が存在し得る点に留意されたい。しかし、IPエッジ1に関連するロケータ識別子マッパ1だけが、タプル<IPx、Loc ID、IP2>を用いてIPエッジ2に応答することになる。
【0034】
最終的に、IPエッジ2は、タプル<IPx、Loc ID、IP2>を用いて、対応するノードクエリに応答する。これは、
図3において矢印35によって示される。将来の使用のために、通常、リンク<IPx、Loc ID1、IP2>−>{IPエッジ1}がロケータ識別子マッパ2内に入力されることになる。この応答は、前記リンクが有効な存続期間を示すリース期間を含み得る点に留意されたい。
【0035】
本発明のロケータ識別子マッパの一実施形態は、通常、以下の特徴を有する。
ロケータ識別子マッパは、オプションで、その関連性が依存し得るタイマ(例えば、DHCPリース期間)以外、いかなる追加のタイマも維持しない。所与のロケータ識別子マッパは、IPエッジのセットをカバーする分散型関連性維持システム(distributed association maintenance system)である。
ロケータ識別子構造は、接続されたサブネットを介して独自に割り当てられなければならない。通信している対応するノードエンティティと移動体ノードエンティティとの間にロケーション識別子の折衝は存在しない。
ロケーション識別子は、(すなわち、基地局同士の間の)DLLマイクロ移動度ハンドオーバーに関与しない。
ネットワークアドレスが同じロケーション内の移動体ノードに割り当てられる場合、同じ識別子が維持されて、IPエッジ1に関連するマッパは、形態<IPx、Loc ID、+IP1>の更新をIPエッジ2に送信し、このようにして、これまでの関連性を更新することが可能である。
移動体ノードがあるIPネットワークアドレス空間領域から別のIPネットワークアドレス空間領域に遷移する場合、移動体ノードは、遷移周期の間、両方の関連性をアクティブに維持する。IP2が非アクティブとして検出されると、IP2は、形態<IPx、Loc ID、−IP2>の更新を送信することによって単に解放される。対応するノードを用いてピアリングしているロケータ識別子マッパは、その情報を対応するノードだけに渡している。
【0036】
ロケータ識別子マッパは、任意のアクセスシステム内および/または任意のエッジルータ内で、さらに、例えば、Alcatel−LucentからのIP DSLAM内または7750ルータ内で実装され得る点に留意されたい。
【0037】
結論として、本発明の主な利点は以下の通りである。
提供される解決策は、トンネリングがない、
提供される解決策は、任意の中間ネットワークノードの転送面に何の影響も与えない(
図3の参照番号37を参照されたい)、
この解決策は、マイクロ移動度問題とマクロ移動度問題の両方を解決する、
この解決策は、TCP連続性/IP連続性を提供する、
この解決策は、効率的なローカライゼーションを提供する。
【0038】
本発明の原理は上で特定の実施形態に関して提示されているが、この記載は単なる例として行われ、添付の特許請求の範囲によって決定される保護の範囲の限定とみなされ得ない点を明瞭に理解されたい。