(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905769
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】いびきや無呼吸を防止するための頭部装着具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20160407BHJP
A61F 5/56 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
A61F5/01 G
A61F5/56
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-105530(P2012-105530)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-233188(P2013-233188A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月21日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512116572
【氏名又は名称】株式会社末木組
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 輝子
【審査官】
山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−164480(JP,A)
【文献】
実開平04−042810(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3122719(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0048282(US,A1)
【文献】
特開2002−011032(JP,A)
【文献】
特開2002−045384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
A61F 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の後頭部を覆う保持シートと、
前記保持シートの中央部に所定の長さで縦に配置した棒状弾性体と、
該保持シートの周辺を取巻くように取り付けられた帯状体と、
該帯状体の顔面の両側の位置に所定の間隔で両端を取り付けられた一対の牽引帯と、
該一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材とを備え、
前記棒状弾性体は、その断面が使用者の後頭部に当接する略扁平な接触面と、該接触面から突き出る膨み面とを備えていて、前記棒状弾性体からなる凸型形状の存在により、使用者が頭部を枕上に置くと不安定になって顔が自然にどちらかを向いて横向きとなり、前記棒状弾性体を後頭部が直に圧迫する状態を回避可能にして、装着中でかつ睡眠中は使用者の頭部が仰向け位置に収まらないようになっていることを特徴とするいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具。
【請求項2】
前記棒状弾性体は、より硬質の中芯を備え、経年変化によるへたりが発生しないようになっていることを特徴とする請求項1に記載のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具。
【請求項3】
前記棒状弾性体が取付けられた保持シートは、前記輪状に形成された帯状体の内側を区画帯によってH型に仕切られ、前記棒状弾性体を設置する区画以外の区画を所定メッシュの網状シートで形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具。
【請求項4】
前記一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材は、伸縮自在の合成繊維生地を使用してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具。
【請求項5】
前記一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材は、一対の帯状あご保持部材の端部を一対の牽引帯にそれぞれ固定し、その開放端を面ファスナやバックルを用いて連結することにより、前記帯状あご保持部材を所定の長さで保持できるようにしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はいびきや無呼吸状態などを解消することが可能ないびきや無呼吸を防止するための頭部装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
いびきや無呼吸状態は、仰向けで寝ることで発生することが多く、特に肥満体の人や老人に多い。すなわち、仰向けに寝ることでのどの奥(舌根部)が沈下し、気道を塞ぐのが原因と考えられる。このようないびきや無呼吸状態は、頭部が横向きになって寝ることで防止することができる。なぜなら、横向きになることで舌根部が沈下せずにすむので気道が確保され、スム−ズに呼吸ができるようになるからである。
【0003】
そのため、特開2012−75816号公報(特許文献1参照)のように頭部から背中にかけてL字型に形成された枕によって、横向きになった体を支えるものや、特開2009−268858号公報(特許文献2参照)のようにバンドで背枕を身体に固定し身体を横向きに固定する仰向け寝防止器具など、体を横向きにした状態でいびきなどを防止するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−75816号公報
【特許文献2】特開2009−268858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような枕では、夜中に寝返りを繰り返しているうちに枕が体から離れてしまい、いつの間にか仰向けに寝ている場合もあって、いびきを完全に防止することはまできない。
また、特許文献2は、体を一定方向の横向きにして身体を保持するため、いびきや無呼吸の防止効果は高いが、所定の横向き状態にのみ拘束されてしまって姿勢が悪くなったり肩こりを起こしたりしてしまうという問題があった。
【0006】
この発明は従来例の以上のような課題を解決しようとするものであって、寝返りを繰り返してもこの発明の頭部装着具が体から離れることはなく、仰向けになることが防止できるためいびきを完全に防止することが可能となり、また所定の横向き状態にのみ拘束されることがないので、姿勢が悪くなったり肩こりを起こしたりすることのないいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するためこの発明のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具は、
使用者の後頭部を覆う保持シートと
前記保持シートの中央部に所定の長さで縦に配置した棒状弾性体と、
該保持シートの周辺を取巻くように取り付けられた帯状体と、
該帯状体の顔面の両側の位置に所定の間隔で両端を取り付けられた一対の牽引帯と、
該一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材とを備え、
前記棒状弾性体は、その断面が使用者の後頭部に当接する略扁平な接触面と、該接触面から突き出る膨み面とを備えていて、前記棒状弾性体を後頭部が直に圧迫する状態を回避可能にして、使用者の頭部が仰向け位置に収まりにくいようになっていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具において、前記棒状弾性体は、より硬質の中芯を備え、経年変化によるへたりが発生しにくいようになっていることをも特徴とするものである。
【0009】
この発明のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具において、前記棒状弾性体が取付けられた保持シートは、前記輪状に形成された帯状体の内側を区画帯によってH型に仕切られ、前記棒状弾性体を設置する区画以外の区画を所定メッシュの網状シートで形成したことをも特徴とするものである。
【0010】
この発明のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具において、前記一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材は、伸縮自在の合成繊維生地を使用してなることをも特徴とするものである。
【0011】
この発明のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具において、前記一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材は、一対の帯状あご保持部材の端部を一対の牽引帯にそれぞれ固定し、その開放端を面ファスナやバックルを用いて連結することにより、前記帯状あご保持部材を所定の長さで保持できるようにしたことをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の第1発明においては、使用者の後頭部に所定の長さで縦に配置した棒状弾性体と、該棒状弾性体が取付けられた保持シートと、該保持シートの周辺を取巻くように取り付けられた帯状体と、該帯状体の顔面の両側の位置に所定の間隔で両端を取り付けられた一対の牽引帯と、該一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材とを備えている。
したがって、前記棒状弾性体によって寝返りを繰り返してもこの発明の頭部装着具が体から離れることはなく、かつ仰向けになることが防止できるためいびきを完全に防止することが可能となり、また所定の横向き状態にのみ拘束されることがないので、姿勢が悪くなったり肩こりを起こしたりすることのないいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具を提供することができる。
【0013】
またこの発明の第1発明において、前記棒状弾性体は、その断面が使用者の後頭部に当接する接触面と、該接触面からほぼ山形に形成された膨み面とを備え、使用者の頭部には密着することが可能で、しかも使用者の頭部が仰向け位置に収まりにくいようになっている。
したがって、前記棒状弾性体によって寝返りを繰り返してもこの発明の頭部装着具が体から離れることはなく、かつ仰向けになることが防止できるためいびきを完全に防止することが可能となる。
【0014】
この発明の第3発明において、前記棒状弾性体が取付けられた保持シートは、前記輪状に形成された帯状体の内側を区画帯によってH型に仕切られ、前記棒状弾性体を設置する区画以外の区画を所定メッシュの網状シートで形成されている。
したがって、使用者の頭部に密着する剛性を備え、かつ通気性を備えているので就寝中に発汗等で不快な感じを抱くことがなく、使用者が眠りを妨げられることがない。
【0015】
この発明の第4発明において、前記一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材は、伸縮自在の合成繊維生地を使用したものである。
したがって、使用者の頭部の輪郭やあごまでの距離等に関係なく使用者のあごに確実に装着することができ、肌触りが良いので使用者も違和感なく装着することができる。
【0016】
この発明の第5発明において、前記一対の牽引帯間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材は、一対の帯状あご保持部材の端部を一対の牽引帯にそれぞれ固定し、その開放端を面ファスナやバックルを用いて連結することにより、前記帯状あご保持部材を所定の長さで保持できるようになっている。
したがって、使用者の頭部の輪郭やあごまでの距離等に関係なく使用者のあごに確実に装着することができ、使用者が寝返りを繰り返してもこの発明の頭部装着具が体から離れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具の1実施例を示す側面図である。
【
図2】この発明のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具の他の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1においてこの発明のいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具10は、使用者の後頭部に所定の長さで縦に配置した棒状弾性体11と、該棒状弾性体11が取付けられた保持シート12と、該保持シート12の周辺を取巻くように取り付けられた帯状体13と、該帯状体13の顔面の両側の位置に所定の間隔で両端を取り付けられた一対の牽引帯14,14と、該一対の牽引帯14,14間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材15と備えている。
図において16は、前記帯状体13の端部を連結して長さを調節し、種々のサイズの頭部に対応することができるようにするための連結部材である。
【0019】
上述のような連結部材16の連結部としては、ベルクロファスナその他の面ファスナが好適に使用できる。すなわち、
図5に示すように前記帯状体13の端部にそれぞれ面ファスナ16aの雄部材と雌部材とを取り付け、
図5(a)の状態から
図5(b)の頭部に密着する位置において前記雄部材と雌部材とを結合させるのである。こうすることにより、前記帯状体13を頭部に密着するよう装着することができる。
もちろん、前記面ファスナ16a以外のバックル等からなる連結部材16を用いて連結することにより、前記帯状体13を所定の長さで保持できるようにしてもよい。また、前記帯状体13の所定位置にタック(縫いひだ)やダーツ(体の膨らみを立体的に形成するために布の一部をつまみ、膨らみに向けて先端を縫い消した縫い込み)を入れておくことによって、前記帯状体13を頭部に密着するよう装着できるようにしてもよい。
【0020】
前記棒状弾性体11は、
図4(a)に示すように、その断面が使用者の後頭部に当接する接触面21と、該接触面21から突き出るよう形成された膨み面22とを備え、使用者の頭部には前記接触面21で密着させることが可能であり、しかも膨み面22によって使用者の頭部が仰向け位置に収まりにくいようになっている。
また、
図4(b)は、前記棒状弾性体11として丸棒状の例を示したものである。もちろん、前記棒状弾性体11の形状としては、上述のような形状に限られるものではなく、使用者の頭部が仰向け位置に収まりにくいという機能に応じて適宜選択することができる。
前記棒状弾性体11の素材としては、低発砲のポリウレタン発泡体やポリエチレン発砲体等にみられるように適度な硬さを有するであり、かつ頭部に装着した場合において違和感がなく、睡眠の邪魔になるようなことのない素材を選択することが望ましい。
【0021】
なお、前記棒状弾性体11の素材として低発砲のポリウレタン発泡体やポリエチレン発砲体等のやや硬めの素材を用いた場合でも長期間の使用によって「へたり」がみられる場合があるので、
図4(c),(d)のように前記棒状弾性体11の内部に中実の中芯11aや中空(パイプ状)の中芯11bを入れておくこともできる。この中芯11a,11bとしては、木製やプラスチック製の棒状体、木製やプラスチック製、軽量金属製のパイプ等を好適に用いることができる。
【0022】
以上のように前記棒状弾性体11の存在によって、使用者が寝返りを繰り返してもこの発明の頭部装着具10が体から離れることはない。また、使用者が仰向けになることが防止できるため、使用者のいびきや無呼吸状態を完全に防止することが可能となる。さらに、寝返りを打つこと事態には特に障害にならないので、所定の横向き状態にのみ拘束されることがなく、使用者の姿勢が悪くなったり肩こりを起こしたりすることのないいびきや無呼吸を防止するための頭部装着具を提供することができる。
また、前記棒状弾性体11によって寝返りを繰り返してもこの発明の頭部装着具10が体から離れることはなく、かつ仰向けになることが防止できるためいびきを完全に防止することが可能となる。
【0023】
前記棒状弾性体11が取付けられた保持シート12は、
図3に示されているように、前記輪状に形成された帯状体13の内側を区画帯31によってH型に仕切られ、また前記棒状弾性体11を設置する区画A以外の区画B,C,Dを所定メッシュの網状シート32で形成されている。
前記保持シート12への棒状弾性体11の取付け方としては、該保持シート12に収納ポケット33を縫製してその中へ押し込んだり、接着剤等によって取り付けたりすることが挙げられる。もちろんその他、種々の方法で取り付けてもよい。また前述のように「へたり」が見られるようになったら、収納ポケット33内の棒状弾性体11を新しいものと入れ替えるようにしてもよい。
以上のような構造としたことにより、使用者の頭部に密着する剛性(寸法安定性)を備え、かつ通気性を備えているので就寝中に発汗等で不快な感じを抱くことがなく、使用者が眠りを妨げられることがない。
前記帯状体13や区画帯31の素材としては、寸法安定性が良く、通気性のある綿テープ等を用いることができ、保持シート12の区画Aには通気性の良い生地を、また区画B〜Dには天然あるいは合成繊維製の網状シート32を用いることが望ましい。
【0024】
図1に示すように、前記一対の牽引帯14,14間に差し渡すように取り付けた伸縮可能なあご保持部材15aとしては、柔軟で伸縮性のあるナイロン繊維やポリウレタン繊維製の生地を用いることが望ましい。このような生地を用いることにより、あご保持部材15aは伸縮可能であごにやさしく包み込むように装着することができ、非常に装着感のよいあご保持部材となる。
【0025】
図2に示すように、前記一対の牽引帯14,14間に差し渡すように取り付けた前記伸縮可能なあご保持部材15bは、一対の帯状あご保持部材の端部を一対の牽引帯14aに適宜長さにおいてホック17等を用いてそれぞれ固定することにより、前記帯状あご保持部材15bを所定の長さで保持できるようにしてある。もちろん、その開放端をベルクロファスナその他の面ファスナやバックルを用いて連結することもできる。
このようにすれば、使用者の頭部の輪郭やあごまでの距離等に関係なく使用者の頭部に確実に装着することができ、使用者が寝返りを繰り返してもこの発明の頭部装着具10が体から離れることはない。
【0026】
以上のように、前記棒状弾性体11からなる凸型形状の存在により、使用者が頭部を枕上に置くと不安定になって顔が自然にどちらかを向いて横向きとなるため、仰向け位置の場合のように舌の奥が喉を圧迫することがなくなり、無呼吸状態を防止することができる。むろん、いびきも無呼吸状態を防止すると同時に解消することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 頭部装着具
11 棒状弾性体
11a,11b 中芯
12 保持シート
13 帯状体
14,14 牽引帯
14a,14b 牽引帯
15a,15b あご保持部材
16 連結部材
16a 面ファスナ
17 ホック
21 接触面
22 膨み面
31 区画帯
32 網状シート
33 収納ポケット
A,B,C,D 区画