特許第5905787号(P5905787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905787
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】射出成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/28 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
   B29C45/28
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-151238(P2012-151238)
(22)【出願日】2012年7月5日
(65)【公開番号】特開2014-12380(P2014-12380A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147888
【氏名又は名称】株式会社積水工機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】591085927
【氏名又は名称】水菱プラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】三好 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中田 均
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−137521(JP,A)
【文献】 特開2000−033633(JP,A)
【文献】 特開2004−058374(JP,A)
【文献】 特開平09−052256(JP,A)
【文献】 実開昭58−123031(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型上に配設され、内部に互いに独立した複数のホットランナを設けていると共にこれらのホットランナの入口を成形ユニットのノズルの直下に対して偏位した異なる位置においてそれぞれ成形ユニットのノズルに向かって臨ませているホットランナブロックと、上記複数のホットランナにそれぞれ対応した複数の導入口を有し、上記ホットランナブロック上に摺動移動自在に配設されて上記成形ユニットのノズルの直下に達した導入口をその導入口に対応するホットランナの入口に連通させるノズルタッチブロックと、上記固定金型内に引き揃え状態にして並設され、上端が上記複数のホットランナの出口にそれぞれ連通していると共に下端がゲートを通じてキャビティに連通した複数の樹脂通路を備え、且つ、これらの樹脂通路にそれぞれ挿入して上記ゲートを開閉するバルブピンを設けてなるバルブ本体とから構成していることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
バルブピンを挿入した樹脂通路を引き揃え状に並設してなるバルブ本体の上端部に一つの断熱リングを装着していると共にバルブ本体の外周面にヒートバンドを装着していることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
バルブ本体を複数分割して各分割バルブ本体内にそれぞれバルブピンを挿入している一つの樹脂通路を設けてあり、各分割バルブ本体の外周面にヒートバンドを装着していると共にこれらの分割バルブ本体を引き揃え状に束ねてその上端部に一つの断熱リングをこれらの分割バルブ本体を囲むようにして装着していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
並設した複数の樹脂通路の下端ゲートに長さが短い延長通路を通じて一つの共通通路を設け、この共通通路をキャビティに連通させていることを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
隣接する樹脂通路におけるパルブピン間の間隔をホットランナブロック上に設置したこれらのバルブピンの作動用シリンダの径よりも狭くしている一方、隣接するバルブピン作動用シリンダのロッドに支持片の外端部を固着してこれらの支持片の内端部を近接状態で対向させ、これらの内端部に上記パルブピンの頭部をそれぞれ連結、支持させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
ホットランナブロックの上面に複数のホットランナの入口を設けている固定台を配設し、この固定台上に一定間隔を存してガイド部材を並設、固定してこれらのガイド部材間にノズルタッチブロックをガイド部材の長さ方向に往復移動自在に配設してあり、さらに、ガイド部材の対向側端部の上部に一定幅を有する直状フランジ部を突設してこのフランジ部の下面に上記ノズルタッチブロックの両側下部に突設した係合フランジ部の上面を摺動自在に係合させていると共に、これらの直状フランジ部の下面と係合フランジ部の上面とに長さ方向に一定間隔毎に凸部を設けてあり、ノズルタッチブロックの移動によって導入口が成形ユニットのノズル直下に位置した際に、上記ガイド部材の直状フランジ部の下面に設けている凸部上にノズルタッチブロックの係合フランジ部の上面に設けている凸部を乗り上げさせることによりノズルタッチブロックを固定台上に押し付けるように構成していることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項7】
ノズルタッチブロックの移動によって導入口が成形ユニットのノズル直下に位置した際に、その位置を検出してノズルタッチブロックの移動を停止させる位置検知センサーを配設していることを特徴とする請求項1又は請求項6に記載の射出成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形品の色替えが容易に行える射出成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶融している樹脂を金型のキャビティ内に充填して成形品を効率よく製造する手段としてホットライナ方式を使用し、スプルーからホットランナ、ゲートに至るまでの通路中の樹脂を常に溶融状態に保持しながらゲートから溶融樹脂をキャビティ内に充填して成形品を製造することが行われている。
【0003】
一方、近年、成形品として例えば自動車の内装材のように色が異なった内装材、例えば黒色の内装材と白色の内装材とを製造したい場合には、成形ユニットのノズルから溶融した黒色の熱可塑性樹脂(以下、単に溶融樹脂とする)を上記金型キャビティ内に充填して成形したのち、この金型を利用して上記成形ユニットのノズルから白色の溶融樹脂を金型キャビティ内に充填することにより、又は、白色の溶融樹脂を金型キャビティ内に充填して成形したのち、この金型を利用して上記成形ユニットのノズルから黒色の溶融樹脂を金型キャビティ内に充填することにより、それぞれ異なる色の成形品を製造することが行われている。
【0004】
この場合、いずれの色の溶融樹脂においても、スプルーからホットランナ、ゲートに至るまでの通路中にはその色の溶融樹脂が存在しているため、異なる色の成形品を製造する際、即ち、色替えを行う際に、成形ユニットのノズルからの試し打ちを多数回、行って成形品を完全にその色にする必要があり、樹脂が無駄に消費されて不経済であるばかりでなく、色替えが完全に行えるようになるまで時間を要することになる。
【0005】
このため、特許文献1に記載されているように、内部に二つのホットランナを設けているホットランナブロックを金型と合体させ、一方のホットランナのスプルーを成形ユニットのノズルと対向するように金型を固定してそのスプルーを通じて一方のホットランナ内に所定の色の溶融樹脂を供給することにより所定の色の成形品を製造し、別な色の成形品を製造する際に、上記金型をクレーン等により吊支してホットランナブロックにおける他方のホットランナのスプルーを成形ユニットのノズルと対向するように金型を固定して所定の色の成形品を製造するように構成したホットランナ金型の色替え装置が開発されている。
【0006】
また、特許文献2には、内部に二つのホットランナを設けているホットランナブロックを金型に装着すると共に、このホットランナブロック上に、射出ユニットのノズルから溶融樹脂を導入するための二つの導入口を所定の間隔を存して設けているノズルタッチブロックを移動自在に配設し、このノズルタッチブロックを移動させてその一方の導入口を射出ユニットのノズル直下に位置させた時に、該導入口を一方のホットランナに連通させてこのホットランナから金型背面側に設けているゲートを通じてキャビティ内に溶融樹脂を充填することにより所定の色の成形品を製造し、ノズルタッチブロックをその位置から移動させてその他方の導入口を射出ユニットのノズル直下に位置させた時に、該導入口を他方のホットランナに連通させてこのホットランナから金型背面側に設けている上記ゲートとは別なゲートを通じてキャビティ内に上記溶融樹脂の色とは異なる色の溶融樹脂を充填することにより上記とは異色の成形品を製造するように構成した射出成形金型が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−062085号公報
【特許文献2】特開2010−137521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者のホットランナ金型の色替え装置によれば、成形品の色替え行う時に、クレーン等を使用して金型全体を移動させなければならないために、作業か大掛かりとなって多大な労力と手間を要するばかりでなく、クレーン等の搬入、設置場所を必要とするといった問題点がある。
【0009】
一方、後者の射出成形金型によれば、金型を移動させることなく、ホットランナブロック上でノズルタッチブロックを移動させるだけで、簡単且つ確実に色替えを行うことができるが、ホットランナブロック内に設けている二つのホットランナの出口側にそれぞれ連通しているゲートはキャビティ内に臨ませているため、一方のホットランナからこのホットランナと連通したゲートを通じてキャビティ内に溶融樹脂を充填すると、この溶融樹脂は他方のホットランナ側に連通したゲート内に流入することになる。
【0010】
キャビティに臨んでいるゲートの開閉手段としては、一般に、ホットランナの出口にその上端部を連通させ、下端に上記ゲートを設けてなる樹脂通路を有し、且つ、この樹脂通路の中心部にゲートピンを樹脂通路の長さ方向に移動自在に挿入してこのゲートピンの下端によって上記ゲートを閉止するように構成したバルブ本体が知られているが、このバルブ本体を各ホットランナに対応して複数個、金型内にそれぞれ装着すると、一方のホットランナに連通した樹脂通路を有するバルブ本体と、他方のホットランナに連通した樹脂通路を有するバルブ本体との間隔が広くなってこれらの樹脂通路の下端からキャビティに臨ませているゲート間の間隔を狭くすることができない。
【0011】
同一構造で異色の成形品を射出成形する場合、上記一方のゲートからキャビティ内に射出充填する位置と、他方のゲートからキャビティ内に射出充填する位置とが大きくずれていると、同一構造の成形品であるにもかかわらず、強度にムラが生じる虞れがあり、さらに、ゲートからの射出跡が成形品における外部から見えがたい部分に設けられるようにしておくことが望ましいにもかかわらず、両方のゲート共にその部分を成形するキャビティに臨ませることが困難となり、見栄えのよい異色の成形品を得ることができなくなる虞れがあった。
【0012】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、異なる色の成形品を射出成形によって製造する際に色替えが簡単に行えて効率よく製造することができるのは勿論、異なる色の溶融樹脂をキャビティに射出充填するゲート間の間隔を狭くすることができて強度的に均一な成形品を得ることができると共に色替えしてもゲート跡を外部から見えがたい部分に設けることができる射出成形用金型を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の射出成形用金型は、請求項1に記載したように、固定金型上に配設され、内部に互いに独立した複数のホットランナを設けていると共にこれらのホットランナの入口を成形ユニットのノズルの直下に対して偏位した異なる位置においてそれぞれ成形ユニットのノズルに向かって臨ませているホットランナブロックと、上記複数のホットランナにそれぞれ対応した複数の導入口を有し、上記ホットランナブロック上に摺動移動自在に配設されて上記成形ユニットのノズルの直下に達した導入口をその導入口に対応するホットランナの入口に連通させるノズルタッチブロックと、上記固定金型内に引き揃え状態にして並設され、上端が上記複数のホットランナの出口にそれぞれ連通していると共に下端がゲートを通じてキャビティに連通した複数の樹脂通路を備え、且つ、これらの樹脂通路にそれぞれ挿入して上記ゲートを開閉するバルブピンを設けてなるバルブ本体とから構成していることを特徴とする。
【0014】
このように構成した射出成形用金型において、請求項2に係る発明は、バルブピンを挿入した樹脂通路を引き揃え状に並設してなるバルブ本体の上端部に一つの断熱リングを装着していると共にバルブ本体の外周面にヒートバンドを装着していることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、上記バルブ本体を複数分割して各分割バルブ本体内にそれぞれバルブピンを挿入している一つの樹脂通路を設けてあり、各分割バルブ本体の外周面にヒートバンドを装着していると共にこれらの分割バルブ本体を引き揃え状に束ねてその上端部に一つの断熱リングをこれらの分割バルブ本体を囲むようにして装着していることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項4に係る発明は、上記並設した複数の樹脂通路の下端ゲートに長さが短い延長通路を通じて一つの共通通路を設け、この共通通路をキャビティに連通させていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に係る発明は、上記隣接する樹脂通路におけるパルブピン間の間隔をホットランナブロック上に設置したこれらのバルブピンの作動用シリンダの径よりも狭くしている一方、隣接するバルブピン作動用シリンダのロッドに支持片の外端部を固着してこれらの支持片の内端部を近接状態で対向させ、これらの内端部に上記パルブピンの頭部をそれぞれ連結、支持させていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明は、上記ホットランナブロックの上面に複数のホットランナの入口を設けている固定台を配設し、この固定台上に一定間隔を存してガイド部材を並設、固定してこれらのガイド部材間にノズルタッチブロックをガイド部材の長さ方向に往復移動自在に配設してあり、さらに、ガイド部材の対向側端部の上部に一定幅を有する直状フランジ部を突設してこのフランジ部の下面に上記ノズルタッチブロックの両側下部に突設した係合フランジ部の上面を摺動自在に係合させていると共に、これらの直状フランジ部の下面と係合フランジ部の上面とに長さ方向に一定間隔毎に凸部を設けてあり、ノズルタッチブロックの移動によって導入口が成形ユニットのノズル直下に位置した際に、上記ガイド部材の直状フランジ部の下面に設けている凸部上にノズルタッチブロックの係合フランジ部の上面に設けている凸部を乗り上げさせることによりノズルタッチブロックを固定台上に押し付けるように構成していることを特徴とするせていて、この突出部上面に上記板状支持部材をボルトによって取り外し可能に固着していることを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項7に係る発明は、上記ノズルタッチブロックの移動によって導入口が成形ユニットのノズル直下に位置した際に、その位置を検出してノズルタッチブロックの移動を停止させる位置検知センサーを配設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、内部に互いに独立した複数のホットランナを設けているホットランナブロック上において、上記各ホットランナに対応した複数の導入口を有するノズルタッチブロックを摺動移動させて、所望の導入口を成形ユニットのノズルに対向させることにより、この導入口をホットランナブロックに設けている所定のホットランナに連通させることができると共にこのホットランナを通じて固定金型内に装着しているバルブ本体内の所定の樹脂通路を通じてその下端のゲートからキャビティ内に上記溶融樹脂を射出充填することができ、従って、異なる色の成形品を製造する際には、ノズルタッチブロックを移動させてその色に対応した導入口を成形ユニットのノズルに対向させることにより試し打ちなど行うことなく簡単且つ確実に色替えを行うことができる。
【0021】
さらに、固定金型内に装着しているバルブ本体には、上端が上記複数のホットランナの出口にそれぞれ連通していると共に下端がゲートを通じてキャビティに連通した複数の樹脂通路を設け、且つ、これらの樹脂通路にそれぞれ挿入して上記ゲートを開閉するバルブピンを設けているので、上記所望のホットランナからこのホットランナに連通する一つの樹脂通路を通じてこの樹脂通路の下端のゲートからキャビティに溶融樹脂を射出成形する際に、他の溶融樹脂のゲートを閉止状態にしてその溶融樹脂が他の樹脂通路内に入り込むのを確実に阻止することができるのは勿論、複数の樹脂通路はバルブ本体内に引き揃え状態に並設されているので、これらの樹脂通路を束ねた状態にしてバルブ本体を固定金型内の一つの孔に装着することができて構造を簡素化することができると共に金型の製作が容易となり、その上、隣接する樹脂通路のゲート間を狭くすることができて、異色の成形品を射出成形する場合に、一方のゲートからキャビティ内に射出充填する位置と、他方のゲートから射出充填する位置とを近接させることができ、従って、色替えしても強度ムラのない成形品を得ることができると共に、これらのゲートからの射出跡を外部から見えがたい成形品部分に設けることができて、見栄えのよい成形品を得ることができる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、バルブピンを挿入した樹脂通路を引き揃え状に並設してなるバルブ本体の上端部に一つの断熱リングを装着しているので、成形時におけるホットランナブロックの熱が固定金型に伝達するのを防止することができると共に、バルブ本体の外周面にヒートバンドを装着しているので、色替え時における樹脂通路の加熱をこのヒートバンドによって行うことができて構造を簡素化することができる。
【0023】
一方、請求項3に係る発明によれば、上記バルブ本体を複数分割して各分割バルブ本体内にそれぞれバルブピンを挿入している一つの樹脂通路を設けてあり、各分割バルブ本体の外周面にヒートバンドを装着していると共にこれらの分割バルブ本体を引き揃え状に束ねてその上端部に一つの断熱リングをこれらの分割バルブ本体を囲むようにして装着しているので、分割ボルブ本体を一つの断熱リングによって束ねた状態にして上記同様に固定金型の一つの孔に装着することができると共に、使用する樹脂通路のみをヒートバンドによって加熱することができる。
【0024】
さらに、請求項4に係る発明によれば、上記並設した複数の樹脂通路の下端ゲートに長さが短い延長通路を通じて一つの共通通路を設け、この共通通路をキャビティに連通させているので、色替えを行っても、どの樹脂通路の下端ゲートからキャビティに射出充填する位置は常に一カ所となり、従って、色替えした成形品の強度を均一にすることができると共に、射出跡が外部から見えがたい部分に確実に設けることができて、体裁のよい優れた外観の成形品を得ることができる。
【0025】
また、請求項5に係る発明によれば、上記隣接する樹脂通路におけるパルブピン間の間隔をホットランナブロック上に設置したこれらのバルブピンの作動用シリンダの径よりも狭くしている一方、隣接するバルブピン作動用シリンダのロッドに支持片の外端部を固着してこれらの支持片の内端部を近接状態で対向させ、これらの内端部に上記パルブピンの頭部をそれぞれ連結、支持させているので、ホットランナブロック上に複数のバルブピン作動用シリンダを設置しているにもかかわらず、隣接するバルブピン間の間隔をバルブピン作動用シリンダの径以下のできるだけ狭い間隔に設定することができ、異色の成形品を射出成形する場合に、上述したように一方のゲートからキャビティ内に射出充填する位置と、他方のゲートから射出充填する位置とを近接させることができて色替えしても強度ムラがなく、且つ、射出跡が外部から見えがたい成形品を得ることができる。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、上記ホットランナブロックの上面に複数のホットランナの入口を設けている固定台を配設し、この固定台上に一定間隔を存してガイド部材を並設、固定し、これらのガイド部材の対向側端部の上部に突設している直状フランジ部の下面にノズルタッチブロックの両側下部に突設している係合フランジ部を摺接させながら該ノズルタッチブロックをガイド部材に沿って移動させるように構成しているので、ノズルタッチブロックをガイド部材に沿って往復移動させることによって、所望の溶融樹脂導入口をこの導入口に対応するホットランナに簡単且つ確実に連通させることができる。
【0027】
その上、ガイド部材の上記直状フランジ部の下面とノズルタッチブロックの上記係合フランジ部の上面とに長さ方向に一定間隔毎に凸部を設けてあり、ノズルタッチブロックの移動によって導入口が成形ユニットのノズル直下に位置した際に、上記ガイド部材の直状フランジ部の下面に設けている凸部上にノズルタッチブロックの係合フランジ部の上面に設けている凸部を乗り上げさせてノズルタッチブロックを固定台上に押し付けるように構成しているので、射出成形時にノズルタッチブロックの下面を固定台の上面に隙間が生じさせることなく強固に且つ全面に亘って均一に圧着させることができて溶融樹脂を漏出させることなく射出成形を行うことができ、さらに、ノズルタッチブロックに三つ以上の導入口を一直線上に設けておいても、各導入口を射出ユニットのノズル直下に移動させる毎に、ガイド部材の直状フランジ部の下面に設けている凸部上にノズルタッチブロックの係合フランジ部の上面に設けている凸部を乗り上げさせてノズルタッチブロックを確実に固定台上に押しつけながら射出成形を行うことができる。
【0028】
請求項7に係る発明によれば、上記ノズルタッチブロックの移動によって導入口が成形ユニットのノズル直下に位置した際に、その位置を検出してノズルタッチブロックの移動を停止させる位置検知センサーを配設しているので、所望の導入口を成形ユニットのノズル直下に自動的に且つ正確に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】射出成形用金型全体の簡略縦断正面図。
図2】ホットランナブロック部分の平面図。
図3】ノズルタッチブロックの二つの導入口とこれらの導入口に連通するバルブ本体内の二つの樹脂通路との関係を説明するための断面図。
図4】ノズルタッチブロック上の第1スプルーブッシュ部分における縦断正面図。
図5】ノズルタッチブロック上の第2スプルーブッシュ部分における縦断正面図。
図6】固定台上に配設したノズルタッチブロックの斜視図。
図7】ノズルタッチブロックとガイド部材との分解斜視図。
図8】ノズルタッチブロックの移動用油圧シリンダの斜視図。
図9】ノズルタッチブロックをと固定台に圧着させた状態の簡略縦断側面図。
図10】バルブ本体の正面図。
図11】分割バルブ本体の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1図5において、射出成形金型は、固定金型1と移動金型2とを上下に対向させて配設して、これらの金型1、2の対向面間で成形品を得るためのキャビティ3を形成するように構成してあり、固定金型1上にはホットランナブロック4が配設、固定されている。
【0031】
このホットランナブロック4内には、第1ホットランナ5と第2ホットランナ6との2つのホットランナが水平方向に並列状に且つ上下方向に小間隔を存して互いに独立した状態で設けられていると共に、これらの第1、第2ホットランナ5、6の一端開口部をホットランナブロック4の中央部に互いに一定間隔を存してホットランナブロック4の上面から上方に臨ませてあり、この開口部を設けているホットランナランナブロック4の中央部上面に一定厚みを有する平面長方形状の板材からなる固定台7を固着していると共に、この固定台7に上記第1、第2ホットランナ5、6の一端開口部にそれぞれ連通した孔を上下面間に亘って貫設してこれらの孔によりその上端開口部を固定台7の上面から上方に臨ませている第1、第2ホットランナ5、6の入口5a、6aにそれぞれ形成している。
【0032】
なお、第1ホットランナ5の入口5aは、固定台7の幅方向の中央に対して一側方に一定の間隔を存した位置に設けられてあり、第2ホットランナ6の入口6aは、固定台7の幅方向の中央に対して他側方に一定の間隔を存した位置に設けられている。
【0033】
上記固定台7の上面両側端部に、角棒形状のガイド部材8、8を固定台7の幅方向に一定間隔を存して互いに平行に固着していると共に、これらのガイド部材8、8間に、その上面における幅方向の中央部に第1スプルーブッシュ10と第2スプルーブッシュ11とを長さ方向に一定間隔を存して突設しているノズルタッチブロック9をガイド部材8、8に沿って往復動自在に配設している。
【0034】
具体的には、図4図7に示すように、両側ガイド部材8、8の対向側端部の上部に全長に亘って一定幅を有する直状フランジ部8a、8aを突設している一方、ノズルタッチブロック9の両側下部に上記直状フランジ部8a、8aの下方の空間部内に挿入してその上面をこの直状フランジ部8a、8aの下面に摺接させている一定幅を有する直状の係合フランジ部9a、9aを突設してあり、この係合フランジ部9a、9aを上記直状フランジ部8a、8aに係合させながら両側ガイド部材8、8の長さ方向にノズルタッチブロック9を摺動移動させるように構成している。
【0035】
第1スプルーブッシュ10に設けているスプルー10a は、図4に示すようにその上端開口部をこのスプルーブッシュ10の中心部において上方に開口させていると共にこの上端開口部から下方に向かって一側方に傾斜させてあり、さらに、その傾斜通路の下端をこの第1スプルーブッシュ10の下方においてノズルタッチブロック9の一側部に穿設している傾斜通路12’の上端に連通させていると共に、この傾斜通路12’の下端を、後述するようにノズルタッチブロック9の移動によって第1スプルーブッシュ10が射出ユニットAのノズルaの下方に位置した時に、上記第1ホットランナ5の入口5aに連通させるように構成している。そして、スプルー10a の開口上端から上記ノズルタッチブロック9に設けている傾斜通路12’の下端に至る通路を溶融樹脂の第1導入口12に形成している。
【0036】
同様に、上記第2スプルーブッシュ11に設けているスプルー11a は、図5に示すようにその上端開口部をこのスプルーブッシュ11の中心部において上方に開口させていると共にこの上端開口部から下方に向かって上記第1スプルーブッシュ10のスプルー10a とは反対側の他側方に傾斜させてあり、さらに、その傾斜通路の下端をこの第2スプルーブッシュ11の下方においてノズルタッチブロック9の他側部に穿設している傾斜通路13' の上端に連通させていると共に、この傾斜通路13’の下端を、後述するようにノズルタッチブロック9の移動によって第2スプルーブッシュ11が射出ユニットAのノズルaの下方に位置した時に、上記第2ホットランナ6の入口6aに連通させるように構成している。そして、スプルー11a の開口上端から上記ノズルタッチブロック9に設けている傾斜通路13’の下端に至る通路を溶融樹脂の第2導入口13に形成している。
【0037】
さらに、射出ユニットAのノズルaから上記第1スプルーブッシュ10のスプルー10a を通じて第1ホットランナ5の入口5aに溶融樹脂を導入する際、及び、射出ユニットAのノズルaから上記第2スプルーブッシュ11のスプルー11a を通じて第2ホットランナ6の入口6aに溶融樹脂を導入する際に、ノズルタッチブロック9の下面と入口5a、6aを開口させている固定台7の上面との間に隙間が生じていると、溶融樹脂がその隙間から漏出する虞れがあるので、射出成形時にはノズルタッチブロック9をホットランナブロック4側に押圧してノズルタッチブロック9の下面を固定台7の上面に隙間なく押し付ける圧着手段14を設けている。
【0038】
この圧着手段14としては、図4図7、及び図9に示すように、上記ガイド部材8、8の直状フランジ部8a、8aの下面と、この下面に係合するノズルタッチブロック9の係合フランジ部9a、9aの上面とに、長さ方向に一定間隔毎に高さが数十ミクロン程度で頂面が平坦な極めて薄い凸部8b、9bをそれぞれ複数個、突設して、ガイド部材8、8の直状フランジ部8aの下面に突設している凸部8b上にノズルタッチブロック9の係合フランジ部9bの上面に突設している凸部9bが乗り上げて互いにその頂面同士を圧接させた際に、ノズルタッチブロック9をこれらの凸部8b、9bの高さの和に相当する微少な高さ寸法だけ下方に押動させて該ノズルタッチブロック9の下面を固定台7に強固に押接させることにより、上記隙間をなくするように構成している。
【0039】
これらの凸部8b、9b同士の圧接は、上述したように、射出ユニットAのノズルaの下方に第1スプルーブッシュ10又は第2スプルーブッシュ11が位置した時であり、この時、凸部8b、9b同士の圧接個所は少なくとも2個所、生じるようにこれらの凸部8b、9bの形成間隔及び数を設定している。具体的には、ノズルタッチブロック9の長さ方向を前後方向とした場合に、図に示すように、ガイド部材8の直状フランジ部8aの下面には前後両端部と中間部における2個所との4個所に凸部8bを該凸部8bの長さよりも長い間隔毎に突設している一方、ノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aには上記直状フランジ部8aに突設している凸部8bと長さ方向の中心部間の間隔が同一間隔毎にこの凸部8bよりも長さが短い凸部9aを前後両端部と中央部との3個所に突設している。
【0040】
従って、射出ユニットAのノズルaの下方に第1スプルーブッシュ10が位置した時に、図9に示すように、ノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上面に突設している3つの凸部9bがガイド部材8の直状フランジ部8aの下面に突設している前端側の凸部8bと中間部2個所の凸部8b、8bとにそれぞれ重なり合ってノズルタッチブロック9を固定台7上に全面的に均一に押しつけ、同様に、射出ユニットAのノズルaの下方に第2スプルーブッシュ10が位置した時に、ノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上記3つの凸部9bがガイド部材8の直状フランジ部8aの下面に突設している中間部2個所の凸部8b、8bと後端側の凸部8bとにそれぞれ重なり合ってノズルタッチブロック9を固定台7上に全面的に均一に押し付ける。
【0041】
また、射出ユニットAのノズルa下方に向かって第1、第2スプルーブッシュ10、11を移動させる際には、ノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上面に設けている凸部9bは、ガイド部材8の直状フランジ部8aの下面に設けている隣接する凸部8b、8b間の平滑な凹部下面に摺接し、ガイド部材8の直状フランジ部8aの下面に設けている凸部8bは、ノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上面に設けている隣接する凸部9b、9b間の平滑な凹部下面に摺接しながら移動する。
【0042】
また、固定金型1上には、上記ノズルタッチブロック9の後方に対向させて該ノズルタッチブロック9を前後方向に往復動させる切替用油圧シリンダ15を配設してあり、この切替用油圧シリンダ15のピストンロッド15a の先端をノズルタッチブロック9の後端面中央部に連結させている。
【0043】
この連結構造は、図2図3及び図8に示すように、後端面中央から前方に向かって一定幅と深さを有する挿入溝16a と、この挿入溝16a に連通して溝幅がこの溝16a よりも広い係止溝16b とを設けてなる連結片16をノズルタッチブロック9の後端に固着し、この連結片16の挿入溝16a にピストンロッド15a の先端部を上方から挿入して該ピストンロッド25a の大径頭部を15b を係止溝16b に上下動可能に係止させてなり、ガイド部材8、8の直状フランジ部8aの下面に突設している凸部8b上にノズルタッチブロック9の係合フランジ部9bの上面に突設している凸部9bが乗り上げたり、乗り上げを解除する際にノズルタッチブロック9が上下方向に微動するのを許容していると共にその動作が円滑に行えるように構成している。
【0044】
さらに、切替用油圧シリンダ15の作動によってノズルタッチブロック9が固定台7上を前後方向に摺動移動して、両側ガイド部材8、8の直状フランジ部8aの下面凸部8b上にノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上面凸部9bが乗り上げ、且つ、上記第1導入口12の上端が射出ユニットAのノズルa下方に達してその下端が第1ホットランナの入口5aに連通した時と、両側ガイド部材8、8の直状フランジ部8aの下面凸部8b上にノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上面凸部9bが乗り上げ、且つ、上記第2導入口13の上端が射出ユニットAのノズルa下方に達してその下端が第2ホットランナの入口5aに連通した時に、それぞれの位置を検出して油圧シリンダ15の作動を停止させる位置検知センサー17を配設している。
【0045】
上記ホットランナブロック4内に設けている第1、第2ホットランナ5、6は、図1図2に示すように、ホットランナブロック4の中央部から両側方に延びていてそれぞれの出口5b、6bを固定金型2の複数個所に設けられているバルブ本体18内に引き揃え状態に並設した第1、第2樹脂通路19、20の上端部にそれぞれ連通させている。
【0046】
各バルブ本体18は、固定金型1内に上下方向に垂直状態にして装着されてあり、その上端面をホットランナーブロック9の下面に密着させていると共に、上記第1、第2樹脂通路19、20の下端部に固定金型1と移動金型2との型締めにより形成されるキャビティ3内に連通する第1、第2ゲート21、22をそれぞれ形成している。これらの第1、第2ゲート21、22はその下端を直接、キャビティ3内に連通させておいてもよいが、この実施例においては第1、第2ゲート21、22の下端に延長短通路21a 、22a の上端部をそれぞれ連通させていると共にこれらの延長短通路21a 、22a の下端を一つの共通通路23に連通させてこの共通通路23の下端をキャビティ3内に連通させている。なお、第1、第2ゲート21、22と延長短通路22a 、22b 及び共通通路22は、第1、第2樹脂通路19、20の径よりも小径に形成されている。
【0047】
図中、24、25はゲートブッシュ、26はバルブ本体18及びゲートブッシュ24、25を囲繞するように装着したヒートバンド、27はヒートカバである。28はバルブ本体18の上端部外周面に装着して断熱リングで、その上端面をバルブ本体18の上端面とともにホットランナブロック4の下面に密着させてあり、下端部を固定金型1の上端部内に埋設させてホットランナブロック4の熱が固定金型1に伝達するのを遮断している。
【0048】
第1、第2樹脂通路19、20内の中心部には、その下端部によって上記第1、第2ゲート21、22を開閉する第1、第2バルブピン29、30が上下動自在に挿入してあり、これらのバルブピン29、30の上端部をホットランナブロック4を上下方向に摺動自在に貫通させてホットランナーブロック4の上面からその上端部を上方に突出させ、この突出先端部を設置台33上に並設状態に設置している第1、第2油圧シリンダ31、32のロッド31a 、32a に連結してこれらの第1、第2油圧シリンダ31、32の作動により上下動してそれぞれの下端で第1、第2ゲート21、22を開閉するように構成している。なお、上記設置台33は、ホットランナブロック4上に立設しているその脚体33a を断熱材から形成してホットランナブロック4の熱が第1、第2油圧シリンダ31、32に伝達するのを遮断している。
【0049】
上記第1、第2樹脂通路19、20は、互いにできるだけ接近させた状態となるように並設しておくことが好ましく、そうすることによってバルブ本体18の径を小さくし、バルブ本体18を挿着するためのホットランナ4に穿設する孔を小径にすることができる。その上、成形品の外観をよくするために、成形品における外部から見えがたい部分、例えば、凹部等に対応させて、この凹部を成形するためのキャビティの一部に上記第1、第2ゲート21、22を臨ませるように構成することができ、また、上記のように延長通路21a 、22a から共通通路23を通じてキャビティ3内に溶融樹脂を導入する場合には、延長通路21a 、22a
の傾斜度を小さくして射出後の型開きが容易に行えるようにすることができる。
【0050】
この際、第1、第2樹脂通路19、20間の幅間隔を狭めてこれらの樹脂通路にそれぞれ挿入している第1、第2バルブピン29、30間の間隔を第1、第2油圧シリンダ31、32の外径よりも小さくすると、これらの第1、第2バルブピン29、30を作動させる第1、第2油圧シリンダ31、32の一部が重複するようになって設置台33上に設置することができなくなるが、本発明実施例においては第1、第2バルブピン29、30間の幅間隔を油圧シリンダ31、32の外径よりも小さくしているにもかかわらず、れぞれ油圧シリンダ31、32によって上下動可能に構成している。
【0051】
即ち、図3に示すように、設置台33上に第1、第2油圧シリンダ31、32をその中心間の間隔がシリンダ径と同等、或いはそれ以上に設定した状態で設置すると共に、これらの第1、第2油圧シリンダ31、32の中心から下方に突出しているロッド31a 、32a に支持片34a 、34b の外端部をそれぞれ固着する一方、これらの支持片34a 、34b の内端部を互いに接近状態に対向させてその内端部に上記第1、第2バルブピン29、30の頭部を支持させている。また、この内端部におけるピン頭部の支持部を図に示すようにピン頭部が互いに接近、離間できるようにコ字状に形成して、ホットランナブロック4が加熱によって膨張して第1、第2バルブピン29、30の上端部が熱による変動する量に応じて接近、離間する方向にこの支持部内で頭部を水平移動し、その変動量を吸収するように構成している。
【0052】
このように構成した射出成形用金型を使用して異なった色の成形品、例えば、白色の成形品と黒色の成形品とを成形するには、ノズルタッチブロック9に立設している第1、第2スプルーブッシュ10、11のスプルー10a 、11a のいずれか一方、例えば、第1スプルーブッシュ10側を黒色成形品用に設定し、第2スプルーブッシュ11側を白色成形品用に設定する。
【0053】
そして、黒の色成形品を得る場合には、切替用油圧シリンダ15を作動させてノズルタッチブロック9を両側ガイド部材8、8に沿って移動させ、その上面に立設している第1スプルーブッシュ10のスプルー10a を射出ユニットAのノズルaの直下に位置させる。この際、ノズルタッチブロック9の移動は位置検出センサー17によって検出され、第1スプルーブッシュ10のスプルー10a が射出ユニットAのノズルaの直下に位置すると、切替用油圧シリンダ15の作動を停止させる。
【0054】
この状態にすると、第1スプルーブッシュ10のスプルー10a からこのスプルー10a に連通しているノズルタッチブロック9内の一方の傾斜通路12' の下端までの通路によって形成されている第1導入口12の下端が図3図4に示すように、ホットランナブロック4内に設けている第1ホットランナ5の入口5aに連通する。また、両側ガイド部材8、8の直状フランジ部8aの下面に設けている少なくとも2つの凸部8b、8b上にノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上面に設けている凸部9bが乗り上げてノズルタッチブロック9を下方に均等に押圧し、固定台7上に隙間なく圧着する。
【0055】
さらに、固定金型1の数カ所に配設している全てのバルブ本体18において、上記ホットランナブロック4内の第1ホットランナ5と連通している第1樹脂通路19に挿入した第1バルブピン29を第1油圧シリンダ31によって上動させて第1ゲート21を開放させる一方、第2ホットランナ6に連通している第2樹脂通路20に挿入した第2バルブピン30を第2油圧シリンダ32によって下動させて第2ゲート22を閉止した状態にする。
【0056】
この状態にして成形ユニットAのノズルaを第1スプルーブッシュ10のスプルー10a に押し付けて、黒色に着色された溶融樹脂をスプルー10a を通じて第1導入口12に注入すると、この溶融樹脂が第1導入口12を通じてこの第1導入口12に連通した第1ホットランナ5の入口5aから該第1ホットランナ5に入り、さらに、この第1ホットランナ5の出口5bからバルブ本体18内の第1樹脂通路19の上端に導入されてこの第1樹脂通路19の下端の第1ゲート21から延長通路21a を通じて共通通路23を通り、キャビティ3内に充填され、黒色の成形品が射出成形される。
【0057】
次に、白色の成形品を得る場合には、切替用油圧シリンダ15を作動させてノズルタッチブロック9を両側ガイド部材8、8に沿って移動させ、図5に示すようにその上面に立設している第2スプルーブッシュ11のスプルー11a を射出ユニットAのノズルaの直下に位置させる。この位置に達したことを位置検出センサー17によって検知させ、切替用油圧シリンダ15の作動を停止させる。
【0058】
第2スプルーブッシュ11が射出ユニットAのノズルaの直下に位置すると、今度はこの第2スプルーブッシュ11のスプルー11a からこのスプルー11a に連通しているノズルタッチブロック9内の他方の傾斜通路13' の下端までの通路によって形成されている第2導入口13の下端がホットランナブロック4内に設けている第2ホットランナ5の入口6aに連通する。この状態においては、両側ガイド部材8、8の直状フランジ部8aの下面に設けている少なくとも2つの凸部8b、8b上にノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上面に設けている凸部9bが乗り上げてノズルタッチブロック9を下方に均等に押圧し、固定台7上に隙間なく圧着している。
【0059】
さらに、固定金型1の数カ所に配設している全てのバルブ本体18において、上記ホットランナブロック4内の第1ホットランナ5と連通している第1樹脂通路19に挿入した第1バルブピン29を第1油圧シリンダ31によって下動させて第1ゲート21を閉止する一方、第2ホットランナ6に連通している第2樹脂通路20に挿入した第2バルブピン30を第2油圧シリンダ32によって上動させて第2ゲート22を開放させる。
【0060】
この状態にして成形ユニットAのノズルaを第2スプルーブッシュ11のスプルー11a に押し付けて、白色に着色された溶融樹脂をスプルー11a を通じて第2導入口13に注入すると、この溶融樹脂が第2導入口13を通じてこの第2導入口13に連通した第2ホットランナ6の入口6aから該第2ホットランナ6に入り、さらに、この第2ホットランナ6の出口6bからバルブ本体18内の第2樹脂通路20の上端に導入されてこの第2樹脂通路20の下端の第2ゲート22から延長通路22a を通じて共通通路23を通り、キャビティ3内に充填され、白色の成形品が射出成形される。
【0061】
なお、以上の実施例においては、第1、第2バルブピン29、30をそれぞれ挿入している第1、第2樹脂通路19、20を引き揃え状態にして共通のバルブ本体18内に並設し、このバルブ本体18の上端部に断熱リング28を装着すると共にバルブ本体18の外周面にヒートバンド26を装着しているが、図11に示すように、バルブ本体を複数分割した構造の小径の分割バルブ本体18a 内にバルブピンを挿入している一つの樹脂通路を設け、各分割バルブ本体18a の外周面にヒートバンド26a をそれぞれ装着していると共にこれらの分割バルブ本体18a を引き揃え状に束ねてその上端部に一つの断熱リング28a をこれらの分割バルブ本体18a を囲むようにして装着してなる構造としておいてもよい。
【0062】
また、上記実施例においては、白色と黒色等との二つの異なる色の成形品を得ることができる射出成形用金型の構造について説明したが、ノズルタッチブロック9上に三つ以上のスプルーブッシュを配設する一方、ホットランナブロック4内にこれらのスプルーブッシュにそれぞれ連通する複数のホットランナを設け、さらに、これらの各ホットランナの出口にそれぞれ連通しているバルブピンによって開閉自在な複数の樹脂通路を設けたバルブ本体を固定金型1内に装着することによって多数の色替えを可能にした射出成形用金型の構造であっても本発明を満足させることができる。
【0063】
この場合、両側ガイド部材8、8に案内されながら前後方向に往復摺動移動可能なノズルタッチブロック9を長くしてその上面に三つ以上のスプルーブッシュを一直線上に一定間隔毎に立設しておいても、このノズルタッチブロック9の長さに応じて長くした両側ガイド部材8、8の直状フランジ部8aの下面と上記ノズルタッチブロック9の係合フランジ部9aの上面とに、成形ユニットAのノズルaの直下に所望のスプルーブッシュを位置させた際に、ノズルタッチブロック9を下方に押圧する凸部8b、9bをスプルーブッシュの数に応じて多数、一定間隔毎に設けておくことができるが、スプルーブッシュの数に対応して設けられるバルブ本体内の樹脂通路は、多くなるとそれぞれのゲートからキャビティ内に射出する位置が大きくずれるので、これをなくするには、2〜4の樹脂通路を束ねた状態に配設しておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0064】
1 固定金型
3 キャビティ
4 ホットランナブロック
5、6 第1と、第2ホットランナ
7 固定台
8、8 ガイド部材
8a、8a 直状フランジ部
8b 凸部
9 ノズルタッチブロック
9a、9a 係合フランジ部
9b 凸部
10、11 第1、第2スプルーブッシュ
12、13 第1、第2導入口
14 圧着手段
15 油圧シリンダ
17 位置検出センサー
18 バルブ本体
19、20 第1、第2樹脂通路
21、22 第1、第2ゲート
28 断熱リング
29、30 第1、第2バルブピン
31、32 第1、第2油圧シリンダ
34 支持片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11