(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上記文献に記載のシート厚測定装置には,次のような問題点があった。すなわち,シートがばたついた場合には,測定ロール25がそのばたつきにより変位してしまう。そのため,正確なシート厚の測定ができなかった。特にシートが高速で搬送される場合には,シートのばたつきは大きくなる。
【0006】
なお,上記文献に記載のシート厚測定装置には,測定ロール25よりも下流に,ローラー対(「フィードロール13」と「ピンチロール14」)が設けられているが,これらのロール13,14は非可動(測定ロール25のような変位ができないもの)であるため,正確なシート厚の測定が可能となる程のばたつき抑制効果はなかった。逆に,このような非可動のロール13,14によりシートを挟んでしまうと,搬送されるシートに大きな負荷が掛かってしまうおそれもある。
【0007】
本発明は,上記した問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,シートがばたつくような状況下であっても,シート厚を正確に測定することが可能なシート厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明のシート厚測定装置は,シート状部材の第1主面に接する固定ローラーと,シート状部材の第2主面に接し,固定ローラーとの間にシート状部材を挟み込んで搬送するとともに,シート状部材の厚さに応じて変位する測定用変位ローラーと,測定用変位ローラーの変位量を測定する変位量測定部と,を備えるシート厚測定装置において,測定用変位ローラーの上流側に配され,シート状部材の第1主面に接し,シート状部材の厚さ方向に沿って変位可能な上流側変位ローラーと,上流側変位ローラーの変位に伴って伸縮するように配された上流側弾性部材と,上流側変位ローラーに対向配置されて上流側変位ローラーとの間にシート状部材を挟み込む上流側固定ローラーと,測定用変位ローラーの下流側に配され,シート状部材の第1主面に接し,シート状部材の厚さ方向に沿って変位可能な下流側変位ローラーと,下流側変位ローラーの変位に伴って伸縮するように配された下流側弾性部材と,下流側変位ローラーに対向配置されて下流側変位ローラーとの間にシート状部材を挟み込む下流側固定ローラーと,を備える。
【0009】
本発明によれば,搬送中のシート状部材がばたついた場合であっても,上流側変位ローラーと上流側固定ローラーとでシート状部材を挟み込んでいるため,測定用変位ローラーの上流でのばたつきを抑えることができる。また,下流側変位ローラーと下流側固定ローラーとでシート状部材を挟み込んでいるため,測定用変位ローラーの下流でのばたつきを抑えることができる。そのため,シート状部材のばたつきにより測定用変位ローラーが変位することがないため,シート厚を正確に測定することができる。
特に本発明では,上流側変位ローラー及び下流側変位ローラーは,シート状部材の厚さ方向に沿って変位可能であるため,シート状部材がばたつくと振動する。この振動は,上流側弾性部材及び下流側弾性部材によって吸収される。そのため,シート状部材に対して過剰な負荷を与えることなく,シート状部材のばたつきを吸収することができる。
また本発明では,上流側変位ローラー及び下流側変位ローラーは,シート状部材の第1主面に接し,測定用変位ローラーは,シート状部材の第2主面に接している。すなわち,各変位ローラーは,互い違いに配置されている。そのため,シート状部材のばたつきによって,各変位ローラーがともに変位するのを防ぐことができる。よって,測定用変位ローラーがシート状部材のばたつきによって変位するのを確実に規制することができる。
【0010】
ここで本発明のシート厚測定装置では,測定用変位ローラーは,当該測定用変位ローラーの回転軸線上にある変位中心部を中心とする円弧軌道で変位するものであり,変位量測定部は,測定対象物たる計測板と,平面状の測定面を有し,計測板の被測定面に対して測定面を対向させて配置され,測定面から被測定面までの離隔距離を測定する変位センサと,変位センサによる測定結果に基づいて測定用変位ローラーの変位量を算出する演算部と,を有し,変位センサ又は計測板のうちいずれか一方は,測定用変位ローラーの回転軸上における変位中心部よりも測定用変位ローラー側に設けられて,測定用変位ローラーの変位に伴って変位するものであり,他方は,予め定められた位置に固定されているものであり,計測板の被測定面は,測定用変位ローラーの回転軸方向に沿う側面からみて,シート状部材を挟むことで測定用変位ローラーが変位する向きに突出するように湾曲した円弧状である構成とすることができる。
【0011】
測定用変位ローラーの変位軌道は,回転軸線上にある変位中心部を中心とした円弧軌道で変位するところ,計測板の被測定面が平面であると,測定用変位ローラーの変位後には,変位センサの測定面は,計測板の被測定面に対して傾いて対向してしまう。そこで本発明のように被測定面を湾曲させれば,測定用変位ローラーの変位後における測定面の被測定面に対する傾きを小さくすることができる。そのため,誤差の少ない正確なシート厚を測定できる。
【0012】
また本発明のシート厚測定装置では,変位センサ(以下「第1変位センサ」という)に加えて,もう1つの変位センサ(以下「第2変位センサ」という)を,測定用変位ローラーの回転軸上における第1変位センサと変位中心部との間に設け,第1変位センサの測定結果に基づいて算出した測定用変位ローラーの変位量から回転軸の傾きを求める(求めた角度を「第1角度」という)とともに,第2変位センサの測定結果に基づいて算出した測定用変位ローラーの変位量から回転軸の傾きを求める(求めた角度を「第2角度」という)角度算出部と,角度算出部が求めた第1角度と第2角度とを比較して,不一致である場合には,当該シート厚測定装置のエラーである旨を報知するエラー報知部と,を備えている構成としてもよい。
【0013】
このように構成すれば,シート厚測定装置が機構的に故障なく動作しているか否かを知ることができる。すなわち,シート厚測定装置が正常に動作していれば,角度算出部が求めた第1角度と第2角度は一致するが,シート厚測定装置が正常に動作していなければ,角度算出部が求めた第1角度と第2角度は不一致となるため,このときに装置のエラーを報知することで,装置の使用者は,装置が正常に動作していないことを早期に知ることができる。
【0014】
また本発明のシート厚測定装置では,測定用変位ローラーと固定ローラーとは,シザーズギアを介して連動するものであることが望ましい。
【0015】
このように構成すれば,測定用変位ローラーと固定ローラーとをバックラッシュをほとんど生じさせることなくギアにより連動させることができる。よって,測定用変位ローラーの変位量に,バックラッシュによる誤差が含まれるのを抑えることができる。
【0016】
また本発明のシート厚測定装置では,測定用変位ローラーの回転軸は,測定用変位ローラーが固着されたローラー側シャフトと,ギアが固着されたギア側シャフトと,を含み,ローラー側シャフトとギア側シャフトとは,自在継手により連結されており,自在継手が,変位中心部をなすことが望ましい。
【0017】
このように構成すれば,自在継手が測定用変位ローラーの変位中心部をなしているから,変位中心部が異なる構成である場合よりも,測定用変位ローラーのシート状部材に対する追従性が高まる。そのため,測定用変位ローラーの変位量を,より正確に測定することができる。
【0018】
また本発明のシート厚調整装置は,上記したシート厚測定装置と,上流側変位ローラーよりも上流に配され,シート状部材の厚さを調整するプレスローラー対と,変位量測定部によって測定した測定用変位ローラーの変位量が予め定めた上限閾値よりも大きい場合に,プレスローラー対のニップ幅を縮小し,変位量測定部によって測定した測定用変位ローラーの変位量が予め定めた下限閾値よりも小さい場合に,プレスローラー対のニップ幅を拡大するプレスローラー制御部と,を備えている。
【0019】
このシート厚調整装置によれば,シート厚測定装置の測定結果に応じて,シート状部材の厚さを適宜調整するため,シート状部材の厚さを規格値の範囲内に保つことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,シートがばたつくような状況下であっても,シート厚を正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。まず,本形態に係るシート厚測定装置の測定対象の一例である電極板について説明する。次に,本形態に係るシート厚測定装置について詳細に説明する。
【0023】
図1は,本形態に係るシート厚測定装置10(
図2参照)の測定対象である電極板1(シート状部材の一例)の断面を示した斜視図である。電極板1は,リチウムイオン二次電池用の電極板であり,
図1に示すように,帯状の電極箔2の両面に塗工層3が形成されたものである。この構造は,正極板であっても負極板であっても同様である。このため,特に必要がない限り,両者を区別しないで説明する。ただし,その材質等に関しては,正極板と負極板とで異なっている。なお,電極箔2および塗工層3は,いずれも数十μm程度の厚さを有する。
【0024】
リチウムイオン二次電池用の正極板では,電極箔2としてアルミ箔等を用いることができる。塗工層3は,電極箔2に塗布された正極用塗工液(正極用ペースト)が乾燥して形成された層である。正極用塗工液は,スラリー状のものであり,通常少なくとも,正極活物質と,導電材と,結着材と,溶媒とを含有し,必要に応じてさらに,増粘材を含有するものである。正極活物質,導電材,結着材,増粘材としては,下記の材料が用いられる。
正極活物質:ニッケル酸リチウム(LiNiO
2),マンガン酸リチウム(LiMnO
2),コバルト酸リチウム(LiCoO
2)等のリチウム複合酸化物等
導電材:アセチレンブラック,ファーネスブラック,ケッチェンブラック等のカーボンブラック,グラファイト粉末等のカーボン粉末等
結着材:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),スチレンブタジエンラバー(SBR),ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等
増粘材:カルボキシメチルセルロース(CMC)等
また,正極用塗工液を調製する溶媒としては,下記の材料が用いられる。
溶媒:トルエン,メチルエチルケトン,N−メチル−2−ピロリドン或いはこれらの混合物のような有機溶媒,又は,水,さらには,これらの有機溶媒および水から選ばれる2成分以上の混合溶媒
【0025】
一方,リチウムイオン二次電池用の負極板では,電極箔2として銅箔等を用いることができる。塗工層3は,電極箔2に塗布された負極用塗工液(負極用ペースト)が乾燥して形成された層である。負極用塗工液は,スラリー状のものであり,通常少なくとも,負極活物質と,結着材と,溶媒とを含有し,必要に応じてさらに,導電材や増粘材を含有するものである。負極活物質としては,下記の材料が用いられる。また,結着材,導電材,増粘材,溶媒としては,上述した正極用塗工液と同様の材料が用いられる。
負極活物質:非晶質炭素,難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,黒鉛等の炭素系物質
【0026】
このような電極板1の製造工程の概要を説明する。電極板1の製造工程としては,まず,ローラー搬送される電極箔2に対して塗工液が塗布される工程が行われ,次に,電極箔2に塗布された塗工液を乾燥させて塗工層3とする工程が行われる。その後,塗工層3が形成された電極板を所定の幅で切り出して
図1に示す電極板1とする切断工程が行われる。
【0027】
なお,これらの工程等を経て得られた電極板1(正極板または負極板)は,製品を構成するのに必要な所定の長さに切断された後,例えば以下の工程を経てリチウムイオン二次電池となる。まず正極板および負極板を,セパレータを介在させて重ねて捲回して,電極体を形成する。次に,この電極体に対して,電極体から外部へ電気を取り出すための正極集電端子及び負極集電端子を接続する。その後,電極体を電池ケースに収容する。そして,電池ケースに設けられた注液孔から電解液を注入して電極体に含侵させ,注液孔を塞ぐ。これにより,リチウムイオン二次電池が完成する。
【0028】
本形態のシート厚測定装置10(
図2参照)は,上述の切断工程によって所定の幅で切り出されたシート状の電極板1(以下「シート電極7」という。)を測定対象としている。シート電極7の厚さを測定するのは,電池ケース内に収納され得るサイズであることを確保するためや,電池を構成した場合にその電池が正常に反応することを確保するためである。すなわち,電池の品質管理のためである。
【0029】
次に,本形態にかかるシート厚測定装置10について詳細に説明する。本形態に係るシート厚測定装置10は,
図2にその概略構成を示すように,複数のローラー対により,シート電極7を挟持して図中左方から右方へ搬送しながら,シート電極7の厚さを測定するものである。ローラー対としては,
図2において左右方向の中央にある測定用ローラー対20と,
図2において左側にある上流側ローラー対40と,
図2において右側にある下流側ローラー対60とがある。
【0030】
測定用ローラー対20は,シート電極7の下面7a(「第1主面」に相当する)に接しているフィードローラー21(「固定ローラー」に相当する)と,シート電極7の上面7b(「第2主面」に相当する)に接している測定用変位ローラー22とを有している。測定用変位ローラー22は,図中上下方向に沿って(矢印A1参照)移動可能に設けられている。すなわち測定用変位ローラー22は,フィードローラー21に対して近接したり離間したりすることが可能となっている。図中矢印A1で示す方向を近接離間方向ともいう。なおフィードローラー21は,回転のみ可能で,図中矢印A1で示す方向への変位はできない。
【0031】
上流側ローラー対40は,シート電極7の下面7aに接している上流側変位ローラー41と,シート電極7の上面7bに接している上流側固定ローラー42とを有している。上流側変位ローラー41は,図中上下方向に沿って(矢印A2参照)移動可能に設けられている。すなわち上流側変位ローラー41は,上流側固定ローラー42に対して近接したり離間したりすることが可能となっている。なお上流側固定ローラー42は,回転のみ可能で,上流側変位ローラー41のような変位はできないようになっている。
【0032】
下流側ローラー対60は,上流側ローラー対40と同様に構成されている。すなわち,下流側ローラー対60は,シート電極7の下面7aに接している下流側変位ローラー61と,シート電極7の上面7bに接している下流側固定ローラー62とを有している。下流側変位ローラー61は,図中上下方向に沿って(矢印A3参照)移動可能に設けられている。すなわち下流側変位ローラー61は,下流側固定ローラー62に対して近接したり離間したりすることが可能となっている。なお下流側固定ローラー62は,回転のみ可能で,下流側変位ローラー61のような変位はできないようになっている。
【0033】
また,シート厚測定装置10は,測定用変位ローラー22の変位量を検知するための変位センサ70を備える。すなわち,シート厚測定装置10は,測定用ローラー対20がシート電極7を挟み込んだ際の測定用変位ローラー22の変位量を,変位センサ70を使って測定することで,シート電極7の厚さを測定するものである。
【0034】
上流側ローラー対40と下流側ローラー対60は,搬送されるシート電極7のばたつきが,測定用ローラー対20の箇所まで伝わるのを防ぐために設けられている。すなわち,上流側ローラー対40と下流側ローラー対60との間の領域S1よりも上流の領域S2で生じたシート電極7のばたつきを,上流側ローラー対40の上流側変位ローラー41の変位により吸収するとともに,領域S1よりも下流の領域S3で生じたシート電極7のばたつきを,下流側ローラー対60の下流側変位ローラー61の変位により吸収する。これにより,領域S1にあるシート電極7がばたつくのを抑制し,シート電極7の厚さ(以下「シート厚」という)の正確な測定を可能にするものである。
【0035】
次に,
図3〜
図6に基づいて,シート厚測定装置10の詳細な構造を説明する。
図3は,シート厚測定装置10の構造を示す概略平面図であり,上面からシート厚測定装置10の内部を透視した図である。
図4は,
図3に示すIV-IV概略断面図である。
図5は,
図4に示すV-V概略断面図である。
図6は,
図4に示すVI-VI概略断面図である。まず,
図3〜
図5に基づいて,測定用ローラー対20に関する構造について説明する。
【0036】
図3〜5に示すように,測定用変位ローラー22は,回転軸23の一端に固着されている。回転軸23の他端には,第1連動ギア24が固着されている。回転軸23は,測定用変位ローラー22側のローラー側シャフト23aと,第1連動ギア24側のギア側シャフト23bとを含んでいる。ローラー側シャフト23aと,ギア側シャフト23bとは,自在継手(ユニバーサルジョイント)25により連結されている。なお,第1連動ギア24は,シート厚測定装置10のハウジング11内に配され,測定用変位ローラー22は,ハウジング11外に配され,回転軸23は,ハウジング11を貫通している。図示を省略するが,シート厚測定装置10は,測定用変位ローラー22の外表面をクリーニングするための樹脂製ブレードを備えており,これにより測定用変位ローラー22の外表面に付いた付着物を除去する。付着物を除去するのは,シート厚を誤差なく正確に測るためである。
【0037】
測定用変位ローラー22と対向するフィードローラー21は,回転軸28の一端に固着されている。回転軸28の他端には,第1連動ギア24と噛み合う第2連動ギア29が固着されている。第1連動ギア24および第2連動ギア29は,シザーズギアである。シザーズギアは,メインギアとサブギアとからなり,メインギアとサブギアを相対回転可能に重ねて組み合わせるとともに,両ギア間にそれらを互いに反対方向に回転付勢するばねを装着したギアである。これにより,第1連動ギア24の歯と第2連動ギア29の歯との間にバックラッシュをほとんど生じさせずに,両ギア24,29を噛み合わせることができる。
【0038】
第2連動ギア29には,電動モーター30の出力軸31に固着された駆動ギア32が噛み合っている(
図3参照)。第2連動ギア29はシザーズギアであるため,第2連動ギア29と駆動ギア32との噛み合いも,バックラッシュのほとんど発生しない良好なものとなる。
【0039】
また,回転軸28上の第2連動ギア29の内側には,回転角計測板33が取り付けられている。回転角計測板33の近くには,回転角計測板33の回転位置に応じて検出信号を出力する回転角センサ34が取り付けられている。回転角センサ34は,回転角計測板33の回転位置を検出することで,測定用変位ローラー22の回転位置を検出するものである。
【0040】
また,ローラー側シャフト23aには,それぞれ軸受部材35を介して,2つの変位センサ70,75が取り付けられている。ハウジング11の外側に配されている変位センサが,メイン変位センサ(「第1変位センサ」に相当する)70であり,ハウジング11の内側に配されている変位センサが,サブ変位センサ(「第2変位センサ」に相当する)75である。
【0041】
メイン変位センサ70およびサブ変位センサ75は,静電容量型の変位センサである。静電容量型の変位センサ70とは,センサの測定面から測定対象物までの間の静電容量を測ることにより,その間の距離を測るセンサである。すなわち,静電容量Cと,センサの電極(測定面)の面積Sと,センサの測定面から測定対象物までの距離Dと,空気中の誘電率εとの間に,C=(ε×S)/Dの関係があることを利用して,Cを測ることにより,Dを求めるものである。従って,センサの測定面と測定対象物の被測定面とは,平行に対面していることが,正確な測定のためには必要である。また,測定対象物は導体であり,測定対象物とセンサの電極(測定面)との導通が取れている必要がある。
【0042】
本実施形態では,メイン変位センサ70の上方には,計測板80が設けられている。計測板80は,ハウジング11の外壁面11a(
図5参照)から水平に突設されている。また,サブ変位センサ75の上方にも,計測板85が設けられている。この計測板85は,ハウジング11の内壁面11bから水平に,且つ,計測板80と同じ高さに設けられている。これら2つの計測板80,85の板厚や幅は,同じである。これらの計測板80,85は,導体である。計測板80は,メイン変位センサ70の測定面71との導通が取れている。計測板85は,サブ変位センサ75の測定面76と導通が取れている。なお,メイン変位センサ70の測定面71およびサブ変位センサ75の測定面76は,
図3に示すように平面視において円形状である。
【0043】
図7は,
図5のX部の拡大図である。
図7に示すように,計測板80は,メイン変位センサ70の測定面71に対向する被測定面81を備えている。計測板80の被測定面81とメイン変位センサ70の測定面71との間の離隔距離は,300μm〜500μm程度である。被測定面81は,上方に凹むように湾曲している。言い換えれば,被測定面81は,側面からみて上方に突出する円弧状である。このように被測定面81を円弧状としているのは,シート電極7の厚さに応じて変位する際の測定用変位ローラー22の軌道が,回転軸23の変位中心部23c(
図5参照)を中心とする円弧軌道(
図5の矢印B参照)であるためである。本実施形態では変位中心部23cは自在継手25の箇所である。すなわち,測定用変位ローラー22は,自在継手25を中心とする円弧軌道(
図5の矢印B参照)で変位する。これに対応して被測定面81を円弧状とすることで,シート電極7の厚さに応じて測定用変位ローラー22が変位したときであっても,メイン変位センサ70の測定面71と被測定面81とが略平行に対面できるようにしている。
【0044】
ここで,計測板80は,計測板80の鉛直下方に曲率中心を有する円弧を有しており,この円弧の曲率半径は,大きい方が好ましく,22000mm以上とするとなお良い。なお
図7に()を付けて示すように,サブ変位センサ75の計測面76に対向する計測板85の被測定面86も,計測板80の被測定面81と同様の湾曲面となっている。
【0045】
次に,
図3,
図4,及び
図6に基づいて,上流側ローラー対40に関する構造について説明する。なお,下流側ローラー対60に関する構造については,上流側ローラー対40に関する構造と同様の構成であるため,同様の符号を付して,説明を省略する。
【0046】
図3,4及び6に示すように,上流側固定ローラー42は,回転軸43の一端に固着されている。回転軸43の他端は,ハウジング11の内壁面側に設けられた軸受部材44に挿入され支持されている。上流側固定ローラー42と対向する上流側変位ローラー41は,回転軸47の一端に固着されている。回転軸47の他端は,軸受部48に挿入され支持されている。この軸受部48は,ハウジング11の底壁に固定された支持部材49に対して,回転軸47と直交し且つ水平面と平行な回転軸50を中心として回転可能に軸支されている。すなわち,軸受部は,
図6中矢印Cで示す方向に回転可能である。これにより,上流側変位ローラー41は,上下方向に移動可能となっている(詳細には,回転軸50を中心とした円弧軌道での移動が可能となっている)。
【0047】
また,この上流側変位ローラー41の回転軸47には,ハウジング11の内壁面に近い位置に,軸受部材53が取り付けられている。この軸受部材53からは,丸棒形状のスプリングガイド54が下方に向かって延設されている。スプリングガイド54には,スプリング55(弾性部材に相当する)が嵌挿されている。スプリング55は,ハウジング11の底壁に設けられた台座部56に配置されている。スプリング55は,上流側変位ローラー41を上流側固定ローラー42に近づける向きに付勢している。本形態のシート厚測定装置10では,シート電極7の搬送に伴うばたつきは,上流側変位ローラー41が変位することによりスプリング55に吸収される。
【0048】
本形態のシート厚測定装置10では,このような構成の上流側ローラー対40と下流側ローラー対60との間に,測定用ローラー対20が配置されている(
図2参照)。そのため,測定用変位ローラー22に向かって移動してくるシート電極7のばたつきは,上流側ローラー対40の上流側変位ローラー41の変位により吸収される。また,測定用変位ローラー22から離れていく際のシート電極7のばたつきは,下流側ローラー対60の下流側変位ローラー61の変位により吸収される。従って,シート電極7がばたつくような状況下であっても,そのばたつきを吸収することで,シート厚を正確に測定することができる。
【0049】
特に本形態のシート厚測定装置10では,上流側ローラー対40の上流側変位ローラー41と,下流側ローラー対60の下流側変位ローラー61は,測定用変位ローラー22とは,逆のシート電極7の下面7a側に設けられている。すなわち,シート電極7の搬送方向に沿ってみたときに,変位可能なローラーは,シート電極7の下側,上側,下側と,互い違いになるように配置されている。そのため,シート電極7のばたつきによって,変位可能な3つのローラーがそろって同じ向きに変位してしまうことがない。このように本形態のシート厚測定装置10では,測定用変位ローラー22とは逆の面に接するように上流側変位ローラー41および下流側変位ローラー61を配置したため,
図2中のS1領域へシート電極7のばたつきが伝わるのを確実に抑制することが可能となっている。
【0050】
ここで,本形態のシート厚測定装置10は,
図8に示すように,シート電極7の製造ラインの中で,シート電極7の厚さを調整するプレス装置100の下流に配置されるものである。プレス装置100は,一組のプレスローラー対101を備える。プレスローラー対101は,シート電極7の下面7aに接し,図中矢印A4で示す方向に沿って変位可能なプレスローラー102と,シート電極7の上面7bに接し,プレスローラー102に対向して設けられた対向ローラー103とを有する。
【0051】
プレスローラー102は,対向ローラー103の外周面103aとの間にシート電極7を挟み込むように設けられている。つまり,プレスローラー102の外周面102aは,対向ローラー103の外周面103aとともにシート電極7をプレスする押圧面として機能する。以下では,プレスローラー102の外周面を「押圧面102a」と表記する。
【0052】
プレスローラー102は,図示しない駆動源を含む移動機構により,対向ローラー103に対して近接したり離間したりする方向(
図8において上下方向)に移動可能となっている(矢印A4参照)。そのためプレス装置100では,プレスローラー102を移動させることにより,対向ローラー103の外周面103aと押圧面102aとの間隔(以下「ニップ幅」という。)を変化させることができる。プレスローラー102を
図8における上方向に移動させてニップ幅を小さくすれば,プレスローラー102が対向ローラー103に対してシート電極7を押し付ける力を強めることができる。逆に,プレスローラー102を
図8における下方向に移動させてニップ幅を大きくすれば,プレスローラー102が対向ローラー103に対してシート電極7を押し付ける力を弱めることができる。このようなプレスローラー対101のニップ幅の調整により,シート電極7の厚さ(詳しくは塗工層3の厚さ)を調整する。
【0053】
このプレス装置100は,上述したシート電極7の製造工程のラインにおいて,切断工程の後に設けられる。すなわち,シート電極7の製造工程において,切断工程の後に,シート電極7をプレスしてその厚さを調整するプレス工程が行われる。なお,プレス装置100によりプレスされるシート電極7は,100m/分以上の速度で搬送される。シート厚測定装置10によるシート電極7の搬送速度も,100m/分以上である。
【0054】
そして,プレスローラー対101を通過したシート電極7は,続いて,シート厚測定装置10によりその厚さを測定される。この厚さの測定は,プレス工程の一部である。その意味では,シート厚測定装置10は,プレス装置100とともにシート厚調整装置110を構成している。シート厚測定装置10による測定結果は,その後のプレスローラー対101のニップ幅の調整に利用される。すなわち,このシート厚調整装置110によるプレス工程では,シート電極7の厚さを測定し,その測定結果に基づいて,プレスローラー対101のニップ幅の調整を行う。シート厚の測定およびその測定結果に基づくプレスローラー対101のニップ幅の調整については,後述する。
【0055】
次に,
図9に基づいて,本形態のシート厚測定装置10の電気系統の構成を説明する。シート厚測定装置10は,装置の動作を制御するためのCPU90を備える。CPU90には,外部メモリ91が接続されている。外部メモリ91には,後述の
図10や
図11に示す処理の実行により算出された値が記憶される。またCPU90には,入力装置としてのキーボード92と,出力装置としてのディスプレイ93が接続されている。
【0056】
また,CPU90には,メイン変位センサ70およびサブ変位センサ75がA/D変換器94を介して接続されている。これによりCPU90には,メイン変位センサ70およびサブ変位センサ75の検知信号をA/D変換した変位データが入力される。また,CPU90には,回転角センサ34がA/D変換器94を介して接続されている。これによりCPU90には,回転角センサ34の検知信号をA/D変換した角度データが入力される。
【0057】
また,CPU90には,電動モーター30,スピーカ96,プレスローラー制御部105がI/Oボード95を介して接続されている。プレスローラー制御部105は,CPUやメモリ等を有して,上記したプレス装置100の動作を制御するものである。スピーカ96は,後述するシート厚測定装置10のエラー時に,エラーである旨を報知するためのものである。
【0058】
次に,
図10,11に基づいて,CPU90が行う処理について説明する。CPU90は,シート厚の計測を開始する前,すなわち,シート厚測定装置10の起動時に,
図10に示すキャリブレーション処理を行う。キャリブレーション処理では,CPU90は,メイン変位センサ70およびサブ変位センサ75のゼロ点補正値を求めて(ステップS001),外部メモリ91に記憶する(S002)。詳細には,電動モーター30を一定速度で空転させる。すなわち,シート電極7が測定用ローラー対20に挟まれていない状態で,電動モーター30を回転させる。そして,測定用変位ローラー22の回転位置毎にメイン変位センサ70およびサブ変位センサ75の初期値を記憶していく。すなわち,所定タイミング毎に,回転角センサ34からの回転位置情報と,メイン変位センサ70及びサブ変位センサ75からの変位情報とを対応付けて記憶していく。これを,ローラー10周分行う。そして,測定用変位ローラー22の回転位置毎に,10周分の平均をとり,メイン変位センサ70及びサブ変位センサ75のゼロ点補正値とする。これにより,測定用変位ローラー22の位相に対応付けられたかたちでメイン変位センサ70およびサブ変位センサ75のゼロ点補正値が決定される(S001)。言い換えれば,測定用変位ローラー22の真円度が把握される。決定したゼロ点補正値の情報は,外部メモリ91に記憶する(S002)。外部メモリ91に記憶したゼロ点補正値の情報は,測定用変位ローラー22の真円度に応じて,メイン変位センサ70及びサブ変位センサ75の検知信号に基づく変位量を補正するために利用される。すなわち,シート厚の測定値の誤差を取り除くのに利用される。
【0059】
CPU90は,シート厚測定装置10の稼働中,
図11に示すシート厚測定処理を所定時間毎に行う。まず,メイン変位センサ70およびサブ変位センサ75からの検知信号を受信して(S101),受信した検知信号に基づいて,それぞれについて変位量を算出する(S102)。次に,算出した各変位量に対して,ゼロ点補正を行う(S103)。ゼロ点補正に際しては,キャリブレーション処理において外部メモリ91に格納しておいたゼロ点補正値を用いる。その後,ゼロ点補正したメイン変位センサ70の変位量から回転軸23の傾き(以下「第1角度」とする)を算出するとともに,ゼロ点補正したサブ変位センサ75の変位量から回転軸23の傾き(以下「第2角度」とする)を算出する(S104)。なお,第1角度の算出は,変位中心部23c(
図5参照)からメイン変位センサ70の測定面71までの離隔距離と,メイン変位センサ70からの検知信号に基づき算出した変位量とから三角関数により求めばよい。また,第2角度の算出は,変位中心部23c(
図5参照)からサブ変位センサ75の測定面76までの離隔距離と,サブ変位センサ75からの検知信号に基づき算出した変位量とから三角関数により求めればよい。
【0060】
続いてCPU90は,第1角度と第2角度とを比較する(S105)。比較の結果,両角度が同じであれば,シート厚測定装置10は正常に動作しているので,メイン変位センサ70の検知信号から求めたゼロ点補正後の変位量が,予め定めた上限閾値以下であり,且つ,予め定めた下限閾値以上であるか否か判断する(S106)。ここで,上限閾値は,
図12に示すように,規格値の上限に対して余裕をみて,規格値の上限よりも小さい値に定めている。また,下限閾値は,
図12に示すように,規格値の下限に対して余裕をみて,規格値の下限よりも大きい値に定めている。なお,上限閾値と下限閾値は,規格値の中央からみて同じ大きさとなるよう定められている。
【0061】
ステップS106の判断の結果,変位量が上限閾値以下かつ下限閾値以上であれば(S106でYES),シート電極7の厚さは管理範囲内であるため,その変位量を外部メモリ91に記憶して処理を終える(S107)。一方,変位量が上限閾値以下かつ下限閾値以上でなければ(S106でNO),プレスローラー制御部105にステップS106の判断結果を示すニップ幅調整信号を送信する(S108)。
【0062】
この信号を受信したプレスローラー制御部105は,ステップS106の判断結果が上限閾値より大きかった場合には,プレスローラー102を対向ローラー103に対して接近させ,プレスローラー対101のニップ幅を小さく(狭く)する。これにより,シート電極7の厚さが,上限閾値以下かつ下限閾値以上の管理範囲内に入るようにする。これに対して,ステップS106の判断結果が下限閾値より小さかった場合には,プレスローラー102を対向ローラー103に対して離間させ,プレスローラー対101のニップ幅を大きく(広く)する。これにより,シート電極7の厚さが,上限閾値以下かつ下限閾値以上の管理範囲内に入るようにする。
【0063】
一方,ステップS105の比較の結果,第1角度と第2角度とが一致しなかった場合には,CPU90は,スピーカ96から警報音を発し,シート厚測定装置10の動作が異常である旨を報知する(S109)。これにより,シート厚測定装置10の使用者は,装置の異常を早期に発見することができる。
【0064】
以上詳細に説明したように,本形態のシート厚測定装置10は,シート電極7の下面7a(第1主面)に接するフィードローラー(固定ローラー)21と,シート電極7の上面7b(第2主面)に接し,フィードローラー21との間にシート電極7を挟み込んで搬送するとともに,シート電極7の厚さに応じて変位する測定用変位ローラー22と,測定用変位ローラー22の変位量を測定する変位量測定部(メイン変位センサ70及びCPU90を含んで構成される)と,を備えている。なお,測定用変位ローラー22は,詳細には,シート電極7の厚さに応じて,シート電極7の厚さの分だけ初期位置(シート電極7を挟んでいないときの位置)から上方へ(すなわちシート電極7の搬送経路から離れる向きへ)変位する。
さらにシート厚測定装置10は,測定用変位ローラー22の上流側に配され,シート電極7の下面7aに接し,シート電極7の厚さ方向に沿って変位可能な上流側変位ローラー41と,上流側変位ローラー41の変位に伴って伸縮するように配されたスプリング55(上流側弾性部材)と,上流側変位ローラー41に対向配置されて上流側変位ローラー41との間にシート電極7を挟み込む上流側固定ローラー42と,測定用変位ローラー22の下流側に配され,シート電極7の下面7aに接し,シート電極7の厚さ方向に沿って変位可能な下流側変位ローラー61と,下流側変位ローラー61の変位に伴って伸縮するように配されたスプリング55(下流側弾性部材)と,下流側変位ローラー61に対向配置されて下流側変位ローラー61との間にシート電極7を挟み込む下流側固定ローラー62と,を備えている。なお,詳細には,上流側変位ローラー41及び下流側変位ローラー61は,シート電極7の厚さ方向に沿って初期位置(シート電極7を挟んでいないときの位置)から下方へ(すなわちシート電極7の搬送経路から離れる向きへ)変位する。
【0065】
本実施形態のシート厚測定装置10によれば,搬送中のシート電極7がばたついた場合であっても,上流側変位ローラー41と上流側固定ローラー42とでシート電極7を挟み込んでいるため,測定用変位ローラー22の上流でのばたつきを抑えることができる。また,下流側変位ローラー61と下流側固定ローラー62とでシート電極7を挟み込んでいるため,測定用変位ローラー22の下流でのばたつきを抑えることができる。そのため,シート電極7の測定箇所がばたつき,これにより,測定用変位ローラー22が振動するのを防止できる。よって,シート電極7の厚さを正確に測定することができる。
【0066】
さらに本実施形態のシート厚測定装置10では,上流側変位ローラー41及び下流側変位ローラー61は,シート電極7の厚さ方向に沿って変位可能であるため,シート電極7がばたつくと振動する。この振動は,スプリング55,55によって吸収される。そのため,シート電極7に対して過剰な負荷を与えることなく,シート電極7のばたつきを吸収することができる。
【0067】
また本実施形態のシート厚測定装置10では,上流側変位ローラー41及び下流側変位ローラー61は,シート電極7の下面7aに接し,測定用変位ローラー22は,シート電極7の上面7bに接している。すなわち,各変位ローラーは,互い違いに配置されている。そのため,シート電極7のばたつきによって,各変位ローラーがともに変位するのを防ぐことができる。よって,測定用変位ローラー22がシート電極7のばたつきによって変位するのを確実に規制することができる。
【0068】
特に本実施形態のシート厚測定装置10は,シート電極20を100m/分以上の高速で搬送するものである。一般的には,このような高速での搬送時には,シート電極20にばたつきが生じやすい。しかし実施形態のシート厚測定装置10では,上述のようにシート電極20のばたつきを抑制することができる。従って,このような高速搬送中であっても,シート電極7の厚さを正確に測定することができる。そして,このように高速搬送中であっても正確な測定が可能となっているため,本実施形態のシート厚測定装置10は,インラインで使用可能である。そのため,従来のようにラインからシート電極7を抜き取って検査することなく,シート電極7の厚さを正確に測定することが可能である。
【0069】
また本実施形態のシート厚測定装置10では,測定用変位ローラー22は,当該測定用変位ローラー22の回転軸23線上にある変位中心部23cを中心とする円弧軌道で変位するものである。変位量測定部は,測定対象物たる計測板80と,平面状の測定面71を有し,計測板80の被測定面81に対して測定面71を対向させて配置され,測定面71から被測定面81までの離隔距離を測定するメイン変位センサ70と,メイン変位センサ70による測定結果に基づいて測定用変位ローラー22の変位量を算出する演算部(CPU90により構成される)と,を有するものである。メイン変位センサ70は,測定用変位ローラー22の回転軸23上における変位中心部23cよりも測定用変位ローラー22側に設けられて,測定用変位ローラー22の変位に伴って変位するものである。計測板80は,ハウジング11に固定されているものである。計測板80の被測定面81は,測定用変位ローラー22の回転軸23方向に沿う側面からみて,シート電極7を挟むことで測定用変位ローラー22が変位する向きに突出するように湾曲した円弧状(
図7参照)である。
【0070】
測定用変位ローラー22の変位軌道は,回転軸23線上にある変位中心部23cを中心とした円弧軌道で変位するところ(
図5矢印B参照),計測板80の被測定面81が平面であると,測定用変位ローラー22の変位後には,メイン変位センサ70の測定面71は,計測板80の被測定面81に対して傾いて対向してしまう。そこで本実施形態のシート厚測定装置10のように被測定面81を湾曲させれば,測定用変位ローラー22の変位後における測定面71の被測定面81に対する傾きを小さくすることができる。そのため,誤差の少ない正確なシート厚を測定できる。
【0071】
ここで,本実施形態のシート厚測定装置10において,計測板80の被測定面81を湾曲面とした経緯について,詳しく説明する。上記した特許文献1(特開2002−168601)に記載のシート厚測定装置では,シートの厚みにより変位する「測定ロール25」の変位軌道は,直線ではなく,円弧であった。これは,「測定ロール25」がシートの厚さ方向に沿った直線往復運動をするのではなく,「板バネ24」の固定端を中心とした揺動運動をするからであった。このように変位軌道が円弧となる「変位ロール25」の変位量を測定するにあたって,例えば静電容量型の変位センサのような,測定対象物に対して測定面を略平行に対向させて,その測定面から測定対象物までの離隔距離を検出するものを用いると,測定時には,変位センサの測定面が測定対象物に対して傾いて対面してしまい,「変位ロール25」の変位量を正しく測定することができないという問題があった。そこで,本実施形態のシート厚測定装置10では,測定ロールが円弧軌道で移動する場合(すなわちシート厚方向に完全に沿った軌道から外れて移動する場合)であっても,測定対象物に対して測定面を略平行に対向させて,その測定面から測定対象物までの離隔距離を検出する変位センサを用いてシート厚を正確に測定することができるように,計測板80の被測定面81を湾曲面としたのである。
【0072】
また本実施形態のシート厚測定装置10では,メイン変位センサ70(第1変位センサ)に加えて,もう1つのサブ変位センサ75(第2変位センサ)を,測定用変位ローラー22の回転軸23上におけるメイン変位センサ70と変位中心部23cとの間に設け,メイン変位センサ70の測定結果に基づいて算出した測定用変位ローラー22の変位量から回転軸23の傾きを求めるとともに,第2メイン変位センサ70の測定結果に基づいて算出した測定用変位ローラー22の変位量から回転軸23の傾きを求める角度算出部(CPU90により構成される)と,角度算出部が求めた第1角度と第2角度とを比較して,不一致である場合には,シート厚測定装置10のエラーである旨を報知するエラー報知部(CPU90及びスピーカ96を含んで構成される)とを備えている。
【0073】
従って,シート厚測定装置10が機構的に故障なく動作しているか否かを知ることができる。すなわち,シート厚測定装置10が正常に動作していれば,角度算出部が求めた第1角度と第2角度は一致するが,シート厚測定装置10が正常に動作していなければ,角度算出部が求めた第1角度と第2角度は不一致となるため,このときに装置のエラーを報知することで,装置の使用者は,装置が正常に動作していないことを早期に知ることができる。
【0074】
また本実施形態のシート厚測定装置10では,測定用変位ローラー22とフィードローラー(固定ローラー)21とは,シザーズギア(第1連動ギア24,第2連動ギア29)を介して連動するものである。
【0075】
従って,測定用変位ローラー22とフィードローラー21(固定ローラー)とをバックラッシュをほとんど生じさせることなくギアにより連動させることができる。よって,測定用変位ローラー22の変位量に,バックラッシュによる誤差が含まれるのを抑えることができる。ここでバックラッシュによる誤差とは,バックラッシュの分,測定用変位ローラー22の回転位置がずれることで,正しい位置に応じたゼロ点補正ができないことに起因する誤差をいう。
【0076】
また本実施形態のシート厚測定装置10では,測定用変位ローラー22の回転軸23は,測定用変位ローラー22が固着されたローラー側シャフト23aと,第1連動ギア24が固着されたギア側シャフト23bと,を含み,ローラー側シャフト23aとギア側シャフト23bとは,自在継手25により連結されており,自在継手25が,変位中心部23cをなしている。
【0077】
従って,変位中心部23cが自在継手でない場合よりも,測定用変位ローラー22のシート電極7に対する追従性を高めることができる。そのため,測定用変位ローラー22の変位量を,より正確に測定することができる。
【0078】
また本実施形態のシート厚測定装置10は,上流側変位ローラー41よりも上流に配され,シート電極7の厚さを調整するプレスローラー対101と,変位量測定部(メイン変位センサ70及びCPU90を含んで構成される)によって測定した測定用変位ローラー22の変位量が予め定めた上限閾値よりも大きい場合に,プレスローラー対101のニップ幅を縮小し,変位量測定部によって測定した測定用変位ローラー22の変位量が予め定めた下限閾値よりも小さい場合に,プレスローラー対101のニップ幅を拡大するプレスローラー制御部105と共に,シート厚調整装置110(
図8参照)を構成している。
【0079】
このシート厚調整装置110によれば,シート厚測定装置10の測定結果に応じて,シート電極7の厚さを適宜調整するため,シート電極7の厚さを規格値の範囲内に保つことができる。
【0080】
(第2実施形態)
以上説明した第1実施形態のシート厚測定装置10では,上流側ローラー対40および下流側ローラー対60を有する構成としたが,シート電極7のばたつき防止を考慮しなければ,上流側ローラー対40および下流側ローラー対60はなくてもよい。すなわち,
図13に示すように,ローラー対として,測定用ローラー対20のみを備えるシート厚測定装置10Aとしてもよい。なお,第2実施形態のシート厚測定装置10Aは,この点を除いて,第1実施形態のシート厚測定装置10と同様の構成である。第2実施形態の説明において,第1実施形態と同様の構成については,同様の符号を付して説明を省略する。
【0081】
このように構成された第2実施形態のシート厚測定装置10Aでは,計測板80は,第1実施形態と同様に湾曲した被測定面81を有している(
図7参照)。なお,被測定面81を側面からみたときの円弧の曲率半径は,大きい方が好ましく,22000mm以上とするとなお良い。よって,第2実施形態のシート厚測定装置10Aにおいても,第1実施形態のシート厚測定装置10と同様,メイン検知センサ70の測定面71と計測板80の被測定面81とを略平行に対面させることができるので,シート厚を正確に測定することができる。
【0082】
(変更例)
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば実施形態では,回転軸23にメイン変位センサ70を付け,その上方に計測板80を設けたが,回転軸23に計測板(計測対象物)を付け,その上方にメイン変位センサ70を固定してもよい。すなわち,メイン変位センサ70の測定面71の位置と,計測板80の被測定面81の位置が第1実施形態のシート厚測定装置10とは逆になるように構成してもよい。この場合,
図14に示すように,計測板80Aの被測定面81Aは,側面から見て,メイン変位センサ70Aの測定面71Aに向かって(上方に向かって)突出する円弧状に形成する。このように構成すれば,第1実施形態と同様,シート厚による測定用変位ローラー22の変位後に,メイン変位センサ70Aの測定面71Aを,計測板80Aの被測定面81Aに対して略平行に対面させることができる。よって,測定誤差が小さくなり,正確なシート厚の測定が可能となる。なおこの場合,被測定面81Aの円弧の曲率半径は,大きい方が好ましく,22000mm以上とするとなお良い。
【0083】
また実施形態では,静電容量型の変位センサ70を用いたが,渦電流型の変位センサを用いてもよい。渦電流型の変位センサとは,高周波電流を流したコイルを測定対象物に近づけることにより,コイルで発生する交流磁界の作用で測定対象物内に渦電流が流れることを利用したセンサである。このセンサでは,測定対象物とコイルとの離隔距離によって,測定対象物に到達する磁力線の大きさが変わり,測定対象物に到達する磁力線の大きさが変わると,渦電流の大きさが変わり,渦電流の大きさが変わると,コイルのインダクタンスが変わることを利用して,測定対象物とコイルとの離隔距離を求めている。よって,コイルの端面が,測定対象物の被測定面と平行であることが,渦電流型の変位センサを用いたシート厚の正確な測定のためには必要である。コイルの端面が,測定対象物の被測定面に対して傾いていると,磁束のかかり具合が均一にならないからである。このような渦電流型の変位センサを用いてシート厚測定装置を構成した場合,コイルの端面が,変位センサの測定面に相当する。また,測定対象物たる計測板80には,金属製の部材を用いる。なお測定精度の観点からは,実施形態のように静電容量型の変位センサ70を用いることが望ましい。
【0084】
なお実施形態では,シート電極7のシート厚を測定したが,測定したシート厚から電極箔2の厚さを引けば,シート厚測定装置10により塗工層3の厚さを求めることも可能である。