特許第5905858号(P5905858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905858ALD/CVDプロセスにおけるGST膜のための前駆体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905858
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】ALD/CVDプロセスにおけるGST膜のための前駆体
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20160407BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20160407BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20160407BHJP
   C07F 9/90 20060101ALI20160407BHJP
   C07F 9/94 20060101ALI20160407BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   C23C16/18
   C23C16/52
   C07F19/00
   C07F9/90
   C07F9/94
   C07F7/08 B
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-167334(P2013-167334)
(22)【出願日】2013年8月12日
(65)【公開番号】特開2014-37411(P2014-37411A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2013年8月29日
(31)【優先権主張番号】13/572,973
(32)【優先日】2012年8月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シャオ
(72)【発明者】
【氏名】イアン ブキャナン
(72)【発明者】
【氏名】シンジャン レイ
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−215645(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0028410(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0171812(US,A1)
【文献】 特開2009−274949(JP,A)
【文献】 特表2013−508555(JP,A)
【文献】 特表2009−536986(JP,A)
【文献】 特表2011−518951(JP,A)
【文献】 特表2010−514918(JP,A)
【文献】 特開2009−149980(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/027682(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00− 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面上にアンチモン含有膜を製造するためのALDプロセスであって、
前駆体としてゲルマニウムアルコキシドを堆積チャンバーに導入して、基材表面上にゲルマニウムアルコキシドの分子層を形成する工程であって、前記ゲルマニウムアルコキシドが、式Ge(OR144(式中、R14はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)によって表される工程、並びに
【化1】
(式中、R1-10は個々に水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基であり、R11及びR12は個々にC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるシリルアンチモン前駆体を堆積チャンバーに導入して、前記ゲルマニウムアルコキシドの分子層の上部にSb層であってSbがシリル置換基を有するSb層を形成する工程
を含む、ALDプロセス。
【請求項2】
前記シリルアンチモン前駆体が、トリス(メチルシリル)アンチモン、トリス(トリエチルシリル)アンチモン、トリス(tert−ブチルジメチルシリル)アンチモン、及びトリス(ジメチルシリル)アンチモンからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記の工程が順序どおりに繰り返される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記堆積チャンバーの温度が室温〜400℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
基材表面上にゲルマニウム−ビスマス−テルル合金膜を製造するためのALDプロセスであって、
前駆体としてゲルマニウムアルコキシドを堆積チャンバーに導入して、基材表面上にゲルマニウムアルコキシドの分子層を形成する工程であって、前記ゲルマニウムアルコキシドが、式Ge(OR144(式中、R14はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)によって表される工程、
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して水素、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるテルル前駆体を堆積チャンバーに導入してゲルマニウムアルコキシド層と反応させ、Te−Ge結合を含むTe層であってTeがシリル置換基を有するTe層を形成する工程、
Te上のシリル置換基を(i)水及び/又は(ii)一般式ROH(式中、RはC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)を有するアルコールと反応させてTe−H結合を形成する工程、
【化3】
(式中、R1-10は個々に水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるシリルビスマス前駆体を堆積チャンバーに導入して、Te層の上部にBi層であってBiがシリル置換基を有するBi層を形成する工程、並びに
Bi上の置換基を(i)水及び/又は(ii)一般式ROH(式中、RはC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)を有するアルコールと反応させてBi−H結合を形成する工程
を含む、ALDプロセス。
【請求項6】
前記シリルビスマス前駆体が、トリス(トリメチルシリル)ビスマス、トリス(トリエチルシリル)ビスマス、トリス(tert−ブチルジメチルシリル)ビスマス、及びトリス(ジメチルシリル)ビスマスからなる群より選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記の工程が順序どおりに繰り返される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記堆積チャンバーの温度が室温〜400℃である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルコールがメタノールである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
基材表面上にゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)又はゲルマニウム−ビスマス−テルル(GBT)膜を製造するためのALDプロセスであって、
式Ge(OR144-xx(式中、LはCl、Br、I又はそれらの2種以上から選択され、xは0、1、2又は3であり、R14はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)を有するアルコキシゲルマニウム前駆体を堆積チャンバーに導入する工程、
【化4】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して水素、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるジシリルテルル、シリルアルキルテルル又はシリルアミノテルルであることができるシリルテルル前駆体を導入する工程、
前記アルコキシゲルマニウム前駆体を堆積チャンバーに導入する工程、
【化5】
(式中、R1-10は個々に水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基であり、R11及びR12は個々にC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるシリルアンチモン又はシリルビスマス前駆体を堆積チャンバーに導入して、シリルアンチモン又はシリルビスマス単分子層を形成する工程、並びに
所望の厚さが得られるまで前記の工程を繰り返す工程
を含む、ALDプロセス。
【請求項11】
前記アルコキシゲルマニウム前駆体が、Ge(OMe)4、Ge(OEt)4、Ge(OPrn4、Ge(OPri4、GeCl(OMe)3、GeCl2(OMe)2、GeCl3(OMe)、GeCl(OEt)3、GeCl2(OEt)2、GeCl3(OEt)、GeCl(OPrn3、GeCl2(OPrn2、GeCl2(OPri2、GeCl3(OPri)、GeCl(OBut3、GeCl2(OBut2、及びGeCl3(OBut)からなる群より選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記シリルアンチモン前駆体が、トリス(メチルシリル)アンチモン、トリス(トリエチルシリル)アンチモン、トリス(tert−ブチルジメチルシリル)アンチモン、及びトリス(ジメチルシリル)アンチモンからなる群より選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記シリルビスマス前駆体が、トリス(トリメチルシリル)ビスマス、トリス(トリエチルシリル)ビスマス、及びトリス(tert−ブチルジメチルシリル)ビスマスからなる群より選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ジシリルテルル前駆体が、ビス(トリメチルシリル)テルル、ビス(トリエチルシリル)テルル、及びビス(tert−ブチルジメチルシリル)テルルからなる群より選択される、請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2009年1月16日に出願された米国特許第12/355,325号の一部継続出願であり、該米国出願2008年1月28日に出願された米国特許仮出願第61/023,989号の35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
先端技術として、相変化材料は、新型の高集積度不揮発性メモリーデバイス、即ち、相変化ランダムアクセスメモリー(PRAM)の製造におけるその応用のため、ますます関心を集めている。相変化ランダムアクセスメモリー(PRAM)デバイスは、明らかに異なる抵抗を有する結晶相と非晶相の間の可逆的な相変化を受ける材料を用いて合成される。最も一般的に用いられる相変化材料は、14族及び15族元素のカルコゲニドの三元組成物、例えば、GSTと一般に略記されるゲルマニウム−アンチモン−テルル化合物などである。
【0003】
PRAMセルを設計する際の技術的障害の1つは、GST材料をある温度で結晶質から非結晶質の状態に変換する間の放熱を克服するために、高レベルリのセット電流をかける必要があることである。この放熱は、GST材料をコンタクトプラグに閉じ込めることによって大幅に低減することができる。これは、動作に必要であるリセット電流を低下させる。GSTプラグを基材上で形成するために、原子層堆積(ALD)プロセスを用いて適合性が高く化学的組成が均一な膜が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0049447号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0039192号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0072370号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0172083号明細書
【特許文献5】米国特許第8148197号
【特許文献6】米国特許出願公開第2012/171812号明細書
【特許文献7】米国特許第7817464号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sang−Wook Kim,S.Sujith,Bun Yeoul Lee,Chem.Commun.,2006,pp4811−4813
【非特許文献2】Stephan Schulz,Martin Nieger,J.Organometallic Chem.,570,1998,pp275−278
【非特許文献3】Byung Joon Choi,et al.Chem Mater.2007,19,pp4387−4389;Byung Joon Choi,et al.J.Electrochem.Soc.,154,ppH318−H324(2007)
【非特許文献4】Ranyoung Kim,Hogi Kim,Soongil Yoon,Applied Phys.Letters,89,pp102−107(2006)
【非特許文献5】Junghyun Lee,Sangjoon Choi,Changsoo Lee,Yoonho Kang,Daeil Kim,Applied Surface Science,253(2007)pp3969−3976
【非特許文献6】G.Becker,H.Freudenblum,O.Mundt,M.reti,M.Sachs,Synthetic Methods of Organometallic and Inorganic Chemistry,vol.3,H.H.Karsch,New York,1996,p.193
【非特許文献7】Sladek,A.,Schmidbaur,H.,Chem.Ber.1995,128,pp565−567
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本発明は、基材表面上にアンチモン含有膜を製造するためのALDプロセスであって、前駆体としてゲルマニウムアルコキシドを堆積チャンバーに導入して、基材表面上にゲルマニウムアルコキシドの分子層を形成する工程であって、前記ゲルマニウムアルコキシドが、式Ge(OR144(式中、R14はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)によって表される工程、並びに
【化1】
(式中、R1-10は個々に水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基であり、R11及びR12は個々にC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるシリルアンチモン前駆体を堆積チャンバーに導入して、Te層の上部にSb層であってSbがシリル置換基を有するSb層を形成する工程を含む、ALDプロセスを提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、基材表面上にゲルマニウム−ビスマス−テルル合金膜を製造するためのALDプロセスであって、前駆体としてゲルマニウムアルコキシドを堆積チャンバーに導入して、基材表面上にゲルマニウムアルコキシドの分子層を形成する工程であって、前記ゲルマニウムアルコキシドが、式Ge(OR144(式中、R14はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)によって表される工程、
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して水素、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるテルル前駆体を堆積チャンバーに導入してゲルマニウムアルコキシド層と反応させ、Te−Ge結合を含むTe層であってTeがシリル置換基を有するTe層を形成する工程、Te上のシリル置換基を(i)水及び/又は(ii)一般式ROH(式中、RはC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)を有するアルコールと反応させてTe−H結合を形成する工程、
【化3】
(式中、R1-10は個々に水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるシリルアンチモン前駆体を堆積チャンバーに導入して、Te層の上部にSb層であってBiがシリル置換基を有するSb層を形成する工程、並びにBi上の置換基を(i)水及び/又は(ii)一般式ROH(式中、RはC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)を有するアルコールと反応させてBi−H結合を形成する工程を含む、ALDプロセスを提供する。
【0008】
さらに別の態様において、本発明は、基材表面上にアンチモン含有膜又はビスマス含有膜を製造するためのALDプロセスであって、
【化4】
(式中、R1-10は個々に水素原子、1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R11及びR12は個々にC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるシリルアンチモン又はシリルビスマス前駆体を堆積チャンバーに導入して、シリルアンチモン単分子層を形成する工程、並びに
M(OR133(式中、M=Ga、In、Sb及びBiであり、R13はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)、
M(OR133-xx(式中、M=Sb又はBiであり、LはCl、Br、I又はそれらの2種以上から選択され、xは0、1又は2であり(ただしM=Sbの場合は、xは0ではない)、R13はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)、
M(OR144-xx(式中、MはGe、Sn、Pbからなる群より選択され、LはCl、Br、I又はそれらの2種以上から選択され、xは0、1、2又は3であり、R14はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)、
M(NR14153-xx(式中、MはSb、Bi、Ga、Inからなる群より選択され、LはCl、Br、I又はそれらの2種以上から選択され、xは1、2又は3であり、R14はC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基であり、R15は水素、C1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基からなる群より選択される)、及び
M(NR14154-xx(式中、MはGe、Sn、Pbからなる群より選択され、LはCl、Br、I又はそれらの2種以上から選択され、xは1、2又は3であり、R14はC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基であり、R15は水素、C1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基からなる群より選択される)
からなる群より選択される第2の前駆体を堆積チャンバーに導入する工程を含む、ALDプロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ALDプロセスでアンチモン層を生成するアンチモン又はビスマス前駆体のクラスに関する。アンチモン、ビスマス又はアンチモンビスマス合金層は、ALDサイクルにおいて結果として堆積されるゲルマニウム層及びテルル層と反応して、PRAMデバイスに好適なGST三元物質膜を形成する。
【0010】
PRAMデバイスにおけるGST又はGBT材料は、通常、180℃〜300℃の温度範囲で堆積される。200℃で堆積された膜が最良の化学特性及び構造特性を有することが見出された。ALDプロセスは、高い化学反応性及び反応選択性を有する前駆体を必要とする。既存の前駆体、例えば、ジアルキルテルル、トリアルキルアンチモン、及びアルキルゲルマンなどは、ALDサイクルで用いられるべき所与の堆積条件で要求される反応性を有していない。プラズマを使用して堆積を促進させる場合が多い。
【0011】
本願発明は、ALD前駆体としてシリルアンチモン化合物を提供し、それはアルコール又は水と反応してアンチモン層を形成する。テトラアミノゲルマニウム前駆体と有機テルル前駆体から結果として生じるゲルマニウムとテルルの堆積に関して、GST又はGBT膜は、高い一致性(conformality)を有する基材上に堆積することができる。
【0012】
本発明は、ALDプロセスでアンチモン層を生成するシリルアンチモン前駆体又はシリルビスマス前駆体に関する。アンチモン層又はビスマス層は、複数のALDサイクルにおいて結果として堆積するゲルマニウム層及びテルル層と反応して、PRAMデバイスに好適なGST又はGBT三元物質膜を形成する。ある実施形態において、本願発明は、高い反応性及び熱的安定性を有する複数のシリルアンチモン前駆体、ならびに他の化学物質と共にGST又はGBT膜を堆積させるのにALDプロセスにおいて用いられるべき化学成分を開示する。
【0013】
他の実施形態において、本願発明は、ALDの前駆体としてシリルアンチモン又はシリルビスマス化合物を提供し、それはアルコール又は水と反応してアンチモン原子層を形成する。テトラアミノゲルマニウムとテルル前駆体から結果として生じるゲルマニウムとテルルの堆積に関し、GST膜は、高い一致性を有する基材上に堆積することができる。
【0014】
ある実施形態では、アンチモン前駆体又はビスマス前駆体は、
【化5】
(式中、R1-10は個々に水素原子、1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R11及びR12は個々にC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるトリシリルアンチモン、ジシリルアルキルアンチモン、ジシリルアンチモン、又はジシリルアミノアンチモンを含む。ある実施形態では、R1は水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である。好ましくは、構造(A)においてR1-9の1つが芳香族である場合には、芳香族を有するケイ素上のR1-9の残りは両方ともメチルということはない。
【0015】
本明細書を通じて、「アルキル」という用語は、1〜10個又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐官能基を意味する。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、及びネオヘキシルが挙げられるが、これだけに限定されるものではない。ある実施形態において、アルキル基は、それに結合した1若しくは複数の官能基、例えば、これだけに限定されるものではないが、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はそれらの組合せを有してもよい。他の実施形態において、アルキル基は、それに結合した1若しくは複数の官能基を有していない。「環状アルキル」という用語は、3〜10個若しくは4〜10個の炭素原子を有するか、又は5〜10個の炭素原子を有する環状官能基を意味する。例示的な環状アルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチル基が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。「芳香族」という用語は、4〜10個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する芳香族環状官能基を意味する。例示的なアリール基としては、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル、及びo−キシリルが挙げられるが、これだけに限定されるものではない。「アルケニル基」という用語は、2〜10個若しくは2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を有する1若しくは複数の炭素−炭素二重結合を有する基を意味する。
【0016】
例示的なトリシリルアンチモン又はトリシリルビスマス前駆体としては、トリ(トリメチルシリル)アンチモン、トリ(トリエチルシリル)アンチモン、及びトリ(tert−ブチルジメチルシリル)アンチモン、トリ(トリメチルシリル)ビスマス、トリ(トリエチルシリル)ビスマス、及びトリ(tert−ブチルジメチルシリル)ビスマス、トリス(ジメチルシリル)アンチモンが挙げられる。
【0017】
シリルアンチモン又はシリルビスマス化合物は、アルコール又は水に対して非常に反応性である。この反応は低温で元素アンチモン又はビスマスを生成する。
【化6】
【0018】
本発明の他の実施形態では、かかるシリルアンチモン又はシリルビスマス化合物を、金属化合物であるアルコキシド及び/又は混合ハロゲン化物及びアルコキシド化合物と反応させることによって、金属アンチモン又はアンチモン合金を堆積させることができる。金属アルコキシドとしては、式M(OR133(式中、M=Ga、In、Sb及びBiであり、R13はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)によって表される化合物が挙げられる。混合ハロゲン化物及びアルコキシド金属化合物としては、式M(OR133-xx(式中、M=Sb又はBiであり、LはCl、Br、I又はそれらの2種以上から選択され、xは0、1又は2であり、R13は先に規定したものと同じである)によって表される化合物が挙げられる。そのような化合物の例としては、例えば、SbCl(OMe)2、SbCl2(OMe)、SbBr(OMe)2、SbBr2(OMe)、SbI(OMe)2、SbCl(OEt)2、SbCl2(OEt)、SbCl(OPri2、SbCl2(OPri)、BiCl(OMe)2、BiCl2(OMe)、BiCl(OEt)2、BiCl2(OEt)、BiCl(OPri2、BiCl2(OPri)が挙げられる。
【0019】
これらの反応は、以下で実証されるように、室温〜400℃の温度範囲で行うことができる。
【化7】
【0020】
ALDプロセスでは、シリルアンチモン前駆体、アルコール、ゲルマニウム、及びテルル前駆体、例えば、Ge(OMe)4及び(Me3Si)2Te(式中、「Me」はメチルである)などが、蒸気吸引又は直接液体注入(DLI)により、周期的に堆積チャンバーに導入される。堆積温度は好ましくは室温〜400℃の間である。
【0021】
GBT膜を堆積させるためのALD反応は、以下のスキームで説明できる。
【化8】
【0022】
工程1:テトラキス(メトキシ)ゲルマンを導入し、基材表面上にアルコキシゲルマンの分子層を形成する。
【0023】
工程2:ヘキサメチルジシリルテルルをアミノゲルマン層と反応させてTe−Ge結合を形成し、ジメチルアミノトリメチルシランを除去する。シリル置換基を有するTe層を形成する。
【0024】
工程3:メタノールをテルル層上に残存するシリル基と反応させ、Te−H結合及び揮発性副生成物のメトキシトリメチルシラン(パージによって除去される)を形成する。
【0025】
工程4:トリス(トリメチルシリル)アンチモンを導入し、テルル層の上部にアンチモン層を形成する。
【0026】
工程5:メタノールをアンチモン層上に残存するシリル基と反応させ、Sb−H結合及び揮発性副生成物のメトキシトリメチルシラン(パージによって除去される)を形成する。
【0027】
工程6:ヘキサメチルジシリルテルルを再度導入し、テルル層を形成する。
【0028】
工程7:メタノールを再度導入し、テルル上のシリル基を除去する。
【0029】
別のALD反応は、Ge−Te−Ge−Sb又はGe−Te−Ge−Bi膜を堆積させるための以下のスキームで説明できる。
【化9】
【化10】
【0030】
工程1:テトラキス(メトキシ)ゲルマンを導入し、基材表面上にアルコキシゲルマンの分子層を形成する。
【0031】
工程2:ヘキサメチルジシリルテルルをアルコキシゲルマン層と反応させて、Te−Ge結合を形成し、メトキシトリメチルシランを除去する。シリル置換基を有するTe層を形成する。
【0032】
工程3:テトラキス(メトキシ)ゲルマンを層上に残留するシリル基と反応させてTe−Ge結合及びシリルアンチモン又はシリルビスマスを形成し、メトキシトリメチルシランを除去する。メトキシ置換基を有するGe層を形成する。
【0033】
工程4:トリス(トリメチルシリル)アンチモン又はトリス(トリメチルシリル)ビスマスを導入し、シリル置換基を有するゲルマニウム層の上部にメトキシトリメチルシランの除去を介してアンチモン層を形成する。
【0034】
工程5:テトラキス(メトキシ)ゲルマンをSb又はBi層上に残存するシリル基と反応させ、Sb−Ge又はBi−Ge結合を形成する。メトキシ置換基を有するGe層を形成する。
【0035】
次いで、所望の膜厚が得られるまで、ALDサイクルを、場合により何度も十分に繰り返す。次のサイクルを再び工程1から開始するなど。もう1つの実施形態において、工程2と工程4は切り換えできる、即ち、Ge−Sb−Ge−Te膜又はGe−Bi−Ge−Te膜のどちらが堆積されるべきかによって切り換えできる。
【0036】
ある実施形態では、このプロセスで用いられるシリルアンチモン又はシリルビスマス化合物は、
【化11】
(式中、R1-10は個々に水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択される。ある実施形態では、R1は水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である。R11及びR12は個々にC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である。好ましくは、構造(A)においてR1-9の1つが芳香族である場合には、芳香族を有するケイ素上のR1-9の残りが両方ともメチルということはない。さらに、好ましくは、構造(A)においてR1-9のいずれかがC1-3又はフェニルである場合には、R1-9のすべてが同じものであることはない。
【0037】
このプロセスで用いられるアルコキシゲルマンは、以下の一般式
【化12】
(式中、R1は水素原子、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)を有する。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態において、GST膜は、式Ge(OR144-xx(式中、LはCl、Br、I又はそれらの2種以上から選択され、xは0、1、2又は3であり、R14はC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)によって表される、ハロゲン化物及びアルコキシリガンドの両方を有するゲルマニウム化合物を前駆体として用いることによって形成される。ゲルマニウム化合物前駆体は、例えば、シリルアンチモン、シリルビスマス、又はシリルテルルと、先に記載したM(OR133-xxと同じ様式で反応させることができる。ハロゲン化物及びアルコキシリガンドの両方を有するゲルマニウム化合物の例としては、例えば、GeCl(OMe)3、GeCl2(OMe)2、GeCl3(OMe)、GeCl(OEt)3、GeCl2(OEt)2、GeCl3(OEt)、GeCl(OPrn3、GeCl2(OPrn2、GeCl3(OPrn)、GeCl(OPri3、GeCl2(OPri2、GeCl3(OPri)、GeCl(OBut3、GeCl(OBut2、及びGeCl3(OBut)(式中、OButはtert−ブチルアルコキシであり、OPrnはn−プロポキシであり、そして、OPriはイソプロポキシである)が挙げられる。こうした化合物は、好ましくは、熱的に安定であり、かつ、不相応な反応を予防するために大きなアルコキシ基を有する。
【0039】
シリルテルル前駆体としては、
【化13】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して水素、C1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基である)からなる群より選択されるジシリルテルル、シリルアルキルテルル、又はシリルアミノテルルを挙げることができる。例示的なジシリルとしては、例えば、ビス(トリメチルシリル)テルル、ビス(トリエチルシリル)テルル、及びビス(tert−ブチルジメチルシリル)テルルが挙げられる。
【0040】
本発明の他の実施形態において、アンチモン又はビスマス含有膜は、混合アミノ及びハロゲン化物化合物を有するシリルアンチモン又はシリルビスマス化合物を、式M(NR14153-xx又はM(NR14154-xx(式中、MはSb、Bi、Ga、In、Ge、Sn、Pbからなる群より選択され、LはCl、Br、I又はそれらの2種以上から選択され、xは1、2又は3であり、R14はC1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基であり、R15は水素、C1−C10アルキル基、C3−C10アルケニル基、C3−C10環状基、C3−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基からなる群より選択される)と反応させることによって製造される。
【0041】
例えば、本発明のプロセスに用いるのに好適なアミノ及びハロゲンリガンドの両方を有するゲルマニウム化合物は、V. N. Khrustalev et al. "New Stable Germylenes, Stannylenes, and related compounds. 8. Amidogermanium(II) and -tin(II) chlorides R2NE14C1 (E14 = Ge, R=Et; Sn, R=Me) Revealing New Structural Motifs", Appi Organometal. Chem., 2007; 21: 551-556(前記文献を参照により本明細書中に援用する)に記載されている。かかる化合物の例は[GeCl(NMe2)]2である。
【0042】
本発明のプロセスに用いるのに好適な混合アミノ及びハロゲンリガンドを有するアンチモン化合物としては、Ensinger, U. and A. Schmidt (1984), "Dialkylaminostibines. Preparation and spectra" Z Anorg. Allg. Chem, FIELD FullJournal Title:Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie 514: 137-48;及びEnsinger, U., W. Schwarz, B, Schrutz, K. Sommer and A. Schmidt (1987) "Methoxostibines. Structure and vibrational spectra." Z Anorg. Allg. Chem. FIELD Full Journal Title:Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie 544: 181-91(前記文献各々の全体を参照により本明細書中に援用する)に開示されているものが挙げられる。かかる化合物の例は、例えば、Cl2SbNMe2(I)、Cl2SbNMeEt(II)、Cl2SbNEt2(III)、ClSb[NMe22(IV)、ClSb[NMeEt]2(V)、ClSb[NEt22(VI)、Ga(NMe22Cl、及びGa(NMe2)Cl2が挙げられる。
【0043】
本発明のプロセスに用いるのに好適なインジウム化合物としては、Frey, R., V. D. Gupta and G. Linti (1996). "Monomeric bis and tris(amides) of indium'I622(6): 1060-1064; Carmait, C. J. and S. J. King (2006), "Gallium(IIl) and indium(lll) alkoxides and aryloxides." Coordination Chemistry Reviews 250(5-6): 682-709; Carmait, C, J. (2001). "Amido compounds of gallium and indium." Coordination Chemistry Reviews 223(1): 217-264; Frey, R., V. D. Gupta and G. Linti (1996). "Monomeric bis and tris(amides) of indium." Monomere bis- und tris(amide) des indiums 622(6): 1060-1064; Sun, S. and D. M. Hoffman (2000). "General Synthesis of Homoleptic Indium Alkoxide Complexes and the Chemical Vapor Deposition of Indium Oxide Films." Journal of the American Chemical Society 122(39): 9396-9404によって開示されたものが挙げられる。かかる化合物の例としては、例えば、[In(OCH2CH2NMe232、[In(μ−OtBu)(OtBu)22、[In(OCMe2Et)2(μ−OCMe2Et)]2、In[N(tBu)(SiMe3)]3、In(TMP)3(TMP=2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)、及びIn(N(シクロヘキシル)23が挙げられる。
【0044】
このプロセスで用いられるアルコールは、以下の一般式、即ち、
ROH
(式中、Rは1〜10個の炭素を直鎖、分岐又は環状の形態で有するアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基である)を有する。例えば、RはC1−C10アルキル基、C2−C10アルケニル基、C3−C10環状アルキル基、C2−C10環状アルケニル基、又はC4−C10芳香族基であることもできる。ある実施形態では、メタノールが好ましい。
【実施例】
【0045】
[実施例1:トリス(トリメチルシリル)アンチモンの合成]
200メッシュのアンチモン粉末1.22g(0.01mol)、水素化リチウム0.72g(0.03mol)及びテトラヒドロフラン(THF)40mlを100mlのフラスコに入れた。撹拌しながら、この混合物を4時間還流した。アンチモンを構成する黒色粉末がすべて消失し、濁った色の沈殿が生成した。次いで混合物を−20℃に冷却し、トリメチルクロロシラン3.3g(0.03mol)を加えた。混合物を室温まで温めた。4時間撹拌した後、混合物を不活性雰囲気下で濾過した。溶媒を蒸留によって除去した。トリス(トリメチルシリル)アンチモンを減圧蒸留により精製した。
【0046】
[実施例2:トリス(ジメチルシリル)アンチモンの合成]
200メッシュのアンチモン粉末1.22g(0.01mol)、水素化リチウム0.72g(0.03mol)及びテトラヒドロフラン(THF)40mlを100mlのフラスコに入れた。撹拌しながら、この混合物を4時間還流した。アンチモンを構成する黒色粉末がすべて消失し、濁った色の沈殿が生成した。次いで混合物を−20℃に冷却し、ジメチルクロロシラン2.83g(0.03mol)を加えた。混合物を室温まで温めた。4時間撹拌した後、混合物を不活性雰囲気下で濾過した。溶媒を蒸留によって除去した。トリス(ジメチルシリル)アンチモンを減圧蒸留により精製した。
【0047】
[実施例3:トリス(ジメチルシリル)アンチモンの合成]
200メッシュのアンチモン粉末3.65g(0.03mol)、ナトリウム2.07g(0.09mol)、ナフタレン1.15g(0.009mol)及びTHF50mlを100mlのフラスコに入れた。混合物を室温で24時間撹拌した。アンチモンを構成する黒色粉末及びナトリウムがすべて消失し、濁った色の沈殿が生成した。次いで、混合物を−20℃に冷却し、ジメチルクロロシラン8.51g(0.09mol)を加えた。混合物を室温まで温めた。4時間撹拌した後、混合物を不活性雰囲気下で濾過した。溶媒を蒸留によって除去した。トリス(ジメチルシリル)アンチモンを減圧蒸留により精製した。
【0048】
[実施例4:トリス(トリメチルシリル)ビスマスの合成(理論)]
200メッシュのビスマス粉末6.27g(0.03mol)、ナトリウム2.07g(0.09mol)、ナフタレン1.15g(0.009mol)、及びTHF50mlを100mlのフラスコに入れた。混合物を室温で24時間撹拌した。アンチモンを構成する黒色粉末及びナトリウムがすべて消失し、濁った色の沈殿が生成した。次いで、混合物を−20℃に冷却し、トリメチルクロロシラン9.77g(0.09mol)を加えた。混合物を室温まで温めた。4時間撹拌した後、混合物を不活性雰囲気下で濾過した。溶媒を蒸留によって除去した。トリス(トリメチルシリル)ビスマスを減圧蒸留により精製した。
【0049】
[実施例5:アンチモン膜の生成]
窒素を満たし、ゴムの隔壁を取り付けた100mlのパイレックス(登録商標)ガラスフラスコの底にトリス(ジメチルシリル)アンチモン0.05gを入れた。メタノール0.1gをシリンジでゆっくりと加えた。光沢のある黒色の膜がフラスコのガラス壁内部に堆積し始めた。数分後、フラスコ内部全体が暗灰色/黒色のアンチモン膜で被覆された。
【0050】
[実施例6:ビスマス化ゲルマニウムの合成(理論)]
トリス(トリメチルシリル)ビスマス0.43g(0.001mol)をアセトニトリル6ml中に溶解させる。この溶液に、テトラメトキシゲルマン0.12gを室温で加える。反応は発熱性反応である。すぐに黒色沈殿物を形成する。沈殿物を濾過し、THFで洗浄し、そして空気中で乾燥させた。エネルギー分散型X−線分析(EDX)を、走査型電子顕微鏡(SEM)と組み合せて用い、黒色固形沈殿物を検討するのに使用できる。結果は黒色固形分がゲルマニウムとビスマスの組成物であることを示す。ビスマス化ゲルマニウムは有機溶媒中に不溶性である。
【0051】
[実施例7:アンチモン化インジウムの合成(理論)]
インジウム トリ−t−ペントキシド0.38g(0.001mol)をアセトニトリル6ml中に溶解させる。この溶液に、テトラメトキシゲルマン0.12gを室温で加える。反応は発熱性反応である。すぐに黒色沈殿物を形成する。沈殿物を濾過し、THFで洗浄し、そして空気中で乾燥させた。エネルギー分散型X−線分析(EDX)を、走査型電子顕微鏡(SEM)と組み合せて用い、黒色固形沈殿物を検討するのに使用できる。結果は黒色固形分がインジウムとアンチモンの組成物であることを示す。アンチモン化インジウムは有機溶媒中に不溶性である。
【0052】
[実施例8:アンチモン化ビスマスの合成(理論)]
ビスマストリエトキシド0.34g(0.001mol)をアセトニトリル6ml中に溶解させる。この溶液に、トリス(トリメチルシリル)アンチモン0.34gを室温で加える。反応は発熱性反応である。すぐに黒色沈殿物を形成する。沈殿物を濾過し、THFで洗浄し、そして空気中で乾燥させた。エネルギー分散型X−線分析(EDX)を、走査型電子顕微鏡(SEM)と組み合せて用い、黒色固形沈殿物を検討するのに使用できる。結果は黒色固形分がアンチモンとビスマスの組成物であることを示す。アンチモン化ビスマスは有機溶媒中に不溶性である。
【0053】
[実施例9:ALD反応器におけるGeBi膜の堆積(理論)]
原子層堆積(ALD)技術を用いたGeBi膜の堆積は、以下の工程を含む。
(a)膜を堆積しようとする基材をALD反応器に入れること、
(b)反応器をN2でフラッシュし、1torr未満の低圧力まで排気し、膜堆積を行う温度まで加熱すること、
(c)Bi前駆体として一定流速のシリルビスマス化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、
(d)Ge前駆体として一定流速のアルコキシゲルマン化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、そして
膜の所望の厚さが得られるまで工程(c)〜(d)を繰り返すこと。別の実施例において、アルコキシゲルマン化合物が工程(c)で導入できるのに対して、シリルビスマス化合物は工程(d)で導入される。
【0054】
堆積の化学的性質から、高度に一致性のGeBi膜を、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタンなどの基材材料の表面上に堆積させることができる。プロセス温度範囲は室温〜400℃であることができる。
【0055】
[実施例10:ALD反応器におけるSb膜の堆積]
原子層堆積(ALD)技術を用いたアンチモン膜の堆積は以下の工程を含む。
(a)膜を堆積しようとする基材をALD反応器に入れること、
(b)反応器をN2でフラッシュし、1torr未満の低圧力まで排気し、膜堆積を行う温度まで加熱すること、
(c)一定流速のトリシリルアンチモン化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、
(d)一定流速のアルコキシアンチモン化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、そして
膜の所望の厚さが得られるまで工程(c)〜(d)を繰り返すこと。別の実施例において、アルコキシゲルマン化合物が工程(c)で導入できるのに対して、トリシリルビスマス化合物は工程(d)で導入される。
【0056】
堆積の化学的性質から、高度に一致性のアンチモン膜を、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタンなどの基材材料の表面上に堆積させることができる。プロセス温度範囲は室温〜400℃であることができる。
【0057】
[実施例11:ALD反応器におけるGeSbTe膜の堆積]
原子層堆積(ALD)技術を用いたGeBi膜の堆積は以下の工程を含む。
(a)膜を堆積しようとする基材をALD反応器に入れること、
(b)反応器をN2でフラッシュし、1torr未満の低圧力まで排気し、膜堆積を行う温度まで加熱すること、
(c)Ge前駆体として一定流速のアルコキシゲルマン化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、そして
(d)Te前駆体として一定流速のジシリルテルル化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、
(e)Ge前駆体として一定流速のアルコキシゲルマン化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、
(f)Sb前駆体として一定流速のトリシリルアンチモン化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、
膜の所望の厚さが得られるまで工程(c)〜(f)を繰り返すこと。
【0058】
堆積の化学的性質から、高度に一致性のGeSbTe膜を、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタンなどの基材材料の表面上に堆積させることができる。プロセス温度範囲は室温〜400℃であることができる。
【0059】
[実施例12:ALD反応器におけるGeBiTe膜の堆積]
原子層堆積(ALD)技術を用いたGeBi膜の堆積は以下の工程を含む。
(a)膜を堆積しようとする基材をALD反応器に入れること、
(b)反応器をN2でフラッシュし、1torr未満の低圧力まで排気し、膜堆積を行う温度まで加熱すること、
(c)Ge前駆体として一定流速のアルコキシゲルマン化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、そして
(d)Te前駆体として一定流速のジシリルテルル化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、
(e)Ge前駆体として一定流速のアルコキシゲルマン化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、
(f)Bi前駆体として一定流速のトリシリルビスマス化合物の蒸気を反応器に導入すること、反応器を短い一定時間(通常、5秒未満)、この蒸気によって飽和し、その後、1torrまで排気し、次いで、N2でフラッシュすること、
膜の所望の厚さが得られるまで工程(c)〜(f)を繰り返すこと。
【0060】
堆積の化学的性質から、高度に一致性のGeSbTe膜を、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタンなどの基材材料の表面上に堆積させることができる。プロセス温度範囲は室温〜400℃であることができる。