特許第5905861号(P5905861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905861
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】無機多孔質体を用いた吸熱材
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20160407BHJP
   F16L 59/04 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   C09K5/04 Z
   F16L59/04
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-180923(P2013-180923)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-48405(P2015-48405A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2014年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】中間 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 晴子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 晃史
(72)【発明者】
【氏名】山本 和樹
(72)【発明者】
【氏名】津村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝
(72)【発明者】
【氏名】都竹 暁生
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 実用新案登録第3130219(JP,Y2)
【文献】 特開2000−102557(JP,A)
【文献】 特開平09−192162(JP,A)
【文献】 特開平09−192158(JP,A)
【文献】 特開2008−302050(JP,A)
【文献】 実開昭63−005400(JP,U)
【文献】 特開2009−057811(JP,A)
【文献】 特公昭54−032246(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水した無機多孔質成形体からなる吸熱材であって、前記無機多孔質成形体がケイ酸カルシウム成形体である吸熱材。
【請求項2】
前記無機多孔質成形体の密度が、40〜400kg/mである請求項記載の吸熱材。
【請求項3】
前記水が、不凍液、防腐剤、及びpH調整剤から選択される1種又は2種以上の添加剤を含む請求項1又は2記載の吸熱材。
【請求項4】
パッキング材により包まれている請求項1〜のいずれか記載の吸熱材。
【請求項5】
前記パッキング材が、金属箔と樹脂のラミネート体である請求項記載の吸熱材。
【請求項6】
前記金属箔が、アルミニウム箔、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔、又は燐青銅である請求項記載の吸熱材。
【請求項7】
前記樹脂が、熱可塑性樹脂である請求項5又は6記載の吸熱材。
【請求項8】
前記パッキング材が、70℃〜130℃で破損する請求項4〜7のいずれか記載の吸熱材。
【請求項9】
ケーブルの耐熱性を高めるために用いる請求項1〜8のいずれか記載の吸熱材。
【請求項10】
原子力発電所で用いるための請求項1〜9のいずれか記載の吸熱材。
【請求項11】
請求項8記載の吸熱材を、70℃〜130℃以上で加熱して、パッキング材を破損し、ケイ酸カルシウム成形体に含まれる水を気化させることにより、吸熱させる、請求項8記載の吸熱材の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機多孔質体を用いた吸熱材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、火力発電所、その他火事等の災害により施設内のケーブルに耐熱性又は耐火性を持たせなければならない施設がある。
通常、これらのケーブルに吸熱材を被覆することで耐熱性又は耐火性を実現しているが、従来の吸熱材は、加熱された際に、高分子吸収体に水を含ませたもので吸熱させるか、又は水和物に含まれる水分子(結晶水)を用いて吸熱させるかによって吸熱していた(特許文献1,2)。
しかしながら、従来の吸熱材は、かさ張ること及び重量が重いこと、又はケーブルを敷設した後ではケーブル被覆を行うだけのスペースが狭いことからケーブル被覆の交換が困難であることが問題となっていた。
【0003】
高分子吸収体による吸熱材は高分子吸収体が成形体ではないため、自立性や保形成がなかった。従って施工部位に巻きつけるもしくは貼り付けるような施工には対応できるが、壁面に自立させる施工や空間部への施工は非常に困難であった。さらに、このような吸熱材は交換が必要となり、コストも労力も膨大となってしまっていた。
水和物を用いた吸熱材は、水和物の分解温度がケーブルの耐熱温度よりも高いため、水和物が分解される前にケーブルが破損してしまうといった問題があった。
【0004】
そこで、交換不要、狭い場所にも施工可能、軽量、効率的に吸熱する吸熱材が求められていた。
一方、ゾノトライトケイ酸カルシウム成形体が断熱材として知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−102856号公報
【特許文献2】特開昭61−186256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規な吸熱材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、気化熱が高い水を無機多孔質成形体に含水させたものが、吸熱作用が強く保形性が高いため吸熱材として優れ、さらに、水が蒸発した後も断熱材として機能することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、以下の吸熱材及びその製造方法が提供される。
1.吸水した無機多孔質成形体からなる吸熱材。
2.前記無機多孔質成形体が、ケイ酸カルシウム、シリカ、アルミナ、バーミキュライト、マイカ、セメント、及びパーライトから選択される1種又は2種以上の無機粉体を含む成形体である1記載の吸熱材。
3.前記無機多孔質成形体が、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維、及び生体溶解性無機繊維から選択される1種又は2種以上の無機繊維を含む成形体である1又は2記載の吸熱材。
4.前記無機多孔質成形体の密度が、40〜400kg/mである1〜3のいずれか記載の吸熱材。
5.前記吸水された水が、不凍液、防腐剤、及びpH調整剤から選択される1種又は2種以上の添加剤を含む1〜4のいずれか記載の吸熱材。
6.パッキング材により包まれている1〜5のいずれか記載の吸熱材。
7.前記パッキング材が、金属箔と樹脂のラミネート体である6記載の吸熱材。
8.前記金属箔が、アルミニウム箔、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔、又は燐青銅である7記載の吸熱材。
9.前記樹脂が、熱可塑性樹脂である7又は8記載の吸熱材。
10.前記パッキング材が、70℃〜130℃で破損する6〜9のいずれか記載の吸熱材。
11.無機多孔質成形体に水を吸水させ、パッキング材で包む、吸熱材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な吸熱材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかる吸熱材を示す図である。
図2】本発明の他の実施形態にかかる吸熱材を示す図である。
図3】実施例2で製造した耐火構造を示す概略横断面図である。
図4】実施例2で製造した耐火構造を示す概略縦断面図である。
図5】実施例3で製造した耐火構造を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の吸熱材は、水を吸水(含浸)した無機多孔質成形体を含む。
用いる成形体は、例えば、ボート等の自立成形体である。
【0012】
無機多孔質成形体の例としては、ケイ酸カルシウム、シリカ、アルミナ、バーミキュライト、マイカ、パーライト、セメント等の無機粉体等を1種もしくは2種以上混合し加工した成形体が挙げけられる。
【0013】
また、無機多孔質成形体の例としては、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維、生体溶解性無機繊維等の無機繊維等を1種もしくは2種以上混合し加工した無機繊維成形体が挙げられる。
セラミック繊維は、主としてシリカとアルミナからなる繊維(シリカ:アルミナ=40:60〜0:100)であり、具体的には、シリカ・アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維を用いることができる。
【0014】
また、作業者の健康上の安全性を考慮して、耐熱性の高い生体溶解性繊維を用いることができる。
生体溶解性繊維は、一般に、主成分として、シリカ及び/又はアルミナに、アルカリ金属酸化物(NaO,KO等)、アルカリ土類金属酸化物(CaO等)、マグネシア、ジルコニア、チタニアから選択される1以上を含む。他の酸化物も含むことができる。
【0015】
例えば、以下の組成が例示できる。
SiOとZrOとAlとTiOとの合計 50重量%〜82重量%
アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物との合計 18重量%〜50重量%
【0016】
より具体的には、以下の組成1又は組成2が例示できる。
[組成1]
SiO 70〜82重量%
CaO 1〜9重量%
MgO 10〜29重量%
Al 3重量%未満
[組成2]
SiO 70〜82重量%
CaO 10〜29重量%
MgO 1重量%以下
Al 3重量%未満
【0017】
無機多孔質成形体としては、特に、ケイ酸カルシウム成形体、セラミック繊維成形体が好ましく、ケイ酸カルシウム成形体がより好ましい。ケイ酸カルシウムの種類の中では、ゾノトライト6CaO・6SiO・HO、トバモライト5CaO・6SiO・5HO、ワラストナイトCaSiOが好ましく、特に好ましいのは耐熱性が高いゾノトライトである。ケイ酸カルシウム成形体は軽く細孔が小さいため水が均一に保水され易い。
【0018】
無機多孔質成形体は、上記の他に、無機バインダー、粒子等を含むことができる。
【0019】
ケイ酸カルシウム成形体の製造方法としては、特許文献1,2に記載の方法で製造できる。具体的には、珪石や消石灰等を水中に分散させスラリーとし、攪拌式圧力容器で水熱合成し、ケイ酸カルシウム水和物の2次粒子を合成する。このスラリーを湿式吸引脱水成形し製造できる。
【0020】
また、無機繊維成形体は、ローター法及びブローイング法、溶融紡糸法等により製造された無機繊維をバインダー等を用いて成形して製造することができる。具体的には、各種繊維やバインダー等を水中に分散させスラリーとし、このスラリーを湿式吸引脱水成形して製造できる。
【0021】
軽量であること、多量の水を含ませること、及び水を保持した後でも良好な保形性を維持できる強度を有することを目的として、無機多孔質成形体の密度は40〜400kg/m程度のものが好ましい。さらに好ましくは80〜300kg/m、より好ましくは100〜200kg/mである。
【0022】
成形体は、成形体の重量の100〜400%の重量の水を含むことができる。成形体は、好ましくは130〜300%、より好ましくは150〜250%の水を含む。
【0023】
無機多孔質成形体に吸水させる水には、不凍液、防腐剤、pH調整剤等の各種添加剤を含むことができる。
水は、凍結すると体積が膨張してパッキング材を破損する恐れがあるため、不凍液を含むと好ましい。また、環境によっては長期保存により無機多孔質成形体からの微量溶出成分等により、含浸水のpHが変化し、無機多孔質成形体やパッキング材さらには水自体を変質させたりする恐れがあるため、pH調整剤を含むと好ましい。水に含めるものはこれに限られず、必要に応じて追加することができる。
【0024】
含水した無機多孔質成形体は、パッキング材(パッケージ)によりパッキングされていることが好ましい。
パッキング材の密封性は、常態で、含水成形体からの水の蒸発を防ぐ程度でよい。加熱によりパッキング材は破損し、水が蒸発し、その際、気化熱により吸熱する。
加熱による破損温度は、水の沸点(以下)であることが好ましい。沸点以上だと、パッキング材が爆発してしまうおそれがあり、水の沸点よりもかなり低いと早い段階でパッキング材が破損し、水が蒸発してしまうことで効率的に吸熱効果を得ることができない。したがって、パッキング材の破損温度は、70℃〜130℃がより好ましい。より好ましくは、80℃〜120℃、さらに好ましくは、90℃〜110℃である。このような温度で破損すれば、破損と共に水が蒸発し、吸熱作用を発揮できる。
【0025】
含水した無機多孔質成形体をパックするパッキング材としては、金属、樹脂を用いることができる。金属と樹脂を積層したラミネートしたものが、耐熱性および強度が高いため好ましい。金属と樹脂のラミネート体としては、樹脂層、金属層、樹脂シーラント層を含む3層以上のラミネート体が好ましい。
【0026】
用いられる金属としては、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔、燐青銅等が挙げられる。特に、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔が好ましく、さらに好ましくはアルミニウム箔である。
【0027】
樹脂として、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニルサイファイド、フッ素、ポリカーボネート、アラミド等が挙げられる。これらのうち100℃前後の温度で破損される樹脂が好ましい。
【0028】
パッキング材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm〜200μmである。上記の積層体の場合、金属箔を3μm〜12μm、樹脂層を2μm〜60μmとできる。これにより、金属箔の耐熱性、耐火性及び低水蒸気透過性を発揮させるとともに、樹脂により密封性を向上させることができる。
【0029】
また、パッキング材は加熱により発生するパッケージ内圧力を逃がす機構及び構造を部分的に設けてもよい。例えば、パッキング材の一部にフィルム種類や構造を変えてフィルム融着部の接着力を低くする部位を設ける。又はフィルムの一部に穴を開けて、そこにパッケージフィルムより厚さの薄いフィルムを貼ったり溶融形成したりする。これにより、パッケージ内圧力が上昇した際に、パッキング材が必要以上に膨らまず、原寸法をある程度維持することが可能である。
【0030】
本発明の吸熱材は、多孔質体に水を吸水させ、金属及び又は樹脂の1種又は2種を含むパッキング材で包んで製造できる。
【0031】
図1に本発明の吸熱材の一例の断面図を示す。吸熱材1は、含水した無機多孔質成形体11をパックするパッキング材13を有する。図1の吸熱材1において、パッキング材は融着部15で融着している。吸熱材の大きさは限定されず、用途により適宜定められる。
【0032】
図1に示すような吸熱材をそのまま使用してもよいし、図2に示すように、図1に示す吸熱材を複数連結してもよい。図2に示す複数連結した吸熱材は、狭い場所に持ち運ぶとき、畳んだり丸めたりして運べるため便利である。また、対象物の形状に合わせて、配置できる。
【0033】
本発明の吸熱材は、吸熱材と機能した後、水が無くなった無機多孔質成形体は、優れた断熱材としても機能する。
本発明の吸熱材は、それだけで断熱材として利用できるが、他の断熱材と組み合わせてもよい。組み合わせることにより、さらに効果的な断熱構造を構成でき、強力な断熱性及び耐火性を発揮できる。
【実施例】
【0034】
実施例1
ゾノトライドケイ酸カルシウム成形体(ケイカルエース・スーパーシリカ、日本ケイカル株式会社)(密度120kg/m、500℃の熱伝導率0.114W/(m・K)以下)(縦600mm×横300mm×厚み50mm)を用いた。
この成形体を後述する実施例に用いるのに適した大きさに切断して、成形体の2倍200重量%の水を含ませた。
得られた含水成形を、表面よりナイロン(15μm)、アルミ箔(7μm)、リニアローデンシティポリエチレン(LLDPE)(40μm)の積層体で構成されラミネートフィルムを脱気・ヒートシールで密封して吸熱材を得た。
【0035】
実施例2
(1)耐火構造の組み立て
実施例1で製造した吸熱材(厚み50mm)、及び以下の第1及び第2の断熱材を用いて、図3,4に示す耐火構造を組み立てて、耐火試験を実施した。
・第1の断熱材:微孔性ヒュームドシリカ成形体(ロスリムボードGH、ニチアス(株))(800℃の熱伝導率0.04W/(m・K))
・第2の断熱材:生体溶解性繊維ブランケット(生体溶解性繊維組成:SiO含有量約73質量%、CaO含有量約25質量%、MgO含有量約0.3質量%、Al含有量約2質量%)(1000℃24時間の収縮率0.6%)
【0036】
図3に示す耐火構造400の組み立て手順を以下に示す。
ケーブルラックの段105を、ケーブルラック付属の架台に固定し、ケーブルラック103を組み立てた。ケーブルラックの段105に、ケーブルが入ったケース(図示せず)を載せた。
断熱材ケーシングのアングルを組み、内側用金属パネルを取り付け、下面のみが解放された直方体状の断熱材ケーシング(図示せず)を組み立てた。
縦型炉500中に、ケーブルラック103を設置し、ケーブルラック103を囲んで断熱材ケーシング(図示せず)を取り付けた。
【0037】
断熱材ボックスの内側用の金属パネルに、吸熱材401を貼り付けた。
吸熱材401に第1の断熱材405を1又は3層貼り付けた。
第1の断熱材405に第2の断熱材403を巻き付けた。
第2の断熱材403の外側に、断熱材ケーシングの外側用の金属パネル(図示せず)を取り付け、耐火構造400を組み立てた。
【0038】
(2)耐火構造の評価
図4は、耐火構造の概略縦断面図であり、熱電対の設置位置を示す図である。
熱電対は、第2の断熱材の外面(図4中、551、555及び559)、吸熱材と第1の断熱材の間(図4中、553、557及び561)、及び吸熱材の内面(図4中、554、558及び562)に設置した。
縦型炉500において、バーナーにより、ISO標準耐火曲線で3時間加熱を行った後、2時間放冷した。それぞれの熱電対の設置位置における、1,2,3及び5時間後の測定温度(℃)を、表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例3
(1)耐火構造の組み立て
図5は、実施例3で組み立てた耐火構造600の概略縦断面図である。
実施例3では、天井から吊り下げられたケーブルラック103を用いた。ケーブルラック103は、複数の段を有し、ケーブル101が入ったケースを段に載せた。
実施例1で製造した吸熱材601(厚み25mm)で、ケーブルラックの段に有るケーブル101が入ったケースの周囲を囲んだ。さらに、その周囲を、積層断熱材603で囲った。積層断熱材603は、ケーブルのある内側から、以下の第3の断熱材1層(20mm)、及び以下の第2の断熱材3層(25mm×3)を積層し、外側全体をシリカクロスで包んだものである。
・第3の断熱材:エアロゲル・無機繊維複合材(パイロジェル、アスペン(株))
・第2の断熱材:生体溶解性繊維ブランケット(生体溶解性繊維組成:SiO含有量約73質量%、CaO含有量約25質量%、MgO含有量約0.3質量%、Al含有量約2質量%)
【0041】
(2)耐火構造の評価
熱電対を、積層断熱材603の外側、積層断熱材603のブランケット層の間、積層断熱材603と吸熱材601の間、ケーブル101の付近に設置した。
実施例2と同様に、ISO標準耐火曲線で3時間加熱を行った後、2時間放冷した。それぞれの熱電対の設置位置における、1,2,3及び5時間後の測定温度(℃)を、表2に示す。
【0042】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の吸熱材は、原子力発電所等、耐火性が求められる場所又は設備に用いる吸熱材として使用できる。
【符号の説明】
【0044】
1,2 吸熱材
11 含水無機多孔質成形体
13 パッキング材
15 融着部
101 ケーブル
103 ケーブルラック
105 ラックの段
400,600 耐火構造
401,601 吸熱材
403 第1の断熱材
405 第2の断熱材
500 縦型炉500
551,553,554,555,557,558,559,561,562 熱電対の設置位置
603 積層断熱材
図1
図2
図3
図4
図5