(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905894
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】マグネシウムアノード、及び硫黄に適合する安定で安全な電解質を備えた電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/054 20100101AFI20160407BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20160407BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20160407BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20160407BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20160407BHJP
H01M 4/50 20100101ALN20160407BHJP
【FI】
H01M10/054
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/38 Z
H01M4/58
!H01M4/50
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-536609(P2013-536609)
(86)(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公表番号】特表2014-504423(P2014-504423A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】US2011042736
(87)【国際公開番号】WO2012057880
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年4月28日
(31)【優先権主張番号】12/913,253
(32)【優先日】2010年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マルドゥーン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヘ ス
(72)【発明者】
【氏名】松井 雅樹
【審査官】
青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−294375(JP,A)
【文献】
特表2009−523765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてマグネシウムを含むアノード、
カソード、及び
電解質
を含み、前記電解質が、溶媒と、立体障害性環状第二級アミンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl錯体とを含み、前記立体障害性環状第二級アミンが、テトラヒドロピロール、ピペリジン、ピペラジン、及びヘキサメチレンイミンからなる群より選択され、それぞれが第二級アミンの窒素に隣接する炭素上で1〜6個の炭素原子を有するアルキル基でテトラ置換されている、電気化学セル。
【請求項2】
前記ハロゲン化マグネシウム塩のハロゲン化物が、F、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記ハロゲン化物がClである、請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記溶媒がテトラヒドロフランである、請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記立体障害性環状第二級アミンが、1〜6個の炭素原子のアルキル基を有する2,2,6,6−テトラ−アルキルピペリジンである、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記2,2,6,6−テトラ−アルキルピペリジンが2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである、請求項5に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記立体障害性環状第二級アミンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl錯体が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−マグネシウムクロライド−リチウムクロライド錯体である、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記溶媒が、アセタール、ケタール、スルホン、非環状エーテル、環状エーテル、グリム、ポリエーテル、及びジオキソランからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記溶媒が少なくとも環状エーテルを含む、請求項8に記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記環状エーテルがテトラヒドロフランである、請求項9に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記カソードが、マグネシウム基準で少なくとも3.2Vの電圧に対して安定である、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項12】
マグネシウム基準で少なくとも3.2Vの電圧に対して安定であるカソードが硫黄元素を含む、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項13】
請求項1に記載の電気化学セルを含むバッテリー。
【請求項14】
請求項7に記載の電気化学セルを含むバッテリー。
【請求項15】
活性成分としてマグネシウムを含むアノード、
マグネシウム基準で少なくとも3.2Vの電圧に対して安定であるカソード、及び
電解質
を含み、前記電解質が、溶媒と、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−マグネシウムクロライド−リチウムクロライド錯体とを含む、バッテリー。
【請求項16】
マグネシウム基準で少なくとも3.2Vの電圧に対して安定であるカソードが硫黄元素を含む、請求項15に記載のバッテリー。
【請求項17】
前記溶媒がテトラヒドロフランである、請求項16に記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2010年10月27日付で出願された米国特許出願第12/913,253号の優先権を主張するものであり、そのすべての内容を参照によって本明細書中に援用する。本出願はさらに、2010年4月12日付で出願された先行米国特許出願第12/758,343号及び2010年4月27日付で出願された先行米国特許出願第12/768,017号にも関連し、それらの開示を参照によって本明細書中に援用する。
【0002】
本発明は、マグネシウムを含むアノード、カソード、及び立体障害性第二級アミンのハロゲン化マグネシウム塩のリチウムクロライド錯体を含む電解質を有する電気化学デバイスに関する。最も特に、本発明は、マグネシウムアノードと硫黄カソードに適合する安定で安全な電解質を備えたマグネシウム硫黄電気化学デバイスを対象としている。
【背景技術】
【0003】
1991年以来、リチウムイオンバッテリーは、商業的に使用され、携帯用電子機器の電源として従来使用されてきた。リチウムイオンバッテリー(LIB)の構造と組成に関連する技術は、研究と改良の対象となっており、最先端のLIBバッテリーは最大700Wh/Lのエネルギー密度を有するとの報告があるほどに成熟した。しかしながら、最も高度なLIB技術でさえ、将来の市販用電気自動車(EV)の要求に応えられる電源として実用可能であるとは考えられていない。例えば、300マイル(約483km)の航続距離を有するEVが現在の従来型の内燃機関自動車と同等な伝動機構を持つようにするには、約2000Wh/Lのエネルギー密度を有するEVバッテリーパックが必要である。このエネルギー密度は、リチウムイオン活物質の理論的限界の近いので、より高いエネルギー密度のバッテリーシステムを提供できる技術を研究中である。
【0004】
多価イオンであるマグネシウムは、リチウムに対する魅力的な代替電極物質であり、そしてそれは、非常に高い容積エネルギー密度を潜在的に提供できる。それは、RHEに対する−2.375Vの高度に負の標準電位、12.15g/モル電子の低い当量、及び649℃の高い融点を有する。リチウムと比較して、それは、取扱い、機械加工、及び処理が簡単である。そのより豊富な相対存在量のため、それはリチウムに比べて原料としてコストが低く、そして、マグネシウム化合物は一般に、リチウム化合物より低毒性な化合物である。リチウムと比較して大気や湿気に対するマグネシウムの低い感受性と相まって、これらの特性のすべてが組み合わさって、マグネシウムをアノード材料としてのリチウムの魅力的な代替物質にしている。
【0005】
硫黄は、その迅速な利用可能性、低コスト、相対的な無毒性、及び低い当量のため、魅力的なカソード材料である。さらに、硫黄は、1675mAh/gの理論最大容量を有する。そのため、マグネシウムアノードと組み合わせてカソード材料として使用される硫黄は、潜在的にEVでの使用に好適な大容量の、安全、且つ、経済的なバッテリーを提供できる。
【0006】
活物質としてのマグネシウムベースのアノードと、活物質としての硫黄ベースのカソードを備えたバッテリーの製造は、マグネシウムイオンを効率的に輸送し、硫黄の正極活物質に悪影響を与えない電解質系を必要とする。正極活物質としての成果で、硫黄は、硫化物とポリスルフィド放電生成物に還元される。これらの放電生成物は、充電段階の間、酸化に利用可能なままで残っていなければならない。そのうえ、実用可能なマグネシウム硫黄バッテリーを得るために、有効なMg電解質輸送システムは、硫黄と化学的に反応性であってはならない。さらに、市販のバッテリーの製造を考慮すれば、安全に保存、輸送、取扱いできる電解質が望まれる。
【0007】
極性非プロトン性電解質溶液中のマグネシウム電極の電気化学的挙動は、Luらによってthe Journal of Electroanalytical Chemistry (466 (1999) pp 203-217)に報告された。これらの考案者は、極性非プロトン性電解質溶液中、Mgの電気化学的挙動がLiのそれと異なっていると結論を下した。彼らの研究は、リチウム電極の場合とは対照的に、非プロトン性溶媒中、Mg電極上に形成される表面膜がMgイオンを輸送しないことを示した。そのため、リチウム輸送システムで用いられた従来の電解質系は、マグネシウムアノードを備えたセルにとって好適でない。Mgイオンの輸送はマグネシウムアノードベースのあらゆる電気化学セルの必須条件であるのでも、他の電解質系が研究された。
【0008】
Gregoryら(J. Electrochem. Soc, 137 (3), March, 1990, 775-780)は、エーテル溶媒中のハロゲン化アルキルマグネシウム−有機ホウ素複合体の電解質系を報告した。ハロゲン化アルミニウムを加えたハロゲン化アルキルマグネシウム溶液もまた報告された。輝く結晶性Mg溶着をもたらす、非常に高い電流効率におけるMgの溶解と被覆が、これらの系で得られた。しかしながら、その電解質系に適合できる好適なカソード材料は報告されなかった。
【0009】
これまで最も一般的に使用されたマグネシウム電解質は、テトラヒドロフラン中のフェニル塩化マグネシウム/塩化アルミニウムなどの有機金属系材料である。しかしながら、これらの電解質混合物は、こうしたグリニャールベースの材料の空気や水分感受性特徴のため、おそらく実用的な市販の上での有用性がありそうにない。そのうえ、フェニル塩化マグネシウム/塩化アルミニウム電解質は、アノードの安定性を制限し、そして、かかる材料は非常に求核性であり、且つ、本質的に強い還元剤である。この化学反応性特徴は、問題が多い。なぜなら、グリニャールタイプの電解質を用いる電気化学セルを組み立てるには、グリニャールに対して本質的に化学的に不活性なカソード材料が必要だからである。この要件を満たすカソード機能材料の数は限定される。これまで、有機金属系電解質に適合できる、2種類の実証済みのカソードが存在した。
【0010】
Aurbachら(NATURE, 407, October 12, 2000,724-726)は、電解質としてテトラヒドロフラン(THF)中の有機ハロアルミン酸マグネシウム塩又はグリムタイプのポリエーテル、及びMo
3S
4のシェブレル相ホスト材料ベースのMg
xMo
3S
4カソードを備えたMgバッテリー系を記載している。式Mg
(0-2)Mo
6S
(8-n)Se
nを有すると記述された同様のカソード材料もまた、Aurbach (Advanced Materials, 19, 2007, 4260-4267)によって報告された。
【0011】
Yamamotoら(特開2007−233135号公報)は、フルオロ黒鉛、金属元素、例えば、スカンジウム、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び亜鉛などの酸化物又はハロゲン化物を含めた正極活性物質を記載している。実施例は、MnO
2に基づいている。
【0012】
しかしながら、上記のマグネシウム電解質系で用いられた有機金属系電解質は、硫黄と高度に反応するので、硫黄と直接反応して、求核攻撃によって硫化物を形成することが知られている(The Chemistry of the Thiol Group, Pt 1 ; Wiley, New York, 1974, pp 211-215)。そのため、Mg/Sバッテリーを製造するために、先に記載したマグネシウムイオン輸送のためにすべての要求事項を満たす一方で、硫黄に対して化学反応性が低い又は反応性がない新しい電解質系が必要である。
【0013】
Vuらに対する米国特許出願公開第2009/0226809号には、リチウム−硫黄バッテリーのためにカソードが記載されている(要約書)。I及びII族金属から選択された金属酸化物は、硫黄カソード組成物の組成に含まれている[0012]。アノードはリチウムを含んでおり、そして、記載の電解質は非水溶媒中のでリチウム塩で構成されている[0032]。
【0014】
Aurbachらに対する米国特許出願公開第2008/0182176号には、マグネシウムアノード、及び改変シェブレル相を持つ挿入カソードを備えた電気化学セルが記載されている。シェブレル相化合物は、式Mo
6S
8-ySe
y(yは、0より大きく2より小さい)又はM
xMo
6S
8(xは、0より大きく2未満である)によって表される。電解質は、エーテル溶媒中で式Mg(AlR
xCl
4-X)
2及び/又は(MgR
2)
x−(AlCl
3-nR
n)
y{式中、Rは、メチル、エチル、ブチル、フェニル、及びその誘導体であり、nは、0より大きく3より小さく、xは、0より大きく3より小さく、並びにyは、1より大きくより小さい。}(請求項3)によって表される。
【0015】
Gorkovenkoに対する米国特許第7,316,868号には、リチウム・アノード、電気活性含硫組成物のカソード、並びに、リチウム塩、及びジオキソランと、5又は6個の炭素の1,2−ジアルコキシアルカン及び5又は6個の炭素原子の1,3−ジアルコキシアルカンのうちの1若しくは複数の溶媒混合物を含む非水性電解質を備えた電気化学セル(請求項1)が記載されている。電気活性硫黄化合物には、硫黄元素、及び硫黄及び炭素原子を含む有機化合物が含まれる(4欄、10−26行目)。
【0016】
Mikhaylikに対する米国特許第7,189,477号には、リチウム・アノード、含硫材料のカソード、及びリチウム塩で構成された電解質系を備えた電気化学セル(4欄、5−22行目)、並びに非環状エーテル、環状エーテル、ポリエーテル、及びスルホンから選択された非水性酸素含有有機溶媒が記載されている。
【0017】
Choiらに対する米国特許第7,029,796号には、硫黄の塊集複合体のカソード、及び伝導作用物質粒子を備えたリチウム硫黄バッテリーが記載されている(請求項1)。固体又は液体の電解質が利用可能であり、そして、液体電解質は、非水性有機溶媒やリチウム塩である(8欄、43−58行目)。
【0018】
Skotheimらに対する米国特許第6,733,924号には、リチウムが銅、マグネシウム、アルミニウム、銀などの金属の表面コーティングで保護されているリチウム硫黄バッテリーが記載されている(12欄、25−28行目)。電解質は、非水性溶媒、ゲル重合体又は重合体中のイオン性塩から成っていてもよい。イオン性電解質塩はリチウム塩である(15欄、26行目〜16欄、27行目)。
【0019】
Yoshiokaに対する米国特許第6、420,067号には、Ni、Zn、及びZrのMg合金である水素蓄積負極が記載されている(要約書)。正極は、金属酸化物(3欄、17−19行目)と水性電解質(7欄、16−18行目)で構成されている。
【0020】
Yamamotoらに対する米国特許第6,265,109号には、マグネシウム合金の負極を備えた空気電池が記載されている(4欄、9−33行目)。電解質は、酸アミド、及びジメチルアセトアミド、アセトニトリル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクタムから選択されたと第2の溶媒(3欄、1−15行目)、並びにハロゲン化物又はペルクロラートのマグネシウム塩で構成される。
【0021】
Griffinらに対する米国特許第5,506,072号には、微粉化硫黄のカソード、固形黒鉛電極の周りにまとめた微粉化黒鉛(3欄、48−51行目)、マグネシウムを含むアノード、並びに水性電解質溶液としての対応するハロゲン化マグネシウムとイオン性硫化物から成る電解質を備えたバッテリーが記載されている(3欄、65行目〜4欄1行目)。
【0022】
Okazakiらに対する米国特許第4,020,242号には、電解質を含み、そしてカソード又はアノードの体積増加によって圧力が加えられたときに、その見掛けの容積を低減するスペーサーを備えた一次セルが記載されている(要約書)。リチウム・アノード、及びフッ化炭素、クロム酸銀、二酸化マンガン、酸化第二銅、又は五酸化バナジウムのカソード、並びに非水性電解質で構成されたセルが記載されている(請求項15)。
【0023】
Jostに対する米国特許第3,849,868号には、ラミネート材料に接着されたマグネシウム層を持つ複合金属ラミネートのコンテナを備えたバッテリーが記載されている(要約書)。黒鉛ロッドはカソードとして機能し(欄4、66行目〜欄5、3行目)、そして、電解質混合物は、臭化物塩の水溶液中に二酸化マンガン、微粉化炭素、及びクロマートを含む(4欄、48−59行目)。
【0024】
Deyに対する米国特許第3,658,592号には、軽金属のアノード(1欄、63−67行目)、金属クロマートのカソード(1欄、68−72行目)、及び有機溶媒中に軽金属の無機塩類を含む非水性電解質を備えた電池が記載されている(欄1、73行目〜2欄、9行目)。マグネシウムが、軽金属として挙げられている。
【0025】
Fumihitoに対する特開2004−259650号公報には、マグネシウムアノード及び遷移金属元素の挿入カソードを備えたバッテリーが記載されている(要約書)。五酸化バナジウムと黒鉛のカソードが、実施例1に記載されている。電解質は、テトラヒドロフラン中のフェニルハロゲン化マグネシウムを含むポリマーゲルである。
【0026】
Hideyukiらに対する特開2004−265675号公報には、含硫アノードと金属マグネシウムの負極で構成された試験セルが記載されている。γ−ブチロラクトン中のマグネシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが、電解質系として利用されている。
【0027】
Parkに対する米国特許出願公開第2010/0040956号には、リチウムイオンを挿入した電極、セパレーター、及び有機溶媒中のリチウム塩から成る非水性電解質から組み立てたリチウムイオン二次セルが記載されている。電解質はさらに、ポリ(2−ビニルピリジン)などの複素環アミン基を含めた重合体を含む。有機溶媒は、有機カルボナートの混合物である。
【0028】
Chenらに対する米国特許出願公開第2009/0081557号には、負極、空気正極、及びリチウム塩、及びシラン又はホスファートのポリ(エチレンオキシド)誘導体である溶媒から成る非水性電解質を備えたリチウム空気電池が記載されている。
【0029】
Usamiらに対する米国特許出願公開第2008/0102374号には、一方又は両方の電極が複素環系に基づく高分子活物質を含むリチウム二次バッテリーが記載されている。備わっている電解質は、例えば、有機カルボナート、又は環状エーテルなどの有機溶媒中にリチウム塩を含む従来のリチウム系である。
【0030】
Mikkaylikに対する米国特許第7,019,494号及び同第7,354,680号、並びに公開特許第2007/0082270号には、リチウム・アノードと電気活性硫黄材料を持つカソードを備えた電気化学セルが記載されている。電解質は、イオン性電解質である、アセタール、ケタール、スルホン、非環状エーテル、環状エーテル、グリム、ポリエーテル、及びジオキソランから選択された非水性溶媒中のリチウム塩である。電解質はさらに、例えば、無機硝酸塩、有機硝酸塩、又は無機亜硝酸塩などのイオン性N−O添加剤も含む。テトラメチルピペリジンN酸化物は、有機N−O添加剤として記述されている。
【0031】
Shinozakiらに対する米国特許第4,710,310号には、電解コンデンサーのための非水性電解質が記載されている。電解質は、非プロトン性溶媒、及びN置換されたアルキルN−複素環式化合物と、テトラフルオロホウ酸やヘキサフルオロリン酸などのフルオロ酸の複合体を含む。
【0032】
Finkelsteinらに対する米国特許第4,189,761号には、リン酸トリアルキルとアミンの反応で得たアンモニウム塩を含むバルブ金属電解コンデンサーが記載されている。典型的なバルブ金属は、アルミニウムとタンタルである。代表的なアミンとしては、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンが挙げられる。反応の間に、複素環窒素が、アルキル化されて、アンモニウム塩を形成する。
【0033】
Amineらに対する米国特許出願公開第2005/0019670号には、アルカリ金属電気化学デバイス具体的には、リチウム二次バッテリーのための安定化電解質が記載されている。電解質としては、アルカリ金属塩、極性非プロトン溶媒、有機アミン、及び金属キレート化ホウ酸塩が挙げられる。ピペリジンとビニルピペリジンが、有機アミンとして挙げられている。
【0034】
Kawamotoらに対する特開2005−108527号公報には、炭酸塩又はグリム溶媒、シラザン誘導体のリチウム塩及び添加剤、置換されたピペリジン、又は第二級若しくは第三級アミンで構成された電解質を備えたリチウム二次バッテリーが記載されている。その二次バッテリーのアノードは、炭素ベースのアクティブシステム、又はリチウム金属若しくは合金である。カソードは、例えば、リチウム金属酸化物などの従来のカソード材料である。
【0035】
Yanaiらに対する特開平10−040928号公報には、リチウム活性アノード、及び酸化物ベースのカソードを備えた非水性リチウムバッテリーが記載されている。電解質溶媒は、有機カルボナート、スルホラン、ラクトン、エーテル又はエステルであり、そして、活性塩は、溶媒中に可溶性のリチウム塩である。自己放電に対してバッテリーを安定化させるために電解質に、ピペリジン又はピペリジンが加えられる。
【0036】
上記文書のいずれもマグネシウムを含むアノード、硫黄を含むカソード、及びMgイオンの輸送に有効であり、且つ、Mgを含む活物質電極と硫黄を含む活物質電極の両方に適合できる安定した安全な電解質系を備えた実際に実用的な電気化学デバイスを開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明の1つの目的は、性能、製造の容易さ、安全性、及びコストが好適であり、それにより市販のバッテリーにおける使用に適したマグネシウムアノードを備えた電気化学デバイスのための電解質系を提供することである。
【0038】
本発明の2番目の目的は、マグネシウムアノードと、安定で安全でありそして生産環境における取扱いが容易な硫黄を含むカソードを備えた電気化学デバイスのための電解質系を提供することである。
【0039】
本発明の3番目の目的は、非常に優れた性能、低コスト、そして安全に製造及び取扱いできるマグネシウム硫黄バッテリーを提供することである。
【0040】
本発明の4番目の目的は、活物質としてマグネシウムを含むアノード、及び安定で安全でありそして取扱いが容易な適合性のある高性能非水性電解質系を備えた電気化学デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
この及び他の目的は、個々に又は組み合わせにおいて本発明によって達成され、その第1の実施形態は、
活性成分としてマグネシウムを含むアノード、
カソード、及び
電解質
を含み、前記電解質が、溶媒と、立体障害性第二級アミンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl
錯体とを含む電気化学セルを含む。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、立体障害性第二級アミンは、5〜7個の環原子を含む置換された環状第二級アミンである。
【0043】
本発明の非常に好ましい実施形態では、立体障害性第二級アミンは、置換基のアルキル基が1〜6個の炭素原子を含む2,2,6,6−テトラ−アルキルピペリジンである。
【0044】
具体的な実施形態では、本発明は、
活性成分としてマグネシウムを含むアノード、
活性成分として硫黄を含むカソード、及び
溶媒と、置換基のアルキル基が1〜6個の炭素原子を含む2,2,6,6−テトラ−アルキルピペリジンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl
錯体とを含む電解質
を含む電気化学セルを提供する。
【0045】
さらに非常に好ましい実施形態では、本発明は、
活性成分としてマグネシウムを含むアノード、
活性成分として硫黄を含むカソード、及び
溶媒と、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−マグネシウムクロライド−リチウムクロライド錯体(TMPMgCl−LiCl)とを含む電解質
を含むバッテリーを提供する。
【0046】
上記の段落は、一般的な導入部の目的で提供されたので、以下の請求項の範囲を限定することを意図していない。間もなく、好ましい実施形態は、更なる利点と一緒に、添付図面と併用される以下の詳細な説明を参照することによって十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】Mg(TFSI)
2からのMg析出のサイクリックボルタモグラム研究の結果を示す。
【
図2】(PhMgCl+AlCl
3)と比較した(Mg
2Cl
3・6THF)
+[AlCl
3(HMDS)]
-のサイクリックボルタモグラム研究を示す。
【
図3】TMPMgCl−LiCl電解質からのMg析出のサイクリックボルタモグラム研究の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明者らは、首尾よくマグネシウム硫黄バッテリー又は電気化学デバイスを調製するのに、金属マグネシウムの還元に安定であり、且つ、硫黄に対して求核的な反応性ではない有効なマグネシウムイオン輸送電解質系が必要であると認識した。マグネシウムの還元に対する安定性は、マグネシウムイオンの透過を阻害するマグネシウム表面の保護膜の形成を予防することが必要である。さらに、商業的に実施可能にするために、デバイスは、グリニャール化学反応に基づく従来のMg電解質系と比較して、安全性、安定性、及び生産環境における取扱いの容易さが顕著に改善された電解質を備えていなければならない。よって、発明者らは、特開2004−265675号公報に記載のビス(トリフルオロメチルスルホニル)マグネシウムクロライドのボルタンメトリー的挙動を研究し、そして、この材料がマグネシウムに適合できず、マグネシウムによって実際に還元されるのがわかった。この挙動は、
図1に示されている。
【0049】
先に述べた要件を認識して、発明者らは、可能性のある好適な電解質系を捜し求め、そして、関連米国特許第12/758,343号のマグネシウムイオンの輸送のための電解質系の成分向けの非求核性塩基を含む窒素のマグネシウム塩を記載した。
【0050】
ヘキサメチルジシラジドマグネシウムクロライドは、可逆的にMgを析出させ、そして溶解するのが知られている。Liebenowら(Electrochem. Com. 2000, 641-645)は、有機マグネシウムハライドとアミドマグネシウムハライドの溶液から電着したマグネシウムの高い再酸化効率が記載されている。N−メチルアニリルマグネシウムブロミド、ピリルマグネシウムブロミド、及びビス(トリメチルシリル)マグネシウムクロライド(ヘキサメチルジシラジドマグネシウムクロライド)に関するTHF中の伝導率データが、ビス(トリメチルシリル)マグネシウムクロライドのサイクリックボルタモグラムと共に報告された。しかしながら、それは、ビス(トリメチルシリル)マグネシウムクロライドから析出したマグネシウムの完全な再酸化を達成できず、数パーセントの電気化学的に活性なマグネシウムがサイクルごとに失われたと報告された。
【0051】
本発明者らは、THF溶液中で従来のフェニルマグネシウムクロライド/AlCl
3電解質と比較して、ビス(トリメチルシリル)イミドマグネシウムクロライドの電解質挙動を研究した。サイクリックボルタンメトリーデータの分析は、Mg析出/溶解のクーロン効率(CE)が3つの異なった走査速度(5、25、及び100mV/秒)が100%であることを示した。
【0052】
ヘキサメチルジシラジドマグネシウムクロライド(HMDSMC)が、従来のMg電解質と比較してより高いMg析出過電位と低い電流密度を有していた。
図2は、HMDSMCのMg析出過電位が−0.40Vである一方で、従来システムの過電位が−0.33Vであることを示している。意外なことに、発明者らは、塩化アルミニウムをHMDSMCに組み合わせたときに、系の性能が顕著に改善されたことを発見した。
図2に示すように、HMDSMCへのAlCl
3の添加が、−0.40から−0.29VへのMg析出過電位の低下をもたらし、それにより、従来システムの−0.33の値に匹敵するようになった。よって、HMDSMC/AlCl
3電解質は、HMDSMC又はPhMgCl+AlCl
3系と比較して、より高い電流密度と低い過電位を示した。発明者らは、HMDSMC/AlCl
3電解質は、実用的なバッテリー系で適合させるとおそらくより高いバッテリー電圧をもたらし、そのため、より高いエネルギー密度をもたらすだろうという結論に至った。
【0053】
関連する第二級アミンを含む電解質系の更なる研究により、発明者らは、添付に請求項に記載の、そして以下の本発明を発見した。
【0054】
驚いたことに、発明者らは、その他のバルクの、非求核性化合物がMg/S電気化学セルの電解質系に好適である可能性があることを見出した。例えば、
図3に記載のとおり、300mV超の過電位を有する(Mg
2Cl
3−6THF)
+[AlCl
3(HMDS)]
-と比較して、TMPMgCl−LiClのMg析出過電位が約200mVである。こうした低い過電位は、TMPMgCl−LiClベースの電解質系を含む電気化学デバイスの性能を強化するのに貢献し得る。
【0055】
そのため、第1の実施形態では、本発明は、
活性成分としてマグネシウムを含むアノード、
カソード、及び
電解質
を含み、前記電解質が、溶媒と、立体障害性第二級アミンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl
錯体とを含む電気化学セルを提供する。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、立体障害性第二級アミンは、5〜7個の環原子を含む置換された環状第二級アミンである。
【0057】
本発明の非常に好ましい実施形態では、立体障害性第二級アミンは、置換基のアルキル基が1〜6個の炭素原子を含む2,2,6,6−テトラ−アルキルピペリジンである。
【0058】
具体的な実施形態では、本発明は、
活性成分としてマグネシウムを含むアノード、
活性成分として硫黄を含むカソード、及び
溶媒と、置換基のアルキル基が1〜6個の炭素原子を含む2,2,6,6−テトラ−アルキルピペリジンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl
錯体とを含む電解質
を含む電気化学セルを提供する。
【0059】
さらに非常に好ましい実施形態では、本発明は、
活性成分としてマグネシウムを含むアノード、
活性成分として硫黄を含むカソード、及び
溶媒と、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−マグネシウムクロライド−リチウムクロライド錯体(TMPMgCl−LiCl)とを含む電解質
を含むバッテリーを提供する。
【0060】
本発明による正極活物質の例としては、硫黄、MnO
2、及び式Mg
xMo
6Tn{式中、xは、0〜4の数であり、Tは、硫黄、セレニウム、又はテルルであり、そして、nは8である。}を持つシェブレル化合物を挙げることができる。
【0061】
MnO
2カソードは、当技術分野で知られており、例えば、特開2007−233134号公報に記載されている。
【0062】
式Mg
xMo
6Tn{式中、xは、0〜4の数であり、Tは、硫黄、セレニウム又はテルルである}を持つシェブレル化合物が、NATURE, 407, October 12, 2000,724-726に記載されている。
【0063】
活性成分として硫黄を含むカソードが、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第6,733,924号、同第7,029,796号、及び米国特許出願公開第2009/0226809号に記載されている。
【0064】
重要なことに、硫黄はこうしたカソード活性物質材料なので、そのため、本発明はカソードの活性成分として硫黄を含む電気化学デバイスの構築を可能にした。同時に、本発明の電解質系は、活性成分としてマグネシウムを含むアノードを伴ったMgイオン性電解質として従来のシステムと同じである。
【0065】
従って、実用的なMg/S電気化学デバイスが、本発明に従って構築することができる。
【0066】
そのため、本発明は、マグネシウムを含むアノード、マグネシウム基準に関連して少なくとも3.2Vの電圧に安定なカソード、及び溶媒と、立体障害性第二級アミンのハロゲン化マグネシウム塩を含む電解質を備えた電気化学デバイスを提供する。
【0067】
好ましくは、立体障害性第二級アミンは、5〜7個の環原子を持つ置換された環状第二級アミンである。最も好ましくは、環状第二級アミンは、第二級アミンの窒素に直接隣接する環の位置でテトラ置換される、すなわち、それぞれの隣接炭素が(二級窒素へのアプローチに対して立体障害をもたらす)2個の置換基に結合している。好ましくは、置換基は、互いに独立した1〜6個の炭素原子を持つアルキル基である。最も好ましくは置換基は、メチル又はエチル基である。コストと利用可能性の点で、テトラメチル置換された構築物が好まれる。
【0068】
環状第二級アミンは、置換されたピロリジン、置換されたピペリジン、置換されたピペラジン又は置換されたヘキサメチレンイミンであり得る。
【0069】
ハロゲン化物は、F、Cl、Br又はI、好ましくはCl、Br、そして最も好ましくはClであり得る。利用可能性、コスト、及び取扱いの容易さを考慮して、マグネシウムクロライドが最も好まれる。
【0070】
エーテル溶媒は、安全性と取扱いの容易さを考慮して、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びビス2−メトキシエチルエーテルのうちの1若しくは複数であり得る。テトラヒドロフランは最も好まれ得るが、他の反応要件は異なった物理的性質を有するエーテルの必要性を決定することもある。
【0071】
活性成分としてマグネシウムを含むアノードは、本発明による電気化学デバイスに好適である、当業者に知られているあらゆる形態のものであり得る。
【0072】
特に好ましい実施形態において、本発明は、活性成分として硫黄を含むカソード、活性成分としてマグネシウムを含むアノード、及び溶媒と、立体障害性第二級アミンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl
錯体を含む電解質系を備えた電気化学デバイスを提供する。立体障害性第二級アミンは、5〜7個の環原子を含む置換された環状第二級アミンであり得、そしてそれは、第二級アミンの窒素に直接隣接する環の位置でテトラ置換を受ける。立体障害性環状第二級アミンは、テトラヒドロピロール、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、及びピペラジンからなる群より選択される少なくとも1つである。好ましくは、立体障害性環状第二級アミンは、1〜6個の炭素原子のアルキル基を持つ2,2,6,6−テトラ−アルキルピペリジンであり、そして最も好ましい2,2,6,6−テトラ−アルキルピペリジンは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0073】
最も特に好ましい実施形態において、本発明は、活性成分として硫黄を含むカソード、活性成分としてマグネシウムを含むアノード、及び溶媒と、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl
錯体を含む電解質系を備えた電気化学デバイスを提供する。溶媒は、安全性と取扱いの容易さを考慮して、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びビス2−メトキシエチルエーテルのうちの1若しくは複数であり得る。テトラヒドロフランが最も好ましい。塩化物が好ましいハロゲン化物であり得る。
【0074】
本発明による電気化学デバイスは、従来から知られている方法によって組立てられ得る。一般に、その方法には、
マグネシウムを含むアノードと、マグネシウム基準で少なくとも3.2Vの電圧に対して安定なカソードを、外部の電気伝導性構造物を介して接続すること、そして
アノードとカソードを、溶媒と立体障害性第二級アミンのハロゲン化マグネシウム塩のLiCl
錯体を含む電解質と接触させること、が含まれ得る。
【0075】
本願発明を一般的に記載してきたが、例示だけの目的で本明細書中に提供し、別段の記載がない限り、制限することを意図しない特定の具体的な実施例を参照することによって、更なる理解を得ることができる。当業者は、バッテリーとして本発明のデバイスの有用性、並びに本明細書中に記載した電解質系の一般的な有用性を認識する。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
グローブボックス内で、THF中のヘキサメチルジサラジド(disalazide)マグネシウムクロライドの1.27M溶液1.574mlを、スクリューキャップ付きバイアル内の1.426mlの乾燥THFに加えた。得られた混合物を、素早く撹拌した。次いで、その溶液を、数分間静置し、そして静置後に、THF中の0.5M AlCl
3(0.5eq)2mlを加えた。この混合物を48時間撹拌した。
【0077】
[実施例2]
グローブボックス内で、THF中のビスヘキサメチルジサラジドマグネシウムの1.27M溶液3.17mlを、スクリューキャップ付きバイアル内の1.426mlの乾燥THFに加えた。得られた混合物を、素早く撹拌した。次いで、その溶液を、数分間静置し、そして静置後に、THF中の0.5M AlCl
3(0.5eq)2mlを加えた。この混合物を48時間撹拌した。
【0078】
[実施例3]
以下のTHF溶液を調製した:
0.40MのPhMgCl/0.2MのAlCl
3
0.40Mの((CH
3)
3Si)
2NMgCl
0.40Mの((CH
3)
3Si)
2NMgCl/0.2MのAlCl
3
【0079】
それぞれの溶液のサイクリックボルタモグラムを、作業電極としてPtディスク;基準電極としてMg線、及び対電極としてMgリボンを利用して、25mV/秒の走査速度にて取得した。
【0080】
3つのサイクリックボルタモグラムを、
図2に示す。請求項に記載の電解質の組み合わせは、従来のグリニャール電解質に対して性能において匹敵している。
【0081】
[実施例4]
TMPMgCl−LiCl2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルマグネシウムクロライド−塩化リチウム
錯体溶液の1M溶液を、Sigma−Aldrichから購入し、そしてそれを、電気化学測定に直接使用した。サイクリックボルタモグラムを
図3に示す。