(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905899
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】ガラスに孔の高密度アレイを形成する方法
(51)【国際特許分類】
C03B 33/02 20060101AFI20160407BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20160407BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20160407BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20160407BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
C03B33/02
B23K26/382
B23K26/00 G
B23K26/00 N
B23K26/064 A
H01S3/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-542117(P2013-542117)
(86)(22)【出願日】2011年11月30日
(65)【公表番号】特表2014-501686(P2014-501686A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】US2011062520
(87)【国際公開番号】WO2012075072
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】61/418,152
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ボーク,ヘザー デブラ
(72)【発明者】
【氏名】バーケット,ロバート シー
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴェイ,ダニエル ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ストレリツォフ,アレクサンダー ミハイロヴィチ
【審査官】
相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−290630(JP,A)
【文献】
特開平10−263873(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/033033(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/087483(WO,A1)
【文献】
特開2002−154846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00〜33/14
C03C 23/00
B23K 26/00〜26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスに孔の高密度アレイを作製する方法において、前記方法が、
前面を有するガラス品を提供する工程、及び
前記ガラス品の前記前面をUVレーザビームで照射する工程、
を含み、
前記ビームがレンズによって前記ガラス品の前記前面の±100μm内に集束され、
前記ガラス品の前記前面から前記ガラス品に延び込む開孔を形成するため、前記レンズが0.1〜0.4の範囲の開口数を有し、
前記孔が5〜15μmの範囲の直径及び少なくとも20:1のアスペクト比を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記照射する工程が近UVレーザビームを使用する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照射する工程に用いられる前記近UVレーザが335μmの波長で動作させたNd:KGW(ネオジムドープカリウム−ガドリニウムタングステン)レーザであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記照射する工程に用いられる前記レンズの前記開口数が0.1〜0.15の範囲内にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記レンズの前記開口数が0.12〜0.13の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記照射する工程の間、前記レーザを10〜20kHzの範囲の繰返し数で動作させることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記照射する工程が前記ガラス品の前記表面をUVレーザビームにより、孔当たり60〜120ミリ秒の範囲の持続時間をかけて、照射する工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記照射する工程が前記ガラス品の前記表面をUVレーザビームにより、形成される孔を前記ガラス品のちょうど背面まで延びさせるであろう持続時間であるように実験または計算によって決定された持続時間をかけて、照射する工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記方法が前記ガラス品をHF+HNO3溶液内でエッチングする工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記照射する工程の後で前記エッチングする工程の前に前記ガラス品の前記前面を研磨する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は2010年11月30日に出願された米国特許出願第61/418152号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示はガラスに孔の高密度アレイ、特にスルーホールの高密度アレイを作製する方法に関し、特に高アスペクト比の孔の高密度アレイを作製する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスにそのような高密度の孔アレイを作製するための既に実証されたプロセスが特許文献1に開示されている。開示される方法は、フェムト秒レーザによるガラスの露光及びこれに続く酸エッチングを含む。この方法は、レーザ損傷を受けたガラスが残りのガラスよりかなり高速でエッチングされるという、選択性エッチングに依存している。技術的には確かであるが、この手法は、高価で、頻繁な保守を必要とする、フェムト秒レーザ技術を利用し、レーザ露光プロセスは比較的時間がかかる。
【0004】
特許文献2によれば、表面の欠陥及びチップを除去するため、レーザアブレーション及びこれに続く酸エッチングによって、直径が120〜130μmの先細り(円錐形)孔を作製することができる。開示されるプロセスには、レーザ照射前にイオン交換工程が必要である。レーザのスポット径及びフルーエンス以外の照射条件は開示されていない。
【0005】
特許文献3は、様々な組成のガラスにおける、レーザ照射及び酸エッチングによる孔形成を説明している。波長が355nm及び266nmのレーザが用いられている。推奨されるビーム開口数はNA<0.07であり、焦点はガラス内または背面の先にあるとして開示されている。孔のプロファイル及び配置精度は特には検討されていない。
【0006】
必要とされていることは、深さを貫通する比較的小さな孔を比較的密な最小ピッチで、また良好な位置決め精度及び適正な小さい直径変動で、形成するための比較的コストが低く信頼性が高いプロセスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6754429号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0150839号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0013724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
必要とされていることは、深さを貫通する比較的小さな孔を比較的密な最小ピッチで、また良好な位置決め精度及び適正な小さい直径変動で、形成するための比較的コストが低く信頼性が高いプロセスである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様にしたがえば、ガラスに高密度孔アレイを作製する方法は、前面を有するガラス品を提供する工程、次いでガラス品の前面を、ガラス品の前面の±100μm以内、最も望ましくは前表面の±50μm以内の焦点に集束されたUVレーザビームで照射する工程を含む。レーザを集束するレンズは、ガラス品100の前面102からガラス品100に延び込む開孔を形成し、孔が5〜15μmの範囲の直径及び少なくとも20:1のアスペクト比を有するように、0.3mmと0.63mmの間のガラス厚に対し、望ましくは0.1〜0.4の範囲、さらに望ましくは0.1〜0.15の範囲、さらに一層望ましくは0.12〜0.13の範囲の、開口数を有する。厚さが0.1〜0.3mmの範囲の、より薄いガラスに対しては、開口数は望ましくは0.25〜0.4、さらに望ましくは0.25〜0.3であり、ビームはガラスの前面の±30μm内に集束されることが好ましい。レーザは約15kHz以下の繰返し数で、また一般にガラス品のちょうど裏面まで延びる開孔を形成するに十分な照射持続時間で、動作させることが望ましい。このようにして作製されたアレイ孔はエッチングによって拡大される。望ましければ、前面はエッチングに先立って研磨することができる。
【0010】
本開示の方法の様々な態様は以下の本文において、直下に簡潔に説明される、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本開示の現在好ましい方法の基本工程を表している流れ図である。
【
図2】
図2は本明細書に開示される方法に有用なレーザ照射装置の簡略な斜視図である。
【
図3】
図3は本明細書に開示される方法に有用なエッチング装置の簡略な断面図である。
【
図4】
図4は本開示の方法にしたがってガラス品に作製された孔の撮影像である。
【
図5】
図5は本開示の方法にしたがって作製された孔の部分断面を示すように破断されたガラス品の撮影像である。
【
図6】
図6は本開示の方法にしたがってガラス品に作製された、エッチング工程後の、撮影像である。
【
図7】
図7は、ガラス品の前面から見た、本開示の方法にしたがってガラス品に作製された孔の平面図である。
【
図8】
図8は、ガラス品の裏面から見た、本開示の方法にしたがってガラス品に作製された孔の平面図である。
【
図9】
図9は対照方法にしたがってガラス品に作製された孔の撮影像である。
【
図10】
図10は対照方法にしたがってガラス品に作製された孔の撮影像である。
【
図11】
図11は対照方法にしたがってガラス品に作製された、エッチング工程後の、孔の撮影像である。
【
図12】
図12は、別々のタイプの孔120を示している、ガラス板100の簡略な断面図である。
【
図13】
図13は、孔120の別々のタイプの孔形状を示している、ガラス板100の簡略な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照数字で示される、図面とともに読まれたときに最善に理解され得る。
【0013】
本開示の一態様にしたがえば、厚さが0.8mm以下であることが望ましく、厚さが0.1〜0.63mmの範囲にあることが好ましい、薄いガラス品に、直径が200μm以下の孔が300μmをこえない最小ピッチで、直径変動が10μm以下、望ましくは5μm以下に制限され、配置(孔中心)位置変動が8μm以下、望ましくは4μm以下に制限されて、形成される。孔の最も細い直径すなわち「ウエスト」径は表面における開口の直径の65%より小さくはなく、望ましくは80%より小さくはない。
【0014】
上記の結果及びその他の有益な結果は、
図1〜3を全般に参照して説明される、本開示の方法によって得ることができる。ガラスに孔の高密度アレイを作製する方法の一実施形態にしたがえば、方法は、前面102を有するガラス品100を提供する工程、次いで
図1に表される照射工程20においてガラス品100の前面をUVレーザビーム24で照射する工程を含む。ビーム24は、ガラス品100の前面102の±100μm以内、最も望ましくは前面102の±50μm以内の焦点に、レンズによって集束されることが最も望ましい。レンズ26は、ガラス品100の前面102からガラス品100に延び込む開孔を形成し、孔が5〜15μmの範囲の直径及び少なくとも20:1のアスペクト比を有するように、0.3mmと0.63mmの間のガラス厚に対し、望ましくは0.1〜0.4の範囲、さらに望ましくは0.1〜0.15の範囲、さらに一層望ましくは0.12〜0.13の範囲の、開口数を有する。厚さが0.1〜0.3mmの範囲の、より薄いガラスに対しては、開口数は望ましくは0.25〜0。4、さらに望ましくは0.25〜0.3であり、ビームはガラスの前面の±30μm内に集束されることが好ましい。レーザは約15kHz以下の繰返し数で、また一般にガラス品のちょうど裏面まで延びる開孔を形成するに十分な照射持続時間で、動作させることが望ましい。
【0015】
図1の照射工程20は、上述したように、200〜400nmの範囲、さらに望ましくは、300〜400nmの範囲の波長を有するレーザビーム24,最も好ましくは355nmまたはその20nm,好ましくは5nmの範囲内の波長で動作させた、Nd:KGW(ネオジムドープカリウム−ガドリニウムタングステン)レーザ22またはその他のNdドープレーザを用いる、UVレーザビーム24を用いて実施される。レーザ22は5〜50kHzの範囲の繰返し数で動作させることが好ましく、繰返し数は10〜20kHzの範囲であることがさらに好ましく、12〜18kHzの範囲であることが最も好ましい。
【0016】
0.63mm厚のEaglrXG(登録商標)ガラスにスルーホールを作製するためには、
図1の照射工程20は、ガラス品100の前面102を、UVレーザビーム24を用い、孔当たり8〜150ミリ秒の範囲の持続時間で照射することが望ましく、持続時間は孔当たり60〜120ミリ秒の範囲にあることがさらに望ましく、孔当たり80〜100ミリ秒の範囲にあることが最も望ましい。0.1mm厚のガラスに対しては約10ミリ秒が望ましく、0.15mm厚のガラスに対しては25ミリ秒が望ましく、0.3mm厚のガラスに対しては30ミリ秒が望ましい。ガラスが厚くなるほど、一層長い露光(一層多くのパルス数)が必要になる。別の実施形態として、持続時間は、その持続時間が得られる孔をガラス品100の背面104までちょうど延びさせるであろうように、実験または計算によるか、またはこれらの組合せによって、選ばれ得ることが望ましい。これにより、UVレーザ照射の下で異なる挙動を有する様々なガラスへの本方法の適用が可能になるであろう。
【0017】
照射後、得られた高アスペクト比開孔は、
図1の工程40のエッチング工程において、HF+HNO
3溶液内でエッチングされ得ることが望ましい。HF+HNO
3は、何か他のエッチング剤溶液に比較して、200μmもの小さい最小ピッチで隔てられた数1000の孔をもつ基板にわたり均等なエッチングを可能にすることが本研究で示された。望ましい濃度は20%HF+10%HNO
3溶液である。
【0018】
必要に応じる工程として、照射工程20の後でエッチング工程40の前に、ガラス品100の前面102に研磨工程60を施すことができる。
【0019】
図2及び3はそれぞれ、本開示の方法に有用な、レーザ露光装置及びエッチングステーションの略図である。
【0020】
ガラス品100は、精度及び再現性が1μm以下の、
図2に示されるような電動XYZステージ上に載せることができる。レーザビーム24がレンズ26によりガラス品100の前面102上に集束される。レンズの開口数は理想的にはほぼNA=0.1より大きくすべきである。発明者等のビーム24は開口数がNA=0.125のレンズを用いて境界が明確に定められた損傷領域を形成した。
【0021】
現在好ましいレーザ条件は、
繰返し数:15kHz,
平均パワー:1.5W,及び
持続時間:90mm秒,
である。さらに高い繰返し数では、繰返し数が100kHzの対照プロセスの画像である
図9に示されるように、損傷領域は明確に定められた境界をもたない。そのような損傷領域では、準円筒形よりもむしろ円錐形の孔プロファイルが生じる。約1.5Wより低いパワーでは十分な損傷が生じず、1.5Wをこえるパワーはかなりの前面損傷を生じさせることができ、そのような前面損傷は漏斗形の孔プロファイルも生じさせる。90ミリ秒トレイン/バーストの15kHzパルスが露光に選ばれ、バースト持続時間は0.63mm厚EagleXGガラスにおけるガラスの一方の側から他方の側に延びる損傷領域に対して最適化される。バースト持続時間が長くなるほど強い背面損傷が生じ、バースト持続時間が短くなるほど損傷領域長が短くなる。
【0022】
そのようなレーザ条件では、
図4の画像に示されるように、直径が7〜10μmの開放または中空のマイクロチャネルしか得られない。
図9に示される対照プロセスで得られるようなマイクロクラックを有するレーザ損傷領域と比較すると、
図4のマイクロチャネルではエッチングされた孔プロファイルにわたってより優れた制御が得られている。
【0023】
ビーム24の焦点の位置は損傷領域形成に重要な役割を果たす。
図4に示されるような損傷領域は、ビームがガラス前面から±100μm内に集束されたときに達成され得る。さらに高い一貫性のためには、この範囲は±50μmまで減じられるべきである。ビームが背面の近くに、または背面より先に、集束されると、損傷領域は、
図10に示されるように異なって見え、
図11の撮影像に示されるように、ウエストを生じさせずに孔をエッチングすることはほとんど不可能になる。
【0024】
好ましいエッチング条件(20体積%HF+10体積%HNO
3水溶液、10〜12分、ほぼ35℃での超音波浴内エッチング)の下で、得られる孔120は、
図6の撮影像に見られるように準円筒形であり、上述した要件を基本的に満たす。例えばCapstone FS−10のような、界面活性剤を酸に加えると、ガラスからのエッチング生成物を流し去るに役立ち得る。
図7及び8に示される上面図及び底面図は、また
図6の撮影像の側面図も、必要に応じる前面研磨工程60が用いられたときに得られる孔の画像である。これらの画像に示される試料において、前面は、エッチング工程に先立って前面損傷を除去するためにほぼ80μm研磨されている。そのような研磨がなければ、孔の前面開孔はさらに不規則な形状を有し得る。
【0025】
図3はエッチング工程40に有用な酸エッチング装置42の略図である。
図3において、装置42は、水のような、音響エネルギー伝達液体46をその中に入れている外槽44を備える。酸槽48が液体46によって支持され、酸または混酸50がその中に入れられる。照射され、アニールされたガラス板100が酸または混酸50内に浸漬される。エッチングプロセス中、外槽44に音響エネルギーがエネルギー変換器52によって印加され、介在する槽及び液体を通して、ガラス板100に伝達される。
【0026】
エッチングにより、エッチ孔100の直径及びその形状が決定される。例えば、エッチングが低酸濃度(1体積%HF+1体積%HCl水溶液)を用いて1時間なされた場合、孔120はかなり小さくなる。底面直径は19μmであり、上面直径は65μmである。そのような条件の下でガラス厚は10μm減じて0.63μmから0.62μmになる。より高い酸濃度を用いると、
図6〜8に示される、直径が約100μmの孔が形成される。得られる孔の寸法に影響を与えるエッチングパラメータには、酸濃度、エッチング剤処方(すなわち酸の選択)、エッチング時間及び溶液の温度がある。酸または混酸には、HFのみ(1〜30体積%)、またはHF(1〜30体積%)と、HCl(1〜50体積%)、H
2SO
4(1〜20体積%)、HNO
3(1〜40体積%)及びH
3PO
4(1〜40体積%)との組合せを含めることができる。酸の温度は25〜60℃の範囲にあることが好ましい。超音波印加またはその他のタイプの(例えばスプレイエッチングのような)撹拌が、微細孔内の溶液対流のため及びウエスト領域におけるエッチング高速化のために、望ましい。
【0027】
提案される手法により、斜行孔の形成も可能になる。レーザビームがガラス試料上に角度をなして向けられれば、損傷領域及びエッチ孔の方位も表面に角度をなして定められるであろう。レーザ装置の構成は、
図12のガラス板100の簡略な断面図に示される孔120のような、ガラス表面に垂直な孔と斜行する孔のいずれも有する、アレイの作成を可能にするであろうような態様に設計することができる。
【0028】
望ましければ、
図13のガラス板100上の孔120に9簡略に示されるような様々な形状に孔形状を変えるための手段として、ビーム整形を用いることもできる。楕円形ビームで照射することによって楕円形の孔が形成されており、アパーチャ及び結像、ビームの重畳及び/またはその他の手法及び手法の組合せによるビーム整形によってその他の形状が可能である。
【0029】
望ましければ、上述したスルーホールに加えて、露光時間の短縮により、
図12にも示されるような、同じ基板上のいずれのタイプの孔も含む、盲孔の作製が可能になる。盲孔は、例えばレーザバースト持続時間を90ミリ秒からほぼ10〜20ミリ秒に短縮すると生じるであろう。生じる損傷領域は、上述した7〜10μmのマイクロチャネルに関する損傷領域と同様であり、ガラスの前面に始まってガラス内部の、短縮された持続時間と全持続時間の間の比の関数である、いくらかの長さまで延びる。そのような損傷跡のエッチングにより盲孔が形成されるであろう。同じ孔アレイ内に異なる深さのスルーホールと盲孔の組合せを形成することができる。
【0030】
ガラス表面に耐酸性フィルム/コーティングを施すことにより、孔形状をさらに一層改善することができる。このコーティングはいくつかの機能、(a)レーザアブレーション屑からの表面保護、(b)露光領域周囲のガラス表面への機械的損傷の軽減、(c)エッチング中のガラス薄化の防止、したがって孔アスペクト比の向上、を果たすことができる。そのようなフィルム/コーティングは除去可能とすることができ、あるいは以降の処理の妨げにならなければガラス上に残しておくことができる。
【0031】
「好ましくは」、「普通に」及び「一般に」のような語句は、本明細書に用いられる場合、特許請求される本発明の範囲を限定するため、あるいは特許請求される本発明の構造または機能にある特徴が必須であるか、肝要であるかまたは重要であることさえも意味するためには用いられていないことに注意されたい。むしろ、これらの語句は、本開示のある実施形態の特定の態様を識別すること、あるいは、本開示の特定の実施形態に用いられても用いられなくとも差し支えない、代わりのまたは追加の特徴を強調することが目的とされているに過ぎない。
【0032】
本開示の主題を詳細に、またその特定の実施形態を参照することで、説明したが、添付される特許請求の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく様々な改変及び変形が可能であることが明らかであろう。さらに詳しくは、本開示のいくつかの態様は好ましいかまたは特に有利であるとして本明細書に識別されるが、本開示がそのような態様に限定される必要はないと考えられる。
【0033】
添付される特許請求項の1つ以上において語句「〜を特徴とする(wherein)」が転換句として用いられていることに注意されたい。本発明を定める目的のため、この語句は構造の一連の特徴の叙述を導入するために用いられる制約の無い転換句として特許請求項に導入されており、より普通に用いられる制約の無い前置句「〜を含む」と同様の態様で解されるべきであることに注意されたい。
【符号の説明】
【0034】
20 照射工程
22 レーザ
24 レーザビーム
26 レンズ
40 エッチング工程
42 酸エッチング装置
44 エッチング装置外槽
46 音響エネルギー伝達液体
48 酸槽
50 酸または混酸
52 エネルギー変換器
60 研磨工程
100 ガラス品
102 ガラス品前面
104 ガラス品背面
120 孔