特許第5905910号(P5905910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905910移動可能なナイフを利用した減速場走査電子顕微鏡内におけるミクロトーム及びこのミクロトームを含む減速場走査電子顕微鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905910
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】移動可能なナイフを利用した減速場走査電子顕微鏡内におけるミクロトーム及びこのミクロトームを含む減速場走査電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20160407BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20160407BHJP
   G01N 1/06 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   H01J37/20 Z
   H01J37/28 B
   G01N1/06 K
   G01N1/06 D
【請求項の数】16
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-556847(P2013-556847)
(86)(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公表番号】特表2014-511550(P2014-511550A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】US2012027225
(87)【国際公開番号】WO2012118938
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/448,338
(32)【優先日】2011年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/408,054
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511314887
【氏名又は名称】ガタン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GATAN,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ギャロウェイ、サイモン アンドリュー
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−082945(JP,A)
【文献】 特開平02−123652(JP,A)
【文献】 特開2006−252994(JP,A)
【文献】 特開2004−185823(JP,A)
【文献】 米国特許第04933552(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00−37/36
G01N 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電子顕微鏡のチャンバ内における原位置に配置されるミクロトームであって、前記走査電子顕微鏡は、
試料の位置に減速場を生成するために高電圧下において前記試料を保持する試料ホルダと、
前記試料ホルダに隣接して配設された後方散乱電子検出器とを備え、
前記ミクロトームは、前記試料ホルダ上の前記試料に係合するように移動されて、前記試料の一部分を薄く切り取ることにより前記試料の新しい面を露出させるナイフを備え、前記ナイフは、前記試料に係合して前記試料の新しい面を露出させた後に、前記減速場と干渉しない後退位置に退避するように設置されるミクロトーム。
【請求項2】
前記ナイフは、高インピーダンス材料を有する請求項1に記載のミクロトーム。
【請求項3】
前記高インピーダンス材料は、ダイアモンドである請求項2に記載のミクロトーム。
【請求項4】
前記ナイフは、回動アーム上のナイフホルダに取り付けられる請求項1に記載のミクロトーム。
【請求項5】
前記ナイフは、線形移動アーム上のナイフホルダに取り付けられる請求項1に記載のミクロトーム。
【請求項6】
前記試料ホルダは、前記ナイフとの相対関係において連続的に所定の距離だけ移動して、前記ナイフを前記試料の一部分に係合させ、前記試料が連続的に薄く切られ、かつ、それに伴って撮像が実施されるように構成される請求項1に記載のミクロトーム。
【請求項7】
前記試料ホルダは、接地電位に保持された前記ミクロトームの残りの部分から絶縁されている請求項1に記載のミクロトーム。
【請求項8】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された試料ホルダであって、試料の位置に減速場を生成するために高電圧下において前記試料を保持する前記試料ホルダと、
前記試料ホルダに隣接して配設された電子検出器と、
ミクロトームとを備えた走査電子顕微鏡であって、
前記ミクロトームは、前記試料ホルダ上の前記試料に係合するように移動されて、前記試料の一部分を薄く切り取ることにより前記試料の新しい面を露出させるナイフを備え、前記ナイフは、前記試料に係合して前記試料の新しい面を露出させた後に、前記減速場と干渉しない新しい位置に移動するように設置される走査電子顕微鏡。
【請求項9】
前記電子検出器は、後方散乱検出器を有する請求項8に記載の走査電子顕微鏡。
【請求項10】
前記減速場は、前記試料又は試料ホルダに対して印加される請求項8に記載の走査電子顕微鏡。
【請求項11】
前記ナイフは、高インピーダンス材料を有する請求項8に記載の走査電子顕微鏡。
【請求項12】
前記高インピーダンス材料は、ダイアモンドである請求項11に記載の走査電子顕微鏡。
【請求項13】
前記ナイフは、回動アーム上のナイフホルダに取り付けられ、前記ナイフホルダは、前記試料に印加された高電圧と干渉しないように構成されている請求項8に記載の走査電子顕微鏡。
【請求項14】
前記ナイフは、線形移動アーム上のナイフホルダに取り付けられ、前記ナイフホルダは、前記試料に印加された高電圧と干渉しないように構成されている請求項8に記載の走査電子顕微鏡。
【請求項15】
前記試料ホルダは、前記ナイフとの相対関係において連続的に所定の距離だけ移動して、前記ナイフを前記試料の一部分に係合させ、前記試料が連続的に薄く切られ、かつ、それに伴って撮像が実施されるように構成される請求項8に記載の走査電子顕微鏡。
【請求項16】
前記試料ホルダは、接地電位に保持された前記ミクロトームの残りの部分から絶縁されている請求項8に記載の走査電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電子顕微鏡法による画像検出に関し、かつ更に詳しくは、改良された撮像のための減速場を利用した走査電子顕微鏡内における連続的なブロック面撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の三次元構造の測定は、例えば、生物学の研究や材料の研究などの様々な分野において相当な重要性を有している。走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)のチャンバ内部におけるブロック面の撮像は、このような構造の構成を測定する1つの方法である。既知のように、試料に対して負の減速電圧(Retardation Voltage)を印加することによって電子の入射エネルギを低減することにより、しばしば、比較的高い分解能の二次元画像をSEMにおいて取得することができる。そのため、試料に対して減速場を印加することは、電子顕微鏡法において、益々利用される傾向にあり、かつ一般には、高級なSEMモデルにおいて、日本電子(JEOL)、FEI、及び日立によって用いられている。減速電圧が、撮像対象の試料に対して印加されるが、この電圧は、専用のユーザインターフェイスを通じてユーザによって設定可能である。減速電圧は、通常、コラムの高圧(high tension)(コラムの磁極片を離脱する電子のエネルギ供給された電圧)よりも低い。試料に対する電子の入射エネルギは、これら2つの電圧の間の差に近い。後方散乱した電子を検出する際には、関連する電界が、二重の利益を有しており、その理由は、後方散乱した電子の再エネルギ供給により、検出器による比較的強力な応答が促されるからである。一般的な構成では、SEMチャンバから電気的に隔離された試料ホルダに対して減速電圧が印加され、SEMチャンバは、接地電位に留まり続ける。減速場により、電子の入射エネルギが低減される。但し、減速場が顕微鏡の磁極片に対して完全な対称性を実現することはできないため、減速場は、通常、ビームの位置、合焦されたプローブの焦点及び非点収差においてなんらかのずれを生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
減速場を利用したSEMのチャンバ内においてミクロトームを利用してブロック面撮像用の試料の複数の連続的な薄片を生成する場合には、ミクロトームのナイフブレード又はナイフブレード保持構造が減速場と干渉するという問題が発生する。この結果、連続的な薄片画像の間における画像ずれ効果が発生し、これにより、画像の三次元「積層体」のアライメント及び品質が劣化する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態によると、走査電子顕微鏡のチャンバ内における原位置に配置される(in situ residence)ミクロトームが提供される。ミクロトームは、試料の位置に減速場を生成するために高電圧下において試料を保持する試料ホルダと、試料ホルダに隣接して配設された後方散乱電子検出器とを備える。ミクロトームは、試料ホルダ上の試料に係合するように移動されて、試料の一部分を薄く切り取ることにより試料の新しい面を露出させるナイフを備え、ナイフは、試料に係合して試料の新しい面を露出させた後に、減速場と干渉しない後退位置に退避するように設置されている。
【0005】
更なる実施形態において、ナイフは、高インピーダンス材料を有し、この高インピーダンス材料は、一実施形態において、ダイアモンドである。
更なる実施形態において、ナイフは、回動アーム上のナイフホルダに取り付けられる。更なる実施形態において、ナイフは、線形移動アーム上のナイフホルダに取り付けられる
更なる実施形態において、試料ホルダは、ナイフとの相対関係において連続的に所定の距離だけ移動し、ナイフが試料の一部分に係合して試料を連続的に薄く切ること、および、それに伴って撮像することを実現することができるように構成されている。
【0006】
更なる実施形態において、本発明は、チャンバと、前記チャンバ内に配置された試料ホルダであって、試料の位置に減速場を生成するために高電圧下において試料を保持する前記試料ホルダと、前記試料ホルダに隣接して配設された電子検出器と、ミクロトームとを備えた走査電子顕微鏡を提供する。ミクロトームは、試料ホルダ上の試料に係合するように移動されて、試料の一部分を薄く切り取ることにより試料の新しい面を露出させるナイフを備え、ナイフは、試料に係合して試料の新しい面を露出させた後に、減速場と干渉しない新しい位置に移動するように設置されている。一実施形態において、電子検出器は、後方散乱検出器を有する。更なる実施形態において、減速場は、試料又は試料ホルダに対して印加されている。更なる実施形態において、ナイフは、高インピーダンス材料を有する。更なる実施形態において、高インピーダンス材料は、ダイアモンドである。更なる実施形態において、ナイフは、回動アーム上のナイフホルダに取り付けられ、かつ、ナイフホルダは、試料に印加される高電圧と干渉しないように構成されている。更なる実施形態において、ナイフは、線形移動アーム上のナイフホルダに取り付けられ、かつ、ナイフホルダは、試料に印加される高電圧と干渉しないように構成されている。更なる実施形態において、試料ホルダは、ナイフとの相対関係において連続的に所定の距離だけ移動して、ナイフを試料の一部分に係合させ、試料を連続的に薄く切ること、かつ、それに伴って撮像することを実現できるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】減速場を利用したSEMのチャンバ内において示されている本発明に従って構築されたミクロトームの一部分の図であり、連続的なブロック面の走査動作において試料の薄片を取得する際のミクロトームのナイフを示している。
図2図1に類似した図であるが、試料の一部分が薄く切り取られ(かつ、除去され)、これにより、走査のために試料の新しいブロック面が露出した後のミクロトームを示している。
図3図1及び図2のミクロトームの更に大きな部分の図であり、ナイフを移動させる作動機構を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、減速電圧場と干渉することなく、比較的高い分解能の良好にアライメントされた三次元撮像を実現するために連続的ブロック面撮像(以下、「SBFSEM法」と呼称する)を実施する際に、試料に対する負の減速電圧の印加を可能にするためのナイフブレードと減速電圧場との間における干渉の問題に対処するものである。SBFSEM法による三次元撮像のために減速電圧を利用する別の利点には、比較的小さな入射エネルギが含まれており、これにより、比較的浅い深さ、即ち、第3次元方向からの撮像信号のサンプリングが円滑に実行される。又、減速電圧により、コラムは、分解能に悪影響を及ぼし得る環境的な場の影響を受けにくいモードで作動することが可能となり、かつ、これにより、後方散乱電子検出器内の関連する改善点に起因して、所定の電子ビーム走査速度における比較的高い品質の画像収集が円滑に実行される。
【0009】
このために、本発明の一実施形態によると、SEMチャンバ内において原位置に配置された改良型ミクロトームが提供される。ミクロトームの一部分を形成する鋭利なナイフにより、試料の最上部から所定の層を薄く削り、かつ、電子ビーム又は類似の粒子ビームを走査させると共に試料とビームとの相互作用を計測することにより、新たに露出したブロック面を撮像する。具体的には、本発明は、試料とSEMの磁極片との間に鋭利なナイフを移動させることによって作動する。この構成によれば、試料は、印加された減速電圧を有するとともに電気的に隔離された試料ホルダに取り付けられる。試料は、巨視的な距離だけ移動することがなく、即ち、ナイフの連続的な切断の間に、(XY平面において)再度位置決めを行なう必要がない。その代わりに、撮像の際に減速場と干渉しないように、ナイフを保持する機構が、試料から巨視的な距離だけ離れるように移動する。更には、ナイフ構造を保持する機構は、試料に印加された高圧とは干渉することがなく、かつ、ナイフ自体のみが試料に接触して所望の最上部の表面層を除去する。例えば、高圧を有する試料と、比較的低い電位又は接地電位を有する他の任意の導電性物体との間に一時的な導電性経路が存在する場合には、減速場が変更され、かつ、これにより、分解能及び電子ビームの所望の位置が、制御されていない状態で変化し、この結果、類似した品質及び空間的位置を有するブロック面を通じた連続的画像の自動的な取得に対して影響が及ぶ。この影響を回避するために、ナイフは、高度な絶縁性を有する材料から組み立てられるか製造されており、かつ、いかなる導電性被覆も有していない。更には、ナイフを保持するツールは、ナイフが試料エリアから退避する際の回動運動において、形状、表面仕上げ、導電性、及び近隣の表面に対する前記表面の近接度合いにより、高圧放電事象を防止するように、設計されている。
【0010】
本発明は、SBFSEM法を実現する従来技術による装置に比べて、以下の利点を提供する。具体的には、本発明によれば、切断されたブロック面の平面において試料を撮像する際に、二次元における比較的高い分解能の結果が可能になるのみならず、三次元における比較的高い分解能を提供することも可能である。更には、本発明によれば、所定の二次元又は三次元の分解能における結果の高速化が促進される。これらの利点に加えて、本発明によれば、試料に対するエネルギ照射量(energy dose)も低減される。
【0011】
樹脂が埋め込まれた試料についてSBFSEM法を使用する際には、新しいブロック面が滑らかな状態に留まるように、かつ、画像が樹脂過剰照射アーチファクト(resin overdose artifact)を有することがないように、エネルギ照射量を低い状態に維持しなければならない。入射エネルギを低減させるのではなく、電子束を低減することによって照射量を低下させれば、必要な細部が信号から除去されることになり、従って、逆効果となり得る。本発明によれば、画像の細部を失うことなく、試料へのエネルギ照射量を低減することができる。更には、本発明によれば、試料を自動的な方式により、原位置のミクロトームを使用して連続的に切断することができるため、焦点、非点収差、又は巨視的な再アライメントの反復的な補正の必要なく、この動作を実現することができる。又、本発明によれば、電子またはイオンの入射エネルギを低下させる際に、顕微鏡の絶対合焦能力に対する劣化を伴うことなく、SBFSEM法を実施できる。更には、本発明によれば、低減された入射エネルギを有するものではなく、磁極片を離脱する際のそのオリジナルのエネルギに近接した電子またはイオンをサンプリングする後方散乱電子検出器を使用することにより、SBFSEM法を実現することもできる。更には、本発明によれば、試料の明瞭な視認を可能にすることにより、他の信号をサンプリングすることもできる。最後に、本発明によれば、試料から巨視的な距離だけナイフを離間させることが可能であり、これにより、試料を巨視的な距離だけ持ち上げることによって、短い作業距離のために最適化された検出器において、比較的高い分解能の撮像の実現又は比較的高収率(high yield)である性能の実現が可能となる。
【0012】
SEMは、様々な業者から市販されているものなどの任意の従来の装置であってもよい。SEMは、チャンバを含み、この内部には、例えば、後方散乱電子検出器などのSEMの撮像検出器が、撮像対象の試料用のホルダと共に、配置される。試料ホルダは、プラットフォーム又は他の任意の基部の形態を有しており、かつ、ホルダを介して高圧の減速電圧を試料に連続的に印加することができるように、導電性を有する。試料ホルダは、それ自体のみが高電圧(高圧)となるように、SEM構造体の残りの部分(例えば、チャンバ及び磁極片)から電気的に隔離されている。本発明の一態様によれば、試料ホルダは、本発明のミクロトームの一部分を形成している。或いは、この代わりに、試料ホルダは、SEM自体の一部分を形成してもよい。いずれの場合にも、試料ホルダは、ミクロトームのナイフを試料に係合させて試料の一部分を薄く切り取り、かつ、これにより、撮像対象の試料の新しい面を露出させるように、ミクロトームのナイフとの相対関係において、例えば、50nmなどの微視的な距離だけ移動するように構成されている。
【0013】
図1及び図2には、本発明のミクロトームが示されており、このミクロトームは、ホルダ30に取り付けられた試料20に直接隣接して配置されたナイフ10(例えばブレード)を備え、ナイフ10は、(後述するように)試料20に係合するように移動されて、試料を薄く切り取ると共に試料の新しいブロック面を入射ビーム61に対して露出させるように構成されている。当業者には理解されるように、この位置において、ナイフ10及び関連するホルダ11は、後方散乱電子検出器40の下方であって、試料ホルダ上の電圧によって生成される減速場と干渉する位置に、配置されている。不都合な影響を回避するために、ナイフ10は、ナイフを試料に係合するように移動させる移動可能なアーム50(例えば、回動構造体)に取り付けられている。具体的には、移動可能なアーム50は、ナイフ10が試料20の所定の厚さの部分を薄く切り取って新しいブロック面を露出させた後に、ナイフが、図2に示されているような試料ホルダから巨視的な距離だけ離間した位置に配置されるように、構成されている。この位置において、ナイフが減速場60と干渉することはなく、その結果、露出した試料面の正確な撮像を実現することができる。更には、ナイフは、好ましくは、例えば、ダイアモンドなどの導電性を有していない材料又は高インピーダンスを有する材料から形成されており、かつ、ナイフによる切断動作によって試料が接地電位に放電することがないように、いかなる導電性を有する被覆も備えていない。更には、上述のように、ナイフホルダは、例えば、微視的な又は巨視的な回動運動における任意の時点においてアークによる放電機構として作用することがないように、設計及び構築されている。
【0014】
試料を連続的に薄く切ることは、ナイフとの相対関係における試料ホルダの反復的な移動、すなわちインデックス移動(Indexing)を実施するミクロトームにより、自動的に実現することができる。従って、ナイフによって切り取られた直後の露出したブロック面が撮像された後に、ナイフブレードは、図1に示されている位置に戻され、かつ、プラットフォーム又は試料ホルダは、除去対象の試料の薄片の厚さに等しい所定の距離だけ、上方に移動すなわちインデックス移動される。この後に、再度、ナイフを試料に係合させて新しいブロック面を露出させ、かつ、ナイフを図2に示されている位置に退避させることにより、新しいブロック面を撮像することができる。
【0015】
図3には、例示用の試料ホルダ・ミクロトーム組立体の更なる図が示されている。図3において、ナイフ支持アーム50は、試料20から退避した状態において示されている。オフセットカム71は、DCモータによって回転して側部アーム70に作用し、側部アーム70によってナイフアームをミクロトーム本体から離間させる。
【0016】
これに関連し、本明細書に記述されているこのような構成要件は、本発明の目的を実現するために利用可能な様々な構成要件を例示したものに過ぎない。例えば、例示用の好適な実施形態は、減速電圧を試料および試料ホルダの少なくとも一方に対して印加しているが、他の構成を使用してもよい。更には、ナイフを移動させる機構は、回動部材として示されているが、ナイフは、例えば、線形移動アーム又は他の機構などの任意の適切な手段によって線形の経路で移動させてもよい。
【0017】
当業者には理解されるように、本発明を使用するSBFSEM法は、絶縁性の試料、部分的に導電性の試料、又は完全に導電性の試料に適用できる。試料が完全な導電性を有していない場合には、試料が、顕微鏡の撮像軸に対して中心に配置されるとともに、対称であり、かつ、試料の側部が導電性被覆を有している場合には、すべての切取り動作の後において、比較的再現性に優れた減速場を実現できる。それぞれの切取り動作の間において一貫性のある減速場を維持するための更なる方法として、対称的な金属シュラウドを設けて試料の直近の側部を直接的に被覆してもよい。シュラウド及び試料は、均一の減速場を実現するために、同一又は異なる電位を有してもよい。更には、シュラウドのリム(例えば、先端が切り取られた又は薄く切り取られた円錐形状のリム)は、ナイフが妨げられることなく移動できるような高さに配置される。
図2
図3
図1