特許第5905917号(P5905917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905917
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】表面処理粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08K 9/04 20060101AFI20160407BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160407BHJP
   C01F 7/02 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   C08K9/04
   C08L63/00 C
   C01F7/02 E
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-57568(P2014-57568)
(22)【出願日】2014年3月20日
(62)【分割の表示】特願2009-279756(P2009-279756)の分割
【原出願日】2009年12月9日
(65)【公開番号】特開2014-122364(P2014-122364A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2014年4月18日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「超ハイブリッド材料技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】前田 重之
(72)【発明者】
【氏名】阿尻 雅文
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/078129(WO,A1)
【文献】 特開2009−154056(JP,A)
【文献】 特開平11−029717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C09C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界または亜臨界状態にある水を反応場として、原料である無機充填材と、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤とを反応させる工程と、
前記官能基を介して前記有機修飾剤を、前記原料である無機充填材に化学結合させた表面処理粒子を製造する工程と、を含み、
前記無機充填材と、前記有機修飾剤とを反応させる工程において、前記有機修飾剤と反応させる前記原料である無機充填材は、0.5〜1μmに粒度分布の極大点を有するものである表面処理粒子の製造方法。
【請求項2】
超臨界または亜臨界状態にある水を反応場として、原料である無機充填材と、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤とを反応させる工程と、
前記官能基を介して前記有機修飾剤を、前記原料である無機充填材に化学結合させた表面処理粒子を製造する工程と、を含み、
前記無機充填材と、前記有機修飾剤とを反応させる工程において、前記有機修飾剤と反応させる前記原料である無機充填材は、3〜8μmに粒度分布の極大点を有するものである表面処理粒子の製造方法。
【請求項3】
超臨界または亜臨界状態にある水を反応場として、原料である無機充填材と、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤とを反応させる工程と、
記官能基を介して前記有機修飾剤を、前記原料である無機充填材に化学結合させた表面処理粒子を製造する工程と、を含み、
前記無機充填材と、前記有機修飾剤とを反応させる工程において、前記有機修飾剤と反応させる前記原料である無機充填材は、36〜50μmに粒度分布の極大点を有するものである表面処理粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化、高速化、小型化に伴い、その発熱量が増大傾向にある。そのため各種基板、樹脂シート、スペーサー、半導体封止材などの放熱用部材に対しても高熱放散性の要求が高まっており、これらの放熱用部材を構成する無機充填材においても様々な検討が進められている。これまで高熱放散性を付与することを可能とする高熱伝導性の無機充填材としては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素及びアルミナが主として使用されている。窒化アルミニウム、窒化ケイ素は、アルミナよりも高い熱伝導率を有するが、エポキシ樹脂組成物の流動性が極端に低下する、成形時の金型磨耗が著しいなどの問題が懸念され、半導体封止用としては本格的に普及するまでには至っていない。これに対し、アルミナは熱伝導率こそ窒化アルミニウム、窒化ケイ素に比べて劣るものの、球状化して用いることにより流動性と金型磨耗性の観点からは比較的良好である。
【0003】
こうした中、流動性を向上させるためにアルミナの粒度分布や粒子形状に着目した方法が提案されており、0.4〜0.7μm、12〜18μm、30〜38μmに粒度分布の極大ピークをもたせる方法(たとえば、特許文献1参照。)、平均粒径1〜40μm、平均球形度0.85以上の球状アルミナであり、粒子径2μm以下の微粉の構成割合が10〜35%で、その微粉の平均球形度が0.90以上である球状アルミナで充填材を構成する方法(たとえば、特許文献2参照。)などが提案されている。これらを組み合わせることで充填材の高充填化を可能とし、充填材を高充填化することにより高熱伝導化を達成できる。更に充填材を高充填化することで低吸水化が実現でき、これにより実装後の半導体装置の耐熱性が向上するため、半導体装置を実装する際に従来よりも融点の高い無鉛半田を使用する、という環境対応を目的とした近年の動きに対応できつつある。
【0004】
更に、流動性をより高めるため、シランカップリング剤で無機充填材を表面修飾する方法(たとえば、特許文献3〜5参照)が知られている。また、無機充填材と樹脂の界面を強固に結合させることにより、樹脂組成物の吸湿性を大幅に低下させ、機械強度及び耐衝撃性に優れた樹脂組成物を得ることを目的として、無機充填材に外部から押圧力を与えて表面修飾をするというメカノケミカルの手法も知られている(たとえば、特許文献6参照)。この手法においても、室温、大気圧で無機物との親和性に優れているシランカップリング剤を修飾剤として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−278415号公報
【特許文献2】特開2001−226117号公報
【特許文献3】特開2000−273153号公報
【特許文献4】特開2002−322243号公報
【特許文献5】特開2003−138099号公報
【特許文献6】特開平4−198278号公報
【特許文献7】特開2006−282503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、より流動性の高い樹脂組成物を得るための無機充填材の開発が求められている。無機充填材を含む樹脂組成物の流動性が向上することで、成形加工がしやすくなるという利点がある。また、無機充填材を含む樹脂組成物の流動性が向上すれば、樹脂組成物中の無機充填材量を高めることが可能となり放熱性も向上できるからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、超臨界または亜臨界状態にある水を反応場として、原料である無機充填材と、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤とを反応させる工程と、
前記官能基を介して前記有機修飾剤を、前記原料である無機充填材に化学結合させた表面処理粒子を製造する工程と、を含み、
前記無機充填材と、前記有機修飾剤とを反応させる工程において、前記有機修飾剤と反応させる前記原料である無機充填材は、0.5〜1μmに粒度分布の極大点を有するものである表面処理粒子の製造方法が提供される。
【0008】
さらに、本発明によれば、超臨界または亜臨界状態にある水を反応場として、原料である無機充填材と、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤とを反応させる工程と、
前記官能基を介して前記有機修飾剤を、前記原料である無機充填材に化学結合させた表面処理粒子を製造する工程と、を含み、
前記無機充填材と、前記有機修飾剤とを反応させる工程において、前記有機修飾剤と反応させる前記原料である無機充填材は、3〜8μmに粒度分布の極大点を有するものである表面処理粒子の製造方法も提供できる。
【0009】
また、本発明によれば、超臨界または亜臨界状態にある水を反応場として、原料である無機充填材と、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤とを反応させる工程と
記官能基を介して前記有機修飾剤を、前記原料である無機充填材に化学結合させた表面処理粒子を製造する工程と、を含み、
前記無機充填材と、前記有機修飾剤とを反応させる工程において、前記有機修飾剤と反応させる前記原料である無機充填材は、36〜50μmに粒度分布の極大点を有するものである表面処理粒子の製造方法も提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物、このエポキシ樹脂組成物が使用された半導体装置、有機修飾無機充填材、エポキシ樹脂組成物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】TG−DTAによる測定結果を示す図である。
図2】FT−IRによる測定結果を示す図である。
図3】FT−IRによる測定結果を示す図である。
図4】13C−CPMAS NMRによる測定結果を示す図である。
図5】13C−CPMAS NMRによる測定結果を示す図である。
図6】13C−PSTMAS NMRによる測定結果を示す図である。
図7】球状アルミナAのTG−DTAによる測定結果を示す図である。
図8】球状アルミナBのTG−DTAによる測定結果を示す図である。
図9】球状アルミナFのTG−DTAによる測定結果を示す図である。
図10】球状アルミナIのTG−DTAによる測定結果を示す図である。
図11】球状アルミナLのTG−DTAによる測定結果を示す図である。
図12】球状アルミナPのTG−DTAによる測定結果を示す図である。
図13】球状アルミナAのFT−IRによる測定結果を示す図である。
図14】球状アルミナBのFT−IRによる測定結果を示す図である。
図15】球状アルミナFのFT−IRによる測定結果を示す図である。
図16】球状アルミナIのFT−IRによる測定結果を示す図である。
図17】球状アルミナLのFT−IRによる測定結果を示す図である。
図18】球状アルミナPのFT−IRによる測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の概要について説明する。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を含むエポキシ樹脂組成物であって、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤を、前記官能基を介して、無機充填材に対して化学結合させた有機修飾無機充填材(C)を含む。
ここで、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤を、前記官能基を介して、無機充填材に対して化学結合させるとは、有機修飾剤の前記官能基が、無機充填材表面の官能基(アルミナ等の金属酸化物の場合は水酸基)と化学結合していることを意味する。
さらに、エポキシ樹脂組成物は、硬化剤(B)を含んでいてもよい。
【0014】
次に、本実施形態のエポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
(エポキシ樹脂(A))
エポキシ樹脂(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造は特に限定するものではないが、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。なお有機修飾無機充填材(C)を高充填化するという観点では、常温で固形、かつ成形時の溶融粘度が非常に低い結晶性エポキシ樹脂を用いることが好ましく、それらの中でも、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂(A)全体の配合割合は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体に対し、2質量%以上、11質量%以下であることが好ましく、3質量%以上、8質量%以下であることがより好ましい。
エポキシ樹脂(A)の含有量を2質量%以上とすることで、エポキシ樹脂組成物の流動性低下を抑制することができる。また、エポキシ樹脂(A)の含有量を11質量%以下とすることで、エポキシ樹脂組成物の熱放散性の低下を抑制できる。
【0015】
(硬化剤(B))
硬化剤(B)としては、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等があげられるが、なかでも、フェノール樹脂系硬化剤が好ましい。
フェノール樹脂系硬化剤は、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、ナフトールノボラック等のノボラック型樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ジシクロベンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等の変性フェノール型樹脂等が挙げられる。なお、無機充填材を高充填化するという観点では、エポキシ樹脂と同様に低粘度のものが好ましい。
【0016】
フェノール樹脂系硬化剤全体の配合割合は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体に対し、1質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上、6質量%以下であることがより好ましい。フェノール樹脂系硬化剤の含有量を1質量%以上とすることで、エポキシ樹脂組成物の流動性低下を抑制することができる。また、フェノール樹脂系硬化剤の含有量を10質量%以下とすることで、エポキシ樹脂組成物の熱放散性の低下を抑制できる。
【0017】
全エポキシ樹脂(A)のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(PH)の当量比(EP/PH)としては0.5以上、2以下が好ましく、特に0.7以上、1.5以下がより好ましい。当量比(EP/PH)を0.5以上、2以下とすることで、良好な硬化性を得ることができ、それによって良好な成形加工性及び耐半田性を得ることができる。
【0018】
(有機修飾無機充填材(C))
有機修飾無機充填材(C)は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤を、前記官能基を介して、無機充填材に対して化学結合させたものである。
有機修飾無機充填材(C)としては、1種類のものを用いてもよく、また、有機修飾剤や、無機充填材の種類が異なる2種類以上を用いてもよい。
ここで、無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素等が挙げられるが、エポキシ樹脂組成物の高熱放散性及び流動性を付与する目的で、球状の無機充填材を用いることが好ましく、球状アルミナを用いることがより好ましい。
【0019】
有機修飾剤は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有するものである。すなわち、有機修飾剤としては、カルボン酸類、アミノ酸類、アミン類、アルコール類が好ましい。
カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤を使用することで、これらの官能基の無機充填材表面に多く存在する水酸基等と反応し易いという特性により、無機充填材に有機修飾剤を確実に化学結合させることができる。
有機修飾剤としては、無機充填材表面に有機物の性質を付与するという観点から、炭素数が4以上、特に5以上が好ましく、超臨界水に比べて誘電率が高い亜臨界水にも溶解し易いという観点から、炭素数が18以下、特には12以下のものが好ましい。尚、有機修飾剤における炭素数とは、官能基に含まれる炭素も含む数値とする。
このような有機修飾剤としては、たとえば、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘキサン酸、ラウリン酸、オレイン酸、アミノヘキサン酸、ヘキシルアミン、オクチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
なかでも、有機修飾剤としては、HOOC−(CH−COOH(但し、式中のnは2以上、16以下の整数)、CH−(CH−COOH(但し、式中のnは2以上、16以下の整数)、NH−(CH−COOH(但し、式中のnは3以上、17以下の整数)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましく、有機修飾無機充填材(C)の流動性向上という観点から、HOOC−(CH−COOHや、CH−(CH−COOH、NH−(CH−COOHがより好ましい。
また、有機修飾剤は、従来のシランカップリング剤とは異なるものであり、シラノール基または加水分解してシラノール基となる基(例えば、珪素原子に直結したメトキシ基、エトキシ基等)を有しない。シランカップリング剤のようにシラノール基を有するものである場合には、シラノール基が無機充填材表面の水酸基と脱水反応する一方、シラノール基同士が縮合反応し易いため、エポキシ樹脂組成物の流動性向上への効果は小さくなる傾向がある。そのため、有機修飾剤をシラノール基および加水分解してシラノール基となる基を有しないものとすることで、エポキシ樹脂組成物の流動性を高めることが可能となる。
【0020】
エポキシ樹脂組成物の流動性を向上させたり、有機修飾無機充填材(C)を高充填化したりするため、有機修飾無機充填材(C)の原料である無機充填材は、粒度分布の極大点を0.5〜1μm、3〜8μm、36〜50μmの各範囲に有することが好ましい。粒度分布の極大点を、この領域に有する場合は、流動性が低下して充填不良が発生することを抑制でき、半導体装置の封止材として使用する場合には、金線流れ等の不具合を抑制できる可能性がある。
【0021】
粒度分布の極大点を0.5〜1μm、3〜8μm、36〜50μmに有する無機充填材を得る方法は特に限定するものではなく、例えば、市販されている無機充填材をそのまま用いるか、市販されている複数の無機充填材を混合して用いたり、それらを篩等により粒度調整したりすることなどによって得ることができる。
なお、有機修飾無機充填材(C)と、原料となる無機充填材の径とは等しいと考えられる。
なかでも、粒度分布の極大点が0.5〜1μm、3〜8μm、36〜50μmである単分散の無機充填材を3種類以上混合することによって得るのが好ましい。
粒度分布の極大点が36〜50μmである単分散の無機充填材を上述した有機修飾剤で修飾した有機修飾無機充填材(C)を、有機修飾無機充填材(C)全体に対し50質量%以上、70質量%以下の割合で用いることがより好ましく、55質量%以上、65質量%以下の割合で用いることが特に好ましい。
【0022】
尚、本発明でいう単分散の無機充填材とは、極大点から大径側、小径側にともに単調減少する粒度分布を有する無機充填材を意味するものであり、正規分布等の特定の分布に限定されるものではない。粒度分布の極大点が最も大きい側の単分散の無機充填材の極大点が上記範囲内であると、半導体装置の封止材として使用する場合には、狭い充填領域が存在する半導体装置や金線間隔の狭い半導体装置においても、未充填を引き起こしたり、流動を阻害し金線流れを引き起こしたりする恐れが少ない。
また、粒度分布の極大点が36〜50μmである単分散の無機充填材を上述した有機修飾剤で修飾した有機修飾無機充填材(C)の割合が、有機修飾無機充填材(C)全体に対して70質量%以下であると、半導体装置の封止材として使用する場合には、狭い充填領域が存在する半導体装置や金線間隔の狭い半導体装置においても、未充填を引き起こしたり、流動を阻害し金線流れを引き起こしたりする恐れが少ない。また、粒度分布の極大点が36〜50μmである単分散の無機充填材を上述した有機修飾剤で修飾した有機修飾無機充填材(C)の割合が、有機修飾無機充填材(C)全体に対して50質量%以上であると、充分な流動性が得られ、充填不良や金線流れ等の不具合を発生する可能性が少ない。また粒度分布の極大点が36〜50μmである単分散の無機充填材を上述した有機修飾剤で修飾した有機修飾無機充填材(C)の割合が、有機修飾無機充填材(C)全体に対して50質量%以上であると、有機修飾無機充填材(C)を高充填し易くすることができる。
【0023】
無機充填材の粒度分布は、JIS M8100粉塊混合物−サンプリング方法通則に準じて無機充填材を採取し、JIS R 1622−1995ファインセラミック原料粒子径分布測定のための試料調整通則に準じて、無機充填材を測定用試料として調整し、JIS R 1629−1997ファインセラミック原料のレーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法に準じて(株)島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000(レーザー波長:405nm)等を用いて測定することができる。
また、有機修飾無機充填材(C)の配合割合は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体に対し、90質量%以上、94質量%以下であることが好ましく、91質量%以上、93質量%以下であることがより好ましい。上記範囲とすることで、流動性の低下を抑制できる。
【0024】
(その他の成分)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(C)成分の他、必要に応じて、硬化促進剤を用いることができる。本発明に用いることができる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(C)成分、硬化促進剤の他、必要に応じて、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類、パラフィン等の離型剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分;酸化防止剤等の各種添加剤が適宜配合可能である。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機修飾無機充填材(C)以外の無機充填材を含んでもよいが、流動性の観点からは、有機修飾無機充填材(C)以外の無機充填材を含まないことが好ましい。
【0026】
(エポキシ樹脂組成物の製造方法)
次に、エポキシ樹脂組成物の製造方法について説明する。
まず、有機修飾無機充填材(C)を製造する。超臨界または亜臨界状態にある水を反応場として、無機充填材と、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する前述した有機修飾剤とを反応させて有機修飾無機充填材(C)を製造する。
具体的には、水に無機充填材、有機修飾剤を添加する(以下これを混合液という)。そして、密閉状態にて、前記混合液の温度を250℃以上、500℃以下とし、圧力を2MPa以上、40MPa以下とする。これにより、混合液中の水は、超臨界または亜臨界状態となる。
そして、この状態において、無機充填材と、有機修飾剤中の前記官能基が化学結合することとなる。
【0027】
図1図6には、アルミナとして、AO−502(d50=0.7μm、アドマテックス社製)を使用し、アジピン酸にて表面修飾した有機修飾無機充填材(C)(後述する実施例の球状アルミナCに該当)のTG−DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光)、CPMAS(Cross Polarization Magic Angle Spinning ) NMR、PSTMAS NMRの結果を示す。
上記アルミナ(AO−502)を用い、有機修飾剤としてアジピン酸を用いて得た上記有機修飾無機充填材(C)の製造方法は以下のようである。
純水2.5ccにアルミナ約70mg、アジピン酸を0.1g加え、混合液を作製した。この混合液を5cc管型オートクレーブに入れ、300℃、20分、8.5MPaで加熱加圧した。その後、5cc管型オートクレーブを水で急冷し、5cc管型オートクレーブ内の混合液を50mlコニカルチューブに取り出し、エタノールで未反応有機修飾剤を10分間超音波洗浄した。その後、遠心分離を行った。超音波洗浄、遠心分離を全部で3回繰り返して未反応有機修飾剤を除去し、上記有機修飾無機充填材(C)を得た。
TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。図1では、250℃付近、400℃付近で発熱ピークがあらわれている。無機充填材と、アジピン酸とが化学結合していない場合には、エタノールで超音波洗浄した時に、アジピン酸(有機修飾剤)がエタノール中に溶解し、遠心分離によりアジピン酸(有機修飾剤)が除去されるため、TGチャートにおいて重量減少が殆どみられず、かつDTAチャートにおいても発熱ピークが検出されない。これに対し、250℃付近、400℃付近で発熱ピークがあらわれているのは、無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合しているため、アジピン酸が揮発せずに燃焼したものと考えられる。
また、図2には、アジピン酸単体のFT−IR(透過法)の結果を示し、図3には、有機修飾無機充填材(C)のFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。図2図3とを比較すると、図3の方が、図2に比べ、−COOHを示す1690cm−1付近のピーク強度が弱くなり、かつ、−COOを示す1580cm−1付近のピーク強度が強くなっていることがわかる。また、アルキル基を示す2900cm−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、アジピン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
さらに、図4には、アジピン酸単体の13C−CPMAS NMRの結果を示し、図5には、有機修飾無機充填材(C)の13C−CPMAS NMR、図6には、有機修飾無機充填材(C)の13C−PSTMAS NMRの結果を示す。図5図6の180PPM付近のスペクトルを比較すると、図5のみでCOOHもしくはCOOに由来するピークが検出されている。これは、COOHもしくはCOOを含む構造が無機充填材と強く相互作用していることを示すものである。更に図4図5とを比較すると、図5の方が、図4に比べCHピークの本数が増えており、アジピン酸の対称性が崩れていることを示している。図4図6のスペクトルをあわせると、COOHもしくはCOOが無機充填材と相互作用しており、それによってCH由来ピークの対称性が崩れたものと考えられる。
以上から、有機修飾無機充填材(C)においては、大部分の−COOHが消失し、−COO−となっていることがわかり、有機修飾剤が−COO−を介して無機充填材に化学結合していると考えられる。
なお、以上のようにして得られた有機修飾無機充填材(C)を使用したエポキシ樹脂組成物は流動性が良好であることが確認されている。
【0028】
以上のようにして製造した有機修飾無機充填材(C)と、エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)とを混合し、エポキシ樹脂組成物を得る。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(C)成分、硬化促進剤及びその他の添加剤等を、ミキサー等を用いて常温混合したもの、更にその後、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で加熱混練し、冷却後粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したものを用いることができる。
以上のようにして得られたエポキシ樹脂組成物は非常に流動性の高いものとなる。
エポキシ樹脂組成物が、半導体装置の封止材として使用される場合、エポキシ樹脂組成物には、高温下において、金線と金線の間等の非常に狭い空間を流れるという特性が要求される。本発明のエポキシ樹脂組成物は、特にこのような特性に優れたものであり、後述する実施例の高化式フロー粘度の測定において、本発明のエポキシ樹脂組成物がこのような特性を有することが実証されている。
【0029】
ここで、本発明に関連する技術として特許文献7に開示された技術がある。特許文献7には、超臨界領域の水を反応場として、微粒子表面に有機物を強結合させることが開示されている。
しかしながら、特許文献7に開示された技術は、50nm以下のナノ粒子が凝集し、分散できなくなってしまう課題を解決するための技術である。ナノサイズの粒子は表面エネルギーが高く、凝集しやすいため、たとえば、溶媒中で合成されたナノ粒子を取り出し乾燥させると、再度分散することは非常に困難である。この問題を解決するものが、特許文献7に開示された技術である。
これに対し、本発明は、有機修飾無機充填材(C)を使用して、エポキシ樹脂組成物の流動性を高めるというものである。
特許文献7では、エポキシ樹脂に対し、有機修飾無機充填材を添加することや、エポキシ樹脂組成物の流動性を高めることができるという開示はない。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物を封止材として用いて半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。たとえば、金型内に、半導体素子を配置し、金型内エポキシ樹脂組成物を充填し、硬化する。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて封止を行う半導体装置としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。
半導体装置の形態としては、例えば、クワッド・フラット・パッケージ(QFN)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられる。
上記トランスファーモールドなどの成形方法で封止された半導体装置は、そのまま、或いは80℃から200℃程度の温度で、10分から10時間程度の時間をかけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0032】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、エポキシ樹脂組成物を半導体装置の封止材料として使用したが、これに限られるものではない。接着材等に使用されるものであってもよい。
また、エポキシ樹脂組成物は、硬化剤(B)を含んでいないものであってもよい。
以下、参考形態の例を付記する。
1.エポキシ樹脂(A)を含むエポキシ樹脂組成物であって、
カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤を、前記官能基を介して、無機充填材に対して化学結合させた有機修飾無機充填材(C)を含むエポキシ樹脂組成物。
2.1.に記載のエポキシ樹脂組成物において、
前記有機修飾剤が、シラノール基または加水分解してシラノール基となる基を有しないエポキシ樹脂組成物。
3.1.または2.に記載のエポキシ樹脂組成物において、
前記有機修飾剤は、炭素数が4以上、18以下であるエポキシ樹脂組成物。
4.1.乃至3.のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物において、
前記有機修飾剤は、HOOC−(CH−COOH(但し、式中のnは2以上、16以下の整数)、CH−(CH−COOH(但し、式中のnは2以上、16以下の整数)、NH−(CH−COOH(但し、式中のnは3以上、17以下の整数)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であるエポキシ樹脂組成物。
5.4.に記載のエポキシ樹脂組成物において、
前記有機修飾剤は、HOOC−(CH−COOH、CH−(CH−COOH、NH−(CH−COOHのいずれかであるエポキシ樹脂組成物。
6.1.乃至5.のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物において、
前記無機充填材が、粒度分布の極大点を0.5〜1μm、3〜8μm、36〜50μmにそれぞれ有するものであるエポキシ樹脂組成物。
7.1.乃至6.のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物において、
粒度分布の極大点が36〜50μmである単分散の無機充填材に対し、前記有機修飾剤を化学結合させた前記有機修飾無機充填材(C)を、前記有機修飾無機充填材(C)全体に対し50質量%以上、70質量%以下の割合で含むエポキシ樹脂組成物。
8.1.乃至7.のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物において、
前記無機充填材が球状アルミナであるエポキシ樹脂組成物。
9.1.乃至8.のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物において、
硬化剤(B)を含むエポキシ樹脂組成物。
10.1.乃至9.のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物において、
当該エポキシ樹脂組成物は、半導体装置の封止用途に用いられるものであるエポキシ樹脂組成物。
11.10.に記載のエポキシ樹脂組成物を封止材として使用した半導体装置。
12.エポキシ樹脂に配合して用いられる有機修飾無機充填材であって、
前記有機修飾無機充填材は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤を、前記官能基を介して、無機充填材に対して化学結合させたものである有機修飾無機充填材。
13.12.に記載の有機修飾無機充填材は、エポキシ樹脂を含む半導体装置の封止材に添加されるものである有機修飾無機充填材。
14.超臨界または亜臨界状態にある水を反応場として、無機充填材と、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のいずれかの官能基を有する有機修飾剤とを反応させ、前記官能基を介して前記有機修飾剤を、前記無機充填材に化学結合させた有機修飾無機充填材(C)を製造する工程と、
前記有機修飾無機充填材(C)と、エポキシ樹脂(A)とを混合して、エポキシ樹脂組成物を得る工程とを含むエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【実施例】
【0033】
以下に、半導体封止用エポキシ樹脂組成物についての実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。配合割合は質量部とする。
【0034】
先ず、実施例及び比較例で用いた球状アルミナ及び球状シリカについて、下記にまとめて示す。
【0035】
球状アルミナA:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め300℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧は8.5MPaとなる(亜臨界状態)。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のアジピン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このアジピン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のアジピン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
図7に球状アルミナAのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。図7に示すように、200℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、図13に、球状アルミナAのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示すピークがみられず、また、−COOを示す1570cm−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、アジピン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
【0036】
球状アルミナB:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナAと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図8に球状アルミナBのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。図8に示すように、200℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、図14に、球状アルミナBのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示すピークがみられず、また、−COOを示す1570cm−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、アジピン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
【0037】
球状アルミナC:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナAと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図1に、球状アルミナCのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。図1に示すように、250℃付近、400℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
【0038】
球状アルミナD:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め400℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧は38MPaとなる(超臨界状態)。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のアジピン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このアジピン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のアジピン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
【0039】
球状アルミナE:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナDと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
【0040】
球状アルミナF:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナDと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図9に、球状アルミナFのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。図9に示すように、200℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、図15に、球状アルミナFのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示す1660cm−1付近には殆どピークがみられず、また、−COOを示す1560cm−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、アジピン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
なお、球状アルミナD,Eは球状アルミナFと同様の温度条件、圧力条件で製造しているため、球状アルミナD,Eも、無機充填材とアジピン酸とが化学結合していると考えられる。
【0041】
球状アルミナG:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、ヘキサン酸0.1ccを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め300℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧8.5MPaとなる(亜臨界状態)。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のヘキサン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このヘキサン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のヘキサン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
【0042】
球状アルミナH:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、ヘキサン酸0.1ccを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナGと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
【0043】
球状アルミナI:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、ヘキサン酸0.1ccを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナGと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図10に、球状アルミナIのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。図10に示すように、250℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、図16に、球状アルミナIのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示すピークがみられず、また、−COOを示す1560cm−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、ヘキサン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
なお、球状アルミナG,Hは球状アルミナIと同様の温度条件、圧力条件で製造しているため、球状アルミナG,Hも、無機充填材とアジピン酸とが化学結合していると考えられる。
【0044】
球状アルミナJ:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アノミヘキサン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め300℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧8.5MPaとなる(亜臨界状態)。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のアミノヘキサン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このアミノヘキサン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のアミノヘキサン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
【0045】
球状アルミナK:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アミノヘキサン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナJと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
【0046】
球状アルミナL:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アミノヘキサン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナJと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図11に、アルミナLのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。図11に示すように、250℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、図17に、球状アルミナLのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示すピークがみられず、また、−COOもしくは−NHを示す1560cm−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm−1付近にも幾つかのピークが存在し、3290cm−1付近には−NHを示すピークが存在している。これらのスペクトルより、大部分はアミノヘキサン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
なお、球状アルミナJ,Kは球状アルミナLと同様の温度条件、圧力条件で製造しているため、球状アルミナJ,Kも、無機充填材とアジピン酸とが化学結合していると考えられる。
【0047】
球状アルミナM:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め200℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧1MPa以下となる。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のアジピン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このアジピン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のアジピン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
【0048】
球状アルミナN:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナMと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
【0049】
球状アルミナP:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナMと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図12に、球状アルミナPのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。図12に示すように、TGチャートでの重量減少が殆どみられず、かつDTAチャートでの発熱ピークが確認できない。無機充填材とアジピン酸が強固に結合していなかったため、エタノール洗浄により、無機充填材表面に付着していたアジピン酸が洗い流されたためと考えられる。
また、図18に、球状アルミナPのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。2900cm−1付近にアルキル基を示すピークが検出されないことからも、アジピン酸が洗い流されていると考えられる。
なお、球状アルミナM、Nも球状アルミナPと同様の温度、圧力等の条件で製造しているため、球状アルミナM,Nのいずれも、無機充填材とアジピン酸とが化学結合していないと思われる。
【0050】
球状アルミナQ:電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)
【0051】
球状アルミナR:(株)アドマテックス製、AO−520(粒度分布の極大点粒径20μmの単分散の球状アルミナ)
【0052】
球状アルミナS:電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)
【0053】
球状アルミナT:(株)アドマテックス製、AO−509(粒度分布の極大点粒径10μmの単分散の球状アルミナ)
【0054】
球状アルミナU:(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)
【0055】
球状アルミナV:(株)アドマテックス製、AO−520(粒度分布の極大点粒径20μmの単分散の球状アルミナ)を球状アルミナAと同様に、アジピン酸で修飾した。
【0056】
球状アルミナW:(株)アドマテックス製、AO−509(粒度分布の極大点粒径10μmの単分散の球状アルミナ)を球状アルミナAと同様に、アジピン酸で修飾した。
【0057】
溶融球状シリカA:(株)アドマテックス社製、SO−25R(粒度分布の極大点粒径0.5μmの単分散の溶融球状シリカ)
【0058】
溶融球状シリカB:電気化学工業(株)社製、FB−105(粒径0.1μm、粒径10μm及び粒径50μmに粒度分布の極大点を有する溶融球状シリカ)
【0059】
実施例1
球状アルミナA52.00質量部、球状アルミナB25.00質量部、球状アルミナC15.00質量部を2分間ミキサーで常温混合した。その直後にエポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000K、融点105℃、エポキシ当量185)4.84質量部、フェノール樹脂系硬化剤1:トリフェノールメタン型樹脂(明和化成(株)製、MEH−7500、軟化点110℃、水酸基当量97)2.31質量部、トリフェニルホスフィン0.15質量部、イオン交換体:BiO(OH)0.74(NO0.15(HSiO0.11(東亜合成(株)社製、IXE−530S、平均粒径1.5μm)0.20質量部、カルナバワックス0.20質量部、カーボンブラック0.30質量部をミキサーに投入して、更に2分間ミキサーで常温混合した。その後、表面温度が100℃の小型セグメントミキサー((株)東洋精機製作所製ラボプラストミルKF6V)を用いて約3分間加熱混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0060】
評価方法
熱伝導率:低圧トランスファー成形機を用い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入成形し、試験片(1.0×1.0mm、厚さ1.0mm)を作製し、175℃、2時間で後硬化した。得られた試験片をNETZSCH製のキセノンフラッシュアナライザーLFA447を用いて熱拡散率を測定した。また、アルファーミラージュ(株)製の電子比重計SD−200Lを用いて、熱伝導率測定に用いた試験片の比重を測定し、更に、(株)リガク製の示差走査熱量計DSC8230を用いて、熱伝導率及び比重測定に用いた試験片の比熱を測定した。ここで測定した熱拡散率、比重及び比熱を用いて、熱伝導率を算出した。熱伝導率の単位はW/m・K。
【0061】
高化式フロー粘度:(株)島津製作所製のフローテスタCFT−500Cを用いて、温度175℃、荷重40kgf(ピストン面積1cm)、ダイ穴直径0.50mm、ダイ長さ1.00mmの試験条件でみかけの粘度を測定した。なお、測定には、予めペレット状にしたエポキシ樹脂組成物を用いた。みかけの粘度は、次の計算式より算出した。なお、Qは単位時間あたりに流れる流量である。
η=(πDP/128LQ)×10−3(Pa・s)
η:みかけの粘度
D:ダイ穴直径(mm)
P:試験圧力(Pa)
L:ダイ長さ(mm)
Q:フローレート(cm/s)
【0062】
粒度分布:無機充填材(球状アルミナA〜Wの原料となる球状アルミナ、溶融球状シリカ)の粒度分布は、JIS M8100粉塊混合物−サンプリング方法通則に準じて無機充填材を採取し、JIS R 1622−1995ファインセラミック原料粒子径分布測定のための試料調整通則に準じて、無機充填材を測定用試料として調整し、JIS R 1629−1997ファインセラミック原料のレーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法に準じて(株)島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000(レーザー波長:405nm)等を用いて測定した。
【0063】
実施例2〜11、比較例1〜9
表1、表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、同様に評価した。これらの評価結果を表1、表2に示す。
比較例で用いた原料を以下に示す。
シランカップリング剤1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
シランカップリング剤2:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
なお、シランカップリング剤を使用した比較例では、球状アルミナおよび/または溶融球状シリカをミキサーに投入後、混合しながらシランカップリング剤を後添加して、球状アルミナおよび/または溶融球状シリカをシランカップリング剤で表面処理した後、エポキシ樹脂、フェノール樹脂系硬化剤等の他の成分と混合した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
実施例1〜11は、無機充填材(C)が250℃以上、500℃以下、及び2MPa以上、40MPa以下の水を反応場として、有機修飾剤と化学結合を形成した球状アルミナを含むものであり、いずれも、熱伝導性、流動性(高化式フロー粘度)に優れた結果となった。
比較例1は、250℃以上、500℃以下、及び2MPa以上、40MPa以下の水を反応場としていない点で実施例1と異なっており、他の点は実施例1と同じである。
実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の方が高化式フロー粘度が低く、流動性が良好であることがわかる。
また、実施例2〜4と、シランカップリング剤1、シランカップリング剤2を使用した比較例2〜3とを比較すると、実施例2〜4の方が高化式フロー粘度が低く、流動性が良好であることがわかる。
さらに、実施例2〜4と、無機充填材の表面処理を行わなかった比較例4とを比較すると、実施例2〜4の方が高化式フロー粘度が低く、流動性が良好であることがわかる。
また、実施例5と比較例5とを比較すると、実施例5は、アジピン酸により、無機充填材を表面処理しているのに対し、比較例5では、シランカップリング剤を使用している。他の点は、実施例5と比較例5とは同じである。実施例5の方が、流動性が良好であることがわかる。
また、実施例6と比較例6とを比較すると、実施例6は、アジピン酸により、無機充填材を表面処理しているのに対し、比較例6では、シランカップリング剤を使用している。他の点は、実施例6と比較例6とは同じである。実施例6の方が流動性が良好であることがわかる。
さらに、実施例7と比較例7とを比較すると、実施例7は、アジピン酸により、無機充填材を表面処理しているのに対し、比較例7では、シランカップリング剤を使用している。他の点は、実施例7と比較例7とは同じである。実施例7の方が、流動性が良好であることがわかる。
シランカップリング剤を使用し、球状アルミナを溶融球状シリカと併用した比較例8においては、熱伝導率が大きく低下する結果となった。
さらに、無機充填材量が他の水準に比べて少ない比較例9は、高い熱伝導率が得られない結果となった。
また、実施例1〜11の結果を見ると、有機修飾無機充填材(C)の原料である無機充填材が、粒度分布の極大点を0.5〜1μm、3〜8μm、36〜50μmにそれぞれ有し、かつ、粒度分布の極大点が36〜50μmである単分散の無機充填材を有機修飾剤で修飾した有機修飾無機充填材を、前記有機修飾無機充填材全体に対し50質量%以上、70質量%以下の割合で含むことが好ましいことがわかる。
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