【0027】
図1〜
図6には、アルミナとして、AO−502(d50=0.7μm、アドマテックス社製)を使用し、アジピン酸にて表面修飾した有機修飾無機充填材(C)(後述する実施例の球状アルミナCに該当)のTG−DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光)、CPMAS(Cross Polarization Magic Angle Spinning ) NMR、PSTMAS NMRの結果を示す。
上記アルミナ(AO−502)を用い、有機修飾剤としてアジピン酸を用いて得た上記有機修飾無機充填材(C)の製造方法は以下のようである。
純水2.5ccにアルミナ約70mg、アジピン酸を0.1g加え、混合液を作製した。この混合液を5cc管型オートクレーブに入れ、300℃、20分、8.5MPaで加熱加圧した。その後、5cc管型オートクレーブを水で急冷し、5cc管型オートクレーブ内の混合液を50mlコニカルチューブに取り出し、エタノールで未反応有機修飾剤を10分間超音波洗浄した。その後、遠心分離を行った。超音波洗浄、遠心分離を全部で3回繰り返して未反応有機修飾剤を除去し、上記有機修飾無機充填材(C)を得た。
TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。
図1では、250℃付近、400℃付近で発熱ピークがあらわれている。無機充填材と、アジピン酸とが化学結合していない場合には、エタノールで超音波洗浄した時に、アジピン酸(有機修飾剤)がエタノール中に溶解し、遠心分離によりアジピン酸(有機修飾剤)が除去されるため、TGチャートにおいて重量減少が殆どみられず、かつDTAチャートにおいても発熱ピークが検出されない。これに対し、250℃付近、400℃付近で発熱ピークがあらわれているのは、無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合しているため、アジピン酸が揮発せずに燃焼したものと考えられる。
また、
図2には、アジピン酸単体のFT−IR(透過法)の結果を示し、
図3には、有機修飾無機充填材(C)のFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。
図2と
図3とを比較すると、
図3の方が、
図2に比べ、−COOHを示す1690cm
−1付近のピーク強度が弱くなり、かつ、−COO
−を示す1580cm
−1付近のピーク強度が強くなっていることがわかる。また、アルキル基を示す2900cm
−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、アジピン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
さらに、
図4には、アジピン酸単体の13C−CPMAS NMRの結果を示し、
図5には、有機修飾無機充填材(C)の13C−CPMAS NMR、
図6には、有機修飾無機充填材(C)の13C−PSTMAS NMRの結果を示す。
図5と
図6の180PPM付近のスペクトルを比較すると、
図5のみでCOOHもしくはCOOに由来するピークが検出されている。これは、COOHもしくはCOOを含む構造が無機充填材と強く相互作用していることを示すものである。更に
図4と
図5とを比較すると、
図5の方が、
図4に比べCH
2ピークの本数が増えており、アジピン酸の対称性が崩れていることを示している。
図4〜
図6のスペクトルをあわせると、COOHもしくはCOOが無機充填材と相互作用しており、それによってCH
2由来ピークの対称性が崩れたものと考えられる。
以上から、有機修飾無機充填材(C)においては、大部分の−COOHが消失し、−COO−となっていることがわかり、有機修飾剤が−COO−を介して無機充填材に化学結合していると考えられる。
なお、以上のようにして得られた有機修飾無機充填材(C)を使用したエポキシ樹脂組成物は流動性が良好であることが確認されている。
【実施例】
【0033】
以下に、半導体封止用エポキシ樹脂組成物についての実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。配合割合は質量部とする。
【0034】
先ず、実施例及び比較例で用いた球状アルミナ及び球状シリカについて、下記にまとめて示す。
【0035】
球状アルミナA:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め300℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧は8.5MPaとなる(亜臨界状態)。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のアジピン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このアジピン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のアジピン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
図7に球状アルミナAのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。
図7に示すように、200℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、
図13に、球状アルミナAのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示すピークがみられず、また、−COO
−を示す1570cm
−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm
−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、アジピン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
【0036】
球状アルミナB:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナAと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図8に球状アルミナBのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。
図8に示すように、200℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、
図14に、球状アルミナBのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示すピークがみられず、また、−COO
−を示す1570cm
−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm
−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、アジピン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
【0037】
球状アルミナC:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナAと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図1に、球状アルミナCのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。
図1に示すように、250℃付近、400℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
【0038】
球状アルミナD:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め400℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧は38MPaとなる(超臨界状態)。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のアジピン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このアジピン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のアジピン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
【0039】
球状アルミナE:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナDと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
【0040】
球状アルミナF:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナDと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図9に、球状アルミナFのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。
図9に示すように、200℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、
図15に、球状アルミナFのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示す1660cm
−1付近には殆どピークがみられず、また、−COO
−を示す1560cm
−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm
−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、アジピン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
なお、球状アルミナD,Eは球状アルミナFと同様の温度条件、圧力条件で製造しているため、球状アルミナD,Eも、無機充填材とアジピン酸とが化学結合していると考えられる。
【0041】
球状アルミナG:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、ヘキサン酸0.1ccを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め300℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧8.5MPaとなる(亜臨界状態)。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のヘキサン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このヘキサン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のヘキサン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
【0042】
球状アルミナH:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、ヘキサン酸0.1ccを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナGと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
【0043】
球状アルミナI:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、ヘキサン酸0.1ccを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナGと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図10に、球状アルミナIのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。
図10に示すように、250℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、
図16に、球状アルミナIのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示すピークがみられず、また、−COO
−を示す1560cm
−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm
−1付近にも幾つかのピークが存在している。これらのスペクトルより、ヘキサン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
なお、球状アルミナG,Hは球状アルミナIと同様の温度条件、圧力条件で製造しているため、球状アルミナG,Hも、無機充填材とアジピン酸とが化学結合していると考えられる。
【0044】
球状アルミナJ:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アノミヘキサン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め300℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧8.5MPaとなる(亜臨界状態)。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のアミノヘキサン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このアミノヘキサン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のアミノヘキサン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
【0045】
球状アルミナK:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アミノヘキサン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナJと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
【0046】
球状アルミナL:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アミノヘキサン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナJと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図11に、アルミナLのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。
図11に示すように、250℃付近に、発熱ピークが確認できる。無機充填材とアジピン酸とが強固に結合、すなわち化学結合し、アジピン酸が燃焼していると考えられる。
また、
図17に、球状アルミナLのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。−COOHを示すピークがみられず、また、−COO
−もしくは−NH
2を示す1560cm
−1付近にピークがある。また、アルキル基を示す2900cm
−1付近にも幾つかのピークが存在し、3290cm
−1付近には−NH
2を示すピークが存在している。これらのスペクトルより、大部分はアミノヘキサン酸の−COOHとアルミナとが相互作用していると考えられる。
なお、球状アルミナJ,Kは球状アルミナLと同様の温度条件、圧力条件で製造しているため、球状アルミナJ,Kも、無機充填材とアジピン酸とが化学結合していると考えられる。
【0047】
球状アルミナM:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、予め200℃に加熱した振とう式加熱攪拌装置(株式会社AKICO製)に投入し、振とうさせながら20分間加熱した。この時のオートクレーブ内圧1MPa以下となる。加熱終了後、冷水を用いてオートクレーブを急冷し、内容物を50mlコニカルチューブに取り出した。これにエタノール20mlを入れ、未反応のアジピン酸を洗い流すことを目的として、10分間超音波洗浄を行った。その後、マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所製3700)を用いて、10000G、20℃、20分間の条件で固液分離を行った。更に、このアジピン酸洗浄、固液分離を2回繰り返し行い、未反応のアジピン酸を完全に洗い流した。これをシクロヘキサンに再分散し、真空凍結乾燥機(株式会社アズワン製VFD−03)を用いて24時間乾燥し、粒子を得た。
【0048】
球状アルミナN:5ccの管型オートクレーブに、電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナMと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
【0049】
球状アルミナP:5ccの管型オートクレーブに、(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)0.10g、純水2.5cc、アジピン酸0.10gを仕込み、オートクレーブを密閉した。これを、球状アルミナMと同様の方法で加熱処理、エタノール洗浄、固液分離及び凍結乾燥を行い、粒子を得た。
図12に、球状アルミナPのTG−DTAによる測定結果を示す。TG−DTAの測定では、流量200ml/分の空気を流しながら測定を行った。
図12に示すように、TGチャートでの重量減少が殆どみられず、かつDTAチャートでの発熱ピークが確認できない。無機充填材とアジピン酸が強固に結合していなかったため、エタノール洗浄により、無機充填材表面に付着していたアジピン酸が洗い流されたためと考えられる。
また、
図18に、球状アルミナPのFT−IR(拡散反射法)の測定値をK−M(Kubelka-Munk)変換した結果を示す。2900cm
−1付近にアルキル基を示すピークが検出されないことからも、アジピン酸が洗い流されていると考えられる。
なお、球状アルミナM、Nも球状アルミナPと同様の温度、圧力等の条件で製造しているため、球状アルミナM,Nのいずれも、無機充填材とアジピン酸とが化学結合していないと思われる。
【0050】
球状アルミナQ:電気化学工業(株)製、DAW−45(粒度分布の極大点粒径45μmの単分散の球状アルミナ)
【0051】
球状アルミナR:(株)アドマテックス製、AO−520(粒度分布の極大点粒径20μmの単分散の球状アルミナ)
【0052】
球状アルミナS:電気化学工業(株)製、DAW−05(粒度分布の極大点粒径5μmの単分散の球状アルミナ)
【0053】
球状アルミナT:(株)アドマテックス製、AO−509(粒度分布の極大点粒径10μmの単分散の球状アルミナ)
【0054】
球状アルミナU:(株)アドマテックス製、AO−502(粒度分布の極大点粒径0.7μmの単分散の球状アルミナ)
【0055】
球状アルミナV:(株)アドマテックス製、AO−520(粒度分布の極大点粒径20μmの単分散の球状アルミナ)を球状アルミナAと同様に、アジピン酸で修飾した。
【0056】
球状アルミナW:(株)アドマテックス製、AO−509(粒度分布の極大点粒径10μmの単分散の球状アルミナ)を球状アルミナAと同様に、アジピン酸で修飾した。
【0057】
溶融球状シリカA:(株)アドマテックス社製、SO−25R(粒度分布の極大点粒径0.5μmの単分散の溶融球状シリカ)
【0058】
溶融球状シリカB:電気化学工業(株)社製、FB−105(粒径0.1μm、粒径10μm及び粒径50μmに粒度分布の極大点を有する溶融球状シリカ)
【0059】
実施例1
球状アルミナA52.00質量部、球状アルミナB25.00質量部、球状アルミナC15.00質量部を2分間ミキサーで常温混合した。その直後にエポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000K、融点105℃、エポキシ当量185)4.84質量部、フェノール樹脂系硬化剤1:トリフェノールメタン型樹脂(明和化成(株)製、MEH−7500、軟化点110℃、水酸基当量97)2.31質量部、トリフェニルホスフィン0.15質量部、イオン交換体:BiO(OH)
0.74(NO
3)
0.15(HSiO
3)
0.11(東亜合成(株)社製、IXE−530S、平均粒径1.5μm)0.20質量部、カルナバワックス0.20質量部、カーボンブラック0.30質量部をミキサーに投入して、更に2分間ミキサーで常温混合した。その後、表面温度が100℃の小型セグメントミキサー((株)東洋精機製作所製ラボプラストミルKF6V)を用いて約3分間加熱混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0060】
評価方法
熱伝導率:低圧トランスファー成形機を用い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入成形し、試験片(1.0×1.0mm、厚さ1.0mm)を作製し、175℃、2時間で後硬化した。得られた試験片をNETZSCH製のキセノンフラッシュアナライザーLFA447を用いて熱拡散率を測定した。また、アルファーミラージュ(株)製の電子比重計SD−200Lを用いて、熱伝導率測定に用いた試験片の比重を測定し、更に、(株)リガク製の示差走査熱量計DSC8230を用いて、熱伝導率及び比重測定に用いた試験片の比熱を測定した。ここで測定した熱拡散率、比重及び比熱を用いて、熱伝導率を算出した。熱伝導率の単位はW/m・K。
【0061】
高化式フロー粘度:(株)島津製作所製のフローテスタCFT−500Cを用いて、温度175℃、荷重40kgf(ピストン面積1cm
2)、ダイ穴直径0.50mm、ダイ長さ1.00mmの試験条件でみかけの粘度を測定した。なお、測定には、予めペレット状にしたエポキシ樹脂組成物を用いた。みかけの粘度は、次の計算式より算出した。なお、Qは単位時間あたりに流れる流量である。
η=(πD
4P/128LQ)×10
−3(Pa・s)
η:みかけの粘度
D:ダイ穴直径(mm)
P:試験圧力(Pa)
L:ダイ長さ(mm)
Q:フローレート(cm
3/s)
【0062】
粒度分布:無機充填材(球状アルミナA〜Wの原料となる球状アルミナ、溶融球状シリカ)の粒度分布は、JIS M8100粉塊混合物−サンプリング方法通則に準じて無機充填材を採取し、JIS R 1622−1995ファインセラミック原料粒子径分布測定のための試料調整通則に準じて、無機充填材を測定用試料として調整し、JIS R 1629−1997ファインセラミック原料のレーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法に準じて(株)島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000(レーザー波長:405nm)等を用いて測定した。
【0063】
実施例2〜11、比較例1〜9
表1、表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、同様に評価した。これらの評価結果を表1、表2に示す。
比較例で用いた原料を以下に示す。
シランカップリング剤1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
シランカップリング剤2:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
なお、シランカップリング剤を使用した比較例では、球状アルミナおよび/または溶融球状シリカをミキサーに投入後、混合しながらシランカップリング剤を後添加して、球状アルミナおよび/または溶融球状シリカをシランカップリング剤で表面処理した後、エポキシ樹脂、フェノール樹脂系硬化剤等の他の成分と混合した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
実施例1〜11は、無機充填材(C)が250℃以上、500℃以下、及び2MPa以上、40MPa以下の水を反応場として、有機修飾剤と化学結合を形成した球状アルミナを含むものであり、いずれも、熱伝導性、流動性(高化式フロー粘度)に優れた結果となった。
比較例1は、250℃以上、500℃以下、及び2MPa以上、40MPa以下の水を反応場としていない点で実施例1と異なっており、他の点は実施例1と同じである。
実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の方が高化式フロー粘度が低く、流動性が良好であることがわかる。
また、実施例2〜4と、シランカップリング剤1、シランカップリング剤2を使用した比較例2〜3とを比較すると、実施例2〜4の方が高化式フロー粘度が低く、流動性が良好であることがわかる。
さらに、実施例2〜4と、無機充填材の表面処理を行わなかった比較例4とを比較すると、実施例2〜4の方が高化式フロー粘度が低く、流動性が良好であることがわかる。
また、実施例5と比較例5とを比較すると、実施例5は、アジピン酸により、無機充填材を表面処理しているのに対し、比較例5では、シランカップリング剤を使用している。他の点は、実施例5と比較例5とは同じである。実施例5の方が、流動性が良好であることがわかる。
また、実施例6と比較例6とを比較すると、実施例6は、アジピン酸により、無機充填材を表面処理しているのに対し、比較例6では、シランカップリング剤を使用している。他の点は、実施例6と比較例6とは同じである。実施例6の方が流動性が良好であることがわかる。
さらに、実施例7と比較例7とを比較すると、実施例7は、アジピン酸により、無機充填材を表面処理しているのに対し、比較例7では、シランカップリング剤を使用している。他の点は、実施例7と比較例7とは同じである。実施例7の方が、流動性が良好であることがわかる。
シランカップリング剤を使用し、球状アルミナを溶融球状シリカと併用した比較例8においては、熱伝導率が大きく低下する結果となった。
さらに、無機充填材量が他の水準に比べて少ない比較例9は、高い熱伝導率が得られない結果となった。
また、実施例1〜11の結果を見ると、有機修飾無機充填材(C)の原料である無機充填材が、粒度分布の極大点を0.5〜1μm、3〜8μm、36〜50μmにそれぞれ有し、かつ、粒度分布の極大点が36〜50μmである単分散の無機充填材を有機修飾剤で修飾した有機修飾無機充填材を、前記有機修飾無機充填材全体に対し50質量%以上、70質量%以下の割合で含むことが好ましいことがわかる。