特許第5905963号(P5905963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5905963グリッドパターンを有する創傷ドレッシング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905963
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】グリッドパターンを有する創傷ドレッシング
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
   A61F13/02 310M
   A61F13/02 310D
   A61F13/02 390
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-521902(P2014-521902)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公表番号】特表2014-521414(P2014-521414A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】CN2011077709
(87)【国際公開番号】WO2013013405
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ファン ティン
(72)【発明者】
【氏名】フアン チン
(72)【発明者】
【氏名】マ チン
(72)【発明者】
【氏名】フ チエ
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−297434(JP,A)
【文献】 特開昭62−195073(JP,A)
【文献】 特開平02−023965(JP,A)
【文献】 特開平08−257058(JP,A)
【文献】 特開昭58−023457(JP,A)
【文献】 特開昭61−076389(JP,A)
【文献】 特開平08−071692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00 − 13/14
15/00 − 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム層の一方の表面にグリッドパターンを有するポリマーフィルムを含むベースフィルム層と、
前記ベースフィルム層のグリッドパターンを有する表面上の、パターンを形成したライナーであって、前記ベースフィルム層上のグリッドパターンに対して相補的なグリッドパターンを有する、パターンを形成したライナーと、
前記ベースフィルム層の、前記グリッドパターンを有する前記表面とは対向する面上に配置された、接着剤層又は親水コロイド層と、
を含む創傷ドレッシン
【請求項2】
前記ポリマーフィルムは透明である、請求項1に記載の創傷ドレッシング。
【請求項3】
前記ベースフィルム層のグリッドパターンは縦グリッド線及び横グリッド線を有し、前記縦グリッド線と前記横グリッド線とは互いに直角である、請求項1又は2に記載の創傷ドレッシング。
【請求項4】
前記接着剤層又は前記親水コロイド層の、前記ベースフィルム層とは対向する面上に、剥離ライナーを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の創傷ドレッシング。
【請求項5】
前記パターンを形成したライナー上にポリマー溶液をコーティングする工程と、
前記ポリマー溶液を乾燥させて、前記ベースフィルム層の前記表面に、前記パターンを形成したライナーのグリッドパターンを複製させる工程と、
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の創傷ドレッシングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面上にグリッドパターンを有する創傷ドレッシング、及び創傷ドレッシングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷の大きさを測定することは、治癒の経過の文書化において、及び臨床と研究セッティングにおける治癒プロセスへの治療介入の有効性の評価において重大である。ドレッシングの上面に印刷されたグリッドを有する創傷ドレッシングは、臨床的に使用される。印刷によって作られたグリッドは、時間の経過又は摩擦から消える傾向があり、したがって、傷を正確に測定することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しっかりとして正確なグリッドを有し、様々な状態の創傷の大きさを容易にかつ正確に測定することができる創傷ドレッシングを製造することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ベースフィルム層の一方の表面にグリッドパターンを有するポリマーフィルムを含むベースフィルム層と、ベースフィルム層の、グリッドパターンを有する表面とは対向する面上に配置された、接着剤層又は親水コロイド層と、を含み、ポリマーフィルムのグリッドパターンは、ポリマーフィルムのグリッドパターンに対して相補的なパターンを形成したライナー上に、ポリマー溶液をコーティングすることにより得られる、創傷ドレッシングを提供する。本開示は、また、パターンを形成したライナー上にポリマー溶液をコーティングする工程と、ポリマー溶液を乾燥させて、ベースフィルム層の表面に、パターンを形成したライナーのグリッドパターンを複製させる工程と、を含む創傷ドレッシングの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1a】本開示の創傷ドレッシングの断面図である。
図1b】本開示の創傷ドレッシングの断面図である。
図2】本開示の創傷ドレッシングの平面図である。
図3a】本開示の更なる実施形態による創傷ドレッシングの断面図である。
図3b】本開示の更なる実施形態による創傷ドレッシングの断面図である。
図3c】本開示の更なる実施形態による創傷ドレッシングの断面図である。
図4】本開示の創傷ドレッシングの製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の創傷ドレッシングは、ベースフィルム層と、接着剤層又は親水コロイド層と、を含む。
【0007】
ベースフィルム層は、一方の表面にグリッドパターンを有するポリマーフィルムを含む。ドレッシングが創傷領域を覆う皮膚にあてがわれる場合、例えば褥瘡や圧迫潰瘍のような皮膚上の傷は、創傷ドレッシングのグリッドで測定することができる。
【0008】
接着剤層又は親水コロイド層は、ベースフィルム層の、グリッドパターンを有する表面とは対向する面上に配置される。本明細書で使用するとき、「グリッドパターン」とは、ベースフィルム層の表面上の凹部又は凸部構造を意味する。
【0009】
グリッドパターンは、ポリマーフィルムのグリッドパターンに対して相補的なパターンを形成したライナーに、ポリマー溶液をコーティングすることにより得られる。
【0010】
図1a及び図1bは、本開示の創傷ドレッシングの断面図を示す。図1aは、凹部グリッドパターン3及び接着剤層2aを有するベースフィルム層1を含む創傷ドレッシングを示す。図1bは、凹部グリッドパターン3及び親水コロイド層2bを有するベースフィルム層1を含む創傷ドレッシングを示す。
【0011】
ベースフィルム層1はポリマーフィルムを含む。ポリマーフィルムは、好ましくは皮膚に適応して柔軟で、傷を見せることが可能なほど透明であってもよいポリマーを含む。ポリマーの例としては、ポリウレタン類;ポリエステル、ポリプロピレン及びポリブチレンなどのポリオレフィン類;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル類;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素化ポリマー;ナイロン及びポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。
【0012】
ベースフィルム層の厚さは制限されていないが、約4マイクロメートル〜約100マイクロメートル、又は約6マイクロメートル〜約80マイクロメートルであってもよい。
【0013】
凹部グリッドパターン3は、ベースフィルム層の一方の表面上にある。表面は、創傷ドレッシングの最も外側の表面であってもよい。凹部グリッドパターン3は、凹部グリッドパターン3に対して相補的な凸部パターンを形成したライナーにベースフィルム層を構成するポリマー溶液をコーティングすることにより得られる。
【0014】
パターンを形成したライナーは、表面に凹部又は凸部構造を有するライナーであり、露出していてもよく、被覆ポリマー又は塗工紙によって作製されてもよい。パターンを形成したライナーの例としては、Comply Liner(3M Company,St.Paul,MN,USAから入手可能)が挙げられる。パターンを形成したライナーは、グリッドパターンを有するベースフィルム層を作製するために使用される。創傷ドレッシングが皮膚に適用される場合、パターンを形成したライナーは、創傷ドレッシングから剥離されていてもよい。
【0015】
接着剤層2aは、例えばゴム系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル接着剤、シリコーン接着剤のような公知の感圧接着剤を含んでいてもよい。
【0016】
親水コロイド層2bは、セルロースガム、疎水性不飽和エラストマーホモポリマー及びポリイソブチレン粘着付与剤などの親水コロイド吸収性物質を含む公知の親水コロイド材料を含んでいてもよい。親水コロイド材料は更に樹脂粘着付与剤を含んでいてもよい。親水コロイド層2bの具体例としては、3M(商標)Tegaderm(商標)親水コロイドドレッシング(3M Company,St.Paul,MN,USAから入手可能)、Coloplast Comfeel(商標)潰瘍ドレッシング(Coloplast Limited,Peterborough,Cambs,Englandから入手可能)、及びConvaTec Duoderm(商標)CGF親水コロイドドレッシング(ConvaTec Inc.,Skillman,NJ,USAから入手可能)が挙げられる。
【0017】
接着剤層2a及び親水コロイド層2bは、例えば、ベースフィルム層の上に上記の接着剤をコーティングする若しくは押し出すか、又はベースフィルム層に上記の接着剤を含む接着シートを積層するなど公知の方法によって作られてもよい。バーコーティング及びナイフコーティングのような公知のコーティングプロセス、又は公知の押し出しプロセスは、接着剤又は親水コロイド材料をコーティングするか押し出すためにそれぞれ使用することができる。
【0018】
接着剤層又は親水コロイド層の厚さは制限されていないが、約4マイクロメートル〜約5000マイクロメートル、又は約10マイクロメートル〜約3000マイクロメートルであってもよい。
【0019】
創傷ドレッシングは更に、接着剤層に配置された剥離ライナーを含んでいてもよい。剥離ライナーは、接着剤層又は親水コロイド層の表面を保護し、皮膚に適用された場合に創傷ドレッシングから剥離0024においすることができる。
【0020】
一実施形態では、グリッドパターンは縦グリッド線及び横グリッド線を含み、それらの線は実質的に互いに直角である。図2は、本開示の創傷ドレッシングの平面図を示す。グリッドパターンは、縦グリッド線3a及び横グリッド線3bを有する。隣接している線の間隔は、好ましくは等しくてよい。縦グリッド線3a及び横グリッド線3bは、好ましくは実質的に互いに直角でもよい。隣接するグリッド線間の距離は制限されていないが、約1mm〜約50mm、又は約2mm〜約20mmであってよく、より好ましくは約2mm、約5mm、又は約10mmであってもよい。
【0021】
一実施形態では、グリッドパターンは同心性の幾何学形状を含んでいる。一実施形態では、グリッドパターンは、放射状に伸びる線を備えた同心性の幾何学形状を含んでいる。例えば、幾何学形状は、円、楕円形、三角形、長方形、又は正方形であってもよい。
【0022】
皮膚上の創傷の大きさは、グリッドパターンで観測及び測定することができる。具体的には、創傷の大きさは、例えば24グリッド×15グリッド又は30グリッド×7グリッドのような横方向に対する縦グリッド線の数を縦方向に対する横グリッド線の数で乗ずることによって測定することができる。創傷の治癒プロセスは、創傷の大きさの減少として観察することができる。
【0023】
グリッドパターンの奥行又は高さは、パターンを形成したライナーのパターンの高さ又は奥行に依存して設定され、制限されていないが、約1マイクロメートル〜約90マイクロメートル、又は約2マイクロメートル〜約80マイクロメートルであってもよい。
【0024】
図3aから3cは、本開示の更なる実施態様である創傷ドレッシングの断面図を表す。図3aから3cは、グリッドパターンの形状の例を示す。図3aは、尖形の凸部グリッドパターン3を有する創傷ドレッシングを示す。図3bは、正方形の凹部グリッドパターン3を有する創傷ドレッシングを示す。図3cは、正方形の凸部グリッドパターン3を有する創傷ドレッシングを示す。グリッドパターンは、相補的なパターンを有するパターンを形成したライナー上にポリマーをコーティングすることにより所望のグリッドパターンを作製することができる。
【0025】
創傷ドレッシングは、パターンを形成したライナー上にポリマー溶液をコーティングしてベースフィルム層を形成し、次に、得られたベースフィルム層の上に接着剤層をコーティング又は積層するような公知の方法によって製造されていてもよい。図4は、本開示の創傷ドレッシングの製造プロセスを示す。図4を参照すると、表面上にグリッドパターンを有するパターンを形成したライナー4が準備されており(図4−a)、次に、パターンを形成したライナー4の表面上にポリマー溶液が公知のコーティング方法によってコーティングされ、加熱乾燥させて、パターンを形成したライナーのパターンに対して相補的なグリッドパターンを有するベースフィルム層1が形成される(図4−b)。その後、得られたベースフィルム層1の、パターンを形成したライナー4とは対向する面上に接着剤層2が積層されて、創傷ドレッシングを得る(図4−c)。あるいは、接着剤は得られたベースフィルム層の上に公知のコーティング方法によってコーティングされ、オーブンで乾燥させて接着剤層を形成して創傷ドレッシングを得る。
【0026】
本開示の創傷ドレッシングは、創傷がある皮膚上に適用され、創傷の大きさを測定することで、治癒の経過が容易に文書化され得る。更に創傷ドレッシングのグリッドパターンは、パターンを形成したライナーにポリマーをコーティングすることにより作製され、それにより安定かつ良好な状態に保たれ、治癒の経過がより正確に文書化され得る。
【0027】
接着剤層又は親水コロイド層は更に、創傷を処置するための抗菌性薬、抗真菌薬、又は抗生物質のような機能性薬品を含んでいてもよい。
【実施例】
【0028】
実施例1:創傷ドレッシング(ポリウレタン(PU)フィルム及び接着剤層)
この実施例は、図1(a)に記載されたPUフィルム(ベースフィルム層)と接着剤層とを含む創傷ドレッシングの製造を示す。
【0029】
PU溶液(Jiaxing Puyou,Zhejiang,Chinaから入手可能なV−5454LV)を、バーコーターでライナー(3M Company,St.Paul,MN,USAから入手可能なComply liner CB 1)上にコーティングし、オーブンで5分間、130℃で乾燥させてPUフィルムを得た。Comply liner CB 1は表面上にグリッドパターンを有しており、グリッド間の距離は0.5mmであった。得られたPUフィルムの厚みは20マイクロメートル(乾燥)であり、グリッドの奥行は10マイクロメートルであった。
【0030】
50%のアクリル系ポリマー(3M Company,St.Paul,MN,USAから入手可能)を含む水性接着剤を、バーコーターで直接PUフィルム上にコーティングし、オーブンで5分間、110℃で乾燥させて創傷ドレッシングを得た。
【0031】
実施例2:創傷ドレッシング(PUフィルム及び親水コロイド層)
この実施例は、図1(b)に記載されたPUフィルム(ベースフィルム層)と親水コロイド層とを含む創傷ドレッシングの製造を示す。
【0032】
PUフィルムは、実施例1と同じプロセスによって製造された。得られたPUフィルムは、親水コロイドシート(厚さ450マイクロメートル、3M Company,St.Paul,MN,USAから利用可能)で積層して創傷ドレッシングを製造した。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4