(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.
光透過性導電性フィルム
本発明の光透過性導電性フィルムは、
(A)光透過性支持層;及び
(B)光透過性導電層
を含有する光透過性導電性フィルムであって、
前記光透過性導電層(B)が、前記光透過性支持層(A)の一方の面に、直接又は一以上の他の層を介して配置されており、かつ前記光透過性導電層(B)とは反対側の表面のぬれ張力が34dyn/cm以上であることを特徴とする、光透過性導電性フィルムである。
【0015】
本発明において「光透過性」とは、光を透過させる性質を有する(translucent)ことを意味する。「光透過性」には、透明(transparent)が含まれる。「光透過性」とは、例えば、全光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である性質をいう。本発明において全光線透過率は、ヘーズメーター(日本電色社製、商品名:NDH−2000、またはその同等品)を用いてJIS−K−7105に基づいて測定する。
【0016】
本発明において、各層の厚さは、市販の反射分光膜厚計(大塚電子、FE−3000(製品名)、又はその同等品)を用いて求める。又は、代替的に、市販の透過型電子顕微鏡を用いた観察により求めてもよい。具体的には、ミクロトーム又はフォーカスイオンビームなどを用いて光透過性導電性フィルムをフィルム面に対して垂直方向に薄く切断し、その断面を観察する。
【0017】
本明細書において、光透過性支持層(A)の一方の面に配置される複数の層のうち二つの層の相対的な位置関係について言及する場合、光透過性支持層(A)を基準にして、光透過性支持層(A)からの距離が大きい一方の層を「上の」層等ということがある。
【0018】
図1に、本発明の光透過性導電性フィルムの一態様を示す。この態様では、光透過性支持層(A)の一方の面に、光透過性導電層(B)が直接配置されている。
【0019】
1.1
光透過性支持層(A)
本発明において光透過性支持層とは、光透過性導電層を含有する光透過性導電性フィルムにおいて、光透過性導電層を含む層を支持する役割を果たすものをいう。光透過性支持層(A)としては、特に限定されないが、例えば、タッチパネル用光透過性導電性フィルムにおいて、光透過性支持層として通常用いられるものを用いることができる。
【0020】
光透過性支持層(A)の素材は、特に限定されないが、例えば、各種の有機高分子等を挙げることができる。有機高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。
【0021】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
【0022】
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)等が挙げられる。
【0023】
これらのうち、本発明の効果の面で、PETが最も好ましい。
【0024】
光透過性支持層(A)は、これらのうちいずれか単独からなるものであってもよいし、複数種からなるものであってもあってもよい。
【0025】
光透過性支持層(A)の厚さは、特に限定されないが、例えば、2〜300μmの範囲が挙げられる。
【0026】
1.2
光透過性導電層(B)
光透過性導電層(B)は、光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に、直接又は一以上の他の層を介して配置されている。
【0027】
本発明において光透過性導電層とは、導電性物質を含有し、電気を導通しかつ可視光を透過する役割を果たすものをいう。光透過性導電層(B)としては、特に限定されないが、例えば、タッチパネル用光透過性導電性フィルムにおいて光透過性導電層として通常用いられるものを用いることができる。
【0028】
光透過性導電層(B)の素材は、特に限定されないが、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫及び酸化チタン等が挙げられる。光透過性導電層(B)としては、透明性と導電性を両立する点で酸化インジウムにドーパントをドープしたものを含む光透過性導電層が好ましい。光透過性導電層(B)は、酸化インジウムにドーパントをドープしたものからなる光透過性導電層であってもよい。ドーパントとしては、特に限定されないが、例えば、酸化スズ及び酸化亜鉛、並びにそれらの混合物等が挙げられる。
【0029】
光透過性導電層(B)の素材として酸化インジウムに酸化スズをドープしたものを用いる場合は、酸化インジウム(III)(In
2O
3)に酸化スズ(IV)(SnO
2)をドープしたもの(tin−doped indium oxide;ITO)が好ましい。この場合、SnO
2の添加量としては、特に限定されないが、例えば、1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%等が挙げられる。また、ドーパントの総量が左記の数値範囲を超えない範囲で、酸化インジウムスズにさらに他のドーパントが加えられたものを光透過性導電層(B)の素材として用いてもよい。左記において他のドーパントとしては、特に限定されないが、例えばセレン等が挙げられる。
【0030】
光透過性導電層(B)は、上記の各種素材のうちいずれか単独からなるものであってもよいし、複数種からなるものであってもあってもよい。
【0031】
光透過性導電層(B)は、特に限定されないが、結晶体若しくは非晶質体、又はそれらの混合体であってもよい。
【0032】
光透過性導電層(B)を形成する方法としては、導電性物質を焼成する工程を含有する方法が好ましい。焼成方法としては、特に限定されないが、例えばスパッタリング等を行う際のドラム加熱や、熱風式焼成炉、遠赤外線焼成炉などを例として挙げることができる。焼成温度は、特に限定されないが、通常は30〜250℃であり、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜160℃である。焼成時間は、好ましくは3分〜180分、より好ましくは5分〜120分、さらに好ましくは10分〜90分である。焼成を行う雰囲気としては、真空下、大気、窒素やアルゴンなどの不活性ガス、酸素、若しくは水素添加窒素等、又はこれらのうち二種以上の組合せが挙げられる。導電性物質を焼成することにより、導電性物質の結晶化が促進される。
【0033】
光透過性導電層(B)の厚さは、特に限定されないが、通常15〜30nmである。光透過性導電層(B)の厚さは、20nm未満であると、改善された透過率及びパターン化された光透過性導電層のパターン見えの軽減等の利点が得られるため、好ましい。
【0034】
光透過性導電層(B)を配置する方法は、湿式及び乾式のいずれであってもよく、特に限定されない。光透過性導電層(B)を配置する方法の具体例として、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法及びパルスレーザーデポジション法等が挙げられる。
【0035】
1.3
ぬれ張力
本発明の光透過性導電性フィルムは、前記光透過性導電層(B)が、前記光透過性支持層(A)の一方の面に、直接又は一以上の他の層を介して配置されており、かつ前記光透過性導電層(B)とは反対側の表面のぬれ張力が34dyn/cm以上である。
【0036】
すなわち、本発明の光透過性導電性フィルムは、一方の面のぬれ張力が34dyn/cm以上である。この面にOCA又はOCAフィルムを貼付することができ、このとき、他方の面の表面、または他方の面の表面に配置されている層よりも下に(ただし、光透過性支持層よりは上に)、光透過性導電層(B)が配置されている。
【0037】
このような構成であるため、本発明の光透過性導電性フィルムは、OCA又はOCAフィルムを当該面に貼付した際に、光透過性導電層に(あるいはその上層に)銀ペーストを塗布後、ベーク工程を行ったとしても、OCAに気泡ボイドが発生しにくい。また、OCAフィルムを貼付した光透過性導電性フィルムをロール搬送により巻き取る際にも、OCAフィルムが剥離しにくく、光透過性導電性フィルムとの接着面にずれが生じにくい。
【0038】
かかる効果の点で、上記ぬれ張力は、34dyn/cm以上であれば好ましく、36dyn/cm以上であればより好ましい。なお、上記ぬれ張力の上限は、特に限定されないが、通常、50dyn/cm以下であり、白化が生じにくいことから、48dyn/cm以下であることが好ましく、46dyn/cm以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明において、ぬれ張力は、常温23℃において測定される。ぬれ張力の測定は、水平にした試験片表面に、JIS K 6768「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」に準じ、順次より大きなぬれ張力を有するぬれ張力試験用液のそれぞれ1mlを3cmの高さからスポイトで滴下し、直ちに試験片を90度傾け、滴下面を垂直方向とした場合に、液滴がはじかれずに試験片表面をぬらしながら流れる時の最大のぬれ張力を有するぬれ張力試験用液のぬれ張力(dyne/cm)を試験片のぬれ張力とする方法である。ぬれ張力試験用液としては(ぬれ張力試験用混合液、和光純薬社製)又はその同等品を用いて行われる。
【0040】
上記ぬれ張力の範囲内となるようにする手段は、対象となる面を構成する層の種類に応じて適宜選択しうる。例えば、対象となる面を構成する層が、光透過性支持層(A)である場合には、ぬれ張力を調整する方法としては、例えば、対象面に、コロナ放電処理、紫外線照射処理、オゾン処理及びプラズマ処理からなる群より選択される少なくとも一種の処理を施す方法、並びに易接着層コート等のために使用されるぬれ張力調整用のコーティング剤を塗布する方法等などが挙げられる。
【0041】
オゾン処理は、被処理物をオゾンに暴露することによって行われる。暴露方法は、オゾンが存在する雰囲気に定められた時間保持する方法、オゾン気流中に定められた時間暴露する方法等で行われる。
【0042】
プラズマ処理は、被処理物を、低圧若しくは常圧のアルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素、二酸化窒素、酸素及び空気等からなる群より選択される少なくとも一種を含むガス中で、グロー放電により生ずるプラズマにさらし、その後、空気などの酸素を含むガスにさらすことで、材料の表面に酸素を導入する方法である。
【0043】
コロナ放電処理は、接地された金属ロール、並びに、それと一定の間隔を置いたナイフ状、ノコギリ状又はワイヤー状等の電極の間に交流の高電圧をかけてコロナ放電を発生させた状態で、被処理物にその間を通過させる方法である。
【0044】
上記コロナ放電処理、紫外線照射処理、オゾン処理及びプラズマ処理の諸条件は、その出力と通過時間等により決定されるが、特に制限はされない。尚、具体的には、以下の条件で行うことがより望ましい。
【0045】
コロナ放電処理の場合は、1分間の処理面積(放電電極の長さ(m)に対象となるフィルムの処理速度(m/分)を乗じたもの)当りの放電電力が15W以上であることが望ましい。
【0046】
1.4
光学透明粘着層(C)
本発明の光透過性導電性フィルムは、さらに必要に応じて、ぬれ張力が上記範囲内に調節されている面に、光学透明粘着層(C)が配置されていてもよい。
【0047】
本発明において、光学透明粘着層とは、光学透明性を有し、粘着性を備える層を意味する。特に限定されないが、通常、光学透明粘着剤(OCA)を表面に塗布することにより形成される層、あるいは、光学透明粘着フィルム(OCAフィルム)を表面に貼付することにより形成される。
【0048】
光学透明粘着層を構成する成分としては、特に限定されないが、アクリル系粘着剤、ウレタン粘着剤及びシリコーン粘着剤等が挙げられる。光学透明粘着層は、これらを単独で含有していてもよいし、複数種を含有していてもよい。
【0049】
これらの中でも、本発明の効果の点で、アクリル系粘着剤が特に好ましい。特に、PETを含有する光透過支持層(A)の表面に配置される光学透明粘着層(C)としては、アクリル系粘着剤を含有するものが好ましい。
【0050】
アクリル系粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、高透明両面テープセキスイ#5400シリーズ(積水化学工業社製)等が挙げられる。
【0051】
光学透明粘着層(C)の厚さは、特に限定されないが、通常、10〜200μmとすることができる。なお、厚さの下限は、好ましくは15μmであり、より好ましくは20μmである。厚さの上限は、好ましくは90μmであり、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは60μmである。また、必要に応じて、光学透明粘着層(C)の厚さは、50μm以下、40μm以下、あるいは30μm以下であってもよい。
【0052】
1.5
ハードコート層(D)
本発明の光透過性導電性フィルムは、さらに必要に応じてハードコート層(D)を有していてもよい。
【0053】
本発明においてハードコート層とは、プラスチック表面の傷つきを防止する役割を果たすものをいう。
【0054】
ハードコート層(D)は、前記光透過性支持層(A)の一方の面に、直接又は一以上の他の層を介して配置されている。
【0055】
ハードコート層(D)は、一層が配置されていてもよい。あるいは二層以上が互いに隣接して、または他の層を介して互いに離間して配置されていてもよい。
【0056】
ハードコート層(D)は、光透過性支持層(A)の両面に配置されていてもよい。
【0057】
ハードコート層(D)の素材は、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、
シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂及びアルキド系樹脂等が挙げられる。ハードコート層(D)の素材としては、さらに、シリカ、ジルコニア、チタニア及びアルミナ等のコロイド粒子等を上記樹脂中に分散させたものも挙げられる。ハードコート層(D)は、これらのうちいずれか単独からなるものであってもよいし、複数種からなるものであってもあってもよい。
【0058】
ハードコート層(D)の一層あたりの厚さは、特に限定されないが、例えば0.1〜10μm、1〜7μm、及び2〜6μm等が挙げられる。二層以上が互いに隣接して配置されている場合は互いに隣接している全てのハードコート層(D)の合計厚さが上記範囲内であればよい。左記の例示列挙においては後出のものが前出のものよりも好ましい。
【0059】
ハードコート層(D)の屈折率は、光透過性導電性フィルム(A)が、タッチパネル用途として使用できる限り特に限定されないが、例えば、1.4〜1.7等が挙げられる。
【0060】
ハードコート層(D)を配置する方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルムに塗布して、熱で硬化する方法、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する方法等が挙げられる。生産性の点で、紫外線により硬化する方法が好ましい。
【0061】
1.6
アンダーコート層(E)
本発明の光透過性導電性フィルムは、さらに、少なくとも一層のアンダーコート層(E)を含有していてもよい。
【0062】
光透過性導電層(B)は、アンダーコート層(E)に隣接して配置されていてもよい。
【0063】
アンダーコート層(E)の素材は、特に限定されないが、例えば、誘電性を有するものであってもよい。アンダーコート層(E)の素材としては、特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリコンアルコキシド、アルキルシロキサン及びその縮合物、ポリシロキサン、シルセスキオキサン、ポリシラザン及びアクリルシリカハイブリッド等が挙げられる。アンダーコート層(E)は、これらのうちいずれか単独からなるものであってもよいし、複数種からなるものであってもあってもよい。アンダーコート層(E)としては、ポリシラザン、アクリルシリカハイブリッド及びSiO
x(x=1.0〜2.0)からなる群より選択される1種を含む光透過性下地層が好ましい。
【0064】
アンダーコート層(E)は、一層が配置されていてもよい。あるいは二層以上が互いに隣接して、または他の層を介して互いに離間して配置されていてもよい。アンダーコート層(E)が二層以上互いに隣接して配置されているのが好ましい。このような態様の例としては、例えば、隣接するSiO
2層及びSiO
x層からなる積層(stacking)、及び隣接するSiO
2層及びSiO
xN
y層からなる積層が挙げられる。例えば二層が互いに隣接して配置されている場合、SiO
2層及びSiO
x層の順序は任意であるが、光透過性支持層(A)側にSiO
2からなる光透過性下地層(E−1)、光透過性導電層(B)側にSiO
x(x=1.0〜2.0)からなる光透過性下地層(E−2)を配置させるのが好ましい。
【0065】
アンダーコート層(E)の一層あたりの厚さとしては、特に限定されないが、例えば15〜25nm等が挙げられる。二層以上が互いに隣接して配置されている場合は互いに隣接している全てのアンダーコート層(E)の合計厚さが上記範囲内であればよい。
【0066】
アンダーコート層(E)の屈折率は、本発明の光透過性導電性フィルムがタッチパネル用光透過性導電性フィルムとして使用できる限り特に限定されないが、例えば、1.4〜1.5が好ましい。
【0067】
アンダーコート層(E)を配置するための方法としては、湿式及び乾式のいずれでもよく、特に限定されないが、湿式としては例えば、ゾル−ゲル法、又は微粒子分散液若しくはコロイド溶液を塗布する方法等が挙げられる。
【0068】
アンダーコート層(E)を配置する方法として、乾式としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法及びパルスレーザーデポジション法により隣接する層上に積層する方法等が挙げられる。
【0069】
1.7
その他の層
本発明の光透過性導電性フィルムは、光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に、光透過性導電層(B)に加えて、ハードコート層(D)、アンダーコート層(E)及びそれらと異なる少なくとも1種のその他の層(F)からなる群より選択される少なくとも1種の層がさらに配置されていてもよい。
【0070】
その他の層としては、特に限定されないが、例えば、接着層等が挙げられる。
【0071】
接着層とは、二層の間に当該二層と互いに隣接して配置され、当該二層間を互いに接着するために配置される層である。接着層としては、特に限定されないが、例えば、タッチパネル用光透過性導電性フィルムにおいて接着層として通常用いられるものを用いることができる。接着層は、これらのうちいずれか単独からなるものであってもよいし、複数種からなるものであってもあってもよい。
【0072】
1.8
本発明の光透過性導電性フィルムの用途
本発明の光透過性導電性フィルムは、タッチパネルの製造のために好ましく用いられる。
【0073】
抵抗膜方式タッチパネルの製造のために用いられる光透過性導電性フィルムは一般に表面抵抗率(シート抵抗)が250〜1,000Ω/sq程度は必要であるとされる。これに対して静電容量型タッチパネルの製造のために用いられる光透過性導電性フィルムは一般に表面抵抗率が低いほうが有利である。本発明の光透過性導電性フィルムは、抵抗率が低減されており、これにより、静電容量型タッチパネルの製造のために好ましく用いられる。静電容量型タッチパネルについて詳細は、2で説明する通りである。
【0074】
2.
本発明の静電容量型タッチパネル
本発明の静電容量型タッチパネルは、本発明の光透過性導電性フィルムを含み、さらに必要に応じてその他の部材を含んでなる。
【0075】
本発明の静電容量型タッチパネルの具体的な構成例としては、次のような構成が挙げられる。なお、保護層(1)側が操作画面側を、ガラス(5)側が操作画面とは反対側を向くようにして使用される。
(1)保護層
(2)本発明の光透過性導電性フィルム(Y軸方向)
(3)絶縁層
(4)本発明の光透過性導電性フィルム(X軸方向)
(5)ガラス
本発明の静電容量型タッチパネルは、特に限定されないが、例えば、上記(1)〜(5)、並びに必要に応じてその他の部材を通常の方法に従って組み合わせることにより製造することができる。
【0076】
3.
本発明の光透過性導電性フィルムの製造方法
本発明の光透過性導電性フィルムの製造方法において、それぞれの層を配置する工程は、それぞれの層について説明した通りである。
【0077】
本発明の光透過性導電性フィルムの製造方法は、光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に、光透過性導電層(B)に加えて、ハードコート層(D)、アンダーコート層(E)及びそれらと異なる少なくとも1種のその他の層(F)からなる群より選択される少なくとも1種の層をそれぞれ配置する工程をそれぞれ含んでいてもよい。
【0078】
例えば、光透過性支持層(A)の少なくとも一方の面に光透過性支持層(A)側から順次配置させてもよいが、配置の順番は特に限定されない。例えば、最初に光透過性支持層(A)ではない層の一方の面に他の層を配置させてもよい。あるいは、一方で2種以上の層を互いに隣接するように配置させることにより1種の複合層を得てから、又はそれと同時に、他方で同様に2種以上の層を互いに隣接するように配置させることにより1種の複合層を得て、これらの2種の複合層をさらに互いに隣接するように配置させてもよい。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
DCスパッタ法により、PETフィルム(厚さ50μm)上に光透過性導電層としてITO層(Sn含有量7wt%)を19nm堆積させた後、150℃で30分間アニールすることで光透過性導電性フィルムを得た。次いで、ぬれ張力の調整として大気圧プラズマ装置(積水化学工業株式会社製、「AP/TO2」、ダイレクト電極タイプ)にN
2ガスを処理ガスとして導入し、投入電力900W(140V−6.4A)でプラズマガスを発生させ、前記フィルムを20m/分の速度で搬送し、ITOを積層した反対面のプラズマ処理を行った。なお、プラズマ処理を行うスリット面積は200mm
2(光透過性導電性フィルムの幅方向に200mmかつ長さ方向に1mm)とした。得られた光透過性導電性フィルムの光透過性導電層を積層していない面のぬれ張力をJIS K 6768「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」に準じ、ぬれ張力試験用液(和光純薬製、ぬれ張力試験用混合液)を用いて測定した。ぬれ張力を測定した結果を表1に示す。
(耐久性評価)
光透過性導電性フィルムの光透過性導電層を積層していない面と板ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス)とを50μmの光学透明粘着層(積水化学製、#5400シリーズ)を介して貼りあわせた後、24時間静置してサンプルを得た。得られたサンプルを恒温恒湿器(エスペック社、ハイパワー恒温恒湿器ARシリーズ)で85℃、85%の条件で1000時間静置し、光学顕微鏡、並びに、目視によって表2に示す基準で気泡と白化について評価した。評価結果は表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
評価基準は表2の通りとした。
【0082】
【表2】
【0083】
[実施例2〜5]
プラズマ処理速度を表1に記載の通りに変えた以外は実施例1と同様にして本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
[実施例6]
光学透明粘着層の厚みを100μmに変更した以外は実施例1と同様にして本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
[実施例7〜10]
プラズマ処理速度を表1に記載の通りに変えた以外は実施例6と同様にして本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
[実施例11]
光学透明粘着層の厚みを22μmに変更した以外は実施例2と同様にして本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
[実施例12]
光学透明粘着層の厚みを22μmに変更した以外は実施例3と同様にして本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
[実施例13]
厚さ50μmのPETフィルムに、ぬれ張力の調整として大気圧プラズマ装置(積水化学工業株式会社製、「AP/TO2」、ダイレクト電極タイプ)にN
2:O
2=96:4の混合ガスを処理ガスとして導入し、投入電力900W(140V−6.4A)でプラズマガスを発生させ、前記フィルムを8m/分の速度で搬送し、ITOを積層した反対面のプラズマ処理を行った。なお、プラズマ処理を行うスリット面積は200mm
2(光透過性導電性フィルムの幅方向に200mmかつ長さ方向に1mm)とした。次いで、DCスパッタ法により、上記プラズマ処理後のPETフィルムに光透過性導電層としてITO層(Sn含有量7wt%)を19nm堆積させた後、150℃で30分間アニールすることで本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
[実施例14及び15]
光学透明粘着層の厚みを表1に記載の通りに変えた以外は実施例13と同様にして本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
[比較例1]
プラズマ処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
[比較例2]
光学透明粘着層の厚みを100μmに変更した以外は比較例1と同様にして本発明の光透過性導電性フィルムを得た。
【0084】
表1に示すように、光透過性導電性フィルムの光透過性導電層を積層していない面のぬれ張力を34dyn/cm以上にすることで光透過性導電性フィルムと光学透明粘着層の接着の耐久性が向上し、気泡の発生を抑制することができる。また、ぬれ張力を48dyn/cm以下にすることで、光透過性導電性フィルムの親水性を低減でき、光透過性導電性フィルムと光学透明粘着層の間への水の浸入を抑制できるため、端部の白化を抑制することができる。
【課題】(1)光透過性導電性フィルムにOCAを貼付してからベーク工程を行うと、OCAに気泡ボイドが発生してしまうという課題、並びに(2)光透過性導電性フィルムにOCAを貼付してからロール搬送を行うと、OCAフィルムが部分的に剥離し、光透過性導電性フィルムとの接着面にずれが生じることにより、光透過性導電性フィルムの端部からはみ出してしまうという課題を解決する。
前記光透過性導電層(B)が、前記光透過性支持層(A)の一方の面に、直接又は一以上の他の層を介して配置されており、かつ前記光透過性導電層(B)とは反対側の表面のぬれ張力が34dyn/cm以上であることを特徴とする、光透過性導電性フィルム。