特許第5906021号(P5906021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5906021
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/64 20060101AFI20160407BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20160407BHJP
   F16C 33/60 20060101ALI20160407BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   F16C33/64
   F16C19/18
   F16C33/60
   F16C33/32
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-83675(P2011-83675)
(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公開番号】特開2012-219855(P2012-219855A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0220180(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0010586(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0010583(US,A1)
【文献】 特開2010−159011(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/056445(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/059617(WO,A1)
【文献】 特表2009−525446(JP,A)
【文献】 特表2009−525448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/64
F16C 19/18
F16C 33/32
F16C 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された少なくとも一つの内輪からなる内方部材と、
この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備え、
前記複列の転動体のうちアウター側の転動体のピッチ円直径がインナー側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された車輪用軸受装置において、
前記外方部材が、前記ピッチ円直径の違いに伴い、外周面が、アウター側の外周面からナックルが外嵌されるインナー側の円筒状の外周面に向って軸方向に傾斜して延びる段差部を介して漸次小径に形成される第1の外周面と、前記インナー側の円筒状の外周面のアウター側の近傍に、径方向外方に突出する複数の取付部が形成され、その最外径面が前記外方部材のアウター側の外周面にテーパ状に繋がる第2の外周面とを備え、前記取付部に前記外方部材の端面と平行な取付面が形成され、この取付面に前記ナックルに固定ボルトを介して締結されるための袋孔状のねじ孔が形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記外方部材が、前記複列の外側転走面のうちアウター側の転走面から軸方向に傾斜して延びる段差部を介してインナー側の外側転走面が一体に形成され、前記複列の外側転走面にそれぞれ肩部が形成されると共に、これら肩部が所定の溝深さに形成され、少なくとも両肩部間の段差部が鍛造面に形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記ハブ輪が、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に傾斜して延びる段差部を介して前記小径段部が形成され、前記段差部が鍛造面に形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記外方部材の複列の外側転走面に所定の硬化層が形成されると共に、前記段差部が非硬化部で、当該複列の外側転走面の硬化が非連続とされている請求項2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記複列の転動体列のうちアウター側の転動体列が2列の転動体列とされ、これら2列の転動体列のうち外側の転動体列のピッチ円直径が内側の転動体列のピッチ円直径よりも大径に設定されると共に、この内側の転動体列のピッチ円直径が前記インナー側の転動体列のピッチ円直径よりも大径に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記転動体の接触角が同一に設定されると共に、前記アウター側の2列の転動体の外径が同一に設定され、前記インナー側の転動体の外径よりも小径に設定されている請求項に記載の車輪用軸受装置。
【請求項7】
前記アウター側の2列の転動体列のうち外側の転動体列の転動体個数が、内側の転動体列の転動体個数よりも多く設定されると共に、この内側の転動体列の転動体個数が、前記インナー側の転動体列の転動体個数よりも多く設定されている請求項5または6に記載の車輪用軸受装置。
【請求項8】
前記複列の転動体列のうちインナー側の転動体列が2列の転動体列とされ、これら2列の転動体列のうち外側の転動体列のピッチ円直径が内側の転動体列のピッチ円直径よりも大径に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項9】
前記転動体の接触角が同一に設定されると共に、前記インナー側の2列の転動体の外径が同一に設定され、前記アウター側の転動体の外径よりも小径に設定されている請求項に記載の車輪用軸受装置。
【請求項10】
前記インナー側の2列の転動体列のうち外側の転動体列の転動体個数が、内側の転動体列の転動体個数よりも多く設定されている請求項8または9に記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、軽量・コンパクト化を図ると共に、軸受剛性を増大させ、軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるためのハブ輪を転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式が、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。この車輪用軸受装置には、所望の軸受剛性を有し、ミスアライメントに対しても耐久性を発揮すると共に、燃費向上の観点から回転トルクが小さい複列アンギュラ玉軸受が多用されている。この複列アンギュラ玉軸受は、固定輪と回転輪との間に複数のボールを介在させ、このボールに所定の接触角を付与して固定輪および回転輪に接触させている。
【0003】
また、車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第1世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第2世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第3世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第4世代構造とに大別されている。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図6の左側)、中央寄り側をインナー側(図6の右側)という。
【0004】
こうした複列の転がり軸受で構成された車輪用軸受装置において、従来は左右両列の軸受が同一仕様のため、静止時には充分な剛性を有するが、車両の旋回時には必ずしも最適な剛性が得られていない。すなわち、静止時の車重は複列の転がり軸受の略中央に作用するように車輪との位置関係が決められているが、旋回時には、旋回方向の反対側(右旋回の場合は車両の左側)の車軸に、より大きなラジアル荷重やアキシアル荷重が負荷される。したがって、旋回時には、インナー側の軸受列よりもアウター側の軸受列の剛性を高めることが有効とされている。そこで、装置を大型化させることなく高剛性化を図った車輪用軸受装置として、図6に示すものが知られている。
【0005】
この車輪用軸受装置50は、外周にナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ51cを一体に有し、内周に複列の外側転走面51a、51bが形成された外方部材51と、一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ53を一体に有し、外周に複列の外側転走面51a、51bに対向する一方の内側転走面52aと、この内側転走面52aから軸方向に延びる小径段部52bが形成されたハブ輪52、およびこのハブ輪52の小径段部52bに外嵌され、複列の外側転走面51a、51bに対向する他方の内側転走面54aが形成された内輪54からなる内方部材55と、これら両転走面間に収容された複列のボール56、57と、これら複列のボール56、57を転動自在に保持する保持器58、59とを備えた複列アンギュラ玉軸受で構成されている。
【0006】
内輪54は、ハブ輪52の小径段部52bを径方向外方に塑性変形させて形成した加締部52cによって軸方向に固定されている。そして、外方部材51と内方部材55との間に形成される環状空間の開口部にシール60、61が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
【0007】
ここで、アウター側のボール56のピッチ円直径D1が、インナー側のボール57のピッチ円直径D2よりも大径に設定されている。これに伴い、ハブ輪52の内側転走面52aが内輪54の内側転走面54aよりも拡径され、あわせて外方部材51のアウター側の外側転走面51aがインナー側の外側転走面51bよりも拡径されている。そして、アウター側のボール56がインナー側のボール57よりも多数収容されている。このように、各ピッチ円直径D1、D2をD1>D2に設定することにより、車両の静止時だけでなく旋回時においても剛性が向上し、車輪用軸受装置50の長寿命化を図ることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−108449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうした車輪用軸受装置50において、外方部材51は鍛造加工によって成形されるが、車体取付フランジ51cよりアウター側の部分については、型抜きの面から、アウター側に向って小径化するのが一般的である。この場合、軸受剛性アップや長寿命化のためにアウター側のボール56列のピッチ円直径D1を拡大するには一定の制限があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量・コンパクト化を図ると共に、軸受剛性を増大させ、軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された少なくとも一つの内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備え、前記複列の転動体のうちアウター側の転動体のピッチ円直径がインナー側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された車輪用軸受装置において、前記外方部材が、前記ピッチ円直径の違いに伴い、外周面が、アウター側の外周面からナックルが外嵌されるインナー側の円筒状の外周面に向って軸方向に傾斜して延びる段差部を介して漸次小径に形成される第1の外周面と、前記インナー側の円筒状の外周面のアウター側の近傍に、径方向外方に突出する複数の取付部が形成され、その最外径面が前記外方部材のアウター側の外周面にテーパ状に繋がる第2の外周面とを備え、前記取付部に前記外方部材の端面と平行な取付面が形成され、この取付面に前記ナックルに固定ボルトを介して締結されるための袋孔状のねじ孔が形成されている。
【0012】
このように、複列の転動体のうちアウター側の転動体のピッチ円直径がインナー側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された第2または第3世代構造の車輪用軸受装置において、外方部材が、ピッチ円直径の違いに伴い、外周面が、アウター側の外周面からナックルが外嵌されるインナー側の円筒状の外周面に向って軸方向に傾斜して延びる段差部を介して漸次小径に形成される第1の外周面と、インナー側の円筒状の外周面のアウター側の近傍に、径方向外方に突出する複数の取付部が形成され、その最外径面が外方部材のアウター側の外周面にテーパ状に繋がる第2の外周面とを備え、取付部に外方部材の端面と平行な取付面が形成され、この取付面にナックルに固定ボルトを介して締結されるための袋孔状のねじ孔が形成されているので、軽量・コンパクト化を図ると共に、軸受剛性を増大させ、軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【0013】
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記外方部材が、前記複列の外側転走面のうちアウター側の転走面から軸方向に傾斜して延びる段差部を介してインナー側の外側転走面が一体に形成され、前記複列の外側転走面にそれぞれ肩部が形成されると共に、これら肩部が所定の溝深さに形成され、少なくとも両肩部間の段差部が鍛造面に形成されていれば、外側転走面の溝深さが厳しく規制され、肩乗り上げによってエッジロードが発生するのが防止できると共に、旋削加工によって削除される部位を可及的に減少せしめてマテリアルロスの削減ができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、前記ハブ輪が、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に傾斜して延びる段差部を介して前記小径段部が形成され、前記段差部が鍛造面に形成されていれば、旋削加工によって削除される部位を可及的に減少せしめてマテリアルロスの削減ができ、低コスト化を図ることができる。
【0016】
また、請求項に記載の発明のように、前記外方部材の複列の外側転走面に所定の硬化層が形成されると共に、前記段差部が非硬化部で、当該複列の外側転走面の硬化が非連続とされていれば、列間の薄肉化を達成することができると共に、取付面のねじ孔の加工をし易くすることができる。
【0017】
また、請求項に記載の発明のように、前記複列の転動体列のうちアウター側の転動体列が2列の転動体列とされ、これら2列の転動体列のうち外側の転動体列のピッチ円直径が内側の転動体列のピッチ円直径よりも大径に設定されると共に、この内側の転動体列のピッチ円直径が前記インナー側の転動体列のピッチ円直径よりも大径に設定されていれば、高負荷容量化を図って軸受の長寿命化を達成することができる。
【0018】
また、請求項に記載の発明のように、前記転動体の接触角が同一に設定されると共に、前記アウター側の2列の転動体の外径が同一に設定され、前記インナー側の転動体の外径よりも小径に設定されていても良い。
【0019】
また、請求項に記載の発明のように、前記アウター側の2列の転動体列のうち外側の転動体列の転動体個数が、内側の転動体列の転動体個数よりも多く設定されると共に、この内側の転動体列の転動体個数が、前記インナー側の転動体列の転動体個数よりも多く設定されていれば、高負荷容量化を図って軸受の長寿命化を達成すると共に、軽量・コンパクト化を図ることができる。
【0020】
また、請求項に記載の発明のように、前記複列の転動体列のうちインナー側の転動体列が2列の転動体列とされ、これら2列の転動体列のうち外側の転動体列のピッチ円直径が内側の転動体列のピッチ円直径よりも大径に設定されていれば、高負荷容量化を図って軸受の長寿命化を達成することができる。
【0021】
また、請求項に記載の発明のように、前記転動体の接触角が同一に設定されると共に、前記インナー側の2列の転動体の外径が同一に設定され、前記アウター側の転動体の外径よりも小径に設定されていても良い。
【0022】
また、請求項10に記載の発明のように、前記インナー側の2列の転動体列のうち外側の転動体列の転動体個数が、内側の転動体列の転動体個数よりも多く設定されていれば、高負荷容量化を図って軸受の長寿命化を達成すると共に、軽量・コンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された少なくとも一つの内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備え、前記複列の転動体のうちアウター側の転動体のピッチ円直径がインナー側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された車輪用軸受装置において、前記外方部材が、前記ピッチ円直径の違いに伴い、外周面が、アウター側の円筒状の外周面からナックルが外嵌されるインナー側の円筒状の外周面に向って軸方向に傾斜して延びる段差部を介して漸次小径に形成される第1の外周面と、前記インナー側の円筒状の外周面のアウター側の近傍に、径方向外方に突出する複数の取付部が形成され、その最外径面が前記外方部材のアウター側の外周面にテーパ状に繋がる第2の外周面とを備え、前記取付部に前記外方部材の端面と平行な取付面が形成され、この取付面に前記ナックルに固定ボルトを介して締結されるための袋孔状のねじ孔が形成されているので、軽量・コンパクト化を図ると共に、軸受剛性を増大させ、軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。
図2図1の車輪用軸受装置の側面図である。
図3図1の車輪用軸受装置の外方部材単体を示す縦断面図である。
図4】本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。
図5】本発明に係る車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。
図6】従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に傾斜して延びる段差部を介して小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備え、前記複列の転動体のうちアウター側の転動体のピッチ円直径がインナー側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された車輪用軸受装置において、前記外方部材の複列の外側転走面のうちアウター側の転走面から軸方向に傾斜して延びる段差部を介してインナー側の外側転走面が一体に形成され、前記段差部が旋削加工されずに鍛造肌のままとされていると共に、前記外方部材が、前記ピッチ円直径の違いに伴い、外周面が、アウター側の外周面からインナー側の外周面に向って漸次小径に形成され、このインナー側の外周面から径方向外方に突出して複数の取付部が形成されると共に、この取付部に前記外方部材の端面と平行な取付面が形成され、この取付面に前記ナックルに固定ボルトを介して締結されるためのねじ孔が形成されている。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の車輪用軸受装置の側面図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0027】
この車輪用軸受装置は第3世代と呼称される従動輪用であって、内方部材1と外方部材2、および両部材1、2間に転動自在に収容された複列の転動体(ボール)3、3とを備えている。内方部材1は、ハブ輪4と、このハブ輪4に所定のシメシロを介して圧入された内輪5とからなる。
【0028】
ハブ輪4は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ6を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に傾斜して延びる段差部7を介して小径段部4bが形成されている。車輪取付フランジ6にはハブボルト6aが周方向等配に植設されている。
【0029】
内輪5は、外周に他方(インナー側)の内側転走面5aが形成され、ハブ輪4の小径段部4bに圧入されて背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受を構成すると共に、小径段部4bの端部を塑性変形させて形成した加締部8によって内輪5が軸方向に固定されている。なお、内輪5および転動体3はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0030】
ハブ輪4はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼で形成され、内側転走面4aをはじめ、車輪取付フランジ6のインナー側の基部6bから小径段部4bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、加締部8は鍛造加工後の表面硬さのままとされている。これにより、車輪取付フランジ6に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、内輪5の嵌合部となる小径段部4bの耐フレッティング性が向上すると共に、微小なクラック等の発生がなく加締部8の塑性加工をスムーズに行うことができる。
【0031】
ここで、ハブ輪4は、素材となるバー材から鍛造加工により形成され、アウター側のシール12のランド部となる基部6bをはじめ、内側転走面4aと肩部7a、および小径段部4bが旋削加工によって所定の寸法に形成されると共に、段差部7が所定の傾斜角からなるテーパ面で形成されている。すなわち、この段差部7は旋削加工されずに鍛造肌のままとされている。これにより、内側転走面4aの溝深さが厳しく規制され、肩乗り上げによってエッジロードが発生するのが防止できると共に、旋削加工によって削除される部位を可及的に減少せしめてマテリアルロスの削減ができ、低コスト化を図ることができる。
【0032】
ハブ輪4は、旋削加工後に高周波焼入れによって硬化処理が施されるが、好ましくは、研削加工の前に、段差部7がショットブラスト加工によってスケールが除去されれば、鍛造肌のままの段差部7の表面に付着したスケールが除去されると共に、それぞれの角部のバリ等も同時に除去されて滑らかに丸められ、スケールの脱落に起因する運転時の異音、異常振動、回転不調を確実に防止し、製品品質の向上を図ることができる。また、段差部7の表面に圧縮残留応力が形成され、ハブ輪4に負荷されるモーメント荷重等に対して強度・耐久性を向上させることができる。
【0033】
外方部材2は、外周にナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジはなく、後述する取付面2cを有し、内周にハブ輪4の内側転走面4aに対向するアウター側の外側転走面2aと、この外側転走面2aから軸方向に傾斜して延びる段差部11を介して内輪5の内側転走面5aに対向するインナー側の外側転走面2bが一体に形成されている。これら両転走面間に複列の転動体3、3が収容され、保持器9、10によって転動自在に保持されている。
【0034】
この外方部材2はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼で形成され、複列の外側転走面2a、2bが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。そして、外方部材2と内方部材1との間に形成される環状空間の開口部にはシール12、13が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。なお、ここでは、転動体3にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず、転動体3に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受で構成されていても良い。
【0035】
本実施形態では、アウター側の転動体3のピッチ円直径PCDoがインナー側の転動体3のピッチ円直径PCDiよりも大径に設定されている。そして、複列の転動体3、3のサイズは同じであるが、このピッチ円直径PCDo、PCDiの違いにより、アウター側の転動体3の個数がインナー側の転動体3の個数よりも多く設定されている。
【0036】
ハブ輪4の外郭形状は、内側転走面4aの溝底部から段差部7と、内輪5が突き合わされる肩部7aを介して小径段部4bに続いている。また、ハブ輪4のアウター側の端部にはすり鉢状の凹所14が形成されている。この凹所14の深さは内側転走面4aの溝底を越えて肩部7a付近までの深さとされ、ハブ輪4のアウター側の端部が略均一な肉厚となっている。また、ピッチ円直径PCDo、PCDiの違いに伴い、ハブ輪4の内側転走面4aは内輪5の内側転走面5aよりも拡径して形成されている。
【0037】
一方、外方部材2において、図3に示すように、ピッチ円直径PCDo、PCDiの違いに伴い、アウター側の外側転走面2aがインナー側の外側転走面2bよりも拡径して形成され、アウター側の外側転走面2aの肩部15から段差部11を介して小径側の肩部16に続き、インナー側の外側転走面2bに到っている。
【0038】
ここで、外方部材2は、素材となるバー材から鍛造加工により形成され、両端面をはじめ、ナックル(図示せず)が外嵌されるインナー側の外周面BBと、シールが装着されるシール嵌合面19、20と、複列の外側転走面2a、2bと、大径側の肩部15と小径側の肩部16が所定の旋削取代を残した状態で鍛造加工されている。
【0039】
大径側の肩部15と小径側の肩部16が旋削加工によって所定の溝深さに形成されると共に、両肩部15、16間の段差部11が所定の傾斜角からなるテーパ面で形成されている。すなわち、この段差部11は旋削加工されずに鍛造肌のままとされている。これにより、外側転走面2a、2bの溝深さが厳しく規制され、肩乗り上げによってエッジロードが発生するのが防止できると共に、旋削加工によって削除される部位を可及的に減少せしめてマテリアルロスの削減ができ、低コスト化を図ることができる。
【0040】
外方部材2が旋削加工後に高周波焼入れによって硬化処理が施されるが、複列の外側転走面2a、2b間の段差部11が硬化処理されず、それぞれの外側転走面2a、2bの硬化処理が非連続とされている。これにより、列間の薄肉化を達成することができると共に、取付面2cのねじ孔18の加工をし易くすることができる。
【0041】
さらに、好ましくは、研削加工の前に、段差部11がショットブラスト加工によってスケールが除去されれば、段差部11の表面に付着したスケールが除去されると共に、それぞれの角部のバリ等も同時に除去されて滑らかに丸められ、スケールの脱落に起因する運転時の異音、異常振動、回転不調を確実に防止し、製品品質の向上を図ることができる。また、段差部11の表面に圧縮残留応力が形成され、強度・耐久性を向上させることができる。
【0042】
こうした車輪用軸受装置において、アウター側の転動体3のピッチ円直径PCDoをインナー側の転動体3のピッチ円直径PCDiよりも大径(PCDo>PCDi)に設定され、その分、外径dは同一であるが、転動体3の個数がアウター側の個数Zoがインナー側の個数Ziよりも多く(Zo>Zi)設定されているため、有効に軸受スペースを活用してインナー側に比べアウター側部分の軸受剛性を増大させることができ、軸受の長寿命化を図ることができる。さらに、ハブ輪4のアウター側端部に凹所14が外郭形状に沿って形成され、ハブ輪4のアウター側が均一な肉厚に設定されているので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決することができる。
【0043】
ここで、本実施形態では、ピッチ円直径PCDo、PCDiの違いに伴い、外方部材2の外周面が、アウター側の円筒状の外周面AAからインナー側の円筒状の外周面BBに向って漸次小径に形成されている。そして、インナー側の外周面BBの近傍に、周方向等配に複数(ここでは、4箇所)の取付部17が形成され、この取付部17に外方部材2の端面と平行な取付面2cが形成されている。取付部17は、図2に示すように、インナー側の外周面BBから径方向外方に突出して形成され、取付面2cには軸方向に延びるねじ孔18が形成されている。図示しないナックルは、インナー側の外周面BBに嵌合されると共に、この取付面2cに接合され、固定ボルト(図示せず)を介して外方部材2がナックルに締結される。
【0044】
このように、本発明では、外方部材2の外周面が、ナックルに締結される車体取付フランジを有せず、アウター側からインナー側に向って漸次小径に形成されると共に、インナー側の端部に径方向外方に延びる取付部17を有し、この取付部17に取付面2cが形成され、ねじ孔18に螺着される固定ボルトによって外方部材2がナックルに締結されているので、軽量・コンパクト化を図ると共に、軸受剛性を増大させ、軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【実施例2】
【0045】
図4は、本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。なお、この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態(図1)と、基本的にはアウター側の転動体列が複列で構成されている点が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
この車輪用軸受装置は従動輪用の第3世代と呼称され、内方部材21と外方部材22、および両部材21、22間に転動自在に収容された3列の転動体(ボール)3a、3b、3列とを備えている。内方部材21は、ハブ輪23と、このハブ輪23に所定のシメシロを介して圧入された内輪5とからなる。
【0047】
ハブ輪4は、アウター側の端部に車輪取付フランジ6を一体に有し、外周に一方(アウター側)の複列の内側転走面23a、23bと、これらの複列の内側転走面23a、23bから軸方向に傾斜して延びる段差部7を介して小径段部4bが形成されている。
【0048】
内輪5は、外周に他方(インナー側)の内側転走面5aが形成され、ハブ輪23の小径段部4bに圧入されて背面合せタイプの3列アンギュラ玉軸受を構成すると共に、小径段部4bの端部を塑性変形させて形成した加締部8によって所定の軸受予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。
【0049】
ハブ輪23はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面23a、23bをはじめ、車輪取付フランジ6のインナー側の基部6bから小径段部4bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0050】
外方部材22は、前述した実施形態と同様、外周にナックル(図示せず)に取り付けられる取付面2cを有し、内周にハブ輪23の内側転走面23a、23bに対向するアウター側の複列の外側転走面22a、22bと、これら複列の外側転走面22a、22bから軸方向に傾斜して延びる段差部11を介して内輪5の内側転走面5aに対向するインナー側の外側転走面2bが一体に形成されている。これら各転走面間に3列の転動体3a、3b、3が収容され、保持器24、10によって転動自在に保持されている。
【0051】
外方部材22はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、3列の外側転走面22a、22b、2bが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0052】
ここで、本実施形態では、アウター側の複列の転動体3a、3b列のうち外側の転動体3a列のピッチ円直径PCDoaが内側の転動体3b列のピッチ円直径PCDobよりも大径(PCDoa>PCDob)に設定されると共に、これらアウター側の複列の転動体3a、3b列のピッチ円直径PCDoa、PCDobがインナー側の転動体3列のピッチ円直径PCDiよりも大径(PCDoa>PCDob>PCDi)に設定されている。また、アウター側の複列の転動体3a、3bの外径d1が同一に設定されると共に、インナー側の転動体3の外径dよりも小径(d1<d)に設定されている。
【0053】
また、3列の転動体3a、3b、3の接触角が同一に設定されると共に、転動体3a列の転動体個数Zaが、転動体3b列の転動体個数Zbよりも多く(Za>Zb)、さらには、転動体3b列の転動体個数Zbが、転動体3列の転動体個数Zよりも多く(Zb>Zi)に設定されている。これにより、高負荷容量化を図って軸受の長寿命化を達成すると共に、軽量・コンパクト化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【0054】
また、保持器24はPA(ポリアミド)66からなる熱可塑性の合成樹脂から射出成形によって形成され、さらに、GF(ガラスファイバー)からなる繊維状強化材が10〜50wt%添加されている。これにより、強度・剛性が高くなり、回転角速度のズレが生じても損傷することなく長期間に亘って耐久性を向上させることができる。なお、保持器24はこのような材質以外に、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、PA6・12等の射出成形可能な合成樹脂を例示することができる。また、繊維状強化材としては、GFに限らず、これ以外に、CF(炭素繊維)やアラミド繊維、ホウ素繊維等を例示することができる。
【0055】
ここで、保持器9aは一体の冠型で構成され、転動体3a、3bを保持するポケットのすきまが従来の一般的なスナップオンタイプのすきま0.15〜0.30mmの2倍、すなわち、0.30〜0.60mmの範囲に設定されている。これにより、回転角速度のズレが生じても損傷することなく一層耐久性を向上させることができる。
【実施例3】
【0056】
図5は、本発明に係る車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。なお、この第3の実施形態は、前述した第1の実施形態(図1)と、基本的にはインナー側の転動体列が複列で構成されている点が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
この車輪用軸受装置は従動輪用の第3世代と呼称され、内方部材25と外方部材26、および両部材25、26間に転動自在に収容された3列の転動体(ボール)3、3c、3d列とを備えている。内方部材25は、ハブ輪27と、このハブ輪27に所定のシメシロを介して圧入された内輪28とからなる。
【0058】
ハブ輪27は、アウター側の端部に車輪取付フランジ6を一体に有し、外周に一方(アウター側)の複列の内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に傾斜して延びる段差部7を介して小径段部4bが形成されている。
【0059】
内輪28は、外周に他方(インナー側)の複列の内側転走面28a、28bが形成され、ハブ輪27の小径段部4bに圧入されて背面合せタイプの3列アンギュラ玉軸受を構成すると共に、小径段部4bの端部を塑性変形させて形成した加締部8によって所定の軸受予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。
【0060】
ハブ輪27はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面4aをはじめ、車輪取付フランジ6のインナー側の基部6bから小径段部4bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0061】
外方部材26は、前述した実施形態と同様、外周にナックル(図示せず)に取り付けられる取付面2cを有し、内周にハブ輪27の内側転走面4aに対向するアウター側の外側転走面2aと、この外側転走面2aから軸方向に傾斜して延びる段差部11を介して内輪28の複列の内側転走面28a、28bに対向するインナー側の複列の外側転走面26a、26bが一体に形成されている。これら各転走面間に3列の転動体3、3c、3dが収容され、保持器9、29によって転動自在に保持されている。
【0062】
外方部材26はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、3列の外側転走面2a、26a、26bが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0063】
ここで、本実施形態では、インナー側の複列の転動体3c、3d列のうち外側の転動体3d列のピッチ円直径PCDodが内側の転動体3c列のピッチ円直径PCDocよりも大径(PCDod>PCDoc)に設定されると共に、アウター側の転動体3列のピッチ円直径PCDoが、これらインナー側の複列の転動体3c、3d列のピッチ円直径PCDoc、PCDodよりも大径(PCDo>PCDic>PCDid)に設定されている。また、インナー側の複列の転動体3c、3dの外径d2が同一に設定されると共に、アウター側の転動体3の外径dよりも小径(d2<d)に設定されている。
【0064】
また、3列の転動体3、3c、3dの接触角が同一に設定されるとともに、インナー側の複列の転動体3c、3dのうち外側の転動体3d列の転動体個数Zdが、内側の転動体3c列の転動体個数Zcよりも多く(Zd>Zc)設定されている。これにより、高負荷容量化を図って軸受の長寿命化を達成すると共に、軽量・コンパクト化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
【0065】
また、保持器29はPA66からなる熱可塑性の合成樹脂から射出成形によって形成され、さらに、CFからなる繊維状強化材が5〜30wt%添加されている。これにより、強度・剛性が高くなり、回転角速度のズレが生じても損傷することなく長期間に亘って耐久性を向上させることができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る車輪用軸受装置は、従動輪用の第2または第3世代構造の車輪用軸受装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1、21、25 内方部材
2、22、26 外方部材
2a、2b、22a、22b、26a、26b 外側転走面
2c 取付面
3、3a、3b、3c、3d 転動体
4、23、27 ハブ輪
4a、5a、23a、23b、28a、28b 内側転走面
4b 小径段部
5、28 内輪
6 車輪取付フランジ
6a ハブボルト
6b 基部
7、11 段差部
7a 肩部
8 加締部
9、10、24、29 保持器
12 アウター側のシール
13 インナー側のシール
14 凹所
15 大径側の肩部
16 小径側の肩部
17 取付部
18 ねじ孔
19、20 シール嵌合面
50 車輪用軸受装置
51 外方部材
51a アウター側の外側転走面
51b インナー側の外側転走面
51c 車体取付フランジ
52 ハブ輪
52a、54a 内側転走面
52b 小径段部
52c 加締部
53 車輪取付フランジ
54 内輪
55 内方部材
56、57 ボール
58、59 保持器
60、61 シール
62 グリース封入治具
62a、62b ノズル
AA 外方部材のアウター側の外周面
BB 外方部材のインナー側の外周面
d、d1、d2 転動体の外径
D1 アウター側のボールのピッチ円直径
D2 インナー側のボールのピッチ円直径
PCDi、PCDic、PCDid インナー側のボールのピッチ円直径
PCDo、PCDoa、PCDob アウター側のボールのピッチ円直径
Zc、Zd、Zi インナー側の転動体の個数
Za、Zb、Zo アウター側の転動体の個数
図1
図2
図3
図4
図5
図6