(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係るコンテナ用メンテナンス台車1は、
図1に示すように、走行フレーム10と、支持部材20と、回転フレーム30と、回転制御機構40と、スライド装置50とを備えている。
本実施形態では、フレーム付きのタンクであるタンクコンテナ(以下、単に「コンテナ2」という)がメンテナンス台車1に取り付けられている場合について説明するが、メンテナンス台車1に取り付けられるコンテナは、タンクコンテナに限定されるものではない。
【0016】
走行フレーム10は、鋼製部材を枠状に組み合わせることにより版状に構成されたフレーム本体11を主体に構成されていて、フレーム本体11には、支持部材20、回転フレーム30、回転制御機構40やスライド装置50等を上載している。
フレーム本体11を構成する材料は限定されるものではないが、例えば、形鋼を組み合わせることにより構成すればよい。
【0017】
走行フレーム10は、格納式の車輪12,12を備えており、牽引車により牽引することで、所定の位置に移動可能に構成されている。本実施形態の走行フレーム10は、前後左右4箇所に車輪12が配置されている。なお、車輪12の数は限定されるものではない。
【0018】
車輪12は、車輪昇降用ジャッキ13により、昇降可能に配設されている。
車輪昇降用ジャッキ13は、
図2の(a)および(b)に示すように、下端部に車輪12が回転可能に取り付けられているとともに、上端部が走行フレーム10のフレーム本体11に固定されたジャッキ用ボックス14の頂版14aに固定されている。
【0019】
ジャッキ用ボックス14は、頂版14aと側壁14b,14bとを備えて構成されており、内部に配設された車輪昇降用ジャッキ13の操作が可能となるように、1つの側面(コンテナ用メンテナンス台車1の外側に面する面)が開口している。
ジャッキ用ボックス14は、側壁14b,14bが、フレーム本体11に固定されている。
【0020】
車輪昇降用ジャッキ13を伸長させると、
図2の(a)に示すように、ジャッキ用ボックス14を押し上げるため、走行フレーム10全体が上昇し、車輪12が露出する。これにより、走行フレーム10の走行が可能となる。
一方、車輪昇降用ジャッキ13を収縮させると、
図2の(b)に示すように、ジャッキ用ボックス14が下降するため、走行フレーム10全体が下降して、車輪12が格納される。これにより、走行フレーム10が接地して、走行フレーム10の移動が不能となる。
【0021】
本実施形態の車輪昇降用ジャッキ13は、ジャッキハンドル13aを備えており、このジャッキハンドル13aを操作することで昇降する。
なお、車輪昇降用ジャッキ13の操作手段は限定されるものではない。また、車輪昇降用ジャッキ13の構成および走行フレーム10への取り付け構造は限定されない。
【0022】
フレーム本体11には、車止め12aが設置されており、必要に応じて車輪12の回転を制御することが可能に構成されている。なお、車止め12aは、必要に応じて設置すればよく、省略してもよい。
【0023】
走行フレーム10には、
図1に示すように、牽引車T(
図7参照)を取り付けるための牽引治具用ブラケット15を、少なくとも前端部または後端部に備えている。
牽引治具用ブラケット15の構成は限定されるものではなく、牽引治具の構成に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
本実施形態の走行フレーム10の前後には、コンテナ2を取り付ける際の作業員の作業台としての足場16と、その昇降用はしご17が配設されている。
足場16は、支持部材20の上方に横架されている。
【0025】
走行フレーム10には、
図1に示すように、一対の支持部材20,20が上載されている。
支持部材20は、互いに対峙するように、走行フレーム10の前後に配設されている。
【0026】
支持部材20は、回転フレーム30をコンテナ2の軸心を中心として回転可能に支持している。具体的には、回転フレーム30の中心部に突設された、軸部材31を軸受け21,21により回転可能に保持している。
【0027】
前方の支持部材20(
図1において左側に配設された支持部材20)には、回転制御機構40が配設されている。
【0028】
回転制御機構40は、
図3の(a)に示すように、前方の支持部材20に配設されていて、前方の回転フレーム30に回転力を付与する。
【0029】
本実施形態では、回転制御機構40として、ギアタイプのものを採用する。
回転制御機構40は、モータ41の回転力により回転軸42が回転することで、回転軸42に固定されたギア43と噛み合う回転フレーム30に固定されたギア34が回転するため、コンテナ2を回転させることができる(
図1参照)。
【0030】
なお、回転制御機構40の構成はギアタイプに限定されるものではなく、例えばローラーチェーンとスプロケットを備えたチェーンタイプのものであってもよいし、回転ベルトとスプロケットを備えたベルトタイプのものであってもよい。
【0031】
回転制御機構40は、
図3の(a)に示すように、複数のピン挿入孔が形成された回転制御板44を備えており、ピン挿入孔にピンを挿入することで、回転フレーム30の回転が固定されるように構成されている。なお、回転フレーム30の回転の固定方法は限定されるものではない。
【0032】
本実施形態では、走行フレーム10に回転制御機構40を操作するための制御盤41が設置されている。回転制御機構40は、制御盤41の操作により、回転フレーム30に正転および逆転の回転力を付与する。
なお、制御盤41の配置は限定されるものではない。
【0033】
図1に示すように、後方(
図1において右側)の支持部材20は、スライド装置50を介して走行フレーム10に設置されている。
スライド装置50は、支持部材20を前後方向への摺動が可能に支持している。
【0034】
スライド装置50は、
図4に示すように、架台51と、レール52と、スライド部材53と、ハンドル54とを備えている。
【0035】
架台51は、鋼材を組み合わせることにより形成されていて、走行フレーム10の端部に固定されている。
【0036】
レール52は、架台51により支持されている。
スライド部材53は、レール52上をスライド可能に構成されているとともに、支持部材20を支持している。
【0037】
ハンドル54は、支持部材20に固定されたフランジ付きナット55に螺着されたネジ棒56に固定されており、ハンドル54を操作することにより、ネジ棒56が回転する。
ネジ棒56が回転することで、スライド部材53がレール52上を前後に摺動するため、支持部材20の位置の調整が行われる。
【0038】
回転フレーム30,30は、
図1に示すように、走行フレーム10に配設された一対の支持部材20,20にそれぞれ支持されていて、互いに対峙するように配設されている。
回転フレーム30は、コンテナ2の前端部または後端部を固定することで、コンテナ2を支持する。
【0039】
回転フレーム30は、軸部材31を介して支持部材20に保持されているとともに、この軸部材31を中心に回転する。軸部材31は、走行フレーム10の軸方向に沿って配設されているため、回転フレーム30は、走行フレーム10の軸方向と直交する方向に回転する。
【0040】
回転フレーム30は、矩形状に形成されており、その四隅には、コンテナの角部と嵌合する固定金具32,33が設けられている。
【0041】
上部に設けられた上固定金具32は、
図5の(a)および(b)に示すように、断面L字状に形成された固定板32aが、固定フレーム30に固定された軸材32bを中心に回転可能に構成された、いわゆる蝶番である。
【0042】
上固定金具32は、
図5の(b)に示すように、コンテナ2を配置する際は、固定板32aを開放した状態とすることで、回転フレーム30,30間へのコンテナ2の挿入が可能となる。
【0043】
コンテナ2を所定の位置に配置したら、固定板32aを閉じた状態で、固定ねじ32cで固定する。このとき、固定板32aは、コンテナ2の角部に当接する。
さらに、押ボルト32dによりコンテナ2の角部を固定する。押しボルト32dは、固定板32aを貫通して、先端がコンテナ2に当接することで、コンテナ2を固定する。
【0044】
なお、固定板32aの固定方法は限定されるものではない。また、押ボルト32dは必要に応じて配設すればよく、省略してもよい。
【0045】
下部に設けられた下固定金具33は、
図6の(a)および(b)に示すように、断面L字状に形成された鋼材であって、回転フレーム30のコンテナ2側端面に一体に固定されている。
【0046】
下固定金具33は、底部33aと縦部33bとを備えている。底部33aは、コンテナ2の角部を載置することが可能に構成された部分である。
【0047】
縦部33bは、コンテナ2の角部の側面に当接し、コンテナ2の横方向への移動を防止する。縦部33bは、上部が外方向に広がっていて、コンテナ2が載置し易くなるように構成されている。
【0048】
縦部33bには、ネジ孔33cが貫通しており、押しボルト33dの螺合が可能に構成されている。押しボルト33dは、先端がコンテナ2の側面に当接することで、コンテナ2を固定する。
なお、押ボルト33dは、必要に応じて配設すればよく、省略してもよい。また、下固定金具33の構成は限定されるものではなく、例えば、蝶番であってもよい。
【0049】
後方の回転フレーム30には、図示しない固定部材が設置されており、コンテナ2が取り付けられていない状態での回転が制御されている。
つまり、後方の回転フレーム30は、コンテナ2が取り付けられた状態で、回転制御機構40により回転する前方の回転フレーム30と同期して回転するものであって、前方の回転フレーム30が回転制御機構40により回転が制御されているのに対し、後方の回転フレーム30は、コンテナ2が取り付けられていない状態で回転してしまうおそれがあるため、その回転を制御する必要がある。本実施形態では、固定部材として、回り止めチェーンを設置する。
【0050】
本実施形態では、コンテナ用メンテナンス台車1の2箇所に、非常時に回転フレーム30の回転を停止するための非常停止スイッチ(図示省略)を備えるものとするが、非常停止スイッチの数や配置は限定されるものではない。
【0051】
次に、本実施形態のコンテナ用メンテナンス台車1を利用したコンテナ2の修理または洗浄方法について説明する。
【0052】
まず、コンテナ用メンテナンス台車1を作業個所に移動させる。
コンテナ用メンテナンス台車1の移動は、
図7に示すように、フレーム本体11を上昇させて、車輪12,12,…を接地させた状態で、牽引車Tにより牽引することにより行う。
【0053】
コンテナ用メンテナンス台車1の移動が完了したら、車輪昇降用ジャッキ13を操作して、
図2の(b)に示すように、車輪12を格納するとともに、フレーム本体11を接地させる。
【0054】
次に、フォークリフト等を利用して、コンテナ2を一対の回転フレーム30,30の間に配置する。このとき、
図8の(a)に示すように、後方の支持部材20を後退させておき、回転フレーム30同士の間隔を、コンテナ2の長さよりも大きくしておく。コンテナ2は、コンテナ用メンテナンス台車1の側方(
図8における上下方向)から挿入する。
【0055】
一対の回転フレーム30,30の間にコンテナ2が配設されたら、ハンドル54を操作して、
図8の(b)に示すように、両回転フレーム30,30がコンテナ2の端面に当接するまで、後方の支持部材20を前進させる。
【0056】
このとき、コンテナ2は、下固定金具33,33,…に載置される。
さらに、上固定金具32,32,…により、コンテナ2の角部を固定する。
コンテナ2と固定金具32,33との間に隙間が形成される場合には、隙間に鉄板等を挟み込む。
【0057】
コンテナ2の取り付けが完了したら、適宜コンテナ2を回転(正転または逆転)させながら、コンテナ2を回転フレーム30,30により横架させた状態で修理作業または清掃作業を行う。コンテナ2の回転は、回転制御機構40を操作することにより行う。
【0058】
以上、本実施形態のコンテナ用メンテナンス台車1によれば、牽引車T等により所定の位置にコンテナ用メンテナンス台車1を配置することで、位置決めが完了するため、準備が容易である。
【0059】
また、コンテナ2を固定する一対の回転フレーム30,30が、支持部材20,20を介して走行フレーム10上に配設されているため、回転フレーム30,30および支持部材20,20の配置が容易である。
また、予め位置決めされた回転フレーム30,30を利用するため、コンテナ2の取り付けも容易である。
【0060】
コンテナ用メンテナンス台車1は、スライド装置50を備えているため、支持部材20をスライドさせることでコンテナ2を前後から狭持でき、コンテナ2の取り付け作業が容易である。
【0061】
また、回転フレーム30,30に固定されたコンテナ2の回転は、前方の支持部材20に配設された回転制御機構40を操作することで行えるため、操作性に優れている。
【0062】
また、回転フレーム30は、コンテナ2の形状に応じて矩形状に形成されており、さらに、回転フレーム30の四隅にはコンテナ2の角部と嵌合する固定金具32,33が設けられているため、コンテナ2の取り付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0063】
コンテナ用メンテナンス台車1の走行フレーム10が、車輪昇降用ジャッキ13を備えているため、移動時は車輪12を接地させて走行し、所定の位置に配置する際には車輪12を引き上げてフレーム本体11を接地させればよいため、移動および配置を容易に行うことができる。そのため、アウトリガー等を要することなく固定することができ、比較的省スペースでの作業が可能である。
【0064】
回転フレーム30は、任意の角度で固定することが可能なため、修理作業を行う際の作業性に優れている。
【0065】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0066】
前記実施形態では、前方の支持部材に回転制御機構を配置したが、回転制御機構は後方に配置されていてもよい。
また、スライド装置を後方に配置する場合にいて説明したが、スライド装置は前方に配置されていてもよい。
【0067】
前記実施形態では、いずれか一方の支持部材のみがスライドする場合について説明したが、両支持部材がスライドするように構成されていてもよい。
【0068】
走行フレームは、コンテナの長さに応じて長さが変更可能に構成されていてもよい。例えば、走行フレームが、ジャッキ状の伸縮手段を備えていることで、長さの変更が可能に構成されていてもよい。また、中間部において分割可能に構成されていて、この分割部分に延長部材を介設することで、長さを延ばす構成としてもよい。
【0069】
前記実施形態では、格納可能な車輪を備えている場合について説明したが、車輪は必ずしも格納可能である必要はない。例えば、アウトリガーを備えていてもよいし、車止めにより、車輪を固定してもよい。
【0070】
コンテナの固定手段は、前記実施形態で示したものに限定されるものではなく、例えば回転フレームの角部にツイストロックを配置することで、コンテナが備える固定金具に固定する構成としてもよい。