(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5906056
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】車両用ディスクロータ組立体
(51)【国際特許分類】
F16D 65/12 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
F16D65/12 U
F16D65/12 R
F16D65/12 X
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-234245(P2011-234245)
(22)【出願日】2011年10月25日
(65)【公開番号】特開2013-2631(P2013-2631A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0056497
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 哲 遠
【審査官】
中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−515051(JP,A)
【文献】
特表2009−510363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブに装着されてホイールの回転力が伝達されるアダプタと、
制動力を発生させるディスクロータと、
前記アダプタと前記ディスクロータを結合させ、前記アダプタが伝達された回転力を前記ディスクロータに伝達し、また、前記ディスクロータが発生させた制動力を前記アダプタに伝達するトランスミッタと、
前記アダプタ、前記ディスクロータ、および前記トランスミッタを結合させる結合手段と、
を含み、
前記アダプタには、前記トランスミッタの一端と当接する複数のトランスミッタ装着面、および前記ディスクロータと接触する複数のロータ接触面が形成され、前記ディスクロータには、前記トランスミッタが装着される複数のトランスミッタ装着溝、および前記アダプタと接触する複数のアダプタ接触面が形成され、
前記トランスミッタ装着溝および前記アダプタ接触面は、前記ディスクロータの内周面に形成され、
前記複数のトランスミッタ装着溝は、前記ディスクロータの内周面に円周方向に沿って形成され、前記アダプタ接触面は、隣接するトランスミッタ装着溝の間に形成されること、を特徴とする車両用ディスクロータ組立体。
【請求項2】
前記トランスミッタは、前記トランスミッタ装着溝を通過し、その一端が前記トランスミッタ装着面に接触するように結合されることを特徴とする請求項1に記載の車両用ディスクロータ組立体。
【請求項3】
前記トランスミッタには、前記結合手段が貫通するように貫通ホールが形成され、前記トランスミッタ装着面には、前記結合手段が締結するように結合ホールが形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用ディスクロータ組立体。
【請求項4】
前記複数のトランスミッタ装着面は、前記アダプタの外周面に円周方向に形成され、前記ロータ接触面は、隣接するトランスミッタ装着面の間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用ディスクロータ組立体。
【請求項5】
前記アダプタと前記ディスクロータが結合すれば、前記ロータ接触面および前記アダプ
タ接触面は互いに当接することを特徴とする請求項1に記載の車両用ディスクロータ組立
体。
【請求項6】
前記アダプタと前記トランスミッタは、前記結合手段によって直接的に結合し、
前記ディスクロータは、前記アダプタと前記トランスミッタの結合によって前記アダプタ
に結合することを特徴とする請求項1に記載の車両用ディスクロータ組立体。
【請求項7】
前記トランスミッタには、前記アダプタと前記ディスクロータを結合させ、前記ディスク
ロータの離脱を防ぐように係止爪が形成されることを特徴とする請求項6に記載の車両用
ディスクロータ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ディスクロータ組立体に係り、より詳しくは、制動熱によるディスクロータの熱亀裂(heat crack)を防ぐことができる車両用ディスクロータ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車の制動装置は、運動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに転換して自動車の制動を行なうものであり、ホイールと共に回転する回転体の形状および制動方式に応じてドラムブレーキとディスクブレーキに区分される。
ディスクブレーキは、アダプタ、ディスクロータ、ブレーキパッドなどで構成される。アダプタはハブに装着され、ホイールの回転力が伝達される。ディスクロータは、アダプタと共に回転する鋳鉄材の円板である。ディスクブレーキは、ディスクロータの両側面をブレーキパッドで加圧して自動車の制動を行う。
【0003】
ディスクブレーキは、ドラムブレーキよりも小さい面積の摩擦によって制動力を得なければならない。したがって、ディスクブレーキには、高負荷および高温に耐える材料が用いられている。
しかし、ディスクロータの温度は、ブレーキパッドとディスクロータの摩擦によって400℃以上に上昇することがあり、このような場合には、ディスクロータの熱変形が発生することがある。
さらに、アダプタとディスクロータが一体に形成された従来のディスクブレーキは、ディスクロータがアダプタによって拘束された状態で熱変形が進行するため、ディスクロータに熱亀裂(heat crack)が発生する問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−046768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、ディスクロータの熱変形による熱亀裂を防ぐことができ、また、アダプタとディスクロータの耐久性が向上することによって商品価値を増大させることができる車両用ディスクロータ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る車両用ディスクロータ組立体は、ハブに装着されてホイールの回転力が伝達されるアダプタと、
制動力を発生させるディスクロータと、
前記アダプタと前記ディスクロータを結合させ、前記アダプタが伝達された回転力を前記ディスクロータに伝達し、また、前記ディスクロータが発生させた制動力を前記アダプタに伝達するトランスミッタと、
前記アダプタ、前記ディスクロータ、および前記トランスミッタを結合させる結合手段と、
を含み、
前記アダプタには、前記トランスミッタの一端と当接する複数のトランスミッタ装着面、および前記ディスクロータと接触する複数のロータ接触面が形成され、前記ディスクロータには、前記トランスミッタが装着される複数のトランスミッタ装着溝、および前記アダプタと接触する複数のアダプタ接触面が形成され、
前記トランスミッタ装着溝および前記アダプタ接触面は、前記ディスクロータの内周面に形成され、
前記複数のトランスミッタ装着溝は、前記ディスクロータの内周面に円周方向に沿って形成され、前記アダプタ接触面は、隣接するトランスミッタ装着溝の間に形成されること、を特徴とする。
【0008】
前記トランスミッタは、前記トランスミッタ装着溝を通過し、その一端が前記トランスミッタ装着面に接触するように結合されることを特徴とする。
【0009】
前記トランスミッタには、前記結合手段が貫通するように貫通ホールが形成され、前記トランスミッタ装着面には、前記結合手段が締結するように結合ホールが形成されることを特徴とする。
【0010】
前記複数のトランスミッタ装着面は、前記アダプタの外周面に円周方向に形成され、前記ロータ接触面は、隣接する
トランスミッタ装着面の間に形成されることを特徴とする。
【0013】
前記アダプタと前記ディスクロータが結合すれば、前記ロータ接触面および前記アダプタ接触面は互いに当接することを特徴とする。
【0014】
前記アダプタと前記トランスミッタは、前記結合手段によって直接的に結合し、
前記ディスクロータは、前記アダプタと前記トランスミッタの結合によって前記アダプタに結合することを特徴とする。
【0015】
前記トランスミッタには、前記アダプタと前記ディスクロータを結合させ、前記ディスクロータの離脱を防ぐように係止爪が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アダプタとディスクロータを一体に形成する代わりに個別に製作し、トランスミッタと結合手段によって結合させるため、ディスクロータがアダプタによって完全に拘束されない。したがって、ディスクロータに熱変形が発生するとき、熱変形をディスクロータで吸収することができ、ディスクロータの熱亀裂を防ぎ、アダプタとディスクロータの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ディスクロータ組立体の分解図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用ディスクロータ組立体の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアダプタの斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るディスクロータの斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るトランスミッタの斜視図である。
【
図6】
図2のA−A線に沿って切開した断面図である。
【
図7】
図2のB−B線に沿って切開した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ディスクロータ組立体の分解図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両用ディスクロータ組立体10は、アダプタ20、ディスクロータ30、トランスミッタ40、および結合手段50を含む。
アダプタ20は、ホイールのハブに装着されており、ホイールの回転力が伝達されてディスクロータ30に伝達したり、ディスクロータ30からディスクブレーキの制動力が伝達されてホイールに伝達する。
【0019】
ディスクロータ30は、ディスクブレーキのブレーキパッド(図示せず)と摩擦して自動車の制動を行う。ディスクロータ30は円板形状で形成され、ブレーキパッドがディスクロータ30の両側面を加圧すれば、ブレーキパッドとディスクロータ30の摩擦によって自動車の運動エネルギーが熱エネルギーに転換される。したがって、自動車の運動エネルギーが減少しながら制動が行われる。ここで、ブレーキパッドとディスクロータ30の間の摩擦力は、ディスクブレーキの制動力であってもよい。
トランスミッタ40は、本発明の実施形態において、ディスクロータ組立体10の組み立てを容易にし、機能を円滑に行う構成要素である。
【0020】
トランスミッタ40は、アダプタ20とディスクロータ30を連結する。
また、トランスミッタ40は、アダプタ20の回転力をディスクロータ30に伝達したり、ディスクロータ30の制動力をアダプタ20に伝達する。
結合手段50は、アダプタ20、トランスミッタ40、およびディスクロータ30を結合させる。ここで、アダプタ20とトランスミッタ40は結合手段50によって直接的に結合され、ディスクロータ30はアダプタ20とトランスミッタ40の結合によって間接的に結合されることにより、ディスクロータ組立体10が構成される。
図2は、本発明の実施形態に係る車両用ディスクロータ組立体の斜視図である。
図2に示すように、本発明の実施形態に係る車両用ディスクロータ組立体10は、アダプタ20、ディスクロータ30、およびトランスミッタ40が結合手段50によって結合されることによって構成される。
【0021】
以下、
図3〜
図5を参照しながら、本発明の実施形態に係るディスクロータ組立体10の構成要素について詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るアダプタの斜視図である。
図3に示すように、アダプタ20には、トランスミッタ装着面22、ロータ接触面24、および結合ホール26が形成される。
アダプタ20は、中空の円柱形状で形成される。このような円柱形状で形成されたアダプタ20が有する2つの円形側面のうちの一側面は、ディスクロータ30と連結される。また、ディスクロータ30と連結されるアダプタ20の円形側面には、トランスミッタ装着面22、ロータ接触面24、および結合ホール26が形成される。
【0022】
ロータ接触面24は、ディスクロータ30と連結するアダプタ20の円形側面の外周に沿って放射状に複数が形成されてもよい。このようなロータ接触面24は、半径の外側に開口している。
トランスミッタ装着面22は、ディスクロータ30と連結されるアダプタ20の円形側面の外周に沿って放射状に複数形成され、隣接するロータ接触面24の間に形成される。すなわち、トランスミッタ装着面22とロータ接触面24は、アダプタ20の円形側面の外周に沿って交互に配置される。さらに、トランスミッタ装着面22は、アダプタ20の円形側面から軸方向に凹んだ形状をなして、軸方向および半径方向に開口し、外周側は、内周側よりも短く形成されている。このようなトランスミッタ装着面22は、トランスミッタの一側面と接触する。
【0023】
結合ホール26は、トランスミッタ装着面22に形成される。1つのトランスミッタ装着面22には、少なくとも1つ以上の結合ホール26が形成されている。結合手段50がボルトの場合、結合ホール26の内周面にはねじ山が形成される。
アダプタ20は中空であるため、ホイールのハブ(図示せず)上に装着することができる。このようなアダプタ20とホイールの結合は、当技術分野において通常の知識を有する者によって自明であるため、これ以上の説明は省略する。
【0024】
図4は、本発明の実施形態に係るディスクロータの斜視図である。
図4に示すように、ディスクロータ30には、トランスミッタ装着溝32およびアダプタ接触面34が形成される。
ディスクロータ30は、中空の円板形状で形成される。したがって、ディスクロータ30は、外周面と内周面を含む。また、ディスクロータ30の内周面には、トランスミッタ装着溝32およびアダプタ接触面34が形成される。
トランスミッタ装着溝32は、ディスクロータ30の内周面に複数形成され、アダプタ20のトランスミッタ装着面22に対応する。また、トランスミッタ装着溝32は軸方向に開口しており、トランスミッタ40がトランスミッタ装着溝32を貫通してトランスミッタ装着面22に接触するようになっている。
【0025】
アダプタ接触面34は、ディスクロータ30の内周面に複数形成され、ディスクロータ30の内周面で半径内側に突出している。また、アダプタ接触面34は、隣接するトランスミッタ装着溝32の間に形成される。すなわち、アダプタ接触面34とトランスミッタ装着溝32は、交互に形成され、ロータ接触面24に対応する。
図5は、本発明の実施形態に係るトランスミッタの斜視図である。
図5に示すように、トランスミッタ40は、係止爪42、貫通ホール44、および柱46を含む。
トランスミッタ40は、結合手段50によってアダプタ20と結合され、ディスクロータ30の動きを拘束してディスクロータ組立体10を形成する。
【0026】
図5(a)、(b)に示すように、柱46の断面形状は梯形であるが、これに限定されるものではない。柱46の断面形状は、トランスミッタ装着面22およびトランスミッタ装着溝32の形状と対応し、柱46は係止爪42の一側面から軸方向に延長される。したがって、トランスミッタ40の一側面は、トランスミッタ装着溝32を貫通してトランスミッタ装着面22と接触し、他側部には係止爪42が形成されている。
係止爪42は、ディスクロータ30の他側面に接触し、ディスクロータ30にアダプタ20に向かう圧力を加える。したがって、ディスクロータ30とアダプタ20は、トランスミッタ40によって互いに結合される。また、係止爪42は、アダプタ20からディスクロータ30が離脱するのを防ぐ。
【0027】
貫通ホール44は、トランスミッタ40に軸方向に形成されている。結合手段50が結合ボルトである場合、貫通ホール44の内周面には結合ボルトが締結されるようにねじ山が形成されてもよい。
結合手段50は、トランスミッタ40に形成された貫通ホール44を通過し、アダプタ20に形成された結合ホール26に締結されることにより、アダプタ20とトランスミッタ40を結合させる。このとき、トランスミッタ40の柱46は、トランスミッタ装着溝32に装着される。したがって、アダプタ20、ディスクロータ30、およびトランスミッタ40が結合手段50によって結合されることにより、ディスクロータ組立体10が形成される。
【0028】
以下、
図6〜
図7を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両用ディスクロータ組立体の結合状態について詳しく説明する。
図6は
図2のA−A線に沿って切開した断面図である。
図6に示すように、ディスクロータ組立体10が結合した状態で、トランスミッタ40は、ディスクロータ30のトランスミッタ装着溝32に装着される。また、トランスミッタ40の一側面はアダプタ20のトランスミッタ装着面22と接触し、係止爪42はディスクロータ30の他側面に接触することにより、ディスクロータ30にアダプタ20に向かう圧力を加える。
【0029】
このとき、結合ホール26と貫通ホール44に結合手段50が同時に結合する。したがって、アダプタ20とディスクロータ30がトランスミッタ40と結合手段50によって結合される。
図7は、
図2のB−B線に沿って切開した断面図である。
図7に示すように、ディスクロータ組立体10が結合した状態で、アダプタ20のロータ接触面24は、ディスクロータ30のアダプタ接触面34と接触する。
【0030】
係止爪42がディスクロータ30の他側面と接触し、ディスクロータ30にアダプタ20に向かう圧力を加えれば、ロータ接触面24がアダプタ接触面34を支持してディスクロータ30がアダプタ20に固定される。
また、ロータ接触面(contour)24の全長に亘ってアダプタ接触面34を支持するため、ロータ接触面24とアダプタ接触面34の接触面積が広くなる。したがって、結合手段50およびトランスミッタ40に無理な力を加えなくても、アダプタ20とディスクロータ30を結合することができる。
【0031】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0032】
10:車両用ディスクロータ組立体
20:アダプタ
22:トランスミッタ装着面
24:ロータ接触面
26:結合ホール
30:ディスクロータ
32:トランスミッタ装着溝
34:アダプタ接触面
40:トランスミッタ
42:係止爪
44:貫通ホール
50:結合手段