(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記金型は、櫛歯を有するため構造が複雑で、例えば、大型のフィルタに対応したものにするのは困難であり、また、濾材のひだ山の数が変更されると、金型自体を変更しなければならず、多様なフィルタを製造することが難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、注型材料によってフィルタ枠を成形するエアフィルタの製造方法において、例えば大型のフィルタを容易に製造できるように成形型の構造を単純にし、かつ、1つの成形型で多様なフィルタを製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアフィルタの製造方法は、内周面に溝を有する枠状型の溝内部に濾材の外周を挿入しつつ、枠状型の内部に濾材を配置し、かつ、上記溝内部に注型材料を注入する第1工程と、注型材料と一体になった濾材を、枠状型から離型して、注型材料によって成形された枠状のフィルタ枠内部に濾材が収納されたエアフィルタを得る第2工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
枠状型は、複数の枠部材を組み立てたものであることが好ましい。この場合、第1工程において、複数の枠部材から枠状型を組み立てつつ、枠状型の内部に濾材を配置することが可能になる。また、枠状型を複数の枠部材に分解することにより、注型材料と一体になった濾材を、枠状型から離型することが可能になる。枠状型は、4つの枠部材から構成される四角枠形状を有することが好ましい。また、注型材料は、揺変性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、単純な構造の成形型によってエアフィルタの製造が容易になるとともに、1つの成形型で多様なフィルタが製造できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエアフィルタを示す。
図1に示すように、エアフィルタ10は、矩形又は方形の四角枠形状のフィルタ枠12の内部に、濾材パック11が収納されて構成される。
【0012】
濾材パック11は、ガラス繊維等から成る濾紙や、ポリエステル等の不織布から成るシート状濾材がひだ折りされ、直方体に形成される。濾材パック11は、各側面を構成する端部11A〜11Dが、フィルタ枠12の各辺の内周面に接着される。これにより、濾材パック11は、その外周が全周にわたって、フィルタ枠12の内周面に接着されることになる。
【0013】
フィルタ枠12は、その一方の開口側の外縁部から全周にわたって外側に突出するフランジ部15を備える。フランジ部15は、四角枠形の板状の部材である。フィルタ枠12は、後述するように、注型材料が硬化されて成形されたものであるが、その硬化された注型材料は、弾性体となることが好ましい。
【0014】
図2は、本実施形態に係るエアフィルタが適用されたファンフィルタユニットを示す。ファンフィルタユニット20は、ケーシング21と、ケーシング21の内部に配置されるエアフィルタ10及びファン(送風機)22を備える。ケーシング21は、天井面23に設けられた開口23Aを塞ぐように、天井面23上に配置される。
【0015】
ケーシング21は、下方が開口した四角形の箱体であって、その上面21Aの中央に通風口21Bがある。また、ケーシング21は、その下端から全周にわたって外周側に突出するケースフランジ部25を備える。
【0016】
ケーシング21内部において、通風口21Bの下方にファン22が配置され、そのファン22の下方にさらにエアフィルタ10が配置される。そして、ファン22が回転されると、外気が通風口21Bから導入され、この導入された外気がエアフィルタ10で浄化された上で、開口23Aを通って天井面23下方の室内に流される。
【0017】
エアフィルタ10は、フランジ部15が天井面23の開口23A周縁に当接するように、天井面23上に載置される。ケーシング21は、ケースフランジ部25がフランジ部15に当接するように、フランジ部15の上に載置される。また、ケーシング21は、その各側面の内周面がフィルタ枠12の四辺の外周面それぞれに沿うように配置される。ケーシング21及びエアフィルタ10は、ケースフランジ部25及びフランジ部15の重ねられたネジ穴25H、15Hに通されたネジ26により、天井面23に固定される。
【0018】
本実施形態では、フィルタ枠12(すなわち、フランジ部15)が、上記したように弾性体である場合、フランジ部15はガスケットとしての役割を果たす。すなわち、弾性を有するフランジ部15は、ケースフランジ部25に押さえ付けられることにより、ケースフランジ部25及び天井面23に密着し、これらの間をシールして空気が漏洩するのを防止する。
【0019】
図3〜5は、本実施形態に係るエアフィルタの製造方法を説明するための図である。本実施形態に係るエアフィルタ10は、
図5に示すように矩形又は方形の四角枠形状の枠状型30が使用されて成形される。以下、まず枠状型30の構造を説明する。
【0020】
図5に示すように、枠状型30は、四角形の各辺を構成する第1〜第4の枠部材31〜34を組み立てたものである。第1〜第4の枠部材31〜34はそれぞれ、その長手方向における一端31A〜34Aの端面が、隣接する第2〜第4及び第1の枠部材32〜34、31それぞれの他端32B〜34B、31Bの内面に突き合わされ、隣接する枠部材に接続される。
【0021】
第1の枠部材31は、
図3に示すように、枠状型30の内周面を構成する一面(内面)41に溝42が設けられたものである。溝42は、第1の枠部材31の長手方向に沿って延在する。溝42は、フィルタ枠12の一辺を成形するものであり、フィルタ枠12(
図1参照)の一辺に対応した形状を有する。そのため、溝42は、その幅方向における一端側が、フランジ部15を成形するために、他の部分より凹んだ凹部43となる。
【0022】
溝42は、第1の枠部材31において一端31Aの端面31Cまで延在し、端面31Cにおいて開口する一方、他端31Bの端面までは延在しない。また、他端31B側の溝42の端部においては、凹部43が設けられた幅方向における一端側が、他の部分より、長手方向に延出し延出部44となる。延出部44は、凹部43とともにフランジ部15を成形するためのものである。なお、第2〜第4の枠部材32〜34は、第1の枠部材31と同様の形状を有するので、その説明は省略する。
【0023】
各枠部材31〜34の一端31A〜34Aが、隣接する枠部材32〜34、31の他端32B〜34B、31Bに接続するとき、それら枠部材に設けられた溝42、42同士も接続し、これにより、枠状型30の内周面には、全周にわたって溝が延在することになる。そして、後述するように、その溝内部に充填された注型材料によって、四角枠形のフィルタ枠12(
図1参照)が成形される。また、溝42、42同士が接続するとき、他端31B〜34B側の延出部44は、一端31A〜34A側の端面に開口する凹部43に接続し、これにより、
図1に示すように、フィルタ枠12には、その全周にわたってフランジ部15が設けられる。
【0024】
次に、本実施形態に係るエアフィルタの製造方法を説明する。本製造方法では、まず
図3に示すように、第1の枠部材31の溝42の内部に注型材料50が注入されるとともに、溝42の内部に濾材パック11の端部11Aが挿入される。
【0025】
次いで、
図4に示すように、第2の枠部材32の溝42内部に、注型材料が注入されるとともに、端部11Aが第1の枠部材31に挿入された濾材パック11の端部11Bが、第2の枠部材32の溝42内部に挿入される。そして、第1の枠部材31の一端31Aが、第2の枠部材32の他端32Bに接続され、これら一端31Aと他端32Bが、不図示のネジによって固定される。
【0026】
このとき、濾材パック11の端部11A、11Bは、その隙間に注型材料50が浸入されて、注型材料50の内部に埋設されたような状態となる。また、濾材パック11は、溝42の内部において、端部11A、11Bが溝42の底面42Dから離間するように適宜保持される。これにより、エアフィルタ10において、濾材パック11の端部11A、11Bは、フィルタ枠12の内部に埋設されるようにしてフィルタ枠12の内周に接着されるとともに、濾材パック11がフィルタ枠12の外周面に露出することが防止される。
【0027】
各枠部材の溝42内部に注入される注型材料は、揺変性(チキソトロピー)を有するものである。揺変性とは、力が加えられ変形が続いている間は高い流動性を示すが、静止した状態では大きな力が加わらなければ流動しない性質をいう。揺変性を有する接着剤としては、例えば、2液硬化型等の公知の硬化型の樹脂材料に、揺変性を発現させるために、公知の揺変剤が加えられたものである。
【0028】
図4において濾材パック11は、第1の枠部材31に対して移動しないように適宜保持される。これにより、濾材パック11は、枠部材31の溝42内部の注型材料50に大きな力を与えず、注型材料50に実質的に流動性を発現させない。そのため、
図4に示すように、濾材パック11の端部11Bが、第2の枠部材32の溝42内部に挿入されるとき、第1の枠部材31は例えば直立した状態となり、枠部材31の溝42の開口は下向き及び横向きにされるが、溝42内部の注型材料50は流動せず、垂れたりすることはない。
【0029】
上記工程が繰り返され、第3及び第4の枠部材33、34の溝42、42内部に、上記した注型材料が注入されつつ濾材パック11の端部11C、11Dが挿入されるとともに、第1〜第4の枠部材31〜34から枠状型30が組み立てられる。これにより、濾材パック11は、その外周が全周にわたって溝42内部に挿入され、かつ、
図5に示すように枠状型30の内部に配置された状態となる。また、枠状型30の内周面の溝には、全周にわたって注型材料50が注入されることになる。
【0030】
図5の状態では、枠状型30の溝の開口は横向きになるが、溝内部の注型材料は、実質的に流動しない状態に保たれ、垂れたりすることはない。なお、
図5の状態において、濾材パック11は、その端部11A〜11Dが例えば溝42の側面42E(
図3、4参照)に支持され、下方に移動されることはない。ただし、濾材パック11は、その下側に設けられた支持部材(不図示)によって支持されても良い。
【0031】
その後、
図5の状態で、必要に応じて加熱等されることにより注型材料が硬化され、濾材パック11が注型材料50に一体化される。硬化された注型材料は、四角枠形状のフィルタ枠12(
図1参照)を構成する。次いで、ネジ(不図示)が外されて、枠状型30が第1〜第4の枠部材31〜34に分解され、これにより、注型材料50と一体となった濾材パック11が枠状型30から離型され、
図1に示すエアフィルタ10が得られる。
【0032】
以上のように、本実施形態では、単純な構造を有する枠状型によってフィルタ枠を成形したので、ファンフィルタユニットに使用するような大型のエアフィルタを容易に製造することができる。また、成形型に濾材パックを挟み込むための櫛歯部を設ける必要がないので、ひだ山数が異なるエアフィルタを1つの枠状型によって成形することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態では、注型材料に揺変性を有する注型樹脂が使用されたので、
図4、5に示すようにその製造過程において、溝の開口が横向きや下向きにされたりしても、溝内部に充填された注型樹脂が垂れ流れたりすることはない。また、濾材パック11の外周は全周にわたって、フィルタ枠12の内周に接着されるので、濾材パック11とフィルタ枠12との間の気密性が確保される。
【0034】
なお、本実施形態では、エアフィルタ10は、ファンフィルタユニット20に使用される大型フィルタであったが、送気マスク等で使用される小型フィルタであっても良い。もちろん、フィルタ枠12に設けられたフランジ部15が省略されても良い。