(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
質量%でMn:0.3〜0.8%未満、Si:0.1超〜0.32%未満、Fe:0.3%以下、Ti:0.06〜0.3%を含有し、Mn含有量とSi含有量比(Mn%/Si%)が2.5を超え、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、外表面にZn又はZn含有層が設けられたことを特徴とする熱交換器用押出伝熱管。
前記アルミニウム合金にさらに質量%でCu:0.05%以下、Mg:0.05%未満、Cr:0.03%未満含有されていることを特徴とする請求項1記載の熱交換器用押出伝熱管。
質量%でMn:0.3〜0.8%未満、Si:0.1超〜0.32%未満、Fe:0.3%以下、Ti:0.06〜0.3%を含有し、Mn含有量とSi含有量比(Mn%/Si%)が2.5を超え、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、外表面にZn又はZn含有層が設けられた熱交換器用押出伝熱管を製造する際、
前記組成のアルミニウム合金の鋳造後の鋳塊において450〜650℃の温度で2〜24時間保持する均質化処理を施すことを特徴とする熱交換器用押出伝熱管の製造方法。
前記均質化処理において室温〜450℃間の加熱速度を50〜180℃/h、450℃〜均質化処理間の加熱速度を10〜80℃/h、均質化処理〜200℃間の冷却速度を50〜400℃/hとすることを特徴とする請求項8に記載の熱交換器用押出伝熱管の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係るアルミニウム合金チューブを備えた熱交換器の一例を示すもので、この形態の熱交換器100は、左右に離間し平行に配置されたヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダーパイプ1、2に対してほぼ直角に接合された複数の扁平状の押出伝熱管3と、各押出伝熱管3にろう付けされた波形のフィン4を主体として構成されている。ヘッダーパイプ1、2、押出伝熱管3及びフィン4は、後述するアルミニウム合金から構成されている。
より詳細には、ヘッダーパイプ1、2の相対向する側面に
図2または
図3に示すスリット6が各パイプの長さ方向に定間隔で複数形成され、これらヘッダーパイプ1、2の相対向するスリット6にチューブ3の端部を挿通してヘッダーパイプ1、2間に押出伝熱管3が架設されている。また、ヘッダーパイプ1、2間に所定間隔で架設された複数の押出伝熱管3の表裏面側にフィン4が配置され、これらのフィン4が押出伝熱管3の表面側あるいは裏面側にろう付けされている。即ち、
図3に示す如く、ヘッダーパイプ1、2のスリット6に対して押出伝熱管3の端部を挿通した部分においてろう材によりフィレット8が形成され、ヘッダーパイプ1、2に対して押出伝熱管3がろう付けされている。また、波形のフィン4において波の頂点の部分を隣接する押出伝熱管3の表面または裏面に対向させてそれらの間の部分にろう材によりフィレット9が形成され、押出伝熱管3の表面と裏面に波形のフィン4がろう付けされている。
【0012】
この形態の熱交換器100は、後述する製造方法において詳述するように、ヘッダーパイプ1,2とそれらの間に架設された複数の押出伝熱管3と複数のフィン4とを組み付けて
図2に示す如く構成された熱交換器組立体101をろう付けすることにより製造されたものである。
ろう付け前の押出伝熱管3には、フィン4が接合される表面と裏面に、Si粉末:1〜6g/m
2と、Zn含有フッ化物系フラックス:2〜20g/m
2とからなる配合組成のろう付け用塗膜(ろう材塗膜)7が
図4に示す如く押出伝熱管3の表面の大部分と裏面の大部分を覆うように形成されている。なお、Zn含有フッ化物系フラックスとして、KZnF
3を2〜20g/m
2程度配合しても良いし、KZnF
3を2〜20g/m
2、K
3AlF+KAlF
4を2〜20g/m
2程度配合したフラックスを用いても良い。
なお、前記組成のろう付け用塗膜7には、前記Si粉末とフラックスに加え、バインダ(例えば、アクリル系樹脂):0.5〜3.5g/m
2程度が含有されていても良い。
【0013】
本実施形態の押出伝熱管3は、
図4に示す如くその内部に複数の通路3Cが形成されるとともに、平坦な表面(上面)3A及び裏面(下面)3Bと、これら表面3A及び裏面3Bに隣接する側面3Dとを具備し、
図4の横断面に示す如き偏平多穴管として構成されている。なお、押出伝熱管3に形成する通路3Cは
図4に示す例では10個形成されているが、通路3Cの形成個数は任意であり、一般的には数個〜数10個形成されている。また、現状押出伝熱管3は高さ(総厚)1mm〜数mm程度、幅数10mm程度であって、通路3Cを区画する壁部の肉厚は、0.1〜1.5mm程度の肉薄構造とされている。
【0014】
図4に示す横断面形状の押出伝熱管3が適用され、後述する組成のアルミニウム合金から押出伝熱管3が形成されている場合、
図3に示すように、ろう付け後の押出伝熱管3の表面部分、及び、裏面部分に、ろう付け用塗膜7に含まれていたSiとZnがろう付け温度で拡散した結果、SiとZnを含む犠牲陽極層3aが形成されている。
【0015】
以下、前記ろう付け用塗膜7を構成する組成物について説明する。ろう付け用塗膜7は以下に説明するSi粉末、フラックスとの混合物、あるいはこれらにバインダを加えた混合物を用いることができる。
Si粉末は、押出伝熱管3を構成するAlと反応し、フィン4と押出伝熱管3を接合するろうを形成するが、ろう付け時にZn含有フラックスとSi粉末が溶融してろう液となる。このろう液にフラックス中のZnが均一に拡散し、押出伝熱管3の表面に均一に広がる。液相であるろう液内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、これにより均一なZn拡散がなされ、押出伝熱管3表面の面方向のZn濃度がほぼ均一となる。
Zn含有フッ化物系フラックスは、ろう付けに際し、押出伝熱管3の表面に犠牲陽極層の電位を適正に卑とするZnを拡散させた犠牲陽極層3aを形成する効果がある。また、ろう付け時にチューブ3の表面の酸化物を除去し、ろうの広がり、ぬれを促進してろう付け性を向上させる作用を有する。
Zn含有フッ化物系フラックスは、KZnF
3、KZnF
3とK
3AlF+KAlF
4との混合物などを用いることができる。
塗布物には、Si粉末、Zn含有フッ化物系フラックスに加えてバインダを含むことができる。バインダの例としては、好適にはアクリル系樹脂を挙げることができる。
【0016】
Si粉末、フラックス及びバインダからなるろう付け組成物の塗布方法は、本発明において特に限定されるものではなく、スプレー法、シャワー法、フローコータ法、ロールコータ法、刷毛塗り法、浸漬法、静電塗布法などの適宜の方法によって行うことができる。また、ろう付け組成物の塗布領域は、押出伝熱管3の全表面または全裏面としてもよく、また、押出伝熱管3の表面と裏面の一部であっても良く、要は、少なくともフィン4をろう付けするのに必要な押出伝熱管3の表面領域あるいは裏面領域に塗布されていれば良い。
【0017】
押出伝熱管3は、質量%でMn:0.3〜0.8%未満、Si:0.1超〜0.32%未満、Fe:0.3%以下、Ti:0.06〜0.3%を含有し、Mn含有量とSi含有量比(Mn%/Si%)が2.5を超え、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる。また、前記アルミニウム合金に、さらに質量%でCu:0.05%以下、Mg:0.05%未満、Cr:0.03%未満を含有しても良い。
以下、押出伝熱管3を構成するアルミニウム合金の各構成元素の限定理由について説明する。
<Si:0.1超〜0.32質量%未満>
Siの含有量は耐食性を確保しつつ強度を確保するために重要である。Siの含有量が0.1質量%以下では、強度不足となり、0.32質量%以上含有されると、押出加工する際のピックアップ発生により押出性が低下し、金属間化合物粒子数が増大する。
<Mn:0.3〜0.8質量%未満>
Mnは、Siと金属間化合物を形成し、均一な犠牲陽極層を形成する上で有効な元素である。また、Mnは、押出伝熱管3の耐食性を向上するとともに、機械的強度を向上させ、押出し成形時の押出性を向上する上でも有効な元素である。
Mnの含有量が0.3質量%未満では、強度不足となり、耐食性も低下する。Mnについて、0.8質量%以上含有すると、ピックアップ発生により押出性が低下する。
【0018】
<Fe:0.3質量%以下>
Feは、Siと金属間化合物を形成し、均一な犠牲陽極層を生成し、耐食性を確保するために有効である。Feの含有量が0.3質量%を超えると腐食速度(腐食量)が増加し、耐食性が低下する。また、金属間化合物粒子数が増大する。
<Ti:0.06〜0.3質量%>
Tiは、耐食性を向上させ、押出伝熱管3の強度向上にも寄与する。0.06質量%未満では強度不足となり、耐食性も低下する。0.3質量%を超えて添加すると押出伝熱管を構成するアルミニウム合金の押出圧力が上がり、押出性が低下する。これにより、押出ウェルド部優先腐食が生じ易くなり、耐食性が低下する。
<Cu:0.05質量%以下>
Cuは腐食速度を抑制し、耐食性を向上させるために有効であるが、添加量が0.05質量%を超えると、腐食速度(腐食量)が増加し、粒界腐食や押出ウェルド部の優先腐食が生じ、耐食性が低下する。
<Mg:0.05質量%未満>
Mgは耐食性を向上させるために有効であるが、0.05質量%以上であると押出性低下による押出ウェルド部の優先腐食が生じ、耐食性が低下する。
<Cr:0.03質量%未満>
Crは耐食性を向上させるために有効であるが、0.03質量%以上になると押出性低下による押出ウェルド部の優先腐食が生じ、耐食性が低下する。
<Mn含有量とSi含有量比>
本発明の押出伝熱管3を構成するためのアルミニウム合金において、Mn含有量とSi含有量比(Mn%/Si%)が2.5を超えていることが好ましい。Mn含有量とSi含有量比が2.5以下であると、耐食性が低下する。
【0019】
以上説明の押出伝熱管3を製造する方法について説明する。
押出伝熱管3を構成するアルミニウム合金は、該当組成のアルミニウム合金溶湯から鋳塊を得、この鋳塊に450〜650℃の温度で2〜24時間保持する均質化処理を施すことが好ましい。
均質化処理を施すことで粗大な晶出物を分解し、母材に再固溶させる効果がある。
前記均質化処理において室温〜450℃間の加熱速度を50〜180℃/hに設定し、450℃〜均質化処理間の加熱速度を10〜80℃/hに設定し、均質化処理〜200℃間の冷却速度を50〜400℃/hに設定することが好ましい。
加熱速度を上述の範囲とすることで、押出性、耐食性を向上させる効果がある。
冷却速度を上述の範囲とすることで、押出性を向上させる効果がある。
【0020】
以上説明の均質化処理を施したアルミニウム合金を直接または間接押出加工により一例として
図4に示す断面形状の押出多穴管として構成し、押出伝熱管3を得ることができる。なお、押出伝熱管3として本実施形態で製造するのは、一例として、幅22mm、高さ(厚さ)1.2mm、孔部を29個形成した押出多穴管を例示できる。このため、押出伝熱管3の孔部を区画する境界壁の厚さは0.2mm程度であり、この押出伝熱管3のR部中央並びに孔部を区画する境界壁の高さ方向中央部(押出伝熱管3の厚さ方向中央部)にウェルドラインが形成される。なお、このウエルド部分に含有元素が偏析している場合にウエルドラインに沿ったような形で優先腐食を発生する。
【0021】
次に、フィン4について説明する。
押出伝熱管3に接合されるフィン4は、一例としてJIS3003系のアルミニウム合金を主体とした合金を適用することができる。また、JIS3003系のアルミニウム合金に質量%で2%程度のZnを添加したアルミニウム合金からフィン4を形成しても良い。
フィン4は、上記組成を有するアルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程などを経て、波形形状に加工される。なお、フィン4の製造方法は、本発明としては特に限定をされるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。なお、押出伝熱管3側にろう材を設けていない場合は、ろう材層をクラッド圧着したクラッドフィンを用いても良い。
【0022】
次に、ヘッダーパイプ1について説明する。
ヘッダーパイプ1は、一例として
図2、
図3に示すように、芯材層11と、芯材の外周側に設けられた犠牲材層12と、芯材の内周側に設けられたろう材層13とからなる3層構造をなしている。
芯材層11の外周側に犠牲材層12を設けることにより、フィン4による防食効果に加えてヘッダーパイプ1による防食効果も得られるため、ヘッダーパイプ1近傍のチューブ3の犠牲防食効果をより高めることができる。
【0023】
芯材層11は、Al−Mn系をベースとした合金が好ましい。
芯材層11の外周側に設けられる犠牲材層12は、Zn:0.60〜1.20%、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金から構成される。犠牲材層12は、クラッド圧延により芯材層11と一体化されている。
【0024】
次に、以上説明したヘッダーパイプ1、2、押出伝熱管3及びフィン4を主たる構成要素とする熱交換器100の製造方法について説明する。
図2は、フィン4との接合面にろう付け用塗膜7を塗布した押出伝熱管3を使用して、ヘッダーパイプ1、2、押出伝熱管3及びフィン4を組み立てた状態を示す熱交換器組立体101の部分拡大図であって、加熱ろう付けする前の状態を示している。
図2に示す熱交換器組立体101において、押出伝熱管3はその一端をヘッダーパイプ1に設けたスリット6に挿入し取付けられている。
図2に示すように組み立てられたヘッダーパイプ1、2、押出伝熱管3及びフィン4からなる熱交換器組立体101をろう材の融点以上の温度に加熱し、加熱後に冷却すると、
図3に示すように、ろう付け用塗膜7とろう材層13が溶けてヘッダーパイプ1と押出伝熱管3、押出伝熱管3とフィン4が各々接合され、
図1と
図3に示す構造の熱交換器100が得られる。この時、ヘッダーパイプ1の内周面のろう材層13は溶融してスリット6近傍に流れ、フィレット8を形成してヘッダーパイプ1と押出伝熱管3とが接合される。また、押出伝熱管3の表面と裏面のろう付け用塗膜7は溶融して毛管力によりフィン4近傍に流れ、フィレット9を形成して押出伝熱管3とフィン4とが接合される。
【0025】
ろう付けに際しては、不活性雰囲気などの適切な雰囲気で適温に加熱して、ろう付け用塗膜7、ろう材層13を溶融させる。これによりフラックスの活性度が上がって、フラックス中のZnが被ろう付け材(押出伝熱管3)表面に析出し、その肉厚方面に拡散するのに加え、ろう材及び被ろう付け材の双方の表面の酸化皮膜を破壊してろう材と被ろう付け材との間のぬれを促進する。
ろう付けのための加熱温度は、上述したように、ろう材の融点以上であるが、上述した組成からなるろう材の場合、580〜610℃の範囲に加熱することができ、1〜10分程度保持した後、冷却することができる。
【0026】
ろう付けに際しては、押出伝熱管3を構成するアルミニウム合金のマトリックスの一部が押出伝熱管3に塗布されたろう付け用塗膜7の組成物と反応してろうとなって、押出伝熱管3とフィン4とがろう付けされる。押出伝熱管3の表面ではろう付けによってフラックス中のZnが拡散する。
本実施の形態の構造によれば、ろう付けに際して、Si粉末の残渣もなく、良好なろう付けがなされ、押出伝熱管3とフィン4との間に十分なサイズのフィレット9が形成され、更に上述の犠牲陽極層3aが形成される。
【0027】
以上説明したように製造された熱交換器用押出伝熱管3は、MnとSiとFeとTiを規定の範囲含有し、Mn含有量とSi含有量の比を2.5を超える値としたアルミニウム合金の押出材から構成されているので、外表面にZnを設け、ろう付けしてZnの拡散を行って熱交換器を構成した場合、耐食性に優れた熱交換器を提供できる。
また、前記組成のアルミニウム合金からなる押出伝熱管3であるならば、押出性に優れた特徴を有する。
【0028】
次に、前記押出伝熱管3を用いて前記ろう付けにより形成された熱交換器において、ろう付け熱処理後あるいはZn拡散後において、円相当径1.0μm以上の金属間化合物が3000個/mm
2以下に規定されている。
金属間化合物数を3000個/mm
2以下に規定することで耐食性を向上させる効果がある。
以上説明のように、上述の組成のアルミニウム合金からなる押出伝熱管3を用いることで優れた耐食性を備えた熱交換器100を提供できる。
【実施例】
【0029】
表1に示す組成の押出伝熱管用アルミニウム合金の鋳塊を均質化処理した後、押出加工することにより、幅22mm、高さ(厚さ)1.2mm、29穴の偏平押出伝熱管を作製した。
アルミニウム合金鋳塊に対し均質化処理を施す場合、以下の表2に示すように室温〜450℃間の加熱速度を調整し、450℃〜均質化処理間の加熱速度を調整し、均質化処理温度と均質化処理時間を調整し、均質化処理〜200℃間の冷却速度を調整し、各々の条件にて得られたアルミニウム合金を用いて偏平押出管を作製し、試験試料とした。
【0030】
次に、実施例3、4、5以外の例は偏平押出伝熱管の表面と裏面に、Zn溶射した。
実施例3はKZnF
3粉末(D(50)粒度2.0μm:10g/m
2)を塗布した。
実施例4のろう材組成物は、Si粉末(D(50)粒度4μm:3g/m
2)と、KZnF
3粉末(D(50)粒度2.0μm:10g/m
2)の混合物Aを用いた。
また、実施例5は、Si粉末(D(50)粒度4μm:3g/m
2)と、KZnF
3粉末(D(50)粒度2.0μm:10g/m
2)とノコロックフラックス(アルキャン社商品名)(K
3AlF
3+KAlF
4:10g/m
2)との混合物Bを用いた。
【0031】
Zn層を塗布した押出伝熱管を試験体として窒素雰囲気の炉内に収容し、以下の表2に示す温度に3分保持する条件で加熱処理を行った。この加熱処理により、押出伝熱管の表面には犠牲陽極層が形成される。
押出偏平管について、SWAAT20日間の耐食性試験を行った。
以下の表1、表2にアルミニウム合金の組成、表面Zn層の種類、ろう付けに相当する加熱処理後に得られた押出伝熱管表面の金属間化合物の個数(個/mm
2)、均質化処理条件、加熱目的、加熱温度、耐食性、押出性の評価を併記した。
押出性の評価は、押出圧力、押出速度、伝熱管表面状態の評価であるが、押出圧力が高すぎて押し出すことができない評価品、ピックアップ等の表面欠陥が多量に発生した評価品を×評価、表面欠陥がほとんど見あたらず、押出圧力、押出速度の値(目標とする押出速度に対して押出圧力が低ければ低いほど押出性は良い)からその他評価を表記した。アルミ合金である3102、3003と比較して、押出性が3102と同等以上であれば◎、3102より劣るが3003よりも良好であれば○とした。△は3003と同等の結果である。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1と表2に示す比較例1、2の試料は、Mn含有量とSi含有量比(Mn%/Si%)が0.5、2の試料であり、Mn含有量とSi含有量比の値が2.5を下回るので耐食性が低下した。
表1と表2に示す比較例3の試料は、Mnが多すぎる試料であるが、押出性に劣り、比較例4の試料は、Si含有量が少ない試料であるが、押出性に劣る結果となった。
【0035】
表1と表2に示す比較例5の試料は、Si含有量が多すぎ、Mn含有量とSi含有量比が1.2の試料であるが、耐食性に劣り、押出性も問題を生じた。
表1と表2に示す比較例6の試料は、Fe含有量が多すぎる試料であるが、耐食性に劣り、比較例7の試料はTiが少ない試料であるが、耐食性が若干劣り、比較例8の試料はTiの含有量が多すぎて押出性に劣る結果となった。
表1と表2に示す比較例9の試料は、Cuの過剰添加により、腐食速度の悪化や粒界腐食を発生する問題を生じた。
表1と表2に示す試料10、11の試料は、Mg、Cr共に押出成形時の変形抵抗を高めるため、これら元素の過剰添加による押出圧力の増加に伴うウエルド部の優先腐食に問題を生じた。なお、押出伝熱管においてウエルド部に含有元素が偏析している場合にウエルドラインに沿ったような形で優先腐食を発生する。
【0036】
これらに対し、実施例1〜38の各試料は、耐食性に優れ、押出性の面においても問題のない結果となった。
ただし、実施例31〜34の試料は、均質化処理時の室温→450℃の加熱速度を、40℃/hあるいは190℃/hとした試料、均質化処理時の450℃→均質化処理温度までの加熱速度を、5℃/hあるいは100℃/hとした試料であるが、押出圧力の面で押出性にわずかに問題を生じ、耐食性の面でも若干悪化した。
実施例35、36の試料は均質化処理〜200℃間の冷却速度を20℃/hあるいは500℃/hとした試料であるが、押出圧力の面で押出性にわずかに問題を生じ、耐食性の面でも若干悪化した。
以上のことから、均質化処理において室温〜450℃間の加熱速度が50〜180℃/h、450℃〜均質化処理間の加熱速度が10〜80℃/hの範囲が望ましいと思われる。また、均質化処理〜200℃間の冷却速度が50〜400℃/hであることが望ましいと思われる。
【0037】
実施例37、38の試料は、均質化処理の温度を430℃とした試料であるが、耐食性に若干劣り、押出伝熱管表面状態の面で押出性にわずかに問題を生じた。以上のことから、均質化処理温度は450℃以上で行うことがより好ましいと思われる。