【実施例】
【0081】
(実施例1:ある種の腫瘍細胞株と共にNK細胞をプレインキュベーションするとNK抵抗性細胞の溶解の程度が有意に増大する)
正常なドナーNK細胞をCTV−1細胞と共にプレインキュベーションすると、Raji細胞の溶解%が顕著に増大する(p<0.001)(
図2A、3A、および4A)。CTV−1細胞は「活性化腫瘍細胞」である。
【0082】
HL−60(
図2A、3A、および4A)またはRaji細胞(
図3Aおよび4A)とのプレインキュベーションは、NK細胞がRaji細胞を溶解するのを活性化する効果がより弱いか、あるいは全く無かった。HLA−KIR不一致の正常な同種異系PBMCとのプレインキュベーションは、NK活性化を誘導しない(
図4A)。これらの実験において、腫瘍細胞は、Daudi細胞株およびRaji細胞株と同様に、正常レベルのMHCクラスI抗原を発現している。Daudi細胞およびRaji細胞は両方とも、クラス1およびクラス2両方のKIRの会合を引き起こすHLA−C分子を発現する。
【0083】
CTV−1とのプレインキュベーションは、Raji、Daudi、JOSK、およびHL−60など、様々な腫瘍細胞株の溶解の程度の増大を引き起こす(
図2B)。
【0084】
(実施例2:NK細胞活性化のための必要条件の調査)
CTV−1細胞によるNK活性化への、固定およびブレフェルジンA(BFA)の影響を、複数の正常ドナーを用いて調査する。
図3Bに示す通り、腫瘍細胞の固定によって反応が停止されないので、NK活性化の誘導は、腫瘍細胞株との接触を必要とするが、サイトカインの分泌を必要としない。プレインキュベーション中のブレフェルジンAの添加によって活性化された状態の誘導が阻止されるので、NK細胞は、腫瘍細胞の結合に反応するのにタンパク質を合成する必要がある。
【0085】
(実施例3:KIR会合の影響の調査)
刺激フェーズ中におけるKIR会合(KIR ligation)の影響を調査するために、HLA−KIRが一致した刺激性腫瘍細胞株の使用と、不一致な刺激性腫瘍細胞株の使用とを、NK細胞がRaji細胞を溶解することへの刺激に関して比較する。上記刺激性腫瘍細胞株によるNK活性化の閾値はKIR会合の非存在下の方が低いようであるが、上記腫瘍細胞株は、ドナーNK細胞に対してHLA−KIRが一致している必要はない(
図6A)。
【0086】
別の実験では、正常なドナーから精製されたNK細胞を、それらのHLA−A、−B、および−C型がCTV−1細胞とKIR−リガンド一致であるか、不一致であるかに基づいて選択する。CTV−1細胞は、HLA−Cタイプ2ホモ接合型であり、HLA−Bw4アレルを発現する。したがって、それらはNK細胞上のKIR2DL1およびKIR3DLIの会合を引き起こす。KIR2DL1を発現するNK細胞、KIR2DL1およびKIR3DL1を発現するNK細胞、ならびにKIR2DL2/3のみを発現する細胞を用いたNK:CTV−1共培養が確立されている。KIR2DL2/3のリガンドは、CTV−1刺激因子細胞には存在しない。したがって、NK活性化工程への、「自己性喪失」の貢献を評価することが可能である。HLA−/KIRが一致しているドナーと、不一致なドナーとの両方からのCTV−1によってAMLANK(AML活性化NK細胞)が生成されており、一致しているドナーからのAMLANKの方が、より大きな不均一性を示すが、特異的な溶解の程度には有意な相違がない(
図6B)。溶解の程度は、IL−2での非特異的な活性化によって得られたものと同程度である(
図7A)。
【0087】
末梢血NK細胞のKIR表現型は、個体のHLAによって完全に限定されているわけではなく、NK細胞が、自己MHCに適したKIRをもたないことも、さらにはその個体に存在しないHLAアレルに特異的なKlRを発現することさえもよくある。別の実験では、正常なドナーからのNK細胞を、CTV−1と共に終夜、共インキュベーションし、KIRの発現およびCD69の発現に関して表現型判定を行う。CD158bのリガンドはCTV−1には存在しないが、CD158aおよびCD158e1を発現する細胞も、CD158aまたはCD158e1が不在であるけれどもCD158bを発現する同じドナーからのNK細胞と同等なレベルの活性化を示すので、CTV−1によって誘導されるNK活性化がKIR不一致を有するNK細胞に限定されないことは直ちに明らかである(
図7c)。CTV−1によって媒介される活性化、およびRajiの溶解におけるKIRの役割をより正確に調査するために、NK細胞を、CTV−1刺激因子細胞のHLAへのそれらのKIR適合性に関して、フローサイトメトリー選別によって表現型判定し、選別する。フロー選別されたNK細胞の部分集合は、直接CTV−1細胞と共にインキュベートするか、あるいはNK細胞から抗KIR抗体を排除してKIR:HLA相互作用を遮断できないようにして終夜インキュベートする。いずれの場合も、CD158aおよびCD158e1を発現するNK細胞は、同じドナーからのCD158a/e1−ve NKと比較して同程度なRaji細胞の溶解を示す(
図7d)。
【0088】
(実施例4:原発性白血病細胞の溶解)
CTV−1活性化NK細胞は、HLA−KIRが一致しているAML細胞またはRaji細胞と共にプレインキュベートされたNK細胞と比較した場合、NK抵抗性の腫瘍細胞株を溶解させる能力に加えて、原発性白血病細胞を溶解させる能力が大幅に増大していることも示されている(
図4BおよびC)。
【0089】
同種異系ドナーからのAMLANK細胞は、すべてのFAB型の原発性AML細胞を溶解できる(
図4C)。これらの細胞は、原発性CLL細胞も、1:1のエフェクター:標的細胞比で、殺作用のレベルは低いながら溶解させる。比較的にNK抵抗性の乳癌細胞株であるMCF−7(実施例5)、ならびに乳癌および卵巣癌の患者からの切除組織から単離された原発性腫瘍細胞(
図4D)がAMLANK細胞に対して極めて感受性であることが注意を引いた。
【0090】
2人のHLA同一ドナーおよび彼らそれぞれの白血病を有する同胞群の研究において、HLA不一致の必要条件がないことが確認されている。患者0100のHLA同一同胞群ドナーからのAMLANK細胞は、疾患を呈しているこの患者から採取された凍結保存CML芽球を効果的に溶解させる。この溶解は、1:1のE:T比で明らかであり、E:T比を増大させると強化された。対照的に、同じドナーからのNK細胞は、10:1という最も高いE:T比でさえ、CML芽球を溶解させることができなかった。同じことが、AML M2を発症していた患者0359のHLA同一同胞群ドナーからのAMLANK細胞を用いて観測された。この患者の発症芽球は凍結保存されていた。
【0091】
(実施例5:CaBr細胞株の溶解)
乳癌細胞株MCF−7は、4時間のインキュベーション時間の後、E:T比5:1でのAMLANK溶解に極めて感受性であった(
図4C)。
【0092】
(実施例6:正常な造血細胞への影響の調査)
上記2種類の腫瘍細胞株で、ハプロミスマッチ(haplo−mismatched)の正常ドナーNK細胞を刺激しても、KIR一致(自系)またはKIR不一致(ハプロ1またはハプロ2)の正常PBMCに対する溶解反応を開始しない(
図5A)。
【0093】
同種異系AMLANK細胞の腫瘍特異性を調査するために、正常なドナーからNK細胞を単離し、終夜、CTV−1細胞で活性化するか、あるいは培地中に維持する。その後、正常な自系PBMCおよび同種異系PBMCの溶解に関して、これらのAMLANK細胞を、一致しているNK細胞と比較する。NK細胞もAMLANK細胞も自系PBMCを溶解せず、また、それらの細胞がHLA−C不一致な正常ドナーからのPBMCを溶解することもない(
図5B)。AMLANK細胞による骨髄抑制の可能性を判定するために、5人の正常ドナーからの骨髄を用いて造血性コロニー形成アッセイを確立し、HLA−C不一致ドナーからのAMLANKを、比率を増大させながら添加する。CFU−GM、BFU−E、およびCFU−GEMMは、HLA不一致AMLANKとの共インキュベーションによる影響を受けない(
図5C)。
【0094】
(実施例7:AMLANK細胞による溶解の調査)
AMLANK細胞と、同じドナーからの休止NK細胞との比較およびIL−2で刺激されたNK細胞(リンフォカイン活性化キラー細胞−LAK)との比較は、同程度なRajiの溶解を示す(
図7A)。
【0095】
高E:T比(10:1)の休止NK細胞と対照的に、AMLANK細胞は、1:1の比率でさえ、検出可能な発症白血病芽球の溶解を行える(
図7B)。波線(
図7B中)は、AML芽球の特異的溶解の程度を表す。これは、化学療法後のAML患者における継続的な再発に関連しているものとして、本発明者らが以前に報告しているものである(Lowdellら(2002)Br.J.Haematol.117巻821〜7頁)。
【0096】
(実施例8:CD69の重要性の調査)
正常なドナーNK細胞を等しい数の照射されたCTV−1細胞と共インキュベーションすると、NK細胞上のCD69の急速かつ持続的な発現が誘導される(
図8A)。精製されたNK細胞を、PKH−26で標識された等しい数の照射されたCTV−1細胞と混合する。指示されている時点でアリコートを取り出し、抗CD56 FITCおよび抗CD69 APCで標識し、洗浄し、フローサイトメトリーによって分析する。前方角光散乱(forward angle light scatter)(FSC)およびPKH−26発現に基づいて、CTV−1細胞を分析から除外し、FSCおよびCD56発現に基づいて、NK細胞を積極的に含める。結果は、10人の正常ドナーからのものを提示し、CD56+ NK画分中のCD69+ve細胞の割合として表す。
【0097】
照射されたCTV−1の存在下または非存在下で正常なドナーNK細胞(n=10)を終夜インキュベートした場合、フローサイトメトリーによる、さまざまな活性化リガンド候補および抑制リガンド候補の発現に関する、一致している対の比較は、CD69発現には有意な増大があるが(p<0.001)、検査された他の刺激性リガンドにはいずれにも増大がない(
図8B)ことを示している。CD16の発現は減少する。CD69の上方制御は、ブレフェルジンAの存在下で阻止される(データは示されていない)。
【0098】
E:T比1:1でRaji細胞と共に共インキュベートされたAMLANK細胞は、免疫シナプスにおける共焦点顕微鏡法およびCD69のキャッピングによると、60分のときに接合形成を示す。
図9Aは、単一のRaji細胞に接合した、正常ドナーからの単一のAMLANK細胞を示す。接合体は、抗CD69 FITCと、核染色用のDapiとで標識されている。組換体ヒトCD69を記載されている通りに生成し、リフォールディングされたタンパク質の上清をHPLCによって分画する。還元条件下でのウェスタンブロットによって評価した場合、画分F2およびF3が単量体rCD69を含有している。画分4は、かなり高濃度のrCD69を含有しており、これは、DTTの存在下では単量体として、また、非還元条件では単量体および2量体の両方として検出可能である(
図9B)。rCD69は、親の細菌株(レーンP)にも、試験された他のすべてのHPLC画分にも存在しない(データは示されていない)。標識されたRaji細胞のフローサイトメトリー分析は、rCD69を含有しているHPLC画分でコーティングされたナノ粒子のみと陽性結合することを示す(
図9Cでは影付きのヒストグラム)。この結合は、共焦点顕微鏡法(D)およびフローサイトメトリー(G)で確認される。悪性B細胞株と対照的に、正常B細胞はビーズに結合しない(E)。CD69L発現も、すべての健康なドナー(n=3)からのNK感受性K562細胞(
図9H)、正常T細胞(
図9I)、正常B細胞(
図9J)、および正常NK細胞(
図9K)で欠失している。CD69L発現も、Daudi細胞、Jurkat細胞、MCF−7細胞、およびARH77細胞を含めた、T−ANKに媒介された溶解に感受性の他の細胞株で検出された(表1)。
【0099】
【表1】
260μg〜1mgの画分2または4と共にプレインキュベーションされたRaji細胞(ナノ粒子の非存在下)は、rCD69を含有しない画分1とのプレインキュベーションと対照的に、AMLANKによるRaji細胞の溶解を有意に抑制する(F)。
【0100】
要約すると、本発明者らは、活性化NK細胞上に発現されたCD69が、自系AML細胞との免疫シナプスでキャッピングすることを以前に示しており(Lowdellら(2002)、同上)、さらに現在では、AMLANKとRaji細胞との間のシナプスでもこれを確認している(
図9A)。
【0101】
理論に拘泥するものではないが、これらの新知見は、CD69リガンド(CD69L)がAMLANK感受性の腫瘍細胞で発現されていることを含意する。CD69Lは現在、未知である。
【0102】
(CD69はT−ANKによる腫瘍限定殺作用に重要である)
T−ANK活性におけるCD69:CD69L相互作用の役割を確定するために、RAJI溶解アッセイ前に、CTV−1で刺激した後、CD69+ T−ANK細胞をCD69−ve細胞から選別する。CD69+ve画分は、未分画のT−ANK細胞の活性の83.7%を媒介し、一方、CD69−ve NK細胞は5.5%を示す(
図9M)。CD69がT−ANK誘導で重要な役割を有することは、rCD69の存在下におけるRAJI細胞溶解の抑制によって確認される。RAJI細胞をrCD69と共にプレインキュベーションすると、RAJI細胞の溶解の程度が有意に低下し、ほとんど休止NK細胞による溶解のレベルにまでなる。この効果は、RAJI細胞をBSAまたは熱変性されたrCD69と共にプレインキュベートした場合には観測されない(
図9N)。
【0103】
予測された通り、rCD69は、休止NK細胞によるK562の溶解も、T−ANK細胞によるものも阻止しない(
図9O)。
【0104】
KIRを会合させる関連のHLAが存在しないときでさえ、AMLANK細胞による溶解に対する抵抗性を正常造血細胞が有することは、これらの腫瘍細胞が、NK溶解の原因となる腫瘍限定のリガンドを発現していることを含意する。ブレフェルジンAの存在下でAMLANK産生が存在しないことは、AMLANKによって媒介される溶解のためのシグナル伝達物質が、刺激性腫瘍細胞との共インキュベーションで新たに合成されることを確認する。既知なNK誘導分子の中で、CD69のみがプレインキュベーション中に上方制御されている。
【0105】
CD69は、多くの造血細胞で活性化の際に発現されるホモ2量体糖タンパク質である。CD69 KOマウスは増強された抗腫瘍活性を示し(Espluguesら(2003)J.Exp.Med.197巻1093〜1106頁)、マウスNK細胞におけるモノクローナル抗体によるCD69の遮断はそれらの細胞の溶解活性を増強する(Espluguesら(2005)105巻4399〜4406頁)ので、マウスでのデータはCD69会合はNK媒介の溶解に対して抑制的であることを含意するが、ヒトNK細胞では、CD69は会合が引き起こされた際に腫瘍細胞の溶解を惹起することが示されている(Demanetら(2004)Blood 103巻3122〜3130頁)。組換え体の2量体ヒトCD69分子を産生させることによって、本発明者らは、腫瘍細胞は、正常な造血細胞には存在しないCD69リガンドを発現することを示した。さらに、CD69Lを用いた遮断実験は、活性化NK細胞上のCD69が、AMLANKの細胞障害性を誘導する主要な誘導分子であることを確認する。これは、AMLANK:Raji細胞接合によって、AMLANK細胞内でのSyk活性化が引き起こされるという証拠によって支持される(データは示されていない)。このSyk活性化は、CD69によって媒介されるシグナル伝達に関連していることが知られている現象である(Pisegnaら(2002)169巻68〜74頁)。
【0106】
(実施例1〜8のための材料および方法)
(細胞株および初代細胞)
すべての細胞株は、ATCC(American Typed Cell Collection)から入手し、10%FCS、100i.u.ペニシリン、および100i.u.ストレプトマイシンが補足されたRPMI 1640(すべてGibco社(英国スコットランド、Paisley)販売)からなる「完全培地」(CM)中で連続浮遊培養で維持する。新規の末梢血単核細胞(PBMC)は、正常な健康なドナーからのヘパリン化静脈血から、不連続密度勾配分離によって単離されたものであり(Lymphoprep社(英国、Nycomed))、瀉血の4時間以内に使用する。
【0107】
(免疫表現型判定)
細胞表面の抗原発現を分析するために、100μlのHBSS中にある10
5の細胞を、製造会社が推奨する濃度の蛍光色素結合MAbと、室温で15分間インキュベートする。洗浄の後、細胞をフローサイトメトリー(CeliQuestソフトウェアを備えたFACS Calibur、Becton Dickinson社(英国))によって分析する。前方および側方光散乱特性を用いて、生存リンパ球集団を分別した後、各試料から少なくとも10000の細胞を取得する。すべての蛍光色素結合mAbは、BD社(英国、Cowley)またはBeckman Coulter社(英国、High Wycombe)から購入されている。
【0108】
(ヒトNK細胞および標的細胞の精製)
新規のヘパリン化末梢血液試料は、インフォームドコンセントの後に、正常な健康ドナーと、診断において急性白血病を有する患者および慢性白血病を有する患者(表1)と、同種異系幹細胞移植に選択された患者のHLA同一PBSC同胞群ドナー2人とから入手されている。同種異系幹細胞移植に選択された患者は、彼らの疾患発症時に骨髄試料を寄贈した。この骨髄試料からの白血病芽球が複数のアリコート中に凍結保存された。
【0109】
単核細胞(PBMC)は、静脈血から不連続密度勾配分離によって単離され(Lymphoprep社(英国、Nycomed))、HLAクラスI AおよびBアレルに関しては低分解能の技法によって、HLA−Cwに関しては高分解能でタイプ判定されている。CD56+ CD3−細胞は、CD56 Multisortキット(Miltenyi Biotec社(独国))を用いた直接的免疫磁気分離、およびCD3 FITCおよび抗FITCビーズを用いたその後の除去によって、PBMCから精製する。選択されたすべての細胞について、CD56+が>98%、CD3+が<3%であることを確認し、CM中に再懸濁する。
【0110】
【表2】
(NK細胞の腫瘍特異的活性化)
新たに単離されたNK細胞は、CM中に密度10
6/mlに懸濁し、等しい数の照射(30Gy)された腫瘍細胞と共に37℃/5%CO
2で20時間インキュベートする。刺激因子腫瘍細胞は、詳細に特徴付けている骨髄性白血病細胞株である、U937、HL−60、およびCTV−1に限定される。これらの細胞株は、DTMZ貯蔵所から入手した。細胞障害性アッセイでの標的細胞には、NK抵抗性のRAJI細胞株(DTMZ細胞バンクから入手)、乳癌細胞株MCF−7(ATCCから入手)、およびRoyal Free Hospitalに通院する患者からの原発性白血病細胞が含まれる。各骨髄性白血病細胞株および標的細胞は、上述の通りHLA判定する。
【0111】
(細胞障害性アッセイ)
標的細胞を培養物または冷凍保存物から回収し、HBSS中で洗浄し、その後、1.0mlのPHK−26標識化希釈剤中に、密度4×10
6/mlに再懸濁する。4μlアリコートのPKH−26を1.0mlの標識化希釈剤中に添加し、その後、細胞懸濁液に室温で2分間、添加する。無希釈のウシ胎仔血清1.0mlを1分間添加して、標識化反応を停止させる。最後に、標識された細胞をCMで2回洗浄し、CM中に10
6/mlに再懸濁する。RPMI 1640(10%FCS)100μl中にある、PKH−26で標識された50000の標的細胞を400μlのエフェクター細胞に添加し、200g、1分間でペレットにする。
【0112】
細胞障害性は、37℃、4時間の細胞障害性アッセイを用いて、3つ組の試料で測定する。インキュベーション時間の後に、細胞をTo−Pro−3ヨウ化物(Molecular Probes社(米国、Oregon))のPBS溶液(1μM)中に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析する。赤色蛍光に関する電気的ゲート操作の後に、1024チャネル分解能で少なくとも10000の標的細胞を取得し、3つ組の試料から得られたTo−Proヨウ化物陽性細胞の平均比率を測定する。エフェクター細胞の非存在下でインキュベートされた細胞から、バックグランドの標的細胞死を測定する。細胞によって媒介された細胞障害性は、3つの試料から平均された、バックグランド細胞死を超えた殺作用のパーセント、すなわち、
(試験中の細胞溶解%−自発的溶解%)の平均
として報告する。
【0113】
これらの実験では、標的細胞の5%未満で自発的溶解は観測されている。一部の実験では、標識化のストラテジーを逆にし、エフェクター細胞をPKH−26で標識し、細胞溶解の分析をPKH−ve画分に限定する。この反転によって、本発明者らの初期の発見が細胞の標識化による人工産物によるものではないことが確認された。
【0114】
(遮断アッセイ)
上述の通りにT−ANK細胞障害性アッセイを準備する前に、PKHで標識されたRAJIおよびK562標的細胞を、rCD69または対照試薬(10
5の細胞あたり6μg)と共に4℃で30分間プレインキュベートする。
【0115】
(組換え体2量体ヒトCD69の産生および精製)
XhoIおよびHindIII制限部位ならびに終止コドンを導入するプライマー(CD69 For 5’GCG CCT CGA GCA ATA CAA TTG TCC AGG CCA 3’;CD69 Rev 5’CGC GAA GCT TAT TAT TTG TAA GGT TTG TTA CA 3’)を用いて、CD69の細胞外ドメイン(残基65〜199)をcDNAからポリメラーゼ連鎖反応によって増幅する。標準的な技法を用いて、PCR産物をpET−19bプラスミド(Novagen社)のXhoI−HindIII制限部位にサブクローニングして、pET−19b/69を構築する。pET−19b/69のNdeI部位とXhoI部位との間に、下記のプライマー、すなわち、5’ CAT ATG CAT GCG GGC GGC CTG
AAT GAA ATT CTG GAT GGC ATG AAA ATG CTG
TAT CAT GAA CTC GAG 3’ および5’ CTC GAG TTC ATG ATA CAG CAT TTT CAT GCC ATC CAG AAT TTC ATT CAG GCC GCC CGC ATG CAT ATG 3’を用いて、大腸菌(E.coli)BirAビオチンタンパク質リガーゼのアミノ酸アクセプター配列をコードするDNA配列を添加する。DNA配列は、ABI Prism 377 DNAシークエンサーを用いて、自動配列決定によって確認する。
【0116】
Hisタグ付きの組換え体ヒトCD69を、BL21(DE3)pLysS(Novagen社)中で37℃で発現させる。100μg/mlアンピシリンおよび34μg/mlクロラムフェニコールを含有する1リットルバッチの2×TY培地中で培養物を成長させる。培養物のOD
600が約0.6に達した後で、1mMのイソプロピル−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加して、CD69の発現を誘導する。細胞をさらに4〜5時間増殖させ、その後、4℃、5000gで20分間の遠心分離によって採取する。細胞ペレットは−80℃で保存する。
【0117】
250mlの培養物から得た細胞ペレットを15mlの氷冷再懸濁緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0)中に再懸濁する。細胞を、16ゲージの針に複数回、通過させることによって破砕し、その後、4℃、12000gで15分間、遠心分離する。ペレットを単離緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、2% Trition−X100、2M尿素)で洗浄し、その後、再度、遠心分離する。この過程をもう一度反復する。最後に、ペレットを再懸濁緩衝液で洗浄し、その後−80℃で保存する。
【0118】
精製およびリフォールディングの前に、ペレットを可溶化緩衝液(6Mグアニジン塩酸、20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、10mMイミダゾール)中に再懸濁し、0.45μmのフィルターに通し、その後、リフォールディング緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、6M尿素、10mMイミダゾール)で事前に平衡化された、5mlのニッケル付きHiTrapキレートカラム(Amersham、GE Life science社(英国))に添加する。100%リフォールディング緩衝液から100%洗浄緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、10mMイミダゾール)にまで希釈する線形勾配を介して、徐々に尿素を除去することによって、タンパク質をリフォールディングさせる。これは、HPLCシステム(Varian Technologies社)を用いて、5ml/分間の緩衝液250mlを用いて行う。リフォールディングの後、タンパク質を溶出緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、500mMイミダゾール)で溶出する。
【0119】
PD10カラム(Amersham、GE Life science社(英国))を用いて、画分を10mM Tris−HCl pH8.0に緩衝液交換し、製造会社の指示に従って、基質10nmolあたり2.5μgのBirA酵素(Avidity Denver社(米国))と共に30℃で終夜インキュベートする余分なビオチンを除去し、タンパク質を、カットオフ分子量10000ダルトンの遠心管(Vivascience社(英国))中の50mlのHBSSで洗浄することによって濃縮し、ELISAによってrCD69含有量を評価する。
【0120】
フローサイトメトリーによってCD69Lの発現をアッセイするために、以前の記載されている通り(Brownら(1988)J.Exp.Med.188巻2083〜2090頁)、4℃、40分間の回転インキュベーションによって、5μgのビオチン化rCD69を、アビジンコーティングされた黄色蛍光ビーズ(Spherotech社)に結合させる。凝集を防止するために、タンパク質ビーズ結合体を短時間、超音波処理し、10
5の標的細胞と共に、氷上で60分間インキュベートする。結合した細胞をHBSSで洗浄する。同時事象による取得を防止するために、フローサイトメトリーでの取得は最大でも1秒あたり40事象で行う。各実験の陰性対照として、5μgの熱変性されたrCD69の結合を用いる。
【0121】
(実施例9:活性化NK細胞の、予後不良AML患者を治療するための使用)
上記の通り、Millerら(2005)は、HLAのハプロアイデンティカルな健康ドナーからのNK細胞を、シクロホスファミドおよびフルダラビンの化学療法の後で再発したAMLと有する患者に与える方法を最近記述した。これらの患者は、NK細胞の移植、増殖、および存続をin vivoで示した。
【0122】
Millerによって記述された方法を、本発明で使用するために、以下の変化を導入することによって適合させる。すなわち、
(i)本発明による注入および以下に記載する過程の使用前に、同種異系NK細胞を予め活性化し、
(ii)NK細胞は、ハプロアイデンティカルである近縁の正常ドナーから、直接的免疫磁気分離(CliniMACS(登録商標))によって選択されるであろう。
【0123】
Millerの研究で注入されたNK産物は、純粋ではなく(NKは約40%)、T細胞およびB細胞が混入していた。1つの症例ではドナー産物中のB細胞クローンに由来するEBVリンパ腫が原因で患者が死亡した。このB細胞クローンは、注入後のリンパ球減少期間中にin vivoで形質転換した。
【0124】
NK細胞がハプロアイデンティカルである近縁の正常ドナーから、直接的免疫磁気分離(CliniMACS)によって選択される場合、純度95%超のCD56+細胞が得られる。混入NKT細胞の程度は、ドナー依存的であるが、Millerの研究で注入されたT細胞の用量を超える可能性は低い。NKTの混入が大きいという不測の事態では、Millerによって投与されたT細胞の用量を超えないことを確実にするために、注入されるNKの用量を低減することができる。アロ反応性のNK細胞は、MLR中のCD69発現によって同定することができ、そのような細胞を、注入前の培養前後に、KIR発現に関して表現型判定を行う。本発明者らは、移植片対宿主疾患を予測するための皮膚外植体モデルも確立している。このin vitroアッセイは、NK細胞注入の品質保証に用いることができる。
【0125】
白血病芽球は、AML患者からの生存細胞として凍結保存する。したがって、患者のAML芽球に対する溶解活性に関してin vitroでドナーNK産物を試験し、その結果を治療に対する臨床反応と相関させる。
【0126】
患者は以下の判定規準で選択される。
【0127】
すなわち、インフォームドコンセントを与えることができ、かつCR1を超えるHLAハプロアイデンティカルなドナー急性骨髄性白血病細胞を有する成人であること、
HLAが一致している同胞群または無関係のドナーからの同種異系HSCTとして不適格であること、
シクロホスファミドおよびフルダラビンを用いた高用量化学療法に適していることである。
【0128】
患者は、5日間連続した毎日の注入によって60mg/m
2シクロホスファミドおよび25mg/m
2フルダラビンを受容した。5日目に、同意のあるドナーに1回のアフェレーシスを行い、2〜3×10
10の単核細胞を得る。NK細胞は、抗CD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)およびCliniMACS装置を用いて、免疫磁気選択によって単離し、等しい数の照射されたCTV−1骨髄性白血病細胞と共に終夜インキュベートして、腫瘍特異的な刺激を与える。
【0129】
終夜のインキュベーションの後に、遠心分離によって細胞を洗浄し、生存しているNK細胞を計数する。最初の5人の患者用には、用量5×10
6 NK/kgを調製し、次の5人の患者用には1×10
7/kgそして、最後の群の5人の患者用には2×10
7/kgを調製する。ドナーNK細胞のアリコートは、上述の通り、試験用に維持する。6日目に、1回のi.v注入で患者に彼らのドナーNK細胞を投与する。臨床的なGvHDに関して患者をモニターし、細胞特異的なキメラ化検査を最初の7日間は毎日、次の3カ月毎週、その後は12カ月目まで毎月行う。
【0130】
(実施例10:臨床用腫瘍活性化NK細胞(T−aNK)の産生計画)
(i)T−aNKのex vivo産生のためのプロトコル
造血幹細胞ドナーと同じ判定規準で、正常かつ健康な近縁ドナーを選択する。インフォームドコンセントを条件として、JACIE基準に従って感染症マーカーに関してドナーをスクリーニングし、アフェレーシス実施の適合性に関して医学的に評価する。追加に、各ドナーをアフェレーシス姉妹(apheresis sister)によって独立に評価する。
【0131】
同意したドナーに2時間のアフェレーシスを1回行い、25×10
9の単核細胞をACD抗凝血剤中に採取する。アフェレーシス収集バッグは、ドナー名、ドナー病院番号、ドナーの生年月日、レシピエント名、レシピエント病院番号、アフェレーシスの日時、および産物の容積で標識する。アフェレーシス収集物は、LCTスタッフのメンバーがユニットから収集し、承認されている容器に入れて、直接LCTに輸送する。
【0132】
LCTによって承認された際に、LCT産物データベースにアフェレーシス収集物を登録し、特有の産物番号を割り振る。データベースには、産物バッグ上に記載された詳細のすべてを再録し、さらにレシピエントの生年月日、レシピエントの体重、および、検査への受け入れおよび同意の際に患者に割り振った特有の検査番号を記録する。
【0133】
通常のSOPを用い、密度勾配分離によってアフェレーシス収集物を純粋な単核細胞画分にまで減少させる。単核細胞数およびフローサイトメトリーによるCD56+細胞の列挙を得るために1mlの試料を取り出す。2×10
7 NK/kg患者体重を得るのに必要な単核細胞画分の容積を250mlの無菌バッグ中に回収し、遠心法によって洗浄し、10%ウシ胎児血清で補足されたRPMI 1640培地(製薬使用用に承認されているバッチ−すべて培地はGibco社(英国、Paisely)の販売)中に5×10
6/mlに再懸濁する。
【0134】
(ii)CTV−1細胞株からの細胞膜の調製
CTV−1細胞(DSMZ組織バンク(独国、Braunschweig)から直接入手−マスター細胞バンク記録付き)は、Cellular Therapeutics,RFUCMSにおけるPaul O’Gorman研究室(MHRA公認組織バンク0029/00/00/0−03)において、密閉培養系(Lifecellバッグ、Baxter Healthcare社)内のRPMI 1640培地/10%FCS中、密度0.5〜1×10
6/mlの連続的な指数関数増殖で維持する。生産記録はすべてのバッチに関して保守し、これには、使用されたすべての試薬および使い捨て用品のバッチ番号と、個々の手順を行った全スタッフのイニシャルと、それらの手順の日付とが含まれる。生産過程で使用されたすべての機器の製造番号も記録する。
【0135】
細胞膜を調製するには、閉鎖式手順によって8mlアリコートを10mlの無菌Cryocyteバッグ(Baxter Healthcare社)に移し、−80℃の冷凍庫内に15分間置く。37℃のウォーターバス中で迅速に細胞を解凍し、その後、さらに15分間−80℃の冷凍庫内に戻す。細胞を再度ウォーターバス中で迅速に解凍する。40μlのパルモザイム(1000U/mlストック)を各培養バッグに添加し、その後37℃で30分間インキュベートする。
【0136】
DNAseを除去するために、2500×gで10分間の遠心分離によって洗浄した後に、膜調製物を4mlの無菌食塩水(注入用グレード)中に再懸濁し、121℃で5分間オートクレーブする。21℃まで冷却した後に、バッグを超音波処理水槽中に25秒間置き、オートクレーブ中に形成されている可能性のある凝集体を破砕する。
【0137】
手順の様々な段階における試料を採取することによって細胞膜の形成をモニターし、フローサイトメトリーによって、それらをCTV−1全細胞の前方角光散乱(FSC)および90°光散乱(SSC)と比較する。一例を
図10に示す。
【0138】
無菌性に関して、通常のSOPに従って膜調製物のバッチ検査を行い、無菌食塩水(注射用)中に総タンパク質濃度5mg/mlとして、バッチ番号、生産日、および有効期限の日付(製造日から6カ月)と共に、「CTV−1膜調製物−臨床グレード。−40℃より低温で保存すること」と標識された制御装置付き冷凍庫の中に−80℃で保存する。
【0139】
(iii)CTV−1膜調製物を用いたドナーNKの活性化
5×10
6/mlの選択されたドナー単核細胞を含有するLifecell培養バッグを、最終濃度10
7ドナーNK細胞あたり5mgの解凍されたCTV−1膜調製物で補足する。最大細胞用量である10
7 NK/kg患者体重を得るのに十分な数の単核細胞を培養する。細胞培養は、LCT内にある、Hepaフィルター濾過およびモニター付きのインキュベーター内で、37℃/5%CO
2で、最短16時間かつ最長26時間維持する。
【0140】
終夜のインキュベーションの後に、単核細胞を遠心法によって回収し、標識化緩衝液(詳細)中に再懸濁し、臨床グレードの抗CD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)と共に21℃で45分間インキュベートする。CD56+ NK細胞は、CiiniMACS(Miltenyi Biotec社)による免疫磁気選択によって単離する。CD56−ve細胞および残留CTV1膜調製物を除去するために何度も洗浄した後にカラムからNK+画分を回収する(細胞濃縮手順v3.02、Miltenyi
Biotec社)。CD56+細胞を回収し、RPMI1640中に10
8/mlで懸濁する。細胞は、通常のSOPに従って、必要な用量の単一アリコートで凍結保存する。冷凍保存の前に、品質保証検査用にアリコートを取り分けておく。
【0141】
(細胞数)
CD56+細胞の純度(75%超)
CD3+/CD56T細胞の混入(10
5/kg患者体重未満)
嫌気的/好気的細菌培養(製品出荷前には「陰性」)
4時間の細胞障害性アッセイで、NK抵抗性細胞株Rajiに対して検出可能なTaNK活性(同じドナーからの一致しているNK細胞と比較して、>25%のRaji溶解の増大によって判定する)。
【0142】
上記明細書中で参照されたすべての出版物を、参照により本明細書に組み込む。本発明の範囲および趣旨から逸脱していない、記載した本発明の方法およびシステムの様々な改変および変形が当業者には明らかであろう。特定の好ましい実施形態に関して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した通りの本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定するべきでないことを理解するべきである。実際、本発明を実行するための記載の形態の様々な改変形態が当業者には明らかであり、そのような改変形態も、添付されている特許請求項の範囲に包含されるものとする。