特許第5906207号(P5906207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5906207
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】カバーロック装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20160407BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20160407BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   G07D9/00 401A
   E05B65/00 E
   H05K5/03 D
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-42820(P2013-42820)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-170455(P2014-170455A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092152
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 毅巖
(72)【発明者】
【氏名】神田 信一
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 実公平04−028578(JP,Y2)
【文献】 特開平06−029674(JP,A)
【文献】 特開平04−076173(JP,A)
【文献】 特開2008−165630(JP,A)
【文献】 特開昭63−314895(JP,A)
【文献】 特開平11−145639(JP,A)
【文献】 特開2009−119938(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0261599(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0101953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
E05B 65/00
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の前面側に設けられてガススプリングで支持された跳ね上げ式のフロントカバーをロックまたはロック解除するカバーロック装置において、
前記フロントカバーの底部に開閉方向に離間して設置された第1の係止板および第2の係止板と、
前記第1の係止板および前記第2の係止板と係止することにより前記フロントカバーをそれぞれロック状態にし、前記第1の係止板および前記第2の係止板との係止状態を解除することにより前記フロントカバーをそれぞれロック解除状態にするカバー係脱部と、
前記装置の後側に配置され前記カバー係脱部とリンクすることにより前記カバー係脱部における前記第1の係止板との係止状態の解除操作を前記装置の後側から操作する操作部と、
を備え、前記カバー係脱部における前記第2の係止板との係止状態の解除操作は、前記第1の係止板との係止状態の解除操作により前記フロントカバーが開くことによってできた隙間から行うようにしたことを特徴とするカバーロック装置。
【請求項2】
前記カバー係脱部は、前記フロントカバーを閉じたときに前記第1の係止板と係止する第1の係止部材と、前記第1の係止板と前記第1の係止部材との係止状態を解除したときに前記第2の係止板と係止する第2の係止部材と、前記第1の係止部材および前記第2の係止部材を前記第1の係止板および前記第2の係止板と係止状態にする方向に付勢する第1の付勢部材と、前記第1の係止部材に連結されて前記操作部により前記第1の係止板と前記第1の係止部材との係止状態を解除する方向に前記第1の係止部材を付勢する第1のロック解除レバーとを備えていることを特徴とする請求項1記載のカバーロック装置。
【請求項3】
前記カバー係脱部は、前記装置の幅方向両側に前記第1の係止部材をそれぞれ配置し、前記第1の係止部材の中間位置に前記第2の係止部材を配置し、前記第1の係止部材および前記第2の係止部材を連結部材によって互いに連結したことを特徴とする請求項2記載のカバーロック装置。
【請求項4】
前記第1の係止部材は、前記連結部材の延在方向に見て前記第2の係止部材と重なるよう配置されていることを特徴とする請求項記載のカバーロック装置。
【請求項5】
前記第2の係止板は、前記フロントカバーが開いて前記第2の係止部材の係止部に到達したときの先端が前記第1の係止板よりも突出するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のカバーロック装置。
【請求項6】
前記操作部は、一端が前記第1のロック解除レバーと連結された第2のロック解除レバーと、前記第2のロック解除レバーの他端に穿設された貫通孔に挿通される摺動ピンと、前記第2のロック解除レバーの延在方向に対して長軸が傾斜し前記摺動ピンが挿通される長円形状のガイド孔を有する固定金具と、前記第2のロック解除レバーと前記固定金具との間に前記第2のロック解除レバーの延在方向に進退自在に配置されて一端には前記摺動ピンと係脱される第3の係止部材が形成され、他端には引っ張り操作を行う把手部材が形成された引き金具と、両端を前記引き金具および前記固定金具に係止して前記第3の係止部材を前記カバー係脱部の方向に付勢する第2の付勢部材とを備え、前記引き金具を前記装置の後側から引っ張ることにより前記第1の係止部材が前記第1の係止板との係止状態を解除するとともに前記第1の係止部材と前記第1の係止板との係止状態の解除直後に前記摺動ピンと前記第3の係止部材との係合状態が解除されるようにしたことを特徴とする請求項2記載のカバーロック装置。
【請求項7】
前記ガイド孔の両端間を前記摺動ピンが移動したときの前記引き金具の引っ張り方向における距離は、前記第1のロック解除レバーが前記第1の係止板と前記第1の係止部材との係止状態を解除するときに前記第1のロック解除レバーが移動する距離よりも長くしたことを特徴とする請求項6記載のカバーロック装置。
【請求項8】
前記第3の係止部材は、前記摺動ピンと係合される側に係止部が突出するように形成され、前記係止部の前記カバー係脱部の側における先端側に傾斜部が形成され、前記先端側とは反対側には前記引き金具の引っ張り方向に対して垂直方向に延びる垂直部が形成されていることを特徴とする請求項7記載のカバーロック装置。
【請求項9】
前記固定金具は、前記ガイド孔が形成された壁をそれぞれ有する第1の固定金具と第2の固定金具とを備え、前記第3の係止部材が前記第2のロック解除レバーと前記第1の固定金具との間に配置されていることを特徴とする請求項記載のカバーロック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカバーロック装置に関し、特に正面側に開閉可能かつ施錠可能に設けられたフロントカバーのロック解除を後扉側から実施するようにした装置に適用されて好適なカバーロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動預け払い機のような自動機において、点検、修理などを行う場合、フロントカバーや前扉を開放することにより、内部にアクセスすることになるが、このようなフロントカバーや前扉には、ロック装置が設けられている。ロック装置は、一般には、フロントカバーや前扉に設置されてキーなどにより施錠または解錠が可能な構成になっている。ただ、自動機に関しては、防犯上の観点から、接客側の正面にあるフロントカバーや前扉に鍵穴を設けないようにして、ロック装置の解錠を後扉側からのみ実施できるようにすることが考えられている。また、フロントカバーのように重量のあるものを起倒可能に支持するものとして、一般に、ガススプリングを用いる方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は自動機の正面側のカバーの開閉機構およびカバーロック装置の概要を示す説明図、図11はカバーロック装置の構成例を示す説明図であって、(A)はロック状態を示し、(B)はロック解錠状態を示している。
【0004】
自動機100は、図10に示したように、その正面側上部に跳ね上げ式のフロントカバー101が備えられている。このフロントカバー101は、重量があるため、ガススプリング102によって支持されており、ガススプリング102に封入されたガスのガス圧によって持ち上げられるようにしている。
【0005】
フロントカバー101には、カバーロック装置103が設けられており、後扉104を開けて、後扉104の側からの操作によりロック解除が可能なようにされている。すなわち、カバーロック装置103は、図11の(A)に示したように、鉤状の係止部105aを有する係止部材105と、自動機100の前側から後側に亘って延在されたロック解除レバー106とを備えている。
【0006】
係止部材105は、軸107を中心に回動自在に軸支され、スプリング108によって係止部材105を時計回り方向に付勢され、係止部105aがフロントカバー101の底部に設けられた係止板109と係合するようにしている。これにより、ガススプリング102のガス圧によって持ち上げられようとしているフロントカバー101をロック状態にしている。
【0007】
係止部材105は、軸107を挟んでスプリング108の取付位置とは反対側に摺動ピン110が固定されており、この摺動ピン110は、ロック解除レバー106の一端にてその短手方向に長く穿設された長孔111に遊嵌されている。ロック解除レバー106は、また、その長手方向に長く穿設された長孔112を有し、この長孔112は、図示しない固定部に固定されたガイドピン113,114が遊嵌されている。ガイドピン113,114は、ロック解除レバー106の引っ張り解除ストロークを決めるよう所定の間隔に離間されている。ロック解除レバー106は、その他端にロック解除のために引き操作を行うときに使用される引き金具115を備えている。
【0008】
フロントカバー101のロックを解除するには、図11の(B)に示したように、引き金具115を図の右方向に引っ張ると、係止部材105がスプリング108の付勢力に抗して反時計回り方向に付勢され、係止部105aが係止板109から外れる。これにより、フロントカバー101は、不図示のガススプリング102のガス圧によって持ち上げられ、自動機100は、フロントカバー101によって覆われた部分が開放されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−177838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ガススプリングにてフロントカバーを保持する構成の場合、後扉側からロック解除した後のフロントカバーの跳ね上がりが危険であるため、フロントカバーに人が接近しないように監視するための人員が必要であるという問題点があった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、保守員が一人であってもフロントカバーのロックを安全に解除することができるカバーロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では上記の課題を解決するために、装置の前面側に設けられてガススプリングで支持された跳ね上げ式のフロントカバーをロックまたはロック解除するカバーロック装置において、前記フロントカバーの底部に開閉方向に離間して設置された第1の係止板および第2の係止板と、前記第1の係止板および前記第2の係止板と係止することにより前記フロントカバーをそれぞれロック状態にし、前記第1の係止板および前記第2の係止板との係止状態を解除することにより前記フロントカバーをそれぞれロック解除状態にするカバー係脱部と、前記装置の後側に配置され前記カバー係脱部とリンクすることにより前記カバー係脱部における前記第1の係止板との係止状態の解除操作を前記装置の後側から操作する操作部と、を備え、前記カバー係脱部における前記第2の係止板との係止状態の解除操作は、前記第1の係止板との係止状態の解除操作により前記フロントカバーが開くことによってできた隙間から行うようにしたことを特徴とするカバーロック装置が提供される。
【0013】
このようなカバーロック装置によれば、装置の後側から操作部を引っ張り操作することにより第1の係止部材が第1の係止板から外れてロックが解除され、その直後に、第2の係止板が第2の係止部材と係止され、その解除は、装置の前面側から人手により行う。
【発明の効果】
【0014】
上記構成のカバーロック装置によれば、装置の後側からの操作による第1の係止板のロック解除と、装置前面での操作による第2の係止板のロック解除とを一人の保守員で行うことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】自動機の外観を示す斜視図である。
図2】自動機のフロントカバーを外した状態を示す斜視図である。
図3】カバーロック装置のカバー係脱部を示す図である。
図4】カバー係脱部の側面を示す説明図である。
図5】フロントカバーの底部を示す斜視図である。
図6】自動機の後扉側に配置されるカバーロック装置の操作部を示す分解斜視図である。
図7】カバーロック装置の操作部を摺動ピンの軸中心を水平方向に通る平面で切断した断面で示す部分断面図である。
図8】操作部の動作態様の説明図であって、(A)はフロントロック状態、(B)はフロント第1ロック解除状態、(C)はフロント第2ロック状態、(D)はフロント第2ロック解除開始状態、(E)はフロント第2ロック解除状態、(F)は引き金具待機状態を示している。
図9】フロントカバーを閉めるときの操作部の動作態様の説明図であって、(A)はフロントカバーが開いているときの状態、(B)は第1および第2の係止板が第1および第2の係止部材を乗り越えるときの状態、(C)は待機状態を示している。
図10】自動機の正面側のカバーの開閉機構およびカバーロック装置の概要を示す説明図である。
図11】カバーロック装置の構成例を示す説明図であって、(A)はロック状態を示し、(B)はロック解錠状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、自動機に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
図1は自動機の外観を示す斜視図、図2は自動機のフロントカバーを外した状態を示す斜視図、図3はカバーロック装置のカバー係脱部を示す図、図4はカバー係脱部の側面を示す説明図、図5はフロントカバーの底部を示す斜視図である。
【0017】
自動機1は、図1に示したように、たとえば、正面側上部に画面2があり、その下にカード挿入口3および通帳挿入口4が設けられ、その下に紙幣取引開口部5が設けられている。これら画面2、カード挿入口3、通帳挿入口4および紙幣取引開口部5以外の部分は、フロントカバー6によって覆われている。自動機1は、また、その背面に後扉7が設けられている。
【0018】
画面2は、取引メニューや操作案内の表示および取引の操作入力などに使用される。カード挿入口3は、キャッシュカードを挿入するためのものであり、通帳挿入口4は、通帳を挿入するためのものであり、紙幣取引開口部5は、預入または支払取引の際に紙幣が挿入または出力される部分の開口部である。後扉7は、紙幣の補充や点検・修理などの作業の際に開放されるものである。
【0019】
フロントカバー6は、自動機1の正面側の頂部に設けられたヒンジにより揺動自在に取り付けられており、自動機1の内部の両側に設けられたガススプリングによって起倒可能に支持されている。
【0020】
自動機1の内部には、図2に示したように、正面側にカバーロック装置のカバー係脱部10が配置されている。このカバー係脱部10は、図3に示したように、両端に自動機1の筐体に固定される固定金具11を有し、その固定金具11に固定された軸12に第1の係止部材13がそれぞれ回動自在に軸支されている。第1の係止部材13は、その一端に鉤状の係止部14を有し、他端には、スプリング15の一端が係止されている。スプリング15は、その他端が固定金具11に係止されていて、第1の係止部材13の先端側の係止部14を持ち上げるように付勢している。
【0021】
カバー係脱部10は、また、両側の第1の係止部材13の先端部が連結部材16によって互いに連結されている。この連結部材16には、その中間部分に、第1の係止部材13と同様の形状を有する第2の係止部材17が設けられている。第1の係止部材13および第2の係止部材17は、連結部材16の延在方向に重なるよう配置されている。連結部材16は、また、その中央部分にタッチ部18が形成されている。このタッチ部18は、紙幣取引開口部5および第1のロック解除の際にできたフロントカバー6と自動機1との隙間を介して挿入される指が触れる部分であり、これが第2のロック解除の際に操作される操作部となる。
【0022】
なお、このカバー係脱部10において、第1の係止部材13、連結部材16およびタッチ部18は、好ましくは、板金を打ち抜き、折り曲げ加工することで一体に形成されるのがよい。
【0023】
カバー係脱部10は、また、第1の係止部材13の一方にロック解除レバー19が連結されている。このロック解除レバー19は、図4に示したように、図4の左端部に短手方向に長く穿設された長孔20を有し、その長孔20には、第1の係止部材13に固定された摺動ピン21が遊嵌されている。これにより、ロック解除レバー19が図4の右方向に引っ張り操作されることにより、第1の係止部材13は、スプリング15の付勢力に抗して軸12を中心に反時計回り方向に回転され、フロントカバー6の第1のロック解除を行うことができる。
【0024】
そのフロントカバー6は、図5に示したように、底部に、第1の係止板22と第2の係止板23とが設けられている。第1の係止板22は、フロントカバー6の底部の前方側の両端にそれぞれ設けられており、フロントカバー6を閉じたときに、カバー係脱部10の第1の係止部材13によって引っ掛けられ、フロントカバー6を閉じた状態にロックする部分である。また、第2の係止板23は、第1の係止板22よりも後方位置に設けられており、第1のロック解除の直後に、カバー係脱部10の第2の係止部材17によって引っ掛けられる部分である。ここで、第2の係止板23は、第2の係止部材17の係止部に到達したときに第1の係止板22よりもその先端が長さAだけ突出するように形成されている。これにより、フロントカバー6の第1の係止板22とカバー係脱部10の第1の係止部材13との第1のロック解除直後に、フロントカバー6がその揺動軸24を中心に時計回り方向に回転してきたときに、第2の係止板23が第2の係止部材17に確実に係合される。
【0025】
図6は自動機の後扉側に配置されるカバーロック装置の操作部を示す分解斜視図、図7はカバーロック装置の操作部を摺動ピンの軸中心を水平方向に通る平面で切断した断面で示す部分断面図である。
【0026】
カバーロック装置の操作部25は、図6に示したように、ロック解除レバー26と、固定金具27,28と、引き金具29と、摺動ピン30と、スプリング31と、ワッシャ32,33と、E型止め輪34,35とを有している。
【0027】
ロック解除レバー26は、その一端にロック解除レバー19が接合され、他端側には、操作部25のラッチ機構部が構成されている。すなわち、ロック解除レバー26の他端には、摺動ピン30が挿通される貫通孔36が形成されている。固定金具27,28は、自動機1の筐体に固定されるもので、水平方向に対し自動機1の前方から後方に向かって長軸が斜め上方に傾斜した長孔形状のガイド孔37,38がそれぞれ形成されている。引き金具29は、コ字状に形成された把手部材39と係止部材40とを有している。その係止部材40は、上部に係止部41が上方に突出するように形成され、係止部41の前端側には、傾斜部42が形成され、後端側には、垂直部42aが形成されている。傾斜部42は、ガイド孔37,38の傾斜角と同じにしてある。スプリング31は、その一端が固定金具27に形成された貫通孔43に係止され、他端が引き金具29に形成された貫通孔44に係止され、引き金具29を自動機1の前方へ引っ張る構成にしている。
【0028】
ロック解除レバー26は、図7に示したように、固定金具27,28のガイド孔37,38が形成されている壁によりサンドイッチされている。ここで、固定金具27のガイド孔37、ロック解除レバー26の貫通孔36および固定金具28のガイド孔38には、摺動ピン30が挿通されている。摺動ピン30は、その両端にそれぞれワッシャ32,33およびE型止め輪34,35を配置することによって抜け防止がなされている。引き金具29の係止部材40は、ロック解除レバー26と固定金具27との間において水平方向に進退自在に配置されている。
【0029】
次に、以上の様に構成されたカバーロック装置の動作について説明する。まず、カバーロック装置のカバー係脱部10の側の動作を図4を参照して説明してから、カバーロック装置の操作部25の動作を説明していく。
【0030】
フロントカバー6がロックされている状態では、図4に示したように、カバー係脱部10の第1の係止部材13は、前方側の第1の係止板22と係止され、スプリング15によってフロントロック状態が維持されている。ここで、操作部25の引っ張り操作によってロック解除レバー19が図の右方向に移動すると、第1の係止部材13がスプリング15の付勢力に抗して軸12を中心に反時計回り方向に回転する。ロック解除レバー19が距離Bだけ図の右方向に移動すると、第1の係止部材13の係止部14が第1の係止板22から外れ(フロント第1ロック解除状態)、フロントカバー6は、揺動軸24を中心に時計回り方向に回転するようになる。
【0031】
フロントカバー6が回転すると、今度は、後方側の第2の係止板23が第2の係止部材17と係止される。ここで、ロック解除レバー19は、図の右方向に距離Bだけ移動した後は、それよりも僅かな距離しか移動できないように操作部25を構成しているので、第2の係止板23は、実質的に係止部14が第1の係止板22から外れたときの位置にある。また、第2の係止板23は、第2の係止部材17の係止部に到達したときに第1の係止板22よりもその先端が長さAだけ突出するように形成されているので、第2の係止板23は、第2の係止部材17と確実に係止されることになる。
【0032】
これにより、フロントカバー6は、第2の係止板23が第2の係止部材17と係止される位置まで開いた状態(フロント第2ロック状態)で維持される。その後、自動機1の後側でロック解除操作をしていた保守員が自動機の前に回り、少し開いたフロントカバー6との隙間からカバー係脱部10のタッチ部18を押して、第2の係止部材17の係止部と第2の係止板23との係合を手動で外す。これにより、フロントカバー6は、ロックが解除されることにより、図示しないガススプリングによって、ほぼ水平の状態にまで跳ね上げられる。
【0033】
フロントカバー6を閉めるときには、フロントカバー6の底部を押し下げていくことにより、まず、第2の係止板23の先端が第2の係止部材17の係止部の傾斜部に当接し、その後、傾斜部に沿って摺動していく。このとき、カバー係脱部10は、スプリング15の付勢力に抗して軸12を中心に反時計回り方向に回転させられていく。第2の係止板23の先端が第2の係止部材17の係止部を乗り越えると、カバー係脱部10は、スプリング15の付勢力によって図4に実線で示した第2の係止部材17の位置に戻される。なお、第2の係止板23の先端が第2の係止部材17の係止部を乗り越えるときにカバー係脱部10が回転してロック解除レバー19を図4の右方向に移動させるが、その移動動作は、カバー係脱部10とリンクされる操作部25の側で吸収されるようにしている。
【0034】
フロントカバー6の底部側をさらに押し込むと、今度は、第1の係止板22の先端が第1の係止部材13の係止部14の傾斜部に当接し、その後、傾斜部に沿って摺動していく。このとき、カバー係脱部10は、スプリング15の付勢力に抗して軸12を中心に反時計回り方向に回転させられる。第1の係止板22の先端が第1の係止部材13の係止部14を乗り越えると、カバー係脱部10は、スプリング15の付勢力によって図4に実線で示した第1の係止部材13の位置に戻される。なお、第1の係止板22が第1の係止部材13の係止部14を乗り越えるときにカバー係脱部10が回転してロック解除レバー19を図4の右方向に移動させるが、その移動動作は、操作部25の側で吸収され、閉止動作に影響がないようにしている。
【0035】
次に、カバーロック装置の操作部25の動作について説明する。
図8は操作部の動作態様の説明図であって、(A)はフロントロック状態、(B)はフロント第1ロック解除状態、(C)はフロント第2ロック状態、(D)はフロント第2ロック解除開始状態、(E)はフロント第2ロック解除状態、(F)は引き金具待機状態を示している。
【0036】
フロントカバー6が閉じているフロントロック状態のとき、操作部25は、図8の(A)に示したように、引き金具29がスプリング31により引っ張られていて固定金具27,28の側端面に当接した位置にある。このとき、ロック解除レバー26の貫通孔36に挿通された摺動ピン30は、固定金具27,28のガイド孔37,38の最も下方位置に位置し、かつ、係止部材40の係止部41の突出方向(図の上方)に延出する垂直部42aの横に位置している。
【0037】
ここで、操作部25が引っ張られると、係止部材40の係止部41は、その垂直部42aに摺動ピン30を係止した状態で図の右側の方向へ移動する。このとき、摺動ピン30は、固定金具27,28のガイド孔37,38に沿って斜めに移動するので、係止部41の移動とともに、ガイド孔37,38を図の右斜め上方へ上昇していくことになる。摺動ピン30は、これがガイド孔37,38の上端に達すると、図8の(B)に示したように、係止部41を乗り越えた状態になる。ここで、ロック解除レバー26は、摺動ピン30がガイド孔37,38の長軸方向の両端に位置するときの水平方向の距離Cだけ移動可能であり、この距離Cの分だけ、カバー係脱部10においてもロック解除レバー19がほぼ水平方向に移動することになる。この距離Cは、ロック解除レバー19が移動する距離Bよりも若干長く形成されている。したがって、摺動ピン30がガイド孔37,38の上端に達した時点で、第1の係止部材13と第1の係止板22との係止状態が解除されたフロント第1ロック解除状態にある。
【0038】
カバー係脱部10において、フロント第1ロック解除状態になると、第1の係止部材13は、スプリング15の付勢力によって回転されてフロント第2ロック状態になろうとする。このとき、ロック解除レバー19は、自動機1の前方側へ引き戻されるので、ロック解除レバー26も、図8の(C)に示したように、前方(図の左方向)へ引き戻され、摺動ピン30は、ガイド孔37,38に沿ってその下方へ移動する。このフロント第1ロック解除状態からフロント第2ロック状態に遷移するとき、フロント第1ロック解除状態の直後であるので、保守員は、まだ、把手部材39を引っ張っている状態であることから、引き金具29は、戻らない状態にある。また、図8の(C)の状態で把手部材39から手を離したとしても、スプリング31の付勢力が摺動ピン30を押し上げるほど大きくないので、引き金具29は、その戻らない状態を維持する。
【0039】
その後、保守員がカバー係脱部10を直接操作してフロント第2ロック解除を開始すると、ロック解除レバー19が自動機1の後方側へ押されることになるので、ロック解除レバー26も、後方(図の右方向)へ押される。これにより、摺動ピン30は、図8の(D)に示したように、ガイド孔37,38に沿って上昇していく。
【0040】
摺動ピン30は、ガイド孔37,38に沿って上昇する間にフロント第2ロック解除状態になる。その後、摺動ピン30は、ガイド孔37,38の上端に達して係止部41の傾斜部42の頂部に達すると、係止部材40は、フリーになるので、図8の(E)に示したように、スプリング31の付勢力によって引き金具29を図の左側へ引き戻すようになる。
【0041】
引き金具29がその待機状態に戻る途中で、摺動ピン30は、係止部41の垂直部42aの横に位置するようになる。これにより、摺動ピン30は、係止部41による支持がなくなるので、係止部41が引き金具29の待機状態に戻りながらガイド孔37,38に沿って降下していくようになる。そして、引き金具29がスプリング31により引っ張られて固定金具27,28に当接すると、図8の(F)に示したように、引き金具29の待機状態になる。
【0042】
次に、開いたフロントカバー6を閉めるときの操作部25の側の動作について説明する。
図9はフロントカバーを閉めるときの操作部の動作態様の説明図であって、(A)はフロントカバーが開いているときの状態、(B)は第1および第2の係止板が第1および第2の係止部材を乗り越えるときの状態、(C)は待機状態を示している。
【0043】
まず、フロントカバー6が開いているとき、カバー係脱部10は、スプリング15の付勢力によって第1の係止部材13の位置にあり、図9の(A)に示したように、摺動ピン30は、係止部41の垂直部42aに係止されている状態にある。
【0044】
ここで、フロントカバー6を閉めていく途中で第2の係止板23の先端が第2の係止部材17の係止部の傾斜部に当接し、その傾斜部に沿って摺動すると、カバー係脱部10は、反時計回り方向に回転させられる。これにより、ロック解除レバー19が自動機1の後方側に付勢され、それに伴って、ロック解除レバー26も、自動機1の後方側に付勢される。操作部25では、ロック解除レバー26が自動機1の後方側への付勢を受けることにより、摺動ピン30は、図9の(B)に示したように、ガイド孔37,38に沿って上昇していく。
【0045】
第2の係止板23の先端が第2の係止部材17の係止部の傾斜部の頂部を乗り超えると、カバー係脱部10は、スプリング15の付勢力によってフロントロック位置に戻される。これに伴い、操作部25は、そのロック解除レバー26も、フロントロック位置に戻されるので、図9の(C)に示したような待機状態となる。
【0046】
同様に、フロントカバー6の第1の係止板22の先端が第1の係止部材13を乗り超えるときも、操作部25のロック解除レバー26および摺動ピン30は、図9の(B)から(C)の状態に遷移する。
【0047】
以上の構成のカバーロック装置により、自動機1の後側から引き金具29を引くだけの操作で、フロントロック状態にあるフロントカバー6をフロント第1ロック解除状態およびフロント第2ロック状態にすることができる。次に、フロント第2ロック状態にあるカバー係脱部10は、自動機1の前面側からの操作によりフロントカバー6をフロント第2ロック解除状態にされる。これにより、自動機1の後側からロック解除操作をしても、フロントカバー6がガススプリングによって跳ね上がる危険がないので、安全確認のための監視員が不要であることから保守作業を一人ですることが可能になる。
【0048】
なお、上述の実施の形態は、実施の形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
さらに、上述の実施の形態は、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 自動機
2 画面
3 カード挿入口
4 通帳挿入口
5 紙幣取引開口部
6 フロントカバー
7 後扉
10 カバー係脱部
11 固定金具
12 軸
13 第1の係止部材
14 係止部
15 スプリング
16 連結部材
17 第2の係止部材
18 タッチ部
19 ロック解除レバー
20 長孔
21 摺動ピン
22 第1の係止板
23 第2の係止板
24 揺動軸
25 操作部
26 ロック解除レバー
27,28 固定金具
29 引き金具
30 摺動ピン
31 スプリング
32,33 ワッシャ
34,35 E型止め輪
36 貫通孔
37,38 ガイド孔
39 把手部材
40 係止部材
41 係止部
42 傾斜部
42a 垂直部
43,44 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11