(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記医学装置は、複数の支柱を有する自己拡張型ステントを備えており、前記外側片は、前記保持縁における開端から閉端に向かって長手方向に延在する少なくとも1つの凹部を有しており、前記凹部は、前記組立状態にある前記ステントの端における前記複数の支柱の1つを受け入れるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の送達装置。
前記受入れ部は、組立状態において前記複数の支柱の前記1つが前記凹部の前記閉端に接触すると共に前記保持部材が前記受入れ部の閉端から離間するような、長手方向長さを有していることを特徴とする、請求項2に記載の送達装置。
前記外側片および前記内側片の一方は、周方向に延在する溝を備えており、前記外側片および前記内側片の他方は、前記溝に組み込まれて前記外側片が前記内側片の周りを回転することを可能にする環状リングを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の送達装置。
前記リテーナは、前記内側片上に取り付けられて前記外側片に固定して接続された支持片をさらに備えており、これによって、前記外側片および前記支持片は、前記内側片の周りを一緒に回転可能になっていることを特徴とする、請求項5に記載の送達装置。
前記医学装置は、複数の支柱を有する自己拡張型ステントを備えており、前記外側片は、前記保持縁における開端から閉端に向かって長手方向に延在する少なくとも1つの凹部を有しており、前記ステントの端における前記複数の支柱の1つは、前記凹部内に組み込まれていることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
前記受入れ部は、前記複数の支柱の前記1つが前記凹部の前記閉端に接触すると共に前記保持部材が前記受入れ部の閉端から離間するような、長手方向長さを有していることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
前記受入れ部は、組立状態において前記受入れ部の長さが前記保持部材の長手方向長さよりも大きくなるような長手方向長さを有していることを特徴とする、請求項1に記載の送達装置。
前記医学装置は、複数の支柱を有する自己拡張型ステントを備えており、前記リテーナは、前記保持縁における開端から閉端に向かって長手方向に延在する少なくとも1つの凹部を有しており、前記凹部は、前記組立状態にある前記ステントの端における前記複数の支柱の1つを受け入れるように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の送達装置。
前記組立状態において、前記複数の支柱の前記1つは、前記凹部の前記閉端に接触しており、前記保持部材は、前記受入れ部の閉端から離間していることを特徴とする、請求項11に記載の送達装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、折畳み可能な人工心臓弁の経カテーテル送達のための装置、システム、および方法に対するさらなる改良が必要とされている。とりわけ、本発明の利点は、これらの欠点の1つまたは複数に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
移植可能な医学装置用の送達装置、移植可能な医学装置の送達のためのシステム、および人工弁の送達の方法が、開示されている。
【0010】
少なくとも1つの保持部材を一端に有する移植可能な医学装置用の送達装置は、長手方向に延在しているシャフトと、シャフトの長手方向部分を囲んでいる細長シースであって、シャフトに対して長手方向に摺動可能になっている細長シースと、シースの内側に画定され、組立状態にある医学装置を受容するように構成された区画と、区画の一端に配置されたリテーナであって、内側片と、内側片の周りに回転可能となるように、かつ内側片に対して長手方向における運動が制約されるように、内側片上に取り付けられた外側片とを備えているリテーナと、組立状態にある医学装置の保持部材を受け入れるように構成された、リテーナ内の少なくとも1つの受入れ部とを備えている。
【0011】
外側片および内側片の一方は、周方向に延在する溝を備えていてもよく、外側片および内側片の他方は、溝内に組み込まれて外側片が内側片の周りを回転することを可能にする環状リングを備えていてもよい。リテーナは、内側片上に取り付けられて外側片に固定して接続された支持片をさらに備えていてもよく、これによって、外側片および支持片は、内側片の周りを一緒に回転可能になっている。医学装置は、複数の支柱を有する自己拡張型ステントを備えていてもよく、外側片は、区画と向き合った保持縁、および保持縁における開端から閉端に向かって長手方向に延在する少なくとも1つの凹部を有していてもよく、凹部は、組立状態にあるステントの端における複数の支柱の1つを受け入れるように、構成されていてもよい。
【0012】
受入れ部は、組立状態において複数の支柱の1つが凹部の閉端に接触すると共に、保持部材が受入れ部の閉端から離間するような、長手方向長さを有していてもよい。外側片は、区画と向き合った保持縁を有していてもよく、受入れ部は、保持部材を受け入れるように寸法決めされた第1の領域を有していてもよく、受入れ部は、第1の領域と保持縁との間に狭小ネックを画定する少なくとも1つの突起を備えていてもよい。また、送達装置は、少なくとも1つの受入れ部から半径方向外方に延在しているピンであって、保持部材の開口に係合するように構成されているピンと、該ピンに連結されたアクチュエータであって、ピンを長手方向に移動させるように構成されており、これによって、受入れ部に対する保持部材の長手方向位置を調整するようになっているアクチュエータとを備えていてもよい。医学装置は、自己拡張型折畳み可能な人工弁であってもよい。
【0013】
移植可能な医学装置を送達するためのシステムは、長手方向に延在しているシャフトと、シャフトの長手方向部分を囲んでいる細長シースであって、シャフトに対して長手方向に摺動可能になっている細長シースと、シースの内側に画定された区画と、区画の一端に配置されたリテーナであって、内側片と、内側片の周りに回転可能となるように、かつ内側片に対して長手方向における運動が制約されるように、内側片上に取り付けられた外側片とを備えているリテーナと、リテーナ内の少なくとも1つの受入れ部とを備えた、送達装置を備えている。移植可能な医学装置を送達するためのシステムは、区画内に組み込まれた移植可能な医学装置であって、その一端に少なくとも1つの保持部材を有しており、保持部材は受入れ部内に配置されている、医学装置も備えている。
【0014】
外側片および内側片の一方は、周方向に延在する溝を備えていてもよく、外側片および内側片の他方は、溝に組み込まれて外側片が内側片の周りを回転することを可能にする環状リングを備えていてもよい。リテーナは、内側片上に取り付けられ、外側片に固定して接続された支持片をさらに備えていてもよく、これによって、外側片および支持片は、内側片の周りを一緒に回転可能になっている。医学装置は、複数の支柱を有する自己拡張型ステントを備えていてもよく、外側片は、区画と向き合った保持縁、および保持縁における開端から閉端に向かって長手方向に延在する少なくとも1つの凹部を有していてもよく、ステントの端における複数の支柱の1つは、凹部内に組み込まれていてもよい。
【0015】
受入れ部は、複数の支柱の1つが凹部の閉端に接触すると共に保持部材が受入れ部の閉端から離間するような、長手方向長さを有していてもよい。外側片は、区画と向き合った保持縁を有していてもよく、受入れ部は、保持部材を受け入れるように寸法決めされた第1の領域を有していてもよく、受入れ部は、第1の領域と保持縁との間に狭小ネックを画定する少なくとも1つの突起を備えていてもよい。また、移植可能な医学装置を送達するためのシステムは、少なくとも1つの受入れ部から半径方向外方に延在して保持部材の開口に係合されたピンと、該ピンに連結されたアクチュエータであって、ピンを長手方向に移動させるように構成されており、これによって、受入れ部に対する保持部材の長手方向位置を調整するようになっているアクチュエータとを備えていてもよい。
【0016】
少なくとも1つの保持部材を一端に有する移植可能な医学装置用の送達装置は、長手方向に延在しているシャフトと、シャフトの長手方向部分を囲んでいる細長シースであって、シャフトに対して長手方向に摺動可能になっている細長シースと、シースの内側に画定され、組立状態にある医学装置を受容するように構成された区画と、区画の一端に配置されたリテーナであって、区画と向き合った保持縁を有しているリテーナと、組立状態にある医学装置の保持部材を受け入れるように適合された、リテーナ内の少なくとも1つの受入れ部であって、組立状態において受入れ部の長さが保持部材の長手方向長さよりも大きくなるような長手方向長さを有している受入れ部とを備えている。
【0017】
医学装置は、複数の支柱を有する自己拡張型ステントを備えていてもよく、リテーナは、保持縁における開端から閉端に向かって長手方向に延在する少なくとも1つの凹部を有していてもよく、凹部は、組立状態にあるステントの端における複数の支柱の1つを受け入れるように、構成されていてもよい。受入れ部は、保持部材を受け入れるように寸法決めされた第1の領域を有していてもよく、受入れ部は、第1の領域と保持縁との間に狭小ネックを画定する少なくとも1つの突起を備えていてもよい。医学装置は、自己拡張型折畳み可能な人工弁であってもよい。
【0018】
また、送達装置は、少なくとも1つの受入れ部から半径方向外方に延在しているピンであって、保持部材の開口に係合するように構成されているピンと、該ピンに連結されたアクチュエータであって、ピンを長手方向に移動させるように構成されており、これによって、受入れ部に対する保持部材の長手方向位置を調整するようになっているアクチュエータとを備えていてもよい。組立状態において、複数の支柱の1つは、凹部の閉端に接触していてもよく、保持部材は、受入れ部の閉端から離間していてもよい。受入れ部は、保持部材を受け入れるように寸法決めされた第1の領域を有していてもよく、受入れ部は、第1の領域と保持縁との間に狭小ネックを画定する少なくとも1つの突起を備えていてもよい。
【0019】
人工弁を送達する方法は、少なくとも1つの保持部材を一端に有する人工弁を準備することと、弁を送達装置の区画内に取り付けることであって、送達装置は、シャフトと、シャフトの長手方向部分を囲んでおり、弁に対して長手方向に摺動可能になっている細長シースと、区画の一端に配置されたリテーナと、リテーナ内の少なくとも1つの受入れ部とを備えており、弁は、保持部材が受入れ部内に位置するように、区画内に取り付けられていることと、弁を目標箇所に配置するために、送達装置を患者内に挿入することと、シースを弁に対して長手方向の第1の方向に摺動させることによって、弁を展開させることと、展開ステップ中に、受入れ部に対する保持部材の長手方向位置を調整することと、を含んでいる。
【0020】
弁は、複数の支柱を有する自己拡張型ステントを備えていてもよく、リテーナは、区画と向き合って開端から閉端に向かって長手方向に延在する凹部を備えており、弁は、支柱の1つが凹部内に位置するように、区画内に取り付けられている。本方法は、展開ステップ中、長手方向力が保持部材に加えられないようにするために、支柱の1つを凹部に強制的に係合させることをさらに含んでいてもよい。受入れ部は、受入れ部に狭小ネックを画定する少なくとも1つの突起を備えていてもよい。
【0021】
本方法は、弁に対して第1の長手方向と反対の第2の長手方向にシースを摺動させることによって、弁を再鞘入れすることであって、これによって、再鞘入れ中、突起に対する保持部材の係合が、受入れ部内に配置された保持部材の状態を維持するようになっていることをさらに含んでいてもよい。リテーナは、受入れ部から半径方向外方に延在して保持部材の開口内に係合するピンを備えていてもよく、送達装置は、ピンに連結されてピンを長手方向に移動させるように構成されたアクチュエータを備えている。本方法は、 受入れ部に対する保持部材の長手方向位置を調整するために、アクチュエータを長手方向の少なくとも1つの方向に移動させることをさらに含んでいてもよい。
【0022】
人工弁を送達する方法は、一端に位置する少なくとも1つの保持部材と、複数の支柱を有する自己拡張型ステントとを有する人工弁を準備することと、弁を送達装置の区画内に取り付けることであって、送達装置は、シャフトと、シャフトの長手方向部分を囲んでおり、弁に対して長手方向に摺動可能になっている細長シースと、区画の一端に配置されたリテーナであって、区画と向き合って開端から閉端に向かって長手方向に延在する凹部を有しているリテーナと、リテーナ内の少なくとも1つの受入れ部とを備えており、弁は、保持部材が受入れ部内に位置するように、かつ支柱の1つが凹部内に位置するように、区画内に取り付けられている、ことと、弁を目標箇所に配置させるために、送達装置を患者内に挿入することと、シースを弁に対して長手方向の第1の方向に摺動させることによって、弁を展開させることであって、展開ステップにおいて、長手方向力が保持部材に加えられないようにするために、支柱の1つを凹部に強制的に係合させるようになっている、こととを含んでいる。
【0023】
受入れ部は、該受入れ部内に狭小ネックを画定する少なくとも1つの突起を備えていてもよい。本方法は、弁に対して第1の長手方向と反対の第2の長手方向にシースを摺動させることによって、弁を再鞘入れすることであって、これによって、再鞘入れ中、突起に対する保持部材の係合が、受入れ部内に配置された保持部材の状態を維持するようになっていることをさらに含んでいてもよい。
【0024】
以下、添付の図面を参照して、本発明の種々の実施形態について検討する。これらの図面は、本発明のいくつかの実施形態のみを示しており、それ故に、本発明の範囲を制限すると見なされてはならないことは、明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に用いられる「近位側」および「遠位側」という用語は、開示されている送達装置を用いる外科医を基準として決められている。「近位側」は、外科医に比較的近い側として理解されたい。一方、「遠位側」は、外科医から比較的遠く離れている側として理解されたい。
【0027】
以下、本発明の構造および機能を説明するために、
図1Aを参照すると、送達装置の第1の実施形態10は、遠位先端12、および遠位先端12から(図示されていない)近位端に延在するカテーテルアセンブリ14を有しており、該近位端は、ユーザが送達装置10を制御するための(図示されていない)ハンドルを備えている。送達装置10は、折畳み可能な人工心臓弁用の例示的な経大腿送達装置である。
【0028】
送達装置10は、経大腿送達装置であるが、本願に図示され、かつ記載されている本発明のリテーナは、経心尖送達装置(例えば、
図2Aおよび
図2Bに示されている装置10’)または折畳み可能なステント用の他の形式のチューブ状送達装置と共に用いられるように、構成されていてもよい。
【0029】
カテーテルアセンブリ14は、ハンドルから遠位先端12に向かって延在するシース22、シース22の内側に配置されており、ハンドルから遠位先端12に延在する中空の内側シャフト24、および患者内に送達される人工弁を受容するように構成された弁受容区画28を備えている。
【0030】
弁受容区画28は、折畳み可能な人工心臓弁を受容するように構成されている(例えば、折畳み可能な人工弁のステント部分が、
図5A、
図6A、および
図7〜
図10に示されている)。
弁受容区画28は、シース22の内側に配置されたリテーナ30、リテーナ30に隣接する近位円錐端31、およびリテーナ30から離間した遠位円錐端32を備えている。円錐端32は、弁受容区画28の一端において内側シャフト24に接合されており、円錐端31およびリテーナ30は、弁受容区画28の他端において内側シャフト24に取り付けられた補剛部材25に接合されている。好ましくは、内側シャフト24および補剛部材25は、(図示されていない)ガイドワイヤーを受け入れるように構成された同一の内径を有している。代替的に、本明細書に記載されている送達装置実施形態のいずれにおいても、内側シャフト24および補剛部材25は、単一体のシャフトであってもよい。患者内に送達するために、折畳み可能な弁が、弁受容区間29の円錐端31,32間に内側シャフト24を囲むように装填され、該弁のステント部分が、リテーナ30に連結されるようになっている。
【0031】
図1Bを参照すると、リテーナ30は、外側片40、外側片40に隣接して配置された支持片42、および外側片40に該外側片40に対して回転可能となるように連結された内側片50を備えている。外側片40は、1つまたは複数の受入れ部36を画定している。各受入れ部36は、外側片40の保持縁34に配置されており、折畳み可能な弁のステント部分の対応する保持部材(例えば、
図6Aの保持部材4参照)を受け入れるように構成されている。各受入れ部36は、好ましくは、従来のステント保持部材を受入れ部36との間にごくわずかな逃げを介在させて容易に捕捉するために、該ステント保持部材と同様の形状およびいくらか大きい寸法を有している。適切な形状および寸法を有する受入れ部36を形成することによって、例えば、展開または再鞘入れ手順における弁受容区画28内における弁の長手方向運動を阻止することができる。
【0032】
図1Bに示されている実施形態では、外側片40および支持片42は、それらが内側片50に対して一緒に回転可能となるように、(例えば、溶着または任意の他の周知の接合技術によって)、一緒に取り付けられている。他の実施形態(例えば、
図4に示されている実施形態)では、外側片および支持片は、互いに回転可能になっていてもよい。例えば、支持片は、外側片が支持片および内側片の両方に対して回転するように、内側片に取り付けられていてもよい。
【0033】
内側片50は、環状リング52を備えている。環状リング52は、外側片40内に画定された対応する周囲方向溝44内に嵌合するように、構成されている。リング52および溝44は、外側片40および支持片42が、内側片50の周りを自在に回転することができるが、内側片に対してそれほど大きく長手方向に摺動しないように、構成されている。図示されている実施形態では、外側片40と内側片42との間の摩擦制動力を最小限に抑えるために、これらの要素間にわずかな長手方向運動が許容されているが、リング52および溝44は、リテーナ30の使用中、外側片40および支持片42を内側片50上に保持している。
【0034】
折畳み可能な人工弁を送達装置10に装填するために、ユーザは、人工弁のステント部分を外側片40に取付け、弁がシース22の内側に嵌め込まれるまで、弁を圧縮または圧着するようになっている。シース22は、ユーザが弁を展開することを決めるまで、該弁を圧縮状態で保持することになる。弁が後で鞘出しによって展開されると、ステントは、自己拡張し、最終的に外側片40から離脱する。もし弁が完全に展開されていないなら、すなわち、もし弁の一部がシース22の下に折り畳まれた状態でとどまっているなら、該弁は、シースを拡張されたステントの部分の上を後方に摺動させ、これによって、ステントの拡張された部分を再び折り畳むことによって、再鞘入れされるとよい。
【0035】
弁が自然弁(例えば、患者の大動脈弁)を置換するために、患者内に経大腿的に送達されるかまたは径心尖的に送達されるかに関わらず、弁のステント部分は、好ましくは、ステントの(弁が配置されている端の反対側の)端から突出している保持部材(すなわち、ステントの大動脈側から突出している保持部材)によって、リテーナに取り付けられるようになっている。好ましくは、これらの保持部材は、最後に展開されることになる弁の端、すなわち、シースによって最も長く覆われていることになる弁の端に位置している。
【0036】
例えば、経大腿人工大動脈弁送達装置(例えば、
図1Aに示されている装置10)では、外側片40の保持縁34は、外側片の遠位端に配置されており、シース22が近位方向に移動され、弁を鞘出しかつ展開させ、これによって、弁の遠位端が最初に鞘出しされることになる。
【0037】
外側片40の保持縁34は、面取りした外縁を有しているとよく、これによって、ステントの鞘出しおよび再鞘入れ中、シース22と外側片40との間に作用する摩擦力の低減が助長されることになる。本明細書に開示されているリテーナ実施形態のいずれの保持縁も、面取りした外縁を有しているとよい。
【0038】
送達装置10が折畳み可能な弁を患者内に送達するのに用いられているとき、内側片50の周りを自在に回転する外側片40の能力によって、外側片40は、受入れ部36に連結されたステントによって受けた捩れ力を最小限に抑える周方向位置に、移動することが可能になる
【0039】
例えば、送達装置10が、例えば、大動脈に向かって大腿動脈を通って、患者内を前進すると、人工弁のステント部分は、血管系を通る送達装置の移動によって、リテーナ30に対してその長軸の周りに捩じられ、これによって、ステントおよび受入れ部36に連結されたステントの保持部材の両方に捩れ応力が加えられることがある。しかし、外側片40が自在に回転するので、これらの捩れ応力は、外側片を内側片50およびシース22に対して回転させ、これによって、ステントおよびその保持部材に作用する捩れ力を解放することができる。
【0040】
図2Aを参照すると、送達装置の第2の実施形態10’は、遠位先端12、および遠位先端12から(図示されていない)近位端に延在するカテーテルアセンブリ14’を有しており、該近位端は、ユーザが送達装置10’を制御するための(図示されていない)ハンドルを備えている。送達装置10’は、折畳み可能な人工心臓弁用の例示的な経心尖送達装置である。
【0041】
カテーテルアセンブリ14’は、ハンドルから遠位先端12に向かって延在する近位シース20、遠位先端12からハンドルに向かって延在する遠位シース22’、近位端から近位シース20を通って摺動可能に延在しており、送達装置10’の遠位先端12において遠位シース22’に取り付けられた中空チューブ26、および患者の内側に送達される人工弁を受容するように構成された弁受容区画28’を備えている。
【0042】
弁受容区画28’は、折畳み可能な人工心臓弁を受容するように構成されている。弁受容区画28’は、近位シース20の遠位端における近位円錐端31’、近位円錐端から離間した遠位円錐端32’、および遠位円錐端32’に隣接して遠位シース22’の内側に配置されたリテーナ30’を備えている。中空内側シャフト24’は、その一端が近位円錐端31’に接続されており、その他端が遠位円錐端32’に接続されており、中空チューブ26を内部に摺動可能に受容している。患者内に送達するために、折畳み可能な弁は、弁受容区画28’の円錐端31’,32’間に内側シャフト24’を囲むように装填されており、弁のステント部分が、リテーナ30’に連結されている。
【0043】
図2Bを参照すると、リテーナ30’は、外側片40、外側片40に隣接して配置された支持片42、および外側片40に該外側片40に対して回転可能となるように連結された(図示されていないが、内側シャフト24’の外側に取り付けられている)内側片を備えている。外側片40は、1つまたは複数の受入れ部36を画定している。各受入れ部36は、外側片40の保持縁34に配置されており、折畳み可能な人工弁のステント部分の対応する保持部分を受け入れるように構成されている。各受入れ部36は、好ましくは、従来のステント保持部材を受入れ部36との間にごくわずかな逃げを介在させて容易に捕捉するために、該保持部材と同様の形状およびいくらか大きい寸法を有している。
【0044】
経心尖人工大動脈弁送達装置(例えば、
図2Aおよび
図2Bに示されている装置10’)では、保持縁34は、外側片40の近位端に配置されており、遠位シース22’は、遠位方向に移動され、弁を鞘出しかつ展開させ、その結果、弁の近位端が最初に鞘出しされるようになっている。
【0045】
図2Cを参照すると、
図1Aに示されている送達装置10または
図2Aに示されている送達装置10’に用いられるのに適するリテーナ30’’は、1つまたは複数の受入れ部36’’を有する代替的な外側片40’’を備えている。各受入れ部36’’は、外側片40’’の保持縁34に配置されており、折畳み可能な人工弁のステント部分の対応する保持部材を受け入れるように構成されている。
【0046】
図1Aおよび
図2Bに示されている受入れ部36と比較して、
図2Cに示されている各受入れ部36’’は、保持縁34に近づくにつれて狭くなっている。具体的には、保持縁34から最も遠く離れている受入れ部36’の端は、保持縁34により近い受入れ部36’’の部分よりも広くなっている。
図2Cに示されている受入れ部36’’のテーパ形状によって、ユーザは、
図1Aおよび
図2Bに示されている受入れ部36の形状と比較して、ステントの保持部材をリテーナ30’’内により容易に装填することができる。テーパ形状を有する受入れ部36’’は、本明細書に開示されているリテーナ実施形態のいずれに用いられてもよい。
【0047】
図3を参照すると、
図1Aに示されている送達装置10に用いられるのに適するリテーナの他の実施形態30aは、内側片50aに該内側片50aに対して回転可能となるように連結された外側片40aを備えている。外側片40aは、1つまたは複数の受入れ部36を画定している。各受入れ部36は、外側片40aの保持縁34に配置されており、折畳み可能な弁のステント部分の対応する保持部材を受け入れるように構成されている。リテーナ30aは、中空内側シャフト24に取り付けられた補剛部材25に取り付けられている。
【0048】
リテーナ30aの外側片40aは、リテーナ30の外側片40と支持片42とを組み合わせた形状に似た形状を有している。内側片50aは、環状リング52aを備えている。環状リング52aは、外側片40a内に画定された対応する周方向溝44a内に嵌合するように構成されている。
図1Bに示されているリテーナ30と同様、このリング・溝構造によって、外側片40aは、内側片50aの周りを自在に回転することができるが、内側片50aに対してそれほど大きく長手方向に摺動することができないようになっている。
【0049】
図4を参照すると、
図1Aに示されている送達装置10に用いられるのに適するリテーナのさらに他の実施形態30bは、内側片50b、内側片に回転可能に連結された外側片40b、および外側片40bに隣接して配置されており、内側片に固定して連結された支持片42bを備えている。その結果、外側片40bが内側片50bに対して回転すると、外側片40bは、支持片42bに対しても回転することになる。外側片40bは、1つまたは複数の受入れ部36を備えている。各受入れ部36は、外側片の保持縁34に配置されており、折畳み可能な弁のステント部分の対応する保持部材を受け入れるように構成されている。リテーナ30bは、中空内部シャフト24に取り付けられた補剛部材25に取り付けられている。
【0050】
内側片50bは、環状リング52bを備えている。環状リング52bは、外側片40b内に画定された対応する周方向溝44b内に嵌合するように構成されている。
図1Bに示されているリテーナ30と同様、リング52bおよび溝44bは、外側片40bが内側片50bの周りに自在に回転することができるが、内側片に対してそれほど大きく長手方向に摺動することができないように、構成されている。
【0051】
図5Aおよび
図5Bを参照すると、
図1Aに示されている送達装置10に用いられるのに適するリテーナのさらに他の実施形態30cは、外側片40c、外側片40cに隣接して配置された支持片42c、および外側片40cに回転可能に連結された内側片50cを備えている。支持片42cは、内側片50cに対して回転可能となるように外側片40cに取り付けられていてもよいし、または外側片40cと支持片42cとの間に相対的な回転運動が生じるように、内側片50cに固定して取り付けられていてもよい。外側片40cは、1つまたは複数の受入れ部36cを備えている。各受入れ部36は、外側片40cの保持縁34に配置されている。
【0052】
図1Bに示されているリテーナ30と同様、リテーナ30cは、(図示されていない)リング・溝構造を備えており、このリング・溝構造によって、外側片40cは、内側片50cの周りを自在に回転することができるが、これらの2つの間のかなりの長手方向運動を阻止するようになっている。
【0053】
折畳み可能な弁のステント部分1が、リテーナ30cに連結された状態で示されている。ステント部分1は、複数のステント支柱2を備えており、該支柱2は、それらの間にセル3を画定している。少なくとも1つの保持部材4が、ステント部分1の端から延在している。各保持部材4は、開口5を備えている。リテーナ30に対して前述したように、自然弁(例えば、患者の大動脈弁)を置換するために、弁が患者内に経心尖的に送達されるかまたは径大腿的に送達されるかに関わらず、該弁を含むステント1は、好ましくは、ステント1の(該弁が配置されている端の反対側の)端から突出している保持部材4(例えば、ステント1の大動脈側から突出している保持部材4)によって、リテーナ30cに取り付けられるようになっている。
【0054】
リテーナ30cにおいて、受入れ部36c内の保持部材4の位置は、ユーザによって、長手方向に独立して調整可能になっている。すなわち、1つまたは複数の受入れ部36cは、ピン60を備えており、このピン60は、受入れ部内においてステント1の長手方向に手動によって摺動可能になっている。好ましくは、受入れ部36cの各々が、このような摺動可能なピン60を備えている。各ピン60は、アクチュエータワイヤー64に連結されている。アクチュエータワイヤー64は、ユーザがピンを縦長孔62に沿って摺動させることによって、独立して押し出されるかまたは引き込まれるようになっているとよい。ステント1の保持部材4は、該保持部材の開口5内に挿入されたピン60によって保持部材4を対応する受入れ部36c内に挿入することによって、リテーナ30cに連結されるようになっている。従って、対応するアクチュエータワイヤー64を近位側に引き込むかまた遠位側に押し出すことによって、ユーザは、各受入れ部36cのピン60の長手方向位置、従って、対応する保持部材4の長手方向位置を調整することができる。
【0055】
送達装置10が折畳み可能な弁を患者内に送達するために用いられているとき、該弁は、リテーナ30cおよびその受入れ部36cに対してある角度で傾けられることがあり、その結果、容易にそれらから離脱されないことがある。リテーナ30cに対する各保持部材4の長手方向位置を独立して調整する能力によって、該弁を送達装置10からの離脱を容易にするように真っ直ぐに延ばすことができる。
【0056】
例えば、送達装置10が、大動脈に向かって大腿動脈を通って、患者内を前進すると、人工弁のステント部分は、血管系を通る送達装置の移動によって、リテーナ30cに対してその長軸を中心として捩れ、これによって、ステントおよび受入れ部36cに連結されたステントの保持部材の両方に対して捩れ応力が加えられることがある。しかし、外側片40cが自在に回転するので、これらの捩れ応力は、外側片を内側片50cおよびシース22に対して回転させ、これによって、ステントおよびその保持部材に作用している捩れ力を解放することができる。もしユーザが、(弁の十分な展開を妨げるかまたは保持部材4を損傷させる可能性のある)ステント1に蓄積されている応力またはリテーナ30cに対するステント1の位置ずれを検出したなら、ユーザは、リテーナ30cおよびその受入れ部36cに対して1つまたは複数の保持部材4の長手方向位置を独立して調整し、これによって、ステントを再調整し、弁を連続的に離脱させることができる。
【0057】
受入れ部36c内の保持部材4の位置を長手方向に沿って独立して調整する能力を有するリテーナ30cが、
図1A〜
図5Bに示されている回転可能なリテーナ実施形態を参照して、図示されかつ記載されているが、受入れ部36c内の保持部材4の位置を長手方向に独立して調整する能力は、受入れ部の長さが長手方向においてそれぞれの保持部材の長さよりも大きい特徴を備えている、
図6A〜
図10に示されている実施形態に組み入れられてもよい。
【0058】
図6A〜
図6Cを参照すると、
図1Aおよび
図2Aに示されている送達装置10,10’に用いられるのに適するリテーナのさらに他の実施形態30dは、内側片50d、内側片に回転可能に連結された外側片40d、および外側片40dに隣接して内側片に連結された支持片42dを備えている。支持片42dは、内側片50dに対して回転可能となるように外側片40dに取り付けられていてもよいし、または外側片40dと支持片42dとの間に相対的な回転運動が生じるように、内側片50dに固定して取り付けられていてもよい。内側片50dに対して自在に回転する外側片40dの能力によって、
図1〜
図5の実施形態に対して前述した有利なステント応力緩和効果が得られることになる。
【0059】
外側片40dは、内側片50dに回転可能に連結されているものとして、ここに記載されているが、いくつかの実施形態では、外側片40dは、内側片50dに固定されていてもよい。リテーナ30dの他の特徴部(例えば、凹部38)は、外側片40dが内側片50dに対して固定されている実施形態に含まれていてもよいし、または外側片40dが内側片50dに対して回転可能になっている実施形態に含まれていてもよい。同様に、
図7〜
図10に示されている外側片は、これらの図に示されている対応する内側片に対して固定されていてもよいし、または回転可能になっていてもよい。
【0060】
図1Aに示されている装置10のような経大腿送達装置では、リテーナ30dは、送達装置の内側シャフト24への連結に適する近位円錐端31dに隣接して配置されているとよい。一方、
図2Aに示されている装置10’のような経心尖送達装置では、リテーナ30dは、送達装置の内側シャフト24’への連結に適する遠位円錐端32dに隣接して配置されているとよい。
【0061】
外側片40dは、1つまたは複数の受入れ部36dを備えている。各受入れ部36dは、外側片40dの保持縁34から延在しており、折畳み可能な人工弁のステント部分の対応する保持部材4を受け入れるように構成されている。各受入れ部36dは、細長形状を有しており、狭小ネック39dを画定するように互いに向かって突出する突起37dを備えている。狭小ネック39dは、保持縁34に向かう対応する保持部材4の長手方向運動を制限するものである。ネック39dは、保持縁34から離間したポケット41dを画定するように、受入れ部36d内に配置されている。
図6Aから分かるように、ポケット41dは、保持部材4の大きさよりも実質的に大きい長手方向の長さを有している。
【0062】
3つの受入れ部36dが
図6Cの実施形態に示されているが、リテーナ30d(および本明細書に開示されている他のリテーナの全て)は、任意の数の受入れ部、例えば、1つ、2つ、4つ、6つ、または8つの受入れ部を有していてもよい。さらに、各受入れ部36d(および本明細書に開示されている他の受入れ部の全て)は、ネック39dを画定する単一突起37dまたは2つよりも多い任意の数の突起を有していてもよい。3つの保持部材4が、この実施形態(および本明細書に記載されている他の実施形態)において、3つの受入れ部36dにそれぞれ係合するように記載されているが、本明細書に記載されているリテーナは、任意の数の保持部材4、例えば、1つ、2つ、4つ、6つ、または8つの保持部材を有するステント1に用いられてもよい。
【0063】
外側片40dは、1つまたは複数の凹部38をさらに備えている。凹部38は、保持縁34から内方に延在しており、ステント1の端において支柱2によって形成されたV字状接合部を受け入れるように構成されている。凹部38は、保持縁34に対する対応するステント支柱2の長手方向運動を制限するものである。さらに、凹部38は、ステント支柱2の周方向位置を固定し、人工弁の送達および展開中にステント支柱2が互いに重なって絡まるのを阻止するものである。
【0064】
図6Aに示されているように人工弁がリテーナ30dに組み込まれると、保持部材4は、ポケット41dの端壁43から離間することになる。しかし、もし人工弁をリテーナ30dに対して押し出す傾向にある長手方向力が生じたなら、凹部38内のステント支柱2の係合によって、リテーナに対する人工弁の長手方向運動が阻止されることになる。その結果、保持部材4は、ポケット41dの端壁43から離間して維持され、人工弁のステント1とリテーナ30dとの間の圧縮力は、保持部材に局在されず、むしろ、ステント支柱2を介してステントの周囲に実質的に均一に分配されることになる。以上の説明を考慮すれば、凹部38は、
図6Cに示されているように略U字状であってもよいし、または対応するステント支柱2を受け入れ、前述した目的を果たすどのような他の形状を有していてもよいことを理解されたい。
【0065】
図1Bに示されているリテーナ30と同じように、リテーナ30dは、環状リング・溝構成を備えており、該構成によって、外側片40dは、内側片50dの周りに自在に回転することができるが、内側片に対して長手方向に移動することが阻止されるようになっている。
【0066】
折畳み可能な弁を患者の所望の箇所内に展開するためのステント1の鞘出し中に、リテーナ30dの凹部38は、リテーナとステントとの間に作用する力を、保持部材4自体に向けるよりはむしろ、前述したように保持部材4を支持していないステント支柱2に向けるようになっている。その結果、これらの力は、ステント1の周囲により均一に分配されることになる。これによって、保持部材4または保持部材4を支持するステント支柱2が損傷または変形するのを阻止することができる。
【0067】
例えば、人工弁の鞘出しは、シース22または22’(
図1A,2A参照)とステント1との間に摩擦力を生じさせ、これによって、ステント1をリテーナ30dに対して長手方向に押し出すかまたは引き出すことになる。この長手方向力は、ステント支柱2を凹部38の底に強制的に係合させ、その一方、保持部材4は、ポケット41dの端43から離間して維持されており、これによって、保持部材に押圧力が加えられるのが阻止されることになる。
【0068】
人工弁の再鞘入れ中にも、例えば、ユーザが患者内の弁の位置を調整する必要があると判断したときの人工弁の再鞘入れ中にも、摩擦力がシース22または22’とステント1との間に生じるが、この摩擦力は、ステント1をリテーナ30dから離脱させるように押し出すかまたは引き出すように加えられる傾向にある。このような場合、保持部材4は、突起37によってポケット41dの端からさらに離れるように移動しないように阻止されることになる。
【0069】
リテーナのさらに他の実施形態30eが、
図7に示されている。リテーナ30eは、
図1Aおよび
図2Aにそれぞれ示されている送達装置10,10’に用いられるのに適している。リテーナ30eは、前述のリテーナ30dと実質的に同じである。しかし、リテーナ30dの端壁43のようにリテーナ縁34から離れたポケット41eの端に端壁を有しておらず、ポケット41eは、開端を有している。前述の説明から、保持部材4は、人工弁を展開または再鞘入れのための展開装置の使用中に、リテーナ30dの端壁43に接触しないことを理解されたい。従って、端壁43は、必要ではなく、リテーナ30eから削除されている。
【0070】
図8は、
図1Aおよび
図2Aにそれぞれ示されている送達装置10,10’に用いられるのに適するリテーナのさらに他の実施形態30fを示している。リテーナ30fは、保持縁34から内方に延在する凹部38が削除されていることを除けば、前述のリテーナ30eと実質的に同様である。従って、リテーナ30fでは、患者内の人工弁の鞘出しまたは展開中、外側片40fの保持縁34が、ステント支柱2の長手方向運動に制限をもたらすことになる。しかし、保持縁34がステント支柱2を個別に捕捉していないので、リテーナ30fは、人工弁を送達および展開するための送達装置の使用中に、ステント支柱が互いに重なって、絡まるのを阻止することができない。
【0071】
リテーナのさらに他の実施形態30gが、
図9に示されている。リテーナ30gは、
図1Aおよび
図2Aにそれぞれ示されている送達装置10,10’に用いられるのに適している。リテーナ30gは、前述のリテーナ30d,30eと実質的に同じであるが、外側片40gの構成、特に受入れ部36gの構成において異なっている。受入れ部36d,36eのように、周方向において保持部材4に密接に嵌合されるようになっているが、長手方向において過度の自由空間を有するようになっておらず、受入れ部36gは、長手方向および周方向の両方において、大きめの寸法を有している。この点について、受入れ部36gは、周方向において、保持部材4の周方向寸法に対する任意の倍率、例えば、1.5倍、3倍、または4倍だけ、保持部材4に対して大きくなっているとよい。保持部材4の対応する寸法の少なくとも約2倍の周方向寸法が、好ましい。受入れ部36gの寸法が大きくなっていることによって、弁受容区画28または28’内への人工弁のステント部分の組込みが容易になり、また保持部材4が受入れ部から離脱できない可能性を最小限に抑えることによって、人工弁の展開が容易になる。
【0072】
送達装置10,10’に用いられるのに適するリテーナの他の実施形態30hが、
図10に示されている。リテーナ30hは、前述のリテーナ30fと同様であるが、該リテーナ30fの特徴を前述のリテーナ30gの特徴と組み合わせている。すなわち、リテーナ30hは、リテーナ30fと同じように、内方に延在する凹部38が設けられていない保持縁34を有している。従って、人工弁の鞘出しまたは展開中、外側片40hの保持縁34が、ステント支柱2の長手方向運動を制限することになる。しかし、リテーナ30hは、リテーナ30fにおけるように、周方向において保持部材4と密接に嵌合する受入れ部を有しておらず、人工弁がリテーナに組み込まれたときに保持部材4間に存在するどのような構造も本質的に省かれている、単一の受入れ領域を有している。従って、リテーナ30hでは、周方向においてリテーナに対する人工弁の位置を固定する唯一の構造体は、保持縁34から受入れ領域36hに延在するネック39hである。にもかかわらず、保持縁34に対するステント支柱2の係合およびネック39hに対する保持部材4の係合によって、リテーナ30hに対する人工弁の長手方向運動を実質的に阻止することができる。
【0073】
本明細書では、折畳み可能なステント構造を有する人工弁の展開に対する保持に関連して、種々のリテーナ実施形態を説明してきたが、これらのリテーナ実施形態は、いずれも、他の目的に用いられてもよい。具体的には、これらの種々のリテーナ実施形態は、弁を含まない従来の折畳み可能なステントを保持するのに用いられてもよい。
【0074】
本明細書では、人工弁の弁輪端が最初に展開される特定の実施形態を参照して、本発明を説明してきたが、本発明は、弁の大動脈端が最初に展開される実施形態も考慮していることを理解されたい。(図示されていない)このような実施形態では、保持部材は、送達装置のリテーナと係合するために、弁のステント部分の弁輪端から突出するようになっているとよく、これによって、ステントの大動脈端は、リテーナから離れて位置することになるので、最初に鞘出しされることになる。(図示されていない)さらに他の実施形態では、保持部材は、リテーナと係合するために、弁のステントの大動脈端および弁輪端の両方から突出するようになっていてもよい。
【0075】
本明細書では、本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および応用の単なる例示にすぎないことを理解されたい。従って、多くの修正が例示的な実施形態に対してなされてもよいこと、および添付の請求項に記載の本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。
【0076】
種々の従属請求項および本明細書に記載されている特徴部は、元の請求項に記載されているのと異なる方式で組み込まれてもよいことを理解されたい。また、個々の実施形態に関連して記載されている特徴は、記載されている実施形態の他のものと共有されてもよいことも理解されたい。