【実施例】
【0100】
実施例1.
H5N1トリインフルエンザの侵入に関するHIV/HA偽型系の確立。
この研究において用いられたインフルエンザウイルスのHA。高病原性H5N1インフルエンザウイルスのHA(H5)遺伝子をコードするcDNAは、Dr.George Gao(中国科学院微生物研究所、中国)により親切に提供して頂いた。このHA遺伝子は元々中国青海省において死んだ渡り鳥(ガン)中に存在するインフルエンザA H5N1から単離された。
【0101】
本明細書で記述されるHIV/HA偽型ウイルスは、レポーター遺伝子であるルシフェラーゼ遺伝子を含有する。標的細胞中に侵入すると、そのウイルスRNAが逆転写され、能動的に核の中に運び入れられ、安定にゲノム中に組み込まれる。形質導入された細胞におけるルシフェラーゼの活性は、ウイルスの感染性の尺度を提供する(Basu et al., J. Virol., 81: 3933-3941 (2007); Manicassamy et al., 2005, 上記)。ルシフェラーゼアッセイは非常に高感度であり、96ウェルプレート形式に適している。加えて、複製しないHIVに由来するインフルエンザ偽型の使用は、病原性トリインフルエンザ株を取り扱うために必要な厳重なバイオハザード条件を必要とせずにHTSを実行可能にする。両方とも、ウイルスの付着および侵入を測定するためのHTSアッセイを開発するためのHIV/HAの重要な利点である。本明細書で記述される小分子を単離するために、以下のものを含むいくつかの重要なパラメーターを最適化した:(a)HIV/HAの生成、(b)用いるべき標的細胞、(c)HIV/HAの力価測定、ならびに(d)感染性およびシグナル対バックグラウンド(S/B)比を最大化する(>100/1)ための制御。
【0102】
pNL luc3 R−E−およびpNL luc3 R+E−は、HIV−1プロウイルスクローンpNL4−3に基づくプラスミドである。これらのプラスミドは、両方のプラスミドが哺乳類および植物細胞中での発現に最適化された第3世代のホタルルシフェラーゼ遺伝子であるPromegaのluc+遺伝子を含有している点で、前の版と異なる。それらはpNL lucプラスミドの前の版と、それらのそれぞれの名前におけるlucの後の3の存在により区別することができる。
【0103】
本明細書で記述される偽型ウイルスを構築するため、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するエンベロープ欠損プロウイルスゲノムpNL4.3.LucR−E−を、HIV−1発現ベクターとして用いた(He et al., J. Virol., 69: 6705-6711 (1995))。そのpNL4.3.Luc.R−E−ベクターにおいて、そのホタルルシフェラーゼ遺伝子をpNL4−3 nef遺伝子中に挿入する。2個のフレームシフト(5’EnvおよびVpr aa 26)がこのクローンをEnv−およびVpr−にして、それを単一ラウンドの複製の能力しかないようにする。そのベクターは、ソーク研究所のDr.Ned Landeauから許可を与えられた。本明細書で記述される偽型ウイルスを構築するため、HA遺伝子をコードするcDNAを哺乳類発現ベクターpcDNA3(Invitrogen)中に、CMVプロモーターの制御下にクローニングした。HAを発現するHIV由来のインフルエンザ偽型[HIV/HA]を生成するため、以前に記述されたように、pNL4.3.Luc.R−E−をH5のHA(pcDNA3−HA)と共に293T細胞中に同時形質移入した(Basu et al., J. Virol., 81: 3933-3941 (2007); Manicassamy et al., 2005, 上記; Cormier et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101: 14067-14072(2004))。その偽型ウイルスを含有する上清を形質移入の48時間後に集め、合わせて、0.45μm孔径のフィルターを通して濾過し、標準的なプロトコルに従って感染性に関して評価した(Basu et al., J. Virol., 81: 3933-3941 (2007); Hsu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100: 7271-7276 (2003); “Production and Use of HIV-1 Luciferase Reporter Viruses”, Enna Williams M. (編者) Current Protocols in Pharmacology, 12.5.1-12.5.12, John Wiley & Sons (2004); Connor et al., Virology, 206: 935-944 (1995))。
【0104】
対照偽型ウイルスを生成するために、VSV−G(HIV/VSV−G)をコードするプラスミドおよび空ベクターもpNL4.3.Luc.R−E−と共に同時形質移入した。それらのそれぞれの感染性の直接的な比較のため、偽型ウイルスのp24含有量を商業的に入手できるキット(Beckman Coulter,カリフォルニア州)を用いて測定した。293T(ヒト)、HeLa(ヒト)、QT6(ウズラ)、およびDF−1(ニワトリ)細胞を、p24で正規化したHIV/HAまたは対照のウイルス粒子を用いて感染させ、その細胞のルシフェラーゼ活性を負荷の48時間後に決定した(
図3)。予想されたように、そのVSV−G偽型HIVウイルス粒子を用いて感染させた4種類の細胞株は全て高レベルのルシフェラーゼ活性を示し(6.6〜7.2RLUのlog)、一方で空ベクターを感染させた細胞はより低いレベルのルシフェラーゼ活性を示した(2.8〜3.1RLUのlog)。そのHIV/HAウイルス粒子により感染された細胞は、バックグラウンドよりもおおよそ100倍高いルシフェラーゼ活性を発現し、これはヒト由来およびトリ由来の両方のこれらの細胞の全てがそのHIV/HAウイルスにより感染され得ることを示唆している。
【0105】
これらの結果は、H5N1の感染に関する侵入機構を研究するための機能アッセイを実証している。この機能アッセイは侵入機構の研究のために、および侵入阻害剤のスクリーニングのために生H5N1ウイルスを用いることの安全性の懸念を大きく軽減するであろうことを強調するのは重要である。この機能アッセイを用いて、インフルエンザウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する可能性のある小分子阻害剤を同定した。
【0106】
下記で記述するように、このアッセイを用いることによりヒト肺細胞株A549およびNCI H661はHIV/HAの形質導入に非常に感受性であることが実証されており、これらの細胞はHIV/HAのこれらの宿主細胞中への侵入を予防する小分子阻害剤を同定するためのHTSアッセイにおける標的細胞として用いられるであろう。加えて、感染した細胞が優れたルシフェラーゼのシグナル対ノイズバックグラウンド比(>100/1)を与えるであろうように、十分な数の標的細胞/ウェルを有することが重要である。
【0107】
実施例2.
産生細胞のノイラミニダーゼ(NA)処理はその偽ウイルス粒子の感染性を増進する。
そのHIV/HA偽型系を最適化するため、293T産生細胞のノイラミニダーゼ(NA)処理を用いてそのHIVに基づく偽型ウイルスの感染を増進した。293T細胞にpNL4.3.Luc+ R−E−およびHAプラスミドを同時形質移入した。形質移入後(26時間)、その形質移入された293T細胞を、0、5、10、20、40単位/mlの濃度のNA(New England Biolabs)で処理した。そのウイルス上清を5倍希釈し、それを用いてその標的細胞に負荷をかけた(challenge)。感染した細胞のルシフェラーゼ活性を注入の48時間後に決定し、その結果を
図4において示す。
【0108】
結果は、5単位/mlのNAにおいて、NA処理した細胞から集めたHIV/HAは処理しなかった細胞よりも少なくとも10倍高いルシフェラーゼ活性を示したことを示している。産生細胞のより高い濃度のNA(10〜40単位/ml)による処理は、標的細胞におけるルシフェラーゼシグナルを、大きくではないがさらに増大させた(5.62〜5.73log)。HIV/VSVGおよび空ベクターを形質移入した偽型ウイルスを対照として用いた。これらの結果は、NA処理が産生細胞からのウイルスの放出を促進することと一致している。
【0109】
加えて、その高いシグナル/バックグラウンド比は、さらなるHTSの最適化後に提案された実験のために広く用いられるであろう効率的なHIV/HA偽型ウイルスの確立の成功を示している。
【0110】
従って、HIV/HA偽型を、293T細胞(100mmディッシュ中3×10
6細胞、約70%コンフルエント)のpcDNA3−HA(12μg)およびpNL4.3.Luc.R−E−(12μg)による、標準的なプロトコルに従ってlipofectamine 2000を用いる同時形質移入により生成した(
図10参照)。対照のため、HIV由来VSV−G偽型(HIV/VSV−G)を、293T細胞におけるVSV−Gを有するプラスミド(pcDNA3−VSV−G)およびpNL4.3.Luc.R−E−の同時形質移入により生成し、その化合物のHA標的特異性を確立した。そのHIV/HAまたはHIV/VSV−G偽型は複製欠損であり、その偽型はその感染プロセスの1ラウンドのみに関して評価されるであろう。ウイルスの感染性は、その形質導入された細胞のルシフェラーゼ活性から測定される。バックグラウンドの活性は、空のpcDNA3ベクターおよびpNL4.3.Luc.R−E−を形質移入された細胞の上清を用いて感染させた細胞のルシフェラーゼ活性から決定される。
【0111】
実施例3.
HIV/HA偽型ウイルスはトリプシン処理を必要としない。
前に述べたように、HAの切断は感染性に必要であり、これはそれがウイルスエンベロープおよび細胞膜の間の融合を媒介するHA2の疎水性N末端を生成するためである(Skehel et al., 2000, 上記; Steinhauer, D.A., 1999, 上記; White et al., EMBO J., 1: 217-222 (1982); Luscher-Mattli M.,. Arch. Virol., 145: 2233-2248 (2000))。トリプシン処理のH5N1に由来するHIV/HAの感染性への作用を調べた。比較のため、低病原性トリH5N2分離株(CK/ミチョアカン/28159−530/95)のHAを発現する別のHIV/HA偽型ウイルスを生成した。この株のHAはあらゆる遍在性プロテアーゼにより切断され得る切断部位を有しておらず、TPCK処理されたトリプシンによる処理をその切断のために必要とする。それはDr.David L.Suarez,USDAにより親切に提供して頂いた。
【0112】
この低病原性トリ分離株のHIV/HAは、それを実験のHIV/HAと区別するためにHIV/HA(USDA)と呼ばれる。HIV/HAまたはHIV/HA(USDA)偽型ウイルスをトリプシン(50μg/ml)で37℃で30分間処理するかトリプシン処理しないかのどちらかの後、標的293T細胞に負荷をかけた。トリプシン処理はHIV/HAに媒介されるウイルス侵入を増進(または阻害)しなかった(
図5)。それに対し、トリプシン処理されたHIV/HA(USDA)の感染はトリプシン処理なしでの感染と比較して大きく増進された。
【0113】
実施例4.
低病原性実験室インフルエンザAウイルス[A/WS/33]は感染性にトリプシン処理を必要とする。
インフルエンザAウイルス実験室株A/WS/33(H1N1)[ATCC # VR−1520]を、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から得た。ウイルスのストックを増殖させ、MDCK細胞において力価測定し、80%コンフルエントのMDCK細胞にそのウイルスを感染させ、37℃で3時間吸着させておき、ウェルが覆われた状態を保つために15分ごとに振盪した。保温の後、その細胞を洗浄し、0.125% BSA、10mM HEPES(pH7.4)を補った、1μg/ml TPCK処理トリプシンを含む、または含まないEMEMと共に保温した。トリプシン処理のインフルエンザAウイルス[A/WS/33]の感染性への作用を決定するため、MDCK細胞にトリプシン処理した、または未処理のインフルエンザAウイルス株A/WS/33を1のMOIで感染させた。表1において示すように、未処理のインフルエンザAウイルスにおいて、TPCK−トリプシンで処理されたウイルスと比較した場合に、感染性の著しい阻害があった。その結果は、HIV/HA(USDA)偽型ウイルスの結果と一致している。これはさらに、HIV/HA(USDA)偽型ウイルスにおいて、および低病原性実験室株において発現したHAの両方が類似して挙動することを示唆しており、本明細書で記述される偽型ウイルスモデルを有効にする。
【0114】
【表1】
【0115】
実施例5.
HIV/HA偽型ウイルスは侵入の間リソソーム向性(lysosomotropic)化合物に感受性である。
HAに媒介されるウイルス侵入のpH依存性を試験するため、予め決定された力価のHIV/HAを用いてバフィロマイシンAおよび塩化アンモニウム(NH
4Cl)の存在下で293T細胞を感染させた。バフィロマイシンAはエンドソームのH+-ATPアーゼの非常に選択的な阻害剤であり、エンドソームの酸性化を妨げ、エンドソームのpHを上昇させる(Marsh et al., Adv. Virus Res., 36: 107-151 (1989); Bowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 7972-7976 (1988); Yoshimori et al., J. Biol. Chem., 266: 17707-17712 (1991); Droese et al., Biochemistry, 32: 3902-3906 (1993))。同様に、NH
4Clは弱塩基であり、エンドソームのpHを上昇させる(Marsh, M. 1989, 上記)。
図6のパネルAにおいて示したように、293T細胞のバフィロマイシンAによる処理は50〜150nMでHIV/HA偽型ウイルスの感染性を効率的に阻害した。同様に、最初の3時間のウイルス吸着の間の細胞のNH
4Cl[5〜25mM]への曝露は、未処理の対照と比較してウイルス感染を有意に低減した(
図6、パネルB)。従って、その結果は、HIV/HAの侵入はHAにおける低pHに誘導される変化に依存することを示唆している。
【0116】
実施例6.
バフィロマイシンAはインフルエンザAウイルス[A/WS/33]の感染を阻害する。
バフィロマイシンAのインフルエンザAウイルスの感染性への作用を調べた。MDCK細胞(6ウェルプレート中で約80%コンフルエント)を、系列希釈した用量のバフィロマイシンA(25〜200nM)で15分間処理した。インフルエンザAウイルス(約100pfu/ウェル)を細胞に添加し、37℃で3時間吸着させた。バフィロマイシンAもその3時間の吸着期間の間に存在していた。保温後、未吸着のウイルスを洗浄により除去し、細胞を4%ウシ血清アルブミンおよび1μg/mlのTPCK処理されたトリプシンを補ったEMEMを含有する0.8%アガロースで覆い、37℃で3日間培養した。3回の独立した実験を行ってウイルスの力価を決定した。
【0117】
図7において示すように、バフィロマイシンAは試験した濃度(25〜200nM)でインフルエンザウイルス感染の感染性を効率的に阻害した。従って、その結果は、インフルエンザAウイルスA/WS/33の侵入もHAにおける低pHに誘導される変化に依存することを示唆しており、本明細書で記述されるHIV/HA偽型ウイルスモデルを有効にする。
【0118】
実施例7.
ヒト肺細胞はHIV/HA偽型ウイルスに対して最大の感染性を示す。
宿主指向性(host tropism)を特性付けおよび比較するため、HIV/HAの感染性を一群の(a panel of)標的細胞株に対して、前に記述した方法に従うプラークアッセイにより評価した。ヒト肺細胞株(A549、NCI−H661およびHAPEC)、およびラット肺細胞株(L2)を感染のための標的細胞として用いた。インフルエンザウイルス感染に耐性であるLec1(チャイニーズハムスター卵巣)細胞株も用いた。前に記述したプロトコルに従って、細胞にHIV/HAおよびHIV/HA(USDA)偽型ウイルスを感染させた。HIV/VSVGおよび空ベクターを形質移入した偽型ウイルスを、それぞれ陽性および陰性対照として用いた。ヒト肺細胞株A549およびNCI−H661は、HIV/HA偽型ウイルスによる感染に、ヒト肺細胞株HAPECと比較して非常に感受性であった(
図8)。トリプシンで処理されたHIV/HA(USDA)偽型ウイルスも、これらの細胞に対して非常に感染性であった。しかし、未処理のHIV/HA(USDA)偽型ウイルスは感染性ではなかった(データは示していない)。ラット肺細胞(L2)はHIV/HAおよびHIV/HA(USDA)両方による感染にそれほど感受性ではなく、一方でLec1細胞は両方の偽型に対して高度に耐性であった(
図8)。これらの結果は、HIV/HAおよびHIV/HA(USDA)はヒト肺細胞への好ましい侵入指向性を示すことを示している。そのヒト肺細胞株A549およびNCI−H661は、さらなる最適化の後に、インフルエンザ侵入阻害剤に関して化合物ライブラリーをスクリーニングするために用いられるであろう。
【0119】
これらの結果は、HIV/HA偽型ウイルス中のHAは感染性インフルエンザウイルス中に存在するHAの機能的特性を保持していることを示唆している。
実施例8.
感受性細胞に対するHA結合アッセイの開発。
【0120】
HA/阻害剤相互作用の方式を解明するため、HA結合アッセイを開発した。H5N1 HA1の4つの異なる領域(
図9Aにおいて#1〜4と表示する)をヒトIgGのFcと融合させて融合タンパク質を生成した。そのコンストラクトの全部をDNA配列決定により確認した。これらの融合タンパク質を、Kuhn et al., J. Biol. Chem., 281: 15951-15958 (2006)のプロトコルを修正したものに従って発現させ、精製した。簡潔には、それぞれのプラスミドを293T細胞中に形質移入した。細胞を、4mMのL−グルタミンを補ったVP−SFM培地で、形質移入後16時間の間、再び満たした(replenished)。上清を48および72時間の時点で2回集め、0.45μMフィルターを通して濾過した。それぞれの上清を、カラム中に組み立てられたプロテインAアガロース(Santa Cruz Biotech)(Pierce)に適用した。そのプロテインAアガロースをPBSで2回洗浄し、タンパク質を1mlの0.1Mグリシン(pH2.8)で遠心分離により3回溶離した。そのタンパク質を、溶離後すぐに60μlのトリスHCl(pH8.0)を添加することにより中和した。次いでそのタンパク質を、Slide−A−Lyzer透析カセット(Pierce)によりPBS中で透析し、Centricon遠心濾過ユニット(Millipore)により濃縮した。1ミリグラムのそれぞれの精製されたタンパク質をSDS−PAGE上で泳動し、続いてクーマシーブリリアントブルー染色を行った(
図9B)。そのコンストラクトに応じて、その上清を100mmプレートからプールすることにより0.1〜1mgの融合タンパク質を精製することができ、それは下記で記述する結合アッセイに適していた。
【0121】
これらのタンパク質の細胞への結合を、Kuhn et al., 2006 (上記)により記述されたようにフローサイトメトリーを用いて測定した。簡潔には、293T細胞をPBS/5mM EDTAにより脱離し、PBS/1%BSA中で再懸濁し、30分間氷上においた。異なる量のHA−hIgGタンパク質(1〜20μg)を0.5×10
6個の細胞と共に氷上で1時間保温し、続いてPBS/1%BSAで2回洗浄した。FITCとコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体を1:100の希釈度で細胞と共に氷上で45分間保温した。細胞をPBS/1%BSAで3回、およびPBSで2回洗浄し、それに対してフローサイトメトリーを行った。陰性対照(HA−hIgGタンパク質を添加しなかった)の平均蛍光強度(MFI)をHA#1〜HA#4のMFIから引いた(
図9C)。コンストラクト#2および#3はこれらの条件下では293T細胞に多くの結合を示さなかったことは明らかである。それに対し、コンストラクト#1および#4はその標的細胞に用量依存的な結合を示した。コンストラクト#4はHA1のN末端が欠失している(残基17〜88)が、それはその標的細胞に完全長HA1融合タンパク質(#1)よりも優れた結合を与えたことは興味深い。
【0122】
これらの融合タンパク質の細胞結合特性をさらに特性付けするため、2種類の感受性細胞株および1種類の耐性細胞株をそのアッセイにおいて用いた。293Tおよびヒト肺細胞株であるA549は両方とも非常に感受性であることが示されており、一方でヒトT細胞株であるJurkatはHIV/HA感染に耐性である。2μgのそれぞれの融合タンパク質を用いた。これらの条件下で、コンストラクト#4のみがその感受性細胞に著しい結合を示し、一方で残りの3種類の融合タンパク質はあまり多くの結合を示さなかった。重要なことだが、その融合タンパク質はいずれもJurkat細胞にあまり多くの結合を示さず(
図9D)、これは上記で示した形質導入のデータと一致する。これらの実験は、その融合タンパク質の1種類(コンストラクト#4)は2μgにおいてさえも特異的に感受性細胞に結合することができることを実証している。これは高感度なHA結合アッセイの開発を実証し、それは次の実験において用いられるであろう。
【0123】
上記の実験に基づいて、構造的に多様な化合物ライブラリーをスクリーニングしてインフルエンザウイルスの宿主細胞中への侵入を予防するための小分子阻害剤を同定し、二次アッセイを用いることによりその化合物のヒットに優先順位をつけることが可能であった。上記で記述したように、ウイルス侵入の間にインフルエンザのHAを標的とする阻害剤を同定するためにHTSアッセイが開発された。このアッセイを用いることにより、中程度のスループットから高スループットまでのアッセイ条件(1000より多くの化合物/日)、ならびに容易な読み取り(ルシフェラーゼ/GFPレポーター)、および高いシグナル/バックグラウンド比(10/1より大きい)でスクリーニングすることが可能であった。
【0124】
1.
“低病原性”H5インフルエンザウイルスを用いたHA阻害剤の評価。生感染性インフルエンザH5N1ウイルスを用いる実験に必要とされる厳しい生物汚染(biocontainment)基準は、“生”H5N1ウイルスに対して評価することができる“ヒット”の数を制限するであろう。従って、“ヒット”はH5亜型のHAを発現する低病原性トリインフルエンザAウイルス株CK/ミチョアカン/28159−530/95(USDA株)(Liu et al., Science, 309: 1206 (2005))に対する盲検様式で(上記のものから)スクリーニングされ、それらの効力は細胞培養において生感染性ウイルスに対して評価されるであろう。この株はDr.David L.Suarez(USDA)から得て、野生型H5N1ウイルスのような厳しい生物汚染を必要としない。USDA株および野生型H5N1のH5のHAの間の唯一の違いは、あらゆる遍在性プロテアーゼにより切断され得る正規の(canonical)フューリン切断部位(RRRKKR)が存在しないことである(Liu et al., Science, 309: 1206 (2005))。多くの報告がH5のHAタンパク質のこのポリ塩基性切断ペプチドはH5ウイルスの高病原性に必要であることを示してきた(Steinhauer, D.A., 1999, 上記; Garten, W., 1999, 上記); Horimoto, T., 1997, 上記; Stieneke-Grober et al., EMBO J., 11: 2407-2414 (1992); Horimoto et al., 1994, 上記)。(既に切断されたHAを有する偽型ウイルスに頼るスクリーニング戦略のため)我々の“ヒット”がHAの切断に影響を及ぼすであろうとは予想されないため、高病原性H5N1ウイルスを阻害する“ヒット”はUSDA株も阻害するであろうと予測される。この低病原性USDA株に対する最高の阻害活性を有する“ヒット”は、野生型H5N1を用いてさらに評価されるであろう。野生型H5N1ウイルスは低病原性インフルエンザウイルスよりも攻撃的であるため、最終的な評価が必要である。
【0125】
インフルエンザAウイルス株CK/ミチョアカン/28159−530/95は、10日齢の有精鶏卵の尿膜腔中で増殖させられるであろう。簡潔には、ウイルスを尿膜腔に注入し、37℃で28〜42時間保温するであろう。その上清を小さな分割量(aliquots)に分け、瞬間冷凍し、将来の使用のために−80℃で保存するであろう。それぞれの分割量は使用前に1回解凍されるであろう。ウイルス力価を決定するため、系列希釈したウイルス懸濁液を6ウェルプレート中のコンフルエントなMDCK単層細胞培養物中に接種し、37℃で2時間培養するであろう。その細胞を洗浄し、0.6%アガロースおよび2μg/mlアセチル化トリプシンを含有するDMEMで覆い、37℃で2日間培養するであろう。プラークをギムザ染色により可視化するであろう(Anders et al., J. Gen. Virol., 75: 615-622 (1994))。
【0126】
インフルエンザウイルスの感染性の阻害。ウイルスを系列希釈した“ヒット”と共に前保温し(1時間)、96ウェルマイクロタイタープレート中のMDCK細胞(2×10
5細胞/ml)に0.1のMOIで、0.1mlの総量で添加するであろう。未処理のウイルスが陽性対照として用いられるであろう。37℃において2時間の保温の後、吸着していないウイルスを洗浄により除去し、2μg/mlのトリプシンを含有する新しい培地をその細胞に添加し、37℃で2日間培養するであろう。バックグラウンドは、それぞれのプレートにおいて、細胞を未感染の卵からの尿膜腔液を用いて感染させることにより決定されるであろう。比較対象(comparators)として、既知のインフルエンザ阻害剤バフィロマイシンA1、アマンタジンおよびスタキフリン(stachyflin)が用いられるであろう(Yoshimoto et al., Arch. Virol., 144: 865-878 (1999))。培養後、その培養上清を集め、その培養上清の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を測定するであろう。LDHは解糖の間にラクテートをピルベートに変化させる酸化酵素である。LDHは細胞膜および細胞質に広く存在し、細胞損傷の直後に細胞から培養上清中に放出される(Decker, T. and M. L. Lohmann-Matthes, J. Immunol. Meth. 115: 61-69 (1988))。従って、細胞外のLDHの定量化はウイルスの感染性の尺度を提供するであろう。上清のLDH活性は、CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイキット(Promega Corporation,米国)により、製造業者の説明書に従って測定されるであろう。インフルエンザウイルス感染のパーセント阻害は、(%阻害)=100−[{(OD
T)
V−(OD
C)
M}/{(OD
C)
V−(OD
C)
M}]×100として計算されるであろう。(OD
T)
Vは阻害剤の存在下でウイルスに感染させた培養物の上清の吸光度(LDH活性)であり、(OD
C)
Vは阻害剤の非存在下でウイルスを感染させた培養物の上清の吸光度(陽性対照)であり、(OD
C)
Mは未感染の卵からの尿膜腔液を用いて感染させた細胞の上清の吸光度(陰性対照/バックグラウンド)である。10μM未満のIC
50を示す阻害剤をストックプレートから選び取り、プラークアッセイによりさらに確証するであろう。パーセント阻害は100×[化合物の存在下でのプラーク数/(あらゆる阻害剤を含まない)陽性対照のプラーク数]として計算されるであろう。陽性の結果(10μM未満のIC
50)を示す化合物[“二次ヒット”]は、下記で記述するような組み換えH5N1株に対してさらに試験されるであろう。
【0127】
組織培養における“生”H5N1ウイルスの阻害。その“二次ヒット”の抗H5N1インフルエンザ活性は、強化BSL3汚染施設において組み換え世界的流行H5N1インフルエンザウイルスに対して実証されるであろう。高病原性H5N1ベトナム株(A/ベトナム/1203/2004)からのHAを有する組み換えウイルスは、Fodor et al., J. Virol., 73: 9679-9682 (1999)の逆遺伝学系を用いて、Basler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98: 2746-2751 (2001)の方法に従って生成されるであろう。その現在循環している病原性H5N1ベトナム株(A/ベトナム/1203/2004)は、それが新しい世界的流行株を示唆する特徴を有するために選択された。“ヒット”のそのH5N1株に対する阻害活性は、MDCK細胞を用いるプラークアッセイにより確証されるであろう。パーセント阻害は、=100×[化合物の存在下でのプラーク数/(あらゆる阻害剤を含まない)陽性対照のプラーク数]として計算されるであろう。
【0128】
図11は、HIV/HAを用いた最初のスクリーニング段階からの小さい化合物の“ヒット”をヒトおよび他の哺乳類におけるワクチンとしての使用に適したHA特異的インフルエンザ阻害剤へと進めるための設計の作業の流れの図を示す。
【0129】
実施例9.
インフルエンザウイルスの小分子阻害剤を同定するための化合物ライブラリーの初期スクリーニング
上記で概説したように、12μgの適切なウイルスエンベロープ糖タンパク質を含有するコンストラクトを12μgのpNL4−3−Luc−R− −E− HIVベクターと共に、10cmプレート中の293T細胞(90%コンフルエント)中に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、供給業者のプロトコルに従って同時形質移入することにより、偽型ウイルスを生成した。細胞培養で増殖させたインフルエンザH1N1(PR8)ウイルスを、標準的なプロトコル(疾病管理予防センター,2004,上記)に従って、MDCK細胞において1μg/mlのトシルスルホニルフェニルアラニル−クロロメチルケトン(TPCK)処理されたトリプシン(Sigma−Aldrich)の存在下で37℃で3日間にわたって増殖させ、力価測定した。
【0130】
スクリーニングした化合物ライブラリーは、152,500種類を超える化合物の、広い、よくバランスのとれたコレクションである。それらはChembridge(カリフォルニア州サンディエゴ)およびTimtec(デラウェア州ニューアーク)から購入され、96ウェルマスタープレートにおいてジメチルスルホキシド(DMSO)中で2.5mMで希釈され、−20℃で保管された。化合物は、200〜500Daの分子量範囲で選択された。それらは好都合なcLogP値(n−オクタノール/水分配係数の対数として計算される)を有し、200を超える化学型を含む。
【0131】
組み合わせ化合物ライブラリーの偽型ウイルスを用いた高スループットスクリーニングを96ウェルプレートで実施した。低継代A549細胞の単層に、25μM(終濃度)の試験化合物の存在下で、8μg/mlのポリブレンを含有する100μlの偽型ウイルスを感染させた。5時間後、その接種物を除去し、新しい培地を添加し、そのプレートを37℃および5%CO
2において72時間培養した。感染を、Britelite Plus(商標)アッセイシステム(Perkin Elmer)を用いてWallac EnVision 2102マルチラベルリーダー(Perkin Elmer,マサチューセッツ州)において定量化した。パーセント阻害を以下のように計算した:100×[化合物の存在下での相対ルシフェラーゼ単位(RLU)−陰性対照のRLU/(阻害剤を一切含まない)陽性対照のRLU−陰性対照のRLU]。
【0132】
AlphaScreen SureFire GAPDHアッセイキット(Perkin Elmer)を用いて、製造業者のプロトコルに従って細胞溶解物中の内在性の細胞性GAPDHを測定することにより、細胞の生存度を試験した。
【0133】
結果
おおよそ40,000種類の別個の化合物をスクリーニングし、141個の一次ヒットを同定した。HTSに関するZ’因子は0.5±0.2であった。一次ヒットを、無関係な糖タンパク質(VSV−G)を発現する偽型ウイルスおよび感染性H1N1ウイルスを用いて、それらの特異性に関してカウンタースクリーニングした。再合成した化合物を用いて、それらをそれらの効力および細胞毒性に関して評価した。その一次ヒットの内の36種類のみがHAに媒介される侵入プロセスを特異的に阻害した。そのHTSからの最終的なヒット率は0.09%であった。36種類のヒット化合物は全て25μM以下のIC
90値を示した。構造的に、そのHA阻害剤は、それぞれ2員以上の群および単集合として表すことができる。
【0134】
本明細書で同定されたHA阻害剤には、多数の化学的に関連する構造の群ならびに単集合が含まれていた。5種類の観察された“ヒット”(表2参照)の内で、特にスルホンアミド骨格を有する1種類の化合物(化合物2)は3.9μMのIC
90を示し、この結果に基づいて、一群のスルホンアミドアナログを用いてさらなる構造活性相関(SAR)研究を実施した(表3参照)。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
表3に示した骨格に関して調べられた追加の置換基には、R
1におけるエトキシ置換基(2−エトキシ、4−エトキシ)、R
2におけるハロ置換基(F、Cl、Br)、およびR
3−置換されたフェニル基およびアミン窒素の間の直接結合の代わりとなる柔軟なリンカー、例えば−CH
2CH
2O−(すなわち、次の式の部分:
【0138】
【化3】
【0139】
が次の部分:
【0140】
【化4】
【0141】
の代わりとなる)が含まれていた。
上記で同定された化合物は、インフルエンザ感染の予防および処置のための抗ウイルス剤としての開発のための候補である。その化合物は、インフルエンザウイルスの宿主細胞中への侵入の研究のための分子プローブとしても有用である可能性がある。
【0142】
【表4-1】
【0143】
【表4-2】
【0144】
【表4-3】
【0145】
実施例10.
合成スキーム
スキーム1 アミノアセトアミドスルホンアミドウイルス阻害剤化合物の合成
【0146】
【化5】
【0147】
アミノアセトアミドスルホンアミド類は、2種類の置換されたアラニン(それは同じまたは異なっていることができる)、スルホニルクロリド、およびブロモアセチルブロミドから始まる収束する3工程のプロセスで合成される。一方のアラニンは水性塩基の存在下でブロモアセチルクロリドによりアセチル化されてブロモアセトアニリド(bromoacetanlilde)を形成し、一方で他方のアラニンはスルホニルクロリドによりスルホニル化されてスルホンアミドを形成する。そのスルホンアミドは穏やかな塩基により脱プロトン化され、結果として生じた陰イオンを用いてブロモアセトアニリドのブロモ置換基を置換して標的化合物を形成する。
【0148】
標的化合物中の変動は、一般に出発するアニリン類のレベルで成し遂げられる。置換基RおよびR’は出発するアニリン類中にあり、合成を通して持ち越される。置換基R’’は出発するスルホニルクロリド中にあり、それもその合成を通して持ち越される。
【0149】
スキーム2 アミノアセトアミドスルホンアミド類の合成に関する代表的な手順
【0150】
【化6】
【0151】
2-アミノビフェニル(10 g, 59 mmol)のジエチルエーテル(60 mL)中における-10 ℃の溶液に、1.0 M水性NaOH (32 mL, 32 mmol)を添加した。ブロモアセチルブロミド(11.93 g, 59 mmol)のジエチルエーテル(30 mL)中における溶液を15分間かけて添加した。冷却浴を取り外し、その反応混合物をさらに15分間撹拌した。その混合物を分離し、水層をジエチルエーテル(100 mL)で洗浄した。有機性抽出物を合わせて水(2 × 50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄し、次いでMgSO4で乾燥させ、濾過し、最初の量の4分の1まで蒸発させた。結果として得られた固体を濾過により集め、高真空下で乾燥させると、6.5 g (37%)の望まれる生成物が白色の結晶質固体として得られた:
1H-NMR (CDCl
3) δ 8.32 (d, 2H), 7.53-7.36 (m, 6H), 7.27-7.22 (m, 2H)。
【0152】
【化7】
【0153】
I.
N-(4-クロロフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド
4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(5.0 g, 24 mmol)および4-クロロアニリン(3.1 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、4.9 g (69%)の生成物が黄褐色の油として得られた:
1H-NMR (CDCl
3) δ 10.17 (s, 1H), 7.71 (d, 2H), 7.61 (d, 2H), 7.04 (d, 2H), 6.96 (d, 2H), 2.19 (s, 3H)。
【0154】
II.
N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(4-クロロフェニル)-4-メトキシフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-クロロフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(154 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K
2CO
3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、175 mg (66%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点100〜104 ℃, R
f 0.17 (25% EtOAc/ヘキサン);
1H-NMR (CDCl
3) δ 8.78 (s, 1H), 8.49 (d, 1H), 7.72-7.67 (dd, 2H), 7.63-7.60 (m, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.42 (d, 2H), 7.36-7.29 (t, 2H), 7.21-7.18 (m, 2H), 7.09-7.04 (t, 1H), 6.94-6.91 (dd, 2H), 6.43 (s, 1H), 6.28 (d, 1H), 4.10 (s, 2H), 3.87 (s, 3H)。
【0155】
【化8】
【0156】
III.
N-(4-トルオイル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド
4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(5.0 g, 24 mmol)および4-メチルアニリン(2.6 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、6.4 g (93%)の生成物が黄褐色の油として得られた:
1H-NMR (DMSO-d
6) δ 9.94 (s, 1H), 7.66-7.63 (m, 2H), 7.04-6.93 (m, 6H), 3.77 (s, 3H), 2.16 (s, 3H)。
【0157】
IV.
N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(4-トルオイル)-4-メトキシフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-トルオイル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(144 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K
2CO
3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、122 mg (48%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点160〜161 ℃, R
f 0.19 (25% EtOAc/ヘキサン);
1H-NMR (DMSO-d
6) δ 9.19 (s, 1H), 7.67 (d, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.42 (t, 3H), 7.33-7.24 (m, 5H), 7.07 (d, 4H), 6.75 (d, 2H), 4.24 (s, 2H), 3.83 (s, 3H), 2.27 (s, 3H)。
【0158】
【化9】
【0159】
V.
N-(2-メトキシフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド
4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(5.0 g, 24 mmol)および2-メトキシアニリン(3.0 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、5.3 g (44%)の生成物が黄褐色の油として得られた:
1H-NMR (CDCl
3) δ 7.70-7.67 (d, 2H), 7.53-7.50 (d, 1H), 7.05-6.99 (m, 2H), 6.91-6.83 (m, 3H), 6.73 (d, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.65 (s, 3H)。
【0160】
VI.
N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(2-メトキシフェニル)-4-メトキシフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(2-メトキシフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(153 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K
2CO
3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、84 mg (33%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点130〜131 ℃, R
f 0.10 (25% EtOAc/ヘキサン);
1H-NMR (DMSO-d
6) δ 9.16 (s, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.51 (d, 2H), 7.40-7.28(m, 9H), 7.07 (d, 2H), 6.95 (d, 1H), 6.86 (d, 2H), 4.19 (s, 2H), 3.84 (s, 3H), 3.31 (s, 3H)。
【0161】
【化10】
【0162】
VII.
N-(4-メトキシフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド
4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(5.0 g, 24 mmol)および4-メトキシアニリン(3.0 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、9.5 g (79%)の生成物が黄褐色の油として得られた:
1H-NMR (DMSO-d
6) δ 9.29 (s, 1H), 7.63 (d, 2H), 7.23-7.19 (m, 1H), 7.11-7.01 (m, 3H), 6.91-6.83 (m, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.52 (s, 3H)。
【0163】
VIII.
N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(4-メトキシフェニル)-4-メトキシフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-メトキシフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(153 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K
2CO
3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、112 mg (42%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点131〜133 ℃, R
f 0.12 (25% EtOAc/ヘキサン);
1H-NMR (CDCl
3) 8.98 (s, 1H), 8.35 (d, 1H), 7.62-7.47 (m, 7H), 7.29-7.19(m, 4H), 6.88 (dd, 2H), 6.71-6.67 (m, 2H), 6.21-6.18 (dd, 1H), 4.20 (s, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.22 (s, 3H)。
【0164】
【化11】
【0165】
IX.
N-(4-トルオイル)ベンゼンスルホンアミド
ベンゼンスルホニルクロリド(4.2 g, 24 mmol)および4-メチルアニリン(2.6 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、10.6 g (97%)の生成物が黄褐色の油として得られた:
1H-NMR (DMSO-d
6) δ 10.09 (s, 1H), 7.73-7.70 (m, 2H), 7.59-7.49 (m, 3H), 6.98 (dd, 4H), 2.17 (s, 3H)。
【0166】
X.
N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(トルオイル)フェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-トルオイル)ベンゼンスルホンアミド(129 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K
2CO
3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、71 mg (31%)の生成物が灰白色の粉末として得られた:融点98〜100 ℃, R
f 0.27 (25% EtOAc/ヘキサン);
1H-NMR (CDCl
3) 8.84 (s, 1H), 8.48 (d, 1H), 7.72-7.67 (m, 2H), 7.62-7.59 (m, 2H), 7.54-7.46 (m, 6H), 7.46-7.28 (m, 2H), 7.2-7.17 (m, 1H), 6.90 (d, 2H), 6.18 (m, 2H), 4.16 (s, 2H), 2.26 (s, 3H)。
【0167】
【化12】
【0168】
XI.
N-(4-トルオイル)-4-クロロベンゼンスルホンアミド
4-クロロベンゼンスルホニルクロリド(5.1 g, 24 mmol)および4-メチルアニリン(2.6 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、6.8 g (69%)の生成物が黄褐色の油として得られた:
1H-NMR (CDCl
3) δ 10.17 (s, 1H), 7.71 (d, 2H), 7.61 (d, 2H), 7.04 (d, 2H), 6.96 (d, 2H), 2.19 (s, 3H)。
【0169】
XII.
N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(4-トルオイル)-4-クロロフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-トルオイル)-4-クロロベンゼンスルホンアミド(153 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K
2CO
3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、94 mg (37%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点159〜177 ℃, R
f 0.42 (25% EtOAc/ヘキサン);
1H-NMR (CDCl
3) δ 8.77 (s, 1H), 8.48 (d, 1H), 7.71-7.59 (m, 2H), 7.52-7.40 (m, 6H), 7.38-7.32 (m, 1H), 7.29-7.26 (m, 2H), 7.19-7.15 (t, 2H), 6.95-6.23 (m, 2H), 4.13 (s, 2H), 2.27 (s, 3H)。
【0170】
本明細書で引用された全ての刊行物、特許出願、特許、および他の文書をそのまま援用する。矛盾が生じる場合、定義を含め、本明細書が統制するであろう。加えて、その材料、方法、および例は説明的なものでしかなく、限定的であることを意図していない。
【0171】
開示された化合物に対する明らかな変形および本発明の代わりの態様は、上記の開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。全てのそのような明らかな変形および代替案は、本明細書で記述されたような本発明の範囲内であると考えられる。