特許第5906257号(P5906257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5906257ペンタクロロプロパンの気相フッ素化による2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5906257
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】ペンタクロロプロパンの気相フッ素化による2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/00 20060101AFI20160407BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20160407BHJP
   C07C 17/20 20060101ALI20160407BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20160407BHJP
   B01J 27/132 20060101ALI20160407BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160407BHJP
【FI】
   C07C17/00
   C07C21/18
   C07C17/20
   C07C17/25
   B01J27/132 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-549898(P2013-549898)
(86)(22)【出願日】2011年1月21日
(65)【公表番号】特表2014-511349(P2014-511349A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】IB2011000313
(87)【国際公開番号】WO2012098420
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2013年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ドゥール−ベール,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ピガモ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥセ, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンドランジャ, ロラン
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/140563(WO,A1)
【文献】 特開2009−227675(JP,A)
【文献】 特表2010−534680(JP,A)
【文献】 特表2010−531897(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0197842(US,A1)
【文献】 特表2009−522365(JP,A)
【文献】 特表2010−535206(JP,A)
【文献】 特表2010−531895(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/158321(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/123154(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(i)〜(iii)の段階を有することを特徴とする、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンおよび/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを気相触媒フッ素化して製品の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法:
(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240aa)を、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)を含む反応混合物を形成するのに充分な条件下で、フッ素化触媒の存在下に気相でフッ化水素(HF)と接触させ、
(ii)得られた反応混合物を2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)を含む第1流と、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(1233xf)と1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)とを含む第2流とに分離し、
(iii)上記第2流の少なくとも一部を段階(i)の少なくとも一部へ再循環する。
【請求項2】
(i)の段階を一つの反応装置内で行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
製品の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが少なくとも1モル%の濃度で存在する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
触媒が担持または非担持のクロム触媒である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒がNi、Co、Zn、Mn、Mgまたはこれらの混合物の中から選択される共触媒をさらに含み、この共触媒が上記フッ素化触媒の1〜10重量%の量で存在する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Ni−Crを含む触媒の存在で実施する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、フッ素化アルミナ、フッ素化クロミア(Chromia)、フッ素化活性炭またはグラファイトカーボンの中から選択される担体上に担持されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
フッ素化触媒がフッ素含有化合物で活性化される請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン異性体を40モル%以下含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i)の段階を3〜20バールの圧力で実行する請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)の段階を200〜450℃の温度で実行する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(i)の段階を6〜100秒の接触時間で実行する請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(i)の段階のHF:[(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240aa)]のモル比を3:1〜150:1にする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(i)の段階が重合抑制剤を含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(i)の段階を酸素および/または塩素の存在下で実施する請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
上記ペンタクロロプロパン分子一つ当たり0.05〜15モル%の酸素または塩素の量の酸素および/または塩素の存在下で実施する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
下記(i)〜(iii)の段階を含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法:
(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240aa)を、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る反応混合物を形成するのに充分な条件下で、フッ素化触媒の存在下に気相でフッ化水素HFと接触させ、
(ii)得られた反応混合物をHCl2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)とを含む第1流と、HF2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(1233xf)と1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)とを含む第2流とに分離し、
(iii)上記第2流の少なくとも一部を段階(i)の少なくとも一部へ再循環する。
【請求項18】
第1流をHClと2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)とにさらに分離する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
下記(i)〜(iv)の段階を含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法:
(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240aa)を、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る反応混合物を形成するのに充分な条件下で、フッ素化触媒の存在下に気相でフッ化水素HFと接触させ、
(ii)反応混合物をHC1とフッ素化製品を含む流れとに分離し、
(iii)フッ素化製品を含む上記流れを2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)を含む第1流と、HFと、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(1233xf)と、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)とを含む第2流とに分離し、
(iv)上記第2流の少なくとも一部を段階(i)の少なくとも一部へ再循環する。
【請求項20】
(ii)の分離段階を蒸留で行う請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
連続法で行う請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240aa)を気相で触媒フッ素化して製品2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO1233yf)を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾン層保護のためのモントリオールプロトコルによってクロロフルオロカーボン(CFC)の使用は禁止された。クロロフルオロカーボンの代わりにオゾン層への影響がより少ない化合物、例えばハイドロフルオロカーボン、HFC、例えばHFC−134aが用いられるようになったが、この化合物は温室効果ガスとなる。従って、ODP(オゾン減損ポテンシャル)が低くし、しかも、GWP(地球温暖化ポテンシャル)が低いものを開発するというニーズが存在する。ハイドロフルオロカーボン(HFC)はオゾン層に影響を及ぼさない化合物の重要な候補物質と認定されたが、それでも相対的に高いGWP値を示し、さらに低いGWP値を示す化合物を見つけるというニーズが存在している。ヒドロフルオロオレフィン(HFO)はODPおよびGWP値が非常に低い代替物であると考えられている。
【0003】
このHFO化合物、特にプロペンの製造方法がいくつか開発されている。2つの化合物:1233xf(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)および1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)が特に望まれている。
【0004】
特許文献1(米国特許公開第US2009/0240090号明細書)には1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC240db)を無酸素状態で気相反応させて製品の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO1233xf)を製造する方法が記載されている。この特許の実施例3ではフッ素化したCr23から成る触媒を使用する。得られた製品の1233xfを次いで液相反応で製品の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)に変換する。
【0005】
特許文献2(国際特許公開第WO2009/015317号公報)には1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(1230xa)、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(240db)または2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(1230xf)のような塩素化物を触媒上で少なくとも一種の安定化剤の存在下に気相でHFと反応させる方法が開示されている。この方法で2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(1233xf)が得られる。しかし、出発材料として240dbを用いた実施例はない。安定化剤は触媒寿命を改善するとされている。また、定期的な再生が考慮されている。
【0006】
特許文献3(国際特許公開第WO2005/108334号公報)の実施例3では240dbを5モル過剰なHFの存在下に50gの1/8インチCr23触媒床を有する流通反応装置に約250〜400℃で約5〜50秒の接触時間で通して、244db(2−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン)を得ている。次いで、244dbをCr23触媒(50g)上を425〜550℃の温度で25〜30秒の接触時間で通して脱塩化水素化して製品の1234ze(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)にする。
【0007】
特許文献4(英国特許公開第GB−A−1091103号公報)にはクロムフッ素化触媒の製造方法が開示されている。この触媒を使用してフッ素化可能な多数の化合物が示されており、その中にペンタクロロプロパンも言及されているが、好ましい化合物ではないとされている。
特許文献5(国際特許公開第WO2010/123148号公報)には触媒の非存在下で240dbをフッ素化して1233xfを製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開第US2009/0240090号明細書
【特許文献2】国際特許公開第WO2009/015317号公報
【特許文献3】国際特許公開第WO2005/108334号公報
【特許文献4】英国特許公開第GB−A−1091103号公報
【特許文献5】国際特許公開第WO2010/123148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、化合物の1234yfを製造する方法に対するニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンおよび/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを触媒の存在下で気相触媒フッ素化して製品の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法、好ましくは連続法を提供する。本発明方法は単一段階、好ましくは一つの反応装置内、より好ましくは一つの触媒床で行う単一段階プロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を実行するプロセスの概念図。
図2】本発明を実行する別のプロセスの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記はその具体例である:
(1)製品2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは少なくとも1%、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上の濃度で存在する。
(2)触媒は担持または非担持、好ましくは非担持のクロム触媒である。
(3)触媒はNi、Co、Zn、Mn、Mgまたはこれらの混合物の中から選択される共触媒、好ましくはニッケルまたはマグネシウムの共触媒をさらに含み、この共触媒が好ましくはフッ素化触媒の約1〜10重量%の量で存在する。
(4)本発明方法はNi−Crを含む、好ましくは担持された触媒の存在で実施する。
(5)触媒はフッ素化アルミナ、フッ素化クロミア(Chromia)、フッ素化活性炭またはグラファイトカーボンの中から選択される担体上に担持される。
(6)フッ素化触媒はフッ素含有化合物、好ましくはフッ化水素で活性化される。
(7)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン異性体を40モル%以下含む。
(8)本発明方法は3〜20バール、好ましくは5〜15バール、より好ましくは7〜10バールの圧力で実行する。
(9)本発明方法は200〜450℃、好ましくは300〜430℃、より好ましくは320〜420℃の温度で実行する。
【0013】
(10)本発明方法は6〜100秒、好ましくは10〜80秒、より好ましくは15〜50秒の接触時間で実行する。
(11)本発明方法はHF:240のモル比を3:1〜150:1、好ましくは4:1〜70:1、より好ましくは5:1〜50:1にして実行する。
(12)本発明方法は、重合抑制剤、好ましくはp−メトキシフェノール、t−アミルフェノール、リモネン、d,l−リモネン、キノン、ヒドロキノン、エポキシド、アミンおよびこれらの混合物の中から選択される重合抑制剤の存在下で実行する。
(13)本発明方法は、ペンタクロロプロパン分子一つ当たり0.05〜15モル%、より好ましくは0.5〜10モル%の酸素または塩素の量で酸素および/または塩素の存在下で実施する。
【0014】
(14)本発明方法は下記(i)〜(iii)の段階を含む:
(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240aa)を、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る反応混合物を形成するのに充分な条件下で、フッ素化触媒の存在下に気相でフッ化水素HFと接触させ、
(ii)2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る第1流と、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(1233xf)と1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)とから成る第2流とに分離する。
(iii)上記第2流の少なくとも一部を段階(i)の少なくとも一部へ再循環する。
【0015】
本発明方法は下記(i)〜(iii)の段階を含む:
(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240aa)を、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る反応混合物を形成するのに充分な条件下で、フッ素化触媒の存在下に気相でフッ化水素HFと接触させ、
(ii)HCl、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る第1流と、HF、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)と1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)とから成る第2流とに分離する。
(iii)上記第2流の少なくとも一部を段階(i)の少なくとも一部へ再循環する。
【0016】
第1流はHClと2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)にさらに分離する、好ましくは蒸留段階で分離することができる。
本発明方法は下記(i)〜(iv)の段階を含む:
(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240aa)を、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る反応混合物を形成するのに充分な条件下で、フッ素化触媒の存在下に気相でフッ化水素HFと接触させ、
(ii)反応混合物をHC1とフッ素化製品を含む流れとに分離し、
(iii)フッ素化製品を含む上記流れを2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る第1流と、HFと、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(1233xf)と、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)とから成る第2流とに分離し、
(iv)上記第2流の少なくとも一部を段階(i)の少なくとも一部へ再循環する。
分離段階は蒸留段階である。
本発明方法は連続法で実施する。
【0017】
特許文献4(フランス特許第FR1307346号公報)にはゴムと、カーボンブラックと、任意成分の可塑剤または展延油とを含むマスターバッチの製造方法が記載されている。このマスターバッチは液体の形をしており、マスターバッチの総重量に対するカーボンブラックの含有量は少ない。使用する時は溶剤を蒸発させる。
【0018】
240dbは単一反応装置でHFと反応させる。所望の生成物は1234yfであるが、変換時に1233xfもできる。こうして生成した1233xfに一連の反応を行う。Fと反応させると直接1234yfを作ることができる。この不飽和化合物はHFでフッ素化すると5cbになる。1234yfと245cbは平衡する。本発明はこの発見に基づいている。生成する245cbは第1反応帯域へ再循環でき、それによって平衡が移動する(これによって1234yfが245cbへさらに変換するのを防ぐ)。再循環ループ中の245cbの流量は(気相反応装置の出口または蒸留カラムを出て気相反応装置に戻る第2流の戻り流中で)ほぼ一定である。再循環ループ内では245cbの蓄積は全く生じない。この場合、245cbは再循環ループ中に既に存在しているので、反応装置に供給される240dbは1234yf(場合によってさらに1233xf)へのみ変換する。
【0019】
本発明で使用する触媒は例えば遷移金属酸化物またはその誘導体を含む金属またはこの金属のハロゲン化物またはオキシハライドをベースにした触媒である。触媒は例えばFeCl3、クロムオキシフルオライド、酸化クロム(必要に応じてフッ素化されていてもよい)、フッ化クロムおよびこれらの混合物である。他の可能な触媒はカーボン担持触媒、アンチモンベースの触媒、アルミニウムベースの触媒、(AlF3およびAl23およびアルミナのオキシフルオライドおよびフッ化アルミニウム)である。一般的に使用できる触媒はクロムオキシフルオライド、フッ化アルミニウムおよびオキシフルオライドおよびCr、Ni、Zn、Ti、V、Zr、Mo、Ge、Sn、Pb、Mgのような金属を含む担持または非担持触媒である。また、特許文献6の第7頁、第1〜5行目、第28〜32行目、特許文献7のパラグラフ[0022]、特許文献8の第9頁第22行目〜第10頁第34行目、特許文献9のクレーム1を参照することができる。これらの内容は本明細書の一部を成す。
【特許文献6】国際特許公開第WO−A−2007/079431号公報
【特許文献7】欧州特許公開第EP−A−939071号公報
【特許文献8】国際特許公開第W02008/054781号公報
【特許文献9】国際特許公開第WO2008/040969号公報
【0020】
使用前に触媒は活性化する。一般には適切な条件下で、HFで活性化する。
好ましい実施例ではクロムとニッケルを含む混成触媒である特定の触媒を使用する。金属元素に対するCr:Niのモル比は一般に0.5〜5の間、好ましくは0.7〜2の間で、1に近い。触媒は重量で0.5〜20%のクロムと、0.5〜20%のニッケル、好ましくは2〜10%の間の各金属を含むことができる。
【0021】
金属は金属の形か、酸化物、ハロゲン化物またはオキシハライドを含むその誘導体の形で存在でき、ハロゲン化物またはオキシハライドを含むこれらの誘導体は触媒金属の賦活によって得られる。金属の賦活は必要ではないが、好ましい。
【0022】
担体はアルミニウムにするのが好ましい。他の担体、例えばアルミナ、活性アルミナまたはアルミニウム誘導体を使用することもできる。これらの誘導体は例えば特許文献10に記載のアルミニウム・ハロゲン化物およびアルミニウムのハロゲン化物酸化物を含み、また、後述する賦活方法で得られる。
【特許文献10】米国特許第US−P−4902838号明細書
【0023】
触媒は賦活した、または、賦活していない担体上に賦活した、または、賦活していないクロムおよびニッケルを有する。触媒に関しては特許文献11、特にその第4頁第30行目〜第7頁第16行目を参照できる。この内容は本願明細書の一部をなす。
【特許文献11】米国特許公開第W02009/118628号明細書
【0024】
さらに、触媒は好ましくは担持されていない表面積の大きなCrベースの触媒にすることができる。この触媒は必要に応じて一種以上の共触媒、例えばCo、Zn、Mn、MgおよびNi塩を低レベルで含むことができる。好ましい共触媒はニッケルまたはマグネシウムである。他の好ましい共触媒はZnであり、他の好ましい共触媒はMgである。表面積の大きなCrベースの触媒は特許文献12の第4、6頁に記載されている。
【特許文献12】国際特許公開第W02009/158321号公報
【0025】
本発明方法は連続法で行うのが好ましい。これは工業的観点から非常に望ましい。
【0026】
本発明のフッ素化方法は、240dbを主として1234yfから成るフッ素化製品に変換するのに十分な条件下で、反応帯域中で、気相で240dbをHFと接触させることを含む。
【0027】
本発明方法は一般にHF:240のモル比を3:1〜150:1、好ましくは4:1〜70:1、より好ましくは5:1〜50:1にして実行される。
本発明方法は一般に3〜20バール、好ましくは5〜15バール、より好ましくは7〜10バールの圧力で実行される。
本発明方法は一般に200〜450℃、好ましくは300〜430℃、より好ましくは320〜420℃の温度で実行される。反応装置の床の温度は実質的に均一にするか、流路に沿って減少または増加するように流れ方向に調節することができる。
【0028】
接触時間(反応物と共供給物との全流速で触媒容積を割ったもの、運転圧力および温度で調節)は一般に6〜100秒、好ましくは10〜80秒、より好ましくは15〜50秒である。
【0029】
完全にフッ素化された生成物の生成を促すために条件を選択する。低いHF:有機物比を用いる場合は、より長い接触時間およびより高い圧力が一般に用いられ、特により高い温度が用いられる。高温、一般に360℃以上の温度、高圧、一般に5バール以上の圧力が一般に好ましい。本出願人自身の下記出願に開示したように、穏和なフッ素化条件は1233xf生成物を提供できる。
【特許文献13】国際出願第PCT/FR2010/052277号
【0030】
酸素または塩素の共供給物は触媒寿命を延すために使われ、ペンタクロロプロパンの1分子当たり酸素または塩素の量を一般に0.05〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%にする。酸素は酸素含有ガス、例えば空気、純粋酸素または酸素/窒素混合物の形で導入できる。
【0031】
触媒寿命を延すために重合抑制剤を用いることができる。その量は一般に約50〜1000ppm、好ましくは100〜500ppmにすることができる。重合抑制剤はp−メトキシフェノール、t−アミルフェノール、リモネン、d,l−リモネン、キノン、ヒドロキノン、エポキシド、アミンおよびこれらの混合物にすることができる。好ましい重合抑制剤はp−メトキシフェノールまたはt−アミルフェノールである。低レベルの重合抑制剤を共供給することで、特許文献14(その内容は本願明細書の一部をなす)で説明されているように、クロロオレフィンの重合を制御することができ、触媒の寿命を延長することができる。
【特許文献14】米国特許第US5714651号明細書
【0032】
1234yfと一緒に1233xfもできる。1233xfと245cbとを分離して気相反応装置に再循環することが本発明の一つの実施例である。
従って、本発明はさらに下記(i)〜(iii)の段階を含む方法を提供する:
(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240db)および/または1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC 240aa)を、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る反応混合物を形成するのに充分な条件下で、フッ素化触媒の存在下に気相でフッ化水素HFと接触させ、
(ii)反応混合物を2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)から成る第1流と、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(1233xf)とから成る第2流とに分離する。
(iii)上記第2流の少なくとも一部を段階(i)の少なくとも一部へ再循環する。
この再循環は下記の図に示されるように種々の形態をとることができる。
【0033】
図1]は本発明の一実施例で実行されるプロセスを表し、気相反応装置には240dbとHFとが供給される。反応装置を出た反応混合物はHC1と、1233xfと、未反応HFと、1234yfと、245cbとから成る。この反応流を蒸留によってHC1と、1234yf(少量のHFと共沸混合物を形成している)とから成る第1流(軽質産物)と、マイナー量の245cbおよび1233xfとに分離する。蒸留カラムの底部で得られる第2流(重質産物)はHFと、1233xfと、245cbとから成る。HClと、1234yf(HFと一緒)と、マイナー量の他の製品とを含む軽質フラクションは再度蒸留される。その頂部流はHC1から成り、その底部流は1234yfとHFとから成り、これは適当な公知の方法を使用して再び分離できる。公知方法の中ではデカンテーションが使用でき、そこでHFリッチな流れを作って気相反応装置へ再循環できる。これによってプロセスの下流のフッ素含有量が低下し、副生成物(例えば廃棄が必要なCaF2)の発生が減る。デカンターを出た流れは洗浄およびスクラビングおよび蒸留を含む公知方法に従って処理される。
【0034】
図2]は他の具体化を表す。この場合には有機フッ素化製品の蒸留をする前に、最初の段階でHC1を除去する。気相反応装置には240dbとHFとが供給される。反応装置を出た反応混合物はHClと、1233xfと、未反応HFと、1234yfと、245cbとから成る。この反応流は第1蒸留カラムでHC1を主として含む流れと、その他の製品を含む他の流れとに分離される。この他の流れは蒸留によって1234yf(少量のHFと一緒に共沸混合物を形成している)から成る第1流(軽質産物)と、マイナー量の245cbおよび1233xfとに分離される。蒸留カラムの底部で得られる第2流(重質産物)はHFと、1233xfと、245cbとから成る。第2の蒸留カラムの頂部からは1234yf(HFと一緒)と、マイナー量の他の製品とを含む軽質フラクションとが得られる。この頂部流は公知の適当な方法を使用して再び分離できる。公知方法の中でデカンテーションを用いることで、HF流を作って、それを気相反応装置へ再循環できる。これによってプロセスの下流のフッ素含有量が低下し、副生成物(例えば廃棄が必要なCaF2)の発生が減る。デカンターを出た流れは洗浄およびスクラビングおよび蒸留を含む公知の方法に従って処理される。
【0035】
反応物は反応装置の同じ位置、異なる位置または反応装置に沿って配置した複数の供給位置から供給できる。好ましい供給システムは反応装置の底からガス状の反応物を吹込む方法である。再循環は反応装置の入口または反応装置の中間段階で行うことができ、好ましくは反応装置の入口で行う。また、反応装置を出た流れの一部を再循環することもできる。
【0036】
反応はハロゲンを含む反応用の専用反応装置で実行される。この種の反応装置は当業者に公知であり、例えばHastelloy(登録商標)、Inconel(登録商標)、Monel(登録商標)またはフルオロコポリマーをベースにしたライニングをしたものが含まれる。反応装置には必要に応じて熱交換手段を備えることができる。
【0037】
最終製品は公知の任意手段、例えばスクラビング、洗浄、抽出、デカンテーション、好ましくは蒸留によって容易に回収できる。また、蒸留によって更に精製することができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
使用した設備は管状オーブンで取り囲んだINCONEL(登録商標)合金600製の内径が28mmの管状反応装置から成る。温度の均一性は反応装置とオーブンとの間の空間を満たす流動化鋼玉によって保証される。この反応装置は圧力および温度制御装置をさらに備えている。反応物はヒーターで予め蒸発させ、気相にして反応装置の底部に導入する。反応装置後は圧力調整弁を用いて大気圧〜16絶対バールの間の圧力範囲で運転できる。
【0039】
セットアップの出口で、反応の生成物をウォータースクラバーで洗浄し、水素酸を除去する。サンプルを取って気相クロマトグラフィによってオフラインで分析する。広範囲の可能性のある生成物を検出するのに2種類のGC分析が必要である。すなわち、沸点が1234yfの場合の−28.3℃から原料の場合の240dbの192℃までで変えることができる。
【0040】
クロマトグラフィによる分析はコラムCP Sil 8CB(寸法50m*0.32mm*5μm)を使用して実行し、240dbのような重質産物を検出する。オーブン温度は70℃で10分間、それから10℃/分の速度で250℃まで上げるようにプログラミングした。
【0041】
クロマトグラフィによる分析はコラムCarbopack B 1%SP1000-60/80メッシュ−5mを用いて実行し、定量化し且つより軽質の産物をより良く分離する。オーブンの温度のプログラミングは以下の通り:40℃で10分間、次いで、4℃/分の勾配で180℃まで。
得られる組成物はモル%で表す。
【0042】
モル比のHF(MR HF)はHFのモル流速と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンのモル流速との比と定義される。
【0043】
実施例1(本発明ではない)
A1F3に担持させた79.4cm3のNi−Cr触媒を用いて上記反応装置で240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)のフッ素化を実行した。
使用した触媒はフッ化アルミナ上に担持させたNi/Cr原子比=1の混成ニッケル/クロム触媒で、これはニッケルおよび無水クロム(CrO3)の溶液を含浸させ、含浸および乾燥後に固体を320℃〜390℃の間の温度で、沸化水素酸および窒素との混合物(窒素中の酸の濃度は5〜10体積%)で処理して作った。
反応装置に無水HFを15g/時、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを約4.5g/時の速度で86時間、大気圧下に連続的に供給した。従って、接触時間は7.4秒であり、240に対するHFのモル比は36である。反応温度は340℃で、酸素の量は240dbに対して約4モル%である。結果は[表1]に示した。
【0044】
実施例2(本発明ではない)
65.9モル%の240dbすなわち1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと、34.9モル%の240aaすなわち1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンとの混合物を実施例1に記載の方法でフッ素化した。反応装置には16g/時で無水のHFと、約5.1g/時で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとを大気圧下に連続的に供給した。従って、接触時間は6.9秒であり、上記モル比は34であり、反応温度は340℃にした。1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンの全モル数に対する酸素量は約4モル%である。結果は[表1]に示した。
【0045】
実施例3、4(本発明ではない)
[表1]に示す異なる温度で実施例2の操作を繰り返した。
【表1】
【0046】
低い圧力とやや低い温度を用いると、1234yfを多量に製造することはできない。
【0047】
実施例5(本発明)
A1F3に担持させた150cm3のNi−Cr触媒を用いて上記反応装置で240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)のフッ素化を実行した。
使用した触媒はフッ化アルミナ上に担持させたNi/Cr原子比=1の混成ニッケル/クロム触媒で、これはニッケルと無水クロム(CrO3)の溶液を含浸させ、含浸および乾燥後に固体を320℃〜390℃の間の温度で、沸化水素酸および窒素との混合物(窒素中の酸の濃度は5〜10体積%)で処理して作った。
反応装置に無水HFを33g/時、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを8.9g/時の速度で550時間、3絶対バールで連続的に供給した。従って、接触時間は20秒であり、240に対するHFのモル比は40である。反応温度は300℃で、酸素の量は240dbに対して約4モル%である。結果は[表2]に示した。
【表2】
【0048】
実施例6
[表3]に示す異なる温度で実施例5の操作を繰り返した。約200時間の運転後にポイントを記録する。
【表3】
【0049】
温度の上昇は1234yfおよび245cbへのフッ素化を促進する。
【0050】
実施例7
この実施例は再循環の効果を示す。
A1F3に担持させた100cm3のNi−Cr触媒を用いて上記反応装置でフッ素化を実行した。圧力は8絶対バールで、温度は350℃である。接触時間は20秒、有機物の合計に対するHFのモル比は約40で、有機物の合計に対する酸素のモル比は4%である。入口と出口との間のモル組成を[表4]に示す。再循環される生成物は1233xfと245cbを含む。[表4]には再循環によって得られる所望のデータが含まれる。
【表4】
図1
図2