【文献】
R.B.Kreider,Effects of Calcium β-Hydroxy-β-methylbutyrate(HMB) Supplementation During Resistance-Training on Markers of Catabolism ,Body Composition and Strength,Int. J. Sports Med.,米国,1999年11月 1日,vol20,no.8,p503-509
【文献】
Reload Dietary Supplements,DATABASE GNDP,米国,2010年 5月,Record ID 1315326,URL,http://www.gnpd.com/signatra/recordpage/1315326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種のビタミンを含む、請求項2に記載の栄養粉末。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の包装された組成物および栄養粉末はHMBを含み、組成物および粉末中の鉄、銅、亜鉛およびマンガンなどの成分の酸化活性を低減または排除する。包装された組成物および栄養粉末の本質的特色、ならびに包装された組成物および栄養粉末を製造する方法に加え、多くの任意の変更および追加のいくつかを以下に詳細に説明する。
【0013】
本明細書で用いられる用語「カルシウムHMB」は、別段の記載がない限り、最も典型的には一水和物形態である、β−ヒドロキシ−β−メチルブチラート(β−ヒドロキシル−3−メチル酪酸(、β−ヒドロキシイソ吉草酸またはHMBとも称される。)のカルシウム塩を指す。カルシウムHMBを特徴づけるために本明細書で用いられる重量、パーセント値および濃度の全てが、別段の記載がない限り、カルシウムHMB一水和物の重量に基づく。
【0014】
本明細書で用いられる用語「栄養粉末」は、別段の記載がない限り、一般には流動性の微粒子であり、水性液体で再構成可能であり、ヒトへの経口投与に適した栄養粉末を指す。
【0015】
本明細書で用いられる用語「脂肪」および「油」は、別段の記載がない限り、植物または動物に由来、またはこれから加工される脂質材料を指すために互換可能に用いられる。合成脂質材料がヒトへの経口投与に適する限り、これらの用語はそのような合成材料も含む。
【0016】
本明細書で用いられる用語「貯蔵安定性」は、別段の記載がない限り、包装され、次いで18−24℃で少なくとも3ヶ月間、例えば約6ヶ月から約24ヶ月、同じく例えば約12ヶ月から約18ヶ月貯蔵された後、商業的に安定したままである栄養製品を指す。
【0017】
本明細書で用いられる用語「栄養製品」は、別段の記載がない限り、栄養液および栄養粉末を指し、このうち後者は、再構成されて栄養液を形成することができ、人による経口消費に適している。
【0018】
本明細書で用いられる用語「栄養液」は、別段の記載がない限り、すぐに飲める液形態の栄養製品および使用前に本明細書に記載された栄養粉末を再構成することにより生成される栄養液を指す。
【0019】
本明細書で用いられる用語「金属容器」は、別段の記載がない限り、栄養製品が少なくとも1つの金属表面に暴露された包装、例えば内表面積の少しの部分が金属である包装を指す。「金属容器」は、鉄、銅、亜鉛およびマンガンから選択される少なくとも1種の金属成分を含む。
【0020】
本明細書で用いられるパーセント値、部および比率の全ては、別段の記載がない限り、製品全体の重量に基づくものである。列挙された成分に関係するそのような重量は全て、別段の記載がない限り、活性レベルに基づき、それゆえ市販材料に含まれ得る溶媒または副生成物を含まない。
【0021】
本開示の単数形の特徴または制限への言及は全て、別段の記載がない限り、または言及された文脈により逆の意味が明示されない限り、対応する複数形の特徴または制限、およびその逆を含む。
【0022】
本明細書で用いられる方法または工程ステップの組み合わせの全ては、別段の記載がない限り、または言及された組み合わせに関する文脈により逆の意味が明示されない限り、任意の順序で実施することができる。
【0023】
本開示の包装された組成物および栄養粉末の様々な実施形態はまた、残りの組成物または粉末が本明細書に記載された必要成分または特色の全てを、まだ含むことが前提であれば、本明細書に記載された任意または選択された必須成分または特色を実質的に含まなくてもよい。この文脈において、用語「実質的に含まない」は、別段の記載がない限り、任意成分を、機能的な量未満、典型的には、そのような任意または選択された必須成分の重量の約1%未満、例えば約0.5%未満、約0.1%未満、同じくゼロ%含有することを意味する。
【0024】
包装された組成物および粉末は、本明細書に記載された製品の必須要素と、本明細書に記載された、そうでなければ栄養製品への適用において有用である、任意の追加的または任意要素を含んでもよく、またはそれらからなってもよく、または本質的にそれらからなってもよい。
【0025】
(
製品形態)
栄養製品には、栄養液体および栄養固体形態があり、乳化液、粉末、例えば使用前に水または他の水性液体で希釈して栄養液を形成し得るドライミックスおよび/または噴霧乾燥の粉末、栄養バーなどが含まれる。
【0026】
栄養製品は、十分な種類および量の栄養素と共に配合されて、単独の、主な、もしくは補助的な栄養供給源を提供してもよく、または特定の疾患もしくは状態に罹患した個体における使用のための、または目的の栄養利益を有する、専用の栄養製品を提供することができる。
【0027】
加えて、別の実施形態において、製品形態は、金属容器およびこの中に配置されている栄養製品を含む包装された組成物を含む。金属容器内に配置されている栄養製品は、栄養液または栄養粉末のいずれかであってもよい。典型的には金属容器は、少なくとも1種の金属内表面を含む。いくつかの実施形態において、金属容器は、内表面に少なくとも10%の金属、例えば約10から約90%、同じく約15%から約70%、同じく約20%から約50%、および同じく約25%から約35%の金属を含む。金属容器内に配置されている栄養製品へのHMBの含有は、鉄および銅をはじめとする遷移金属が時間経過に伴い金属容器から栄養製品に移動し得るため、特に有益である。
【0028】
(
栄養固体)
栄養製品の固体形態は、HMB、ならびに脂肪、蛋白質および炭水化物の少なくとも1種を含む。これらの製品は、典型的には流動性もしくは実質的に流動性の微粒子組成、または少なくともスプーンもしくは他の類似デバイスで容易にすくって量り取ることができる微粒子組成物である栄養粉末の形態であり、粉末は、好適な水性液体、典型的には水で使用対象者により容易に再構成されて、即時に経口または経腸使用される栄養配合剤を形成することができる。この文脈において、「即時の」使用は、一般に再構成の約48時間以内、典型的には約24時間以内、最も典型的には再構成の直後または20分以内を意味する。
【0029】
一実施形態において、栄養粉末は、HMBを含み、その少なくとも一部は、栄養粉末の他の成分の1種以上と共に噴霧乾燥されているHMBである。いくつかの実施形態において、栄養粉末中に存在するHMBの100%は、栄養粉末の他の成分の1種以上と共に噴霧乾燥されているHMBである。代替的に栄養粉末は、ドライミックスまたはドライブレンドされたHMBをHMBの総濃度の100%までの量で含有し得る。
【0030】
別の実施形態において、栄養固体は、HMBおよび少なくとも1種の酸化活性材料を含む、栄養バーまたは栄養エネルギーバーである。
【0031】
(
栄養液)
栄養エマルジョンをはじめとする栄養液は、HMBを含み、蛋白質、脂肪および炭水化物を更に含む水性エマルジョンであってもよい。これらの液体は、約1から約25℃で流動性または飲用の液体であり、典型的には水中油型、油中水型または複合水性エマルジョンの形態であるが、このようなエマルジョンは、最も典型的には連続水相および不連続油相を有する水中油型エマルジョンの形態である。
【0032】
栄養液は、貯蔵安定性であり得、典型的には貯蔵安定性である。栄養液は、典型的には栄養液の重量の約95重量%までの水、例えば約50重量%から約95重量%、同じく約60重量%から約90重量%、同じく約70重量%から約85重量%の水を含有する。
【0033】
これらの栄養液は、様々な製品密度を有していてもよいが、最も典型的には約1.01g/mlを超える密度、例えば約1.06g/mlから約1.12g/ml、同じく約1.085g/mlから約1.10g/mlの密度を有していてもよい。
【0034】
栄養液は、最終的な使用者の栄養的要件に適合させたカロリー密度を有していてもよいが、ほとんどの例において、液体は、約100から約500kcal/240ml、例えば約150から約350kcal/240ml、同じく約200から約320kcal/240mlを含む。
【0035】
栄養液は、約2.5から約8の範囲内のpHを有していてもよく、最も有利には約4.5から約7.5、例えば約5.5から約7.3および約6.2から約7.2の範囲内である。
【0036】
(β−ヒドロキシ−β−メチルブチラート(HMB))
栄養製品はHMBを含み、これは製品がHMBを、最も典型的にはカルシウム一水和物として加えて配合する、そうでなければ最終生成物中にHMBを含有するように調製されていることを意味する。最終生成物がHMBを含有することが前提であれば、HMBの任意の供給源が本明細書における使用に適するが、そのような供給源は、好ましくはカルシウムHMBであり、そのため最も典型的には配合中に栄養製品に添加される。
【0037】
カルシウムHMB一水和物は、本明細書における使用に好ましいHMB供給源であるが、他の好適な供給源が、遊離酸、塩、無水塩、エステル、ラクトン、そうでなければ栄養製品からのHMBの生物学的利用性形態を提供する他の製品形態としてHMBを含んでいてもよい。本明細書における使用に適したHMBの塩の非限定的例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの水和物もしくは無水のHMB塩、または他の非毒性塩形態が挙げられる。カルシウムHMB一水和物が好ましく、Salt Lake City, UtahのTechnical Sourcing International (TSI)およびLonza Group Ltd.(Basel, Switzerland)から市販されている。
【0038】
栄養液中のHMBの濃度は、栄養液の重量の約10%まで、例えば約0.01%から約10%、同じく約0.1%から約5.0%、同じく約0.3%から約2%、同じく約0.4%から約1.5%、同じく約0.3%から約0.6%の範囲内であってもよい。特定の一実施形態において、HMBは、栄養液中に、栄養液の重量の約0.67%の量で存在する。
【0039】
栄養粉末およびバー中のカルシウムHMBの総濃度は、栄養粉末の重量の約10%まで、例えば約0.1%から約8%、同じく約0.2%から約5.0%、同じく約0.3%から約3%、同じく約0.3%から約1.5%、同じく約0.3%から約0.6%の範囲内であってもよい。栄養粉末中のHMBの全てまたは一部は、本明細書で説明された通り、噴霧乾燥されたHMBであってもよい。
【0040】
栄養製品中のHMBの総濃度は、特定の酸化的反応性種の量に関連して記載されていてもよい。一実施形態において、栄養製品中に存在するHMBの量は、存在する金属(鉄または銅またはマンガンまたは亜鉛をはじめとする遷移金属)の量に関係する。特にHMBと金属との重量比は、約150:1から約600:1、望ましくは約180:1から約600:1、望ましくは約200:1から約600:1である。
【0041】
栄養製品は、約0.1から約10グラム/日のHMBを提供してもよい。したがって、栄養製品は、1回あたり約0.5から約2.5グラム、例えば約1.0から約1.7グラム、例えば約1.5グラムのHMBを提供してもよく、一回に、約240mlのすぐに与えられる(ready to feed)栄養液または約240mlの再構成されている栄養固体であってもよい。特定の一実施形態において、HMBは、約1.58グラム/240mlのレベルで提供される。個体は、栄養製品から所望の量のHMBを受けるために、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回またはそれを超える回数で投与されてもよい。
【0042】
(
酸化活性成分)
本開示のいくつかの実施形態の栄養製品は、酸化活性成分、即ち活発に触媒する、そうでなければ栄養製品中の少なくとも1種の栄養素の酸化をもたらす成分を含んでいてもよい。例えば多くの栄養製品は、鉄、亜鉛、マンガンまたは銅などの遷移金属成分を含んでいてもよく、標的集団中で用いられる場合に、製品の物理的、栄養的、化学的、快楽的もしくは加工的特性を改良する可能性がある、または薬学的もしくは追加的栄養成分として作用する可能性がある。一般に、遷移金属成分は、栄養製品の重量の約0.00001%から約5%、例えば約0.0001%から約1%、約0.00001%から約0.1%の濃度で栄養製品中に存在する。
【0043】
しかし、いくつかの栄養製品において、これらの金属成分は、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB12、ビタミンEおよび葉酸など)、脂質(例えば魚油、海産動物油、DHAおよびARAなど)および蛋白質などの感受性栄養素の望ましくない酸化を誘発する可能性がある。
【0044】
いくつかの実施形態において、栄養製品は、金属容器または部分的に金属製の容器に包装されているため、製品は少なくとも一部が金属と接触している。多くの金属容器は、この中に包装された栄養製品中に移行または移動し得る鉄、銅、亜鉛、マンガンまたは他の遷移金属などの金属成分を含み得る。時間経過に伴い、これらの金属成分の濃度が、酸化反応を触媒するのに十分なレベルまで上昇して、所望の栄養素の望ましくない酸化をまねく可能性がある。
【0045】
(
主要栄養素)
栄養製品は、蛋白質、脂質、炭水化物およびこれらの組み合わせをはじめとする1種以上の任意主要栄養素を更に含んでいてもよい。栄養製品は、望ましくは3種の主要栄養素を全て含有するように配合される。
【0046】
任意主要栄養素が経口投与に安全で効果的であり、そうでなければ栄養製品中の他の成分と相容性があることを条件として、本明細書における使用に適した主要栄養素は、経口栄養液中での使用が公知である、そうでなければ経口栄養液中での使用に適している、任意の蛋白質、脂質もしくは炭水化物、またはこれらの供給源を含む。
【0047】
栄養液中の任意の脂質、炭水化物および蛋白質の濃度または量は、製品の特定の栄養適用に応じてかなり変動させることができる。これらの任意主要栄養素は、最も典型的には以下の表に記載されたいずれかの具体的範囲内で配合される。
【0050】
(
蛋白質)
経口栄養製品中での使用に適していて、そのような製品の必須要素および特色と相容性がある任意の蛋白質またはその供給源が適している。
【0051】
栄養液中の蛋白質の濃度は、栄養液の重量の約1.0%から約30%、例えば約1%から約15%、同じく約1%から約10%、同じく約1%から約7%の範囲内であってもよい。
【0052】
粉末およびバーの実施形態では、蛋白質の濃度は、栄養粉末またはバーの重量の約1.0%から約50%、例えば約10%から約50%、同じく約10%から約30%の範囲内であってもよい。
【0053】
栄養製品中での使用に適した蛋白質またはその供給源の非限定的例としては、加水分解された、部分加水分解されたまたは加水分解されていない蛋白質または蛋白質供給源が挙げられ、任意の公知の、そうでなければ好適な供給源、例えば乳(例えば、カゼイン、ホエー)、動物(例えば、肉、魚)、穀物(例えば、米、トウモロコシ)、野菜(例えば、大豆またはエンドウ豆)またはこれらの組み合わせに由来してもよい。そのような蛋白質の非限定的例としては、乳蛋白質単離物、乳蛋白質濃縮物、カゼイン蛋白質単離物、ホエー蛋白質、カゼインナトリウムまたはカルシウム、全乳、部分または完全脱脂乳、大豆蛋白質単離物、大豆蛋白質濃縮物などが挙げられる。
【0054】
(
炭水化物)
経口栄養製品中での使用に適しており、そのような製品の必須要素および特色と相容性がある任意の炭水化物が適している。
【0055】
例えば、栄養液中の炭水化物濃度は、栄養液の重量の約5%から約40%、例えば約7%から約30%、例えば約10%から約25%の範囲内であってもよい。特定の一実施形態において、炭水化物は、栄養液中に、栄養液の重量の約10.2%の量で存在する。
【0056】
栄養粉末またはバー中の炭水化物濃度は、栄養粉末またはバーの重量の約10%から約90%、例えば約20%から約80%、更に約40%から約60%の範囲内であってもよい。特定の一実施形態において、炭水化物は、栄養粉末またはバー中に、栄養粉末またはバーの重量の約58%の量で存在する。
【0057】
本明細書に記載された栄養製品中での使用に適した炭水化物またはその供給源の非限定的例は、マルトデキストリン、加水分解または加工デンプンまたはコーンスターチ、グルコースポリマー、コーンシロップ、固形コーンシロップ、米由来炭水化物、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、糖アルコール(例えば、マルチトール、エリトリトール、ソルビトール)、人工甘味料(例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア)およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい。特に望ましい炭水化物は、低デキストロース当量(DE)のマルトデキストリンである。
【0058】
(
脂肪)
経口栄養製品中での使用に適していて、必須要素およびそのような製品の特色と相容性がある、最も典型的には乳化脂肪としての、任意の脂肪が適している。
【0059】
脂肪は、栄養液中に、栄養液の重量の約1%から約30%、例えば約1%から約20%、約1%から約15%、同じく約1.5%から約5%の量で存在してもよい。特定の一実施形態において、栄養液は、栄養液の重量の約1.6%の量の脂肪を含む。
【0060】
脂肪は、栄養粉末またはバー中に、栄養粉末またはバーの重量の約1%から約30%、例えば約1%から約20%、約1%から約15%、同じく例えば約5.0%から約10%の量で存在してもよい。特定の一実施形態において、栄養粉末またはバーは、栄養粉末またはバーの重量の約7.5%の量の脂肪を含む。
【0061】
本明細書に記載された栄養製品中での使用に適した脂肪またはその供給源の非限定的例としては、ココナッツ油、分画ココナッツ油、大豆油、コーン油、オリーブ油、サフラワー油、高オレイン酸サフラワー油、MCT油(中鎖トリグリセリド)、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、パームおよびパーム核油、パームオレイン、キャノーラ油、海産動物油、魚油、綿実油、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
特に好適な一実施形態において、脂肪は、長鎖多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)を含む。LC−PUFA、特にω−3およびω−6PUFAは、使用者に栄養利益、例えば心臓および心臓血管系の能力維持を助けること、血中トリグリセリド(脂肪)レベルを低下させること、血圧調節を助けること、ならびに規則的な心拍数の維持を助けることなどを提供し得る。加えて、ω−3LC−PUFAは、骨および関節を健常に、ならびに脳を健常に保つ助けとなることが示された。これらのLC−PUFAは鉄および銅などの金属も含む栄養製品中に含まれる場合には、一般に長期間では酸化的に不安定となり得る。先に記された通り、LC−PUFAの時間経過に伴う酸化速度は、栄養製品中にHMBを含むことにより低下し得る。
【0063】
栄養製品中で使用される例示的LC−PUFAとしては、植物油、海洋プランクトン、真菌油、および魚油などの油供給源由来のアラキドン酸(ARA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、リノール酸、リノレン酸(α−リノレン酸)およびγ−リノレン酸が挙げられる。具体的な一実施形態において、LC−PUFAは、メンハーデン、サケ、アンチョビー、タラ、オヒョウ、マグロまたはニシンの油などの魚油に由来する。
【0064】
これらのLC−PUFAは、製品中に総脂肪重量の約0.01%から約5%の量で含まれ得る。
【0065】
(
任意成分)
HMBを含む栄養製品は、標的集団中で用いられる場合に、製品の物理的、栄養的、化学的、快楽的もしくは加工的特性を改良する可能性があり、または薬学的もしくは追加的栄養成分として作用する可能性がある、他の任意成分を更に含んでいてもよい。そのような任意成分の多くは、他の栄養製品中での使用が知られている、そうでなければその使用に適しており、そのような任意成分が経口投与に安全で効果的であり、選択された製品形態中の必須成分および他の成分と相容性があることが前提であれば、本明細書に記載された栄養製品中で用いられてもよい。
【0066】
そのような任意成分の非限定的例としては、防腐剤、抗酸化剤、乳化剤、緩衝剤、フルクトオリゴ糖、ピコリン酸クロム、医薬活性剤、本明細書に記載された追加的栄養素、着色剤、香味料、増粘剤および安定化剤などが挙げられる。
【0067】
製品は、ビタミンまたは関連の栄養素を更に含んでいてもよく、その非限定的例としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、カロテノイド、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、これらの塩および誘導体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。特に好ましい実施形態としては、以下のビタミン:葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンDおよびビタミンEの1つ以上が挙げられる。
【0068】
ビタミンの量は、栄養製品中で用いられる場合には、用いられる特定のビタミンおよび栄養製品の他の成分に応じて変動する。例えば栄養製品が葉酸を含む場合、栄養製品は、典型的には栄養製品の重量の約0.000001重量%から約0.001重量%、例えば約0.000005重量%から約0.0002重量%、および約0.00001重量%から約0.0001重量%の葉酸を含む。
【0069】
ビタミンDが栄養製品中に含まれる場合、ビタミンDは、栄養製品中に、栄養製品の重量の約0.0000001%から約0.00001%、例えば約0.0000005%から約0.000002%、および約0.0000003%から約0.000003%の量で含まれる。
【0070】
製品は、追加のミネラルを更に含んでいてもよく、その非限定的例としては、リン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、セレン、塩素およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
製品は、1種以上の香味料またはマスキング剤を含んでいてもよい。好適な香味料またはマスキング剤としては、天然および人工甘味料、塩化ナトリウムなどのナトリウム供給源、ならびにヒドロコロイド、例えばグアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ゲランガム、アラビアガムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
(
製造方法)
栄養液は、乳性栄養エマルジョンなどのエマルジョンをはじめとし、栄養液を製造するための任意の公知方法、そうでなければ好適な方法により製造してもよい。
【0073】
好適な一製造工程において、栄養液は、油中蛋白質(PIF)スラリー、炭水化物−ミネラル(CHO−MIN)スラリーおよび水中蛋白質(PIW)スラリーをはじめとする少なくとも3種の別個のスラリーを用いて調製される。PIFスラリーは、選択された油(例えば、キャノーラ油、コーン油、魚油など)を加熱および混合し、その後、連続して加熱および撹拌しながら乳化剤(例えば、レシチン)、脂溶性ビタミンおよび総蛋白質の一部(例えば、乳性蛋白質濃縮物など)を添加することにより形成される。CHO−MINスラリーは、加熱および撹拌しながら、水にミネラル(例えば、クエン酸カリウム、リン酸二カリウム、クエン酸ナトリウムなど)、微量および超微量ミネラル(TM/UTMプレミックス)、増粘剤または懸濁剤(例えば、Avicel、ゲラン、カラギーナン)、ならびにHMBを添加することにより形成される。得られたCHO−MINスラリーは、10分間連続して加熱および撹拌した後、追加的ミネラル(例えば、塩化カリウム、炭酸マグネシウム、ヨウ化カリウムなど)および/または炭水化物(例えば、フルクトオリゴ糖、スクロース、コーンシロップなど)を添加する。その後、PIWスラリーが、加熱および撹拌しながら残りの蛋白質(例えば、カゼインナトリウム、大豆蛋白質濃縮物など)を水中に混合することにより形成される。
【0074】
その後、得られたスラリーを加熱撹拌しながら一緒にブレンドして、pHを所望の範囲、典型的には6.6−7.0に調整し、その後、組成物を高温短時間(HTST)処理に供して組成物を加熱処理し、乳化および均質化し、その後、放冷する。水溶性ビタミンおよびアスコルビン酸を添加し、必要に応じてpHを再度、所望の範囲に調整し、香味料を添加し、水を添加して所望の総固形水準を実現する。その後、組成物を無菌包装して、無菌包装栄養エマルジョンを形成させるまたは組成物をレトルトの安定した容器に添加し、その後、レトルト殺菌に供して、レトルト殺菌栄養エマルジョンを形成させる。
【0075】
栄養エマルジョンの製造工程を、本開示の趣旨および範囲を逸脱せずに本明細書に示されたもの以外の方法で実施してもよい。それゆえ本実施形態は、全ての点で例示的および非制限的とみなすべきであり、その全ての変更および均等物もまた本開示の説明に含まれる。
【0076】
噴霧乾燥された栄養粉末またはドライミックスの栄養粉末などの栄養固体は、栄養粉末を製造および配合させるのに適した公知の技術、そうでなければ効果的技術の任意の集合により調製されてもよい。
【0077】
例えば、栄養粉末が噴霧乾燥された栄養粉末である場合、噴霧乾燥ステップは、同様に栄養粉末の製造における使用について公知の、そうでなければ使用に適した、任意の噴霧乾燥技術を含んでいてもよい。多くの異なる噴霧乾燥法および技術が、栄養分野での使用に関して公知であり、その全てが、本明細書の噴霧乾燥栄養粉末の製造における使用に適している。
【0078】
噴霧乾燥された栄養粉末を調製する一方法は、HMB、ならびに場合によって蛋白質、炭水化物および脂肪を含む水性スラリーまたは液体を形成させて均質化し、その後、スラリーまたは液体を噴霧乾燥して噴霧乾燥された栄養粉末を製造することを含む。方法は、噴霧乾燥のステップ、ドライミックスのステップ、そうでなければ本明細書に記載された成分の任意の1種以上をはじめとする追加の栄養成分を、噴霧乾燥された栄養粉末に添加するステップを更に含んでいてもよい。
【0079】
製造方法は、好ましくはカルシウムHMBを配合させ、最も典型的には方法で使用されるHMB供給源としてカルシウムHMB一水和物を配合させる。
【0080】
(
使用方法)
栄養製品は、必要に応じて経口投与されて、所望のレベルの栄養を、最も典型的には1日1回から2回として、1日に1回または2回またはそれを超える分割投与で、例えば典型的には約100から約300mL、例えば約150から約250mL、例えば約190mLから約240mLの範囲内の供給サイズで提供してもよい。
【0081】
栄養製品中でのHMBの使用は、退色が減少した栄養供給源として有用な、酸化的に貯蔵安定性のある製品を提供する。詳細には、栄養製品中で、例えば鉄または銅のような酸化活性成分と共に用いられる場合、HMBは、製品中の感受性栄養素の酸化を触媒する酸化活性成分の能力を低減する。例えばHMBが酸化活性成分の鉄と一緒に用いられる場合、HMBは、製品中の可溶性鉄と共に不溶性第二鉄塩を形成する。不溶性塩形態は、可溶性鉄と比較して、有意により低い酸化活性を有する。この反応は、脂質、ビタミン、および蛋白質側鎖、例えばメチオニンなどの酸化性成分の酸化を触媒する鉄の能力を阻害する。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本開示の栄養製品の具体的実施形態および/または特色を例示する。実施例は、本開示の趣旨および範囲を逸脱せずに多くの変更が可能であるため、例示を目的として示されているに過ぎず、本開示の限定とみなしてはならない。例示された量は全て、別段の記載がない限り、製品の総重量に基づく重量%である。
【0083】
例示された製品は、栄養エマルジョンおよび粉末を調製するための栄養業界で周知の製造方法により調製された栄養製品である。
【0084】
[
実施例1]
この実施例では、鉄と結合するHMBの能力を、様々な有機酸および鉱酸の能力と比較する。
【0085】
試料溶液を調製する前に、CaHMB (Lonza Group Ltd., Basel, Switzerland)からのカルシウムの陽イオン交換除去により、HMB遊離酸を調製する。試料溶液は全て、選択された酸を濃度26.15mMで水に混合することにより調製する。試料溶液のpHを、水酸化ナトリウム(NaOH)で7.0に調整する。鉄をフマル酸第一鉄として20mg/Lで添加し、溶液を室温(RT)で3時間撹拌する。
【0086】
その後、試料を10,000×gで5分間遠心分離し、その後、上清をpH4.0の0.10M酢酸ナトリウムに希釈する(10容量に対して2容量)ことにより、「反応性鉄」の測定用に調製する。フェロジン比色法を利用して、分析を実施した。「反応性鉄」は、フェロジン試薬により錯化して分光法により測定される色素を生成する鉄である。結果を表1に示す。
【0087】
【表3】
表1に示す通り、酸を含まない対照に対して反応性鉄を増加させた唯一の酸は無機強酸の塩酸である。クエン酸をはじめとする有機酸は全て、中性pHで鉄塩を形成するため反応性鉄が減少した。注目すべきこととして、HMBもまた反応性鉄を減少させており、それは鉄に結合してその反応性を低減するHMBの能力、つまり酸化触媒能を示している。
【0088】
[
実施例2]
この実施例では、鉄に結合する、10mEq/L(1.2g/L)から40mEq/L(4.7g/L)の濃度範囲でのHMBの能力を、同じ濃度のクエン酸の能力と比較する。
【0089】
試料溶液を、実施例1に記載された通り調製して分析する。結果を表2、ならびに
図1Aおよび
図1Bに示す。
【0090】
【表4】
表2ならびに
図1Aおよび
図1Bに示す通り、反応性鉄は、クエン酸濃度の上昇に伴って上昇するが、HMB濃度が上昇すると低下する。この結果は、HMBによる不溶性第二鉄塩の形成とは対照的に、クエン酸による可溶性鉄錯体の形成に起因すると思われる。したがって、HMBの添加は溶液中の反応性鉄の量を減少させ、それにより鉄が触媒酸化に利用できなくなることが示される。
【0091】
[
実施例3]
この実施例では、HMBを市販のEnsure(登録商標) Plus栄養エマルジョンに添加することにより緩衝能力を分析する。
【0092】
HMBは、実施例1に記載された通りLonzaから得る。本明細書で用いられるEnsure(登録商標) Plusエマルジョン(Abbott Nutrition, Columbus, Ohioから入手可能)を、表3に記載する。
【0093】
【表5】
試料エマルジョンの緩衝能力を、HCl滴定およびNaOH滴定により比較した。具体的には緩衝能力は、栄養エマルジョン100mLのpHをpH6.0からpH3.0に低下させるHClのミリモル数を決定することにより分析する。同様に栄養エマルジョン100mLのpHをpH7.0からpH11.0に上昇させるのに必要となるNaOHのミリモル数も決定する。結果を表4、ならびに
図2Aおよび
図2Bに示す。
【0094】
【表6】
表4ならびに
図2Aおよび
図2Bに示される通り、HMBを含むEnsure Plusエマルジョンは、対照エマルジョンよりもpH低下に対して、より著しく抵抗性が高い。栄養製品へのHMBの添加によりもたらされるようなpH変化への抵抗性は、イオン形態では(即ち、リン酸塩から放出されれば)粉末の物理的安定性を損う可能性があり、鉄および銅などの再構成された粉末の金属成分の触媒的酸化が増加する可能性がある、結合したミネラル(例えば、リン酸塩が結合したカルシウム)の放出を減少させる。
【0095】
[
実施例4]
この実施例では、再構成された市販のPediaSure(登録商標)栄養粉末に、HMBを添加することによる緩衝能力を分析する。
【0096】
HMPは、実施例1に記載された通りLonzaから得る。再構成された栄養粉末の試料を2つ調製する。第一の試料は、再構成されたPediaSure(登録商標)栄養粉末(Abbott Nutrition, Columbus, Ohioから入手可能)の対照試料である。第二の試料は、粉末HMB 5.17g/kgが補強されている、再構成されたPediaSure(登録商標)栄養粉末である。遊離HMBを栄養粉末に添加する前に、粉末のpHをNaOHで6.7に調整する。
【0097】
試料の緩衝能力を、HCl滴定により比較する。具体的には、HClを試料に緩やかに添加し、各HCl添加の1分後に、pHを測定する。水素イオン濃度([H+])をpH値から計算し、結果を表5、ならびに
図3および4に示す。
【0098】
【表7】
表5、ならびに
図3および
図4に示す通り、PediaSure(登録商標)粉末へのHMB添加に関連する測定可能な緩衝効果が存在し、即ち、pH降下はHMBを含む試料においては大きくなく、対応する[H+]増加は大きくない。
【0099】
第二の実験において、再構成されたPediaSure(登録商標)粉末の追加的試料を2つ調製する。第一の試料は、PediaSure(登録商標)栄養粉末の対照試料であり、第二の試料は、先に記載された通りHMBを補強した粉末である。この第二の実験において、1.32mgの過酸化水素(H2O2)/kg再構成粉末を添加し、1時間後にpHを室温(RT)で測定する。再度[H+]濃度をpH値から計算する。結果を表6および
図5に示す。
【0100】
【表8】
表6および
図5に示す通り、PediaSure(登録商標)粉末へのHMBの添加は、再構成されたPediaSure(登録商標)粉末および他の栄養製品中の過酸化物による酸化を一般に伴うpH低下への測定可能な抵抗性を発揮する。
【0101】
加えて、先に記された通り、pH低下への抵抗性は、イオン形態では(即ち、リン酸塩から放出されれば)粉末の物理的安定性を損う可能性があり、鉄および銅などの再構成された粉末の金属成分の触媒的酸化が増加する可能性がある、結合したミネラル(例えば、リン酸塩が結合したカルシウム)の放出を減少させる。加えて、pH低下への抵抗性は、再構成された栄養粉末からの蛋白質沈殿を阻害することができ、およびビタミンCの脱安定化を阻害することができ、更に製品の不安定性を導くことになる。
【0102】
[
実施例5]
この実施例では、透析物における市販のEnsure(登録商標)栄養エマルジョンにHMBを添加することによる緩衝能力を分析する。
【0103】
HMBを、実施例1に記載された通りに得る。Ensure(登録商標)エマルジョン(Abbott Nutrition, Columbus, Ohioから入手可能)に、クエン酸塩および/またはHMBのいずれかを補強する。6000から8000 MWCO透析チューブ(Baxterから#D−1614−4として入手可能)の30cm長を切断し、Milli−Q Plus水で徹底してすすぐことにより、透析物を調製する。チューブの一端を結んで、Ensure(登録商標)50mLをHMBと共に添加する。その後、チューブの他端を結び、Milli−Q Plus水 950mLを含む1L瓶にチューブを入れる。チューブを、室温(RT)でおよそ15時間連続して撹拌する。
【0104】
その後、チューブの外側の液(即ち、透析物)を、有機酸HPLCを利用して、HMBおよびクエン酸塩の存在に関して分析する。加えて、HCl滴定に対してpHを測定することにより、緩衝能力を決定する。結果を表7および
図6−
図8に示す。
【0105】
【表9】
表7および
図6−
図8に示す通り、39−2B透析物中のHMBの存在は、39−1B透析物に比較して、緩衝能力を有意に増加させる。透析物中のHMBの存在は、HMBが可溶性であり(単に懸濁している、またはミセル中で結合しているのとは対照的である)、それにより可溶性鉄との反応で不溶性の第二鉄HMBを形成することに利用でき、つまり可溶性鉄の濃度を低減させることを実証している。
【0106】
カルシウムの濃度は、透析物中でも分析される。表8に示す通り、39−2B透析物中のカルシウム濃度は、39−1B透析物中のカルシウム濃度の2倍を超えており、カルシウムの利用率が対照(39−1B)に比較して、HMBが添加されたエマルジョン(39−2B)中で有意に上昇し得ることが示唆される。
【0107】
【表10】
【0108】
[
実施例6−10]
実施例6−10はカルシウムHMBを含む本開示の栄養粉末を示し、その成分を、以下の表に列挙する。これらの製品は、別個のバッチで噴霧乾燥法により調製され、使用前に水で所望の標的成分濃度に再構成される。成分量は全て、別段の記載がない限り、製品の1000kgバッチあたりのkgとして列挙している。
【0109】
【表11】
【0110】
[
実施例11−15]
実施例11−15は、本開示の栄養エマルジョン実施形態を示し、その成分を以下の表に示す。量は全て、別段の記載がない限り、製品の1000kgバッチあたりのkgとして列挙している。
【0111】
【表12】