【文献】
土木学会トンネル工学委員会,セグメントの設計,トンネル・ライブラリー,日本,社団法人土木学会,1994年 6月15日,第6号,第95頁−第96頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
トンネル工法としては、シールドマシンによって地盤を掘削しながら、その後方において円弧版状のセグメントを周方向及び軸方向に順次据え付けて円筒状のトンネル壁体(筒状壁体)を構築するシールド工法が一般的である。
【0003】
セグメントは、コンクリート製とスチール製とに大きく分けられるが、前者のコンクリート製のセグメントは圧縮に強く、後者のスチール製のセグメントは引っ張りに強いという特性がある。このようなコンクリート製及びスチール製のセグメントの利点を兼ね備えたセグメント(合成セグメント)が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に係るセグメントは、スチール製の枠体の内部にコンクリートを打設することにより構成されている。そして、枠体の軸方向両端にそれぞれ設けられて周方向に延びる一対の主桁板間には枠体の軸方向に延びるリブが複数掛け渡され、当該リブの上下両方又は上下片方にスチール製の円弧版状のメッシュが張られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような合成セグメントには、十分な強度が望まれており、例えば、大きな内水圧荷重がかかった場合にも十分な強度を確保できることが望まれている。
また、合成セグメントは、コンクリート製セグメントや、スチール製セグメントと比べて材料費や加工費などのコストがかかるため、製作にかかるコストの削減が望まれている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、十分な強度を確保できるとともに、製作にかかるコストを削減することができるセグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るセグメントは、周方向へ連結され、さらに軸方向へ連結されることにより、掘削穴内に筒状壁体を構成するセグメントであって、
前記セグメントは、内周側が開口された箱型に形成された枠体と、該枠体内に打設されたコンクリートとから構成されてなり、前記枠体は、外周側に設けられた湾曲板状のスキンプレートと、該スキンプレートの前記軸方向両端にそれぞれ設けられた一対の主桁板と、前記スキンプレートの前記周方向両端にそれぞれ設けられた一対の継手板とを備え、前記セグメントの前記内周側、又は前記セグメントの前記内周側および前記外周側には、前記周方向に延びる複数の主鋼材が前記軸方向に配列され、該複数の主鋼材の少なくとも一部の配列を固定する配力筋が設けられていて、前記一対の主桁板には、複数の補強部材がそれぞれ連結されて、前記補強部材は前記一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成され前記一対の主桁板のいずれか一方に連結されていて、
前記補強部材は略台形状に形成されていて一方の斜辺が前記主桁板に固定され、他方の斜辺が前記スキンプレートに固定され、前記配力筋の両端部が前記補強部材に固定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成され一対の主桁板のいずれか一方に連結された複数の補強部材が、一対の主桁板にそれぞれ連結されている。このため、補強部材は、配力筋に拘束された主鋼材とともにセグメント自体に作用する荷重に対して有効に対抗することができて、セグメントの強度を確保することができる。また、補強部材は、一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成されているため、補強部材が一対の主桁板間の寸法に形成されて一対の主桁板の両方に固定されている従来のセグメントと比べて補強部材に係る材料が少なく製造コストを削減することができ
る。
【0010】
また、複数の補強部材のうちの一部に代わって、前記一対の主桁板の両方のウェブにそれぞれ連結され且つスキンプレートに連結されないリブが設けられていることを特徴とする。
複数の補強部材のうちの一部に代わって、一対の主桁板の両方のウェブにそれぞれ連結されたリブが設けられていることにより、枠体の剛性を高めることができる。
【0012】
また、本発明に係るセグメントでは、前記補強部材は、鋼板であって前記スキンプレートと連結されていてもよい。
このように、補強部材は、鋼板であって前記スキンプレートと連結されていていることにより、補強部材が主桁板およびスキンプレートと一体化するため、セグメントの強度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係るセグメントでは、前記補強部材は、アンカー鉄筋であってもよい。
このように、補強部材はアンカー鉄筋であることにより、枠体とコンクリートとを効率よく一体化させることができ、セグメントの強度を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係るセグメントでは、前記配力筋は、前記補強部材に連結されていることが好ましい。
このように、配力筋は、前記補強部材に連結されているため、配力筋が固定された主鋼材と補強部材との一体化を図ることができ、セグメントの大幅な強度向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、補強部材が配力筋に拘束された主鋼材とともにセグメント自体に作用する荷重に対して有効に対抗することができて、セグメントの強度を確保することができる。
また、補強部材は、一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成されているため、全ての補強部材が一対の主桁板間の寸法に形成された従来のセグメントと比べてコストを削減することができる。
【0016】
しかも、複数の補強部材のうちの一部に代わって、一対の主桁板の両方に連結されたリブが設けられていることにより、枠体の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態によるセグメントについて、
図1乃至
図3に基づいて説明する。
図1乃至
図3に示す第1実施形態によるセグメント1Aは、掘削穴内に構築されるトンネル(筒状壁体)の一部をなす円弧版状をなしており、掘削穴内の周方向及び軸方向に連結されることにより該掘削穴内にトンネルを構築する建材として使用される。
以下では、セグメント1Aを用いてトンネルを構築した場合におけるトンネル軸方向をセグメント1Aの軸方向(
図1の矢印Aの方向)、トンネル周方向をセグメント1Aの周方向(
図2の矢印Bの方向)と称する。
【0019】
本実施形態におけるセグメント1Aは、鋼板から構成された枠体2と、この枠体2内に配設された主鉄筋(主鋼材)8及び配力筋20と、枠体2の内部において主鉄筋8及び配力筋20を埋没するように打設されたコンクリート3(
図1および
図2参照)とからなる合成セグメントである。
【0020】
図1乃至
図3に示すように、枠体2は、外周側に設けられたスキンプレート4と、このスキンプレート4の側部に配設された一対の主桁板5,5と、スキンプレート4の端部に配設された一対の継手板6,6(
図1および
図2参照)とを備えており、スキンプレート4および主桁板5に連結された複数の斜めリブ(補強部材)7が設けられている。
【0021】
スキンプレート4は、トンネル構築時に掘削穴の壁面と接触する部材であって、周方向に沿って湾曲する湾曲版状(円弧版状)をなしている。
また、一対の主桁板5,5は、このスキンプレート4の軸方向両端に連結され、スキンプレート4と略直交する向きに配置されている。
【0022】
さらに、
図1および
図2に示すように、一対の継手板6,6はスキンプレート4の周方向両端に連結された矩形板状をなしており、上記一対の主桁板5,5間にわたって配置されている。
なお、これらスキンプレート4、主桁板5及び継手板6同士の接続は、溶接によってなされている。
【0023】
また、一対の主桁板5,5にはセグメント1A同士を軸方向に連結する継手部材が挿通する挿通孔5aが、周方向に所定間隔を空けて複数形成されている。さらに、一対の継手板6,6には、セグメント1A同士を周方向に連結する継手部材が挿通する挿通孔6aが複数形成されている。
【0024】
図3に示すように、斜めリブ7は、略台板形状に形成された部材で、略台形状の一方の斜辺7aが主桁板5と溶接され、他方の斜辺7bがスキンプレート4と溶接されている。
斜めリブ7は、一対の主桁板5,5にそれぞれ溶接されている。
また、周方向に隣り合う斜めリブ7は、互いに周方向へ間隔をあけて配設されている。
【0025】
図1乃至
図3に示すように、主鉄筋8は、セグメント1Aの周方向内側(内周側)において、軸方向に所定間隔を空けた状態で複数配列されている。
【0026】
配力筋20は、複数の主鉄筋8を拘束する棒状の鋼材であって、主鉄筋8の配列を固定するように複数配設されている。
この配力筋20は、
図3に示すように、主鉄筋8の配列方向(軸方向)に延びて斜めリブ7の内周側に配列された主鉄筋8を固定する拘束部20aと、この拘束部20aの両端部で略直角に曲げられた一対の固着部20b,20bとを備えている。
【0027】
そして、配力筋20は、その固着部20b,20bが、それぞれ斜めリブ7の板面に固着されている。このため、配力筋20に拘束された主鉄筋8は、当該配力筋20を介して各斜めリブ7に一体化される。
なお、配力筋20の固着部20b,20bを斜めリブ7に固着する方法としては、固着部20b,20bを斜めリブ7に対して溶接することが好ましいが、その他、例えば、ナットなどの止め具等を用いて固着部20b,20bを斜めリブ7に固定してもよく、配力筋20を斜めリブ7に巻きつけたり引っ掛けたりしてもよい。
【0028】
そして、
図1及び
図2に示すように、上記主鉄筋8及び配力筋20が配設された枠体2内部にコンクリート3が打設されており、このコンクリート3における挿通孔5a,5b周辺には継手部材を収納するための継手凹所3aが形成されている。
また、上記枠体2の内面には接着剤が塗布されており、これにより枠体2内に打設されるコンクリート3と当該枠体2との一体化が図られている。なお、この接着剤は、枠体2における主桁板5の内面にのみ塗布されていてもよい。
【0029】
次に、上述したセグメント1Aの作用効果について説明する。
上述した第1実施形態のセグメント1Aによれば、斜めリブ7が設けられているとともに、複数の主鉄筋8の配列を配力筋20が固定しているため、当該配力筋20が主鉄筋8を一体に拘束し、セグメント1Aに作用する荷重に対して有効に対抗することができる。
さらに、主鉄筋8を固定している配力筋20の固着部20b,20bが斜めリブ7に固定されているため、主鉄筋8は配力筋20を介して斜めリブ7に固定されることになる。
即ち、主鉄筋8と斜めリブ7との一体化を図ることができるため、この一体化された主鉄筋8によるセグメント1Aの大幅な強度向上を図ることができる。
また、複数の斜めリブ7は、主桁板5およびスキンプレート4に斜辺7a,7b(
図3参照)が接触する略台形状に形成されていて、一対の主桁板5,5間の寸法よりも短い寸法に形成されているため、一対の主桁板5,5の両方に固定されて一対の主桁板5,5間の寸法に形成されたリブを備える従来のセグメントと比べて、コストを削減することができる。
【0030】
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0031】
(第2実施形態)
図4乃至
図6に示すように、第2実施形態によるセグメント1Bは、第1実施形態の斜めリブ7(
図1乃至
図3参照)に代わって、アンカー鉄筋(補強部材)21が主桁板5に溶接されている。
アンカー鉄筋21は、ジベルとして使用され、セグメント1Bの径方向(
図5および
図6の矢印Cの方向)に延在する中間部21aと、この中間部21aの両端部でそれぞれ軸方向に折り曲げられた折曲部21b,21bとからなる略U字状に形成されて、その中間部21aが主桁板5に溶接されている。なお、アンカー鉄筋21の中間部21aは、溶接以外の方法で主桁板5に固着されていてもよい。
【0032】
第2実施形態による配力筋22は、
図1乃至
図3に示す第1実施形態の配力筋20と同様に、拘束部22aと一対の固着部22b,22bとを備えており、更に固着部22b,22bと連続してセグメント1Bの周方向に延びる所定長さの折曲部22c(
図4および
図5参照)が形成されている。配力筋22は、折曲部22cが形成されていることにより、コンクリート3とより一体化することができる。
なお、配力筋22は、折曲部22cが形成されていなくてもよい。
そして、アンカー鉄筋21には、配力筋22の固着部22b,22bが溶接されている。
【0033】
第2実施形態によるセグメント1Bによれば、アンカー鉄筋21が設けられているとともに、アンカー鉄筋21に配力筋22が溶接されていることにより、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0034】
(第3実施形態)
図7乃至
図9に示すように、第3実施形態によるセグメント1Cでは、第1実施形態によるセグメント1A(
図1乃至
図3参照)の複数の斜めリブ7のうちの略半数に代わって、軸方向に延在して一対の主桁板5,5の両方
のウェブに固定された略板状の縦リブ31が配設されて、斜めリブ7と縦リブ31とが混在している。
縦リブ31は内周側で主鋼材8に当接し外周側でスキンプレート4と非接触とされている。
斜めリブ7と縦リブ31とは、交互に周方向へ間隔をあけて配設されている。そして、斜めリブ7および縦リブ31には、配力筋20の固着部20bが溶接されている。
本実施形態では、隣り合う斜めリブ7と縦リブ31との間隔は、200mm〜500mmの範囲内に設定されている。
【0035】
第3実施形態によるセグメント1Cによれば、斜めリブ7と縦リブ31が混在して配設されていることにより、第1実施形態と比べると材料コストが高くなるが、強度を高めることができる。
【0036】
以上、本発明によるセグメントの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した第1実施形態では、斜めリブ7をスキンプレート4に溶接しているが、スキンプレート4と溶接されていなくてもよい。
また、上述した第1実施形態では、斜めリブ7に配力筋20が固定されているが、斜めリブ7に配力筋20が固定されていなくてもよい。
また、上述した第2実施形態では、アンカー鉄筋21に配力筋20が固定されているが、アンカー鉄筋21に配力筋が固定されていなくてもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、主鉄筋8は、セグメント1A〜1Cの周方向内側(内周側)において、軸方向に所定間隔を空けた状態で複数配列されているが、セグメント1A〜1Cの周方向内側および周方向外側(外周側)に複数配列されていてもよい。この場合、斜めリブ7の周方向内側および周方向外側に配力筋20が配列されていてもよい。
また、上述した第2実施形態では、枠体2内に主鉄筋8が配設されているが、主鉄筋8に代わって、例えば、鋼板や、鋼板の板面に該鋼板の延在方向に直交する方向に延びる複数の突起を設けた突起付き鋼板、あるいは、鋼板の板面に波状に延びる突起を設けた波状突起突き鋼板等の主鋼材を枠体2内に配設してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、斜めリブ7またはアンカー鉄筋21が補強部材として使用されているが、斜めリブ7とアンカー鉄筋21とを、例えば周方向に交互に配置するなど併せて使用してもよい。
また、上述した第3実施形態では、斜めリブ7と縦リブ31とをセグメント1Cの周方向に交互に配設しているが、斜めリブ7に代わってアンカー鉄筋21と縦リブ31とセグメント1Cの周方向に交互に配設してもよい。