【文献】
Biol. Pharm. Bull., 1995, Vol.18, No.11, pp.1566-1571
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
疎水性マトリックスが、パラフィン、植物油、動物性脂肪、合成グリセリド、ワックス、ペルフルオロカーボン、セミペルフルオロカーボン、および液体ポリシロキサンからなる群より選択される1種以上の化合物を含む、請求項1または2に記載の懸濁液型の局所医薬組成物。
抗酸化剤、ゲル化剤、pH調整剤/緩衝剤、浸透促進剤、防腐剤、溶媒(共溶媒)および安定化剤からなる群より選択される1種以上の賦形剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の懸濁液型の局所医薬組成物。
式(II)の環状デプシペプチドが組成物全体の0.1〜5重量%の量で存在し、増粘剤が組成物全体の2.5〜20重量%の量で存在し、および疎水性マトリックスが最大66重量%の鉱油、最大98重量%のワセリン、最大25重量%の微結晶ワックスを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の懸濁液型の局所医薬組成物。
ざ瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬、膿疱性乾癬、酒さ、ケロイド、過形成性瘢痕、ネザートン症候群などの炎症性疾患および/または過剰増殖性の掻痒性皮膚疾患、または結節性痒疹などの他の掻痒性皮膚病、老人の不特定の痒み、ならびに老化した皮膚などの上皮性関門機能不全を伴う他の疾患の処置用の又は該処置に使用するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の懸濁液型の局所医薬組成物。
アトピー性皮膚炎、乾癬、膿疱性乾癬、酒さ、ケロイド、過形成性瘢痕、ざ瘡、ネザートン症候群などの炎症性疾患および/または過剰増殖性の掻痒性皮膚疾患、または結節性痒疹などの他の掻痒性皮膚病、老人の不特定の痒み、ならびに老化した皮膚などの上皮性関門機能不全を伴う他の疾患の処置用の、請求項1〜7のいずれか一項に記載の懸濁液型の局所医薬組成物。
アトピー性皮膚炎、乾癬、膿疱性乾癬、酒さ、ケロイド、過形成性瘢痕、ざ瘡、ネザートン症候群から選択される炎症性疾患および/または過剰増殖性の掻痒性皮膚炎、または結節性掻痒を含む他の掻痒性皮膚病、老人の不特定の痒み、および老化した皮膚などの上皮性関門機能不全を伴う疾患の処置用の請求項1〜7のいずれか一項に記載の懸濁液型の局所医薬組成物であって、該医薬組成物の有効量が処置の必要のある対象に投与される、懸濁液型の局所医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳しい説明)
式(II)の化合物は、局所投与および局所ガレヌス組成物(galenic composition)に関して非常に特異な困難性を示し、具体的には、特定の安定性の課題を含む。
【0009】
式(II)の化合物は、水および水性緩衝液中でわずかに中程度の溶解度を示し、脂溶性賦形剤中では低い溶解度を示す。極性有機溶媒では、良好な溶解度が得られる。式(II)の化合物は、親水性環境では、例えば水や極性有機溶媒/共溶媒では分解(degradeation)する傾向があり、水存在下では加水分解しやすい。
【0010】
上記疾患の処置および予防に関して、特定の透過性および浸透性が、皮膚における高濃度の式(II)の環状デプシペプチドを達成するために有益であるが、一方で、皮膚を通じた浸透を制限することで、全身暴露が低減される。これらの特殊な要求性は、従来型でない投薬形態の開発を必要とする。
【0011】
本発明によって、適切な透過性および浸透性特性を有する、式(II)の環状デプシペプチドを含有する安定な医薬組成物が得られることが見出された。結果的に、潜在的な望ましくない副作用の発生および/または貯蔵時の活性薬剤品質の低下の発生の危険性は低減され、全体的な治療費用は減少し得る。
【0012】
本明細書中で使用される用語は以下の意味を有する:
「活性薬剤」は、本明細書で用いられるように、式(II)の環状デプシペプチドを意味する。「活性薬剤」は、アモルファス形態および結晶形態、例えば多形体を表すことも意図する。「活性薬剤」は、その溶媒和物、その医薬上許容される塩、およびその混合物を表すことも意図する。「活性薬剤」は、特定の固体状態の特徴を示す物質、例えば「活性薬剤」の特定の結晶形態および/または粉砕形態、例えば微粉末形態を表すことも意図する。
【0013】
「溶媒和物」は、本明細書で用いられるように、さらに1種以上の溶媒分子、例えば酢酸エチル、アセトニトリル、水、イソプロピルアセテートを化学量論的に規定される量で含む、化合物の結晶形態を意味する。好ましくは、溶媒和物は、結晶格子中に1種の溶媒分子を含む。
【0014】
本明細書で用いられるように、用語「医薬上許容される塩」は、活性薬剤の無毒な酸塩またはアルカリ土類金属塩を意味する。これらの塩は、化合物の最終単離および精製の間にインシチュで調製することができ、又は、塩基性もしくは酸性官能基を適切な有機もしくは無機酸または塩基とそれぞれ別個に反応させることによって調製することができる。代表的な塩は、限定するものではないが、以下のものを含む:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオネート(phenylproionate)、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩。また、塩基性の窒素含有基は、ハロゲン化アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、塩化ブチル、臭化物およびヨウ化物;硫酸ジアルキルは、例えば硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル、長鎖ハロゲン化物、例えばデシル、ラウリル、ミリスチルおいよびステアリル塩化物、臭化物およびヨウ化物、ハロゲン化アラルキル、例えばベンジルおよびフェネチル臭化物、ならびにその他類似物などの試薬で4級化できる。水または油可溶性もしく分散性生成物が、それによって、得られる。塩基付加塩は、化合物の最終単離および精製の間にインシチュで調製することができ、又は、カルボン酸部分を適切な塩基、例えば医薬上許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩と、またはアンモニアもしくは有機一級、二級もしくは三級アミンとそれぞれ別個に反応させることによって調製することができる。医薬上許容される塩は、限定するものではないが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属ベースのカチオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩およびその他の類似物を含み、同様に、無毒なアンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンカチオン、限定するものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンおよびその他の類似物を含む。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンは、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ピリジン、ピコリン、トリエタノールアミンおよびその他の類似物および塩基性アミノ酸、例えばアルギニン、リシンおよびオルニチンを含む。
【0015】
「局所医薬組成物」は、本明細書中で用いられるように、当分野で既知であり(例えば、ヨーロッパ薬局方6.3、01/2009, 0132)、本発明の内容では、特に懸濁液型の組成物を意味する。当該組成物は、i)活性薬剤およびii)マトリックスを含む。該マトリックス(「ベース」とも称する)は、医薬上許容される賦形剤を含有し、局所適用に適している。さらに、本発明の組成物は、半固形物、例えばゲル、パッチ、泡、チンキ、溶液、(リップ)スティックまたはスプレーとして製剤化されてよく;これら各々の懸濁液型として製剤化され得る。結果的に、本発明の組成物の粘度は、広範囲にわたって増減でき;典型的には、それらは半固形物または液体であり、好ましくは半固形物である。懸濁液型の組成物は、活性薬剤がマトリックス中に懸濁されている点で特徴的であり;好ましくは「疎水性軟膏(hydrophobic ointment)」の剤形である。
【0016】
本明細書中で用いられるように、用語「対象」は動物を意味する。典型的には、動物は哺乳動物である。対象は、例えば霊長類(例えばヒト、男性または女性)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、サカナ、トリおよびその他の動物を意味する。特定の実施形態において、対象は霊長類である。さらに他の実施形態において、対象はヒトである。
【0017】
本明細書中で用いられるように、用語「阻害する」、「阻害」または「阻害すること」は、所定の状態、症状または障害、または疾病の低減または抑制、あるいは生物活性または生物学的プロセスのベースの活性の有意な低下を意味する。
【0018】
本明細書中で用いられるように、いずれかの疾病または障害に関する、用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、1つの実施形態において、該疾病または障害の改善(すなわち、疾病の発症またはその臨床症状の少なくとも1つを遅延、阻止または低減すること)を意味する。他の実施形態において、「処置する」、「処置すること」または「処置」は、患者が認識できないものを含む身体パラメータのうちの少なくとも1つを緩和または改善することを意味する。さらなる他の実施形態において、「処置する」、「処置すること」または「処置」は、物理的に(例えば認識可能な症状の安定化)もしくは生理学的に(例えば身体パラメータの安定化)のいずれか、またはその両方で、疾病または障害を調節することを意味する。さらなる他の実施形態において、「処置する」、「処置すること」または「処置」は、疾病または障害の発症または進行または悪化を予防または遅延することを意味する。
【0019】
本明細書中で用いられるように、対象が処置により、生物学的または医学的に利益を享受し得るか、または生活の質において利益を享受し得る場合、該対象は当該処置の「必要がある」。
【0020】
本明細書中で用いられるように、用語「ある(a/an)」および「その(the)」ならびに本発明の内容(特に、特許請求の範囲の内容)で用いられるその類語は、特に本明細書中で明記しない限り、または、文脈に明らかに反しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解されるべきである。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通じて、文脈により別意であることが要されない限り、単語「(複数形のものが)含む」またはその類語、例えば「(単数形のものが)含む」または「含むこと」ならびに単語「(複数形のものが)含有する」またはその類語、例えば「(単数形のものが)含有する」または「含有すること」は、規定された整数または工程あるいは(複数の)整数もしくは(複数の)工程の群を包括することを意味し、他のいずれの整数または工程あるいは(複数の)整数もしくは(複数の)工程の群を排除することを意味しないことは理解される。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲で示される/記載される本発明の様々な実施形態、好適例および範囲は、他の特定の態様と組み合わせて、さらなる実施形態を提供できることは、さらに理解される。
【0023】
第一の態様において、本発明は、式(II)の環状デプシペプチド、疎水性マトリックスおよび増粘剤を含む局所医薬組成物を提供する。典型的には、該組成物は懸濁液型組成物である。
【0024】
当該活性薬剤は、親水性環境では、例えば水や極性有機溶媒/共溶媒では分解する傾向があり、水存在下では加水分解されやすい。
【0025】
式(II)の環状デプシペプチド、疎水性マトリックスおよび増粘剤を含む局所医薬組成物は、製剤化される該活性薬剤を安定な組成物とすることができ、そして、適切な透過性および浸透性特性を見込めることが、分かる;特に、該活性薬剤が該マトリックス中に懸濁され、そうして、分子の小さな画分だけが溶解されて透過性に利用可能となるという事実に照らして、分かる。増粘剤の使用により、皮膚での活性薬剤の濃度を、皮膚刺激を伴うことなく医薬上有益な濃度にまで高めることが可能である。しかしながら、活性薬剤の皮膚を通じた浸透性は非常に低く、結果的に、全身暴露がないか又は非常に低い全身暴露をもたらし、そうして、副作用の危険性を最小限にできる。さらに、これらの組成物は良好な物理的および化学的安定性を示す。本発明の態様は、以下でさらに詳しく説明される:
【0026】
活性薬剤は、国際公開公報第2009024527号に記載の方法に従って得ることができる。特に、本発明組成物に好適なものは、微粉化形態(×90<20マイクロメーター)の本発明の活性薬剤である。本発明組成物中の活性薬剤の量は、広範囲にわたって増減してよく、典型的には有効量で提供される。有効量は、哺乳動物(好ましくはヒト)に投与された場合に、以下の処置を効果的にさせるのに十分な活性薬剤の量を意味する。活性薬剤の適切な量は、通常の実験で当業者が決定することができ、典型的には、0.1〜5重量%の範囲、好ましくは0.5〜2.0重量%、例えば0.5、0.8または1.0重量%である。
【0027】
疎水性マトリックス:本発明のこの態様に関して、該マトリックスは、パラフィン(固形パラフィン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン)、植物油、動物性脂肪、合成グリセリド、ワックス、ペルフルオロカーボン、セミペルフルオロカーボンおよび/または液体ポリシロキサンを含有する。典型的には、該疎水性マトリックスは、少量の水しか吸収できない。好ましくは、該疎水性マトリックスは、1種以上の炭化水素類;好ましくは、少なくとも2種の炭化水素類を含有する。そのようなマトリックスは多量の活性薬剤を分散させ、安定な組成物を作り出すことが見出された。好適な炭化水素類は当該分野で公知であり、当業者により最終の医薬組成物と適合するよう選択されうる。適切な炭化水素は、直鎖および/または分枝鎖であってよい固形および液体炭化水素類を含む。そのような炭化水素類は、医薬組成物の賦形剤として知られており、商業的に入手可能である(例えば、個々の成分の混合物)。適切な炭化水素類は、「鉱油」、「ワセリン」、「微結晶ワックス」を含む。適切な疎水性マトリックスは、最大66重量%の鉱油、好ましくは20〜40重量%の鉱油を含んでいてよい。適切な疎水性マトリックスは、最大98重量%のワセリン、好ましくは40〜60重量%のワセリンを含んでいてもよい。適切な疎水性マトリックスは、最大25重量%の微結晶ワックス、好ましくは5〜20重量%の微結晶ワックスを含んでいてもよい。適切な疎水性マトリックスは、1:1〜1:3の比率で、好ましくは1:1.5〜1:2.0の比率で鉱油とワセリンを含んでいてもよい。さらに、適切な疎水性マトリックスは、1:0.2〜1:1の比率で、好ましくは1:0.33〜1:0.66の比率で鉱油と微結晶ワックスを含んでいてもよい。
【0028】
増粘剤:本発明の関係において使用されるように、粘稠度を調節する試薬は当分野で公知であり、別名の稠度改善薬(consistency improver)としても知られている。適当な化合物は、当業者により最終の医薬組成物に適合するよう選択されうる。そのような1種以上の試薬を用いることができることは理解される。特に、飽和脂肪酸および飽和脂肪酸エステルからなる群より選択される増粘剤が好適である。好ましくは、C
6−C
30飽和脂肪酸、−エステル;特に好ましくは、C
10−C
20脂肪酸、−エステルである。さらに、直鎖脂肪酸、−エステルが好ましい。エステルに関して、C
1−C
4アルキル基が好ましい。これらの増粘剤のなかで、ミリスチン酸イソプロピルが特に好適である。本発明組成物中の増粘剤の量は広範囲にわたって増減してよく、典型的には、それは有効量で提供される。増粘剤の好適な量は、通常の実験により当業者が決定することができ;典型的には、それらは、組成物全体の2.5〜20重量%、好ましくは2.5〜10重量%である。
【0029】
1つの実施形態において、本発明は、さらなる賦形剤を含まない、本発明のこの態様に係る組成物に関する。かくして、本発明組成物は、活性薬剤、1種以上の炭化水素類および増粘剤のみを含む(すなわち、“から成る”または“本質的にから成る”)。当該組成物は、例えば単純な製造工業のために、および/または他の賦形剤に対する増大した皮膚炎(skin irritation)/アレルギーの潜在性のために有益であると考えられる。
【0030】
さらなる実施形態において、本発明は、1種以上のさらなる賦形剤を含有する、本発明のこの態様に係る組成物に関する。当該賦形剤は当分野で公知であり、当業者により容易に特定されうる。適切な賦形剤は、抗酸化剤、ゲル化剤、pH調整剤/緩衝剤、浸透促進剤、防腐剤、溶媒(共溶媒)および安定化剤からなる群より選択することができる。当該賦形剤は当分野で公知であり、商業的に入手でき、標準的なテキストブック、例えばR.C.Roweら、によるHandbook of Pharmaceutical Excipientsで特定することができる。当該組成物は、製造工業または患者の要求に特に適用するのに有益であり、かくして、製品特徴(棚寿命または患者のコンプライアンスなど)を改善する。適切なさらなる賦形剤を以下に記載する:
【0031】
抗酸化剤は当分野で公知であり、当業者により最終の医薬組成物に適合するよう選択されうる。1種以上の抗酸化剤を用いることができることは理解される。抗酸化剤が、本発明の試薬を安定化させることが見出された。好ましくは、抗酸化剤は、フェノール誘導体(例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA));アスコルビン酸誘導体(例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート(ascorbyl palmiate))、トコフェロール誘導体(例えば、ビタミンE、ビタミンE TPGS)、亜硫酸水素塩誘導体(Na亜硫酸水素塩、Naメタ亜硫酸水素塩)およびチオ尿素からなる群より選択される。より好ましくは、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アルファ・トコフェロール、アスコルビン酸またはそれらの混合物からなる群より選択される。特に好ましくは、抗酸化剤はBHTである。適切な組成物は、最大2重量%の抗酸化剤、好ましくは0.005〜0.5重量%で含みうる。
【0032】
ゲル化剤は当分野で公知であり、当業者により最終の医薬組成物に適合するよう選択されうる。1種以上のゲル化剤を用いることができることは理解される。ゲル化剤は、粘性を調製するために、本発明の組成物中にゲル化剤が含められる。ゲル化剤は、親油性製剤、例えばエーロシル、ポリエチレンおよびアルミニウム石けんに好適である。適切な組成物は、最大10重量%のゲル化剤、好ましくは0.02〜2重量%で含みうる。
【0033】
pH調整試薬またはpH緩衝を与える試薬は、当分野で公知である。適当な緩衝剤は、当業者により最終の医薬組成物に適合するよう選択されうる。そのような1種以上の緩衝剤を用いることができることは理解される。適切な組成物は、該緩衝剤を本発明組成物のpHを4〜8の範囲、好ましくは5〜7の範囲、例えば6.5に調整するよう含めてよい。
【0034】
浸透促進剤は当分野で公知であり、当業者により最終の医薬組成物に適合するよう選択されうる。1種以上の防腐剤を用いることができることは理解される。本明細書中で用いられるように、用語「浸透促進剤」は、皮膚または粘膜に、例えば皮膚に局所(皮膚上)投与した場合に、該活性薬剤の浸透性を促進、すなわち改善する物質を意味する。広範囲の浸透促進剤を用いることができる。好適な浸透促進剤は、例えば、以下からなる群より選択され得るものである:
− アルコール類、例えばエタノール、2−プロパノール、プロピレングリコール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール;
− 脂肪酸エステル、例えば酢酸ブチル、グリセロール・モノラウレート(mono laureate)、オレイン酸ジエチレングリコール;
− 脂肪酸、オレイン酸;
− サポニン;
− アミン、例えば尿素、N,N−ジエチル−m−トルアミド;
− 界面活性剤、例えば、Brij36T、Pluronic(登録商標)F68;
− その他のもの、例えばテルペン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキサシクロアルカン(dioxacyloalkane)(SEPA)、アゾン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソプロピルアジピン酸塩(dimethylispropyladipate)、ジメチル−イソソルビド(isosorbid)。
【0035】
本発明組成物中の浸透促進剤の量は、広範囲にわたって増減してよく、典型的には、有効量で提供される。より高い透過性は、増加した浸透性、例えば皮膚を通じた増加した浸透性を結果的にもたらし得る。好ましくは、体循環への活性薬剤の送達は、促進されないか又は有意に促進されない(浸透性を示さないか又は有意な浸透性を示さない)。浸透促進剤の適切な量は、通常の実験において当業者が決定するするこができ、典型的には、そられは、組成物全体の2.5〜20重量%、好ましくは2.5〜10重量%である。
【0036】
防腐剤は当分野で公知であり、当業者により最終の医薬組成物に適合するよう選択されうる。1種以上の防腐剤を用いることができることは理解される。防腐剤は、本発明の医薬組成物中に棚寿命を延ばすために含められる。好ましくは、防腐剤は、アルコール類(例えばベンジルアルコール)、フェノール類およびパラヒドロキシベンゾエートからなる群より選択される。より好ましくは、防腐剤は、パラベン、アルコール類、ビグアニド、水銀塩、イミド尿素から選択される。適切な組成物は、最大5重量%、好ましくは0.01〜3重量%を含んでいてよい。
【0037】
共溶媒および溶媒は当分野で公知であり、当業者により最終の医薬組成物に適合するよう選択されうる;これは、本発明の試薬を(部分的または完全に)溶解する賦形剤を意味し、水との高い混和性を有することを意味する。溶媒は、本発明の試薬を溶解するが水と低混和性の賦形剤である。かくして、組成物の種類や存在する他の賦形剤に応じて、特定の化合物が溶媒として又は共溶媒として役立ちうる。1種以上の共溶媒/溶媒を用いることができることは理解される。
【0038】
該活性薬剤は、国際特許出願 国際公開公報第2009024527号に記載されように調製することができる。該活性薬剤は、他の溶媒、例えば精製に用い得る溶媒、または前記文献に記載のように、塩の形態のものを含み得る。
【0039】
本発明によれば、該活性薬剤は、本発明の組成物の約20重量%までの量で、例えば約0.05重量%の量で存在してよい。該活性薬剤は、好ましくは、組成物の0.5〜5重量%の量で、より好ましくは組成物の0.2〜1重量%の量で存在する。
【0040】
本発明は、第2の態様において、組成物の製造方法に関し、本明細書中で記載するように、疎水性マトリックスを得るために本明細書中に記載の賦形剤を組合せる工程、かくして、得られたマトリックスを活性薬剤と組合せる工程を含む。
【0041】
本発明に係る組成物は、それ自体既知のプロセスにより製造することができるが、本発明組成物に適用されたことがなく、かくして、それらは新規なプロセスである。一般に、医薬組成物の製造には、活性薬剤とマトリックスを組合せる工程、例えば混合すること、溶解すること、および/または凍結乾燥することを含む標準的な医薬プロセスが利用される。当該工程は、使用する材料を加熱または冷却することも含み得る。上記で概要したように、当該活性薬剤は、既知のプロセスに従って入手することができ;該マトリックスの個々の成分はそれ自体既知であるか又は既知のプロセスに従って入手可能である。
【0042】
1つの実施形態において、本発明は、本発明の第一の態様で記載されるように、組成物(すなわち、懸濁液型の組成物)を製造する方法に関し、以下の工程を含む:
− 溶解物を得るために、すべての賦形剤を温度30〜95℃の間で組合せる工程、
− 懸濁液を得るために、該活性薬剤を好ましくは温度30〜95℃で添加する工程、
− 得られた組成物をホモジナイズする工程、
− 場合により、得られた組成物を冷却する工程。
【0043】
本発明は、以下の実施例により例証される。
【表1】
【0044】
実施例
1.医薬組成物
懸濁液型の軟膏を、下記の賦形剤を式IIの化合物と組合せることにより製造した。具体的には、下記成分のすべて(但し式IIの化合物を除く)を組合せ、攪拌しながら80℃にまで加熱して溶解物を得た。式IIの化合物をこの温度で加え、結果的に得られた混合物を、式IIの化合物の完全な湿潤(wetting)が得られるまで攪拌した。次いで、該懸濁液を、ultra turraxを用い24000rpmで5分間80℃にてホモジナイズした。得られた組成物を、25℃にまでゆっくり冷却し、懸濁液型の組成物を得た。
【表2】
【0045】
2.安定性試験
2a)化学的安定性
上記で調製された医薬組成物を、化学的安定性について試験した。5℃、室温および40℃での5ヶ月の保管後に、0.1%未満の分解産物が検出される。5℃、25℃/65%RHおよび30℃/65%RHでの12ヶ月の保管後に、ならびに40℃での6ヶ月の保管後に、0.1%未満の分解産物が検出される。当該組成物の化学的安定性は、12ヶ月を超える5℃での長期間の条件で、ならびに6ヶ月を越える25℃/60%RHの加速条件で、満足のいくものであることが分かった。当該組成物の化学的安定性は、非常に良好であることが分かった。
【0046】
2b)物理的安定性
上記で調製された医薬組成物を、物理的安定性について試験した。5℃、室温および40℃での5ヶ月の保管後に、好適な粒子径分布がすべての保管条件で見出された。5℃、25℃/65%RHおよび30℃/65%RHでの12ヶ月の保管後に、ならびに40℃での6ヶ月の保管後に、好適な粒子径分布がすべての保管条件で見出された。当該組成物の物理的安定性は、12ヶ月を超える5℃での長期間の条件で、ならびに6ヶ月を越える25℃/60%RHの加速条件で、満足のいくものであることが分かった。当該組成物の物理的安定性は、非常に良好であることが分かった。
【0047】
2c)温度サイクル試験
医薬組成物VarBおよびCを、温度サイクル試験(temperature cycling test)で試験した。サンプルは、24時間間隔の40℃と5℃とのサイクルを1ヶ月間繰り返した。これ以降、サンプルの物理的特徴を分析した。視覚的な変化および顕微鏡像の変化は観察されなかった。該軟膏の粘性の大きな増加が観察できた。
【0048】
2d)凍結融解試験
医薬組成物VarBおよびCを、凍結融解試験で試験した。サンプルを、−20℃で6日間、続いて25℃/60%RHで1日の完全な凍結融解サイクル4回で保管した。サンプルを28日後にとり、該サンプルの物理的特徴を分析した。視覚的な変化および顕微鏡像の変化は観察されず、該軟膏の粘性は変化しなかった。
【0049】
2e)実用時の試験(in-use test)
医薬組成物VarBを実用時の試験で試験した。
サンプルを、内部保護用ラッカーあり、印刷なし、メンブレン付きの白色アルミニウムチューブ(10g)で、ビルトインポイントを有する白色ネジ蓋を備えた該チューブ中に置いた。
約0.1gの軟膏を、該10gチューブから実施日数7日間および14日間、1日2回(朝および午後遅くに)取り出した。軟膏の各取り出し後に、該チューブをしっかりと密閉し、次の取出しまで25℃で保管した。
実用時の25℃での7日および14日の期間後に、残った式(II)の化合物のアッセイは変化がなかった。
【0050】
3.飼育ブタにおけるアレルギー性接触皮膚炎(ACD):
感作のために、500μlの10% 2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB、DMSO:アセトン:オリーブ油[1:5:3、v/v/v]中に溶解)を小分けにした分量で、両耳の内耳側壁(lateral aspect)や付け根に、そして両肢の付け根に、経皮適用した。1週間後に、剪毛した側背(dorsolateral back)の12〜16箇所で15μlの1%DNFBにより、皮膚の過敏性反応を誘発した。7cm
2の大きさの試験部位を、両背面に頭尾方向に配列した。15マイクロリッターの製剤サンプルを8日目のチャレンジ後0.5時間および6時間に、右側の2つの試験箇所それぞれに適用した。その反対の左側は、ビヒクル(プラセボ)のみで同様に処置した。該試験部位を、炎症がピークに達した、チャレンジ後24時間で臨床試験を行った。その変化を0から4の尺度でスコア化し(表3−1)、指定箇所あたり12の最大組合せスコアが可能となる。
【0052】
この結果を表3−2にまとめる。
【表3-2】
* 0.5%クリーム+リノール酸 − 成分:式IIの化合物:0.50%、無水グリセリン:64.45%、ミグリオール(Miglyol)812(トリグリセリド・マイケット(mikett)):25.00%、セデフォス(Sedefos)75:9.00%、ブチルヒドロキシトルエン:0.05%、リノール酸:1.00%
** 0.5%クリーム−リノール酸 − 成分:式IIの化合物:0.50%、無水グリセリン:65.45%、ミグリオール812(トリグリセリド・マイケット):25.00%、セデフォス75:9.00%、ブチルヒドロキシトルエン:0.05%
【0053】
4.ブタにおける懸濁液型製剤のインビボ皮膚透過性/浸透性試験
インビボ条件下で皮膚上に適用した化合物の真皮への透過流速(透過性)を測定するために、ブタの側背(dorsolateral back)上の4cm
2サイズの領域を化学式8、4、2で処置し、1時間後に切開した。表皮を、熱分離後に切開した皮膚から取り出し、この脱表皮化皮膚(de-epidermized skin)から1mm厚の真皮シートの6mmの抜き型サンプルを、化合物濃度について分析した。この手順は、処置した皮膚表面に存在する又は表面の上皮角質層に捕捉された未吸収の薬物とアナライトとの汚染の危険がない、信頼のおける薬物レベル測定が可能となる。
【0054】
真皮で得られた薬物濃度を表4−1に列記する。
【表4-1】
【0055】
1%および0.5%軟膏の適用後1〜8時間の間に皮膚に達した濃度を、完皮におけるインビトロ皮膚透過性アッセイで48時間後に達成された濃度と同等であった(以下参照のこと)。
【0056】
インビボでのブタ皮膚の上皮角質層中への透過性
飼育ブタの外側大腿(lateral thigh)を、軟膏VarB(1.0%)で局所的に処置し2時間後に、および反対側を処置し0.5時間後に、処置した皮膚サンプルを切開した。過剰量の適用物質を紙タオルで拭き取った。Dsquame(登録商標)テープ(直径2.2cm、CuDerm)を用いて、上皮角質層の40連続層(serial layer)を均一な圧力を得るための空気圧駆動型プランジャーを使用して連続的に取り出した。化合物濃度を分析し、剥奪した皮膚領域に対して規格化した。
【0057】
上皮角質層における化合物濃度(40のテープストリップ抽出物(tape strip extract)の合計)は、軟膏VarB(1.0%)の適用後0.5時間および2時間でそれぞれ合計3.6μg/m
2および7.5μg/cm
2に達した。
【0058】
5.ヒトの死体腹部皮膚におけるインビトロ皮膚透過性/浸透性
皮膚調製
凍結されたヒトの死体腹部皮膚(abdominal cadaver skin)は、西ハンガリー・リージョナルティシューバンク(Regional Tissue Bank)、ジェール(Gyor)、ハンガリーから入手した(バッチ番号090620−9(=バッチ1)および090609−8(=バッチ2)、それぞれ69歳の女性ドナーおよび61歳の女性ドナー)。実験開始前に、該皮膚を−20℃で約4ヶ月維持した。解凍した皮膚サンプルを、エースクラップ(Aesculap)採皮刀(Aesculap AG, Tuttlingen, Germany)により500μm厚に真皮化し(dermatomize)、拡散領域に適合させるために切除し、拡散フランツセル(diffusion Franz cell)(Franz 1975)のドナーチャンバーとレセプターチャンバーの間に集めた。
【0059】
皮膚の完全性の測定
皮膚の完全性は、皮膚を通じたトリチウム水(
3H
2O)の浸透性を評価することにより決定した;400μLの
3H
2O(0.1MBq/mL)を皮膚表面に適用した。30分の平衡後、
3H
2Oを皮膚から綿棒(cotton tip)で除去した;2mLのレセプター相(下記するレセプター液の組成物)を、皮膚を通じて浸透した
3H
2O画分を測定するためにサンプリングした。該レセプター相中の放射活性を、Liquid Scintillation Systems 2500 TR(Packard Instr. Co., Meriden, CT, USA)で液体シンチレーション計数により測定した。クエンチ補正のために、外部標準法を用いた。クエンチ補正曲線を、密封標準(Packard Instr.)を用いて作成した。
【0060】
インビボでの皮膚を通じた皮膚浸透性および皮膚への透過性の測定
皮膚を、手動の静止(manual static)フランツセル(約7.3mL容量、16mm内径)のドナーチャンバーおよびレセプターチャンバーを分離する膜として用いた。ヒトの生理学的状態および皮膚からの薬物の浸透性除去(systemic removal)をシミュレートするために、レセプターチャンバーをレセプター液(0.5%Brij78水溶液[Volpo20])で充填した。レセプター液は、微生物汚染を防ぐために、1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物の100U/mLをさらに含んだ。
【0061】
拡散のための有効皮膚面積および受容区画の容積は、それぞれ1.78〜2.14cm
2(平均2.01cm
2)および6.98〜7.54mLの範囲であった。セル温度は、循環水槽を用いて一定温度34±1℃に保った。磁気式攪拌棒を、レセプターの一様性を確実にするために全ての実験の間、定期的に使用した。
【0062】
サンプルの収集および取扱い
243〜305mg量の製剤a−c(表5)および0.300mLの製剤dを、拡散フランツセルに載せた皮膚サンプルに対して単回投薬として適用した(サンプリング時間=0hに対応、製剤あたり3〜4セル)。製剤を48時間皮膚上に残した。製剤の蒸発および乾燥を防ぐために、フランツセルのドナー区画を、有孔のパラフィルム(Parafilm(登録商標)M)により部分的に閉塞した。皮膚を通じて浸透した活性薬剤の測定について、レセプター液200μLの液体を、適用後4、7、20、25.5、28、31、44、および48時間にレセプター区画から収集した。アッセイの全期間においてレセプター液の総容積を一定に保つために、レセプター区画から得られた容積を、同量の新鮮なレセプター液で毎回置き換えた。
【0063】
処置期間の終了時(適用後48時間)に、各皮膚サンプル表面上の残留製剤を、綿棒(cotton tip applicator)で慎重に取り除き、適用領域を、水を含んだコットンで洗浄し、新しい綿棒を用いて穏やかに乾燥させた。この手順を3回繰り返した。次いで、その上皮角質層を、商用の接着テープ(Scotch(登録商標)550、3M)を用いた21のテープストリップにより皮膚から剥がした。最初のストリップは、製剤の潜在的な汚染を避けるために破棄し、残り20のストリップをバイアル中に置いた(ストリップ番号2−6、7−11、12−16、17−21を一緒に集めた)。剥離した皮膚の処置領域の生体組織検査を、直径1.2cmの抜き型により行い、重量測定した。レセプター液、テープストリップおよび剥離した皮膚サンプルを凍結し、分析まで−20℃で維持した。サンプル中の式(II)の環状デプシペプチド濃度を、検証済み(validated)のLC−MS/MS分析により測定し;定量化の下限は0.5ng/mL(レセプター液およびストリップ)または5ng/g(皮膚サンプル)であった。