(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス分配器より下の所定の位置で前記容器の前記内壁に取り付けられた分配リングをさらに備え、前記分配リングが幅を有する、請求項1に記載のアンモニア酸化器。
【背景技術】
【0002】
[0002]カプロラクタムの生成には、硫酸ヒドロキシルアミンを使用することができる。カプロラクタムとは、式(CH
2)
5C(O)NHを有する有機化合物であり、ナイロン6を作る際の原材料として広く使用されている。硫酸ヒドロキシルアミンの生成は、たとえば炭酸アンモニウムの生成、亜硝酸アンモニウムの生成、水酸化アンモニウムの生成、ヒドロキシルアミンジスルホン酸塩の生成、および加水分解という動作からなる複数の平行する工程で実施することができる。
【0003】
[0003]亜硝酸アンモニウムの生成プロセスは、空気の存在下でアンモニアを焼損または酸化させることから始まる一連のステップを含むことができる。アンモニアの酸化は、アンモニア(NH
3)酸化器と呼ばれる容器内に収容されているコバルト触媒層で行うことができる。この触媒層は、アンモニア酸化反応の動力学のために浅くなり、わずか数インチ(1インチ=2.54cm)の深さを有する傾向がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0012]
図1は、硫酸ヒドロキシルアミンの生成プロセスで使用できるアンモニア(NH
3)酸化器100を示す。アンモニア酸化器100は、容器102と、容器102内に収容された触媒層104とを含む。触媒層104内に収容される触媒はコバルト触媒とすることができ、触媒層104は浅くすることができる。たとえば、コバルト触媒層104は直径122を有することができ、直径122は、容器102の直径124より小さくすることができる。触媒層が約2.743m(9フィート)の直径を有する例では、触媒層104は、約7.62cm(3インチ)〜約12.7cm(5インチ)の深さを有することができる。そのような例では、容器の直径124を約304.8cm(120インチ)とすることができる。
【0010】
[0013]アンモニアの酸化は、アンモニアガス供給流106を提供することを含むことができ、静的混合器などの混合器126内でアンモニアガス供給流106と空気供給流108を組み合わせて、混合ガス供給流110を形成することができる。アンモニアガス供給流106内のアンモニアと空気供給流108を任意の適した比で組み合わせて、たとえばアンモニア対空気のモル比を約10%などにして、混合ガス供給流110を形成することができる。混合ガス供給流110は、アンモニア酸化器100の容器102内のガス入口114内に設置されたガス分配器112を通って、アンモニア酸化器100内へ導入することができる。
【0011】
[0014]流量が大きくなると、混合ガス供給流110は、触媒層104内の触媒を移動させる傾向があり、その結果、無めっきが生じ、未反応のアンモニアが触媒層104を通過することが可能になる。コバルト触媒層104全体にわたって混合ガス供給流110を効率的に分配することで、触媒層104内の触媒の移動を低減させることができる。たとえば、アンモニアの酸化プロセスにおける現在の触媒変換は約96%〜約98%とすることができ、単一のアンモニア酸化器に対する平均アンモニア消費は約2041kg(4,500lbs)/時である。コバルト触媒層104全体にわたって混合ガス供給流110の分配を改善する結果、触媒変換を改善することができる。触媒変換が1%改善される結果、アンモニア消費は20.41kg(45lbs)/時減少するはずである。
【0012】
[0015]
図1に示す例では、アンモニア酸化器100はまた、分配リング116を含む。ただし、アンモニア酸化器100内に分配リング116を含むことは、少なくともいくつかの例における任意選択であることを理解されたい。分配リング116は、容器102の壁からのガス流の向きを再び触媒層104の方へ変えることによって、混合ガス供給流110の分配を変えることができる。
図1に示すように、容器102の内壁126に分配リング116を取り付けることができ、分配リング116は、容器102の内壁126の周りを円周方向に延びることができる。分配リング116は、内壁126から容器102の内部の方へ延びる幅118を有しており、ガス分配器112より下に所定の距離120を隔てて位置することができる。容器が約3.048m(10フィート)などの最大約4.572m(15フィート)の直径を有するいくつかの例では、分配リング116は、約2.54cm(1インチ)〜約10.16cm(4インチ)または約3.81cm(1.5インチ)〜約7.62cm(3インチ)を含む最大約12.7cm(5インチ)の幅を有することができる。そのような例では、ガス分配器112より下で分配リング116が位置するところまでの所定の距離120は、約76.2cm(30インチ)〜約127cm(50インチ)または約106.7cm(42インチ)〜約119.4cm(47インチ)とすることができる。
【0013】
[0016]ガス分配器112は、円形のガス拡散板を備えることができ、または円形のガス拡散板からなることができる。円形のガス拡散板の一例を
図2に示す。
図2はガス拡散板200の上面図であり、一連の同心状のリング212、214、216、218、および220として構成された複数の孔202、204、206、208、および210を示し、各リングの中心はガス拡散板200の中心点222である。1つの四分円に対する孔202、204、206、208、および210の構成のみを示すが、これらの孔の構成は、水平基準線Aと垂直基準線Bの両方に対して対称とすることができる。したがって、
図2に示す例では、ガス拡散板200は、8つの孔202を有する第1のリング212と、8つの孔204を有する第2のリング214と、8つの孔206を有する第3のリング216と、16個の孔208を有する第4のリング218と、24個の孔210を有する第5のリング220とを含む。所与のリング上のそれぞれの孔と孔の間の角度は、リングの360°をリング内の孔の数で割ることによって判定することができる。
【0014】
[0017]
図1〜3を参照すると、混合ガス供給流110は容器102の内部へ入り、触媒層104全体にわたってガス拡散板200の孔202、204、206、208、および210を通って進む。
図2および
図3に示すように、孔218、220、222、224、および226は、ガス拡散板200を通って延びており、容器内で混合ガス供給流110の所望の分配を提供するように構成された一連のリングなどのパターンで構成することができる。
【0015】
[0018]孔202、204、206、208、および210の構成を、ガス拡散板200の孔スケジュールと呼ぶことができる。たとえば、
図2および
図3に示す例のガス拡散板200はそれぞれ、下の表1に記載の孔スケジュールを有する。
【0017】
[0019]これらの孔は、任意の適した直径を有することができ、任意の1つの孔の直径は、任意の他の孔の直径と同じであっても異なってもよいが、これらの孔はすべて同じ直径を有することが好ましい。
【0018】
[0020]また、孔202、204、206、208、および210はそれぞれ、
図3に示すように、垂直中心線Cに対して配向角を有することができ、配向角は、容器内で混合ガス供給流110の所望の分配を提供するように選択することができる。本明細書における「垂直」という用語の使用は、図示の構成要素の向きを参照するために例示のみを目的とするものであり、実際にはこれらの構成要素を異なる向きにすることもできることに留意されたい。
【0019】
[0021]一例では、孔202、204、206、208、および210のそれぞれの配向角は、垂直中心線Cに対して約0°であり、これは、すべての孔がガス拡散板200内で垂直方向を有することを意味する。別の例では、
図3に示すように、第1のリングの孔202は第1の配向角Dを有することができ、第2のリングの孔204は第2の配向角Eを有することができ、第3のリングの孔206は第3の配向角Fを有することができ、第4のリングの孔208は第4の配向角Gを有することができ、第5のリングの孔210は第5の配向角Hを有することができる。配向角D、E、F、G、およびHは、同じであっても異なってもよい。一例では、配向角Dを約0°とすることができ、配向角Eを約35°とすることができ、配向角Fを約30°とすることができ、配向角Gを約30°とすることができ、配向角Hを約45°とすることができる。
【0020】
[0022]いくつかの例では、本技術のガス分配器は、ガス拡散板200に加えて側壁を含むことができる。
図3は、ガス分配器300の1つのそのような例を示し、ガス分配器300は、円形のガス拡散板200および側壁302を含む。
図3に示すガス拡散板200は、厚さ304および直径306を有する。ガス分配器300はまた、ガス分配器側壁308を含み、ガス分配器側壁308は、ガス分配器側壁308の下端部310でガス拡散板200に接続される。ガス分配器側壁308の上端部312は、アンモニア酸化器100の容器102内のガス入口114に取り付けることができる。図示の例では、ガス分配器側壁308は切頭円錐として成形されており、下端部310の直径はガス拡散板200の直径306に等しく、上端部312の上部直径314は下端部310の直径より小さい。ガス分配器300はまた、高さ316を有する。
【0021】
[0023]実際には、混合ガス供給流110は、ガス分配器側壁308の上端部312でガス分配器300に入り、ガス拡散板200の孔202、204、206、208、および210を通ってガス分配器側壁308の下端部310でガス分配器300から出ることによって、容器102内へ提供される。
【実施例1】
【0022】
[0024]計算流体力学(CFD)コンピュータモデルを使用して、
図2および
図3に従って設計された本技術のガス分配器の設計1を評価した。ガス分配器の高さを約35.56cm(14インチ)とした。ガス分配器側壁の上部直径を約59.05cm(23.25インチ)とし、ガス分配器側壁の下部直径を約111.8cm(44インチ)とした。ガス拡散板の直径も約111.8cm(44インチ)とし、ガス拡散板の厚さを約4cm(1.575インチ)とした。ガス拡散板の孔スケジュールは、上記の表1に記載のとおりとした。ガス拡散板内の孔の配向角を、以下の表2に記載のように変動させて、角度がアンモニア酸化器の容器内の混合ガス供給流の分配に与える影響を判定した。
【0023】
【表2】
【0024】
[0025]これらの結果は、ガス拡散板内の孔の配向角が容器内で触媒層におけるガス流の分配に著しい影響を与えることを示した。触媒層全体にわたって最も効率的なガス分配を提供することに関しては、事例13の結果が最良であった。
【実施例2】
【0025】
[0026]上記の実施例1の事例13による配向角を有する上記の実施例1に記載した本技術の設計1のガス分配器の性能と、アンモニア酸化器のガス入口に三角形のガス拡散板を有するが側壁のない現在知られているガス分配器の性能とを比較した。三角形のガス拡散板は45個の孔を有し、各孔の直径を約2.54cm(1インチ)とした。
【0026】
[0027]2つの分配器の定量的な比較を以下の表3に示す。触媒層と入口全体のガスの質量パーセント、局部重点平均ガス速度、および速度の大きさの標準偏差を並列に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
[0028]動作圧力が約82740PaG(12psig)である場合の設計1および三角形板のガス拡散器の圧力降下も判定し、以下の表4に記載した。設計1のガス分配器に対する分配器の圧力降下は、三角形板のガス拡散器の圧力降下より大きい。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、これは実施例1のガス分配器の側壁によると考えられる。しかし、約82740PaG(12psig)の動作圧力および正常なガス供給速度(4600Pa(0.667psi))における設計1のガス分配器の圧力降下は、動作圧力の5.5%にすぎず、これは著しい量と見なされるものではない。
【0029】
【表4】
【実施例3】
【0030】
[0029]アンモニア酸化器のガス入口に位置する三角形のガス拡散板を有するが側壁のない現在知られているガス分配器を有するアンモニア酸化器に関して、アンモニア酸化器の容器の内壁に分配リングを取り付ける影響を試験した。三角形のガス拡散板は45個の孔を有し、各孔の直径を約2.54cm(1インチ)とした。分配リングの幅を約7.62cm(3インチ)とし、ガス分配器より下に約114.3cm(45インチ)隔てて配置した。
【0031】
[0030]2つのアンモニア酸化器の定量的な比較を以下の表5に示す。局部重点平均ガス速度および速度の大きさの標準偏差を並列に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
[0031]この定量的な比較に基づいて、分配リングを追加すると、触媒層におけるガス速度の標準偏差が2.02から1.63に低減した。これは、ガス分配の均一性の19%の改善である。
【実施例4】
【0034】
[0032]計算流体力学(CFD)コンピュータモデルを使用して、本技術のガス分配器と本技術の分配リングを組み合わせた代替設計の例を評価した。ガス分配器は、
図2に従って設計した。このモデルは、直径約304.8cm(120インチ)の容器と、直径約274.3cm(108インチ)および深さ約10.16cm(4インチ)の触媒層とを有するアンモニア酸化器を含んだ。ガス分配器は、厚さ約0.635cm(0.25インチ)の薄い円形のガス拡散板を含むが、ガス分配器側壁はなかった。円形のガス拡散板は、円形のガス拡散板の表面に対して90°の角度で円形のガス拡散板を貫通してあけられた垂直の孔を含み、各孔は約5.08cm(2インチ)の直径を有した。アンモニア酸化器は、各例でガス分配器より下に約114.3cm(45インチ)隔てて位置する4つの異なる幅の分配リングを有するものとしてモデル化したものであり、それらの結果を表6に示す。
【0035】
【表6】
【0036】
[0033]表6の設計3〜5は、触媒層におけるガス速度の標準偏差に対して最良の結果を示し、各結果は、上記の表3の三角形板によって提示された2.02という触媒層における標準的な速度より小さかった。実施例3は、HopewellのNH
3酸化器内の既存の三角形板からのものである。したがって、簡略化された設計#2の新しい設計を設置することによって、ガス分配の均一性の39%の改善が実現される。
【0037】
[0034]実施例4は、実施例1よりガス拡散器の圧力降下が小さいことを示し、これは、いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、分配器側壁が除去されたためであると考えられる。正常な流量では、実施例1から得られた4599Pa(0.667psi)、すなわち動作圧力82740Pa(12psi)の5.5%という圧力降下と比較すると、実施例4の場合の圧力降下は約1103Pa(0.16psi)、すなわち動作圧力82740Pa(12psi)の1.3%である。
【0038】
[0035]上記から、本明細書では例示を目的として特有の例について説明したが、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができることが理解される。したがって、上記の詳細な説明は、限定ではなく例示であると見なされ、あらゆる均等物を含む以下の特許請求の範囲が、請求する主題を具体的に指摘し明確に記載することが理解されるものとする。