(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
捲線を備えた複数の鉄心が円周方向に沿って等間隔で配置された固定子と、複数の永久磁石が円周方向に沿って等間隔で配置され前記固定子と対向した状態で回転する回転子と、を備えた磁力回転装置であって、
それぞれの前記永久磁石は、N極またはS極のいずれかの磁極を有し前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面が、円周の接線方向に対し傾斜角を有するように配置され、
円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石を含む各組の永久磁石体において、2つの前記永久磁石は、2つの前記対向磁極面が互いに異なる磁極となるようにかつ円周の接線方向に対する傾斜が互いに逆となるように配置され、かつ、2つの前記対向磁極面が当該永久磁石体の両端の磁極となるように磁性材料からなるつなぎ鉄心によって磁気的に接続されてなり、
円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石体における互いに近接する側の2つの前記永久磁石の前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面の磁極が互いに異なっている、
ことを特徴とする磁力回転装置。
前記第1の回転子および前記第2の回転子は、前記鉄心と前記永久磁石との吸引力によるディテントトルクが、前記第1の回転子と前記第2の回転子とで互いに打ち消し合うように、前記第1の位相角と前記第2の位相角とが設定されている、
請求項2記載の磁力回転装置。
捲線を備えた複数の鉄心が円周方向に沿って等間隔で配置された固定子と、複数の永久磁石が円周方向に沿って等間隔で配置され前記固定子と対向した状態で回転する回転子と、を備えた磁力回転装置であって、
それぞれの前記永久磁石は、N極またはS極のいずれかの磁極を有し前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面が、円周の接線方向に対し傾斜角を有するように配置され、
円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石を含む各組の永久磁石体において、2つの前記永久磁石は、2つの前記対向磁極面が互いに異なる磁極となるようにかつ円周の接線方向に対する傾斜が互いに逆となるように配置され、かつ、2つの前記対向磁極面が当該永久磁石体の両端の磁極となるように磁性材料からなるつなぎ鉄心によって磁気的に接続され、
前記回転子として、第1の回転子および第2の回転子が設けられており、
前記第1の回転子および前記第2の回転子は、前記第1の回転子に含まれる全部の前記永久磁石体により形成される磁極の極数である第1の極数と、前記第2の回転子に含まれる全部の前記永久磁石体により形成される磁極の極数である第2の極数とが、互いに異なるように、前記永久磁石体における前記対向磁極面の磁極が配置されている、
ことを特徴とする磁力回転装置。
捲線を備えた複数の鉄心が円周方向に沿って等間隔で配置された第1の固定子および第2の固定子と、複数の永久磁石が円周方向に沿って等間隔で配置されて互いに一体的に回転する第1の回転子および第2の回転子と、を備えた磁力回転装置であって、
前記第1の固定子と前記第1の回転子とが対向しかつ前記第2の固定子と前記第2の回転子とが対向するよう配置され、
それぞれの前記永久磁石は、N極またはS極のいずれかの磁極を有し前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面が、円周の接線方向に対し傾斜角を有するように配置され、
円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石を含む各組の永久磁石体において、2つの前記永久磁石は、2つの前記対向磁極面が互いに異なる磁極となるようにかつ円周の接線方向に対する傾斜が互いに逆となるように配置され、かつ、2つの前記対向磁極面が当該永久磁石体の両端の磁極となるように磁性材料からなるつなぎ鉄心によって磁気的に接続されてなり、
円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石体における互いに近接する側の2つの前記永久磁石の前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面の磁極が互いに異なっている、
ことを特徴とする磁力回転装置。
前記第1の回転子および前記第2の回転子は、前記第1の回転子に含まれる各組の前記永久磁石体における回転中心を通る中心線の前記鉄心に対する位相角である第1の位相角と、前記第2の回転子に含まれる各組の前記永久磁石体における回転中心を通る中心線の前記鉄心に対する位相角である第2の位相角とが、互いに異なるように配置されている、
請求項5記載の磁力回転装置。
前記第1の回転子および前記第2の回転子は、前記鉄心と前記永久磁石との吸引力によるディテントトルクが、前記第1の回転子と前記第2の回転子とで互いに打ち消し合うように、前記第1の位相角と前記第2の位相角とが設定されている、
請求項6記載の磁力回転装置。
前記第1の回転子に含まれる各組の前記永久磁石体における回転中心を通る中心線の前記第1の固定子における前記鉄心に対する位相角である第1の位相角と、前記第2の回転子に含まれる各組の前記永久磁石体における回転中心を通る中心線の前記第2の固定子における前記鉄心に対する位相角である第2の位相角とが、互いにずれた状態で、前記第1の回転子と前記第2の回転子とが一体的に回転するように連結されている、
請求項5記載の磁力回転装置。
前記第1の回転子および前記第2の回転子は、前記第1の回転子に含まれる全部の前記永久磁石体により形成される磁極の極数である第1の極数と、前記第2の回転子に含まれる全部の前記永久磁石体により形成される磁極の極数である第2の極数とが、互いに異なるように、前記永久磁石体における前記対向磁極面の磁極が配置されている、
請求項5記載の磁力回転装置。
捲線を備えた複数の鉄心が円周方向に沿って等間隔で配置された第1の固定子および第2の固定子と、複数の永久磁石が円周方向に沿って等間隔で配置されて互いに一体的に回転する第1の回転子および第2の回転子と、を備えた磁力回転装置であって、
前記第1の固定子と前記第1の回転子とが対向しかつ前記第2の固定子と前記第2の回転子とが対向するよう配置され、
それぞれの前記永久磁石は、N極またはS極のいずれかの磁極を有し前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面が、円周の接線方向に対し傾斜角を有するように配置され、
円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石を含む各組の永久磁石体において、2つの前記永久磁石は、2つの前記対向磁極面が互いに異なる磁極となるようにかつ円周の接線方向に対する傾斜が互いに逆となるように配置され、かつ、2つの前記対向磁極面が当該永久磁石体の両端の磁極となるように磁性材料からなるつなぎ鉄心によって磁気的に接続されてなり、
円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石体における互いに近接する側の2つの前記永久磁石の前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面の磁極が、前記第1の回転子または前記第2の回転子のいずれか一方においては互いに異なり、いずれか他方においては互いに同じである、
ことを特徴とする磁力回転装置。
前記第1の回転子に含まれる各組の前記永久磁石体における回転中心を通る中心線の前記鉄心に対する位相角である第1の位相角と、前記第2の回転子に含まれる各組の前記永久磁石体における回転中心を通る中心線の前記鉄心に対する位相角である第2の位相角とが、互いに同じ状態で、前記第1の回転子と前記第2の回転子とが一体的に回転するように連結されている、
請求項11記載の磁力回転装置。
前記第1の回転子において、円周上に配置された8n(nは整数)個の前記永久磁石によって4n個の前記永久磁石体が形成され、円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石体における互いに近接する側の2つの前記永久磁石の前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面の磁極が互いに異なっており、これによって8n極の磁極が形成されており、
前記第2の回転子において、円周上に配置された8m(mは整数)個の前記永久磁石によって4m個の前記永久磁石体が形成され、円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石体における互いに近接する側の2つの前記永久磁石の前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面の磁極が互いに同じとなっており、これによって4m極の磁極が形成されている、
請求項12記載の磁力回転装置。
前記電動機の回転子に含まれる全部の前記永久磁石体により形成される磁極の極数は8であり、前記発電機の回転子に含まれる全部の前記永久磁石体により形成される磁極の極数は4である、
請求項18記載の電動発電機。
捲線を備えた複数の鉄心が円周方向に沿って等間隔で配置された固定子と、複数の永久磁石が円周方向に沿って等間隔で配置され前記固定子と対向した状態で回転する回転子と、を備えた電動機であって、
それぞれの前記永久磁石は、N極またはS極のいずれかの磁極を有し前記鉄心と対向する側の磁極面である対向磁極面が、円周の接線方向に対し傾斜角を有するように配置され、
円周方向に隣り合う2つの前記永久磁石を含む各組の永久磁石体において、2つの前記永久磁石は、2つの前記対向磁極面が互いに異なる磁極となるようにかつ円周の接線方向に対する傾斜が互いに逆となるように配置され、かつ、2つの前記対向磁極面が当該永久磁石体の両端の磁極となるように磁性材料からなるつなぎ鉄心によって磁気的に接続されてなり、
前記回転子は、自由状態において、それぞれの前記永久磁石体において、2つの前記対向磁極面における前記鉄心に近い側の角部であるそれぞれの頂点が、前記回転子の回転方向後方の前記対向磁極面の前記頂点については、対面する前記鉄心の端面における前記回転子の回転方向前方側の端縁部に位置し、前記回転子の回転方向前方の前記対向磁極面の前記頂点については、対面する前記鉄心の端面における前記回転子の回転方向後方側の端縁部に位置した状態で、停止する、
ことを特徴とする電動機。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および
図2には、本発明に係る一実施形態の電動発電機1の側面断面図および正面断面図が示され、
図3および
図4にはそれらの一部を拡大した図が示されている。また、
図5には、
図4における矢印M1方向からみた図が示されている。なお、
図2は、
図1におけるAA−AA線断面矢視図に相当する。
図5は、回転軸の回転中心から鉄心の端面を見て平面上に展開した図である。
図5において、矢印DSは周方向を示し、矢印DJは軸方向を示す。
【0022】
なお、これらの図は、固定子、回転子、鉄心、永久磁石、および永久磁石体などの配置関係を示すことを主な目的としており、電動発電機1における固定子および回転子などの種々の部材を支持するための機械的な構造や連結関係を精密に示すものではない。
【0023】
図1〜
図5において、電動発電機1は、電動機M1および発電機G1を備え、それらの回転軸11が共通に設けられている。なお、全ての実施例の電動機または発電機を代表して「電動機M」「発電機G」と記載することがある。
【0024】
フレーム21は、ステンレス鋼のような非磁性材料によって、電動機M1および発電機G1を機械的に維持するように設けられ、電動発電機1の外形を形成している。
【0025】
回転軸11は、フレーム21に設けられたベアリングによって、フレーム21に対し回転自在に支持されている。
【0026】
電動機M1は、A電動機MAとB電動機MBとの2つの部分によって構成される。発電機G1は、A発電機GAとB発電機GBとの2つの部分によって構成される。
【0027】
本実施形態において、電動機M1と発電機G1とは、その基本的な構造は同じである。例えば、鉄心31の円周方向の配置における角度位置および角度間隔、永久磁石41の円周方向の配置における角度位置および角度間隔は、電動機M1と発電機G1とで同じである。
【0028】
つまり、電動機M1と発電機G1とにおいて、使用されている鉄心31および永久磁石41の形状および寸法について、ここで示された実施例では相違はほとんどない。また、それら部材の配置についても、円周方向つまり回転方向において同じ角度位置に同じ部材が配置されており、これらの間に位相差はない。
【0029】
しかし、永久磁石41の磁極の極性、永久磁石体JTの構成または配置の位相角などについて、電動機M1と発電機G1とでは異なる点がある。詳しくは以下において説明する。
【0030】
第一に、電動発電機1の構造および各部材の配置などについて説明し、第二に、永久磁石41および永久磁石体JTの極性、永久磁石体JTの角度位置の位相関係などについて説明する。
〔電動発電機の構造についての説明〕
〔電動機〕
電動機M1は、回転軸11、固定子12、回転子13、およびフレーム21などを有する。
〔固定子〕
固定子12は、捲線(コイル)32を備えた複数の鉄心31が円周方向に沿って等間隔で配置されたものである。なお、電動機M1に設けられた鉄心31を「鉄心MY」と、発電機G1に設けられた鉄心31を「鉄心GY」と、それぞれ記載することがある。
【0031】
各鉄心31は、外形がコ字形またはU字形の珪素鋼板を所定の厚さに積層したものであり、中央部に胴部311が、その両端に脚部312a,bが設けられた形状である。脚部312a,bの先端は、それぞれ長方形状の端面313a,bとなっており、2つの端面313a,bは、同じ平面上にあって回転軸11の中心方向を向いた状態である。
【0032】
捲線32は、鉄心31の各脚部312a,bにそれぞれ設けれた2つの捲線32a,bを含む。捲線32a,bに電流を流すことにより、鉄心31に磁束および磁界が生じ、電磁石となる。2つの捲線32a,bを例えば並列接続とし、鉄心31内に同じ方向の磁束が生じるように電流を流すことにより、端面313a,bに互いに異なる磁極が形成される。つまり、端面313a,bの一方がN極、他方がS極となる。
【0033】
本実施形態では、胴部311が軸方向と平行に延びるように、つまり2つの脚部312a,bが軸方向に沿って離れた位置となるような姿勢の12個の鉄心31が、円周上に等間隔で、つまり隣り合う鉄心31同士の中心角が30度(=360度÷12)となるように、配置されている。
【0034】
つまり、各鉄心31の中心を通りかつ固定子12の中心つまり回転子13の回転中心(回転軸11の軸心)KCを通過する中心線LKが、互いに30度の中心角をなすようになっている。隣り合う鉄心31の端面と端面との間隔は、端面の幅とほぼ同じか、または若干狭い。
【0035】
回転子13は、鉄心31の一方の脚部312aに対向するA回転子13aと、他方の脚部312bに対向するB回転子13bとからなる。これらA回転子13aとB回転子13bとは、一体に回転し、基本的に互いに同じ構造であるので、A回転子13aのみについて詳しく説明し、B回転子13bについては主としてA回転子13aとの相違点について説明する。
【0036】
なお、回転子13の脚部312aの側とA回転子13aとによって上に述べたA電動機MAが構成され、回転子13の脚部312bの側とB回転子13bとによって上に述べたB電動機MBが構成される。
〔A回転子〕
まず、A回転子13aは、複数の永久磁石41が円周方向に沿って等間隔で配置されたものであり、固定子12と対向した状態で、ここでは脚部312aの端面313aと対向した状態で、回転軸11とともに回転する。
【0037】
本実施形態では、8個の永久磁石41が、円周上に等間隔で、つまり隣り合う永久磁石41同士の中心角が45度(=360度÷8)となるように、配置されている。
【0038】
永久磁石41は、ネオジム(またはネオジウム)を成分として含んだ磁石(ネオジム磁石)であり、全体として直方体の形状、つまりブロック状に形成されている。直方体の互いに対向する2つの面が磁極面411a,bであり、磁極面411a,bの一方がN極、他方がS極となってい。
【0039】
2つの磁極面411a,bのうち、鉄心31と対向する側を磁極面411aとし、その反対側を磁極面411bとする。鉄心31と対向する側の磁極面411aを、「対向磁極面」または「対向磁極面TJ」と記載することがある。
【0040】
永久磁石41は、対向磁極面TKが円周の接線方向に対し傾斜角αjを有するように配置される。
【0041】
そして、円周方向に隣り合う2つの永久磁石41が、1組の永久磁石体JTを形成する。つまり、永久磁石41が8個の場合に、4組の永久磁石体JTが形成される。4組の永久磁石体JTも、円周上に等間隔で、つまり隣り合う永久磁石体JT同士の中心角が90度(=360度÷4)となるように、配置されている。
【0042】
各組の永久磁石体JTにおいて、2つの永久磁石41は、2つの対向磁極面TKが互いに異なる磁極となるように配置される。しかも、永久磁石体JTにおける2つの対向磁極面TKは、円周の接線方向に対する傾斜が互いに逆となるように、つまり逆方向に傾斜角αjを有するように配置される。
【0043】
本実施形態においては、傾斜角αjはほぼ45度である。また、永久磁石41は、一辺が25mm程度の立方体である。なお、鉄心31の端面313a,bのサイズは、縦(軸方向)、横(周方向)ともに、永久磁石41の辺の長さとほぼ同じである。
【0044】
そして、2つの永久磁石41の2つの磁極面411bの間には、磁性材料からなるつなぎ鉄心42が配置されている。つなぎ鉄心42は、正面の形状が台形であり(
図4参照)、その斜面に2つの永久磁石41の磁極面411bが接触し、かつその磁力によって吸引されて一体化されている。これによって、永久磁石体JTは、全体が1つの永久磁石となり、その両端に、半径方向外方に向かって傾斜した2つの磁極面411aつまり対向磁極面TKが形成されている。
【0045】
永久磁石体JTは、つなぎ鉄心42の中央を通過する線(中心線)LTに対して左右対称である。この中心線LTは、永久磁石体JTの中心線であり、当該永久磁石体JTの回転中心つまり回転子13の回転中心KCを通過する線である。
【0046】
また、各永久磁石41における鉄心31に最も近い部分、つまり対向磁極面TKの角部である頂点TPを通りかつ回転中心KCを通過する線(磁極線)LUが、
図4に示されている。なお、永久磁石41が立方体であってかつ傾斜角αjが45度の場合に、磁極線LUは永久磁石41の対角線と一致する。
【0047】
隣り合う2つの磁極線LUの中心角、つまり永久磁石体JTにおける2つの対向磁極面TKの角部である頂点TPを通過する中心線の互いの角度は、上に述べたように45度である。
【0048】
なお、本実施形態では、それぞれ1個の永久磁石41が1個の永久磁石によって構成されるが、複数の永久磁石によって構成されるようにしてもよい。例えば、板状または直方体状の永久磁石を複数枚重ねることにより1個の永久磁石41を構成してもよい。
【0049】
また、つなぎ鉄心42として、傾斜が同じで底辺の長さの異なる複数の台形状のつなぎ鉄心部材を、跳び箱のように積み重ねたものを用いてもよい。また、後述のように、永久磁石体JTの全体を1個の永久磁石で構成してもよい。
【0050】
なお、これらの永久磁石41、つなぎ鉄心42、および永久磁石体JTを支持し、かつ回転軸11とともに一体的に回転するように連結するために、側板部材45および中間部材46などが設けられている。
【0051】
側板部材45は、それぞれの永久磁石41およびつなぎ鉄心42を軸方向の両側から挟みかつ位置決めするように凹部が設けられた円板状の部材である。中間部材46は、それぞれの永久磁石41およびつなぎ鉄心42が貫通するようにかつそれらの軸方向の中央部を支持するように穴が設けられた円板状の部材である。
【0052】
側板部材45および中間部材46は、非磁性体でありかつ絶縁体である合成樹脂からなっている。
【0053】
側板部材45および中間部材46は、回転軸11が貫通する円筒状のブシュ47に固定されている。ブシュ47は、キー48によって、回転軸11と一体に回転する。
【0054】
なお、これら側板部材45および中間部材46の材質および形状などは、上に説明した以外の種々のものとすることが可能である。
〔B回転子〕
次に、B回転子13bについて説明する。
【0055】
B回転子13bは、上に述べたA回転子13aの構造と基本的に同じであり、対向磁極面TKの極性が互いに異なる。
【0056】
すなわち、B回転子13b、つまり回転子13における鉄心31の脚部312bに対向する部分は、A回転子13aと同様に、複数の永久磁石41が円周方向に沿って等間隔で配置されたものであり、固定子12と対向した状態で、ここでは脚部312bの端面313bと対向した状態で、回転軸11とともに回転する。
【0057】
また、A回転子13aとB回転子13bとは、正面方向、つり回転軸11に沿った方向から見たときに、永久磁石41および永久磁石体JTの配置が互いに一致して一直線上に重なるのであり、したがって、それぞれの中心線LTも互いに一致して重なる。
【0058】
つまり、A回転子13aとB回転子13bとにおいて、永久磁石41および永久磁石体JTの配置については、円周方向つまり回転方向においては同じ角度位置に同じ部材が配置されており、A回転子13aとB回転子13bとの間に位相差はない。
【0059】
しかし、永久磁石41における磁極の極性は、A回転子13aとB回転子13bとで互いに異なる(つまり逆である)。
【0060】
つまり、鉄心31における端面313aの磁極と端面313bの磁極とは極性が互いに異なるので(つまり逆であるので)、永久磁石41における磁極の極性は、A回転子13aとB回転子13bとで互いに異なる。例えば、A回転子13aにおける対向磁極面TKがN極の場合に、B回転子13bにおける対向磁極面TKはS極である。
【0061】
なお、対向磁極面TKなどの極性については、後で詳しく説明する。
【0062】
また、B回転子13bに設けられた側板部材45および中間部材46などは、A回転子13aと共通のブシュ47に固定されており、これによって、A回転子13aおよびB回転子13bの円周方向の互いの位置決めがなされ、かつ一体的に回転する。
〔発電機〕
次に、発電機G1について説明する。
【0063】
発電機G1は、上に述べたように電動機M1の構造と基本的に同じである。
【0064】
すなわち、発電機G1は、回転軸11、固定子16、回転子17、およびフレーム21などを有する。回転軸11およびフレーム21は、電動発電機1の全体において共通である。
【0065】
固定子16は、電動機M1の固定子12と同様に、捲線32を備えた12個の鉄心31が、円周上に等間隔で、つまり隣り合う鉄心31同士の中心角が30度となるように、配置されている。
【0066】
回転子17は、固定子16の鉄心31の一方の脚部312aに対向するA回転子17aと、他方の脚部312bに対向するB回転子17bとからなり、これらは電動機M1の回転子13と基本的に同じ構造である。また、これらA回転子17aとB回転子17bとは、一体に回転し、基本的に互いに同じ構造である。
【0067】
なお、
図1〜
図5に示した回転子13、17の回転角度位置は、回転が停止した状態における一例を示すものである。
【0068】
また、電動機M1における回転子13は本発明の「第1の回転子」の、発電機G1における回転子17は本発明の「第2の回転子」の、それぞれ一例を示すものである。
【0069】
また、
図1〜
図5において説明した電動発電機1において、鉄心31の個数または配置、永久磁石41の個数または配置、永久磁石体JTの構成または配置などは、種々変更することが可能である。
〔永久磁石の極性などについての説明〕
〔第1実施例、8極電動機−8極発電機〕
図6、
図7、
図8、
図9には、回転子13、17の永久磁石体JTにより形成される磁極が8極である場合の、
図1のAA−AA線、BB−BB線、CC−CC線、DD−DD線の各位置における断面矢視図が、第1実施例として示されている。
【0070】
つまり、
図6には電動機M1のA回転子13aにおける磁極の極性が示され、
図7には電動機M1のB回転子13bにおける磁極の極性が示されている。また、
図8には発電機G1のA回転子17aにおける磁極の極性が示され、
図9には発電機G1のB回転子17bにおける磁極の極性が示されている。これらの図は、A回転子13a、B回転子13b、A回転子17a、およびB回転子17bが、互いに同じ時刻における回転角度位置の状態を示すものであり、これらは周方向における相対位置関係を維持した状態で同時に回転する。
【0071】
なお、
図6〜
図9において、固定子12、16については、いずれも12個の鉄心31が等間隔に配置された場合が示されている。
【0072】
なお、これらの図は、主として磁極の極性および回転角度位置を説明するものであるので、構造などについての詳しい図示は省略されている。
【0073】
まず、
図6において、12個の鉄心31の中心線LKは、互いにβ1(=30度)の中心角をなす。8個の永久磁石41の位置を示す磁極線LUは、互いにβ2(=45度)の中心角をなす。永久磁石体JTの中心線LTは、互いにβ3(=90度)の中心角をなす。
【0074】
また、
図2、
図4、
図5、
図6〜
図9においては、捲線32に電流を流すことなく、かつ回転軸11に外部からの回転力を与えることのない自由状態において、回転子13,17が取り得る回転角度位置の1つの状態が示されている。
【0075】
図に示す状態では、永久磁石41の各頂点TPは、鉄心31の端面313aの端縁に極く近い位置にある。そして、電動機M1では、永久磁石体JTにおける2つの頂点TPは、隣り合う鉄心31における2つの端面313aの互いに遠い側の端縁の極く近くにある。発電機G1では、永久磁石体JTにおける2つの頂点TPは、1つの鉄心31を挟んで配置された2つの鉄心31における2つの端面313aの互いに近い側の端縁の極く近くにある。つまり、発電機G1では、永久磁石体JTの対向磁極面TKが鉄心31の端面313aとそれぞれ対面する状態である。
【0076】
発電機G1におけるこの状態は、各永久磁石体JTにとって鉄心31との間の吸引力が強くなる状態であり、かつ4組の永久磁石体JTの全体についても鉄心31との間の吸引力が強くなる状態である。なお、後で説明するように、回転子13,17が自由状態において実際に停止する位置は、回転子13,17の永久磁石体JTと鉄心31との間の総合的な吸引力の強さによる。
【0077】
さて、
図6〜
図9において、12個の鉄心31、8個の永久磁石41、および4個の永久磁石体JTについて、個々を識別するための符号が付されている。
【0078】
すなわち、周方向に連続して隣り合う3つの鉄心31を1組の鉄心群とすると、1〜4の4組の鉄心群に区画される。また、各組みの鉄心群について、3つの鉄心31を、図の左回りに、A相、B相、C相とする。
【0079】
そして、最上位置にある鉄心31を「YA1」とし、左回りに、「YB1」「YC1」とする。次に、「YA2」「YB2」「YC2」とし、さらに、「YA3」「YB3」「YC3」、「YA4」「YB4」「YC4」とする。各符号の最初の「Y」は「鉄心」を表す。
【0080】
永久磁石体JTについては、最上位置にある永久磁石体JTを「E1」とし、左回りに、「E2」、「E3」、「E4」とする。
【0081】
永久磁石41については、各永久磁石体JTの符号に、対向磁極面TKの極性を追加して、「E1N」「E1S」、「E2N」「E2S」、「E3N」「E3S」、「E4N」「E4S」とする。
【0082】
捲線32については、A電動機MAに設けられる捲線32を「MCA」と記載することがある。同様に、B電動機MB、A発電機GA、B発電機GBに設けられる捲線32を、それぞれ、「MCB」、「GCA」、「GCB」と記載することがある。
【0083】
また、「YA1」の鉄心31に巻かれた捲線32を「CA1」、「YB1」の鉄心31に巻かれた捲線32を「CB1」などと記載することがある。
【0084】
まず、
図6〜
図9において、それぞれ8個の永久磁石41は、対向磁極面TKにおいてN極とS極とが交互に表れるように配置される。そして、
図6のA回転子13aと
図7のB回転子13b、
図8のA回転子17aと
図9のB回転子17bとでは、それぞれ極性が互いに逆である。
【0085】
次に、
図6および
図7に示す電動機M1のA回転子13aおよびB回転子13bにおいて、8個の永久磁石41は、円周方向に隣り合う2つの永久磁石体JT(E1〜4)における互いに近接する側の2つの永久磁石41の対向磁極面TKの磁極が互いに異なっている。
【0086】
すなわち、
図6のA回転子13aにおいて、例えば円周方向に隣り合う2つの永久磁石体E1、E2では、互いに近接する側の2つの永久磁石E1S、E2Nの対向磁極面TKの磁極は、それぞれS極、N極であり、互いに異なっている。また、永久磁石体E1、E4では、2つの永久磁石E1N、E4Sの対向磁極面TKの磁極は、それぞれN極、S極であり、互いに異なっている。
【0087】
また、
図7のB回転子13bにおいて、例えば円周方向に隣り合う2つの永久磁石体E1、E2では、互いに近接する側の2つの永久磁石E1N、E2Sの対向磁極面TKの磁極は、それぞれN極、S極であり、互いに異なっている。また、永久磁石体E1、E4では、2つの永久磁石E1S、E4Nの対向磁極面TKの磁極は、それぞれS極、N極であり、互いに異なっている。
【0088】
したがって、A回転子13aおよびB回転子13bにおいては、それぞれ8個の永久磁石41によって、互いに同じ位置に8つの磁極が形成されており、8極ということになる。
【0089】
また、
図6および
図7において、最上位置にある鉄心YA1に対向する永久磁石体E1について見ると、鉄心YA1の中心線LKと永久磁石体E1の中心線LTとのなす中心角は、いずれもγ2である。ここで、γ2は、
γ2=(β2/2)−γ1
=(β1/2)
である。上に述べたように、β1=30度、β2=45度であるから、
γ1=7.5度
γ2=15度
となる。
【0090】
つまり、電動機M1において、自由状態では、鉄心31に対向する永久磁石41は、その位置(磁極線LUの位置)が鉄心31の中心線LKよりもγ1=7.5度ずれた位置にある、ということである。
【0091】
しかも、永久磁石体JTにおける右側の永久磁石41については、鉄心31の中心線LKの右側(マイナス側)へ7.5度、左側の永久磁石41については中心線LKの左側(プラス側)へ7.5度、それぞれずれた位置である。
【0092】
また、電動機M1において、自由状態では、鉄心31に対向する永久磁石体JTは、その中心線LTが鉄心31の中心線LKよりもγ2=15度ずれた位置にある、つまり2つの鉄心31の中心線LTの丁度中間位置にある、ということである。
【0093】
次に、
図8および
図9に示す発電機G1のA回転子17aおよびB回転子17bにおいて、8個の永久磁石41は、円周方向に隣り合う2つの永久磁石体JT(E1〜4)における互いに近接する側の2つの永久磁石41の対向磁極面TKの磁極が互いに異なっている。
【0094】
すなわち、
図8のA回転子17aにおいて、例えば円周方向に隣り合う2つの永久磁石体E1、E2では、互いに近接する側の2つの永久磁石E1S、E2Nの対向磁極面TKの磁極は、それぞれS極、N極であり、互いに異なっている。また、永久磁石体E1、E4では、2つの永久磁石E1N、E4Sの対向磁極面TKの磁極は、それぞれN極、S極であり、互いに異なっている。
【0095】
また、
図9のB回転子17bにおいて、例えば円周方向に隣り合う2つの永久磁石体E1、E2では、互いに近接する側の2つの永久磁石E1N、E2Sの対向磁極面TKの磁極は、それぞれN極、S極であり、互いに異なっている。また、永久磁石体E1、E4では、2つの永久磁石E1S、E4Nの対向磁極面TKの磁極は、それぞれS極、N極であり、互いに異なっている。
【0096】
したがって、A回転子17aおよびB回転子17bにおいては、それぞれ8個の永久磁石41によって、互いに同じ位置に8つの磁極が形成されており、8極ということになる。
【0097】
また、
図8および
図9において、最上位置にある鉄心YA1に対向する永久磁石体E1について見ると、鉄心YA1の中心線LKと永久磁石体E1の中心線LTとのなす中心角は、いずれもγ2である。ここで、γ2は、
γ2=β1
である。つまり、中心線LTは、1つ隣の鉄心YC4の中心線LKと一致する。上に述べたように、β1=30度であるから、
γ2=30度
となる。
【0098】
つまり、
図8および
図9に示すように、発電機G1において、自由状態では、鉄心31に対向する永久磁石体JTは、その中心線LTが、2つの永久磁石41の対向する2つの鉄心31の間にある鉄心31の中心線LKと一致する、ということである。
【0099】
なお、磁極線LUの位置は、中心線LKよりもγ1=7.5度ずれた位置にあり、これについては変更はない。
〔電動機と発電機の回転子の回転位置の位相関係〕
次に、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17との回転角度位置についての位相関係を説明する。
【0100】
電動機M1と発電機G1とでは、同じ角度位置に配置された鉄心31に対して、回転子13と回転子17とが一体に回転するものであるから、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17とにおける中心角γ1,γ2の相違は、回転中においても常に保持される。したがって、中心角γ1,γ2は、
図6〜
図9に示した状態における中心角を示すものではあるが、γ1,γ2で示される中心角を「位相角」と記載することがある。
【0101】
なお、電動機M1における中心角(位相角)γ1,γ2については、中心角(位相角)γ1M,γ2Mと記載し、発電機G1における中心角(位相角)γ1,γ2については、中心角(位相角)γ1G,γ2Gと記載して、両者を区別することがある。
【0102】
図6と
図8、
図7と
図9をそれぞれ較べると分かるように、電動機M1の回転子13に含まれる各組の永久磁石体JTにおける回転中心を通る中心線LTの当該電動機M1の固定子12に含まれる鉄心31に対する位相角である第1の位相角γ2Mと、発電機G1の回転子17に含まれる各組の永久磁石体JTにおける回転中心を通る中心線LTの当該発電機G1の固定子16に含まれる鉄心31に対する位相角である第2の位相角γ2Gとが、互いにずれた状態で、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17とが一体的に回転するように連結されている。
【0103】
つまり、上に述べたように、
図6および
図7に示される第1の位相角γ2(γ2M)は15度であり、
図8および
図9に示される第2の位相角γ2(γ2G)は30度である。また、第1の位相角γ2と第2の位相角γ2とでは方向が逆であるので、これらの位相差は、15+30=45度である。
【0104】
つまり、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17とは、永久磁石体JTの位置(中心線LT)が45度の位相差を持つように連結され、その状態で回転することとなっている。
【0105】
なお、電動機M1についての
図6、
図7と発電機G1についての
図8、
図9とを較べると分かるように、同じ位置の永久磁石41に対して、電動機M1と発電機G1とでは、つなぎ鉄心42の設けられる位置が互いに45度ずれており、これからも永久磁石体JTの位相差が45度であることが理解できる。
【0106】
このように、永久磁石体JTの位相角について、電動機M1と発電機G1との間で異ならせることによって、鉄心31と永久磁石41との吸引力によるディテントトルクが、電動機M1と発電機G1とで互いに打ち消し合い、全体のディテントトルクが大幅に低減されることとなる。
【0107】
なお、
図6、
図7と
図8、
図9とを比較すると分かるように、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17とは、永久磁石41および永久磁石体JTの配置に関して、鉄心YA1に対向する永久磁石41の磁極線LUを対称線として、線対称の関係にある。
【0108】
つまり、これらの図では、鉄心YA1の中心線LTから7.5度ずれた磁極線LUを中心線として、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17とが、互いに鏡像の関係にある。
【0109】
言い換えれば、例えば
図6または
図7における当該磁極線LUを中心線として、回転子13の永久磁石体JTの配置を左右反転すると、
図8または
図9における回転子17の永久磁石体JTの配置と一致する。
【0110】
電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17とをこのように配置することにより、鉄心31と永久磁石41との吸引力によるディテントトルクが、電動機M1と発電機G1とで互いに打ち消し合い、または低減されることとなり、ディテントトルクが全体として大幅に低減される。
【0111】
ディテントトルクが低減されることにより、電動発電機1の効率が向上する。
【0112】
なお、電動発電機1においてディテントトルクが低減される理由は次のように推測される。
【0113】
図6および
図7に示すA回転子13aおよびB回転子13b、つまり回転子13において、各永久磁石体JTの対向磁極面TKと、それらが対向する2つの鉄心31との間で吸引力が働き、この吸引力がディテントトルクとなる。
図6および
図7に示す位置は、自由状態における回転子13の安定位置の1つである。回転子13は、左右いずれの方向においても、鉄心31の配置ピッチβ1である30度回転する毎に、同じ状態となって安定する可能性がある。
【0114】
また、
図8および
図9に示すA回転子17aおよびB回転子17bにおいて、各永久磁石体JTの対向磁極面TKと、それらが対向する2つの鉄心31との間で吸引力が働き、この吸引力がディテントトルクとなる。
図8および
図9に示す位置は、自由状態における回転子17の安定位置の1つである。
【0115】
ところで、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17とは、上に述べたように、永久磁石体JTの位相差が45度である。しかし、ディテントトルクの発生源である鉄心31と永久磁石41との間の吸引力について見ると、30度毎に同じ状態となり、30度を1周期として、ディテントトルクの大きさと方向についての変化が繰り返される。したがって、ディテントトルクの変化については、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17との位相差は15度(45度−30度)である。
【0116】
そうすると、電動機M1の回転子13と発電機G1の回転子17とは、永久磁石41によるディテントトルクの変化について、互いに逆の位相であるということになり、それぞれのディテントトルクが互いに打ち消し合って、合成されたディテントトルクはゼロになるか、または大幅に低減される。つまり、自由状態において、回転軸11にはディテントトルクが作用することなく、回転軸11は手で容易に回転させることができる状態となる。
【0117】
したがって、電動機M1の回転子13および発電機G1の回転子17は、自由状態において、
図6〜9に示す角度位置に特定されることなく、どのような角度位置でも静止可能ということになる。
【0118】
したがって、回転子13,17の永久磁石体JTの対向磁極面TKの磁力の強さ、鉄心31との間隙の大きさなどを適宜選択して設計することにより、自由状態における停止位置を所望の位置とすることが可能である。
〔第2実施例、8極電動機−4極発電機〕
上に述べた第1実施例の電動発電機1において、発電機G1は、永久磁石体JTにより形成される磁極が8極であった。ここで述べる第2実施例の電動発電機1Bでは、永久磁石体JTにより形成される磁極が4極である発電機G1Bが用いられる。
【0119】
つまり、ここでの電動発電機1Bは、電動機M1および発電機G1Bを備え、それらの回転軸11が共通に設けられている。なお、電動機M1は上に述べたのと同じ8極のものである。
【0120】
発電機G1Bでは、上に述べた発電機G1と較べて、同じ回転速度に対する出力の周波数が2分の1となる。したがって、8極の発電機G1では周波数が高過ぎる場合に、4極の発電機G1Bを用いた電動発電機1Bが用いられる。
【0121】
図10、
図11には、発電機G1Bの回転子17の永久磁石体JTにより形成される磁極が4極である場合の、
図1のCC−CC線、DD−DD線の各位置における断面矢視図が示されている。
【0122】
つまり、
図10には第2実施例の発電機G1BのA発電機GABを構成するA回転子17Baにおける磁極の極性が示され、
図11には発電機G1BのB発電機GBBを構成するB回転子17Bbにおける磁極の極性が示されている。
【0123】
なお、
図10、
図11において、
図8、
図9に示す要素と同様な要素については同じ符号を付し、または同じ符号に符号「B」を追加して示し、その説明を省略しまたは簡略化する。第3実施例以降においても、符号「C」「D」などとすることはあるが同様である。
【0124】
ここに示す4極の発電機G1Bの回転子17Bと、先に説明した8極の発電機G1の回転子17とでは、つなぎ鉄心42の配置および対向磁極面TKの極性が相違する。
【0125】
すなわち、
図8、
図9と
図10、
図11とを比較すれば分かるように、回転子13と回転子17Bとでは、つなぎ鉄心42が配置された角度位置が互いに45度ずれており、これによって永久磁石体JTの角度位置に45度のずれがある。
【0126】
ただし、永久磁石41の配置については、回転子13および回転子17Bについて、永久磁石41が配置された角度位置は互いに一致しており、一直線上に重なる。
【0127】
換言すれば、電動機M1の回転子13および発電機G1Bの回転子17Bは、電動機M1の回転子13に含まれる全部の永久磁石体JTにより形成される磁極の極数である第1の極数NP1と、発電機G1Bの回転子17Bに含まれる全部の永久磁石体JTにより形成される磁極の極数である第2の極数NP2とが、互いに異なるように、永久磁石体JTにおける対向磁極面TKの磁極が配置されている。
【0128】
つまり、発電機G1Bの回転子17Bにおいて、円周方向に隣り合う2つの永久磁石体JTにおける互いに近接する側の2つの対向磁極面TKの磁極が、互いに同じとなっている。
【0129】
そして、回転子13に含まれる各組の永久磁石体JTにおける位相角である第1の位相角と、回転子17Bに含まれる各組の永久磁石体JTにおける位相角である第2の位相角とが、互いに同じ状態で、回転子13と回転子17Bとが一体的に回転するように連結されている。
【0130】
すなわち、回転子13において、円周上に配置された8n(nは整数)個の永久磁石41によって4n個の永久磁石体JTが形成され、円周方向に隣り合う2つの永久磁石体JTにおける互いに近接する側の2つの永久磁石41の対向磁極面TKの磁極が互いに異なっており、これによって8n極の磁極が形成されている。
【0131】
また、回転子17Bにおいて、円周上に配置された8m(mは整数)個の永久磁石41によって4m個の永久磁石体JTが形成され、円周方向に隣り合う2つの永久磁石体JTにおける互いに近接する側の2つの永久磁石41の対向磁極面TKの磁極が互いに同じとなっており、これによって4m極の磁極が形成されている。
【0132】
なお、
図10、
図11に示す例では、n、mともに1である。
【0133】
また、回転子17Bは、互いに一体に回転するA回転子17BaとB回転子17Bbとを含む。A回転子17BaとB回転子17Bbとは、対向磁極面TKの極性が互いに異なるが、基本的な構造は同じである。
【0134】
具体的には、
図10の回転子17Baにおいて、例えば円周方向に隣り合う永久磁石体E1、E2では、互いに近接する側の2つの永久磁石E1S、E2Sの対向磁極面TKの磁極は、いずれもS極であり、互いに同じである。また、永久磁石体E1、E4では、2つの永久磁石E1N、E4Nの対向磁極面TKの磁極は、いずれもN極であり、互いに同じである。
【0135】
したがって、回転子17Baにおいては、永久磁石E1S、E2SによってS極、永久磁石E2N、E3NによってN極、永久磁石E3S、E4SによってS極、永久磁石E4N、E1NによってN極が、それぞれ形成され、極数(第2の極数NP2)は4となる。なお、これらの磁極の位置は、隣り合う永久磁石体JTの中間位置であり、各永久磁石体JTの磁極線LUに対して45度ずれた位置である。
【0136】
なお、回転子17Baと回転子17Bbとでは、極性が互いに逆である。
【0137】
電動発電機1Bにおいても、永久磁石体JTの位相角について、電動機M1と発電機G1との間で異なっており、鉄心31と永久磁石41との吸引力によるディテントトルクが、電動機M1と発電機G1とで互いに打ち消し合うこととなり、ディテントトルクが低減されることとなる。
【0138】
ところで、ディテントトルクを低減するには、鉄心31と永久磁石41との吸引力によるディテントトルクが、電動機M1の回転子13と発電機G1,G1Bの回転子17,17Bとで互いに打ち消し合うように、磁極を配置すればよい。
【0139】
したがって、
図6〜
図11に示した以外に、例えば次のような磁極の配置としてもよい。
(1) 電動機M1については
図6、
図7に示すようにし、発電機G1については、永久磁石体JTを
図8、
図9に示す配置とし、かつ、対向磁極面TKの極性を、互いに近接する側の2つの永久磁石41の対向磁極面TKの磁極を同じにする。つまり、この場合には、発電機G1の回転子17の極数(第2の極数NP2)が4となる。
(2) 電動機M1については
図6、
図7に示すようにし、発電機G1Bについては、回転子17Bの位相角を、
図10、
図11に示す位置よりも左右のいずれかに45度ずらせる。つまり、この場合は、回転子17Bの永久磁石体JTの配置は
図8、
図9に示すとおりとなり、その永久磁石体JTの互いに近接する2つの永久磁石41の対向磁極面TKの極性を同じにしたものとなる。
【0140】
なお、回転子13,17,17Bの位相角を変更するには、例えば、回転軸11に対する取り付け角度位置を変更すればよい。そのためには、例えば各回転子13,17,17Bに対するキー48の角度位置を変更すればよい。
【0141】
また、回転子13,17,17Bなどの位相角(回転角度位置)は、固定子12,16の鉄心31に対する相対角度位置であるから、回転子13,17,17Bの角度位置を変更することに代えて、またはこれとともに、固定子12,16の鉄心31の配置(位相角)を変更してもよい。
【0142】
また、上の実施形態では、電動機M1と発電機G1,G1Bとの間でディテントトルクを打ち消すようにしたが、電動機M1または発電機G1,G1Bのそれぞれの内部においてディテントトルクを打ち消すように、複数の回転子13,17,17Bまたは鉄心31の配置、磁極、位相角などを設定してもよい。
〔第3実施例、8極電動機−8極発電機〕
次に、第3実施例の電動発電機1Cについて説明する。第3実施例の電動発電機1Cは、電動機M1Cおよび発電機G1Cを備える。
【0143】
図12には、電動機M1CのA回転子13Caにおける磁極の極性が示され、
図13には電動機M1CのB回転子13Cbにおける磁極の極性が示されている。また、
図14には発電機G1CのA回転子17Caにおける磁極の極性が示され、
図15には発電機G1CのB回転子17Cbにおける磁極の極性が示されている。これらの図は、互いに同じ時刻における回転角度位置の状態を示すものであり、周方向における相対位置関係を維持した状態で一体で回転する。
【0144】
図12および
図13に示されるように、第3実施例の電動機M1Cは、第1実施例の電動機M1と同じ構造である。ただし、回転子13Cは、自由状態において、それぞれの永久磁石体JTにおける少なくとも1つの対向磁極面TKの少なくとも一部が、鉄心31の端面とそれぞれ対面する状態で停止するようになっている。
【0145】
つまり、それぞれの永久磁石体JTにおいて、2つの対向磁極面TKにおける鉄心31に近い側の角部であるそれぞれの頂点TPが、回転子13Cの回転方向後方の対向磁極面TKの頂点TPについては、対面する鉄心31の端面における回転子13Cの回転方向前方側の端縁部に位置し、回転子13Cの回転方向前方の対向磁極面TKの頂点TPについては、対面する鉄心31の端面における回転子13Cの回転方向後方側の端縁部に位置した状態で、停止するようになっている。
【0146】
換言すれば、固定子12において、12個の鉄心31が隣り合う鉄心同士の中心角が30度で配置されており、回転子13Cにおいて、円周上に配置された8個の永久磁石41によって4個の永久磁石体JTが形成され、8個の永久磁石41の8個の頂点TPは頂点同士の中心角が45度で配置されており、各永久磁石体JTにおける2つの対向磁極面TKは、1つの鉄心31を挟んで配置された2つの鉄心31の端面とそれぞれ対面する状態で停止するようになっている。
【0147】
図12および
図13には、それぞれの頂点TPを通りかつ回転中心KCを通過する磁極線LUが示されている。隣り合う2つの磁極線LUの中心角は、上に述べたように45度である。
【0148】
永久磁石体JTの中心線LTは、鉄心31の中心線LKと一致しており、最上位置にある永久磁石体JT(E1)の中心線LTは、最上位置にある鉄心31の中心線LKから左方向にγ2=30度ずれた位置にある、ということである。
【0149】
つまり、第3実施例の回転子13Cは、
図6に示す第1実施例の回転子13よりも左方向に15度回転した位置で停止していることとなる。
【0150】
この状態では、最上位置にある永久磁石体JT(E1)の回転方向後方の対向磁極面TKの頂点TPを通る磁極線LUは、最上位置にある鉄心31の中心線LKから左方向にγ1=7.5度ずれた位置にある。この場合に、図で分かるように、頂点TPは、鉄心31の端面における回転方向後方側の端縁に丁度位置した状態であり、各永久磁石体JTの各対向磁極面TKは、鉄心31の端面とそれぞれ対面する状態で停止するようになっている。
【0151】
回転子13Cにおいて、各永久磁石体JTの各対向磁極面TKが鉄心31の端面とそれぞれ対面する状態では、鉄心31と永久磁石体JTとの吸引力によるディテントトルクが大きいといえる。
【0152】
図14および
図15に示されるように、第3実施例の発電機G1Cは、軸方向から見た形状が矩形であって、円周の接線方向に沿ってN極とS極の磁極が形成された8個の永久磁石51が用いられる。つまり、各永久磁石51として、永久磁石体JTに用いられる永久磁石41とほぼ同じ直方体の形状の永久磁石51がそのまま用いられる。
【0153】
最上位置にある永久磁石51を「F1」とし、右回りに、「F2」、「F3」、「F4」…、「F8」とする。また、いずれかの永久磁石F1〜F8を「永久磁石F」ということがある。
【0154】
8個の永久磁石F1〜F8は、この順に、円周方向に沿って等間隔で配置されている。つまり、永久磁石F1〜F8の各中心線LTは、互いにβ4(=45度)の中心角をなす。最上位置にある永久磁石F1の中心線LTは、最上位置にある鉄心31の中心線LKから右方向にγ2=15度ずれた位置にある。つまり、8個の永久磁石F1〜F8のうち、1つ置きの4個の永久磁石F1,F3,F5,F7は、鉄心31と鉄心31との間に位置し、他の4個の永久磁石F2,F4,F6,F8は、鉄心31の端面と対面した位置にある。
【0155】
それぞれの永久磁石Fは、円周方向に隣り合う永久磁石Fにおいて対向する磁極面の磁極の極性が互いに同じとなるように配置されている。また、各永久磁石51の磁極面の端縁は、鉄心31の端縁とほぼ一致した位置にある。したがって、回転子17Cについては、この状態において、鉄心31と永久磁石Fとの吸引力によるディテントトルクは大きいものとなる。
【0156】
電動発電機1Cでは、電動機M1Cおよび発電機G1Cのいずれの回転子13C,17Cにおいても
図12〜
図15に示す状態でディテントトルクが最も大きくなる。または、回転子13C,17Cについて合成されたディテントトルクが最も大きくなる。その結果、自由状態において、図に示す状態で停止する。
【0157】
したがって、
図12〜
図15に示す停止状態から起動する際に、電動機M1Cの各永久磁石体JTの回転方向後方側の対向磁極面TKに対面する鉄心31との間で反発力が作用するように、回転方向前方側の対向磁極面TKに対面する鉄心31との間で吸引力が作用するように、各鉄心31の捲線32に電流を流して磁化することによって、回転子13Cは大きな回転トルクを得て円滑に回転を開始することができる。起動した後は、回転トルクが維持されるように、永久磁石体JTの対向磁極面TKの回転位置に応じたタイミングで捲線32に流す電流を切り替えればよい。
【0158】
電動発電機1Cが起動し定常回転となった後で、捲線32に流す電流をオフにすれば、回転子13C,17Cは
図12〜
図15に示す状態で停止する。この状態において、磁気的な吸引力によって静止トルクが作用し、自由状態における回転子13C,17Cの角度位置が保持される。
【0159】
上に述べた例では、各永久磁石41の頂点TPの位置が鉄心31の端縁とほぼ一致しており、対向磁極面TKは鉄心31の端面とほぼ全面的に対面した状態の場合を説明した。この場合は、起動の最初における回転トルクが最大となって円滑な起動に寄与する。しかし、各永久磁石体JTにおける2つの対向磁極面TKのうち、いずれか一方のみが鉄心31の端面と対面するような状態でもよく、また、両方またはいずれか一方の対向磁極面TKの一部が鉄心31の端面と対面するような状態でも、十分な回転トルクが得られれば円滑な起動が可能である。
【0160】
また、自由状態で回転子13Cが
図12〜
図15に示す位置となりさえすれば、ディテントトルクはできるだけ小さい方が起動電流が少なく、起動が容易である。したがって、永久磁石体JTの対向磁極面TK、永久磁石51、鉄心31の端面などの寸法および形状などを種々選択し、最適の起動特性が得られるようにすればよい。
【0161】
また、上に述べた例では、8極の電動機M1Cとしたが、これ以外の極数、例えば4極、12極、または次に述べるような16極などとしてもよい。また、発電機G1Cとして、永久磁石51の個数、配置、磁極の向き、寸法、形状など、種々変更することも可能である。
【0162】
このように、電動機M1Cと発電機G1Cとの組み合わせを種々に変更することが可能であり、回転子13C,17Cまたは鉄心31の配置、磁極、位相角などを種々設定してもよい。また、電動機M1Cを単体として用いてもよい。
〔第4実施例、16極電動機−8極発電機〕
次に、第4実施例の電動発電機1Dについて説明する。第4実施例の電動発電機1Dは、電動機M1Dおよび発電機G1Dを備える。
【0163】
図16には、電動機M1DのA回転子13Daにおける磁極の極性が示されている。また、
図17には発電機G1DのA回転子17Daにおける磁極の極性が示されている。なお、動機M1DのB回転子13Dbおよび発電機G1DのB回転子17Dbについては、他の実施形態と同様の関係にあるので、ここでの説明は省略する。
【0164】
図16に示されるように、第4実施例の電動機M1Dの回転子13Dは、8個の永久磁石体JTDを備え、それらが円周上に等間隔で、つまり隣り合う永久磁石体JTD同士の中心角が45度となるように配置されている。
【0165】
各永久磁石体JTDは、2個の永久磁石41Dと1個のつなぎ鉄心42Dとによって構成される。各永久磁石体JTDにおいて、2つの永久磁石41Dは、対向磁極面TKが互いに異なる磁極となるように配置される。しかも、2つの対向磁極面TKは、円周の接線方向に対する傾斜が互いに逆となるように、つまり逆方向に傾斜角αjを有するように配置される。本実施例においては、傾斜角αjはほぼ60度である。つなぎ鉄心42Dは、正面の形状が三角形である。
【0166】
永久磁石体JTDの磁極は、円周方向に隣り合う永久磁石体JTD同士の対向磁極面TKの磁極が互いに異なっている。
【0167】
図17に示されるように、第4実施例の発電機G1Dの回転子13Dは、電動機M1Dと同様な構造の8個の永久磁石体JTDを備える。ただし、永久磁石体JTDの磁極は、円周方向に隣り合う永久磁石体JTD同士の対向磁極面TKの磁極が互いに同じとなっている。
【0168】
電動機M1Dおよび発電機G1CDにおいて、
図16および
図17に示す状態で、回転子13D,17Dについて合成されたディテントトルクが最も大きくなる。その結果、回転子13Dは、自由状態において、
図16に示す状態、つまり回転子13Dにおけるそれぞれの永久磁石体JTDにおける少なくとも1つの対向磁極面TKの少なくとも一部が、鉄心31の端面とそれぞれ対面する状態で停止するようになっている。
【0169】
この状態において、回転子13Daの最上位置にある永久磁石体JTDの中心線LTは、最上位置にある鉄心31の中心線LKから左方向にγ2=17.5度ずれた位置にある。また、回転子17Daの最上位置にある永久磁石体JTDの中心線LTは、最上位置にある鉄心31の中心線LKから右方向にγ2=5度ずれた位置にある。つまり、回転子13Daと回転子17Daとでは、永久磁石体JTDの中心線LTの位置の互いのずれ(位相差)は、17.5+5=22.5度である。
【0170】
したがって、この第4実施例においても、第3実施例の場合と同様に、
図16に示す停止状態から起動する際に、電動機M1Dの各永久磁石体JTDの回転方向後方側の対向磁極面TKに対面する鉄心31との間で反発力が作用するように、回転方向前方側の対向磁極面TKに対面する鉄心31との間で吸引力が作用するように、各鉄心31の捲線32に電流を流して磁化することによって、回転子13Dは大きな回転トルクを得て円滑に回転を開始することができる。
【0171】
なお、自由状態における回転子13Dの位置としては、回転子13Dにおける対向磁極面TKの少なくとも一部が鉄心31の端面と対面する状態で停止するのであれば、
図16に示す位置と異なっていてもよい。
〔永久磁石体の構成について〕
上に述べた各実施例においては、2個の永久磁石41,41Dと1個のつなぎ鉄心42,42Dとによって永久磁石体JTを構成した。しかし、永久磁石体JTは、その磁気を利用して回転トルクを得るものであるから、磁気的な機能が同じであれば、次に述べるようにこれとは異なった構成とすることが可能である。永久磁石体JTDについても同様である。
【0172】
図18には永久磁石体JTの構成の例が示されている。
図18(A)は正面図であり、
図18(B)は側面図である。
【0173】
図18に示すように、永久磁石体JTは、2つの永久磁石41と2つのつなぎ鉄心42とが1個の永久磁石として一体に形成されてなる。つまり、永久磁石体JTは、軸方向から見た形状(正面形状)が矩形である2つの矩形部分41kと、2つの矩形部分41kの対向する面の間に配置された台形部分41dとが一体となった形状である。
【0174】
永久磁石体JTにおける両端の2つの磁極面411a,bは、いずれも、鉄心31の正面にきたときに鉄心31と対向する対向磁極面TJである。
【0175】
このように、本発明における「永久磁石体」は、1個または複数個の部品としての永久磁石および必要に応じてつなぎ鉄心を用いて構成することができる。
〔制御などに関して〕
次に、電動発電機1,1B,1C,1Dの制御について説明する。
【0176】
図1において、回転軸11の回転角度位置を検出するために、フォトインタラプタ61が設けられている。回転軸11には、遮蔽円板62が取り付けられて一体に回転し、遮蔽円板62の回転角度位置によって、フォトインタラプタ61における1つまたは複数のフォトセンサがオンオフする。フォトインタラプタ61のフォトセンサのオンオフ信号に基づいて、回転軸11の回転角度位置、つまり回転子13,13C,13D,17,17B,17C,17Dの回転角度位置が検出される。
【0177】
図19には制御装置71の構成の例が示され、
図20および
図21には制御装置71による電動機Mの捲線32の電流のオンオフの制御の様子が示されている。
図20は8極の電動機Mに対する制御であり、
図21は16極の電動機Mに対する制御である。
【0178】
図19において、制御装置71は、ゲート制御部72およびスイッチング部73を備える。スイッチング部73は、A相スイッチング部73A、B相スイッチング部73B、およびC相スイッチング部73Cを有する。
【0179】
ゲート制御部72は、フォトインタラプタ61の出力する信号S1に基づいて、電動機Mの各捲線32に流す電流をオンオフするためのタイミング信号S2A,S2B,S2Cを作成する。
【0180】
つまり、
図4も参照して、電動機Mの永久磁石41の回転方向おける後方側の頂点TPが、各相に対応する鉄心YA,YB,YCの中心にきたときに、またはそれより若干の回転角度を過ぎたときに、対応するスイッチング部73A,73B,73Cがオンするように制御する。そして、それぞれオンした後、当該頂点TPがオン角度θ2だけ回転したときに、それぞれ対応するスイッチング部73A,73B,73Cがオフするように制御する。
【0181】
ここでのオン角度θ2は、永久磁石41の形状、配置、負荷の大きさなどによって異なり、最適のオン角度θ2となるように調整される。例えば、θ2=27.5度(機械角)となるように調整される。また、オン角度θ2を、27.5度以外の適当な値、例えば27.5度以下の適当な値となるように調整してもよい。具体的には、例えば、27度、25度、24度などとしてもよい。但し、オン角度θ2は30度を越えないことが好ましい。つまり、各相の捲線32に電流が流れるタイミングが互いに重ならないようにすることが好ましい。また、オン角度θ2を30度(電気角では120度)よりも小さくすることによって、励磁による残存エネルギーが次の対向磁極面TKとの間の作用によりブレーキとなることがなくなり、効率が向上する。
【0182】
オン角度θ2の調整のために、種々の方法を採用することができる。例えば、遮蔽円板62における遮蔽角度または透過角度を変更してオン角度θ2を調整することができる。例えば、遮蔽円板62において光を遮蔽するように黒く塗った部分を拡げまたは狭めることにより、オン角度θ2を調整することが可能である。
【0183】
また、A相、B相、C相のそれぞれに対して専用のフォトインタラプタ61を設け、各相ごとに回転角度位置を検出してもよい。
【0184】
また、ゲート制御部72において、適当なタイマー手段を用い、頂点TPを検出してから経過した時間を可変することによってオン角度θ2を調整することができる。その場合に、電動機Mの回転速度の信号をも用いて演算を行うことによって、オン角度θ2を精密に調整することが可能である。
【0185】
各相のスイッチング部73は、タイミング信号S2A,S2B,S2Cを受けて、これに基づいて各相の捲線32に流す電流をオンオフする。
【0186】
各相のスイッチング部73A,B,Cの出力端子には、それぞれに対応する相の鉄心YA,YB,YCの捲線32が並列に接続されている。
【0187】
各相のスイッチング部73は、永久磁石41の回転方向おける後方側の磁極面に対して反発するように、かつ永久磁石41の回転方向おける前方側の磁極面に対して吸引するように、対応する各鉄心YA,YB,YCの捲線32に流れる電流をオンオフする。捲線32には、所定の幅と大きさを持った方形波に近い直流電流が流れる。但し、過度現象および電機子反作用などによって波形は歪む。
【0188】
捲線32に電流が流れると、それに対応する鉄心YA,YB,YCが励磁され、鉄心YA,YB,YCの端面313a,313bにN極またはS極の磁極が形成される。これにより、回転子13の永久磁石41の対向磁極面TKとの間で吸引力または反発力が生じ、これによって、回転トルクが発生し、回転軸11が回転駆動される。
【0189】
なお、スイッチング部73において、捲線32に流れる電流をオンオフするために、FET、双方向サイリスタなどの電力用半導体スイッチング素子を用いることが可能である。これらのスイッチング素子は、ゲートに制御信号を入力することによって制御される。上に述べたゲート制御部72、スイッチング部73は、それぞれ本発明における「スイッチング部」、「タイミング制御部」の例である。
【0190】
制御装置71には、電源を供給するための端子TB1,2が設けられ、端子TB1,2に直流電源が接続される。直流電源として、例えば、電圧が数十ボルト〜百数十ボルト程度、例えば具体的には80V程度の安定化直流電源、またはバッテリーなどを用いることができる。これにより電動機Mを駆動し、発電機Gから例えば2kW程度の商用交流電力を取り出すことができる。
【0191】
図20において、第3実施例の8極の電動機M1Cについて、後方側の頂点TPの回転角度位置に対応する各相のオンオフのタイミングが示されている。
【0192】
例えば、回転子13Cが回転し、後方側の頂点TPが基準位置にきたとき、鉄心YAの捲線32の電流IAがオンとなり、この電流IAはオン角度θ2の間持続する。当該頂点TPが回転して基準位置からオン角度θ2の位置に達したとき、電流IAはオフする。
【0193】
なお、基準位置として、例えば最上位置にある鉄心31の中心線LKの位置とすることができる。そして、基準位置を0度とする。
【0194】
捲線32に電流IAが流れると、鉄心YAの端面313aにはN極、磁極端面313bにはS極の磁極がそれぞれ形成される。したがって、A回転子13Caの永久磁石41の後方側の頂点TPを含む対向磁極面TKはN極であるので、これと対向する鉄心YAの端面313aのN極と反発し、図の左方向への回転トルクを発生する。同時に、その後方側の永久磁石41の前方側の頂点TPを含む対向磁極面TKはS極であるので、鉄心YAの端面313aのN極に吸引され、左方向への回転トルクを発生する。
【0195】
また、B回転子13Cbの永久磁石41の後方側の頂点TPを含む対向磁極面TKはS極であり、鉄心YAの端面313bはS極となるので、同様に反発と吸引によって左方向への回転トルクを発生する。これらA回転子13Caの回転トルクとB回転子13Cbの回転トルクとが合成されて、回転軸11を回転駆動する。
【0196】
また、頂点TPが次の鉄心YBの中心位置にきたときも、上に述べたと同様に鉄心YBの捲線32の電流IBがオンとなり、これによって回転トルクが発生する。さらに、頂点TPが次の鉄心YCの中心位置にきたときも、上に述べたと同様に鉄心YCの捲線32の電流ICがオンとなり、これによって回転トルクが発生する。このようにして、連続的に回転トルクが発生し、回転軸11は回転を継続する。
【0197】
図21において、第4実施例の16極の電動機M1Dについて、後方側の頂点TPの回転角度位置に対応する各相のオンオフのタイミングが示されている。
【0198】
例えば、回転子13Dが回転し、後方側の頂点TPが基準位置にきたとき、鉄心YAの捲線32の電流IAがオンとなり、この電流IAはオン角度θ2の間持続する。当該頂点TPが回転して基準位置からオン角度θ2の位置に達したとき、電流IAはオフする。
【0199】
16極の場合は、角度θ2は15度以下であり、回転子13Dが90度回転する間に、45度ごとにつまり2回オンする。しかし、角度θ2を15度以上とすることも可能である。角度θ2を15度以上とすることにより、捲線32に供給される合計電力が360度を越え、より大きい回転トルクを得ることが可能である。ただし、その場合でも、角度θ2は30度を越えないようする必要がある。
【0200】
なお、電動発電機1C、1Dを起動する際には、上にも述べたように、自由位置で停止した状態から、後方側の対向磁極面TKに対面する鉄心31との間で反発力が作用するように、かつ、前方側の対向磁極面TKに対面する鉄心31との間で吸引力が作用するように、捲線32に電流を流して起動させ、その後は
図20または
図21などに示すように制御すればよい。
【0201】
また、電動発電機1を起動するには、基本的には電動発電機1C、1Dの場合と同じであるが、例えば
図6および
図7に示す位置で停止した状態から起動するには、後方側の頂点TPが対向する鉄心31の1つ後方側の鉄心31との間で反発力が作用するように、かつ、前方側の頂点TPが対向する鉄心31の1つ前方側の鉄心31との間で吸引力が作用するように、捲線32に電流を流して起動させ、その後は
図20に示すように制御すればよい。
【0202】
上の各実施例の電動発電機1,1B,1C,1Dでは、電動機M1の回転子13に設けた永久磁石41のN極およびS極の両極を対向磁極面TKとし、鉄心13との間の反発と吸引の両方を回転トルクに変換することができ、大きな回転トルクを発生させることができる。
【0203】
また、オン角度θ2を調整することによって、発生する回転トルクを最適化または最大化することが可能である。
【0204】
また、上の制御例では、頂点TPが鉄心の中心位置にきたと同時に捲線32に電流IA,IB,ICを流したが、これらのタイミングを前後にずらすことも可能である。つまり、頂点TP1が鉄心の中心位置を通過して角度θ1だけ回転したときに、捲線32に電流を流すようにしてもよい。この角度θ1は、微少な角度であり、負の角度となることもある。例えば、角度θ1を、0〜3度程度の範囲とし、または0〜8度程度の範囲とし、または、3度、6度、7.5度などとすることが可能である。
【0205】
また、発電機G1,G1B,G1C,G1Dでは、電動機M1の回転軸11によって回転子17,17B,17C,17Dが回転駆動されることにより、固定子16の捲線32に誘導起電力が発生し、これが外部に交流電力として取り出される。固定子16の捲線32を3相結線とすることにより、正弦波の3相交流電力が出力される。特に、電動発電機1,1B,1C,1Dの回転子13,13C,13D、17,17B,17C,17Dの全体のディテントトルクを小さくすることによって、回転速度のムラがなくなり、発電機の出力波形を綺麗な正弦波とすることができる。
【0206】
例えば第3実施例の電動発電機1Cにおいても、電動機M1Cの回転子13Cおよび発電機G1Cの回転子17Cについて、永久磁石体JTおよび永久磁石51の磁力の強さ、鉄心31との間隙の大きさなどを適宜選択して設計することにより、自由状態における停止位置を所望の位置として起動を円滑なものとし、かつ、発電機G1Cの出力波形を歪みのない綺麗な正弦波とすることができる。
【0207】
なお、制御装置71において、電動機Mに出力する電流IA,IB,ICの周期または周波数、大きさなどを可変調整することが可能であり、これにより電動機Mの回転速度およびパワー(出力)を制御することができる。
【0208】
上に述べた実施形態において、傾斜角αjを種々設定することができる。例えば30〜90度の範囲、またはこれ以外の範囲から選択することが可能である。
【0209】
その他、回転軸11、固定子12,16、回転子13,13C,13D,17,17B,17C,17D、フレーム21、鉄心31、捲線32、永久磁石41,41D,51、つなぎ鉄心42、永久磁石体JT,JTD、電動機M1,M1C,M1D、発電機G1,G1B,G1C,G1D、または電動発電機1,1B,1C,1Dの各部または全体の構成、構造、形状、個数、配置、方向、極性、極数、電圧、電力、周波数などは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。第1実施例から第4実施例の構成、構造、形状、個数などを相互に入れ替えて組み合わせてもよい。