(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガイド部と前記弁体のそれぞれに部分的に設けられた相補形状の周面が閉弁時に係合することにより、前記摺動部が周方向につながる状態が形成されることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
前記ガイド部と前記弁体との相補形状の周面の係合が開弁時に解除されることにより、前記オーバラップ部の全体にわたって前記間隙部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
前記ガイド部および前記弁体の一方に周設された凸面部と他方の対向面とにより、前記オーバラップ部の一部に前記摺動部が周方向につながる状態が常に形成されることを特徴とする請求項4に記載の制御弁。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[第1実施形態]
本実施形態は、本発明の制御弁を電気自動車の冷暖房装置に適用する電磁弁として具体化したものである。この車両用冷暖房装置は、圧縮機、室内凝縮器、室外熱交換器、蒸発器およびアキュムレータを配管にて接続した冷凍サイクルを備える。車両用冷暖房装置は、作動流体としての冷媒が冷凍サイクルを状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0017】
車両用冷暖房装置は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。そして、この冷凍サイクルは、室内凝縮器と室外熱交換器とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、また、蒸発器と室外熱交換器とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。圧縮機は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成される。室内凝縮器は、車室内に設けられ、室外熱交換器とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。室外熱交換器は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。蒸発器は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。アキュムレータは、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有し、気相部の冷媒を圧縮機に導出する。
【0018】
そして、本実施形態の制御弁は、蒸発器の下流側に設けられ、その蒸発器における冷媒の蒸発圧力を制御する蒸発圧力制御弁として機能する。すなわち、本実施形態の制御弁は、室内蒸発器の下流側と室外蒸発器の下流側にそれぞれ設けられ、電流供給によって弁部の開度を調整することにより蒸発器の下流側通路の開度を調整し、それにより蒸発器の蒸発圧力を調整する。なお、本実施形態では、その制御弁として通電有無によって開閉する開閉弁(オン/オフ弁)が用いられ、その一定時間あたりの開弁時間を調整することにより開度を調整する。変形例においては、弁部の開口面積そのものを調整可能な比例弁や差圧弁として構成してもよい。
【0019】
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。
図1および
図2は、第1実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【0020】
図1に示すように、制御弁101は、内部に弁機構を収容した弁本体102と、その弁機構を駆動するソレノイド104とを組み付けて構成される。ソレノイド104は、弁本体102におけるボディ105の一端部(上端部)に取り付けられている。ボディ105の他端部(下端部)には上流側通路につながる導入ポート110が設けられ、側部には下流側通路につながる導出ポート112が設けられている。導入ポート110と導出ポート112とをつなぐ内部通路には弁孔114が設けられ、その下流側開口端部に弁座116が形成されている。
【0021】
弁孔114の下流側の圧力室117には、有底円筒状の弁体118が配設されている。ボディ105の上端部から圧力室117に向けて円筒状のガイド部119が下方に延設されており、弁体118がガイド部119に摺動可能に外挿されている。弁体118とガイド部119は、弁孔114に同軸状に(同一軸線上に)配設されている。弁体118は、ガイド部119にガイドされつつ安定に支持される。弁体118とボディ105との間には、弁体118を開弁方向に付勢するスプリング120が介装されている。
【0022】
一方、ソレノイド104は、ボディ105の上端開口部を封止するように取り付けられている。ソレノイド104は、ボディ105を封止する接続部材107に連結されたコア130と、コア130を収容するように接続部材107に固定された有底円筒状のスリーブ132と、スリーブ132内でコア130に軸線方向に対向配置されたプランジャ134と、スリーブ132に外挿嵌合されたボビン136と、ボビン136に巻回された電磁コイル138とを含む。プランジャ134は、コア130に対して弁本体102の反対側、つまりスリーブ132の底部側に配設されている。そして、電磁コイル138を外部から覆うように樹脂モールドがなされている。ボビン136の上面には磁性体からなる環状プレート139が設けられている。環状プレート139は、ソレノイド104への通電時に磁気回路を構成するヨークとして機能する。
【0023】
コア130にはその軸線に沿って貫通孔131が設けられ、その貫通孔131を長尺状の作動ロッド142が貫通している。作動ロッド142は、その上端がプランジャ134の下面に当接し、下端が弁体118の底部に当接している。すなわち、作動ロッド142は、プランジャ134と弁体118との間に固定されることなく挟まれるように配設され、それらと一体に動作する。スリーブ132の底部とプランジャ134との間には背圧室146が形成される。プランジャ134は段付円柱状をなし、その外周面の所定箇所には軸線に平行な連通溝143が形成され、さらに上半部にはその連通溝143と背圧室146とを連通させる連通路144が形成されている。このような構成により、コア130とプランジャ134との間の空間と背圧室146との連通状態が維持される。
【0024】
スリーブ132の上端部はその内径が縮径されており、その縮径部に形成された段部により係止部148が構成されている。係止部148は、プランジャ134の軸線方向上方への変位を規制する。一方、プランジャ134の上端部はその外径が縮径されており、その縮径部には凹状の嵌合溝150が周設されている。そして、その嵌合溝150にOリング152(「環状の緩衝部材」として機能する)が嵌着されている。ソレノイド104の非通電時には、このOリング152と係止部148とにより消音機構が構成される。
【0025】
すなわち、ソレノイド104を通電状態から非通電状態(オンからオフ)に切り替えると、図示のようにプランジャ134が軸線方向上方に変位するが、係止部148がOリング152を係止することによりその変位を規制する。このOリング152が緩衝部材として機能し、係止部148に係止される際に変形して衝撃を吸収することで、プランジャ134が係止部148に直接係止される場合よりも衝突音の発生が抑制される。
【0026】
また、スリーブ132の上端部が縮径されており、その縮径部のテーパ面にてOリング152に当接するように構成されている。その結果、Oリング152が係止部148に係止されたときには、Oリング152に係止部148からの反力として斜め下方の垂直抗力が作用するようになる。すなわち、Oリング152は反力としてプランジャ134の軸線方向の成分のみならず、軸線と直角方向の成分を受けるようになる。しかも、その直角方向の成分が半径方向内向きに作用することから、Oリング152を内側に逃がすことができ、軸線方向への偏った変形を防止または抑制できるようになる。このような構成により、ソレノイド104のオン・オフによりOリング152に圧縮応力が繰り返し作用するとしても、Oリング152に永久歪みを発生し難くすることができ、その消音機能を長期にわたって安定に維持できるようになる。
【0027】
嵌合溝150は、ソレノイド104への通電時にプランジャ134がコア130に最も近接した状態において環状プレート139よりも上方に位置するようプランジャ134に形成されている(
図2参照)。その結果、ソレノイド104の通電時においてもOリング152がヨークの外側(環状プレート139よりも上方)に位置し、磁気特性にロスが生じにくい構成となっている。なお、変形例においては、磁気特性のロスが予め定める基準値以下となる範囲でOリング152とヨークとが部分的にオーバラップする構成としてもよい。例えば、プランジャ134がコア130に最も近接した状態において、Oリング152と環状プレート139とが半径方向に部分的にオーバラップするものの、環状プレート139とプランジャ134との間にOリング152を介することのない磁路を確保可能な構成としてもよい。
【0028】
また、コア130の下端部が外方に加締められることにより上述のガイド部119が固定されている。弁体118は、ガイド部119に摺動可能に外挿されている。このような構成により、弁体118とガイド部119との間に背圧室154が区画形成される。背圧室154は、コア130と作動ロッド142との間のクリアランス、コア130とプランジャ134との間の空間、連通溝143、連通路144を介して背圧室146と連通している。弁体118の底部には、背圧室154と上流側の圧力室とを連通させる連通孔122(「リーク通路」として機能する)が形成されている。このため、
図2に示すような制御弁101の制御時には背圧室154に上流側圧力Pinが満たされるようになる。
【0029】
以上のように構成された制御弁101は、
図1に示すようにソレノイド104がオフにされた状態(非通電状態)では、コア130とプランジャ134との間に吸引力が作用しないため、弁体118がスプリング120により開弁方向に付勢されて全開状態となる。一方、
図2に示すようにソレノイド104がオンにされた状態(通電状態)では、コア130とプランジャ134との間に吸引力が作用するため、そのソレノイド力が作動ロッド142を介して弁体118に伝達される。その結果、弁体118が閉弁方向に動作する。
【0030】
本実施形態では、連通孔122を介して背圧室154に上流側圧力Pinを導入することにより、上流側圧力Pinと下流側圧力Poutとの差圧(Pin−Pout)があっても、その差圧が弁体118に作用する影響を大きくキャンセルし、比較的小さなソレノイド力で弁体118を閉弁方向に駆動することが可能となっている。なお、断面積Bは、弁体118におけるガイド部119との摺動部の内径を直径とする断面積に相当し、本実施形態では断面積Aと断面積Bとを実質的に同一に設定している。
【0031】
また、本実施形態では連通孔122を十分に小さくすることにより、連通孔122を介した背圧室154への冷媒の導入出によって弁体118の動作を緩和するダンパ機能が発揮されるようになる。本実施形態においては、制御弁101のソレノイド104の通電状態(オン)と非通電状態(オフ)との時間の比率、つまりオン・オフのデューティ比を調整することにより、その前後差圧の平均値である平均差圧を適切な値に制御することができる。
【0032】
次に、本実施形態の主要部の構成および動作の詳細について説明する。
図3および
図4は、弁体の摺動部の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図3(A)は
図1に対応し、ソレノイド104がオフの状態を示す部分拡大断面図である。
図3(B)は
図3(A)のA−A矢視断面図であり、
図3(C)は
図3(A)のB−B矢視断面図である。
図4(A)は
図2に対応し、ソレノイド104がオンの状態を示す部分拡大断面図である。
図4(B)は
図4(A)のC−C矢視断面図である。
【0033】
図3に示すように、ガイド部119は、その上半部160の外周が概ね六角形状とされ、下半部162の外周が円形状とされている。上半部160の外周の頂部はR形状とされ、各頂部をつなぐ外接円の径が下半部162の外径と等しく設定されている。一方、弁体118は、その上半部164の内周が円形状とされ、下半部166の内周が上半部よりも大きな多角形状(本実施形態では概ね12角形状)とされている。そして、下半部166の内接円の径が上半部164の内径に等しく設定されている。
【0034】
また、
図4に示すように、弁体118の上半部164の内周面とガイド部119の下半部162の外周面とは、その内径と外径とがほぼ等しく設定され、弁体118の上半部164がガイド部119の下半部162と対向する位置に変位したときには、両者が全周にわたって当接する相補形状となっている。
【0035】
このような構成により、弁体118とガイド部119とが半径方向に重なるオーバラップ部には、弁体118の内周面とガイド部119の外周面との間に摺動部170(太線参照)と間隙部172が形成される。ソレノイド104がオフにされた開弁状態においては、
図3に示すように、弁体118とガイド部119とのオーバラップ部における間隙部172の割合が摺動部170の割合よりも大きくなる。その結果、連通孔122から導入された冷媒が、間隙部172を通って背圧室154の外部に排出されやすくなる。
【0036】
一方、ソレノイド104がオンにされた閉弁状態においては、
図4に示すように、弁体118とガイド部119とのオーバラップ部において摺動部170が周方向につながる状態が形成される。このとき、摺動部170のクリアランスの断面が連通孔122の断面よりも小さくなり、背圧室154の圧力が上流側圧力Pinに安定に維持される。
【0037】
図5は、弁体の摺動部における異物の排出機能を表す説明図である。
図5(A)は
図4(A)のD部拡大図に対応し、
図5(B)は
図3(A)のD部拡大図に対応する。
閉弁状態から開弁状態へ変化すると、弁体118とガイド部119とのオーバラップ部の状態が
図5(A)に示す状態から
図5(B)に示す状態に変化する。すなわち、弁体118とガイド部119とのクリアランスが大きくなり、弁体118とガイド部119との間隙を介して冷媒が排出されやすくなる。このため、仮に
図5(A)に示すように、弁体118とガイド部119との間に異物(白丸参照)が滞留していた場合には、
図5(B)に示すように、その異物の排出を促進することができる(二点鎖線矢印参照)。
【0038】
[第2実施形態]
本実施形態の制御弁は、弁体およびガイド部の構成が異なる以外は第1実施形態と同様の構成を有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。
図6および
図7は、第2実施形態に係る弁体周辺の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図6(A)はソレノイドがオフの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図6(B)は
図6(A)のA−A矢視断面図であり、
図6(C)は
図6(A)のB−B矢視断面図である。
図7(A)はソレノイドがオンの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図7(B)は
図7(A)のC−C矢視断面図である。
【0039】
本実施形態においては、第1実施形態の弁体118に代えて弁体218を採用し、ガイド部119に代えてガイド部219を採用する。
図6に示すように、本実施形態の制御弁は、ガイド部219の上半部260が断面円環状に形成され、その外径が弁体218の上半部164の内径よりも小さく構成されている。また、弁体218の下半部266が断面円環状に形成され、その内径がガイド部219の下半部162の外径よりも大きく構成されている。このため、ソレノイド104がオフにされた開弁状態においては、弁体218とガイド部219とのオーバラップ部の全体にわたって間隙部172が形成され、背圧室154の冷媒が、第1実施形態よりも外部に排出されやすくなる。
【0040】
なお、本実施形態では図示のように、作動ロッド142の下端部が弁体218の底部中央に圧入されることで、弁体218が作動ロッド142に固定される。このため、図示の開弁状態においても弁体218の軸線方向への安定した動作を維持することができる。
【0041】
一方、
図7に示すように、弁体218の上半部164の内径とガイド部219の下半部162の外径とはほぼ等しく設定されている。このため、ソレノイド104がオンにされた閉弁状態においては、弁体218とガイド部219とのオーバラップ部において摺動部170が周方向につながる状態が形成される。
【0042】
すなわち、本実施形態の制御弁によれば、閉弁時においてはオーバラップ部において摺動部170が周方向につながる状態が形成されるが、開弁時においてはオーバラップ部の全体にわたって間隙部172が形成される。このため、仮に閉弁時において弁体218とガイド部219との間に異物が滞留していたとしても、開弁動作によってその異物を速やかに排出できるようになる。
【0043】
[第3実施形態]
本実施形態の制御弁は、弁体およびガイド部の構成が異なる以外は第1実施形態と同様の構成を有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。
図8および
図9は、第3実施形態に係る弁体周辺の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図8(A)はソレノイドがオフの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図8(B)は
図8(A)のA−A矢視断面図であり、
図8(C)は
図8(A)のB−B矢視断面図である。
図9(A)はソレノイドがオンの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図9(B)は
図9(A)のC−C矢視断面図である。
【0044】
本実施形態においては、第1実施形態の弁体118に代えて弁体318を採用し、ガイド部119に代えてガイド部319を採用する。
図8に示すように、弁体318は、断面円環状に形成され、その内径が軸線方向の全体にわたって一定とされている。一方、ガイド部319には、その軸線方向中間部に凸面部362が周設されている。凸面部362は、その全周にわたって弁体318の内周面に当接するよう、その外径が弁体318の内径とほぼ等しく設定されている。ガイド部319の外周面における凸面部362の上下には、軸線に平行な突条320が等間隔で周設されている。本実施形態では8つの突条320が軸線を中心として45度おきに設けられ、各突条320の先端を結ぶ外接円の径が弁体318の内径とほぼ等しく設定されている。
【0045】
このような構成により、
図8に示す開弁時においても
図9に示す閉弁時においても、ガイド部319の凸面部362と弁体318の内周面が常に当接し、弁体318とガイド部319とのオーバラップ部の一部に摺動部170が周方向につながる状態が常に形成されるようになる。このため、仮に弁体318とガイド部319との間に異物が滞留した場合、第1,第2実施形態のようにはその排出を促進することができない。しかし、凸面部362が軸線方向の一部の領域に限られており、その前後には間隙部172が比較的大きく形成されるため、弁体318が開弁方向に動作する過程で異物を巻き込みつつ外部へ押し出すようになる。したがって、弁体とガイド部とが軸線方向のほぼ全域にわたって当接するような構成と比較すれば、異物の排出しやすくなる。
【0046】
[第4実施形態]
本実施形態の制御弁は、弁体およびガイド部の構成が異なる以外は第1実施形態と同様の構成を有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。
図10および
図11は、第4実施形態に係る弁体周辺の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図10(A)はソレノイドがオフの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図10(B)は
図10(A)のA−A矢視断面図であり、
図10(C)は
図10(A)のB−B矢視断面図である。
図11(A)はソレノイドがオンの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図11(B)は
図11(A)のC−C矢視断面図である。
【0047】
本実施形態においては、第1実施形態の弁体118に代えて弁体418を採用し、ガイド部119に代えてガイド部419を採用する。
図10に示すように、ガイド部419は、断面円環状に形成され、その外径が軸線方向の全体にわたって一定とされている。一方、弁体418は、有底円筒状の本体420に円筒状の摺動部材422を内挿するように組み付けて構成される。摺動部材422は、本体420の上半部に圧入されており、その内径がガイド部419の外径とほぼ等しく設定され、その内周面が全周にわたってガイド部419の外周面に当接する凸面部となっている。また、本体420の下半部の内周面には、軸線に平行な突条424が等間隔で周設されている。本実施形態では12の突条424が軸線を中心として30度おきに設けられ、各突条424の先端を結ぶ内接円の径がガイド部419の外径とほぼ等しく設定されている。
【0048】
このような構成により、
図10に示す開弁時においても
図11に示す閉弁時においても、摺動部材422の内周面(凸面部)とガイド部419の外周面が常に当接し、弁体418とガイド部419とのオーバラップ部に摺動部170が周方向につながる状態が常に形成されるようになる。このため、仮に弁体418とガイド部419との間隙に異物が滞留した場合、第1,第2実施形態のようにはその排出を促進することができない。しかし、摺動部材422が弁体418の開口端部に限定して設けられるため、弁体とガイド部とが軸線方向のほぼ全域にわたって当接するような構成と比較すれば、異物の排出しやすくなる。一方、弁体418を別体で形成された本体420と摺動部材422とを組み付けて構成するようにしたため、凸面部の形成が容易になるというメリットがある。
【0049】
[第5実施形態]
本実施形態の制御弁は、弁体およびガイド部の構成が異なる以外は第1実施形態と同様の構成を有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。
図12および
図13は、第5実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【0050】
図12に示すように、制御弁501は、弁本体502とソレノイド504とを組み付けて構成される。ボディ105を封止する接続部材507にガイド部519が固定されている。ガイド部519は、圧力室117に向けて下方に延設されており、弁体518がガイド部519に摺動可能に内挿されている。すなわち、本実施形態においては、ガイド部519が弁体518の外側に設けられている。
【0051】
本実施形態においても、弁孔114の断面積Aと、弁体518におけるガイド部519との摺動部の外径を直径とする断面積Bとを実質的に同一に設定し、弁体518に作用する冷媒の圧力の影響が大きくキャンセルされるようにしている。
【0052】
作動ロッド142は、その上端部がプランジャ534の下端部に圧入され、下端部が弁体518の底部に圧入されている。すなわち、作動ロッド142は、プランジャ534および弁体518の双方に固定されている。スプリング120は、コア530とプランジャ534との間に介装され、プランジャ534を介して弁体518を開弁方向に付勢する。
【0053】
制御弁501は、
図12に示すようにソレノイド504がオフにされた状態では、コア530とプランジャ534との間に吸引力が作用しないため、弁体518はスプリング120の付勢力により全開状態となる。一方、
図13に示すようにソレノイド504がオンにされた状態では、コア530とプランジャ534との間に吸引力が作用するため、そのソレノイド力が作動ロッド142を介して弁体518に伝達される。その結果、弁体518が閉弁方向に動作する。
【0054】
図14および
図15は、弁体周辺の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図14(A)はソレノイドがオフの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図14(B)は
図14(A)のA−A矢視断面図であり、
図14(C)は
図14(A)のB−B矢視断面図である。
図15(A)はソレノイドがオンの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図15(B)は
図15(A)のC−C矢視断面図である。
【0055】
図14に示すように、ガイド部519は、その上半部560の内周が六角形状とされ、下半部562の内周が円形状とされている。そして、上半部560の内接円の径が下半部562の内径と等しくなるように設定されている。一方、弁体518は、その上半部564および下半部566ともに断面円環状に形成されているが、下半部566の外径が上半部564よりも小さく設定されている。
【0056】
また、
図15に示すように、弁体518の上半部564の内周面とガイド部519の下半部562の外周面とは、その内径と外径とがほぼ等しく設定され、弁体518の上半部564がガイド部519の下半部562と対向する位置に変位したときには、両者が全周にわたって当接する相補形状となっている。
【0057】
このような構成により、
図15に示す閉弁時においては、弁体518とガイド部519とのオーバラップ部において摺動部170が周方向につながる状態が形成される。一方、
図14に示す開弁時においては、弁体518とガイド部519とのオーバラップ部に摺動部170と間隙部172が形成される。このとき、弁体518とガイド部519とのオーバラップ部における間隙部172の割合が摺動部170の割合よりも大きくなる。その結果、連通孔122から導入された冷媒が、間隙部172を通って背圧室154の外部に排出されやすくなる。
【0058】
[第6実施形態]
本実施形態の制御弁は、弁体およびガイド部の構成が異なる以外は第1実施形態と同様の構成を有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。
図16および
図17は、第6実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【0059】
図16に示すように、制御弁601は、弁本体602とソレノイド604とを組み付けて構成される。ボディ105を封止する接続部材607は、その中央部が下方、つまりボディ105の内方に延出して円筒状の区画部608を構成している。接続部材607の内方にはコア630の下半部が挿通されている。また、区画部608の下端との間にシール部材610を挟持するように支持部材612が組み付けられている。シール部材610は、円環状をなす薄膜状の弾性体(例えばゴム)からなり、その内周端部の厚肉部が区画部608と支持部材612との間に挟まれるようにして支持されている。シール部材610の薄肉部は、区画部608および支持部材612の各外周面よりも半径方向外向きに延出している。
【0060】
区画部608の下端は、その中央部が周縁部よりも下方に突出して円ボス状をなし、さらにその中央部と周縁部との境界部に円形の環状溝が形成されている。一方、支持部材612は、外周端部に厚肉部を有する段付円環状をなしている。支持部材612は、その上面中央部が区画部608の下面中央(円ボス部下端面)に当接するように組み付けられ、コア630の下端部が外方に加締められることにより区画部608に固定されている。
【0061】
区画部608の下面と支持部材612の上面との間には、区画部608の環状溝の位置に円環状の収容部614が形成され、その収容部614から半径方向外向きに延びるようにスリット状の挿通部616が形成されている。シール部材610は、その厚肉部が収容部614に収容され、その薄肉部が挿通部616を介して半径方向外向きに突出するように配設されている。なお、支持部材612には、上下に貫通して収容部614を内外に連通させる連通孔620が設けられている。
【0062】
弁体618は、区画部608に外挿されている。弁体618の上端開口部には、半径方向内向きにやや突出した係合部622が設けられている。そして、シール部材610がその上面の外周縁部にて係合部622に着脱することにより、背圧室154の上端開口部を開閉できるように構成されている。
【0063】
コア630にはその軸線に沿って貫通孔131が設けられ、その貫通孔131を作動ロッド142が貫通している。なお、コア630および区画部608は、作動ロッド142を摺動可能に支持することにより弁体618を軸線方向にガイドするガイド部として機能する。作動ロッド142は、その上端がプランジャ134の下面に当接し、下端が弁体618の底部中央に設けられた凹部と嵌合している。本実施形態において、作動ロッド142は弁体618に当接するが固定されてはいない。すなわち、作動ロッド142は、プランジャ134と弁体618との間に固定されることなく挟まれるように配設され、それらと一体に動作する。変形例おいては、作動ロッド142の下端部を弁体618に圧入するなどして固定してもよい。
【0064】
なお、
図17に示すように、弁孔114の断面積Aと、シール部材610が係合部622に着座したときの有効受圧径を直径とする断面積Bとを実質的に同一に設定し、弁体618に作用する冷媒の圧力の影響が大きくキャンセルされるようにしている。
【0065】
以上のように構成された制御弁601は、
図16に示すようにソレノイド604がオフにされた状態では、コア630とプランジャ134との間に吸引力が作用しないため、弁体618はスプリング120の付勢力により全開状態となる。一方、
図17に示すようにソレノイド604がオンにされた状態では、コア630とプランジャ134との間に吸引力が作用するため、そのソレノイド力が作動ロッド142を介して弁体618に伝達される。その結果、弁体618が閉弁方向に動作する。
【0066】
図18および
図19は、弁体周辺の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図18(A)はソレノイドがオフの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図18(B)は
図18(A)のA−A矢視断面図であり、
図18(C)は
図18(A)のB−B矢視断面図である。
図19(A)はソレノイドがオンの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図19(B)は
図19(A)のC−C矢視断面図である。
【0067】
ソレノイド604がオフにされた全開状態においては、
図18に示すように、シール部材610が係合部622から離間し、シール部材610の外周面と弁体618の内周面との間に所定のクリアランス672が形成される。一方、係合部622と区画部608との間には、それより大きなクリアランス674が形成される。すなわち、背圧室154の上端部開口部が開放される。しかも、弁体618と区画部608との間には摺動部が存在しないため、弁体618と区画部608とのオーバラップ部の全域にわたって冷媒の流れを許容する間隙通路が形成されるようになる。このため、弁体618と区画部608との間に異物が滞留していた場合には、その異物の排出を効果的に促進することができる。
【0068】
一方、ソレノイド604がオンにされた閉弁状態においては、
図19に示すように、シール部材610が係合部622に着座する。このとき、シール部材610の周縁部が弾性変形しつつ係合部622に密着するため、背圧室154の上端開口部を気密に封止することができ、背圧室154の圧力が上流側圧力Pinに安定に維持される。また、このようにシール部材610が弾性変形可能であるため、その組み付け公差が吸収される。このため、閉弁時における弁体618とシール部材610との位置関係を厳密に調整する必要がなくなり、設計の自由度が向上する。
【0069】
なお、上述のように支持部材612に連通孔620を設けたことにより、シール部材610に半径方向内側および外側からそれぞれ作用する圧力のバランスを保つことができ、シール部材610の内径方向への変形を防止または抑制することができる。すなわち、
図18に示した開弁時においてはシール部材610と弁体618とのクリアランスを設計どおりに維持することができ、
図19に示した閉弁時においてはシール部材610を係合部622に確実に着座させてそのシール機能を維持することができる。
【0070】
[第7実施形態]
本実施形態の制御弁は、区画部およびシール部材の構成が異なる以外は第6実施形態と同様の構成を有する。このため、第6実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。
図20および
図21は、第7実施形態に係る弁体周辺の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図20(A)はソレノイドがオフの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図20(B)は
図20(A)のA−A矢視断面図であり、
図20(C)は
図20(A)のB−B矢視断面図である。
図21(A)はソレノイドがオンの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図21(B)は
図21(A)のC−C矢視断面図である。
【0071】
本実施形態においては、区画部708(接続部材)がコア730と一体成形されている。そして、シール部材710が区画部708の下面に装着されている。シール部材710は、薄膜円環状の弾性体(例えばゴムパッキン)からなり、その内半部が区画部708の下面に焼き付けられている。このような構成により、第6実施形態と同様の機能が発揮される。
【0072】
すなわち、ソレノイドがオフにされた全開状態においては、
図20に示すように、シール部材710の外周面と弁体618の内周面との間にクリアランス672が形成され、係合部622と区画部708との間にはそれより大きなクリアランス674が形成される。しかも、弁体618と区画部708とのオーバラップ部の全域にわたって冷媒の流れを許容する間隙通路が形成される。このため、連通孔122から導入された冷媒が、弁体618と区画部708との間隙通路を通って背圧室154の外部に排出され、弁体618と区画部708との間に異物が滞留していた場合には、その異物の排出を促進する。一方、ソレノイドがオンにされた閉弁状態においては、
図21に示すように、シール部材710が係合部622に着座する。このとき、シール部材710の周縁部が弾性変形しつつ係合部622に密着し、背圧室154の上端開口部を気密に封止する。
【0073】
[第8実施形態]
本実施形態の制御弁は、区画部およびシール部材の構成が異なる以外は第6実施形態と同様の構成を有する。このため、第6実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。
図22は、第8実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
図23および
図24は、第8実施形態に係る弁体周辺の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図23(A)はソレノイドがオフの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図23(B)は
図23(A)のA−A矢視断面図であり、
図23(C)は
図23(A)のB−B矢視断面図である。
図24(A)はソレノイドがオンの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図24(B)は
図24(A)のC−C矢視断面図である。
【0074】
制御弁801は、弁本体802とソレノイド804とを組み付けて構成される。区画部808は、第7実施形態と同様にコア830と一体成形されている。そして、シール部材810がOリングからなり、区画部808の下端部の外周面に嵌着されている。このような構成により、第6実施形態と同様の機能が発揮される。
【0075】
すなわち、ソレノイドがオフにされた全開状態においては、
図23に示すように、シール部材810の外周面と弁体618の内周面との間にクリアランス872が形成され、係合部622と区画部808との間にはそれより大きなクリアランス674が形成される。しかも、弁体618と区画部808とのオーバラップ部の全域にわたって冷媒の流れを許容する間隙通路が形成される。このため、連通孔122から導入された冷媒が、弁体618と区画部808との間隙通路を通って背圧室154の外部に排出され、弁体618と区画部808との間に異物が滞留していた場合には、その異物の排出を促進する。一方、ソレノイドがオンにされた閉弁状態においては、
図24に示すように、シール部材810が係合部622に着座する。このとき、シール部材810の周縁部が弾性変形しつつ係合部622に密着し、背圧室154の上端開口部を気密に封止する。
【0076】
本実施形態においては、シール部材810をOリングで構成したため、区画部808への装着の際には、そのOリングを区画部808の下端部にワンタッチで嵌合させるだけでよく、製造コストを抑えることができる。ただし、Oリングは比較的厚みがあるため、パッキンほどの可撓性を有していない。このため、設計自由度の観点からは、第6,第7実施形態に示したような薄膜状のシール部材を用いるのが好ましい。
【0077】
[第9実施形態]
本実施形態の制御弁は、弁体およびシール部材の構成が異なる以外は第8実施形態と同様の構成を有する。このため、第8実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。
図25および
図26は、第9実施形態に係る弁体周辺の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図25(A)はソレノイドがオフの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図25(B)は
図25(A)のA−A矢視断面図であり、
図25(C)は
図25(A)のB−B矢視断面図である。
図26(A)はソレノイドがオンの状態における弁体周辺の部分拡大断面図である。
図26(B)は
図26(A)のC−C矢視断面図である。
【0078】
本実施形態においては、区画部908の下端部に嵌着されたシール部材910が、弁体918の係合部922に挿抜される。すなわち、係合部922が第8実施形態の係合部622に比べて軸線方向に大きく形成される一方、シール部材910が第8実施形態のシール部材810に比べて小さなOリングにて構成されている。このような構成によっても、第8実施形態と同様の機能が発揮される。
【0079】
すなわち、ソレノイドがオフにされた全開状態においては、
図25に示すように、シール部材910の外周面と弁体918の内周面との間にクリアランス972が形成され、係合部922と区画部908との間にはそれより大きなクリアランス974が形成される。しかも、弁体918と区画部908とのオーバラップ部の全域にわたって冷媒の流れを許容する間隙通路が形成される。このため、連通孔122から導入された冷媒が、弁体918と区画部908との間隙通路を通って背圧室154の外部に排出され、弁体918と区画部908との間に異物が滞留していた場合には、その異物の排出を促進する。一方、ソレノイドがオンにされた閉弁状態においては、
図26に示すように、シール部材910が係合部922に着座する。このとき、シール部材910が係合部922に沿って摺動し、背圧室154の上端開口部を気密に封止する。
【0080】
本実施形態においては、シール部材910をOリングで構成するとともに、係合部922に対して挿抜される構成としたため、その摺動範囲を十分にとることにより、第6,第7実施形態と同様に設計自由度を向上させることができる。ただし、Oリングのシール性能が高いためにその摺動抵抗も大きくなり、弁体918を開閉させる際に第6,第7実施形態よりも大きな駆動力を要することになる。
【0081】
[第10実施形態]
本実施形態の制御弁は、いわゆるパイロット作動式の電磁弁として構成される。
図27および
図28は、第10実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
図27に示すように、制御弁1は、弁本体2とソレノイド4とを組み付けて構成される。なお、本実施形態の制御弁1は、図示略の膨張弁(温度式膨張弁)に組み付けられ、その膨張弁の弁部の下流側で冷媒の流れを許容または遮断するシャットオフバルブとして機能する。制御弁1は、その膨張弁と共用のボディ5を備える。
【0082】
ボディ5には、図示略の導入ポートにつながる導入通路10と、導出ポート12につながる導出通路14が形成されている。そして、導入通路10と導出通路14との中間部に弁孔16が設けられ、その上流側開口端部に弁座18が形成されている。ボディ5とソレノイド4とに囲まれる圧力室、つまり弁孔16の上流側の圧力室20には、段付円柱状の弁体22が配設されている。その弁体22が弁座18に着脱することにより主弁が開閉される。また、ソレノイド4側から圧力室20に向けて段付円筒状のガイド部24(「区画部」として機能する)が延設され、弁体22がガイド部24に内挿されている。弁体22とガイド部24は、弁孔16に同軸状に(同一軸線上に)配設されている。弁体22は、ガイド部24との間に背圧室26を区画する。
【0083】
弁体22は、円筒状の本体30の内方に円柱状の弾性体32(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やゴム)を固定したものであり、その弾性体32が弁座18に着座することにより、主弁のシール性を向上させる。弾性体32にはその軸線に沿ってパイロット弁孔34が貫通している。パイロット弁孔34の背圧室26側の端部にはパイロット弁座36が形成されている。本体30の周縁部近傍には、背圧室26の内外を連通する小径のオリフィス37(「リーク通路」として機能する)が形成されている。また、本体30の外周面には凹溝が周設され、Oリング38(「シール部材」として機能する)が嵌着されている。弁体22は、そのOリング38にてガイド部24の一部に摺動可能に構成されている。弁体22は、ガイド部24にガイドされつつ安定に支持される。ガイド部24の先端部と弁体22との間には、弁体22を開弁方向に付勢するスプリング40(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0084】
一方、ソレノイド4は、圧力室20を封止するようにボディ5の端面に取り付けられている。ソレノイド4は、ガイド部24と一体成形されたコア50と、コア50に固定されたスリーブ52と、スリーブ52内でコア50に対向配置されたプランジャ54と、スリーブ52に外挿嵌合されたボビン56と、ボビン56に巻回された電磁コイル58とを含む。プランジャ54は、コア50に対して弁本体2の反対側、つまりスリーブ52の底部側に配設されている。そして、電磁コイル58を外部から覆うように樹脂モールドがなされ、そのモールド部のさらに外側を覆うようにケース60が設けられている。ケース60は、磁気回路を構成するヨークとしても機能する。モールド部の一端はケース60の外方に延出してコネクタ62となっており、コネクタ62の接続端子64が電磁コイル58に接続されている。ケース60は、シールリング66を介してボディ5と連結されている。
【0085】
コア50は段付円筒状をなし、その下半部が拡径されてガイド部24と連設されている。プランジャ54は段付円筒状をなし、コア50とは反対側に背圧室68を形成する。背圧室68は、プランジャ54の側部に設けられた連通路70、プランジャ54の外周面に形成された連通溝(図示せず)、コア50とプランジャ54との間の空間、およびコア50と作動ロッド72との間のクリアランスを介して背圧室26と連通している。このため、
図28に示すような制御弁1の制御時には背圧室26および背圧室68の双方に上流側圧力Pinが満たされるようになる。
【0086】
コア50とプランジャ54の内方には作動ロッド72が同軸状に挿通されている。作動ロッド72は、その上端部にやや拡径された係止部74を有し、下端部がテーパ状のパイロット弁体76となっている。パイロット弁体76は、背圧室26に延出し、パイロット弁座36に着脱してパイロット弁を開閉する。スリーブ52の底部と係止部74との間には、パイロット弁体76を閉弁方向に付勢するスプリング78(「付勢部材」として機能する)が介装されている。また、プランジャ54とコア50との間には、プランジャ54をコア50から離間させる方向に付勢するスプリング80(「付勢部材」として機能する)が介装されている。なお、本実施形態においては、スプリング80のほうがスプリング78よりもばね荷重が大きくなるように設定されている。
【0087】
このような構成により、パイロット弁体76は、基本的にプランジャ54と一体に動作するが、パイロット弁体76がパイロット弁座36に着座した際には、プランジャ54と相対変位可能となる。これにより、ソレノイド4をオンにしたときにその吸引力がパイロット弁体76に直接作用しない、つまりスプリング78の付勢力のみでパイロット弁を閉じることができるため、パイロット弁座36へのダメージ(変形やつぶれなど)を低減できる。なお、プランジャ54の上端部には、環状の弾性体82(例えばゴム)が嵌着されている。これにより、ソレノイド4をオフにしたときにプランジャ54がスリーブ52に衝突するときの衝突音を抑えることができる。
【0088】
以上のように構成された制御弁1は、
図28に示すようにソレノイド4がオンにされると(通電状態)、コア50とプランジャ54との間に吸引力が作用するため、作動ロッド72はスプリング78の付勢力により閉弁方向に変位可能となり、パイロット弁体76がパイロット弁座36に着座してパイロット弁を閉弁させる。このとき、導入通路10の冷媒がオリフィス37を介して背圧室26に導入されるため、弁体22に閉弁方向の差圧が大きく作用し、スプリング40の付勢力に抗して主弁を閉弁させる。ソレノイド4がオンに維持される状態においては、主弁およびパイロット弁の双方が閉弁状態を維持するため、背圧室26の圧力は維持される。その結果、主弁の閉弁状態も安定に維持される。
【0089】
一方、
図27に示すようにソレノイド4がオンからオフ(非通電状態)にされると、コア50とプランジャ54との間の吸引力がなくなるため、パイロット弁体76が吊り上げられてパイロット弁座36から離間し、パイロット弁が開弁状態となる。この結果、背圧室26内の冷媒がパイロット弁孔34を介して下流側に導出され、背圧室26の圧力が低下する。ここで、オリフィス37の通路断面はパイロット弁孔34の通路断面よりも小さいため、弁体22には一時的に開弁方向の差圧が作用する。この差圧による力とスプリング40の付勢力により弁体22が押し上げられ、主弁が速やかに開放される。
【0090】
次に、本実施形態の主要部の構成および動作の詳細について説明する。
図29および
図30は、弁体の摺動部の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
図29(A)は
図27のA部拡大図であり、ソレノイド4がオフの状態を示す。
図29(B)は
図29(A)のB−B矢視断面図であり、
図29(C)は
図29(A)のC−C矢視断面図である。
図30(A)は
図28のA部拡大図であり、ソレノイド4がオンの状態を示す。
図30(B)は
図30(A)のB−B矢視断面図であり、
図30(C)は
図30(A)のC−C矢視断面図である。
【0091】
図29(A)および
図30(A)に示すように、ガイド部24は、弁孔16の近傍に断面円形状の小径部90(「係合部」として機能する)を有し、弁孔16から離間した位置に断面円形状の大径部92を有する。そして、小径部90の内径がOリング38の外径とほぼ等しく設定されている。このような構成により、弁体22とガイド部24とが半径方向にオーバラップするオーバラップ部の最小クリアランスは、Oリング38の位置に形成される。
【0092】
なお、図示のように、Oリング38が収容される凹溝94の底面とそのOリング38との間には空隙が形成される。このような構成により、Oリング38がその前後差圧により軸線方向に圧縮され、半径方向内向きに大きくなったとしても、Oリング38が凹溝94の底面から反力を受け難い構成となっている。それにより、Oリング38と小径部90との間の摺動抵抗が過大となるのを防止し、弁体22の円滑な動作を維持している。
【0093】
以上のような構成において、
図30に示す主弁の閉弁時においては、Oリング38が小径部90と対向配置される。このため、
図30(B)に示すように、最小クリアランスCL1がゼロ(極小)となる。
図30(C)に示すように、本体30の位置においてもクリアランスCL2が小さくなる。なお上述のように、凹溝94の底面とOリング38との間には微小な空隙が形成されるが、主弁が閉弁される過程でOリング38が凹溝94の側面に押しつけられて密着し、閉弁状態においてその密着状態が維持されるため、Oリング38と凹溝94との間隙を介して冷媒が漏洩することもなく、安定した閉弁状態を維持することができる。
【0094】
一方、
図29に示す開弁時においては、Oリング38が大径部92と対向配置される。このため、
図29(B)に示すように、最小クリアランスCL1が閉弁時よりも大きくなる。
図29(C)に示すように、本体30の位置においてもクリアランスCL2が軸線方向全体にわたって大きくなる。この結果、仮に閉弁時において弁体22とガイド部24との間に異物が滞留していた場合には、開弁時にその異物の排出を促進することができる。その結果、異物の噛み込みによる弁体22のロックを効果的に防止できる。
【0095】
また、例えば制御弁1が組み付けられる膨張弁が冷凍サイクルに設置される場合、その設置当初に冷凍サイクル内に冷媒を充填させるための真空引きが行われ、制御弁1に逆流が流れることが想定される。このような場合、圧力の大小関係が逆転するため、パイロット弁孔34を介して背圧室26に高圧の冷媒が導入されるが、主弁が一旦開弁すると、弁体22とガイド部24とのクリアランスが大きく維持されるため、弁体22を閉弁させるだけの差圧は生じ難い。すなわち、冷凍サイクルに冷媒を充填させる際に主弁が閉じてそれを困難にするといった事態が防止される。言い換えれば、シャットオフバルブとして設けられても、冷凍サイクルへの冷媒の充填を促進することができる。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0097】
上記実施形態では、弁体とガイド部との相補形状となる部分を円形にて構成する例を示したが、例えば多角形状などに構成してもよい。
【0098】
上記実施形態では、上述の制御弁を室内蒸発器および室外蒸発器の双方の下流側にそれぞれ設ける例を示したが、いずれかの蒸発器の下流側にのみ設けるようにしてもよい。例えば、室内蒸発器の下流側に制御弁を設け、室外熱交換器(室外蒸発器として作用するとき)の下流側には制御弁を設けない構成としてもよい。
【0099】
上記実施形態では、本発明の制御弁を、蒸発器における冷媒の蒸発圧力を制御する蒸発圧力制御弁として構成する例を示したが、通電有無によって開閉するその他の開閉弁として構成してもよい。
【0100】
上記実施形態では、本発明の制御弁を、外部から電気的に開度を調整するためのアクチュエータとしてソレノイドを備える電磁弁として構成した例を示したが、例えばモータをアクチュエータとする電動弁など、その他の電気駆動弁として構成することもできる。また、本発明の制御弁を電気自動車の冷暖房装置に適用する例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車の冷暖房装置にも適用可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機として電動圧縮機を採用する例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。さらに、車両に限らず電気駆動弁を搭載する装置に適用可能であることはもちろんである。
【0101】
上記第6〜第9実施形態では、背圧室の開口端部を封止するシール部材を区画部側に設ける例を示したが、弁体側に設けるようにしてもよい。具体的には、弁体に区画部側に延びるシール部材を設ける一方、区画部に弁体側に突出する係合部を設けてもよい。そして、開弁時においてはシール部材と区画部との間に所定のクリアランスを確保して背圧室からの冷媒の流出を許容する一方、閉弁時においてはシール部材を係合部に密着させて背圧室の開口端部を封止するようにしてもよい。その場合、第6〜第9実施形態のように弁体を区画部に外挿する態様としてもよいし、第5実施形態のように弁体を区画部に内挿する態様としてもよい
【0102】
上記実施形態では、弁体を弁孔に対してアクチュエータ(ソレノイド)と同じ側の圧力室に配置し、その圧力室に背圧室を形成する例を示した。変形例においては、弁体を弁孔に対してアクチュエータと反対側の圧力室に配置し、ボディと弁体との間に背圧室を形成し、上記実施形態と同様のシール構成を実現してもよい。背圧室は、弁孔の上流側に設けられてもよいし、下流側に設けられてもよい。上記実施形態では、制御弁をソレノイドの非通電時には開弁状態となる常開型の電磁弁として構成したが、ソレノイドの非通電時には閉弁状態となる常閉型の電磁弁として構成することもできる。
【0103】
上記第10実施形態では、弁体22側にOリング38(シール部材)を設ける例を示したが、ガイド部24側に設けてもよい。具体的には、ガイド部24の小径部90に凹溝を形成してOリングを嵌着させる一方、弁体22の外周面にはOリングを設けることなく面一としてもよい。そして、弁体22の閉弁位置およびその近傍においてOリングが弁体22の外周面に当接(摺動)し、少なくとも全開状態においてはその当接状態が解除されるようにしてもよい。
【0104】
上記実施形態では、本発明の制御弁を、外部から電気的に開度を調整するためのアクチュエータを備える電気駆動弁として構成した例を示したが、弁体がその前後差圧によってのみ開閉される機械式の制御弁として構成することもできる。
【0105】
上記実施形態では、本発明の制御弁を、膨張弁の弁部の下流側で冷媒の流れを許容または遮断するシャットオフバルブとして構成する例を示したが、膨張弁の弁部の上流側で冷媒の流れを許容または遮断するものとしてもよい。また、本発明の制御弁を膨張弁と一体ではなく、独立したシャットオフバルブとして構成してもよい。