(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の枠練り石鹸において、糖・保湿剤部が組成物中30〜50質量%であり、該糖・保湿剤部中、ポリエチレングリコール1500が5〜20質量%であることを特徴とする枠練り石鹸。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる枠練り石鹸は、筒状冷却枠で冷却・固化して製造され、個数平均粒径65μm以下の気泡が10容量%以上均一に混入されたことを特徴とする。該石鹸は、溶解性と泡立ちが良好で、膨潤しにくいことを特徴とする。
以下、本発明の構成についてさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明にかかる枠練り石鹸は、筒状冷却枠に石鹸液を注入・冷却・固化させて製造される。また、特に50g以下の小型石鹸に適用することが好適である。
そして、本発明において、枠練り石鹸は、好適には組成物中、20〜40質量部の脂肪酸石鹸部、30〜50質量部の糖・保湿剤部、及び5〜20質量部の非脂肪酸石鹸系界面活性剤部を含むことが好適である。
【0016】
[脂肪酸石鹸]
本発明の枠練り石鹸で使用される、脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウム/有機アミンの混合塩における脂肪酸としては、炭素原子数が好ましくは8〜20、より好ましくは12〜18の、飽和または不飽和の脂肪酸であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、リノール酸、リノレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等が挙げられる。
【0017】
脂肪酸ナトリウムの具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、イソステアリン酸ナトリウム、リシノレイン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、リノレン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、パーム油脂肪酸ナトリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記の脂肪酸ナトリウムの中でも、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、イソステアリン酸ナトリウムが好適に使用できる。
【0018】
脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウム、リシノレイン酸ナトリウム/カリウム、リノール酸ナトリウム/カリウム、リノレン酸ナトリウム/カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム/カリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム/カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム/カリウム、パーム油脂肪酸ナトリウム/カリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム/カリウム等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記の脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の中でも、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウムが好適に使用できる。
【0019】
本発明において、脂肪酸組成中、イソステアリン酸石鹸が2〜8質量%、ステアリン酸石鹸が4〜14質量%であることが好ましく、ステアリン酸石鹸が4〜12質量%であることが特に好ましい。この領域で冷却枠から石鹸素地棒を取り出した際の割れ、裂けを防止することができ、しかもべたつきも効果的に抑制できる。
【0020】
本発明の枠練り石鹸における、脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の含有量は、製品重量50g以下の小型石鹸とする場合、20〜40質量%、特に20〜30質量%であることが好ましい。この含有量が20質量%未満であると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。逆に、40質量%を超えると、摩擦溶解度が低下し、小型石鹸としての使用性が低下する傾向にある。
【0021】
また、脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩においては、その塩を構成するナトリウムとカリウムとのモル比(ナトリウム/カリウム比)が、5/1〜2/1、特に8/2〜2/1であることが好ましい。このナトリウム/カリウム比が2/1を超えてカリウムの割合が多くなると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。
【0022】
また、脂肪酸の対イオンを有機アミンとすることもできる。
ここで、有機アミンとして具体的には、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン等が好適なものとして例示され、これらの中ではトリエタノールアミンが特に好ましい。有機アミンは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
[糖・保湿剤]
本発明にかかる枠練り石鹸は、糖や保湿剤を含むことが好適である。
本発明において好適に用いられる糖・保湿剤としては、マルチトール、ソルビトール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、砂糖、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ポリオキシエチレンアルキルグルコシドエーテル等が例示され、組成物中30〜50質量%配合することが好適である。
【0024】
これらのうち、PEG1500を糖・保湿剤部中、5〜20質量%配合することが好ましい。PEG1500の配合により小型石鹸に特有に要求される高摩擦溶解度が上昇する。
【0025】
また、気泡入り石鹸に見られる脆弱性を改善するために、PEG−90M(高重合ポリエチレングリコール)を組成物中0.001〜0.01質量%配合することが好ましい。
【0026】
[両性界面活性剤]
本発明にかかる枠練り石鹸は、以下の両性界面活性剤を非脂肪酸石鹸系界面活性剤として含むことが好適である。
【0027】
本発明の枠練り石鹸で使用され得る両性界面活性剤としては、例えば、下記化学式(A)〜(C)で示される両性界面活性剤が挙げられる。
【0029】
[式中、R
1は、炭素数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、nおよびmは、同一または相異なって、1〜3の整数を表し、Zは、水素原子または(CH
2)
pCOOY(ここで、pは1〜3の整数であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)を表す。]、
【0031】
[式中、R
2は、炭素数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、R
3およびR
4は、同一または相異なって、低級アルキル基を表し、Aは、低級アルキレン基を表す。]、および
【0033】
[式中、R
5は、炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を表し、R
6およびR
7は、同一または相異なって、低級アルキル基を表す。]。
【0034】
化学式(A)において、R
1の「炭素数7〜21のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数は好ましくは7〜17である。また、R
1の「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数は好ましくは7〜17である。また、Yの「アルカリ金属」としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、「アルカリ土類金属」としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、「有機アミン」としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0035】
化学式(A)で表される両性界面活性剤の具体例としては、イミダゾリニウムベタイン型、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ラウリン酸より合成されたもの、以下、便宜上「ラウロイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ステアリン酸より合成されたもの)、ヤシ油脂肪酸より合成された2−アルキルまたはアルケニル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(R
1がC
7〜C
17の混合物、以下、便宜上、「ココイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)等が挙げられる。
【0036】
化学式(B)において、R
2の「炭素数7〜21のアルキル基」および「炭素数7〜21のアルケニル基」は、化学式(A)のR
1と同様である。また、R
3、R
4の「低級アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数が1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数が1〜3のアルキル基である。さらに、Aの「低級アルキレン基」は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数が1〜5のアルキレン基であり、好ましくは炭素数が3〜5のアルキレン基である。
【0037】
化学式(B)で表される両性界面活性剤(アミドアルキルベタイン型)の具体例としては、アミドプロピルベタイン型、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R
2がC
7〜C
17の混合物)等が挙げられる。
【0038】
化学式(C)において、R
5の「炭素数8〜22のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数は好ましくは8〜18である。また、R
5の「炭素数8〜22のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数は好ましくは8〜18である。さらに、R
6、R
7の「低級アルキル基」は、化学式(B)のR
3、R
4と同様である。
【0039】
化学式(C)で表される両性界面活性剤(アルキルベタイン型)の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸より合成されたアルキルまたはアルケニルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R
5がC
8〜C
18の混合物)等が挙げられる。
【0040】
本発明においては、上記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤からなる群より少なくとも1つが選択されて使用されることが好ましい。複数使用する場合、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(B)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(C)で表される両性界面活性剤を複数使用してもよい。
【0041】
上記の両性界面活性剤の中でも、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤のうちのイミダゾリニウムベタイン型、特にココイルイミダゾリニウムベタインが特に好適に使用される。
【0042】
本発明の枠練り石鹸に上記の両性界面活性剤を配合することにより、脂肪酸石鹸(脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩)と両性界面活性剤が複合塩を形成し、硬度が向上する等の作用が発揮される。
【0043】
本発明の枠練り石鹸における両性界面活性剤の含有量は、2〜10質量%が好ましく、特に4〜8質量%が好ましい。この含有量が2質量%未満であると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下するおそれがある。逆に、10質量%を超えると、使用後にベタツキ感を生じ、また、長期保存すると表面が褐色に変質して商品価値を損なうおそれがある。
【0044】
[ノニオン界面活性剤]
本発明の枠練り石鹸には、非脂肪酸石鹸系界面活性剤として、さらにノニオン界面活性剤を配合してもよい。使用され得るノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン2−オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン変性シリコン(例えば、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコン)、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルグルコシド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記のノニオン界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマーが好適に使用できる。
【0045】
本発明の枠練り石鹸においては、ノニオン界面活性剤を配合することにより、脂肪酸石鹸由来の刺激性低下作用が発揮される。
【0046】
本発明の枠練り石鹸におけるノニオン界面活性剤の含有量は、2〜15質量%が好ましく、特に5〜12質量%が好ましい。この含有量が2質量%未満であると、使用後につっぱり感が生じるおそれがある。逆に、15質量%を超えると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。さらに、使用後にベタツキ感が生じるおそれがある。
【0047】
[ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤]
本発明にかかる枠練り石鹸にはヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤を添加することが好適であり、泡立ちの改善が認められる。
本発明において好適なヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は、下記化学式(D)で示される界面活性剤が挙げられる。
【0049】
(式中、R
1は炭素数4〜34の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し;X
1、X
2のいずれか一方は−CH
2COOM
1を表し、他方は水素原子を表し;M
1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、低級アルカノールアミンカチオン、低級アルキルアミンカチオン、又は塩基性アミノ酸カチオンを表す。)
【0050】
式中、R
1は芳香族炭化水素、直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素のいずれでもよいが、脂肪族炭化水素、特にアルキル基、アルケニル基が好ましい。例えば、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルウンデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルヘキサデシル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基等が好ましい例として挙げられ、中でもデシル基、ドデシル基が界面活性能力の面で優れている。
【0051】
また、式中、X
1、X
2のいずれか一方は−CH
2COOM
1で表されるが、M
1としては、水素原子、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0052】
具体的には、上記(A)ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤のうち、ドデカン−1,2−ジオールのいずれかのOH基のHが−CH
2COONaで置換されたドデカン−1,2−ジオール・酢酸エーテルナトリウムが最も好ましい。
【0053】
本発明の枠練り石鹸におけるヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤の含有量は、泡立ちを改善する観点から0.5〜15質量%配合することが好ましく、特に0.7〜10質量%配合することが好ましい。
【0054】
[キレート剤]
また、本発明にかかる枠練り石鹸に、キレート剤を添加することが好適である。
【0055】
また、本発明において好適に用いられるキレート剤としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩が挙げられ、さらに好ましくは、ヒドロキシエタンジホスホン酸である。配合量としては、0.001〜1.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩の配合量が0.001質量%より少ない場合は、キレート効果が不十分となり、経時で黄変等の不都合を生じるおそれがあり、1.0質量%より多いと皮膚への刺激が強くなり、好ましくない。
【0056】
本発明の枠練り石鹸には、上記の効果を損なわない範囲内で、次のような成分を任意に配合することができる。この任意成分としては、トリクロロカルバニリド、ヒノキチオール等の殺菌剤;油分;香料;色素;エデト酸3ナトリウム2水和物等のキレート剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;グリチルリチン酸ジカリウム、オオバコエキス、レシチン、サポニン、アロエ、オオバク、カミツレ等の天然抽出物;非イオン性、カチオン性あるいはアニオン性の水溶性高分子;乳酸エステル等の使用性向上剤;アルキルエーテルカルボン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ジナトリウム、アルキルイセチオン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシン酸ナトリウム等の起泡性向上剤等である。
【0057】
本発明にかかる枠練り石鹸の製造方法は、気泡が混入された高温石鹸液を筒状冷却枠に注入する際、石鹸液の注入配管吐出口近傍に配置されたミルにより気泡の微細・均一化を行いつつ冷却枠に注入することを特徴とする。
また、該ミルにより石鹸液の気泡を40μm以下に微細化することが好ましく、特に36μm以下に微細化することが好ましい。
また、冷却枠注入時の石鹸液の温度は、60〜65℃に調整することが好ましい。
【0058】
また、ミルは、配管と略同径の円筒状ステータと、該ステータと0.4mm以下の間隙を有し、流路と同軸で回転する外周にブレードを有したロータとを備えることが好ましい。
また、前記円筒状ステータは直径が100〜200mmであり、ロータの回転数は2000〜4000rpmであることが好ましく、3000〜4000rpmであることが特に好ましい。
【0059】
本発明の枠練り石鹸の製造方法に用いられるミルとしては、市販品であるパイプラインミル(プライミックス社製)、気液混合剪断方式を用いたマイクロ・ナノバブル生成装置(協和機設社製)、薄膜旋回型高速ミキサー(プライミックス社製)などを用いることもできる。これらのうち、パイプラインミルを用いることが特に好ましい。
【実施例】
【0060】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた評価試験方法について説明する。
【0061】
評価(1):耐割れ性
試料の棒状石鹸(素地棒)の耐割れ性試験を行った。すなわち、固化後、筒状冷却枠から取り出し時の素地棒の状態について、以下の評価基準で評価を行った。
A:素地棒の耐割れ性は良好であった。
B:素地棒にひびが入ってしまった。
C:素地棒が割れてしまった。
【0062】
評価(2):べたつき
専門パネル10名が、試料の使用時のべたつきについて評価した。
A:8名以上がべたつきがないと答えた。
B:5名以上8名未満がべたつきがないと答えた。
C:5名未満がべたつきがないと答えた。
【0063】
評価(3):反応時増粘
試料を撹拌中の石鹸液の増粘性について、以下の評価基準で評価した。
A:反応時の増粘による製造への悪影響はなかった。
C:反応時に増粘しすぎて撹拌がうまくできなかった。
【0064】
評価(4):外観
成形後の試料の外観について、以下の評価基準で評価した。
A:外観は滑らかで良好であった。
C:外観は粗く良好でなかった。
【0065】
まず、本発明者らは、下記脂肪酸石鹸部、糖・保湿剤部、非脂肪酸石鹸系界面活性剤部及びその他からなる基本処方を用いて、気泡入り石鹸の製造を試みた。なお、気泡を混入させる方法は、以下の製造方法に示す。気泡を混入後、表1に示す各種装置に石鹸液を入れた後に、冷却・固化を行った。なお、表1の装置のパイプラインミル欄にある括弧内の数値は、磨砕部と対向部の間隙の値である。
【0066】
・基本処方
脂肪酸石鹸部 33.0%
ラウリン酸 28部
ミリスチン酸 56部
ステアリン酸 11部
イソステアリン酸 5部
水酸化ナトリウム:水酸化カリウム=3:1(モル比)で中和
【0067】
糖・保湿剤部 40.0%
濃グリセリン 25部
1,3−ブチレングリコール 15部
POE(7モル)グリセリル 10部
ポリエチレングリコール1500 13部
ソルビトール 6.5部
ショ糖 30.5部
【0068】
非脂肪酸石鹸系界面活性剤部 10.0%
ドデカン−1,2−ジオール・酢酸エーテルナトリウム 30.0部
N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−
N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム 20.0部
ポリオキシエチレン60モル硬化ヒマシ油 50.0部
【0069】
その他 (17.0%)
PEG−90M 0.005%
キレート剤 0.1%
酸化チタン 0.2%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.2%
イオン交換水 16.495%
【0070】
・製造方法
図1に本発明にかかる気泡入り枠練り石鹸の製造装置10を示す。
製造装置10は、前記基本処方成分を加熱溶解させる溶解釜12と、該溶解釜12より石鹸液を搬送するポンプ14と、複数本の有底筒状冷却枠を有した冷却容器16とを備える。そして、ポンプ14により溶解釜12より送出される石鹸液を冷却容器16の冷却枠に注入し、冷却・固化後、冷却枠より棒状石鹸(素地棒)を取り出し、切断、成形する。
なお、本発明においては、気泡入り石鹸を製造するため、溶解釜12内には空気注入パイプ18が配置され、バブリングが行われつつ攪拌翼20により攪拌されている。
【0071】
本発明において特徴的なことは、冷却容器16へ石鹸液を注入するにあたり、微細泡混入手段を設けたことである。以下の本発明にかかる試験では、この微細泡混入手段として、パイプラインミルを用いて行った。
【0072】
本実施形態において、パイプラインミルは、配管と略同径(100〜200mm)の円筒状ステータと、該ステータと0.4mm以下の間隙を有し、流路と同軸で回転する外周にブレードを有したロータとを備える。すなわち、パイプラインミル22は、
図2に断面図を示すように、開口径約100mmのL字型円筒状ハウジング24内に第一破砕部26と第二破砕部28を備える。そして、第一破砕部は擂鉢型円筒状の第一ステータ30と、該第一ステータ30の擂鉢型に合わせた平頭円錐型の第一ロータ32を備え、図中右方より流入してくる石鹸液に対し攪拌・剪断力を加える。また、第二破砕部28は、同じく擂鉢型円筒状の第二ステータ34と、該第二ステータ34の擂鉢型に合わせた平頭円錐状の第二ロータ36と、該第二ロータ36先端部に設けられた磨砕部38とを備え、磨砕部38は前記第二ロータ36の対向部40との間隙を調整可能である。なお、磨砕部38及びその対向部40にはそれぞれ凹凸が形成されており、両者の間隙は0.1〜5mmの範囲で調整可能であり、ロータの回転数は2000〜4000rpmである。
下記試験例では、ロータの回転数は3500rpmに調整した。また、特記しない限り、パイプラインミルの磨砕部及び対向部の間隙は0.2mmに調整した。
【0073】
そして、本実施形態において、冷却容器16としては、
図3に示すような立方体状本体42内に25本の円筒状冷却枠44を配置し、本体42上面には各冷却枠44の開口44aが形成されている。そして、本体42へは冷却水導入路46を介して冷却水が導入され、排出路48を介して排出される。
なお、本試験で用いた冷却枠44は直径50mm、長さ(高さ)1000mmであり、冷却枠注入時の石鹸液は特記しない限り60〜65℃、冷却容器16へ注入後は、20℃の冷却水で直ちに冷却を行った。
【0074】
【表1】
※1:円筒状ステータ内に撹拌翼を入れたもの。
【0075】
表1より明らかなように、パイプラインミルを用いることにより、気泡入り枠練り石鹸の製造が可能となり、特に該ミルにより気泡径を30μm以下とすると、素地棒外観が滑らかとなり、しかも冷却枠内での重量分布(気泡分布)も極めて良好となる。このように均一に気泡を混入するためには、パイプラインミルの使用が極めて好ましく、単に釜内あるいはパイプ内の攪拌翼で攪拌するのみでは事実上、達成不可能である。
なお、本発明者らは溶解釜12内で攪拌翼のみによる攪拌条件を検討したが、下記表2に示すように、気泡径は40μm程度とするのが限界である。また、非常に大きい気泡径の石鹸液を冷却容器に注入した場合には、素地棒取出の段階で裂け、割れを生じる。
【0076】
【表2】
【0077】
以上のように、枠練り法で気泡入り石鹸を製造するためには、溶解釜あるいはパイプライン内での攪拌翼による攪拌では、気泡を十分に小さくすることができず、結果として素地棒に割れ、裂けなどの不具合を生じ、しかも枠内での気泡分布が不均一化することが理解される。
【0078】
一方、溶解釜により気泡混入後、冷却容器への注入直前にパイプラインミルを適用し、気泡径を小さくすることで、均一かつ素地棒取出にも支障を生じない枠練り石鹸を製造することができる。
このように、パイプラインミルの採用により、いわゆる枠練り石鹸で大量かつ均一な気泡を混入することが可能となった。
【0079】
次に、本発明者らは、パイプラインミルを採用した
図1の系により製造した基本処方の石鹸の、固化前の気泡径(溶解釜内の気泡径及びパイプラインミル後の気泡径)と、固化後の石鹸の気泡径について検討を行った。そして、得られた石鹸について、上記評価試験方法にて評価した。
なお、溶解釜におけるバブリング及び撹拌は、60分間行われた。結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
表3によれば、同じ処方の石鹸液から、同じ条件で石鹸を製造しても、得られる石鹸の個数平均気泡径は異なることが明らかになった。しかし、いずれの個数平均気泡径のものも、割れ等がなく、良好な石鹸を得ることができた。
本発明者らによるさらなる検討の結果、パイプラインミルにより小さくした気泡を混入した石鹸液を筒状冷却枠で冷却すると、固化後の石鹸が収縮するため、気泡径が筒状冷却枠混入前より5〜25μm程度大きくなることが明らかになった。
【0082】
以上のことから、本発明にかかる石鹸は、パイプラインミルにより気泡径を40μm以下、好ましくは36μm以下に調整してから得ることが必要である。
また、得られた石鹸の個数平均気泡径は65μm以下、特に50μm以下であることが好ましい。
【0083】
なお、本発明において、冷却容器としては、通常の筒状冷却枠のほか、複数の樹脂製個装部が液路を介して連結された長筒状樹脂製容器を用いることも可能である。たとえば
図4に示すような、拡幅部50と狭路52を有した樹脂製容器54を用い、上部開口より高温石鹸液を注入した後に、前記狭路52部分を接着・封止(図中56)し、個別包装済み枠練り石鹸を調製することも可能である。
【0084】
また、本発明にかかる枠練り石鹸は、気泡の存在により、単に比重が軽くなるという利点のみならず、たとえば宿泊施設で提供される小型使い切りの石鹸として用いることも好適である。
すなわち、宿泊施設では衛生的観点から宿泊者毎に小型使い切りの石鹸が提供されることがある。無論、宿泊期間が短い場合、石鹸の使用量はわずかであるが、一方であまりに小型の石鹸では使用性が悪くなる。
【0085】
そこで、本発明のように石鹸成分を体積に比して少なくすることにより、使用に適した大きさを維持しつつ、石鹸の使用量を低減させることができる。
このような小型石鹸に対し気泡を混入させた場合、素地棒の裂け、割れのみならず、石鹸自体の割れ防止を図る必要もある。
また、石鹸が小型であるだけに、表面積が小さいため、通常の石鹸組成では使用時に洗浄成分の十分な溶け出しが期待できない。そこで、このような小型石鹸では、石鹸が柔らかめで、使用時に溶けやすい必要がある。そこで、本発明者らは、小型石鹸を前提として、溶けやすい石鹸組成についても検討を行った。
【0086】
まず、本発明者らは、脂肪酸の組成について、石鹸素地棒取り出し時の割れ防止の観点から検討を行った。すなわち、前記基本処方に対して、脂肪酸石鹸部のみの組成を変更して石鹸を製造した。そして、得られた石鹸について、上記評価試験方法にて評価した。
結果を表4及び表5に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
表4、表5より明らかなように、イソステアリン酸の配合により素地棒の耐割れ性が向上するが、一方でべたつきを生じる傾向にある。これに対し、ステアリン酸をさらに配合すると、べたつきの抑制にも効果が発揮されるが、過剰に配合すると反応時に増粘してしまう。
さらに詳細な検討の結果、脂肪酸組成中、イソステアリン酸を2〜8質量%、ステアリン酸を4〜14質量%配合することにより、べたつきを抑えつつ耐割れ性の改善を図ることができることが明らかになった。
【0090】
また、本発明者らは小型石鹸を前提として、使用時の溶けやすさの改善を図るため、糖・保湿剤部の検討を行った。すなわち、前記基本処方に対して、糖・保湿剤部のみの組成を変更して石鹸を製造した。そして、得られた石鹸について、上記評価試験方法にて評価した。結果を表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
表6より、小型石鹸に対し使用適性を改善するために摩擦溶解度を上昇させ、賦形性を高めるためには、PEG1500の使用が好適であることがわかる。さらに詳細な検討の結果、その配合量は糖・保湿剤部中に5〜20質量%であることが明らかとなった。
また、PEG−90Mを組成物中0.005質量%配合することで、硬度は低下するものの、脆弱性が改善された。
【0093】
次に、本発明者らは、石鹸の製造条件について検討を行った。すなわち、本発明にかかる前記基本処方の石鹸を製造し、凝固点を測定した。また、該石鹸の温度と粘度の関係について、B.F.粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて測定した。結果を
図5に示す。
【0094】
図5によれば、凝固点(54℃)より温度を上げると、粘度は一気に低下し、約60℃を超えると、粘度はほぼ一定になることがわかる。
粘度が高いと、気泡の合一、分離が抑えられるが、注入作業性は低下し、また温度が高いと、粘度が低く注入作業性は上がるが、冷却に時間を要し、冷却期間中に気泡の合一、分離が起こってしまうことが考えられる。
以上のことから、本発明にかかる石鹸は、冷却枠注入時の石鹸液を60〜65℃に調整して製造することが好ましい。