(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1及び
図2を用いて、本発明の第1実施形態に係る柱構造及びベース部材を説明する。なお、本実施形態では柱部材にH形鉄骨柱(H形鋼柱)が使用されており、図中に適宜示される矢印WH方向は柱部材のウェブの幅方向を示し、矢印FH方向は柱部材のフランジの幅方向を示している。また、矢印UP方向は上方向を示している。
【0026】
(柱構造及びベース部材の構成)
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る柱構造10は基礎12に設置されている。基礎12は例えばコンクリートであり、基礎12の上面は水平かつ平面状とされている。図示を省略したが、基礎12の内部は配筋されており、基礎12の強度が向上されている。
【0027】
基礎12の上面には固定手段としてのモルタル14が設けられている。モルタル14は平面視において例えば矩形状とされている。
【0028】
モルタル14の上面にはベース部材16が固定されている。ベース部材16はベース本体としてのベースプレート16Aを備えている。ベースプレート16Aの下側全体にモルタル14が設けられている。ベースプレート16Aは、矢印WH方向を長手方向とし、矢印FH方向を短手方向とする矩形平板状により構成されている。詳しく説明すると、ベースプレート16Aは、例えば日本工業規格(JIS規格)G3136により規定される建築構造用圧延鋼材SN490B、鋳鋼等の金属材料により形成されている。
【0029】
図中、左側に示されるベースプレート16Aの長手方向の一端部には、短手方向の中間部において、第1固定部としての2個の第1固定孔18A及び第1固定孔18Bが設けられている。一方、図中、右側に示されるベースプレート16Aの長手方向の他端部には、短手方向の中間部において、第1固定部としての2個の第1固定孔18C及び第1固定孔18Dが設けられている。第1固定孔18A〜18Dは、平面視において同一径を有する円形状の貫通孔により形成されている。第1固定孔18Aの中心軸の位置及び第1固定孔18Bの中心軸の位置は矢印FH方向において一致されている。第1固定孔18Cの中心軸の位置及び第1固定孔18Dの中心軸の位置は矢印FH方向において一致されている。また、第1固定孔18Aの中心軸の位置及び第1固定孔18Cの中心軸の位置は矢印WH方向において一致されている。第1固定孔18Bの中心軸の位置及び第1固定孔18Dの中心軸の位置は矢印WH方向において一致されている。
【0030】
また、図中、左側に示されるベースプレート16Aの長手方向の一端部には、短手方向の両端部において、第2固定部としての2個の第2固定孔20A及び第2固定孔20Bが設けられている。一方、図中、右側に示されるベースプレート16Aの長手方向の他端部には、短手方向の両端部において、第2固定部としての2個の第2固定孔20C及び第2固定孔20Dが設けられている。第2固定孔20A〜20Dは、第1固定孔18A〜18Dと同一径を有する円形状の貫通孔により形成されている。
【0031】
第2固定孔20Aの中心軸の位置及び第2固定孔20Bの中心軸の位置は矢印FH方向に一致されている。加えて、第2固定孔20A及び第2固定孔20Bの中心軸の位置は、第1固定孔18A及び第1固定孔18Bの中心軸の位置よりも矢印WH方向内側とされており、ベースプレート16Aの長手方向中央部寄りとされている。つまり、第2固定孔20A及び第2固定孔20Bの中心軸の位置は、第1固定孔18A及び第1固定孔18Bの中心軸の位置よりも後述する鉄骨柱30のフランジ30Bに近接されている。更に、第2固定孔20Aの中心軸の位置は、第1固定孔18Aの中心軸の位置よりも矢印FH方向外側とされている。また、第2固定孔20Bの中心軸の位置は、第1固定孔18Bの中心軸の位置よりも矢印FH方向外側とされている。
【0032】
一方、第2固定孔20Cの中心軸の位置及び第2固定孔20Dの中心軸の位置は矢印FH方向に一致されている。加えて、第2固定孔20C及び第2固定孔20Dの中心軸の位置は、第1固定孔18C及び第1固定孔18Dの中心軸の位置よりも矢印WH方向内側とされており、ベースプレート16Aの長手方向中央部寄りとされている。同様に、第2固定孔20C及び第2固定孔20Dの中心軸の位置は、第1固定孔18C及び第1固定孔18Dの中心軸の位置よりもフランジ30Bに近接されている。更に、第2固定孔20Cの中心軸の位置は、第1固定孔18Cの中心軸の位置よりも矢印FH方向外側とされている。また、第2固定孔20Dの中心軸の位置は、第1固定孔18Dの中心軸の位置よりも矢印FH方向外側とされている。従って、ベースプレート16Aは、長手方向の一端部に配置された4個の第1固定孔18A、第1固定孔18B、第2固定孔20A及び第2固定孔20Bと、他端部に配置された4個の第1固定孔18C、第1固定孔18D、第2固定孔20C及び第2固定孔20Dとを備えている。つまり、本実施形態では、ベースプレート16Aに合計8個の第1固定部及び第2固定部が設けられている。
【0033】
第1固定孔18A〜18D及び第2固定孔20A〜20Dの各々の周囲において、ベースプレート16Aの下面に凹部22が形成されている。凹部22の水平方向の上面(凹部22の底面)は平面状とされている。凹部22は、ベースプレート16Aの外周側へ向って徐々に広がり、かつベースプレート16Aの外周外側へ開放されており、平面視において略三角形状により形成されている。凹部22の垂直方向の周面において、ベースプレート16Aの中央側の一部は、第1固定孔18A〜18D、第2固定孔20A〜20Dの各々の内面と面一により構成されている。凹部22の全体にはモルタル14が充填されて、このモルタル14を介在させてベースプレート16Aが基礎12に固定されている。
【0034】
基礎12には第1アンカー部材としての第1アンカーボルト(アンカーロック)24及び第2アンカー部材としての第2アンカーボルト(アンカーロック)26が固定されている。第1アンカーボルト24は円柱状のアンカー本体24Aを備えており、アンカー本体24Aの軸方向は上下方向とされている。アンカー本体24Aの上端部24C以外の下端部24Bを含む大部分はモルタル14を貫通して基礎12に埋込まれている。同様に、第2アンカーボルト26は円柱状のアンカー本体26Aを備えおり、アンカー本体26Aの軸方向は上下方向とされている。アンカー本体26Aの上端部26C以外の下端部26Bを含む大部分はモルタル14を貫通して基礎12に埋込まれている。
【0035】
第1アンカーボルト24において、アンカー本体24Aの下端部24Bには雄ねじが設けられており、この雄ねじに上下方向に設けられた2つのナット24D及びナット24Eが蝶合されている。ナット24Dとナット24Eとの間には、アンカー部を構成すると共に、アンカー本体24Aの軸径よりも外側に突出された円環平板状の定着板24Fが介在されている。定着板24Fはナット24D及びナット24Eにより締付けられて固定されている。ナット24D、ナット24E及び定着板24Fは、基礎12に埋込まれ、第1アンカーボルト24の抜けを防止する構成とされている。
【0036】
アンカー本体24Aの上端部24Cはベースプレート16Aの第1固定孔18A〜18Dを貫通して突出する構成とされている。この上端部24Cには雄ねじが設けられており、雄ねじにベースプレート16Aを固定するナット24Gが蝶合されている。ベースプレート16Aとナット24Gとの間には円環平板状のワッシャ24Hが介在されている。
【0037】
同様に、第2アンカーボルト26において、アンカー本体26Aの下端部26Bに設けられた雄ねじに2つのナット26D及びナット26Eが蝶合されている。ナット26Dとナット26Eとの間には円環平板状の定着板26Fが介在されている。定着板26Fはナット26D及びナット26Eにより締付けられて固定されている。ナット26D、ナット26E及び定着板26Fは、基礎12に埋込まれ、第2アンカーボルト26の抜けを防止する構成とされている。
【0038】
アンカー本体26Aの上端部26Cはベースプレート16Aの第2固定孔20A〜20Dを貫通して突出する構成とされている。この上端部26Cには雄ねじが設けられており、雄ねじにベースプレート16Aを固定するナット26Gが蝶合されている。ベースプレート16Aとナット26Gとの間には円環平板状のワッシャ26Hが介在されている。
【0039】
本実施形態では、第1アンカーボルト24及び第2アンカーボルト26は同一径かつ同一軸方向長さとされているが、第1アンカーボルト24は第2アンカーボルト26よりも強度が高い材料により形成されている。詳しく説明すると、第1アンカーボルト24には、例えばJIS規格G3138に規定される引張強さが490N/mm
2を有する炭素鋼材、JIS規格G4321に規定される引張強さが520N/mm
2を有するステンレス鋼材等により形成されたアンカーボルトが使用されている。また、第2アンカーボルト26は例えばJIS規格G3138に規定される引張強さが400N/mm
2を有する炭素鋼材等により形成されたアンカーボルトが使用されている。また、上記ステンレス鋼材により第1アンカーボルト24が形成される場合には、上記引張強さが490N/mm
2を有する炭素鋼材により第2アンカーボルト26が形成されてもよい。すなわち、本実施形態では、第2アンカーボルト26の降伏変形が小さく設定されており、これに対して第1アンカーボルト24の降伏変形が大きく設定されている。
【0040】
ベースプレート16Aの上面の中央部分には上下方向を長手方向として延設された柱部材としての鉄骨柱30が設けられている。鉄骨柱30の下端はベースプレート16Aの上面に例えばアーク溶接により結合されている。
【0041】
鉄骨柱30は、本実施形態において、ウェブ30Aと、ウェブ30Aの幅方向両端に一体に設けられた一対のフランジ30Bとを有するH形鋼材により形成されている。ここでは、鉄骨柱30のウェブ30Aは、矢印WH方向を幅方向とし、矢印UP方向を長手方向とする長尺矩形平板状により形成されている。一対のフランジ30Bは、いずれも、矢印FH方向を幅方向とし、矢印UP方向を長手方向とする長尺矩形平板状により形成されている。ウェブ30Aの両端はフランジ30Bの幅方向中央部分において一体に結合されている。鉄骨柱30としては、例えばJIS規格G3136に規定される建築構造用圧延鋼材、JIS規格G3106に規定される溶接構造用圧延鋼材、JIS規格G3101に規定される一般構造用圧延鋼材等により形成されている。
【0042】
なお、通常、柱構造10は建造物に複数設けられている。図示を省略したが、隣設される柱構造10の鉄骨柱30の下端部間には、基礎梁が掛け渡されて、基礎梁主筋が配筋されている。
【0043】
(第1実施形態の作用効果)
本実施形態に係る柱構造10及びベース部材16では、
図1及び
図2に示されるように、ウェブ30Aの幅方向両側にフランジ30Bが一体に設けられた鉄骨柱30がベースプレート16Aの上側に結合される。また、第1アンカーボルト24の下端部24B及び第2アンカーボルト26の下端部26Bが基礎12に固定され、かつベースプレート16Aが第1アンカーボルト24の上端部24C及び第2アンカーボルト26の上端部26Cに固定される。
【0044】
ここで、第1アンカーボルト24の上端部24Cがベースプレート16Aにおいてフランジ30Bのウェブ30A側とは反対側に固定される。また、第2アンカーボルト26の上端部26Cがベースプレート16Aにおいて第1アンカーボルト24よりもウェブ30Aの幅方向内側に固定され、かつ第2アンカーボルト26の降伏変形が第1アンカーボルト24の降伏変形よりも小さくされる。つまり、鉄骨柱30の強軸方向と一致するウェブ30Aの幅方向において、第1アンカーボルト24の降伏変形と第2アンカーボルト26の降伏変形とが変えられている。換言すれば、第1アンカーボルト24の降伏変位が第2アンカーボルト26の降伏変位よりも大きくされている。
【0045】
例えば、柱構造10において、
図2に示される鉄骨柱30の幅(柱せい)Wが600mm、第1アンカーボルト24間隔P1が800mm、第2アンカーボルト26間隔P2が約600mmに設定される。この場合、第1アンカーボルト24は、第2アンカーボルト26に対して、1.2倍以上1.5倍以下の強度に設定される。地震等の水平荷重が生じた際に、例えばウェブ30Aの幅方向(強軸方向)において鉄骨柱30に矢印Fの力が働くと仮定する。この力Fは、ベースプレート16Aの中央付近を回転中心として作用し、鉄骨柱30からベースプレート16A、第1アンカーボルト24及び第2アンカーボルト26を介して基礎12へ伝達される曲げ応力である。この曲げ応力は、ベースプレート16Aの内側に配置された第2アンカーボルト26よりも外側に配置された第1アンカーボルト24を大きく変形させる。本実施の形態では、第1アンカーボルト24の降伏変位が第2アンカーボルト26の降伏変位よりも大きくされている。このため、曲げ応力に対して第1アンカーボルト24及び第2アンカーボルト26の双方に降伏変形が生じる。第1アンカーボルト24と第2アンカーボルト26との強度比率が上記値に設定されると、第1アンカーボルト24及び第2アンカーボルト26の降伏変形がほぼ同時に生じる。従って、第1アンカーボルト24及び第2アンカーボルト26の双方に降伏変形を生じさせることにより、曲げ応力が効果的に吸収されるので、柱構造10の降伏曲げ耐力を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る柱構造10及びベース部材16では、第1アンカーボルト24が第2アンカーボルト26よりも強度が高い材料により形成されているので、第2アンカーボルト26の降伏変形が第1アンカーボルト24の降伏変形よりも小さくなる。
【0047】
更に、本実施形態に係る柱構造10及びベース部材16では、
図1及び
図2に示されるように、第2固定孔20A〜20D又は第2アンカーボルト26が、第1固定孔18A〜18D又は第1アンカーボルト24よりもフランジ30Bに近接されている。このため、鉄骨柱30のフランジ30Bと第2固定孔20A〜20D又は第2アンカーボルト26との離間距離Lが小さくなる。ところで、1つのベースプレート16Aに設けられる第1アンカーボルト24及び第2アンカーボルト26の合計本数(又は第1固定孔18A〜18D及び第2固定孔20A〜20Dの合計孔数)が増加すると、ベースプレート16Aの厚さ(上下方向の肉厚寸法)tを増加する必要がある。
【0048】
ここで、まずベースプレート16Aにおいて一対の一方のフランジ30Bの周囲に設けられた第1アンカーボルト24及び第2アンカーボルト26の合計本数がn本とされる。nは本実施形態において「4」である。矢印FH方向のi番目の第1アンカーボルト24又は第2アンカーボルト26の軸方向における降伏引張強度がTiとされる。i番目の第1アンカーボルト24又は第2アンカーボルト26の中心軸と、矢印WH方向におけるフランジ30Bとの離間距離がLiとされる。更に、ベースプレート16Aの矢印FH方向の寸法(幅寸法)がBとされ、ベースプレート16Aの厚さがtとされ、ベースプレート16Aの材料の降伏点がσとされる。この場合、ベースプレート16Aにおいて、下記数1に表される関係式が成立つ。
【数1】
【0049】
上記関係式において、左辺の離間距離Liが小さくなると、右辺の厚さtが小さくなる。すなわち、本実施形態では、離間距離Liを積極的に小さくすることにより、ベースプレート16Aの厚さを薄くすることができる。従って、ベースプレート16Aの材料費が削減されるので、柱構造10の材料費、更には製造費用を削減することができる。
【0050】
更に、本実施形態に係る柱構造10及びベース部材16では、ベースプレート16Aの下側に凹部22が設けられている。この凹部22にはモルタル14が埋込まれ、ベースプレート16Aがモルタル14を介して基礎12に係止される。このため、地震等の水平荷重が生じた際に、基礎12に対するベース部材16のずれが抑制される。従って、柱構造10及びベース部材16では、鉄骨柱30からベースプレート16A、第1アンカーボルト24及び第2アンカーボルト26を介して基礎12へ伝達される剪断応力が効果的に抑制されるので、剪断耐力を向上させることができる。
【0051】
[第2実施形態]
図3を用いて、本発明の第2実施形態に係る柱構造及びベース部材を説明する。なお、本実施形態並びに後述する他の実施形態において、第1実施形態に係る柱構造10及びベース部材16の構成と同一の構成には同一符号を付し、この構成の説明は重複するので省略する。
【0052】
(柱構造及びベース部材の構成)
図3に示されるように、本実施形態に係る柱構造40及びベース部材16では、第1アンカー部材としての第1アンカーボルト42の構成が、第1実施形態における第1アンカーボルト24の構成に対して異なる。これ以外の構成において、本実施形態に係る柱構造40及びベース部材16の構成は、第1実施形態に係る柱構造10及びベース部材16の構成と同一である。
【0053】
詳しく説明すると、第1アンカーボルト42は、アンカー本体42Aの下端部42Bに設けられた雄ねじに2つのナット42D及びナット42Eが蝶合されている。ナット42Dとナット42Eとの間には円環平板状の定着板42Fが介在されている。定着板42Fはナット42D及びナット42Eにより締付けられて固定されている。ナット42D、ナット42E及び定着板42Fは、基礎12に埋込まれ、第1アンカーボルト42の抜けを防止する構成とされている。アンカー本体42Aの上端部42Cはベースプレート16Aの第1固定孔18A〜18Dを貫通して突出する構成とされている。この上端部42Cには雄ねじが設けられており、雄ねじにベースプレート16Aを固定するナット42Gが蝶合されている。ベースプレート16Aとナット42Gとの間には円環平板状のワッシャ42Hが介在されている。
【0054】
そして、第1アンカーボルト42のアンカー本体42Aの軸方向長さが、第2アンカーボルト26のアンカー本体26Aの軸方向長さに対して長く形成されている。本実施形態では、アンカー本体42Aの軸径は、アンカー本体26Aの軸径と同一とされている。第1実施形態における条件と同一条件において、アンカー本体42Aは、アンカー本体26Aに対して、1.2倍以上1.5倍以下の長さに設定されている。
【0055】
(第2実施形態の作用効果)
本実施形態に係る柱構造40及びベース部材16では、第1アンカーボルト42が第2アンカーボルト26よりも軸方向長さが長く形成されているので、第2アンカーボルト26の降伏変形が第1アンカーボルト42の降伏変形よりも小さくなる。従って、柱構造40及びベース部材16の降伏曲げ耐力を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る柱構造40及びベース部材16では、上記作用効果以外に、第1実施形態に係る柱構造10及びベース部材16により得られる作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0057】
[第3実施形態]
図4を用いて、本発明の第3実施形態に係る柱構造及びベース部材を説明する。
【0058】
(柱構造及びベース部材の構成)
図4に示されるように、本実施形態に係る柱構造50及びベース部材16では、第1アンカー部材としての第1アンカーボルト52の構成が、第1実施形態における第1アンカーボルト24の構成に対して異なる。これ以外の構成において、本実施形態に係る柱構造50及びベース部材16の構成は、第1実施形態に係る柱構造10及びベース部材16の構成と同一である。
【0059】
詳しく説明すると、第1アンカーボルト52は、アンカー本体52Aの下端部52Bに設けられた雄ねじに2つのナット52D及びナット52Eが蝶合されている。ナット52Dとナット52Eとの間には円環平板状の定着板52Fが介在されている。定着板52Fはナット52D及びナット52Eにより締付けられて固定されている。ナット52D、ナット52E及び定着板52Fは、基礎12に埋込まれ、第1アンカーボルト52の抜けを防止する構成とされている。アンカー本体52Aの上端部52Cはベースプレート16Aの第1固定孔18A〜18Dを貫通して突出する構成とされている。この上端部52Cには雄ねじが設けられており、雄ねじにベースプレート16Aを固定するナット52Gが蝶合されている。ベースプレート16Aとナット52Gとの間には円環平板状のワッシャ52Hが介在されている。
【0060】
そして、第1アンカーボルト52のアンカー本体52Aの軸径が第2アンカーボルト26のアンカー本体26Aの軸径に対して大きく、かつアンカー本体52Aの軸方向長さが第2アンカーボルト26のアンカー本体26Aの軸方向長さに対して長く形成されている。
【0061】
(第3実施形態の作用効果)
本実施形態に係る柱構造50及びベース部材16では、第1アンカーボルト52が第2アンカーボルト26よりも軸径が大きく、かつ軸方向長さが長く形成されているので、第2アンカーボルト26の降伏変形が第1アンカーボルト52の降伏変形よりも小さくなる。従って、柱構造50及びベース部材16の降伏曲げ耐力を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る柱構造50及びベース部材16では、上記作用効果以外に、第1実施形態に係る柱構造10及びベース部材16により得られる作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0063】
[第4実施形態]
図5を用いて、本発明の第4実施形態に係る柱構造及びベース部材を説明する。本実施形態は、第2実施形態に係る柱構造40及びベース部材16の変形例である。
【0064】
(柱構造及びベース部材の構成)
図5に示されるように、本実施形態に係る柱構造60及びベース部材16では、第2固定部としての第2固定孔20E〜20Hのベースプレート16Aにおける配置位置が、第2実施形態における第2固定部としての第2固定孔20A〜20Dの配置位置と異なる。これ以外の構成において、本実施形態に係る柱構造60及びベース部材16の構成は、第2実施形態に係る柱構造40及びベース部材16の構成と同一である。
【0065】
詳しく説明すると、第2実施形態における第2固定孔20Aに対応する本実施形態における第2固定孔20Eは、フランジ30Bよりもウェブ30Aの幅方向(矢印WH方向)内側に設けられている。ウェブ30Aの幅方向において、第2固定孔20Eの配置位置は第1固定孔18Aの配置位置と一致されている。第1固定孔18Aには軸方向長さが長い第1アンカーボルト42が挿入されており、この第1アンカーボルト42の上端部42Cがベースプレート16Aに固定されている(
図3参照)。第2固定孔20Eには軸方向長さが短い第2アンカーボルト26が挿入されており、この第2アンカーボルト26の上端部26Cがベースプレート16Aに固定されている。
【0066】
同様に、第2固定孔20Bに対応する第2固定孔20Fは、フランジ30Bよりもウェブ30Aの幅方向内側に設けられており、ウェブ30Aの幅方向において第2固定孔20Fの配置位置は第1固定孔18Bの配置位置と一致されている。また、第2固定孔20Cに対応する第2固定孔20Gは、フランジ30Bよりもウェブ30Aの幅方向内側に設けられており、ウェブ30Aの幅方向において第2固定孔20Gの配置位置は第1固定孔18Cの配置位置と一致されている。第2固定孔20Dに対応する第2固定孔20Hは、フランジ30Bよりもウェブ30Aの幅方向内側に設けられており、ウェブ30Aの幅方向において第2固定孔20Hの配置位置は第1固定孔18Dの配置位置と一致されている。第1固定孔18B〜18Dには第1アンカーボルト42が挿入されており、この第1アンカーボルト42の上端部42Cがベースプレート16Aに固定されている。第2固定孔20F〜20Hには第2アンカーボルト26が挿入されており、この第2アンカーボルト26の上端部26Cがベースプレート16Aに固定されている。
【0067】
(第4実施形態の作用効果)
本実施形態に係る柱構造60及びベース部材16では、ベース部材16がフランジ30Bよりもウェブ30Aの幅方向内側において第2アンカーボルト26の上端部26Cに固定される。フランジ30Bを中心としてその両側に2個の第1アンカーボルト42及び2個の第2アンカーボルト26が設けられるので、第1アンカーボルト42及び第2アンカーボルト26の配置レイアウトが緩和される。このため、第1アンカーボルト42及び第2アンカーボルト26を避けて、基礎12に配筋が形成し易くなる。
【0068】
また、本実施形態に係る柱構造60及びベース部材16では、上記作用効果以外に、第2実施形態に係る柱構造40及びベース部材16により得られる作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0069】
なお、本実施形態は、第1実施形態に係る柱構造10及びベース部材16、又は第3実施形態に係る柱構造50及びベース部材16に適用可能である。すなわち、本実施形態における第1アンカーボルト42は、第1実施形態では第1アンカーボルト24とされ、第3実施形態では第1アンカーボルト52とされる。
【0070】
[その他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、ベース部材においてウェブの幅方向の両端部に、フランジの幅方向に沿ってそれぞれ4つのアンカー部材(固定部)が設けられている。本発明では、ベース部材の長手方向の一端部、他端部にそれぞれ3つ以上のアンカー部材が設けられていればよい。最小の3つのアンカー部材の場合、フランジの幅方向の中央部に1つの第1アンカー部材が設けられると共に、フランジの幅方向の両端部に各々1つの第2アンカー部材が設けられる。
【0071】
また、上記実施形態では、ウェブの幅方向に第1アンカー部材及び第2アンカー部材を設けているが、第2アンカー部材の更にウェブの幅方向内側に第3アンカー部材を設けてもよい。この場合、第1アンカー部材から第3アンカー部材へ順次降伏変形が小さく設定される。