(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、加飾フィルムを表面に配置し、物品を装飾することが行われている。特に、加飾フィルムを用いた表面加飾は、3次元的な形状(曲面形状、凹凸形状、有孔形状など)を持った物品に対し、好適に意匠を付与することが出来る。このような、加飾フィルムを用いた加飾成形品を製造する加飾成形品製造方法として、成形同時加飾法などが提案されている。
【0003】
例えば、成形同時加飾法として、基材フィルム上に印刷法によって意匠を形成することにより加飾フィルムを形成し、該加飾フィルムを射出成形用金型の中に入れて型閉めし、該金型内に溶融樹脂を射出して射出成形することにより、加飾フィルムが一体化された加飾成形品を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、物品の表面装飾として、外表面近傍の層内または外表面に微細な凹凸を形成することが行われている。微細な凹凸を形成することにより、艶消し調(マット調、スエード調)の風合いを物品表面に持たせることが出来る。また、微細な凹凸を形成することにより、しっとり感、さらさら感、弾力感、などの言葉によって表現される良好な触感(以下、ソフトフィール感と表記する)を、併せて物品表面に持つことが出来る。
【0005】
例えば、外表面に微細な凹凸を形成する方法として、サンドブラストや薬品腐食などの方法を用いて、外表面に微細な凹凸を物理的に設ける方法が知られている。
【0006】
例えば、発泡剤を含む塗料を用いて成形物を塗装し、成形物を加熱することにより塗料を発泡し、表面を発泡させて微細な凹凸を形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
例えば、メタアクリル酸エステル等から生成される弾力性微粒子を含む塗料を用いて塗装し、外表面近傍の層内または外表面に微細な凹凸を形成する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の加飾フィルムについて説明を行う。
【0021】
基材フィルムは、加飾フィルムの基体となる部位である。加飾成形品の用途に応じて適宜公知の材料から選択してよい。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いてもよい。また、基材フィルムは2種以上のフィルムを貼り合わせた複層の複合フィルムであってもよい。
【0022】
また、基材フィルムは、枚葉状(一定寸法の四辺形)に断裁したものを用いることが好ましい。枚葉状に断裁することにより、好適に枚葉オフセット印刷機にて取り扱うことが出来、オフセット印刷を用いて複雑な図柄を描写することが出来る。
【0023】
また、基材フィルムの厚みは、50μm以上200μm以下程度の範囲内が好ましい。50μm以上200μm以内程度の範囲内の厚みのフィルムは、各種印刷法(例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、など)において好適に取り扱うことの出来る厚みであり、効率よく加飾フィルムを生産することが出来る。ただし、本発明の加飾フィルムにおいて基材フィルムの厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0024】
また、基材フィルムには紫外線吸収剤が添加されていることが好ましい。基材フィルムに紫外線吸収剤が添加されることにより、基材フィルムより内部(後述するパターン層、耐熱層、接着層、成形樹脂の部位など)へ紫外線が到達することを抑制することが出来る。このため、加飾成形品の紫外線暴露による変色/劣化などを軽減することが出来る。紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロベンゾフェノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノール、などを用いてもよい。
【0025】
また、基材フィルムの表面に易接着表面処理を行ってもよい。易接着表面処理を行うことにより、基材フィルムの表面上に積層される層の接着を強固にすることが出来る。易接着表面処理としては、例えば、コロナ放電、オゾン処理、などの方法が挙げられる。
【0026】
パターン層は、基材フィルムの表面に積層され、図柄など、意匠を付与するために形成する。パターン層の形成には、適宜公知の印刷法を用いてよい。例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、などを用いて形成してよい。また、印刷法を用いてパターン層を形成する場合、パターン層の図柄は、裏刷り(本発明加飾フィルムを用いた加飾成形品では、基材フィルム側から観察することになる。このため、所望するデザインパターンを反転した図柄で印刷することをいう。)にて行う。
【0027】
また、パターン層の形成には、特に、オフセット印刷を用いることが好ましい。オフセット印刷は、版交換に時間がかからないことから、複数種類の印刷版を用いて複雑な図柄の印刷を行うことが出来る。また、スクリーン線数が175線以上となるような製版を利用することが出来、階調表現に優れることから、複雑な図柄の意匠を表現することが出来る。また、多数の色のインキを利用することが出来、多数の色表現を行うことが出来る。
【0028】
また、パターン層に形成する図柄は、加飾フィルムが所望する加飾成形品の三次元的な形状に伸張されることから、加飾フィルムの伸縮に合わせて適宜大きさを調整することが好ましい。
【0029】
パターン層を形成するインキは、(1)基材フィルムに対する接着性、(2)所望する図柄の色およびパターン、などを鑑みて適宜公知のインキから選択してよい。このとき、基材フィルムに対する接着性の観点から、選択するインキは「JIS K 5600−5−6」に規定されている方法で試験を行った後に、剥れている部位が認められない程度の接着性を有することが好ましい。
【0030】
また、パターン層を形成するインキは、<1>CMYK(シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、キー・プレート(Key Plate))から成るプロセスカラー、<2>補助的に用いられる金赤(ブロンズ・レッド)、草(グリーン)、紫(バイオレット)等の中間色、<3>調色による特色インキ、<4>金属粒子を分散したインキ、<5>透明インキ、などの色のインキを適宜選択して用いてよい。
【0031】
また、パターン層を形成するインキは、耐光性の高い色材成分を含むインキであることが好ましい。耐光性の高い色材成分を含むインキを用いることにより、耐光性が求められる用途に対し、好適な加飾フィルムを製造することが出来る。耐光性の高い色材成分としては、例えば、シアン色材のフタロシアニンブルー、マゼンタ色材のキナクリドンレッド、イエロー色材のモノアゾイエロー、などが挙げられる。
【0032】
また、パターン層を形成するインキは、紫外線硬化型樹脂を含むインキであることが好ましい。紫外線硬化型樹脂を含むインキは、紫外線を照射することでインキを固着することが出来る。このため、基材フィルムに浸透しないインキを用いてもパターン層の密着性を向上させることが出来、非溶剤使用型のインキをパターン層の材料として選択することが出来る。また、紫外線硬化型インキは、乾燥時間も短く、時間当たりの生産効率もよく、好ましい。
【0033】
接着層は、パターン層側の最外面に積層され、加飾フィルムと成形樹脂を密着させ、加飾成形品としての一体性を得るために配置される。また、接着層の形成には、適宜公知の印刷法、薄膜形成方法を用いてよい。例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、などを用いて形成してよい。特に、スクリーン印刷は、厚塗りが可能なことから、接着層の形成方法として好ましい。接着層に用いる材料としては、例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、を含む樹脂を用いてよい。このとき、希釈溶剤成分として、シクロヘキサノンや、キシレンを含む溶剤を用いてもよい。
【0034】
また、接着層は外表面から観察したとき、色味に影響を与えないように、無色透明であることが好ましい。
【0035】
また、接着層の厚みは、3μm以上10μm以下程度の範囲内にあることが好ましい。3μmよりも小さいと成形樹脂と接着するのに好ましくない。また、10μmよりも大きいと、(1)接着層の凝集破壊の発生、(2)膜厚ムラによる外観不良の発生、などの観点から好ましくない。ただし、本発明の加飾フィルムの接着層の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0036】
好感触層は、パターン層が形成された側と異なる側の基材フィルム表面に積層され、加熱により発泡する発泡剤を含む層である。本発明の加飾フィルムは、外表面にある好感触層が加熱により発泡する発泡剤を含む層であることから、成形同時加飾法の成形時に、好感触層の発泡および成形品と加飾フィルムの一体化を同時に行うことが出来る。このため、金型からの離型後の表面装飾加工を必要とせずに、艶消し調の風合いおよびソフトフィール感に優れた加飾成形品を得ることが出来る。また、好感触層の形成には、適宜公知の印刷法、薄膜形成方法を用いてよい。例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、などを用いて形成してよい。
【0037】
発泡剤は、加熱により発泡する材料である。発泡剤は少なくとも、射出成形の時に本発明の加飾フィルムにかかる熱で速やかに発泡するものでなければならない。このような性質を備える発泡剤として、例えば、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミドといった化学反応により気体を発生して発泡するもの、またはポリアクリロニトリルやポリ塩化ビニリデン等から生成される外殻を持ち、外殻内に常温で液体の炭化水素(例えば、ノルマルペンタン、イソペンタンなど)を充填することで生成される熱膨張マイクロカプセルなどを使用できる。特に、熱膨張マイクロカプセルは、スクリーン印刷を用いて層形成するのに適しており、本発明の好感触層に用いる発泡剤として好ましい。熱膨張マイクロカプセルを用いるのが好ましいのは、前記の化学反応を起こすタイプでは発泡後に分解生成物が好感触層に残留することで物性低下を招く可能性があるのに対し、熱膨張マイクロカプセルでは発泡後も外殻成分に変化はないことによる。
【0038】
また、好触感層は、特に、スクリーン印刷により形成されることが好ましい。スクリーン印刷は厚塗りが可能な印刷法であり、膜厚を広い範囲で制御することが出来る。また、スクリーン印刷はスクリーン版にインキを盛ることから、部分的に印刷を行うことが出来る。このため、好触感層側の面に基材フィルムが露出した部位を有する加飾フィルムを好適に製造することが出来る。
【0039】
また、好触感層側の面に、基材フィルムが露出した部位を有することが好ましい。好感触層を面内に部分的に形成することにより、部位により触感の異なる加飾成形品を提供することが出来る。部位により触感の異なる加飾成形品は、例えば、人の手の形状に沿って触感を変える製品など、多彩な意匠の実現を可能とすることが出来る。
【0040】
また、好触感層の厚みは、8μmより大きく40μmより小さいことが好ましい。好感触層は加飾成形物の最外面に存在することから、8μm以下であると表面硬度に劣り、好ましくない。また、実用に充分な表面硬度を得るためには好感触層の厚みは30μm程度(具体的には、20より大きく40μmより小さい程度の範囲内)にあることが好ましい。ただし、本発明の加飾フィルムの好感触層の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0041】
また、好感触層は、ポリエステル系樹脂を含む樹脂混合物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂を含む樹脂混合物、からなる群から選ばれた一つ以上の樹脂混合物と、メタアクリル酸エステルを含む弾力性微粒子と、を含む層であることが好ましい。弾力性微粒子を含む材料を好感触層に用いることにより、加飾成形物にソフトフィール感を備えることが出来る。このような弾力性微粒子を含む樹脂組成物として、具体的な製品名としては、例えば、セイコーアドバンス社製の「ソフトタッチ シリーズ」などがある。
【0042】
また、前記パターン層と前記接着層との間に耐熱層を備えていてもよい。耐熱層を備えることにより、成形同時加飾法にて成形樹脂と一体化するにあたり加飾フィルムが高温で射出される成形樹脂の圧力と熱によって溶融し流出すること(インキ流れ)を抑制することが出来る。
【0043】
また、耐熱層の形成には、適宜公知の印刷法、薄膜形成方法を用いてよい。例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、などを用いて形成してよい。特に、スクリーン印刷は、厚塗りが可能なことから、耐熱層の形成方法として好ましい。耐熱層に用いる材料としては、溶融成形樹脂の温度、射出速度、などに応じて、適宜公知の材料から選択してよい。例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂の混合物または、ポリエステル樹脂が主成分となって形成されており、さらにポリイソシアネート樹脂等の触媒を添加して80℃〜100℃程度の温度で乾燥させることにより、触媒を加えない場合に比べて樹脂架橋密度が上昇する性質を持っているインキ、を用いてもよい。具体的な製品名としては、例えば、十条ケミカル社製の「3100シリーズ FM」、帝国インキ製造社製「IPX」「INQ」、などが挙げられる。
【0044】
また、耐熱層は不透明な色味を持っていることが好ましい。耐熱層はパターン層の下地にあたる位置に形成されるため、外表面から加飾成形品を観察したとき、内部の接着層、成形樹脂の色味を隠蔽することが出来る。また、耐熱層に不透明な色味を持たせるために、耐熱層となる材料に顔料を添加してもよい。顔料として、例えば、白色の酸化チタンを用いてもよい。
【0045】
また、耐熱層の厚みは、10μm以上50μm以下程度の範囲内にあることが好ましい。10μmよりも小さいと成形時の高温条件に耐えられず、層構成の崩壊による外観不良が発生する恐れがあるため好ましくない。また、50μmよりも大きいと、耐熱層の凝集破壊の発生の恐れがあり好ましくない。ただし、本発明の加飾フィルムの耐熱層の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0046】
図1に、本発明の加飾フィルム1について一例を概略断面図にて示す。
図1では、基材フィルム3の一方の面上にパターン層5/耐熱層7/接着層9、がこの順で積層され、基材フィルム3の他方の面上に好感触層11が積層された加飾フィルム1を示す。
【0047】
図2に、本発明の加飾フィルムを用いた加飾成形物の一例を概略断面図にて示す。
図2では、好感触層11/パターン層5/耐熱層7/接着層9、がこの順で積層された加飾フィルム1の接着層9側に射出した溶融樹脂を固化させて形成した成形樹脂を備えた加飾成形物14を示す。
【0048】
以下、本発明の加飾フィルムを用いた加飾成形品製造方法について、説明を行う。
本発明の加飾フィルムを用いて、プラスチック成形(例えば、インサート成形、真空成形、など)を行うことにより、成形時の加圧・加熱により、外表面にある好感触層が発泡し、好感触層の発泡および成形品と加飾フィルムの一体化を同時に行うことが出来る。以下、具体的に、インサート成形により固着する場合について一例を挙げながら、説明を行う。
【0049】
<配置工程>
まず、上述に記載の加飾フィルムを成形金型に配置する。
加飾フィルムを金型に配置するにあたり、成形金型の形状と加飾フィルムの図柄の位置がずれないように、位置あわせを行う。
【0050】
成形金型は、所望する加飾成形品の形状に対応した形状を内部空間に備えた型である。また、成形金型には、成形樹脂を注入するための注入口を設置する。注入口の設置位置は、溶融成形樹脂を金型内へ射出する際に発生する熱やガスにより、加飾フィルムが異常に変形しないように、成形金型の形状や用いる溶融成形樹脂の種類に合わせて適宜設定してよい。
【0051】
位置あわせの方法としては、(1)金型の雌型に位置あわせ穴、雄型に固定ピン、をそれぞれ設置し、固定ピンを位置合わせ穴に嵌合することにより位置合わせを行う方法、(2)最終製品である加飾成形品に付与されないエリア(ダミー部分)に、位置合わせマークを形成し、画像認識装置により位置あわせ用を行う方法、などの方法を用いてよい。また、位置あわせの方法は複数の方法を組み合わせて行っても良い。また、画像認識にて位置認識を行う場合、位置合わせマークは、最終製品である加飾成形品から見て、対角2点以上で認識するのが望ましい
【0052】
また、位置合わせにおいて、例えば、(1)各位置合わせマーク位置で画像パターンの伸縮に合わせ上下左右の位置を均等割りする制御方法、(2)加飾フィルムの搬送時の張力の制御により微調整をかけて上下左右の位置を均等割りする制御方法、などを実施してもよい。
【0053】
また、加飾フィルムを金型に配置するにあたり、加飾フィルムは他の金型を用いて3次元形状を付与(プレフォーム)されていてもよい。プレフォームを行うことにより、好適に金型と位置合わせを行うことが出来る。
【0054】
図3に、本発明の加飾成形品製造方法に用いる金型の一例について断面概略図で示す。
図3は、金型が開いた状態(型開き状態)を示す図である。
図3において、成形金型23は、雌型25と雄型27とを組み合わせて成る。雌型25には、位置合わせ穴29が設置されている。また、雄型27には、雌型25の位置合わせ穴29と対応する位置に固定ピン31が設置されている。また、雄型27には、成形樹脂を充填するための注入口33が形成されている。
【0055】
図4に、本発明の加飾成形品製造方法に用いる金型の一例について断面概略図で示す。
図4は、加飾フィルムを保持し、金型が閉じた状態(型閉じ状態)を示す図である。
図4において、加飾フィルム1は雌型25と雄型27とに挟持されることにより成形金型23に保持されている。このとき、雌型25の位置合わせ穴(図示せず)に、雌型25の固定ピン(図示せず)が嵌合されている。また、位置合わせ穴および固定ピンに対応する位置に保持された加飾フィルム1の部位は、最終製品である加飾成形品に付与されないエリア(以下、ダミー部分とする)である。
【0056】
<射出成形工程>
次に、加飾フィルムを固定した金型内部に成形樹脂を射出することにより射出成形を行う。このとき、本発明加飾フィルムは発泡剤を含むことから、射出成形時の熱により好感触層の発泡と同時に成形品の表面に加飾フィルムを一体化する。
【0057】
成形樹脂は、加飾成形品の用途に応じて、適宜公知の材料から選択してよい。また、射出成形にあたり溶融した成形樹脂の温度は成形樹脂の物性などに応じて適宜調整してよい。例えば、アクリル樹脂(射出成形時温度:240℃以上260℃以下程度)、ABS樹脂(射出成形時温度:230℃程度)、などを用いてもよい。
【0058】
<型開き工程>
次に、固化した成形樹脂を中間加飾成形品として成形金型から取り出し、取り出した中間加飾成形品の周囲のバリなどを除去し、所望する加飾成形品を得る。
【0059】
図5に、本発明の加飾成形品製造方法により得られた中間加飾成形品15の一例について、概略図を示す。なお、
図5(a)は中間加飾成形品15の上面図であり、
図5(b)は
図5(a)にて示すA−Bの線における中間加飾成形品15の線断面図である。
成形金型から取り出した中間加飾成形品15は、上面に加飾フィルムが伸張した加飾部17とダミー部分19を備え、加飾部17の背面には成形樹脂13が充填され一体化している。ダミー部分19には成形金型の位置合わせ穴/固定ピンと対応する位置に、位置合わせに用いた挿通孔21が形成される。このとき、挿通孔21は上面から背面まで貫通する貫通孔である。
【0060】
図6に、本発明の加飾成形品製造方法により得られた加飾成形品14の一例について、概略図を示す。なお、
図6(a)は中間加飾成形品14の上面図であり、
図6(b)は
図6(a)にて示すC−Dの線における中間加飾成形品15の線断面図である。
中間加飾成形品から周囲のバリおよびダミー部分を除去した、加飾成形品14は、上面に加飾フィルムが伸張した加飾部17を備え、加飾部17の背面には成形樹脂13が充填され一体化している。
【0061】
以上より、本発明の加飾フィルムを用いた加飾成形品製造方法により、本発明の加飾フィルムを用いた加飾成形品を得ることが出来た。
【実施例】
【0062】
<実施例1>
(加飾フィルムの製造)
まず、基材フィルムを用意した。
基材フィルムは、厚さ125μmのポリカーボネートフィルム(帝人化成社製「パンライトシート PC−2151」)を枚葉状(一定寸法の四辺形)に断裁したものを用いた。
【0063】
次に、基材フィルム上に、パターン層を形成した。
パターン層の形成には、枚葉オフセット印刷機(UV乾燥ユニット付き)を用いた。また、パターン層の形成に用いたインキは、ポリエステル樹脂を主成分とするUV乾燥型インキ(東洋インキ社製「FD Oニュー HW−PT」)とした。また、シアン(藍)、マゼンタ(紅)、イエロー(黄)、キー・プレート(墨)による4色印刷を行った。また、複数の印刷版を用いて印刷を行った。
【0064】
次に、パターン層上に、耐熱層を形成した。
耐熱層の形成には、スクリーン印刷を用いた。また、耐熱層の形成に用いたインキは、ポリエステル樹脂を含む白色インキ(帝国インキ社製 「IPX−675白」)とした。また、スクリーン版は、乳剤厚30μm、メッシュ数100線/インチのシルクスクリーン版を用いた。また、スクリーン印刷を2回行い、重ね印刷を行った。
【0065】
次に、耐熱層上に、接着層を形成した。
接着層の形成には、スクリーン印刷を用いた。また、接着層の形成に用いた接着剤インキは、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体及びアクリル樹脂を主成分とする接着剤(帝国インキ社製「IMB−003」)とした。
【0066】
次に、形成したパターン層/耐熱層/接着層、の各層の物性(例えば、層間の密着性など)が安定するまで乾燥を行った。
【0067】
次に、パターン層が形成された側と異なる側の基材フィルム表面に好感触層を形成した。
好感触層の形成には、スクリーン印刷を用いた。また、好感触層の形成に用いたインキは、ポリエステル系樹脂を混合した混合物に、弾力性のある微細な樹脂粒子を混合して生成したインキ(セイコーアドバンス社製「ソフトタッチ 800メジューム」)とした。また、好感触層の形成に用いたインキには、発泡剤として、熱膨張マイクロカプセル(英国EXPANCEL社「EXPANCEL 920−40」)を添加した。
【0068】
以上より、本発明の加飾フィルムを得ることが出来た。このとき、形成された耐熱層の厚みは40μmであった。また、形成された接着層の厚みは4μmであった。また、形成された好感触層の厚みは30μmであった。
【0069】
(加飾フィルムを用いた加飾成形品製造方法)
まず、得られた加飾フィルムを用いる射出成形金型の形状にあわせてプレフォームを行った。このとき、用いる加飾フィルムには、金型との位置あわせに用いるダミー部分を持たせた。
【0070】
次に、プレフォームを行った加飾フィルムを射出成形金型に固定し、型閉めを行なった。
【0071】
次に、成形樹脂を加飾フィルムの接着層側に射出し、射出成形を行った。
成形樹脂には、溶融したアクリル樹脂(三菱レイヨン社製「アクリペット」)を用いた。また、射出条件は、温度250℃、射出速度100mm/秒、とした。
【0072】
次に、金型から射出成形品である中間加飾成形品を取り出し、該中間加飾成形品の周囲に残ったバリをトリミングし、残存したダミー部分を断裁し、全体的にバリ取りの仕上げを行った。
【0073】
以上より、本発明の加飾フィルムを表面に有する加飾成形品を得ることが出来た。
【0074】
<実施例2>
実施例1と同様に本発明の加飾フィルムを表面に有する加飾成形品を製造した。
ただし、用いる加飾フィルムにおいて、形成された好感触層の厚みは8μmであった。
【0075】
<評価>
実施例1および実施例2において得られた加飾成形品は、ソフトフィール感を備え、かつ、複雑な絵柄の意匠を有していた。よって、本発明の加飾フィルムを用いた加飾成形品製造方法により、ソフトフィール感を備え、かつ、複雑な絵柄の意匠を有する加飾成形品を得ることが可能であることが実証された。
【0076】
また、実施例1および実施例2において得られた加飾成形品に対し、それぞれ、(1)鉛筆硬度試験(JIS K 5600−4準拠)、(2)密着性試験(JIS K 5600−5−6準拠)、(3)エタノール含侵試験(荷重500g、ラビング回数300回)、(4)プラスチック消しゴムラビング試験(使用消しゴム:登録商標「MONO」株式会社トンボ鉛筆製、荷重500g、ラビング回数5000回)、の評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1より、好感触層の厚みが30μmである実施例1のほうが、好感触層の厚みが8μmである実施例2よりも表面硬度が優れていた。よって、実施例1および実施例2は、共に、艶消し調の風合いおよびソフトフィール感に優れるが、好感触層の厚みが30μm程度(具体的には、20より大きく40μmより小さい程度の範囲内)にある実施例1がより好ましいことが示唆された。よって、好感触層の厚みは、8μmより大きく40μmより小さいことに示す程度の範囲内にあることがより好ましいことが示唆された。