特許第5906907号(P5906907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5906907
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】クローラ式車両のフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/10 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
   B62D55/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-84415(P2012-84415)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-212778(P2013-212778A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020362
【氏名又は名称】コベルコクレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100100262
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 勉
(72)【発明者】
【氏名】小泉 幸雄
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−142936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボディの左右両側に、それぞれ外周にクローラが装着される左右一対のクローラフレームを配置するとともに、この各クローラフレームとカーボディとの間に跨がって油圧シリンダを配置し、この油圧シリンダにより各クローラフレームが左右のクローラの間隔を最大とする拡張位置と最小とする縮小位置との間に移動可能に設けられたクローラ式車両のフレーム構造において、
上記各クローラフレームの拡張位置で上記油圧シリンダの少なくとも縮小動作又はその縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動を規制する規制手段を備え、この規制手段は、油圧シリンダの取付構造に設けられており、
上記油圧シリンダは、カーボディのアクスル部の外側面に沿って車幅方向に平行でかつシリンダチューブ側をクローラフレームに向けた状態で配置されており、この油圧シリンダの取付構造は、油圧シリンダのシリンダチューブ基端部をクローラフレームに取り付けるための第1の取付部と、油圧シリンダのピストンロッド先端部をカーボディのアクスル部に取り付けるための第2の取付部と、油圧シリンダのシリンダチューブ先端部をカーボディのアクスル部に取り付けるための第3の取付部とを有し、上記第2の取付部と第3の取付部とで取付ピンを兼用し、通常第2の取付部で取付ピンを用いて取り付けを行い、油圧シリンダの伸長動作により各クローラフレームを拡張位置に移動させた後上記第2の取付部から取付ピンを取り外し、その取り外した取付ピンを用いて第3の取付部で取り付けを行うことにより上記規制手段としての機能を発揮するように構成されていることを特徴とするクローラ式車両のフレーム構造。
【請求項2】
上記第3の取付部は、左右の油圧シリンダではその中心線を挟んで上下反対に設けられている請求項1記載のクローラ式車両のフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーンや油圧ショベルなどのクローラ式車両のフレーム構造に関し、特に、カーボディの左右両側に配置されるクローラフレームを車幅方向に移動可能に設けてなるものに係わる。
【背景技術】
【0002】
一般に、クローラクレーンなどのクローラ式車両のフレーム構造は、前後にそれぞれ車幅方向に延びる2つのアクスル部を有するカーボディ(センターフレームともいう)と、このカーボディの左右両側に配置され、それぞれ外周にクローラを装着する左右一対のクローラフレームとを備えている。
【0003】
そして、このようなフレーム構造の場合、通常、作業時の安定性を高めるために左右のクローラの間隔を拡張し、またトレーラによる車両の運搬時に法規制との関係で左右のクローラの間隔を縮小し得る構成になっている。例えば特許文献1には、各クローラフレームの前後2箇所にそれぞれ車幅方向に貫通するガイド孔を設け、この両ガイド孔にカーボディの前後2つのアクスル部の端部を摺動可能に挿入して支持させるとともに、カーボディと各クローラフレームとの間に1つずつの油圧シリンダを配置し、この油圧シリンダにより各クローラフレームを拡張位置と縮小位置との間で移動させる構成が記載されている。また、特許文献2には、各クローラフレーム上面の前後2箇所にそれぞれ受け入れ構造を形成するガイド部を設け、この両ガイド部にカーボディの前後2つの凸部であるアクスル部の端部を車幅方向に摺動可能に挿入して支持させるとともに、カーボディと各クローラフレームとの間に前後2つずつの油圧シリンダを配置し、この前後2つの油圧シリンダにより各クローラフレームを拡張位置と縮小位置との間に移動させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−142497号公報(第2頁、図8図10
【特許文献2】特開2009−119972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の如く油圧シリンダにより各クローラフレームを拡張位置と縮小位置との間で移動させたとき、特に作業時の位置である拡張位置に移動させたときには、オペレータの誤操作や機器の故障などに起因する油圧シリンダの縮小動作又はその縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動を規制することが安全性の面から要望されている。
【0006】
一方、このような要望に答えるものとしては、特許文献1にも開示されているように、カーボディの各アクスル部の外側面に沿って左右2つずつ計4つのストッパアームを配置し、この各ストッパアームの一端をクローラフレームの内側面に固定する一方、各ストッパアームに対応するラグ板をカーボディの各アクスル部の外側面に取り付け、各クローラフレームを拡張位置又は縮小位置に移動させたとき各ストッパアームに設けた2つのピン孔のうちの1つと各ラグ板に設けたピン孔とが一致し、これに結合ピンを挿入して結合することにより、各クローラフレームを拡張位置又は縮小位置に固定するようにしたものが知られている。
【0007】
しかし、このような固定方式のものでは、クローラフレームを移動させる油圧シリンダとは別に、4つずつのストッパアーム及びラグ板などを必要とするため、部品点数が多くなり、重量及びコストが増加するという問題がある。また、特許文献2に記載の如くカーボディの各アクスル部の外側面に沿って左右2つずつ計4つの油圧シリンダを配置する場合、各油圧シリンダの配置スペースと各ストッパアームの配置スペースとが重なり合い、それらの取り付けが困難になるなどの問題もある。
【0008】
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、クローラフレーム移動用の油圧シリンダ自体に、クローラフレームの拡張位置からの移動を規制する機能を持たせることにより、部品点数を少なくして重量及びコストの増加を抑制しつつ、また取り付けの問題も生じることなく、安全性の向上を実施上有効に図り得るクローラ式車両のフレーム構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、クローラ式車両のフレーム構造として、カーボディの左右両側に、それぞれ外周にクローラが装着される左右一対のクローラフレームを配置するとともに、この各クローラフレームとカーボディとの間に跨がって油圧シリンダを配置し、この油圧シリンダにより各クローラフレームが左右のクローラの間隔を最大とする拡張位置と最小とする縮小位置との間に移動可能に設けられていることを前提とする。そして、上記各クローラフレームの拡張位置で上記油圧シリンダの少なくとも縮小動作又はその縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動を規制する規制手段を備え、この規制手段を、油圧シリンダの取付構造に設ける構成にする。
【0010】
この構成では、油圧シリンダにより各クローラフレームを作業時の位置である拡張位置に移動させたときには、規制手段により上記油圧シリンダの少なくとも縮小動作又はその縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動が規制されるため、オペレータの誤操作や機器の故障などに起因する油圧シリンダの縮小動作又はその縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動が生じることはなく、安全性が高められることになる。
【0011】
しかも、上記規制手段は、油圧シリンダの取付構造を利用してその中に設けられているため、構成が簡易でかつ部品点数も少なくて済むことになる。その結果、重量及びコストの増加を抑制することができる。また、カーボディの各アクスル部の外側面に沿って油圧シリンダを配置する場合でも規制手段により油圧シリンダの配置や取付構造に支障を生じることはなく、その取り付けを容易に行うことができる。
【0012】
請求項に係る発明は、上述した構成に加えて、上記規制手段のより具体的な1つの形態を提供するものである。すなわち、上記油圧シリンダを、カーボディのアクスル部の外側面に沿って車幅方向に平行でかつシリンダチューブ側をクローラフレームに向けた状態で配置する。そして、この油圧シリンダの取付構造として、油圧シリンダのシリンダチューブ基端部をクローラフレームに取り付けるための第1の取付部と、油圧シリンダのピストンロッド先端部をカーボディのアクスル部に取り付けるための第2の取付部と、油圧シリンダのシリンダチューブ先端部をカーボディのアクスル部に取り付けるための第3の取付部とを有し、上記第2の取付部と第3の取付部とで取付ピンを兼用し、通常第2の取付部で取付ピンを用いて取り付けを行い、油圧シリンダの伸長動作により各クローラフレームを拡張位置に移動させた後上記第2の取付部から取付ピンを取り外し、その取り外した取付ピンを用いて第3の取付部で取り付けを行うことにより上記規制手段としての機能を発揮するように構成する。
【0013】
この構成では、油圧シリンダの伸長動作により各クローラフレームを拡張位置に移動させた後第2の取付部から取付ピンを取り外し、油圧シリンダのピストンロッド先端部をフリー状態にする一方、この取り外した取付ピンを用いて第3の取付部で油圧シリンダのシリンダチューブ先端部のカーボディへの取り付けを行うことにより、各クローラフレームの拡張位置では油圧シリンダのシリンダチューブ基端部がクローラフレームに、油圧シリンダのシリンダチューブ先端部がカーボディのアクスル部にそれぞれ連結された状態になり、各クローラフレームの拡張位置からの移動が油圧シリンダのシリンダチューブにより規制されるため、別途両者を連結するための部材や部品などを必要とすることなく、オペレータの誤操作や機器の故障などに起因する油圧シリンダの縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動を確実に防止することができる。
【0014】
また、各クローラフレームの拡張位置では油圧シリンダのピストンロッド先端部がフリー状態になり、油圧シリンダを縮小させてそのピストンロッドがシリンダチューブ内に収納される全縮小状態にすることができるので、各クローラフレームが拡張位置での作業期間が長期間になるときでも油圧シリンダのピストンロッドが傷ついたり、錆びたりすることはない。
【0015】
請求項に係る発明は、請求項記載のクローラ式車両のフレーム構造において、上記第3の取付部を、左右の油圧シリンダではその中心線を挟んで上下反対に設ける構成にする。この構成では、左右のクローラフレームが縮小位置に位置するときでも油圧シリンダのシリンダチューブ先端部をカーボディのアクスル部に取り付けるための第3の取付部が、左右の油圧シリンダではその中心線を挟んで上下反対に設けられているため、左右の第3の取付部同士が干渉することなく、左右の油圧シリンダをカーボディのアクスル部の外側面に沿って車幅方向に一直線上に配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明におけるクローラ式車両のフレーム構造によれば、油圧シリンダにより各クローラフレームを拡張位置に移動させたときには、規制手段により油圧シリンダの少なくとも縮小動作又はその縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動が規制されるため、オペレータの誤操作や機器の故障などに起因する油圧シリンダの縮小動作又はその縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動が生じることはなく、安全性の向上を図ることができる。しかも、規制手段は、油圧シリンダの取付構造に設けられ、構成が簡易でかつ部品点数も少なくて済むので、重量及びコストの増加を抑制することができる。また、カーボディの各アクスル部の外側面に沿って油圧シリンダを配置する場合でも規制手段により油圧シリンダの配置や取付構造に支障を生じることはなく、その取り付けを容易に行うことができ、実施化を図る上で有効なものである。
【0017】
その上、各クローラフレームの拡張位置では油圧シリンダのシリンダチューブ基端部がクローラフレームに、油圧シリンダのシリンダチューブ先端部がカーボディのアクスル部にそれぞれ連結された状態になり、各クローラフレームの拡張位置からの移動が油圧シリンダのシリンダチューブにより規制されるため、別途両者を連結するための部材や部品などを必要とすることなく、オペレータの誤操作や機器の故障などに起因する油圧シリンダの縮小動作による各クローラフレームの拡張位置からの移動を確実に防止することができる。また、各クローラフレームの拡張位置では油圧シリンダのピストンロッド先端部がフリー状態になり、油圧シリンダを縮小させてそのピストンロッドがシリンダチューブ内に収納される全縮小状態にすることができるので、各クローラフレームが拡張位置での作業期間が長期間になるときでも油圧シリンダのピストンロッドが傷ついたり、錆びたりすることはなく、耐久性の向上に寄与することができるという効果も奏する。
【0018】
特に、請求項に係る発明では、左右のクローラフレームが縮小位置に位置するときでも油圧シリンダのシリンダチューブ先端部をカーボディのアクスル部に取り付けるための第3の取付部が、左右の油圧シリンダではその中心線を挟んで上下反対に設けられているため、左右の第3の取付部同士が干渉することなく、左右の油圧シリンダをカーボディのアクスル部の外側面に沿って車幅方向に一直線上に配置することができる。そのため、左右の油圧シリンダの上方でトランスリフタをカーボディのアクスル部に取り付ける場合でもその取付スペースを十分に確保することができ、実施化を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明の実施形態に係るクローラ式車両の下部走行体のフレーム構造における作業時の状態を示す平面図である。
図2図2は同じく運搬時の状態を示す平面図である。
図3図3図1のX−X線における拡大断面図である。
図4図4図1のY−Y線における拡大断面図である。
図5図5図2のZ−Z線における拡大断面図である。
図6図6は上記クローラ式車両に装備されるクローラ伸縮用油圧シリンダの油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1ないし図5は本発明の一実施形態に係るクローラ式車両の下部走行体のフレーム構造Aを示し、このフレーム構造Aは、上部旋回体(図示せず)を支持するカーボディ1と、このカーボディ1の左右両側に配置された左右一対のクローラフレーム2L,2Rとを備えている。
【0022】
上記カーボディ1は、中央部に台座3を有し、この台座3の上部に旋回ベアリング4が設けられ、この旋回ベアリング4を介して上部旋回体を垂直軸回りに旋回可能に支持するようになっている。また、カーボディ1は、台座3の前側及び後側にそれぞれ車幅方向(左右方向)に延びる前後2つのアクスル部5,6を有しており、この両アクスル部5,6は、共に矩形の閉断面構造に構成されている。
【0023】
上記各クローラフレーム2L,2Rの外周にはドライブスプロケット、アイドラ(共に図示せず)及びロアローラ7などを介してクローラ8が装着されている。各クローラフレーム2L,2Rには、上記カーボディ1の前後2つのアクスル部5,6に対応して、前後2箇所に車幅方向に貫通する矩形状のガイド孔11,11が設けられているとともに、この両ガイド孔11,11をそれぞれカーボディ1の中心寄りに延長するように各クローラフレーム2L,2Rの内側側面から突出する矩形枠状の突出部12,12が形成されており、各クローラフレーム2L,2Rは、上記各ガイド孔11及び各突出部12内にそれぞれカーボディ1の対応するアクスル部5,6を摺動可能に嵌合した状態でカーボディ1の左右両側に配置されている。
【0024】
上記各クローラフレーム2L,2Rとカーボディ1との間にはカーボディ1のアクスル部5,6毎に左右2つずつ計4つのクローラ伸縮用油圧シリンダ13,13,…が配置され、この各油圧シリンダ13は、カーボディ1の対応するアクスル部5,6の外側面(つまり前側アクスル部5の前面又は後側アクスル部6の後面)に沿って車幅方向に平行でかつシリンダチューブ13a側をクローラフレーム2L,2Rに向けた状態で配置されており、各クローラフレーム2L,2R毎に左側又は右側の2つの油圧シリンダ13,13により当該各クローラフレーム2L,2Rが左右のクローラ8,8の間隔を最大とする拡張位置(図1参照)と最小とする縮小位置(図2参照)との間に移動可能に設けられている。
【0025】
そして、本発明の特徴点として、上記フレーム構造Aは、各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置で上記各油圧シリンダ13の縮小動作による各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置からの移動を規制する規制手段15を備えており、この規制手段15は、油圧シリンダ13毎にその取付構造20に設けられている。
【0026】
すなわち、上記油圧シリンダ13の取付構造20は、油圧シリンダ13のシリンダチューブ13a基端部をクローラフレーム2L,2Rに取り付けるための第1の取付部21と、油圧シリンダ13のピストンロッド13b先端部をカーボディ1のアクスル部5,6に取り付けるための第2の取付部22と、油圧シリンダ13のシリンダチューブ13a先端部をカーボディ1のアクスル部5,6に取り付けるための第3の取付部23と有している。第1の取付部21は、クローラフレーム2L,2Rの内側面から突出する上下2つのプレート21a,21a間にシリンダチューブ13a基端部を挟み、これらを取付ピン21bで結合してシリンダチューブ基端部13aのクローラフレーム2L,2Rへの取り付けを行うようになっている。また、第2の取付部22は、カーボディ1のアクスル部5,6の外側面から突出する上下2つのプレート22a,22a間にピストンロッド13b先端部を挟み、これらを取付ピン24で結合してピストンロッド13b先端部のアクスル部5,6への取り付けを行うようになっており、この第2の取付部22の各プレート22aは、左右の油圧シリンダ13,13では1つのものを共用する構成になっている。
【0027】
上記第3の取付部23は、一端部がシリンダチューブ13a先端部にボルト止めにより固定されかつ他端部がアクスル部5,6の外側面寄りに直角に折れ曲がったL字状の第1プレート23aと、この第1プレート23aの他端部を挟むようにアクスル部5,6の外側面から突出して設けられた上下2つの第2プレート23b,23bとを有し、これらのプレートを取付ピン24で結合してシリンダチューブ13a先端部のアクスル部5,6への取り付けを行うようになっている。この第3の取付部23は、左右の油圧シリンダ13,13ではその中心線を挟んで上下反対に設けられている。本実施形態の場合、前側のアクスル部5の外側面に沿った左右の油圧シリンダ13,13では、左側の油圧シリンダ13に対応する第3の取付部23の第1及び第2プレート23a,23bは油圧シリンダ13よりも下側に、右側の油圧シリンダ13に対応する第3の取付部23の第1及び第2プレート23a,23bは油圧シリンダ13よりも上側にそれぞれ配設されており、また、後側のアクスル部6の外側面に沿った左右の油圧シリンダ13,13では、左側の油圧シリンダ13に対応する第3の取付部23の第1及び第2プレート23a,23bは油圧シリンダ13よりも上側に、右側の油圧シリンダ13に対応する第3の取付部23の第1及び第2プレート23a,23bは油圧シリンダ13よりも下側にそれぞれ配設されている。
【0028】
また、上記第2の取付部22と第3の取付部23とでは取付ピン24を兼用する構成になっている。すなわち、通常第2の取付部22で取付ピン24を用いてピストンロッド13b先端部のアクスル部5,6への取り付けを行うことにより、油圧シリンダ13の伸縮動作による各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置と縮小位置との間の移動を可能にする一方、油圧シリンダ13の伸長動作により各クローラフレーム2L,2Rを拡張位置に移動させた後上記第2の取付部22から取付ピン24を取り外し、その取り外した取付ピン24を用いて第3の取付部23でシリンダチューブ13a先端部のアクスル部5,6への取り付けを行うことにより、上記規制手段15としての機能、つまり各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置で各油圧シリンダ13の縮小動作による各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置からの移動を規制する機能を発揮するようになっている。
【0029】
さらに、上記フレーム構造Aは、上記規制手段15とは別に、各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置で上記各油圧シリンダ13の縮小動作を規制する第2の規制手段を備えており、この規制手段は、油圧シリンダ13の油圧回路に設けられている。
【0030】
すなわち、上記油圧シリンダ13の油圧回路は、図6に示すように、4つの油圧シリンダ13,13,…に対し油圧ポンプPからの作動油の供給及びタンクTへの作動油の排出を制御するための方向切換弁31と、この方向切換弁31と各油圧シリンダ13のヘッド側油室13cとを連通する油路32に設けられた4つの開閉切換弁33,33,…と、この各開閉切換弁33と各油圧シリンダ13のヘッド側油室13cとの間にそれぞれ設けられた4つのパイロットチェック弁34,34,…とを備えている。方向切換弁31は、伸長位置aと縮小位置bと中立位置cとに切り換えられるものであり、各油圧シリンダ13は、この方向切換弁31を伸長位置aに切り換えかつ対応する開閉切換弁33を開位置に切り換えたとき油圧ポンプPからの作動油が油路32を通してヘッド側油室13cに供給されるとともに、ロッド側油室13d内の作動油が油路35を通してタンクTに排出されることにより伸長動作をする一方、方向切換弁31を縮小位置bに切り換えかつ対応する開閉切換弁33を開位置に切り換えたとき油圧ポンプPからの作動油が油路35を通してロッド側油室13dに供給されるとともに、ヘッド側油室13c内の作動油が油路32を通してタンクTに排出されることにより縮小動作をするようになっている。
【0031】
上記各パイロットチェック弁34は、対応する油圧シリンダ13のロッド側油室13dからパイロット圧を導入するように設けられており、対応する油圧シリンダ13が伸長状態にあるとき上述の如く方向切換弁31を縮小位置bに切り換えかつ対応する開閉切換弁33を開位置に切り換えるという油圧シリンダ13を縮小させるための操作をしない限り油圧シリンダ13が縮小しない構成になっている。よって、この各パイロットチェック弁34が、各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置で対応する油圧シリンダ13の縮小動作を規制する規制手段としての機能を発揮するようになっている。
【0032】
尚、図4中、41はカーボディ1の後側アクスル部6の外側面で油圧シリンダ13の取付構造20の第2の取付部22の上側位置に取り付けられたトランスリフタ取付用ブラケットであり、このブラケット41の左右両側にそれぞれトランスリフタ(図示せず)が取り付けられるようになっている。また、図示していないが、カーボディ1の前側アクスル部5の外側面にも同様にトランスリフタ取付用ブラケット及びトランスリフタが取り付けられるようになっている。
【0033】
次に、上記フレーム構造Aの作用効果について説明するに、各クローラフレーム2L,2R毎に前後2つの油圧シリンダ13,13により当該各クローラフレーム2L,2Rを作業時の位置である拡張位置に移動させたときには、規制手段15により上記各油圧シリンダ13の縮小動作による各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置からの移動が規制されるため、オペレータの誤操作や機器の故障などに起因する油圧シリンダ13の縮小動作による各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置からの移動が生じることはなく、安全性を高めることができる。
【0034】
しかも、上記規制手段15は、油圧シリンダ13の取付構造20に設けられているため、構成が簡易でかつ部品点数も少なくて済むことになる。その結果、重量及びコストの増加を抑制することができる。また、本実施形態の如くカーボディ1の各アクスル部5,6の外側面に沿って油圧シリンダ13を配置する場合でも規制手段15により油圧シリンダ13の配置や取付構造に支障を生じることはなく、その取り付けを容易に行うことができる。
【0035】
特に、本実施形態の場合、上記油圧シリンダ13の取付構造20は、油圧シリンダ13のシリンダチューブ13a基端部をクローラフレーム2L,2Rに取り付けるための第1の取付部21と、油圧シリンダ13のピストンロッド13b先端部をカーボディ1のアクスル部5,6に取り付けるための第2の取付部22と、油圧シリンダ13のシリンダチューブ13a先端部をカーボディ1のアクスル部5,6に取り付けるための第3の取付部23とを有し、上記第2の取付部22と第3の取付部23とで取付ピン24を兼用し、通常第2の取付部22で取付ピン24を用いて取り付けを行い、油圧シリンダ13の伸長動作により各クローラフレーム2L,2Rを拡張位置に移動させた後上記第2の取付部22から取付ピン24を取り外し、その取り外した取付ピン24を用いて第3の取付部23で取り付けを行うことにより上記規制手段15としての機能を発揮する構成になっている。このため、油圧シリンダ13及びその取付構造20の外に、カーボディ1のアクスル部5,6と各クローラフレーム2L,2Rとを連結するための部材や部品などを必要とすることなく、オペレータの誤操作や機器の故障などに起因する油圧シリンダ13の縮小動作による各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置からの移動を確実に防止することができる。
【0036】
また、上記各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置では油圧シリンダ13のピストンロッド13b先端部がフリー状態になり、油圧シリンダ13を縮小させてそのピストンロッド13bがシリンダチューブ13a内に収納される全縮小状態にすることができるので、各クローラフレーム2L,2Rが拡張位置での作業期間が長期間になるときでも油圧シリンダ13のピストンロッド13bが傷ついたり、錆びたりすることはなく、その分耐久性の向上に寄与することができる。
【0037】
その上、左右のクローラフレーム2L,2Rが縮小位置に位置するときでも上記第3の取付部23が、左右の油圧シリンダ13,13ではその中心線を挟んで上下反対に設けられているため、左右の第3の取付部23,23同士が干渉することなく、左右の油圧シリンダ13,13をカーボディ1のアクスル部5,6の外側面に沿って車幅方向に一直線上に配置することができる。そのため、左右の油圧シリンダ13,13の上方でトランスリフタをトランスリフタ取付用ブラケット41を介してカーボディ1のアクスル部5,6に取り付ける場合でもその取付スペースを十分に確保することができ、実施化を容易に図ることができる。
【0038】
さらに、上記規制手段15とは別に、油圧シリンダ13の油圧回路中の各開閉切換弁33と各油圧シリンダ13のヘッド側油室13cとの間に設けられたパイロットチェック弁34によっても各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置で油圧シリンダ13の縮小操作によらない縮小動作が規制されるため、機器の故障などに起因する油圧シリンダ13の縮小動作による各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置からの移動をより確実に防止することができ、安全性の向上を一層図ることができる。
【0039】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば、上記実施形態では、各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置で油圧シリンダ13の少なくとも縮小動作又はその縮小動作による各クローラフレーム2L,2Rの拡張位置からの移動を規制する規制手段15を、油圧シリンダ13の取付構造20に設けるだけでなく、油圧シリンダ13の油圧回路中の各開閉切換弁33と各油圧シリンダ13のヘッド側油室13cとの間に設けられたパイロットチェック弁34によっても規制手段の機能を発揮するように構成したが、本発明は,いずれか一方のみを設けるだけでもよい。また、上記実施形態の如く油圧シリンダ13の油圧回路中の各開閉切換弁33と各油圧シリンダ13のヘッド側油室13cとの間にパイロットチェック弁34を設けるだけでなく、各油圧シリンダ13のロッド側油室13dに連通する油路35の分岐部分にもパイロットチェック弁を設けて、各クローラフレーム2L,2Rの縮小位置で油圧シリンダ13の伸長動作を規制するようにしてもよい。
【0040】
さらに、上記実施形態では、カーボディ1と各クローラフレーム2L,2Rとの間に、カーボディ1のアクスル部5,6毎に左右2つずつ計4つの油圧シリンダ13,13,…を配置し、そのうちの左側又は右側の2つの油圧シリンダ13,13により各クローラフレーム2L,2Rが拡張位置と縮小位置との間に移動可能に設けられたクローラ式車両のフレーム構造に適用した場合について述べたが、本発明は,このものに限らず、例えばカーボディと各クローラフレームとの間に左右2つの油圧シリンダを配置し、この各油圧シリンダによりそれぞれ対応するクローラフレームが拡張位置と縮小位置との間に移動可能に設けられたクローラ式車両のフレーム構造などにも同様に適用することができるのも勿論である。
【符号の説明】
【0041】
A フレーム構造
1 カーボディ
2L,2R クローラフレーム
5,6 アクスル部
8 クローラ
13 クローラ伸縮用油圧シリンダ
13a シリンダチューブ
13b ピストンロッド
15 規制手段
20 取付構造
21 第1の取付部
22 第2の取付部
23 第3の取付部
24 取付ピン
34 パイロットチェック弁(規制手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6