特許第5906918号(P5906918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5906918
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20160407BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   H02M3/28 B
   E03D9/08 B
   H02M3/28 H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-97465(P2012-97465)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-226004(P2013-226004A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】日比野 早希
(72)【発明者】
【氏名】野々村 貢
(72)【発明者】
【氏名】坂本 徹
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−050115(JP,A)
【文献】 特開2000−282546(JP,A)
【文献】 特開平03−194491(JP,A)
【文献】 特開2001−268916(JP,A)
【文献】 特開2001−337183(JP,A)
【文献】 特開昭62−128399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00− 3/44
E03D 9/00− 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流を入力される一次側回路と、前記一次側回路に入力された交流電流を電圧変換するトランス部と、前記トランス部で電圧変換された交流電流を直流電流に変換して所定の機器に出力する二次側回路と、前記所定の機器を制御するとともに、計時を行う制御手段と、前記制御手段によって計測された時間を記憶する記憶手段とを備え、
前記所定の機器及び前記制御手段が、通常動作状態にある通常モードと、
前記二次側回路が出力する直流電流の電圧が前記通常モードにおけるよりも低下され、前記制御手段が、前記所定の機器の運転を停止するとともに、前記通常モードにおけるよりも消費電力が小さい運転モードで計時を行いながら運転される待機モードと、を有し、
前記待機モードにおいて、一定時間が経過するたびに、前記制御手段によって計測された経過時間を補正し、補正後の経過時間を前記記憶手段に記憶させることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記一次側回路に入力された交流電流のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段を有し、
前記待機モードにおいて、前記ゼロクロス検出手段は、前記一定時間が経過するごとに、前記一定時間よりも短い時間だけ前記一次側回路から交流電流を供給され、前記制御手段によって計測された経過時間の補正は、前記制御手段によって計測される時間が、前記ゼロクロス手段によって検出されるゼロクロスのタイミングを基準として計測される時間に等しくなるように行われることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記二次側回路は、出力される直流電流の高電圧側出力ラインと、低電圧側出力ラインとの間に接続された第一の抵抗手段と、スイッチング手段と、前記スイッチング手段の切り替えによって前記第一の抵抗手段に並列接続可能な第二の抵抗手段とを有し、
前記待機モードにおける前記二次側回路が出力する直流電流の電圧の低下は、前記スイッチング手段の切り替えによって前記第一の抵抗手段に第二の抵抗手段を並列接続することによって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記制御手段は、前記待機モードにおいて、前記通常モードにおけるよりも、低いクロック周波数で動作されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御回路に関し、さらに詳しくは、各種機器を制御するに際して消費電力が低減された待機モードを有する制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の節電意識の高まりにより、種々の電気電子機器には、消費電力の低減が期待されている。そのため、温水洗浄便座等、多くの常時使用される訳ではない電気電子機器には、通常の動作モードにおけるよりも消費電力の小さい、待機モード(節電モード)が備えられ、使用者が使用していない間の消費電力の低減が図られる。
【0003】
しかし、待機モードにおいても、消費される電力がゼロとなるのではなく、少なからず電力が消費される。さらに節電を進めるためには、待機モードで消費される電力の低減が重要となる。例えば、特許文献1には、温水洗浄便座のような衛生機器において、AC負荷の制御等に利用されるゼロクロス検出部に、電流を間欠的に印加することによって、待機時の消費電力の低減を図ることが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−282546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常の電気電子機器には、制御手段を始め、種々の電力を消費する構成要素が含まれる。これらのうち、ゼロクロス検出部における消費電力の低減を図るだけでは、その電気電子機器機器全体として、節電の効果が十分に得られるとは言えない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電気電子機器を制御するに際して、消費電力が効果的に低減される機能を有する制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる制御回路は、交流電流を入力される一次側回路と、前記一次側回路に入力された交流電流を電圧変換するトランス部と、前記トランス部で電圧変換された交流電流を直流電流に変換して所定の機器に出力する二次側回路と、前記所定の機器を制御するとともに、計時を行う制御手段と、前記制御手段によって計測された時間を記憶する記憶手段とを備え、前記所定の機器及び前記制御手段が、通常動作状態にある通常モードと、前記二次側回路が出力する直流電流の電圧が前記通常モードにおけるよりも低下され、前記制御手段が、前記所定の機器の運転を停止するとともに、前記通常モードにおけるよりも消費電力が小さい運転モードで計時を行いながら運転される待機モードと、を有し、前記待機モードにおいて、一定時間が経過するたびに、前記制御手段によって計測された経過時間を補正し、補正後の経過時間を前記記憶手段に記憶させることを要旨とする。
【0008】
ここで、前記制御回路は、前記一次側回路に入力された交流電流のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段を有し、前記待機モードにおいて、前記ゼロクロス検出手段は、前記一定時間が経過するごとに、前記一定時間よりも短い時間だけ前記一次側回路から交流電流を供給され、前記制御手段によって計測された経過時間の補正は、前記制御手段によって計測される時間が、前記ゼロクロス手段によって検出されるゼロクロスのタイミングを基準として計測される時間に等しくなるように行われることが好適である。
【0009】
さらに、前記二次側回路は、出力される直流電流の高電圧側出力ラインと、低電圧側出力ラインとの間に接続された第一の抵抗手段と、スイッチング手段と、前記スイッチング手段の切り替えによって前記第一の抵抗手段に並列接続可能な第二の抵抗手段とを有し、前記待機モードにおける前記二次側回路が出力する直流電流の電圧の低下は、前記スイッチング手段の切り替えによって前記第一の抵抗手段に第二の抵抗手段を並列接続することによって行われると良い。
【0010】
また、前記制御手段は、前記待機モードにおいて、前記通常モードにおけるよりも、低いクロック周波数で動作されるものであると良い。
【発明の効果】
【0011】
上記発明にかかる制御回路によると、待機モードにおいて、二次側回路が出力する直流電流の電圧の低下と、所定の機器の運転の停止と、消費電力が小さいモードでの制御手段の運転という3つの機構により、消費電力の低減が実行される。これにより、待機モードでの消費電力の低減が効果的に達成される。
【0012】
また、制御手段は、待機モードにある間にも経過時間を計測するが、消費電力が低減された運転モードにある制御手段においては、計測された時間の長さに誤差が生じがちである。しかしながら、上記発明にかかる制御回路によると、待機モードにあっても、一定時間が経過するたびに、制御手段によって計測された経過時間が補正されるので、正確な経過時間を計測することができる。
【0013】
ここで、制御回路がゼロクロス検出手段を有し、待機モードにおいて制御手段によって計測された経過時間の補正が、ゼロクロス手段によって検出されるゼロクロスのタイミングを基準として計測される時間に等しくなるように行われると、簡便な構成で、かつ高い精度で経過時間の補正を行うことができる。
【0014】
さらに、二次側回路の出力電圧の低下が、スイッチング手段を用いた第二の抵抗手段の接続によって行われるものである場合には、また、制御手段が待機モードにおいて低いクロック周波数で動作されるものである場合には、簡便な構成で、高効率に消費電力の低減を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる制御回路の電源部の構成を示す概略図である。
図2図1に示された制御回路の制御手段周辺の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第一の実施形態にかかる制御回路について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、温水洗浄便座に備えられる制御回路を例として説明するが、本制御回路が備えられる電気電子機器は、温水洗浄便座に限定されない。
【0017】
本制御回路は、一次側回路、トランス、二次側回路よりなる電源部と、各種機器と、各種機器を制御する制御手段とからなる。各種機器とは、温水洗浄便座の場合には、温水ヒータや着座センサ等、温水洗浄便座の機能を発揮するのに必要な構成機器である。
【0018】
本制御回路は、温水洗浄便座が使用者によって使用され、温水洗浄便座を構成する各種機器や制御手段が稼働状態にある通常モードと、温水洗浄便座が使用状態になく、通常モードにおいて行われる各機器及び制御手段の動作を行わずに、必要最小限の機能のみを発揮した状態で、次に使用されるまで待機している待機モードとを有する。
【0019】
図1に、電源部10の構成を示す。電源部10は、商用電源等の交流電源ACから一次側回路に供給された交流電流を、直流電流に変換して、二次側回路から出力し、制御手段20及び各種機器に供給する。
【0020】
一次側回路においては、公知のスイッチング電源と同様に、電源ACから供給された交流電流を、整流回路RCによって全波整流し、電解コンデンサC2で平滑化する。平滑化された電流をスイッチング回路SWによってスイッチングして、トランスTfの一次側に交流電流を入力する。トランスTfにおいて、電圧変換され、降圧された交流電流が二次側回路に出力される。
【0021】
二次側回路では、電解コンデンサC1とダイオードD1によって、入力された交流電流を整流平滑化し、直流電流とする。直流電流が出力されるグラウンド側の出力端子12bに繋がるラインと高圧側出力端子12aに繋がるラインの間には、分割抵抗R1及びR2が接続されている。出力端子12a、12b間に出力される直流電流の電圧は、トランスTfの一次側と二次側のコイル巻き数比とともに、分割抵抗R1、R2の抵抗値によって決定される。出力端子12aから出力された電圧は、制御手段20や各種機器に供給され、それらを駆動する。出力端子12a、12bの間の出力電圧としては、制御手段及び各種機器の駆動に必要な電圧値が適宜選択されればよいが、12Vの電圧値を例示することができる。
【0022】
二次側回路にはさらに、フォトカプラPC1のフォトダイオードと、それに供給される駆動電流を制御するシャントレギュレータIC1が設けられている。シャントレギュレータIC1の参照端子は分割抵抗R1とR2の間の接続点に接続されている。フォトカプラPC1のフォトトランジスタは、一次側回路のスイッチング回路SWに直列接続されている。これにより、出力端子12a、12b間の出力電圧に応じて、スイッチング回路SWのスイッチングの時間間隔が変化され、出力端子12a、12b間の出力電圧が安定化するようにフィードバック制御される。
【0023】
本実施形態にかかる制御回路においては、公知のスイッチング電源とは異なり、分割抵抗R1に並列に、スイッチング手段によって接続/非接続を制御される抵抗R3が設けられている。スイッチング手段は、例えばトランジスタTr1によって実現される。トランジスタTr1のエミッタ側又はコレクタ側にR3が接続されている。トランジスタTr1のベース側は、制御手段20のポートP7に接続されている。
【0024】
通常モードにおいては、制御手段20のポートP7からトランジスタTr1のベース端子に電流が入力されず、トランジスタTr1はOFF状態にある。つまり、抵抗R3は、電源部10の二次側回路に組み込まれていない。
【0025】
制御手段20において、通常モードから待機モードへの切り替えを行うことが決定されると、ポートP7から電気信号が出力される。これにより、トランジスタTr1がON状態とされ、抵抗R3が抵抗R1に並列接続された状態となる。つまり、出力端子12a、12bの間の合成抵抗が小さくなる。
【0026】
すると、出力端子12a、12b間の出力電圧が小さくなる。後述するように、制御手段20は、待機モードにおいても、電源供給を必要とするが、通常モードよりも必要な電源電圧は小さい。待機モードにおける出力端子12a、12b間の出力電圧は、抵抗R3の抵抗値によって設定することができる。出力端子12a、12b間の出力電圧が、制御手段20等の待機モードでの運転に必要な電圧となるように、抵抗R3の抵抗値を適宜選択すればよい。例えば、待機モードにおける出力端子12a、12b間の出力電圧として、7Vの電圧値を例示することができる。
【0027】
このように、二次回路側の出力電圧が低くなると、二次側回路の消費電力が低減される。特にシャントレギュレータIC1での消費電力低減の効果が大きい。二次側回路における消費電力の低減に伴い、一次側回路に供給される電力が小さくなり、全体として、消費電力が低減される。
【0028】
なお、スイッチング手段は、待機モードにおいてのみ抵抗R3を抵抗R1に並列接続することができるものであれば、トランジスタTr1には限定されない。例えば、リレー、FET等を使用することができる。スイッチング手段としてトランジスタTr1を使用する場合には、ポートP7から信号が入力された時に、ON状態となり、抵抗R3が接続されるが、使用するスイッチング手段によっては、ポートP7から信号が入力されている間は抵抗R3が接続されず、ポートP7への信号入力が停止されると抵抗R3が接続される構成とすることもできる。
【0029】
また、出力端子12a、12bの間の出力電圧を、待機モードにおいて低下させられるのであれば、上記のように抵抗R3を使用する形式に限定されない。また、抵抗R3を使用する場合にも、抵抗R3が、出力端子12a、12bの間に接続されている抵抗に並列接続されることにより、出力端子12a、12bの間の合成抵抗が小さくなるのであれば、二次側回路の構成及び抵抗R3の接続箇所は、上記に限定されない。
【0030】
次に、図2を参照して、制御手段周辺の構成を説明する。制御手段20は、各種機器の動作を制御するものであり、マイクロコンピュータ(マイコン)等によって具現化される。制御手段20は、図示しない温水ヒータや温度センサ等の各種機器に接続され、それらに対して電気信号の入出力を行う。
【0031】
図2においては、図1に示した電源部10の構成が省略されて記載されているが、出力端子12a出力される直流電流が、低電圧電源10’における低電圧変換を経てポートP0から入力され、制御手段20の駆動電源とされる。
【0032】
制御手段20は、クロック発振手段25を備える。クロック発振手段25は、制御手段20の動作クロックを規定するものである。クロック発振手段25は、制御手段20の外部にあっても、内部にあってもよい。待機モードにおいては、クロック発振手段25のクロックカウントに基づいて、経過時間が計測される。
【0033】
制御手段20のポートP1からはゼロクロス信号が入力される。ゼロクロス信号は、フォトカプラPC2を含むゼロクロス回路によって発生される。フォトカプラPC2のフォトダイオードは一次側回路の交流電源ACに接続され、交流電源ACから入力された交流電流が0Vを通過するタイミングに同期したゼロクロス信号が、フォトカプラPC2のフォトトランジスタからポートP1に入力される。入力されたゼロクロス信号は、温水洗浄便座の温水ヒータや便座ヒータなど、交流負荷方式の機器の制御に使用されるとともに、通常モードにおいては、計時の基準として使用される。また、待機モードにおいては、ゼロクロス信号は、制御手段20によって計測される経過時間の補正に利用される。
【0034】
制御手段20が計時を行う目的の1つは、タイマ機能や時計表示機能に使用することである。もう1つの目的は、各種機器や部品などのうち、寿命が規定されているものについて、寿命に達したときに動作を停止させたり、交換を促したりするために、総通電時間及び/又は設置されてからの総経過時間を記録しておくことである。
【0035】
制御手段20のポートP2は、リレーRY1の入力側端子に接続されたトランジスタTr2のベース端子に接続されている。リレーRY1の出力側端子は、フォトカプラPC2のフォトダイオードに接続されている。ポートP2から電気信号が出力されない状態では、ゼロクロス回路が切断されており、ゼロクロス信号がポートP1から入力されない。ポートP2から電気信号が出力されると、ゼロクロス回路がつなげられ、ポートP1からゼロクロス信号が入力されるようになる。
【0036】
制御手段20のポートP3は、着座者の存在を検出する着座センサ21の電源供給ラインに挿入されたトランジスタTr3のベース端子に接続されている。ポートP3から電気信号が入力されている間のみ、着座センサ21に電源が供給される。また、制御手段20は、図示しないポートP3’から着座センサ21の信号を入力され、着座者の有無に基づいて、通常モードと待機モードの切り替えを行う。
【0037】
制御手段20のポートP4は、電源スイッチ22から電源ON/OFF信号の入力を受ける。また、ポートP5は、リモコン受光素子23を介して、リモートコントローラ(リモコン)から、電源ON/OFF信号の入力を受ける。電源スイッチ22又はリモコンの操作によって、使用者が、温水洗浄便座の電源をON/OFFすると、信号の入力を受けた制御手段20が、通常モード/待機モードの間の切り替えを行う。なお、電源スイッチ22及びリモコン素子23は両方が備えられても、一方のみが備えられてもよい。
【0038】
さらに、制御手段20のポートP6は、フラッシュメモリ(EPROM)などの記憶手段24の電源供給回路に挿入されたトランジスタTr4のベース端子に接続されている。記憶手段24は、制御手段20によって計測された経過時間を記憶する役割を果たす。これに加え、記憶手段24は、温水ヒータの制御パラメータ等、温水洗浄便座の制御に必要な各種情報を記憶する役割を兼ねることができる。ポートP6から電気信号が入力されている間のみ、記憶手段24に電源が供給される。なお、記憶手段24は、図2のように制御手段20と別体として備えられるものであっても、制御手段20内部に一体として備えられるものであってもよい。
【0039】
制御手段20のポートP7は、前述した電源部10のトランジスタTr1のベース端子に接続されている。上記のように、ポートP7から信号が出力されると、抵抗R3が電源部10の二次側回路に接続され、消費電力が低減される状態となる。
【0040】
なお、リレーRY1の入力側端子、及び着座センサ21、記憶手段24の電源回路に挿入されているトランジスタTr3、Tr4は、一端を電源部10の出力端子12a等、任意の直流電圧ラインに接続されている。
【0041】
着座者が存在し、温水洗浄便座が使用されている通常モードにおいては、ポートP7からは電気信号が出力されておらず、電源部10の二次側回路に抵抗R3が挿入されていない状態となっている。つまり、出力端子には、R3が存在しない状態で規定される、比較的高い電圧(例えば12V)が出力されている。その電圧は、更に低電圧電源10で低電圧変換され、制御手段20のポートP0に入力されている。ポートP0より入力される制御手段20の電源電圧は、通常5Vである。制御手段20は、この電圧の入力を受け、クロック発振手段25によって発振される、比較的短周期の第一クロック周波数で運転されている。
【0042】
また、ポートP2から電気信号が出力され、RY1の出力側回路が閉じられている。これにより、ゼロクロス信号が生成され、ポートP1から入力されている。この時、ゼロクロス信号は、交流負荷の機器を制御するのに使用されるとともに、制御手段20による計時の基準として使用されている。
【0043】
ポートP3、P6からも電気信号が出力され、着座センサ21、記憶手段24に電源が供給され、これらが稼働している。図2には図示されない他の機器が制御手段20に接続されている場合にも、それらに電源が供給されて稼働され、制御手段20による制御を受けている。上記で計測された経過時間は、記憶手段24に記憶される。
【0044】
着座センサ21によって一定時間着座者が検出されなかった時、又は電源スイッチ22又はリモコン受光素子23によって温水洗浄便座の電源がOFFとされた時には、制御手段20は、通常モードから待機モードへの切り替えを行う。
【0045】
待機モードに切り替えられると、前述のように、ポートP7から電気信号が発せられ、抵抗R3が電源部10の二次側回路に接続される結果、出力端子12aに出力される電圧が低下される。制御手段20は、この低下された電圧(例えば7V)を低電圧電源10’で低電圧変換した低い電圧で動作し、消費電力が小さい、スリープモードなどと称される運転モードに切り替えられる。
【0046】
制御手段20は、クロック発振手段25の通常モードにおける第一クロック周波数をもとに分周した長周期の第二クロック周波数で動作するようになる。このとき、制御手段20は、後述する計時を始めとして、各種機器が使用されない状態で必要な最低限の機能のみを発揮する。
【0047】
また、待機モードへの切り替えが行われると、ポートP2への電気信号の出力も停止される。すると、リレーRY1の出力側端子が開放されることにより、ゼロクロス回路が切断される。通常、フォトカプラは大きな消費電力を要するが、ゼロクロス回路が切断されることで、フォトカプラPC2における消費電力が削減される。
【0048】
前述のように、タイマ機能や時計表示機能の発揮、各種機器や部品の寿命の検出等を目的として行われる計時は、待機モードにおいても、継続される必要がある。しかし、ゼロクロス回路が切断されており、通常モードの場合のように、ゼロクロス信号を基準とした計時を行うことができない。そこで、制御手段20は、第二クロック周波数のクロックカウントをもとに、経過時間を計測する。
【0049】
通常モードから待機モードへの切り替えが行われると、ポートP3及びポートP6への電気信号の出力も停止され、着座センサ21及び記憶手段24への電源供給が停止される。これらの機器は、温水洗浄便座が使用されていない状態では、稼働させておく必要がないからである。これら以外に、図示されていない各種機器についても、温水洗浄便座が使用されていない状態で稼働させておく必要のないものについては、同様に電源供給が遮断される。これにより、着座センサ21、記憶手段24及びその他各種機器による電力消費が停止される。
【0050】
このように、通常モードから待機モードへの切り替えが行われる際には、電源部10からの出力電圧を低下させることと、制御手段20を低消費電力の運転モード(スリープモード)で運転することと、各種機器の電源供給回路及びゼロクロス回路を遮断することの3種の切り替え操作が同時に行われることで、消費電力の低減が効果的に実現される。いずれかが単独で行われる場合でも、消費電力の低減は可能であるが、その効果は限定的となる。
【0051】
ところで、上記のように、待機状態においても、制御手段20は経過時間を計測しているが、一般に、クロック発振手段のクロックカウントを基準として計測した時間には誤差が生じやすい。よって、待機モードにおいて計測される経過時間は真の経過時間からずれた値となっている場合がある。この誤差は、クロック周波数が低いほど顕著となるので、制御手段20が低いクロック周波数で運転されている待機モードにおいては、経過時間のずれが、特に深刻になる場合がある。よって、待機モードにある間に計測された経過時間には、何らかの補正を加えられる必要がある。
【0052】
経過時間の補正の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、待機モードにある間にも、定期的に短い時間だけ通常モードに復帰することが行われる。
【0053】
この時、ポートP2から電気信号が出力され、リレーRY1の出力端子が閉じられることにより、ゼロクロス回路が接続される。すると、ポートP1からゼロクロス信号が入力されるようになる。
【0054】
制御手段20は、一定時間(例えば1秒間)の間、ゼロクロス信号を処理して計時を行う。また、それと同じ一定時間の間、第二クロック周波数をもとに計時を行う。両者を比較することで、それまで待機モードにおいて第二クロック周波数のクロックカウントに基づいて計測された経過時間を補正する。
【0055】
具体的には、例えば、電源周波数が60Hzである場合、ゼロクロス信号を60回計数する間の時間と、1秒間のクロックカウント数のずれを見積もることで、1秒当たりに生じる誤差を決定する。その上で、待機モードにおいて計測された経過時間に生じた誤差を、同じ割合で見積もり、演算的にその誤差を経過時間から除けばよい。例えば、1秒間の間に0.1秒の誤差が発生していると見積もられる場合に、1時間と計測された経過時間に生じている誤差は6分となる。
【0056】
さらに、制御手段20は、ポートP6へ電気信号を出力し、記憶手段24に電源供給を行う。この状態で、上記で得られた補正された経過時間を記憶手段24に格納する。
【0057】
着座センサ21及び各種機器の電源は、必ずしも投入されなくてもよい。しかし、各機能の補正等、待機モードにある間にも時々行っておいた方がよい処理があれば、その機器の電源を投入し、規定された必要な処理を行うようにしておけばよい。
【0058】
一時的に正常モードに復帰された状態で、経過時間の補正と記憶、その他規定された処理が終了すれば、制御回路及び各種機器は、再び待機モードに置かれる。定期的に正常モードへの復帰が行われる頻度は、経過時間のずれの程度とその影響の程度等を考慮して適宜定めれば良いが、例えば、1日に1回とする場合を示すことができる。クロック発振手段25を利用した計時の誤差が小さければ、この間隔を長くすることができ、より節電効果に優れる。
【0059】
さらに、制御手段20は、割り込み起動の機能を備える。つまり、電源スイッチ22又はリモコン受光素子23によって、使用者からの電源ONの信号が入力されると、制御手段20は、待機モードから正常モードへの復帰を行う。つまり、ポートP7からの電気信号の停止によって電源部10の出力電圧を、大きな値に戻すとともに、制御手段20の運転モードをスリープモードから通常の運転モードに切り替える。さらに、ポートP1、P3、P6等への電気信号の出力によって、ゼロクロス回路と各種機器に電源を投入する。このように、待機モードにおいて、必要最小限の電力しか消費されない状態としておいても、必要な時には、制御回路及び各種機器を通常モードに容易に復帰させ、使用を開始することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。制御回路が、映像表示機器、OA機器等、温水洗浄便座以外の機器に使用される場合には、着座センサの代わりに、例えば光学式人感センサ等を備えることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 電源部
12a、12b 出力端子
20 制御手段
21 着座センサ
22 電源スイッチ
23 リモコン受光素子
24 記憶手段
25 クロック発振手段
図1
図2