特許第5906954号(P5906954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5906954電動圧縮装置及び燃料電池用空気供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5906954
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】電動圧縮装置及び燃料電池用空気供給装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20160407BHJP
【FI】
   F04D27/00 101K
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-135730(P2012-135730)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-1642(P2014-1642A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 薫
【審査官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−168904(JP,A)
【文献】 特開2003−256002(JP,A)
【文献】 特開2005−69013(JP,A)
【文献】 特開昭54−128808(JP,A)
【文献】 実開昭63−186994(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、該回転子と相互作用して回転子に回転モーメントを発生させる固定子と、前記回転子の回転を外部に伝える回転軸と、該回転軸を回転可能に支持するラジアルフォイル軸受と、前記回転軸と一体に回転するインペラと、該インペラの回転により気体を取入れる吸込口と、前記インペラの回転により圧縮した圧縮気体を吐出する吐出流路と、を有する電動圧縮装置であって、
前記吸込口と前記吐出流路とを繋ぐ循環流路と、
該循環流路に備えた弁と、前記回転軸の回転数を検出する回転数検出器と、前記回転数検出器で検出される回転数に基づいて前記弁の開閉を制御する制御器を有し、
前記制御器は、前記回転軸が前記ラジアルフォイル軸受から浮上する回転数で回転した状態において、前記回転軸がラジアルフォイル軸受から浮上する浮上点回転数によって吐出される圧縮気体の浮上点吐出量よりも更に小さい吐出量が要求された時に前記弁を開く制御を行うことを特徴とする電動圧縮装置。
【請求項2】
前記弁は流量調節弁であり、前記吐出流路には圧縮気体の吐出流量を検出する流量検出器が設けてあり、前記制御器は、前記回転軸が前記ラジアルフォイル軸受から浮上する回転数で回転した状態において、前記回転軸がラジアルフォイル軸受から浮上する浮上点回転数によって吐出される圧縮気体の浮上点吐出量よりも更に小さい吐出量が要求された時に要求指令の吐出量になるように前記流量調節弁を開く制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動圧縮装置における前記吐出流路が、燃料電池の空気加湿器に接続されたことを特徴とする燃料電池用空気供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮装置及び燃料電池用空気供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料を燃焼させることなく、燃料電池を備えて、空気中の酸素と水素、アルコール等の燃料とを電気化学的に反応させて電力を発生させ、発生した電力により電動機を回転させて走行する燃料電池自動車の開発が進んでいる。燃料電池に空気を供給するための装置としては、回転子と固定子を有する電動モータと、該電動モータの回転子に固定した回転軸によりインペラを回転させて外部の空気を取り込んで圧縮する遠心圧縮機とを有する電動圧縮装置を備えて、該電動圧縮装置により圧縮した圧縮空気を空気供給系路を介して燃料電池の燃料電池スタックに供給するようにした燃料電池用空気供給装置が用いられる。
【0003】
前記電動圧縮装置では、空気を所要の圧力に圧縮して燃料電池に供給するために、遠心圧縮機のインペラはおよそ数万回転/分以上という高速で回転される。そのため、電動モータの回転軸の軸受には、通常の転がり軸受等ではなく、フォイル軸受等を用いて、高速回転時に径方向の荷重を非接触の状態で支持することが行われている。
【0004】
燃料電池では、水素と空気加湿器で加湿した空気とを燃料電池スタックに供給して電気化学反応により電力を発生させているが、燃料電池スタックに供給される空気及び水素に油などが混入すると、発電効率が大幅に低下することが知られており、このため、前記電動圧縮装置の電動モータには、回転軸の支持に油を用いないラジアルフォイル軸受、及び、アキシャルフォイル軸受又はアキシャル磁気軸受を用いることが行われている。
【0005】
前記電動圧縮装置の電動モータの回転子を挟んで回転軸の両側に一対のラジアルフォイル軸受を設けて回転軸の径方向の荷重を非接触で支持し、固定子を挟んで回転軸と電動モータ本体との間に一対のアキシャル磁気軸受を設けて回転軸の軸長手方向の荷重を非接触で支持するようにした燃料電池用空気供給装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0006】
前記ラジアルフォイル軸受は、回転軸が貫通する孔の内面に、ごく薄い金属箔等からなる1枚の、または2枚以上のフォイルセグメントが取り付けられている。従って、前記ラジアルフォイル軸受では、支持する回転軸の回転数が所定値に達するまでは、前記フォイルセグメントが回転軸の外周面に直接に接触して前記回転軸を径方向から支持し、回転軸の回転数が所定値以上に達した後は、前記回転軸の外周面とフォイルセグメントとの間に発生する動圧によって、回転軸はその全周に亘ってフォイルセグメントの表面から浮上して非接触の状態で支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−168904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示すように、ラジアルフォイル軸受を有する電動圧縮装置では、停止状態から電動圧縮装置を起動した際に、回転軸が浮上回転速度(浮上回転数)まで達するまでには大きな駆動トルクが必要であり、回転軸が浮上点回転数に達した瞬間に急速に駆動トルク(動力)が低下することで回転軸が高速で回転するようになるため、過渡的な状況での安定した回転数制御が難しいという問題を有していた。尚、インペラを備えた遠心圧縮機においては、回転軸の回転数(インペラの回転数)に応じた吐出量の圧縮気体が得られるため、圧縮気体の吐出量も過渡的な状況での安定した制御は困難である。
【0009】
前記燃料電池においては、前記電動圧縮装置の回転軸がラジアルフォイル軸受から浮上する浮上点回転数以下の時に吐出される圧縮空気のように小さい吐出量の圧縮空気が要求される場合があるが、従来の電動圧縮装置では、このような小さい吐出量の圧縮空気を安定して供給することはできなかった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、電動モータの回転軸がラジアルフォイル軸受から浮上する浮上点回転数以下の時に吐出される小さい吐出量の圧縮気体を、必要なときに安定して供給できるようにした電動圧縮装置及び燃料電池用空気供給装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、回転子と、該回転子と相互作用して回転子に回転モーメントを発生させる固定子と、前記回転子の回転を外部に伝える回転軸と、該回転軸を回転可能に支持するラジアルフォイル軸受と、前記回転軸と一体に回転するインペラと、該インペラの回転により気体を取入れる吸込口と、前記インペラの回転により圧縮した圧縮気体を吐出する吐出流路と、を有する電動圧縮装置であって、
前記吸込口と前記吐出流路とを繋ぐ循環流路と、
該循環流路に備えた弁と、前記回転軸の回転数を検出する回転数検出器と、前記回転数検出器で検出される回転数に基づいて前記弁の開閉を制御する制御器を有し、
前記制御器は、前記回転軸が前記ラジアルフォイル軸受から浮上する回転数で回転した状態において、前記回転軸がラジアルフォイル軸受から浮上する浮上点回転数によって吐出される圧縮気体の浮上点吐出量よりも更に小さい吐出量が要求された時に前記弁を開く制御を行うことを特徴とする電動圧縮装置、に係るものである。
【0012】
上記電動圧縮装置において、前記弁は流量調節弁であり、前記吐出流路には圧縮気体の吐出流量を検出する流量検出器が設けてあり、前記制御器は、前記回転軸が前記ラジアルフォイル軸受から浮上する回転数で回転した状態において、前記回転軸がラジアルフォイル軸受から浮上する浮上点回転数によって吐出される圧縮気体の浮上点吐出量よりも更に小さい吐出量が要求された時に要求指令の吐出量になるように前記流量調節弁を開く制御を行うことが好ましい。
【0013】
本発明は、前記電動圧縮装置における前記吐出流路が、燃料電池の空気加湿器に接続されたことを特徴とする燃料電池用空気供給装置、に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動圧縮装置及び燃料電池用空気供給装置によれば、回転軸がラジアルフォイル軸受から浮上する浮上点回転数以上の高い回転数で回転して大きい吐出量の圧縮気体が吐出されているときに、循環流路に備えた弁を開くことにより、前記回転軸がラジアルフォイル軸受から浮上する浮上点回転数によって吐出される圧縮気体の浮上点吐出量よりも更に小さい吐出量の圧縮気体を、必要なときに安定して供給できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明の電動圧縮装置の一実施例を示す概略構成図、(b)は(a)に備えた流量調節弁に代えて開閉弁を備えた場合の概略構成図である。
図2】ラジアルフォイル軸受に支持された回転軸の回転数と圧縮気体の吐出量が変化する状態を示した説明用線図である。
図3】本発明の電動圧縮装置を有する燃料電池用空気供給装置を適用した燃料電池の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0017】
図3は本発明の電動圧縮装置1を有する燃料電池用空気供給装置3を燃料電池30に適用したブロック図であり、図3に示す燃料電池30は、燃料電池スタック31と、該燃料電池スタック31から供給される電力を制御する電力制御器32と、前記燃料電池スタック31に水素を供給する高圧水素タンク33及び水素ポンプ34と、前記燃料電池スタック31に圧縮空気を加湿して供給する空気加湿器35と、燃料電池スタック31及び電力制御器32を冷却する冷却器36とを備えている。そして、燃料電池スタック31での水素と空気の電気化学反応によって電気を生成し電力制御器32で制御された電力により自動車を走行させる電動機37が駆動される。
【0018】
前記電動圧縮装置1は、外部から空気を取り込んで圧縮しており、該電動圧縮装置1で圧縮した圧縮空気を、空気供給系路2を介して前記燃料電池30の空気加湿器35に供給することで燃料電池用空気供給装置3を構成している。
【0019】
前記燃料電池30では、高圧水素タンク33の水素が水素ポンプ34を介して燃料電池スタック31に供給されると共に、燃料電池用空気供給装置3の電動圧縮装置1で空気を圧縮した圧縮空気が空気供給系路2を介して空気加湿器35に供給されることにより加湿された空気となって燃料電池スタック31に供給されており、燃料電池スタック31での水素と加湿された空気の電気化学反応によって電気が生成される。
【0020】
図1(a)は、本発明の電動圧縮装置の一実施例を示す概略構成図であり、図1(a)の電動圧縮装置1は、ケーシング22の内部に、回転子4と、該回転子4と相互作用して回転子4に回転モーメントを発生させる固定子5とからなる電動モータ6を有しており、前記回転子4の軸方向の両側には回転軸7a,7bが備えてあり、一方の回転軸7aには回転を外部に伝える出力軸7が備えられている。
【0021】
前記回転軸7a,7bは、前記フォイルセグメントを備えたラジアルフォイル軸受8a,8bによって径方向の荷重が非接触で支持されており、又、前記回転軸7a,7bに固定した磁気ディスク9とケーシング22に固定した電磁石9'とからなるアキシャル磁気軸受10a,10bによって回転軸7a,7bの軸長手方向の荷重が非接触で回転可能に支持されている。
【0022】
前記出力軸7の外側端部にはインペラ11が固定してあり、該インペラ11の回転によりエアクリーナ12を通った気体(空気)を吸込口13から取入れて圧縮し、圧縮した圧縮空気を吐出流路14から吐出する遠心圧縮機15が構成されている。そして、前記遠心圧縮機15の吐出流路14から吐出された圧縮空気は、図3の空気供給系路2を介して燃料電池30の空気加湿器35に供給している。
【0023】
図1(a)に示す遠心圧縮機15は、前記吸込口13と前記吐出流路14とを繋ぐ循環流路16を設け、該循環流路16の途中に弁17を備えている。図1(a)に示す弁17は流量調節弁17aの場合を示している。
【0024】
上記電動圧縮装置1において、前記回転軸7a,7bの回転数を検出する回転数検出器を設ける。図1(a)では前記遠心圧縮機15のインペラ11をカウントすることにより回転軸7a,7bの回転数を検出する回転数検出器18を設けた場合を示しているが、回転軸7a,7bの回転数を検出するロータリエンコーダ等を備えてもよい。又、前記吐出流路14から吐出される圧縮空気の吐出流量を検出する流量検出器19を設けている。
【0025】
そして、前記回転数検出器18で検出した回転軸7a,7bの回転数18aと、前記流量検出器19で検出した圧縮空気の吐出流量19aが入力される制御器20を備えており、制御器20には、前記回転軸7a,7bが前記ラジアルフォイル軸受8a,8bから浮上する浮上点回転数のときの浮上点吐出量よりも小さい吐出量が要求指令21として入力されるようになっている。
【0026】
前記制御器20に、前記回転軸7a,7bが前記ラジアルフォイル軸受8a,8bから浮上する浮上点回転数のときの浮上点吐出量よりも小さい吐出量の要求指令21が入力された際には、前記制御器20は、圧縮気体の吐出流量が要求指令21になるように制御信号20'を流量制御弁17aに出力し、流量制御弁17aを開けてその開度を制御するようになっている。
【0027】
又、図1(a)に示した流量調節弁17aに代えて、図1(b)に示すように、開閉弁17bを備えてもよい。図1(b)は、電磁弁による開閉弁17bを備えた場合を示している。
【0028】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0029】
図1に示す燃料電池自動車用の電動圧縮装置1は、燃料電池自動車の走行状態等に応じて低速から高速まで広い範囲で回転数が制御されることが多い。電動圧縮装置1において、特にラジアルフォイル軸受8a,8bのフォイルセグメントが回転軸7a,7bの外周面に直接に接触して回転軸7a,7bを径方向から支持した状態での回転(低速回転)が長く続くような制御が行われた場合には、前記フォイルセグメントが短期間で摩耗し、摩耗量が大きくなると、ラジアルフォイル軸受8a,8bによる回転軸7a,7bを浮上させるための特性が低下したり失われたりする可能性がある。
【0030】
図2は前記電動圧縮装置1の回転軸7a,7bの回転が起動から所定の回転数まで上昇する際の回転軸7a,7bの回転数と圧縮気体の吐出量が変化する状態を示した説明用線図であり、図中、実線は回転数を示し、一点鎖線は吐出量を示している。電動モータ6により、停止状態の回転軸7a,7bの回転が起動されると、浮上点回転数S1に達するまでには大きな駆動トルクが必要であるために回転数は徐々に増加し行き、浮上点回転数S1に達して回転軸7a,7bが浮上した瞬間に駆動トルク(動力)が低下することで急速に高速で回転して所定の回転数S2に達する。遠心圧縮機15では、インペラ11の回転数に応じた圧縮空気の吐出量が得られるため、圧縮空気の吐出量は、図2の一点鎖線のように、回転軸7a,7bが浮上点回転数S1に達した時には浮上点吐出量Q1となり、回転軸7a,7bが浮上点回転数S1以上の所定の回転数S2で回転する時には所定の吐出量Q2となる。
【0031】
前記回転軸7a,7bが浮上点回転数S1以上の回転数で回転しているときには、前記電動圧縮装置1は回転軸7a,7bの回転数に応じた吐出量の圧縮空気を吐出することができる。
【0032】
尚、従来の電動圧縮装置では、図2において、前記回転軸7a,7bが前記ラジアルフォイル軸受8a,8bの浮上点回転数S1よりも高い所定の回転数S2で回転しているときに、前記回転軸7a,7bが浮上点回転数S1のときの浮上点吐出量Q1よりも小さい吐出量の圧縮空気が要求されても、このような小さい吐出量の圧縮空気を供給することはできなかった。
【0033】
これに対し、本発明では、前記回転軸7a,7bが浮上点回転数S1よりも高い所定の回転数S2で回転して所定の吐出量Q2の圧縮空気を吐出しているときに、回転軸7a,7bが浮上する浮上点回転数S1のときの浮上点吐出量Q1よりも小さい吐出量の要求指令21が図1の制御器20に入力された際には、制御器20は前記流量調節弁17aを開く制御を行う。
【0034】
流量調節弁17aが開けられると、吐出流路14に吐出された圧縮空気の一部が循環流路16を介してインペラ11の吸込口13に吸引されて循環するようになるため、空気供給系路2を介して図3の燃料電池30の空気加湿器35に供給される圧縮空気の供給量は減少する。
【0035】
ここで、循環流路16を介してインペラ11の吸込口13に循環する圧縮空気の循環量は、吐出流路14に吐出される圧縮空気の圧力、インペラ11による吸込口13の圧力(負圧力)、循環流路16の口径等の条件によって所定の値に安定する。
【0036】
従って、回転軸7a,7bがラジアルフォイル軸受8a,8bから浮上する図2の浮上点回転数S1以上の高い回転数S2で回転して大きい吐出量Q2の圧縮気体が吐出されているときに、弁17を開くと、回転軸7a,7bがラジアルフォイル軸受8a,8bから浮上する浮上点回転数S1によって吐出される圧縮気体の浮上点吐出量Q1よりも更に小さい吐出量Q'の圧縮気体を、必要なときに安定して燃料電池30の空気加湿器35に供給することができる。又、図1の制御器20により前記弁17を閉じる制御を行うと、循環流路16が閉じられることにより、図2に示すように、小さい吐出量Q'の圧縮気体は所定の吐出量Q2に復帰するようになる。
【0037】
図1(a)に示すように前記弁17が流量調節弁17aである場合には、流量調節弁17aの開度を調節して循環流路16による圧縮気体の循環量を調節することにより、燃料電池30の空気加湿器35に供給する圧縮空気の供給量をある変化幅で調節することができる。
【0038】
又、図1(b)に示すように前記弁17が開閉弁17bである場合には、開閉弁17bを開けることにより、循環流路16を介して吐出流路14の圧縮空気の一部がインペラ11の吸込口13に吸引されて循環するようになるので、燃料電池30の空気加湿器35に供給される圧縮空気の供給量は所定の値に減少する。
【0039】
上記したように、弁17を開けて、小さい吐出量Q'の圧縮気体を燃料電池30に供給する際は、循環流路16を介してインペラ11に循環する圧縮空気の温度は上昇することになるが、空気加湿器35を介して燃料電池30に供給される圧縮空気は温度が高いと発電効率が上昇するので、前記循環によって圧縮空気の温度が上昇することは有効である。
【0040】
又、前記電動圧縮装置1を起動する際に、前記弁17を開ける操作を行うと、遠心圧縮機15のインペラ11で圧縮されて吐出流路14に吐出された圧縮気体が循環流路16を通してインペラ11の吸込口13に循環されることにより、インペラ11の吸込負荷が低減されることになるので、図2中破線Aで示すように、回転軸7a,7bの回転数は従来に比して短い時間で浮上点回転数S1に到達するようになる。このように、回転軸7a,7bが浮上点回転数S1に到達するまでの時間が短縮されることにより、低速回転することでラジアルフォイル軸受8a,8bのフォイルセグメントが短期間に摩耗するという問題を低減することができる。
【0041】
尚、本発明の電動圧縮装置及び燃料電池用空気供給装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 電動圧縮装置
3 燃料電池用空気供給装置
4 回転子
5 固定子
7a,7b 回転軸
8a,8b ラジアルフォイル軸受
11 インペラ
13 吸込口
14 吐出流路
16 循環流路
17 弁
17a 流量調節弁
18 回転数検出器
18a 回転数
20 制御器
21 要求指令
30 燃料電池
35 空気加湿器
Q1 浮上点吐出量
Q2 所定の吐出量
Q' 小さい吐出量
S1 浮上点回転数
S2 所定の回転数
図1
図2
図3