【実施例1】
【0024】
第1実施例の蓄電装置2は、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池である。蓄電装置2は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載されて、モータに電力を供給する。また、蓄電装置2は、モータが回生発電した電力によって充電される。
【0025】
図1に示すように、蓄電装置2は、ケース4と、ケース4に収容された電極組立体6と、ケース4に設けられた正極端子12a、負極端子12bと、ケース4内に設けられた電流遮断装置40とを備えている。
【0026】
ケース4は、金属製で略直方体状に形成されている。ケース4の上側の壁の、
図1右側の端には正極端子12aが、
図1左側の端には負極端子12bが設けられている。正極端子12a、負極端子12bは、それぞれ正極、負極とケース4内で電気的に接続されている(後に詳しく説明する)。正極端子12a、負極端子12bは、電極組立体6との間で電気を授受する。正極端子12a、及び負極端子12bには、蓄電装置2の充・放電を行うための配線部材(図示しない)が接続される。
【0027】
正極端子12aは、金属製のボルト24a、内側ナット26a、外側ナット28aを備えている。ボルト24aと内側ナット26aは、シール座金32aを介してケース4を挟持している。ボルト24a及び内側ナット26aと、ケース4との間は絶縁シート30aによって絶縁されている。外側ナット28aは、配線部材との結線に用いられる。
【0028】
負極端子12bは、金属製のボルト24b、内側ナット26b、外側ナット28bを備えている。ボルト24bと内側ナット26bは、シール座金32bを介してケース4を挟持している。ボルト24b及び内側ナット26bと、ケース4との間は絶縁シート30bによって絶縁されている。外側ナット28bは、配線部材との結線に用いられる。
【0029】
電極組立体6は、正極と、負極と、正極と負極の間に介在しているセパレータを備えている。正極と負極は、それぞれ金属箔と、金属箔上に形成されている活物質層を有する。正極又は負極の金属箔からは、正極タブ55a、負極タブ55bが伸びている。
【0030】
電極組立体6は、液状の電解液に浸漬されている。電解液は、溶媒中に、リチウム塩を含む支持塩を含有している。溶媒としては、例えばFEC(フルオロエチレンカーボネート)が使用できる。支持塩としては、例えば、LiPF
6(六フッ化リン酸リチウム)が使用できる。電解質には、芳香族系のモノマー添加剤が含まれている。電極組立体6に過電圧が加わると、電解質に含まれるモノマー添加剤が重合し、水素ガスが発生する。これによって、ケース4の内部空間41の圧力を上昇させる。
【0031】
正極タブ55a、第1リード10a、正極端子12a、が順に接続されることで、正極と正極端子12aとを接続する通電経路が形成されている。第1リード10aの上面とケース4の上側の壁の内面との間には絶縁シート34aが配置されている。負極タブ55b、第2リード10b、電流遮断装置40、導電部材14、負極端子12b、の順に接続されることで、負極と負極端子12bとを接続する通電経路が形成されている。ケース4内の圧力が上昇した場合には、電流遮断装置40は、この通電経路を遮断する。
【0032】
電流遮断装置40は、ケース4の上側の壁の内面に設けられている。第2リード10bの上面及び電流遮断装置40の上端部と、ケース4の上側の壁の内面との間には、絶縁シート34bが配置されている。電流遮断装置40は、感圧式の電流遮断装置である。電流遮断装置40は、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満の場合は、負極と負極端子12bとの間の通電経路を電流が流れる状態とする。また、電流遮断装置40は、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上の場合は、負極と負極端子12bとの間の通電経路を遮断し、電流が流れない状態とする。
【0033】
以下に、電流遮断装置40について詳しく説明する。電流遮断装置40の、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満のときの状態を
図2に示し、電流遮断圧力値以上となったときの状態を
図3に示す。電流遮断装置40は、
図2の状態から、
図3の状態に変化することで、負極と負極端子12bとの間の通電経路を遮断する。
【0034】
電流遮断装置40は、
図2に示すように、隔壁38を有している。隔壁38は、
図2の上方向から見て円形の導電性のダイアフラムである。隔壁38は、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満のとき、
図2に示すように下側に膨出した状態である。隔壁38の外周縁部72は、第2リード10bと絶縁体36とで挟持されている。隔壁38のうち、外周縁部72以外の部分は、ケース4内の圧力によって変位する隔壁変位部73である。第2リード10bは開口部11を有し、開口部11は隔壁38の外周縁部72を挟持している部分の内側の部分に位置している。隔壁38は、その中央部に中央平坦部76を有し、中央平坦部76よりも外周縁部72側に、円環状の平坦部74を有している。隔壁38の外周縁部72の上面と第2リード10bの下面とは接触しており、両者は電気的に接続されている。
【0035】
隔壁38の下側では、導電部材14が絶縁体36に支持されている。隔壁38の外周縁部72と導電部材14との間は、絶縁体36によって絶縁されている。隔壁38の中央平坦部76の下面と、導電部材14の上面とは固定され、電気的に接続されている。隔壁38と導電部材14は、溶接部78において溶接されている。絶縁体36には通気孔37が設けられている。通気孔37は、絶縁体の内側の空間(詳細には、隔壁38の下側の空間)と電極組立体6が収容されている空間とを連通している。なお、以下の説明では、絶縁体36の内側の空間(隔壁38の下側の空間)を単にケース4内の内部空間41と呼ぶことがある。
【0036】
導電部材14の下側の面には、脆弱部20が形成されている。脆弱部20は、溶接部78の下側に位置する範囲を取り囲むように円弧状に形成されている。脆弱部20は、断面が三角形の溝であり刻印により形成されている。導電部材14の下面の内、脆弱部20の内側の部分は移動側導電部17となっており、脆弱部20の外側の部分は固定側導電部16となっている。固定側導電部16の下側の面と絶縁体36の底部とは固定されている。固定方法は、例えばネジ止めが使用できる。
【0037】
第2リード10b、隔壁38、導電部材14が順に電気的に接続されることで、負極と負極端子12bとの間の通電経路に電流が流れる状態となる。先述の導電部材14の脆弱部20が形成されている部分は、この通電経路の一部を形成している。脆弱部20が形成されている部分の導電部材14の断面積が小さいと、通電経路の電気抵抗が増加し、断面積が大きいと電気抵抗が減少する。
【0038】
隔壁38と、導電部材14の間には、弾性体84が配置されている。弾性体84は、皿ばねであり、
図2の上から見て円形の板状で、
図2の上側に膨らんでいる。弾性体84は円錐状に形成されている。弾性体84は中央部に円形の開口部88を有している。
図2に示すように、弾性体84は、隔壁38と導電部材14との間に配置された状態で、弾性体84の上端部87と下端部85は水平となっている。上端部87と下端部85の間に位置する中央部86は、内側が上に、外側が下に位置するように傾斜している。下端部85は、導電部材14と共に絶縁体36に挟持され、絶縁体36に対して固定されている。弾性体84の上端部87は、隔壁38の円環状の平坦部74の下面に当接している。弾性体84の下端部85は、導電部材14に当接している。
【0039】
弾性体84は、上端部87と下端部85の間を上下に圧縮変形された状態で、隔壁38と導電部材14の間に配置されている。そのため、弾性体84は隔壁38を上方向に付勢している(
図2)。隔壁38が上方向に付勢されることで、導電部材14の移動側導電部17にも上向きの力が加わる。つまり、弾性体84の付勢力によって、導電部材14には、脆弱部20を破断しようとする力が加わる。
【0040】
本実施例の蓄電装置2では、弾性体84は、上述のように円形の板状であり、上側が膨らんだ形状の皿ばねである。このため、弾性体84は、上下方向の変形に対して比較的大きなバネ定数を有している。このため、弾性体84の体格に対して、大きな付勢力を得ることができる。これにより、蓄電装置2の体格の増加を抑制することができる。
【0041】
隔壁38の下側の面、弾性体84の上端部87、弾性体84の下端部85、及び導電部材14の上面には、絶縁体としての絶縁膜60、61、62、63が形成されている。絶縁膜60、61、62、63は、絶縁性の樹脂がコーティングされることで形成されている。絶縁膜60、61、62、63が形成されることで、導電部材14、弾性体84、隔壁38を順に結んだ経路には電流が流れない状態とされている。なお、絶縁膜は、導電部材14、弾性体84、隔壁38を順に結んだ経路に電流が流れない状態となるように形成されていればよい。すなわち、絶縁膜は、隔壁38の下側の面、弾性体84の上端部87、弾性体84の下端部85、及び導電部材14の上面の内の少なくとも一か所に形成されていればよい。本実施例の蓄電装置2では、絶縁性の樹脂をコーティングした絶縁膜60、61、62、63を形成することにより、導電部材14、弾性体84、隔壁38を順に結んだ経路に電流が流れない状態としている。このため、弾性体84の材質は、絶縁性の有無に制約されずに選択することができる。このため、蓄電装置2の設計の自由度を向上することができる。
【0042】
隔壁38は、下側の面にケース4内の内部空間41の圧力を受けており、上側の面にはケース4内の内部空間41とは隔離された空間である空間42の圧力を受けている。ケース4内の圧力が上昇すると、隔壁38に上向きの力が加わる。隔壁38に上向きの力が加わることで、導電部材14の移動側導電部17にも上向きの力が加わる。ケース4内の圧力が上昇すると、導電部材14には、脆弱部20を破断し、移動側導電部17を固定側導電部16から離間しようとする力が加わる。つまり、本実施例の蓄電装置2では、ケース4内の圧力の上昇による力と、弾性体84の付勢力の両方によって、脆弱部20を破断しようとする力が加えられる。
【0043】
図3に示すように、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となると、隔壁変位部73と移動側導電部17とが一体となって上側に移動し、導電部材14は、脆弱部20の部分で破断する。導電部材14が電流遮断圧力値で破断するように、隔壁38の受圧面積、弾性体84による付勢力、導電部材14の破断強度が、予め適宜選択されている。導電部材14が破断すると、移動側導電部17は、中央平坦部76と共に上側に移動し、固定側導電部16と離間する。移動側導電部17と固定側導電部16とが離間することで、負極と負極端子12bとの間の通電経路に電流が流れない状態となる。
【0044】
導電部材14が破断した状態では、隔壁38は、上側に膨出した状態となっている。第2リード10bの開口部11により、隔壁38と第2リード10bの干渉が避けられている。弾性体84は、上下方向に圧縮変形された状態(
図2)から,圧縮変形が復元した状態(
図3)に変化し、上下方向の寸法が増加する。
【0045】
本実施例の蓄電装置2では、ケース4内の圧力の上昇による力と、弾性体84の付勢力の両方によって、脆弱部20を破断しようとする力が加えられる。このため、脆弱部20の破断が促進される。このため、脆弱部20の破断する部分の断面積を大きくし電気抵抗を低減した場合にも通電経路が遮断され易い。このため、通電経路の電気抵抗の増加を抑制しつつ、電流遮断装置40の感度を向上することができる。
【0046】
本実施例の蓄電装置2では、隔壁38、弾性体84、導電部材14を結ぶ経路は、電気的に絶縁されている。ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となった状態(
図3)では、弾性体84は、圧縮変形が回復している。このため、弾性体84の上下方向の寸法は、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満の状態(
図2)と比較して増加している。通電経路が遮断された状態(
図3)では、隔壁38と導電部材14の間に上下寸法が増加した弾性体84が介在している。このため、移動側導電部17が固定側導電部16に接近し、再び電気的に接続することが抑制される。
【0047】
本実施例の蓄電装置2では、弾性体84は、隔壁38と別部材であるため、弾性体84を、隔壁38と独立して設計することができる。このため、蓄電装置2の設計の自由度が高い。このため、弾性体84及び隔壁38は、所定の性能、精度を確保しやすい。
【0048】
上記の実施例では、絶縁性の樹脂をコーティングすることにより、導電部材14、弾性体84、隔壁38を順に結んだ経路に電流が流れない状態としている場合について説明した。しかし、弾性体84を絶縁性の材料で形成することにより、この経路に電流が流れない状態としてもよい。
【0049】
上記の実施例では、弾性体84は、上端部87を隔壁変位部73に当接し、下端部85を固定側導電部16に当接している場合について説明した。しかし、上端部87は、隔壁変位部73と連動して変位するいずれかの部分に当接していればよい。上端部87は、例えば、移動側導電部17に当接していてもよい。すなわち、
図2において、移動側導電部17の上側に突起部か形成されており、この突起部の上端部と隔壁38とが接合されている場合に、弾性体84の上端部87が、移動側導電部17の一部である突起部に当接していてもよい。なお、上記の場合では、絶縁膜60(
図2、
図3)は、移動側導電部17に形成されていてもよい。また、弾性体84の下端部85は、隔壁変位部73と連動して変位する部分に付勢力を付与する際の、反作用を受け止められる部分であればいずれの部分に当接していてもよい。すなわち、ケース4に対して固定されている部分に当接していればよい。下端部85は、例えば絶縁体36に当接していてもよい。
【実施例2】
【0050】
第2実施例の蓄電装置2では、弾性体84は導電性のある金属で形成されている(
図4)。第1実施例と同様に、弾性体84の下端部85と導電部材14とは固定されており、弾性体84の上端部87と隔壁変位部73とは当接している。第1実施例と異なり導電部材14、弾性体84、隔壁38を順に結ぶ経路は絶縁されていない。ケース4内の圧力が電流遮断値未満の状態では、導電部材14、弾性体84、隔壁38は順に接続されて通電経路を形成している(
図4)。導電部材14、弾性体84、隔壁38が順に接続された通電経路は、隔壁38と導電部材14とが溶接部78で接続された通電経路を補助している。以下の説明では、導電部材14、弾性体84、隔壁38が順に接続された通電経路を補助通電経路と呼ぶ。
【0051】
ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上では、隔壁38は上側に膨出した状態となっている(
図5)。弾性体84の上下方向の寸法は、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満の状態よりも増加している。しかし、隔壁変位部73と固定側導電部16とが離間することで、弾性体84の上端と、隔壁変位部73の下側の面との間には隙間が形成されている。このため、隔壁38と弾性体84との間は電気的に絶縁されている。つまり、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上では、上述の補助通電経路に電流が流れない状態となっている。また、第1実施例と同様に、固定側導電部16と移動側導電部17とは離間して電気的に絶縁されている。つまり、隔壁38、溶接部78、導電部材14を順に結ぶ通電経路に電流が流れない状態となっている。以上により、負極と負極端子12bとの間の通電経路に電流が流れない状態となっている。
【0052】
本実施例の蓄電装置2では、ケース4内の圧力が低い状態では、負極と負極端子12bとの間の通電経路は、隔壁38、溶接部78、導電部材14を順に結ぶ通電経路に加えて、隔壁38、弾性体84、導電部材14を順に結ぶ補助通電経路を有する。このため、負極と負極端子12bとの間の通電経路の電気抵抗を低減することができる。一方、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となった場合には、負極と負極端子12bとの間の通電経路を遮断することができる。
【0053】
本実施例では、弾性体84の下端部85と導電部材14とが固定されており、弾性体84の上端部87と隔壁変位部73とが固定されていない場合について説明した。この場合は、ケース4内の圧力が上昇した際に、弾性体84の上端部87と隔壁変位部73との間に隙間が形成されて補助通電経路が遮断される。しかし、弾性体84の下端部85と導電部材14とが固定されておらず、弾性体84の上端部87と隔壁変位部73とが固定されていてもよい。この場合は、ケース4内の圧力が上昇した際に、弾性体84の下端部85と固定側導電部16の上面との間に隙間が形成されて補助通電経路が遮断される。弾性体84の下端部85と導電部材14とが固定されていない状態とするには、例えば、下端部85の外周の直径を
図4、5の状態より小さくすることで、下端部85が絶縁体36に挟持されない状態とすればよい。弾性体84の上端部87と隔壁変位部73とが固定されている状態とするには、例えば、上端部87と隔壁変位部73とを溶接すればよい。
【0054】
上記の実施例では、脆弱部20が、断面が三角形の刻印部である場合について説明した。しかし、脆弱部20は、導電部材14が破断し易くするための他の手段であってもよい。脆弱部20の断面は四角、半円等の溝、ミシン穴、等いずれの形状であってもよい。脆弱部20の部分の部材を、導電部材14異なる部材としてもよい。移動側導電部17と固定側導電部16とが元々別部材であり、これらが蓄電装置の製造過程で溶接、接着、リベット、かしめ、ネジ止め、等の結合手段によって一体化され、通電経路の遮断時に荷重が加えられることで結合手段が解除され各部分に分離してもよい。また、脆弱部20を設けずに導電部材14が破断してもよい。この場合は、脆弱部20を設けずに導電部材14が破断するように、導電部材14の寸法、材質等は適宜選定される。導電部材14の分離前の状態で、移動側導電部17と、固定側導電部16との境界が判別できなくてもよい。
【0055】
請求項でいう「破断」は、導電部材14に荷重が加えられて、移動側導電部17と固定側導電部16とが結合している状態(元々一体の場合を含む)から結合していない状態に変化し、分離することを言う。荷重が加えられて、結合している状態から結合していない状態に変化し、分離する限りにおいて、請求項でいう「破断」には剥離も含む。
【0056】
請求項でいう、「補助通電経路」は、「通電経路」と比較して電流値が小さいことのみを意味しない。補助通電経路を構成する材料や、接合の態様によっては、「通電経路」よりも大電流が流れる場合もある。
【0057】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。