(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、
(1)2種以上のポリマーを含有する組成物を用い、基板上に相分離膜を形成する工程、及び(2)上記相分離膜の一部の相を除去する工程を含むパターン形成方法であって、上記2種以上のポリマーの少なくとも1種が、加水分解性基を有する金属化合物の加水分解縮合物(I)であることを特徴とするパターン形成方法である。
また、上記(1)工程前に、(0−1)基板上に下層膜を形成する工程、及び(0−2)上記下層膜上に上記基板に対して略垂直な側面を有するプレパターンを形成する工程
をさらに有し、上記(1)工程における相分離膜を、上記プレパターンによって区切られた上記下層膜上の領域に形成し、かつ上記(2)工程において、相分離膜の一部の相に加えプレパターンを除去することが好ましい。
さらに、上記(2)工程後に、(3)上記形成されたパターンをマスクとして、上記基板をエッチングする工程をさらに有することが好ましい。以下、各工程、ポリマー組成物について詳述する。なお、各工程については、
図1〜5を参照しながら説明する。
【0022】
[(0−1)工程]
本工程は、下層膜形成用組成物を用いて、基板上に下層膜を形成する工程である。これにより、
図1に示すように、基板101上に下層膜102が形成された下層膜付き基板を得ることができ、相分離膜はこの下層膜102上に形成される。上記相分離膜が有する相分離構造は、ポリマー組成物が含有するポリマー間の相互作用に加えて、下層膜102との相互作用によっても変化するため、下層膜102を有することでより微細な構造制御が可能となる。さらに、下層膜102をマスクとする多層プロセスとすることで、得られるパターン(マスク)のエッチング耐性をより改善することができる。
【0023】
上記基板101としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ、GaN基板、GaP基板等の従来公知の基板を使用できる。
【0024】
また、上記下層膜形成用組成物としては、例えばARC66(ブルワーサイエンス社製)、NFC HM8005(JSR社製)、NFC CT08(JSR社製)等の商品名で市販されている材料等を用いることができる。
【0025】
上記下層膜102の形成方法は特に限定されないが、例えば、基板101上にスピンコート法等の公知の方法により塗布して形成された塗膜を、露光及び/又は加熱することにより硬化して形成することができる。この露光に用いられる放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等が挙げられる。また、塗膜を加熱する際の温度は、特に限定されないが、90〜550℃であることが好ましく、90〜450℃がより好ましく、90〜300℃がさらに好ましい。なお、上記下層膜102の膜厚は特に限定されないが、50〜20,000nmが好ましく、70〜1,000nmがより好ましい。また、上記下層膜102は、SOC(Spin on carbon)膜を含むことが好ましい。
【0026】
[(0−2)工程]
本工程は、
図2に示すように、上記下層膜102上に、プレパターン形成用の組成物を用いてプレパターン103を形成する工程である。上記プレパターン103によってポリマー組成物の相分離が制御され、所望の微細パターンを形成することができる。即ち、ポリマー組成物が含有するポリマーのうち、プレパターンの側面と親和性が高いポリマーはプレパターンに沿って相を形成し、親和性の低いポリマーはプレパターンから離れた位置に相を形成する。これにより従来よりも微細なパターンを形成することができる。また、プレパターンの材質、長さ、厚さ、形状等により、ポリマー組成物の相分離構造を細かく制御することができる。
【0027】
上記プレパターン103の形成方法としては、公知のレジストパターン形成方法と同様の方法を用いることができる。また、上記プレパターン形成用の組成物としては、従来のレジスト膜形成用組成物を用いることができる。具体的なプレパターン103の形成方法としては、例えば、感放射線酸発生剤と、酸により解離して極性基となる基を有する樹脂とを含有する化学増幅型レジスト組成物を用い、上記下層膜102上に塗布してレジスト膜を形成する。次に、上記レジスト膜の所望の領域に特定パターンのマスクを介して放射線を照射し、露光を行う。上記放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。これらのうち、ArFエキシマレーザーやKrFエキシマレーザーに代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。また露光としては、液浸露光等も好適に用いることができる。次いでポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、アルカリ現像液等の現像液を用いて現像を行い、所望のプレパターン103を形成することができる。なお、アルカリ現像液の代わりに有機溶媒を用いて現像を行い、ネガ型のパターンを得るプレパターンの形成方法も、好適に用いることができる。
【0028】
なお、上記プレパターン103の表面を疎水化処理又は親水化処理してもよい。具体的な処理方法としては、水素プラズマに一定時間さらす水素化処理等が挙げられる。上記プレパターン103の表面の疎水性又は親水性を増長させることにより、ポリマー組成物の自己組織化を促進することができる。
【0029】
[(1)工程]
本工程は、
図3及び
図4に示すように、加水分解縮合物(I)であるポリマーを少なくとも1種含む2種以上のポリマーを含有するポリマー組成物を、プレパターン103によって区切られた下層膜102上の領域に塗布して塗膜104を形成し、基板101上に形成された下層膜102上に、基板101に対して略垂直な界面を有する相分離構造を備える相分離膜105を形成する工程である。上記相分離膜105の形成は、Walheimらの報告に記載の原理に従ったものである(Macromolecules、vol.30、pp.4995−5003、1997)。即ち、互いに不相溶な2種以上のポリマーを含有する溶液を基板上に塗布し、アニーリング等を行うことで、同じ性質を有するポリマー同士が集積して秩序パターンを自発的に形成する、いわゆる自己組織化を促進させることができる。これにより基板101に対して略垂直な界面を有する相分離構造が形成される。この相分離構造は、プレパターンに沿って形成されることが好ましく、相分離により形成される界面は、プレパターンの側面と略平行であることがより好ましい。例えば、プレパターン103と加水分解縮合物(I)との親和性が高い場合には、加水分解縮合物(I)の相がプレパターン103に沿って形成され(105b)、加水分解縮合物(I)と不相溶なポリマーはプレパターンの側面から最も離れた部分、即ちプレパターンで区切られた領域の中央部分に形成され(105a)、ラメラ状(板状)の相が交互に配置されたラメラ状相分離構造を形成する。なお、本工程において形成される相分離構造は、複数の相からなるものであり、これらの相から形成される界面は通常略垂直であるが、界面自体は必ずしも明確でなくてよい。また、各ポリマーの配合割合、プレパターン、下層膜等により、得られる相分離構造を精密に制御し、所望の微細パターンを得ることができる。なお、上記ポリマー組成物の詳細については後述する。
【0030】
上記ポリマー組成物を基板上に塗布して塗膜104を形成する方法は特に制限されないが、例えば使用される上記ポリマー組成物をスピンコート法等によって塗布する方法等が挙げられる。これにより、上記ポリマー組成物は、上記下層膜102上の上記プレパターン103間に充填される。
【0031】
アニーリングの方法としては、例えばオーブン、ホットプレート等により80℃〜200℃の温度で加熱する方法等が挙げられる。アニーリングの時間としては、通常10秒〜30分であり、30秒〜5分が好ましい。これにより得られる相分離膜105の膜厚としては、0.1nm〜500nmが好ましく、0.5nm〜100nmがより好ましい。
【0032】
[(2)工程]
本工程は、
図4及び
図5に示すように、上記相分離膜105が有する相分離構造のうちの一部のポリマー相105a及び/又はプレパターン103を除去する工程である。自己組織化により相分離した各相のエッチングレートの差を用いて、一部のポリマー相105a及び/又はプレパターン103をエッチング処理により除去することができる。相分離構造のうちの一部のポリマー相105a及びプレパターン103を除去した後の状態を
図5に示す。
【0033】
上記相分離膜105が有する相分離構造のうちの一部のポリマー相105a又はプレパターン103の除去の方法としては、例えばケミカルドライエッチング、ケミカルウェットエッチング等の反応性イオンエッチング(RIE);スパッタエッチング、イオンビームエッチング等の物理的エッチング等の公知の方法が挙げられる。これらのうち反応性イオンエッチング(RIE)が好ましく、これらのうち、CF
4、O
2ガス等を用いたケミカルドライエッチング、フッ酸等の液体のエッチング溶液を用いたケミカルウェットエッチング(湿式現像)がより好ましい。
【0034】
[(3)工程]
本工程は、(2)工程後、残存した相分離膜の一部のポリマー相105bからなるパターンをマスクとして、下層膜及び基板をエッチングすることによりパターニングする工程である。基板へのパターニングが完了した後、マスクとして使用された相は溶解処理等により基板上から除去され、最終的にパターニングされた基板(パターン)を得ることができる。上記エッチングの方法としては、(2)工程と同様の方法を用いることができ、エッチングガス及びエッチング溶液は、下層膜及び基板の材質により適宜選択することができる。例えば、基板がシリコン素材である場合には、フロン系ガスとSF
4の混合ガス等を用いることができる。また、基板が金属膜である場合には、BCl
3とCl
2の混合ガス等を用いることができる。なお、上記パターンは半導体素子に好適に用いられ、さらにこの半導体素子は、LED、太陽電池等に広く用いることができる。
【0035】
<ポリマー組成物>
本発明に用いられるポリマー組成物は、2種以上のポリマーを含有する組成物であり、上記2種以上のポリマーの少なくとも1種が加水分解縮合物(I)である。上記2種以上のポリマーの少なくとも1種が加水分解縮合物(I)であることで、上記ポリマー組成物は相分離し易くなり、得られるパターンのリソグラフィー特性を優れたものとすることができる。
【0036】
これらの2種以上のポリマーとしては、2相以上に相分離するものであれば、種類及びその組み合わせは特に限定されないが、加水分解縮合物(I)と、スチレン系ポリマー等の有機系ポリマーとの組み合わせが好ましい。上記2種以上のポリマーが、加水分解縮合物(I)と、有機系ポリマーとの組み合わせであると、ポリマー組成物の相分離がより起こり易くなる。
【0037】
上記ポリマー組成物は、加水分解縮合物(I)を少なくとも1種含む2種以上のポリマーに加えて、好適成分として、熱酸発生剤、感放射線性酸発生剤、界面活性剤を含有することができる。また、本発明の効果を損なわない限り、溶媒等の任意成分を含有してもよい。以下、加水分解縮合物(I)、その他のポリマー、熱酸発生剤、感放射線性酸発生剤、界面活性剤及び溶媒について詳述する。
【0038】
<加水分解縮合物(I)>
加水分解縮合物(I)は、加水分解性基を有する金属化合物の加水分解縮合物であり、加水分解された金属化合物の一部のヒドロキシ基同士が縮合した加水分解縮合物を意味する。また、ここで、加水分解性基を有する金属化合物とは、通常、無触媒、過剰の水の共存下、室温(約25℃)〜約100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解してヒドロキシ基を生成することができる基を有する金属化合物を指す。なお、上記ポリマー組成物中には、一部の加水分解性金属化合物は、その分子中の一部又は全部の加水分解性基が未加水分解の状態で、かつ他の加水分解性基を有する金属化合物と縮合せずに単量体の状態で残っていてもよい。
【0039】
上記ポリマー組成物が含有する加水分解縮合物(I)としては、上記式(1)で表される金属化合物(i)、又は後述する下記式(2)で表される金属化合物(ii)の加水分解縮合物であることが好ましい。なお、上記式(1)で表される金属化合物(i)及び下記式(2)で表される金属化合物(ii)の加水分解反応においては、生成する加水分解縮合物中に一部の加水分解性基が未加水分解の状態で残っていてもよい。
【0040】
上記式(1)中、R
1は、炭素数1〜8の有機基である。R
2は、加水分解性基である。nは、0〜4の整数である。mは、1〜4の整数である。Mは、(n+m)価の金属原子である。
【0041】
上記式(1)中、R
1で表される炭素数1〜8の有機基としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基等が挙げられる。上記アルキル基及びシクロアルキル基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0042】
炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらの中でも、加水分解の容易性の観点から、i−プロピル基、ブチル基が好ましい。
【0043】
炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
【0044】
上記式(1)中、R
2で表される加水分解性基としては、例えばアルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。これらのうち、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基がより好ましい。
【0045】
上記式(1)中、Mで表される金属原子としては、例えば原子番号21〜80の遷移金属が挙げられる。これらのうち、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンが好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウムがより好ましい。
【0046】
上記式(1)で表される金属化合物(i)としては、例えばテトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラメトキシチタン、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラメトキシジルコニウム等の4個の加水分解性基で置換された金属化合物;
メチルトリメトキシチタン、メチルトリエトキシチタン、メチルトリ−i−プロポキシチタン、メチルトリブトキシジルコニウム、エチルトリメトキシジルコニウム、エチルトリエトキシジルコニウム、エチルトリ−i−プロポキシジルコニウム、エチルトリブトキシジルコニウム、ブチルトリメトキシチタン、フェニルトリメトキシチタン、ナフチルトリメトキシチタン、フェニルトリエトキシチタン、ナフチルトリエトキシチタン、アミノプロピルトリメトキシチタン、アミノプロピルトリエトキシジルコニウム、2−(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシジルコニウム、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシジルコニウム、3−イソシアノプロピルトリメトキシジルコニウム、3−イソシアノプロピルトリエトキシジルコニウム等の1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換された金属化合物;
ジメチルジメトキシチタン、ジフェニルジメトキシチタン、ジブチルジメトキシジルコニウム等の2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とで置換された金属化合物;
トリメチルメトキシチタン、トリフェニルメトキシチタン、トリブチルメトキシチタン、トリ(3−メタクリロキシプロピル)メトキシジルコニウム、トリ(3−アクリロキシプロピル)メトキシジルコニウム等の3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基とで置換された金属化合物等が挙げられる。
【0047】
これらのうち、4個の加水分解性基で置換された金属化合物が好ましく、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンがより好ましい。
【0048】
加水分解縮合物(I)の合成に用いる金属化合物(i)の使用量としては、使用する全加水分解性金属化合物に対して、金属化合物(i)が50モル%〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましい。金属化合物(i)が50モル%未満の場合、ポリマー組成物の相分離が起こりにくくなる恐れがある。
【0049】
加水分解縮合物(I)としては、下記式(2)で表される金属化合物(ii)の加水分解縮合物も好ましいものとして挙げられる。
R
3pX(OR
4)
q(R
5)
r ・・・(2)
【0050】
上記式(2)中、R
3及びR
4は、炭素数1〜8の有機基である。R
5は、配位子である。pは、0〜4の整数である。q及びrは、1〜4の整数である。Xは、(p+q+r)価の金属原子である。
【0051】
上記R
3及びR
4で表される炭素数1〜8の有機基としては、例えば上記式(1)における、R
1で表される炭素数1〜8の有機基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0052】
上記Xで表される金属原子としては、例えば上記式(1)におけるMで表される金属原子として例示した原子と同様の原子が挙げられる。これらのうち、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンが好ましく、チタン、ジルコニウムがより好ましい。
【0053】
上記R
5で表される配位子としては、アセチルアセトナートアニオン等のジケトナートアニオン、カルボキシレートアニオン、アンモニア、アミン、ケトン、アルコール、一酸化炭素等が挙げられる。
【0054】
上記式(2)で表される金属化合物(ii)としては、例えばトリエトキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシビス(アセチルアセトナート)チタン等のチタン化合物;
トリエトキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0055】
加水分解縮合物(I)の合成に用いる金属化合物(ii)の使用量としては、使用する全加水分解性金属化合物に対して、50モル%〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましい。金属化合物(ii)が50モル%未満の場合、ポリマー組成物の相分離が起こりにくくなる恐れがある。
【0056】
金属化合物(i)及び金属化合物(ii)を加水分解縮合させる条件は、金属化合物(i)及び金属化合物(ii)の少なくとも一部を加水分解して、加水分解性基をヒドロキシ基に変換し、縮合反応を起こさせるものである限り、特に限定されるものではないが、一例として以下のように実施することができる。
【0057】
金属化合物(i)及び金属化合物(ii)の加水分解縮合反応に用いられる水は、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。水の使用量は上記金属化合物(i)及び金属化合物(ii)の有する加水分解性基の合計量1モルに対して、好ましくは0.1〜3モル、より好ましくは0.3〜2モル、さらに好ましくは0.5〜1.5モルの量である。このような量の水を用いることによって、加水分解縮合の反応速度を最適化することができる。
【0058】
上記加水分解縮合に使用することができる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピオン酸エステル類が挙げられる。これらの溶媒の中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又は3−メトキシプロピオン酸メチルがより好ましい。
【0059】
上記加水分解縮合反応は、好ましくは酸触媒(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂、各種ルイス酸)、塩基触媒(例えば、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジン等の含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウム等の水酸化物;炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム等のカルボン酸塩;各種ルイス塩基)、又は、アルコキシド(例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド)等の触媒の存在下で行われる。例えば、アルミニウムアルコキシドとしては、トリ−i−プロポキシアルミニウムを用いることができる。触媒の使用量としては、加水分解縮合反応の促進の観点から、加水分解性金属化合物のモノマー1モルに対して、好ましくは0.2モル以下であり、より好ましくは0.00001〜0.1モルである。
【0060】
上記加水分解縮合における反応温度及び反応時間は、適宜設定される。例えば、下記の条件が採用できる。反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは20〜150℃である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは30分〜12時間である。このような反応温度及び反応時間とすることによって、加水分解縮合反応を最も効率的に行うことができる。この加水分解縮合においては、反応系内に加水分解性金属化合物、水及び触媒を一度に添加して反応を一段階で行ってもよく、あるいは、加水分解性金属化合物、水及び触媒を、数回に分けて反応系内に添加することによって、加水分解及び縮合反応を多段階で行ってもよい。なお、加水分解縮合反応の後には、脱水剤を加え、次いでエバポレーションにかけることによって、水及び生成したアルコールを反応系から除去することができる。この段階で用いられる脱水剤は、一般的に、過剰の水を吸着又は包接して脱水能が完全に消費されるか、またはエバポレーションにより除去される。
【0061】
加水分解縮合物(I)の分子量は、移動相にテトラヒドロフランを使用したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として測定することができる。上記加水分解縮合物(I)のMwは、通常500〜10,000の範囲内の値とするのが好ましく、1,000〜5,000の範囲内の値とするのがより好ましい。加水分解縮合物(I)のMwの値を500以上とすることによって、感放射線性組成物の塗膜の成膜性を改善することができる。
【0062】
加水分解縮合物(I)の分子量分布(Mw/Mn)としては、3.0以下が好ましく、2.6以下がより好ましい。加水分解縮合物(I)のMw/Mnを3.0以下とすることにより、ポリマー組成物の相分離を起こり易くすることができ、その結果としてLWR及びCDUを指標としたリソグラフィー特性に優れるパターンを形成することができる。
【0063】
上記ポリマー組成物における加水分解縮合物(I)の含有量としては、上記ポリマー組成物が含有する2種以上のポリマーの総質量に対して20質量%〜80質量%であり、30質量%〜70質量%が好ましく、40質量%〜60質量%がより好ましい。上記ポリマー組成物が、加水分解縮合物(I)を上記特定の範囲で含有することで、ポリマー組成物はより相分離し易くなり、得られるパターンのリソグラフィー特性がより向上する。
【0064】
<その他のポリマー>
上記2種以上のポリマーにおける加水分解縮合物(I)以外のその他のポリマーとしては、例えば(メタ)アクリル系ポリマー、シロキサン系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリビニルアセタール系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリウレア系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ノボラック型フェノールポリマー、ポリエステル系ポリマー等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーが好ましい。なお、上記ポリマーとしては、1種類の単量体化合物から合成されるホモポリマーであっても、複数種の単量体化合物から合成されるコポリマーであってもよい。
【0065】
上記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えばポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリメチルアクリル酸等が挙げられる。
【0066】
これらのポリマーを合成するために用いられる単量体化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;
アクリロニトリル、メタアクリルアミド、グリシジルメタアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマー類等が挙げられる。
【0067】
上記シロキサン系ポリマーとしては、例えばポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0068】
これらのポリマーを合成するために用いられる単量体化合物としては、例えばテトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
上記スチレン系ポリマーとしては、例えばポリスチレン等のホモポリマー、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等のスチレン共重合体等が挙げられる。
【0070】
これらのポリマーを合成するために用いられる単量体化合物としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。
【0071】
上記ポリマー組成物が含有する2種以上のポリマーのうちの少なくとも1種はスチレン系ポリマーであることが好ましい。スチレン系ポリマーは、加水分解縮合物(I)との相溶性が特に低いため、上記ポリマー組成物は、スチレン系ポリマーを含有することで相分離し易くなる。その結果、得られるパターンのLWR及びCDUをより低減させることができる。
【0072】
上記ポリマー組成物が含有する2種以上の互いに不相溶性のポリマーの組み合わせとしては、例えば加水分解縮合物(I)とスチレン系ポリマーとの組み合わせ、加水分解縮合物(I)と(メタ)アクリル系ポリマーとの組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、金属化合物(i)とポリスチレンの組み合わせが好ましい。
【0073】
<その他のポリマーの合成方法>
[重合反応によるポリマーの合成方法]
(メタ)アクリル系ポリマー等は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0074】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0075】
上記重合における反応温度は、ラジカル開始剤の種類に応じて適宜決定すればよいが、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0076】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0078】
[縮合反応によるポリマーの合成方法]
シロキサン系ポリマー等は、単量体化合物を加水分解縮合することにより合成することができる。例えばシロキサン系ポリマーは、シラン化合物又は複数種のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成できる。
【0079】
各ポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がより好ましく、1,000〜30,000がさらに好ましい。各ポリマーのMwを上記特定範囲とすることで、得られるパターンのLWR及びCDUよりを低減することができる。
【0080】
ポリマーのMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、通常1〜5であり、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。Mw/Mnをこのような特定範囲とすることで、得られるパターンのLWR及びCDUを低減することができる。
【0081】
なお、Mw及びMnは、GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、以上東ソー社製)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、試料濃度1.0質量%、試料注入量100μL、カラム温度40℃の分析条件で、検出器として示差屈折計を使用し、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0082】
<酸発生剤>
本発明に用いられるポリマー組成物は、熱酸発生剤、感放射線性酸発生剤等の酸発生剤をさらに含有することで、得られるパターンのLWR及びCDUをより優れた値とすることができる。熱酸発生剤及び感放射線性酸発生剤としては、公知の化合物を用いることができる。なお、これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
酸発生剤の含有量は、ポリマー組成物の全固形分を基準として、0.01質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%がより好ましく、0.01質量%〜5質量%がさらに好ましい。
【0083】
<界面活性剤>
本発明に用いられるポリマー組成物は、さらに界面活性剤を含有してもよい。本発明に用いられるポリマー組成物が界面活性剤を含有することで、基板等への塗布性を向上させることができる。
【0084】
界面活性剤としては公知の化合物を用いることができ、その含有量としては、得られるパターンのLWR及びCDUを低減する効果を確保する観点から、全ポリマー組成物に対して、0.0001質量部〜5質量部が好ましく、0.0001質量部〜1質量部がより好ましい。なお、これらの界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
<溶媒>
本発明に用いられるポリマー組成物は、通常溶媒を含有する。上記溶媒としては、例えば上記ポリマーの合成方法において例示した溶媒と同様の溶媒を挙げることができる。これらのうちプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、2−ヘプタノンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0086】
<ポリマー組成物の調製方法>
当該パターン形成方法に用いられるポリマー組成物は、例えば上記溶媒中で、2種以上のポリマー、酸発生剤等の成分を所定の割合で混合することにより調製できる。また、上記ポリマー組成物は、適当な溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用され得る。
【0087】
<パターン>
本発明のパターンは、当該パターン形成方法により形成される。当該パターンは、LWR及びCDUを指標としたリソグラフィー特性に優れるため、半導体素子等において好適に用いられる。なお、当該パターンとは、当該パターン形成方法により得られるパターニングされた微細な構造体をいう。当該パターンについては、当該パターン形成方法における説明を適用することができる。
【0088】
<半導体素子>
本発明の半導体素子は当該パターンを有する。当該半導体素子の少なくとも一部は上述のパターン形成方法を用いてパターニングされており、その他の工程は公知の方法により製造することができる。当該半導体素子は、当該パターンを有することで、その回路の集積度や記録密度を向上させることができるため、LED、太陽電池等の電子デバイスに好適に用いられる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を下記に示す。
【0090】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により東ソー社製のGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を使用し、以下の条件により測定した。
溶離液:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0091】
[低分子量成分含有量]
ポリマーの低分子量成分(分子量1,000未満の成分)の含有量(質量%)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、ジーエルサイエンス社製Inertsil ODS−25μmカラム(4.6mmφ×250mm)を使用し、以下の条件により測定した。
溶離液:アクリロニトリル/0.1質量%リン酸水溶液
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
【0092】
[
13C−NMR分析]:
13C−NMR分析は、日本電子社製JNM−EX400を使用し、測定溶媒としてDMSO−d
6を使用して行った。ポリマーにおける各構造単位の含有率は、
13C−NMRで得られたスペクトルにおける各構造単位に対応するピークの面積比から算出した。
【0093】
<ポリマーの合成>
[合成例1]
4つ口フラスコ中で、テトラ−i−プロポキシチタン(M−1)35.4gをトルエン152.2gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−25℃に冷却した。イオン交換水1.24gをイソプロパノール11.2gに混合後、−25℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した(H
2
O/Ti=0.55モル比)。滴下終了後、30分間温度を保持し、その後撹拌しながら室温まで昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化チタン換算濃度5質量%のゾルを得た。次に得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、固形分濃度40質量%の粘稠性液体を得た。この液体にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒を加えることで、再溶解させ、1.3質量%のポリマー溶液(A−1)を得た。ポリマー(A−1)のMwは3,500であり、Mw/Mnは3.1であり、低分子量成分含有量は1.0質量%であった。
【0094】
[合成例2]
4つ口フラスコ中で、テトラ−n−ブトキシジルコニウム(M−2)10.8gをトルエン溶液46.9gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。イオン交換水0.812gを2−ブタノール7.30gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記四つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した(H
2
O/Zr=1.6モル比)。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。滴下終了後、30分間温度を保持し、撹拌しながら室温まで昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化ジルコニウム換算濃度5質量%のゾルを得た。その後、得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、固形分濃度40質量%の粘稠性液体を得た。この液体にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒を加えることで、再溶解させ、1.3質量%のポリマー溶液(A−2)を得た。ポリマー(A−2)のMwは2,900であり、Mw/Mnは3.0であり、低分子量成分含有量は1.0質量%であった。
【0095】
<評価用基板の作成>
12インチシリコンウェハ上に、有機系下層膜(ARC66、ブルワー・サイエンス社製)を、CLEAN TRACK ACT8(東京エレクトロン社製)を使用してスピンコートした後、205℃ベークして膜厚77nmの下層膜を形成した。形成した下層膜上に、メタクリル酸エステル系の酸解離性基含有ポリマー、感放射線性酸発生剤、酸拡散制御剤及び有機溶媒を含有するArF用レジスト組成物をスピンコートした後、PB(120℃、60秒)することにより膜厚60nmのレジスト膜を形成した。ArF液浸露光装置(NSR S610C、ニコン社製)を使用し、NA;1.30、CrossPole、σ=0.977/0.78の光学条件にて、マスクパターンを介して露光した。その後、115℃で60秒間PEBを行った後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、23℃で30秒間現像し、水洗し、乾燥することにより、プレパターン(40nmライン/90nmピッチ)を得た。続いて、このプレパターンに254nmの紫外光を150mJ/cm
2照射後、170℃で5分間ベークすることにより評価基板を得た。
【0096】
<パターンの形成>
パターンの形成に用いたその他のポリマーを以下に示す。
【0097】
<その他のポリマー>
A−3:ポリ(1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル シルセスキオキサン−ラン−(1−(フェニル)エチル シルセスキオキサン(ポリ(HMBS
50−r−MBS
50)
A−4:ポリスチレン(5.5k)
【0098】
[実施例1]
ポリマー(A−1)とポリマー(A−4)とを質量比40:60で混合した1.3質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を調製した。得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過してポリマー組成物(J−1)を得た。上記組成物を上記評価用基板にスピンコート(3,000rpm/30秒)し、ホットプレート上で120℃、60秒間アニーリングした。続いて、シクロヘキサンを現像液とし、60秒浸漬させた後に、窒素フローでシクロヘキサンを乾燥させることでポリマー(A−4)を除去し、パターンを形成した。測長SEM(S9220、日立社製)で観測することにより、ライン幅(CD)、ライン幅のラフネス(LWR)及びライン幅のばらつき(CDU)を評価した。
【0099】
[実施例2及び比較例1]
表1に示すポリマーを用いた以外は実施例1と同様の操作を行いパターンを形成した。
【0100】
<評価>
上記のように形成したレジストパターンについて、以下のように各種物性を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0101】
[Critical Dimension(CD)]
上記パターン形成方法により形成されたライン幅を計30個測長し、計30個の測長値の平均値を算出しCD(nm)とした。なお、ライン幅の測長には、測長SEM(S9220、日立社製)を用いた。
【0102】
[Critical Dimension Uniformity(CDU)]
上記パターン形成方法により形成されたライン幅を計30個測長し、計30個の測長値の平均偏差を算出し、3倍した値をCDU(nm)とした。このCDUの値が2.5(nm)以下である場合を良好であると評価した。なお、ライン幅の測長には、測長SEM(S9220、日立社製)を用いた。
【0103】
[Line Width Roughness(LWR)]
上記パターン形成方法により得られたラインパターンを、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、CG4000)を用い、パターン上部から観察した。ライン幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定ばらつきを3シグマとして算出した値をLWR(nm)とした。LWRの値が3.5(nm)以下である場合を良好と判断した。なお、ライン幅の測長には、測長SEM(S9220、日立社製)を用いた。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示されるように、本発明のレジストパターン形成方法により形成されるパターンは、LWR及びCDUが低減され、リソグラフィー特性に優れていることがわかった。