(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907041
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】コイン精米機
(51)【国際特許分類】
B02B 7/02 20060101AFI20160407BHJP
B02B 7/00 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
B02B7/02 101Z
B02B7/00 P
B02B7/00 105
B02B7/02 109
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-238164(P2012-238164)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-87729(P2014-87729A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 努
(72)【発明者】
【氏名】越智 輝久
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−198478(JP,A)
【文献】
特開2005−081190(JP,A)
【文献】
特開2012−157804(JP,A)
【文献】
特開2006−205015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00 − 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精米建屋(15)を仕切壁(1)によって操作室(2)と機械室(3)に仕切り、
投入ホッパ(4)に投入した供給米を、投入ホッパ(4)の底部に設けるラセン樋(5)内のラセン(26)で昇降機(6)に供給し、吸引排塵機(9)を備える籾摺選別装置(22)や精米装置(8)で籾摺と精米をするコイン精米機において、
仕切壁(1)よりも操作室(2)側には、投入ホッパ(4)を設け、ラセン樋(5)は、投入ホッパ(4)の底部と、機械室(3)側の昇降機(6)を接続する構成とし、
機械室(3)側のラセン樋(5)の出口(10)と昇降機(6)の入口(11)との間にラセン樋(5)内に外気を吸引する吸気口(12)を設けたことを特徴とするコイン精米機。
【請求項2】
吸気口(12)に、外気を吸引案内する吸気筒(13)を形成し、吸気筒(13)は、操作室(2)と連通することを特徴とする請求項1記載のコイン精米機。
【請求項3】
前記吸気口(12)に開閉弁(14)を設け、精米運転中で、かつラセン(26)が回転中には、開閉弁(14)を閉鎖し、精米運転中にラセン(26)を停止させるときには、開閉弁(14)を開放することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のコイン精米機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイン精米機に関し、操作室の玄米投入ホッパに投入した玄米を正確に搬送供給させるものである。
【背景技術】
【0002】
建室式の籾摺精米設備(コイン精米装置)では、籾摺部や、精米部等の吸引ファンの作用で機械室内の負圧力が大きくなるのを防止するため、建室の側壁にガランを設ける技術(例えば、特許文献立1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001ー198478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投入ホッパに供給される籾米、又は玄米を、投入ホッパ底部のラセン樋(搬送オーガ)で搬送する精米装置(籾摺装置を併設する形態もあり、精米装置と共に籾摺装置をも併設して、籾摺して得た玄米を精米可能とする形態)にあっては、これら籾摺装置や、精米装置を配置する機械室内の負圧力が高い場合は、投入ホッパ内の供給米が、この投入ホッパ底部のラセン樋のラセンが回転していないときでも、前記機械室内の吸引負圧力によって搬送されることがあり、これによって搬送詰りを起したり、故障を発生し易くなる。運転作業の途中において一時的にラセンの回転を停止した場合は、ラセン樋の内部に少量の供給米が残留する状態となって、吸引負圧力によって吸込み搬送され易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、
精米建屋(15)を仕切壁(1)によって操作室(2)と機械室(3)に仕切り、
投入ホッパ(4)に投入した供給米を、投入ホッパ(4)の底部に設けるラセン樋(5)内のラセン(26)で昇降機(6)に供給し、吸引排塵機(9)を備える籾摺選別装置(22)や精米装置(8)で籾摺と精米をするコイン精米機において、
仕切壁(1)よりも操作室(2)側には、投入ホッパ(4)を設け、ラセン樋(5)は、投入ホッパ(4)の底部と、機械室(3)側の昇降機(6)を接続する構成とし、
機械室(3)側のラセン樋(5)の出口(10)と昇降機(6)の入口(11)との間にラセン樋(5)内に外気を吸引する吸気口(12)を設けたことを特徴とするコイン精米機とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、
吸気口(12)に、外気を吸引案内する吸気筒(13)を形成し、吸気筒(13)は、操作室(2)と連通することを特徴とする請求項1記載のコイン精米機。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記吸気口(12)に
開閉弁(14)を設け、精米運転中で、かつラセン(26)が回転中には、開閉弁(14)を閉鎖し、精米運転中にラセン(26)を停止させるときには、開閉弁(14)を開放することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のコイン精米機とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
吸気口12から
ラセン樋5内に外気が吸入されるため、精米運転中に、ラセン樋5内側からの吸引風圧を弱くして、
ラセン26による搬送以外の吸引による供給米の昇降機6への搬送を防止できる。又、前記吸気口12をラセン樋5の出口10と昇降機6の入口11との間に形成して、機械室3内に開口連通するものであるから、構成を簡単にすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
吸気口12に、外気を吸引案内する吸気筒13を形成し、吸気筒13は、操作室2と連通することで、
吸気口12は所定長さの吸気筒13を形成するものであるから、吸気口12の開口面積を大きくすることができる。また、吸気口12から一部の籾米や玄米が飛び出しても、吸気筒13により、機外に飛散することを防止できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
前記吸気口12に開閉弁14を設け、精米運転中で、かつラセン26が回転中には、開閉弁14を閉鎖し、精米運転中にラセン26を停止させるときには、開閉弁14を開放することで、
運転中のラセン樋5のラセンを一時停止時や、運転終了間際のラセン停止時
に、吸引による供給米の昇降機6への搬送を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に基づいて、コイン籾摺精米機は、精米建屋15の内部を仕切壁1によって操作室2と機械室3とに仕切る。操作室2は、作業者が出入して、籾米、又は玄米を持ち込んで前記仕切壁1の一側に配置の投入ホッパ4へ供給することができる。前記仕切壁1には、前記投入ホッパ4の他に、精米を行うための料金を投入するコインメック16や、精米白度を選定する精白度スイッチ17、その他の操作スイッチ、及びパイロットランプ等を配置する操作ボード18を設け、この横側に精米された白米を取出す白米ホッパ19を設け、この白米ホッパ19から取出される白米を袋受けして持ち帰えることができる。前記投入ホッパ4の手前には袋載台20を設けて、投入ホッパ4への供給米(籾米、又は玄米)の投入供給を行い易くしている。
【0013】
前記機械室3には、前記投入ホッパ4の奥側位置に、昇降機6や、インペラ脱ぷ形態の籾摺機21、籾摺選別装置22、及び吸引排塵機9等を配置し、この吸引排塵機9の排塵筒23を建屋15外側へ開放させている。又、前記操作ボード18部の奥側には、選別装置7や、玄米昇降機24を配置し、白米ホッパ19の奥側には精米装置8を配置している。又、これら選別装置7や精米装置8の奥側にはサイクロン形態の集塵装置25を設けている。
【0014】
ここにおいて、前記コイン精米機は、前記ラセン樋5の出口10と、昇降機6の入口11部との間に、前記機械室3外の外気を吸引案内する吸気口12を設けた精米供給装置の構成とする。
【0015】
コイン精米機は、精米利用者が所定量の供給米米と、これとを籾摺、及び精米するための精米利用料金とを投入、供給することによって、白米として自動精米することができるもので、操作室2の投入ホッパ4に所定量の供給米を投入して籾摺、及び精米を行わせる。この投入ホッパ4に供給された供給米は、この底部のラセン樋(オーガ)5のラセンの駆動によって送り込まれて、このラセン樋5の出口10から昇降機6の入口11へ送込まれ、この昇降機6を経て選別装置7や、籾摺り選別装置、又は精米装置8等へ搬送されて、籾摺、及び精米作用が行われる。又、このような精米作用中は、機械室3内には、前記選別装置7や、籾殻や、精米糠等を吸引排除する吸引排塵機9等の吸引風圧が働いて、負圧の状態に維持されるため、この吸引負圧が前記ラセン樋5と昇降機6との間の吸気口12に作用して、この吸気口12から外気を吸入して、ラセン樋5内側への吸引負圧力を弱くすることとなって、ラセン樋5のラセンが例え停止中であっても、この吸引負圧力によって出口側への吸引繰り出しを少なくし、又は、防止することができる。このため、機械室3内に吸引風圧による負圧力が働いているとき、ラセン樋5のラセン駆動を停止するも、投入ホッパ4の籾米や、玄米の供給米を、昇降機6側への繰込が停止される。
【0016】
又、前記吸気口12は、前記ラセン樋5外の外気を吸引案内する吸気筒13を形成し、又は、前記操作室2に連通して、この操作室2内の外気を吸引案内する吸気筒13を形成する。
【0017】
前記のように機械室3内に働く負圧は、ラセン樋5の出口10と昇降機6の入口11との間の吸気口12に作用して、この吸気口12に形成される吸気筒13を経て機械室3外に、乃至操作室2に連通して、ラセン樋5内に働く吸引負圧力を弱くする。この吸気筒13からの外気吸入によって、吸気口12に飛び出す供給米があっても、昇降機6及び入口11側へ吸引搬送され易くする。
【0018】
更には、前記吸気口12には、精米運転中は閉鎖可能の開閉弁14を設ける。
前記のように吸引排塵機9等の駆動によって機械室3内には吸引負圧状態が維持されるため、吸気口12の開閉弁14が開いているときは、この吸気口12から外気を吸入して、ラセン樋5側の吸引負圧作用を無くし、乃至軽減して、ラセン樋5におけるラセン駆動を停止したときは、このラセン樋5からの玄米等の吸出搬送を正確に防止する。このため、開閉弁14は、一般に精米運転中は吸気口12を閉鎖しておき、精米運転停止時に吸気口12を開口するように操作することによって、このラセン樋5からの繰出搬送を停止するときの、機械室3内負圧による不要な吸出搬送を阻止する。
【0019】
前記投入ホッパ4の底部には、ラセン樋5を奥側に向けて設け、この奥側出口10を昇降機6の入口11にのぞませて開口させる。このラセン樋5のラセン26を電動モータM1によって駆動回転することにより、投入ホッパ4内の供給米をラセン樋5に案内させて出口10へ搬送して、昇降機6の入口11へ流下供給させる。
【0020】
前記昇降機6を搬送される籾は、切替弁28によって籾摺機21へ搬送供給されて脱ぷ作用が行われる。この脱ぷされる摺出米は、脱ぷ漏斗27から選別風路28へ流下され、この風選された摺出米が、シュート29を経て、選別装置7へ供給される。この選別装置7で選別された玄米が昇降機24を経て精米装置8へ搬送供給される。この籾摺選別装置22には、選別風路28に吸引風を流す吸引排塵機9が設けられていて、この機械室3内の空気を前記選別風路28を通して吸引しながら排塵筒23へ排風案内する。又、前記インペラ形態の籾摺機21では、このインペラの回転によって機械室3内から吸気しながら摺出米を前記脱ぷ漏斗27へ揚穀する。
【0021】
又、投入ホッパ4に玄米を供給選別装置7側へ精米する場合は、前記切替弁29が切替えられて、昇降機6からシュート30を経て選別装置7へ供給されて玄米の選別作用が行われ、この選別された玄米が昇降機24を経て精米装置8へ供給される。
【0022】
前記精米装置8にも除糠用等の風選装置があって、精米室内に吸引風圧を流して除糠しながら集塵装置25へ吸引排出させる形態としている。昇降機6、24や、この昇降機6、24から揚穀された穀粒を受けるホッパ、籾摺選別装置の選別排塵部等の選別風を吸引しながら、この吸引選別排塵風の中から籾殻や、精米除糠、排塵物等をサイクロン補集して袋詰31するもので、排塵筒23からは排風のみ行わせて、衛生的な籾摺、精米作業を行うものである。
【0023】
前記のように、籾摺選別装置22や精米装置8の全部又は一部が運転されているときは、前記吸引排塵機9や、選別装置7等の吸引ファン回転による吸引風圧が機械室3内部に働いていて、この吸引風圧(負圧)が前記ラセン樋5の出口10部近傍の吸気口12に作用して、この吸気口12から機械室3外の外気を吸入することができる。この吸気口12から外気を吸入することができる状態では、機械室3内の負圧はラセン樋5の出口10にも作用しているため、このラセン樋5内を通して投入ホッパ4内の籾粒や、玄米をも吸い込むように働いている。そこで、前記吸気口12が開口状態であるか、又はこの開閉弁14を設ける形態であっては開閉弁14を開くことによって、吸気口12から外気が吸入される状態になると、この近傍位置に形成されるラセン樋5の出口10に作用する負圧力が弱くなるため、ラセン樋5内部に停滞する籾米や、玄米を吸い出すことができない状態となる。
【0024】
図5のように前記吸気口12は、ラセン樋5の出口10位置よりも若干高い位置に吸気室32を形成して、この吸気室32に出口12を形成したもので、この出口12には吸気筒13を連設している。この吸気筒13の外気吸入口は、建屋15の外側にのぞませているもよいが、前記操作室2内にのぞませている形態としている。特に、この操作室2の天井部にのぞませて塵埃を吸引し難い形態とすることができる。
【0025】
機械室3が負圧状態になるとラセン樋5の出口10が吸気されても、この近傍位置の吸気口12からが吸引抵抗少く容易に吸入されるため、ラセン樋5内にある玄米の吸引搬送が行われ難く、投入ホッパ4内の供給停止時の玄米等の、ラセン樋5からの飲込搬出、乃至吸込搬出をなくして、これによる昇降機6や、籾摺機21、乃至精米装置8の詰り、不具合等の発生を防止するものである。
【0026】
次に、主として
図6に基づいて、前記吸気口12に開閉弁14を設ける形態では、精米機の運転中はこの開閉弁14を閉鎖しておき、螺旋26の回転を一時停止するとき、又は運転終了間際の螺旋26回転停止時に開閉弁14を開放するように作動させる。図例の開閉弁14は、開閉回動のヒンジピン35周りにスプリング36を設けて、この開閉弁14にスプリング36圧に抗する負圧が働くことによって、開閉弁14が自動的に開き回動されて、吸気口2から外気を機械室3内へ吸入することができ、ラセン樋5の出口10に対する吸引負圧力を弱くする。
【0027】
又、
図7は、前記開閉弁14がスプリング36力に抗して所定以上に開いたことを検出する開センサ37で、リミットスイッチから構成している。この開センサ37によって開閉弁14が開いたことを検出すると、報知器等を出力させて、機械室3内が負圧状態にある旨を作業者に知らせるものである。
【0028】
次に、主として
図8に基づいて、前記ラセン樋5の出口10と、昇降機6の入口11との間を覆う入口漏斗33の天井部カバー34に電磁ソレノイド37によって開閉作動する開閉弁14を設ける。この開閉弁14は、前記コインメック16に供給されたコインのコイン切れによる運転作動の停止時、及び投入ホッパ4における玄米センサが玄米のなくなったことを検出したときに、ソレノイド37を作動させて開閉弁14を開き、吸気口12から外気を吸入できる状態にするものである。
【0029】
次に、主として
図9に基づいて、前記外気を機械室3内へ吸引する吸気口12を昇降機6に設けたものである。前記昇降機6の上部開口部40に、吸気口12、及びこの吸気口12を開閉する開閉弁14を有した取付けプレート38をビス39止め等で取付けて、この開閉弁14による吸気口12を開くことによって、この吸気口12に連設の吸気筒を経て外気を昇降機6内へ吸引し、ラセン樋5への吸引負圧の働きを弱くするものである。この形態は、ラセン樋5出口10と昇降機6の入口11とを気密的に連結して構成する場合に有効である。前記昇降機6の入口11部に吸気口12を設けた形態と同様の目的、効果を有するものである。
【0030】
次に、主として、
図10に基づいて、前記のように、昇降機6の揚穀ホッパ41口部42に、籾摺機21へ案内するシュータ30、及び44とを設け、これらのシュータ43と30との間を切り替える切替弁29を構成する形態において、インターロック時、及びコイン切れ終了時には、前記切替弁29をシュータ30、44側へ流下排出するように切替えることができ、このシュータ44から取り出された米を、作業者が持ち帰ることができる。前記籾摺別装置22部が回転することにより、投入ホッパ4部に少量の供給米が残っている場合は、この残留米が昇降機6側へ吸込まれ易くなっていて、吸引搬送され易くなっているが、切替弁29を持帰り側へ操作することにより、籾摺機21と投入ホッパ4部との繋がり関係を断って、残留米の吸込み搬送を防止することができる。
【0031】
前記揚穀ホッパ41の切替弁29は、籾摺機21側のシュータ43と、選別装置7側のシュータ30とに流下案内するように切替ることができるが、このシュータ30の途中には切替弁45が設けられていて、前記選別装置7側と操作室2側のシュータ44とに切替る二段切替弁の形態に構成している。
【符号の説明】
【0032】
1 仕切壁
2 操作室
3 機械室
4 投入ホッパ
5 ラセン樋
6 昇降機
7 選別装置
8 精米装置
9 吸引排塵機
10 出口
11 入口
12 吸気口
13 吸気筒
14 開閉弁
15 建屋