【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0059】
(1)β晶形成能
ポリプロピレン樹脂(ポリプロピレン樹脂の混合物を使用する場合は混合物)または多孔性ポリプロピレンフィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から260℃まで20℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度20℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
β晶形成能(%)=「」ΔHβ/(ΔHα+ΔHβ)]×100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出することで、その試料の状態でのβ晶分率を算出することができる。
【0060】
(2)融点(Tm)
上記β晶形成能の測定方法と同様の方法でポリプロピレン樹脂を測定し、セカンドランのピーク温度(α晶)を融点(Tm)とした。
【0061】
(3)5%収縮温度
セイコーインスツルメント社製TMA/SS6000を用いて、下記温度プログラムにて一定荷重下におけるフィルム長手方向および幅方向の収縮曲線をそれぞれ求めた。
得られた収縮曲線から、もとのサンプル長より5%収縮した時の温度を読み取った。
温度プログラム 25℃→(5℃/min)→160℃(hold 5min)
荷重 2g
サンプルサイズ サンプル長15mm×幅4mm
(測定したい方向をサンプル長側に合わせる)
【0062】
(4)メルトフローレート(MFR)
ポリプロピレン樹脂のMFRは、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定する。ポリエチレン樹脂は、JIS K 7210(1995)の条件D(190℃、2.16kg)に準拠して測定する。
【0063】
(5)空孔率
多孔性ポリプロピレンフィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をそのフィルムの比重ρとした。
次に、測定したフィルムを280℃、5MPaで熱プレスを行い、その後、25℃の水で急冷して、空孔を完全に消去したシートを作成した。このシートの比重を上記した方法で同様に測定し、平均値を樹脂の比重(d)とした。なお、後述する実施例においては、いずれの場合も樹脂の比重dは0.91であった。フィルムの比重と樹脂の比重から、以下の式により空孔率を算出した。
空孔率(%)=[(d−ρ)/d]×100
【0064】
(6)開孔率
多孔性ポリプロピレンフィルムにエイコーエンジニアリング社製IB−5型イオンコーターを用いてイオンコートを行い、日本電子社製電界放射走査電子顕微鏡(JSM−6700F)を用いてフィルム表面を撮影倍率5,000倍で観察し、横13μm、縦10μm範囲の画像データを得た。得られた画像データ(スケールバーなどの表示がない、観察部のみの画像)をプラネトロン社製Image−ProPlus Ver.4.5を用いて画像解析を行い、孔部分の面積割合を算出した。画像解析方法としては、まず平坦化フィルタ(暗い、10ピクセル)を1回実行し輝度斑を修正した後、メディアンフィルタ(カーネルサイズ3×3)を1回実行しノイズを除去した。次いで、局部イコライゼーションフィルタ(対数分布、小ウィンドウ100、ステップ1)を1回実行し樹脂部を明るく強調させ、コントラスト調整(コントラスト100)を行った。全面積に対する、検出された空孔部分の面積比をカウント/サイズ項目の面積比測定により求めることで、開孔率(%)を算出した。同じ多孔性ポリプロピレンフィルムの両面において10ヶ所ずつ測定し、その平均値を当該サンプルの開孔率とした。
【0065】
(7)透気抵抗
多孔性ポリプロピレンフィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。JIS P 8117(1998)のB形ガーレー試験器を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間の測定を行った。測定は試料を替えて3回行い、透過時間の平均値をそのフィルムの透気性とした。なお、フィルムに貫通孔が形成されていることは、この透気性の値が有限値であることをもって確認できる。
【0066】
(8)破断伸度
多孔性ポリプロピレンフィルムを長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。なお、150mmの長さ方向をフィルムの長手方向および幅方向に合わせた。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分として多孔性ポリプロピレンフィルムの長手方向および幅方向にそれぞれ引張試験を行った。サンプルが破断した時のフィルム長の変化量を試験前のサンプル長(50mm)で除して100倍した値を破断伸度の指標とした。測定は長手方向および幅方向各5個のサンプルで行い、その平均値で評価を行った。
【0067】
(9)フィルム厚み
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B−7503(1997)、PEACOCK製UPRIGHT DIAL GAUGE(0.001×2mm)、No.25、測定子10mmφ平型、50gf荷重)を用いて測定した。
【0068】
(10)厚みムラ
製膜後のフィルムの幅方向に沿って1cm間隔で全幅にわたり、上述したフィルム厚み測定方法で幅方向の厚みプロファイルを測定した。全測定点の最大値をt
max、最小値をt
min、平均値をt
aveとしたとき、下記式により厚み平均値に対する幅方向の厚みムラ(%)を求めた。
厚みムラ(%)=(t
max−t
min)/t
ave×100
【0069】
(11)空孔率ムラ
製膜後のフィルムの幅方向に沿って5cm間隔で全幅にわたり、上述した空孔率測定方法で幅方向の空孔率プロファイルを測定した。全測定点の最大値をφ
max、最小値をφ
min、平均値をφ
aveとしたとき、下記式により空孔率平均値に対する幅方向の空孔率ムラ(%)を求めた。
空孔率ムラ(%)=(φ
max−φ
min)/φ
ave×100
【0070】
(12)電池特性評価
宝泉(株)製のリチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)厚みが40μmの正極を使用し、直径15.9mmの円形に打ち抜き、また、宝泉(株)製の黒鉛厚みが50μmの負極を使用し、直径16.2mmの円形に打ち抜き、次に、各実施例・比較例のセパレータ用フィルムを直径24.0mmに打ち抜き、正極活物質と負極活物質面が対向するように、下から負極、セパレータ、正極の順に重ね、蓋付ステンレス金属製小容器に収納した。容器と蓋とは絶縁され、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミ箔と接している。この容器内にエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(質量比)の混合溶媒に溶質としてLiPF
6を濃度1M/Lとなるように溶解させた電解液を注入して密閉した。各実施例・比較例につき、電池を作製した。
【0071】
作製した各二次電池について、25℃の雰囲気下、充電を3mAで4.2Vまで1.5時間、放電を3mAで2.7Vまでとする充放電操作を行い、放電容量を調べた。さらに、充電を3mAで4.2Vまで1.5時間、放電を30mAで2.7Vまでとする充放電操作を行い、放電容量を調べた。
[(30mAの放電容量)/(3mAの放電容量)]×100の計算式で得られる値を以下の基準で評価した。なお、試験個数は20個測定し、その平均値で評価した。
○:85%以上
△:75%以上85%未満
×:75%未満
【0072】
(13)安全性評価
安全性評価としては以下に示す単層ラミネートセルを作成し、組み立て時の異物混入を想定した強制悪化テストとして、負極とセパレータ間に金属粒子を混入させ、100℃の雰囲気下で2時間放置したときの容量低下を評価した。
宝泉(株)製のリチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)厚みが40μmの正極を使用し、活物質部分が47mm×47mmの正方形となるように打ち抜き、また、宝泉(株)製の厚みが50μmの黒鉛負極を使用し、活物質部分が50mm×50mmの正方形となるように打ち抜き、次に、各実施例・比較例の多孔性フィルムを長手方向に55mm、幅方向に55mmの正方形に打ち抜いた。正極活物質と負極活物質面が対向するように、下から負極、金属粒子(平均粒子径15μm、Alfa Aesar製球状銅粒子)1mg、多孔性ポリプロピレンフィルム、正極の順に重ね、Al箔を蒸着したラミネートフィルムで三方シールし、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に溶質としてLiPF
6を濃度1モル/リットルとなるように溶解させた電解液を注入し、真空脱気し密閉し、各実施例・比較例につき、電池を作製した。
【0073】
作製した各二次電池について、25℃の雰囲気下、30mAで4.2Vまで3.5時間で充電し、25℃雰囲気下で30分間静置し、30mAで2.7Vまで放電し、放電容量1を測定した後、25℃の雰囲気下、30mAで4.2Vまで3.5時間で充電し、100℃の雰囲気下で2時間放置した後、30mAで2.7Vまで放電し、放電容量2を測定した。
[(放電容量2)/(放電容量1)]×100の計算式で得られる値を以下の基準で評価した。なお、試験個数は20個測定し、以下の基準で評価した。
○:20個の平均値が90%以上、かつ、20%未満の電池が無い
△:20個の平均値が80%以上90%未満、かつ、20%未満の電池が無い
×:20個の平均値が80%未満、または、1個以上が20%未満
【0074】
(14)多孔性ポリプロピレンフィルムの融点T
f(℃)と多孔性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂(ポリプロピレン樹脂の混合物を使用する場合は混合物)の融点T
r(℃)の差(T
f−T
r)
上記β晶形成能の測定方法と同様の方法で多孔性ポリプロピレンフィルムを測定し、ファーストランのピーク温度(α晶)を多孔性ポリプロピレンフィルムの融点T
f(℃)とした。
多孔性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の融点T
r(℃)は以下の方法で測定した。まず、多孔性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂を原料の配合量の比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、240℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン樹脂混合物とした。(このポリプロピレン樹脂混合物には、β晶核剤やその他添加剤は含まない。)次に、上記β晶形成能の測定方法と同様の方法でポリプロピレン樹脂混合物を測定し、セカンドランのピーク温度(α晶)を多孔性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂混合物の融点T
r(℃)とした。
得られた、T
fとT
rから差(T
f−T
r)を求めた。
【0075】
(15)多孔性ポリプロピレンフィルムの耐電圧
60cm×70cmの銅板上に60cm×70cmの多孔性ポリプロピレンフィルムを置き、その上に50cm×60cmのアルミ蒸着したポリプロピレンフィルムを置いて、春日電機製SDH−1020P直流式耐圧試験器を接続した。0.5kVをスタート電圧とし、0.01kV/秒の昇圧速度で0.1kVずつステップで昇圧していき、各印加電圧において30秒間ホールドしている間の、絶縁破壊個数をそれぞれの印加電圧で数え、絶縁破壊が10個を越えたときの印加電圧を耐電圧とした。測定は5回行い、その平均値を多孔性ポリプロピレンフィルムの耐電圧とした。
【0076】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を95質量部、MFR=0.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンD101を5質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、240℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン原料(ポリプロピレン樹脂混合物D)とした。
次に、ポリプロピレン樹脂混合物Dを70質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン・1−オクテン共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、MFR:18g/10分)を25質量部に加えて、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、240℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(E)を得た。
【0077】
また、ポリプロピレン樹脂混合物Dを99.5質量部に、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(F)を得た。
【0078】
得られたポリプロピレン組成物(E)10質量部とポリプロピレン組成物(F)90質量部をドライブレンドして単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で6.5倍に、延伸速度1,800%/分で延伸した。なお、テンター入り口の幅方向クリップ間距離は150mmであった。
【0079】
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し(HS1ゾーン)、更に162℃で弛緩率22%、弛緩速度290%/分でリラックスを行い(Rxゾーン)、最後に弛緩後のクリップ間距離に保ったまま162℃で5秒間熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、テンタークリップで把持したフィルムの耳部をスリットして除去し、ワインダーで幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取った。
上記のようにして作製した実施例1の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。なお、多孔性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂混合物(酸化防止剤、β晶核剤を含まない)の融点T
rは165℃であった。また、多孔性ポリプロピレンフィルムの耐電圧は、2.7kVであった。
【0080】
(実施例2)
実施例1でRxゾーンでの条件を162℃で弛緩率20%、弛緩速度260%/分と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例2の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例3)
実施例1でRxゾーンでの条件を162℃で弛緩率14%、弛緩速度180%/分と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例3の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例4)
実施例1でRxゾーンでの条件を162℃で弛緩率30%、弛緩速度390%/分と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例4の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例5)
実施例1でRxゾーンでの条件を160℃で弛緩率22%、弛緩速度290%/分と変更し、HS2ゾーンの温度を160℃に変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例5の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例6)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.5質量部に、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(G)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(G)100質量部を単軸の溶融押出機に供給し、それ以降は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
上記のようにして作製した実施例6の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。なお、多孔性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂(FLX80E4)の融点T
rは165℃であった。
【0085】
(実施例7)
実施例6でRxゾーンでの条件を162℃で弛緩率20%、弛緩速度260%/分と変更した以外は実施例6と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例7の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例8)
実施例1でRxゾーンでの弛緩速度を480%/分と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例8の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例9)
実施例1でRxゾーンでの弛緩速度を870%/分と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例9の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例10)
実施例1で延伸ゾーンでの温度を149℃、倍率を7.8倍、HS1ゾーンでの温度を149℃、Rxゾーンでの温度を163℃、弛緩率を20%、弛緩速度260%/分、HS2ゾーンでの温度を163℃と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例10の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例11)
実施例1で延伸ゾーンでの温度を149℃、倍率を9.4倍、HS1ゾーンでの温度を149℃、Rxゾーンでの温度を163℃、弛緩率を20%、弛緩速度260%/分、HS2ゾーンでの温度を163℃と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した実施例11の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例1)
実施例1でHS1ゾーンの温度を158℃、Rxゾーンでの条件を158℃で弛緩率10%、弛緩速度130%/分と変更し、HS2ゾーンの温度を158℃に変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。また、多孔性ポリプロピレンフィルムの耐電圧は、2.2kVであった。上記のようにして作製した比較例1の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
(比較例2)
比較例1において、原料を実施例6で用いたポリプロピレン組成物(G)100質量部を単軸の溶融押出機に供給した以外は比較例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例2の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0092】
(比較例3)
実施例1でHS1ゾーンの温度を162℃とし、Rxゾーンでの条件を162℃で弛緩率20%、弛緩速度260%/分と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例3の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
(比較例4)
実施例1でテンターでの延伸倍率を5.2倍、延伸速度を1,440%/分とし、Rxゾーンでの条件を162℃で弛緩率0%、弛緩速度0%/分と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例4の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0094】
(比較例5)
実施例1でHS1ゾーンの温度を165℃とし、Rxゾーンでの条件を165℃で弛緩率20%、弛緩速度260%/分とし、HS2ゾーンの温度を165℃と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例5の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0095】
(比較例6)
実施例1で延伸ゾーンでの倍率を6.0倍、Rxゾーンでの温度を155℃、弛緩率を5%、弛緩速度65%/分、HS2ゾーンでの温度を155℃と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例6の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0096】
(比較例7)
実施例1で延伸ゾーンでの倍率を6.0倍、Rxゾーンでの温度を155℃、弛緩速度260%/分、HS2ゾーンでの温度を155℃と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例7の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0097】
(比較例8)
実施例1で長手方向への延伸倍率を4.2倍、延伸温度を128℃に変更し、更に、横方向への延伸では、延伸ゾーンでの倍率を6.0倍、Rxゾーンでの温度を155℃、弛緩率を5%、弛緩速度65%/分、HS2ゾーンでの温度を155℃と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例8の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0098】
(比較例9)
実施例1で長手方向への延伸倍率を4.2倍、延伸温度を130℃に変更し、更に、横方向への延伸では、延伸ゾーンでの倍率を6.0倍、Rxゾーンでの温度を155℃、弛緩率を5%、弛緩速度65%/分、HS2ゾーンでの温度を155℃と変更した以外は実施例1と同じ条件で幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例9の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0099】
(比較例10)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4のみを用い、酸化防止剤およびβ晶核剤の配合量、ならびに成膜条件は比較例5と同じ条件で、幅500mm、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。上記のようにして作製した比較例10の多孔性ポリプロピレンフィルムについて、上記の(1)〜(14)に記載の方法で測定および評価を行った。結果を表2に示す。
なお、多孔性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂(FLX80E4)の融点T
rは165℃であった。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
本発明の要件を満足する実施例では透気抵抗が低く、空孔率が低く、更に幅方向の熱収縮特性に優れるため、安全性と出力特性を両立することができ、蓄電デバイス用のセパレータとして好適に用いることが可能であると考えられる。一方、比較例では、低透気抵抗と低空孔率化の両立が不十分であったり、熱収縮特性が劣り、高出力用途の蓄電デバイス用のセパレータとして用いることが困難である。