特許第5907070号(P5907070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907070リチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液及びそれを用いた電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907070
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】リチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液及びそれを用いた電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20160407BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20160407BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20160407BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20160407BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20160407BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20160407BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20160407BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/0569
   H01M10/052
   H01M6/16 A
   H01G11/64
   H01G11/60
   H01G11/06
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-547841(P2012-547841)
(86)(22)【出願日】2011年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2011078041
(87)【国際公開番号】WO2012077623
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-271751(P2010-271751)
(32)【優先日】2010年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三好 和弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正英
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−245864(JP,A)
【文献】 特開2009−158240(JP,A)
【文献】 特開2004−179146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/056−10/0569
H01G 11/64
H01M 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、該非水溶媒がフッ素原子を有する環状カーボネートを0.1〜30体積%含有し、更に非水電解液中に2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物が0.001〜5質量%含有されていることを特徴とするリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【請求項2】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、非水電解液中に2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有し、且つ、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有することを特徴とするリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【請求項3】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、該非水溶媒がフッ素原子を有する環状カーボネートを0.1〜30体積%含有し、更に非水電解液中に2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物を0.001〜5質量%、および、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有することを特徴とするリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【請求項4】
前記直鎖ジニトリル化合物として、前記直鎖ジニトリル化合物を構成する2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の炭素数が、前記分枝ジニトリル化合物のアルキレン鎖の主鎖の炭素数と異なる数のものを用いることを特徴とする請求項2または3に記載のリチウムイオン電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【請求項5】
前記分枝ジニトリル化合物が、主鎖のアルキレン鎖の少なくとも1つの水素原子が炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【請求項6】
前記分枝ジニトリル化合物が、2つのニトリル基のうち、一方のニトリル基のα位炭素に結合する1つの水素原子のみがメチル基で置換されたものであることを特徴とする請求項5に記載のリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【請求項7】
前記分枝ジニトリル化合物が、2−メチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2−エチル−3−メチルスクシノニトリル、2,2,3−トリメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2−エチル−4−メチルグルタロニトリル、2,2,4−トリメチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,3,4−トリメチルグルタロニトリル、2−メチルアジポニトリル、2,5−ジメチルアジポニトリル、2−エチル−5−メチルアジポニトリル、2,2,5−トリメチルアジポニトリル、2,3−ジメチルアジポニトリル、2,4−ジメチルアジポニトリル、および2,3,5−トリメチルアジポニトリルから選択される少なくとも一種である請求項5に記載のリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【請求項8】
正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えたリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタである電気化学素子において、非水電解液が請求項1〜のいずれかに記載したリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液であることを特徴とする電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液及びそれを用いた電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気化学素子、特にリチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の小型電子機器、電気自動車や電力貯蔵用として広く使用されている。これらの電子機器や自動車は、真夏の高温下や極寒の低温下等広い温度範囲で使用される可能性があるため、広い温度範囲でバランス良く電気化学特性を向上させることが求められている。
特に地球温暖化防止のため、CO排出量を削減することが急務となっており、リチウム二次電池やキャパシタなどの電気化学素子からなる蓄電装置を搭載した環境対応車の中でも、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)の早期普及が求められている。しかしながら自動車は移動距離が長いため、熱帯の非常に暑い地域から極寒の地域まで幅広い温度範囲の地域で使用される可能性がある。従って、これらの車載用の電気化学素子は、高温から低温まで幅広い温度範囲で使用しても電気化学特性が劣化しないことが要求されている。
尚、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
【0003】
リチウム二次電池は、主にリチウムを吸蔵及び放出可能な材料を含む正極及び負極、リチウム塩と非水溶媒からなる非水電解液から構成され、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネートが使用されている。
また、負極としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵及び放出することが可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
【0004】
例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の高結晶化した炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電時に負極表面で還元分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、サイクル特性の低下を生じることが分かっている。また、非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすくなる。
更に、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池は、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。また、これらの負極材料の微粉化や非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすくなる。
一方、正極として、例えばLiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO等を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の非水溶媒が充電状態で正極材料と非水電解液との界面において、局部的に一部酸化分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、やはり広い温度範囲での電気化学特性の低下を生じることが分かっている。
【0005】
以上のように、正極上や負極上で非水電解液が分解するときの分解物やガスにより、リチウムイオンの移動が阻害されたり、電池が膨れたりすることで電池性能が低下していた。そのような状況にも関わらず、リチウム二次電池が搭載されている電子機器の多機能化はますます進み、電力消費量が増大する流れにある。そのため、リチウム二次電池の高容量化はますます進んでおり、電極の密度を高めたり、電池内の無駄な空間容積を減らす等、電池内の非水電解液の占める体積が小さくなっている。従って、少しの非水電解液の分解で、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすい状況にある。
特許文献1には、鎖式飽和炭化水素化合物の両端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物を含有する非水電解液が提案されており、例えば、2−メチルグルタロニトリル:エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=50:25:25(容量比)とした混合溶媒にリチウム塩を溶解させた電解液が広い電位窓を有することが示唆されている。
また、特許文献2及び特許文献3には、フルオロエチレンカーボネートとサクシノニトリルを含む非水電解液を用いたリチウム二次電池において、熱衝撃に対する安全性を向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−165653号公報
【特許文献2】国際公開2007/081169号パンフレット
【特許文献3】国際公開2007/094625号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液及びそれを用いた電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の非水電解液の性能について詳細に検討した。その結果、前記特許文献の非水電解液では、高温保存後の低温放電特性などの広い温度範囲での電気化学特性を向上させるという課題に対しては、十分に満足できるとは言えないのが実情であった。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、非水電解液中に2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有させ、かつ、特定量のフッ素原子を有する環状カーボネートもしくは特定量の2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を組み合わせた場合に、広い温度範囲での電気化学特性、特にリチウム電池の電気化学特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の(1)〜()を提供するものである。
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、該非水溶媒がフッ素原子を有する環状カーボネートを0.1〜30体積%含有し、更に非水電解液中に2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物が0.001〜5質量%含有されていることを特徴とするリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【0010】
(2)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、非水電解液中に2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有し、且つ、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有することを特徴とするリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【0011】
(3)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、該非水溶媒がフッ素原子を有する環状カーボネートを0.1〜30体積%含有し、更に非水電解液中に2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物を0.001〜5質量%、および、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有することを特徴とするリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【0012】
(4)前記直鎖ジニトリル化合物として、前記直鎖ジニトリル化合物を構成する2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の炭素数が、前記分枝ジニトリル化合物のアルキレン鎖の主鎖の炭素数と異なる数のものを用いることを特徴とする前記(2)または(3)に記載のリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【0013】
(5)前記分枝ジニトリル化合物が、主鎖のアルキレン鎖の少なくとも1つの水素原子が炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたものであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【0014】
(6)前記分枝ジニトリル化合物が、2つのニトリル基のうち、一方のニトリル基のα位炭素に結合する1つの水素原子のみがメチル基で置換されたものであることを特徴とする前記(5)に記載のリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
(7)前記分枝ジニトリル化合物が、2−メチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2−エチル−3−メチルスクシノニトリル、2,2,3−トリメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2−エチル−4−メチルグルタロニトリル、2,2,4−トリメチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,3,4−トリメチルグルタロニトリル、2−メチルアジポニトリル、2,5−ジメチルアジポニトリル、2−エチル−5−メチルアジポニトリル、2,2,5−トリメチルアジポニトリル、2,3−ジメチルアジポニトリル、2,4−ジメチルアジポニトリル、および2,3,5−トリメチルアジポニトリルから選択される少なくとも一種である前記(5)に記載のリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液。
【0015】
)正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えたリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタである電気化学素子において、該非水電解液が前記(1)〜()のいずれかに記載したリチウム電池又はリチウムイオンキャパシタ用の非水電解液であることを特徴とする電気化学素子。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、広い温度範囲での電気化学特性、特に高温保存後の低温放電特性を向上できる非水電解液及びそれを用いたリチウム電池等の電気化学素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、非水電解液及びそれを用いた電気化学素子に関する。
【0018】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、非水電解液中に特定量の2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有させかつ、特定量のフッ素原子を有する環状カーボネートもしくは、特定量の2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を組み合わせて用いることを特徴とする非水電解液である。
【0019】
本発明の非水電解液が、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できる理由は必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。
本発明の非水電解液に含有される2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物は、主鎖のアルキレン鎖の少なくとも1つの水素原子を置換するアルキル基が立体障害となる為、初回充電時に正極表面上の活性点で緩やかに反応し、電解液の酸化分解を抑制する被膜が形成されると考えられる。
更に、フッ素原子を有する環状カーボネートもしくは2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物といった化合物、すなわち、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物とは構造の異なる特定の電子吸引性基を有する化合物を組み合わせた場合、これらの化合物が、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物と相俟って被膜を形成することで、形成される被膜のLiイオン透過性が向上するとともに、電解液の酸化分解を抑制する効果が一段と高まるため、低温から高温まで広い温度範囲での電気化学特性が著しく向上する特異的な効果をもたらすことが分かった。
【0020】
本発明の非水電解液において、非水電解液に含有される2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物の含有量は、非水電解液中に0.001〜5質量%が好ましい。該含有量が5質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され広い温度範囲での電気化学特性が低下するおそれが少なく、また0.001質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。また、その上限は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0021】
2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物としては、主鎖のアルキレン鎖の少なくとも1つの水素原子を炭素数1以上4以下のアルキル基で置換したものがより好ましく、主鎖のアルキレン鎖の少なくとも1つの水素原子を炭素数1以上2以下のアルキル基で置換したものが更に好ましい。
具体的には、2−メチルスクシノニトリル、2−エチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2−エチル−3−メチルスクシノニトリル、2,3−ジエチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,2,3−トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3−テトラメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2−エチル−4−メチルグルタロニトリル、2,4−ジエチルグルタロニトリル、2,2−ジメチルグルタロニトリル、2,2,4−トリメチルグルタロニトリル、2,2,4,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,3,4−トリメチルグルタロニトリル、3−メチルグルタロニトリル、3,3−ジメチルグルタロニトリル、2−メチルアジポニトリル、2−エチルアジポニトリル、2,5−ジメチルアジポニトリル、2−エチル−5−メチルアジポニトリル、2,5−ジエチルアジポニトリル、2,2−ジメチルアジポニトリル、2,2,5−トリメチルアジポニトリル、2,2,5,5−テトラメチルアジポニトリル、2,3−ジメチルアジポニトリル、2,4−ジメチルアジポニトリル、2,3,5−トリメチルアジポニトリル、3−メチルアジポニトリル、3,3−ジメチルアジポニトリルが好適に挙げられる。
これらの中でも、一方のニトリル基のα位炭素(CH)の1つのHのみがメチル基である場合、広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が高まるので好ましく、具体的には、2−メチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2−エチル−3−メチルスクシノニトリル、2,2,3−トリメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2−エチル−4−メチルグルタロニトリル、2,2,4−トリメチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,3,4−トリメチルグルタロニトリル、2−メチルアジポニトリル、2,5−ジメチルアジポニトリル、2−エチル−5−メチルアジポニトリル、2,2,5−トリメチルアジポニトリル、2,3−ジメチルアジポニトリル、2,4−ジメチルアジポニトリル、2,3,5−トリメチルアジポニトリルが好ましい。更に、他方のニトリル基のα位炭素(CH)が無置換の場合、2つのニトリル基の反応性が異なるため、過度に緻密化することなく被膜が形成されLiイオン透過性が一段と向上するので好ましく、このような観点より、2−メチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2−メチルアジポニトリル、2,3−ジメチルアジポニトリル、2,4−ジメチルアジポニトリルが特に好ましい。
【0022】
本発明の非水電解液において、非水溶媒中にフッ素原子を有する環状カーボネートが占める体積の割合は、0.1体積%以上が好ましく、更に好ましくは1体積%以上、特に好ましくは3体積%以上、また、上限としては、30体積%以下が好ましく、更に好ましくは25体積%以下、特に好ましくは20体積%以下である。
フッ素原子を有する環状カーボネートとしては4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)から選ばれる1種以上であることが好ましく、特にFECが含まれていると好ましい。
【0023】
本発明の非水電解液において、非水電解液に含有される2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物の含有量としては、非水電解液中に0.001〜5質量%が好ましい。該含有量が5質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され広い温度範囲での電気化学特性が低下するおそれが少なく、また0.001質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。また、その上限は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0024】
本発明の非水電解液において、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物と2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を併用する場合、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物と2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物の総含有量としては、非水電解液中に0.01〜7質量%が好ましい。該含有量が7質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され広い温度範囲での電気化学特性が低下するおそれが少なく、また0.01質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。また、その上限は、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下が特に好ましい。
【0025】
更に、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物と2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を併用する場合、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物の含有量に対する2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物の含有量の質量比が0.01〜0.96である場合に広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が高まるので好ましく、0.2〜0.8がより好ましい。
【0026】
また、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物と2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を併用する場合、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物と2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物の総含有量が上記範囲であり且つ、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物の含有量に対する2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物の含有量の質量比が上記範囲であると一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましい。
【0027】
2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物とは、具体的には、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリルである。
これらの中でも、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の炭素数が4以上の化合物と組み合わせると電解液の酸化分解を抑制する効果が一段と向上する為、広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が高まるのでアジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリルがより好ましい。
【0028】
加えて、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物と2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物とを併用する場合には、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物として、該化合物を構成する2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の炭素数が、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物のアルキレン鎖の主鎖の炭素数と異なる数のものを用いることが、電解液の酸化分解を抑制する効果が一段と向上する為、好ましい。
【0029】
本発明の非水電解液において、以下に述べる非水溶媒、電解質塩、更にその他の添加剤を組み合わせることにより、広い温度範囲での電気化学特性が相乗的に向上する効果を発現する。
【0030】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、アミド、リン酸エステル、スルホン、モノニトリル、S=O結合含有化合物等が挙げられ、環状カーボネートと鎖状エステルの両方が含まれることが好ましい。
なお、鎖状エステルなる用語は、鎖状カーボネートおよび鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
【0031】
フッ素原子を有する環状カーボネート以外の環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等が好適に挙げられる。
【0032】
非水溶媒がエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを含むと電極上に形成される被膜の抵抗が小さくなるので好ましく、エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積中に3体積%以上、更に好ましくは5体積%以上、特に好ましくは7体積%以上、また、上限としては、45体積%以下、更に好ましくは35体積%以下、特に好ましくは25体積%以下である。
また、非水溶媒が炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートを含むと広い温度範囲での電気化学特性が一段と向上するので好ましい。炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートとしてはVC、VECがより好ましく、VCが特に好ましい。
炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対して、0.001体積%以上、更に好ましくは0.1体積%以上、特に好ましくは0.3体積%以上、また、上限としては、5体積%以下、更に好ましくは4体積%以下、特に好ましくは3体積%以下である。
フッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有する環状カーボネート以外の環状カーボネートを合わせた環状カーボネートの総含有量は、非水溶媒の総体積に対して、10体積%〜40体積%の範囲で用いるのが好ましい。含有量が10体積%以上であれば、非水電解液の電気伝導度が低下して広い温度範囲での電気化学特性が低下することがなく、40体積%以下であれば、非水電解液の粘性が高くなり広い温度範囲での電気化学特性が低下するおそれがないので上記範囲であることが好ましい。
これらの環状カーボネートは1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用した場合は、広い温度範囲での電気化学特性が更に向上するので好ましく、3種類以上が特に好ましい。これらの環状カーボネートの好適な組合せとしては、ECとPC、ECとVC、PCとVC、VCとFEC、ECとFEC、PCとFEC、VECとFEC、FECとDFEC、ECとDFEC、PCとDFEC、VCとDFEC、VECとDFEC、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとVCとFEC、ECとVCとVEC、PCとVCとFEC、ECとVCとDFEC、PCとVCとDFEC、ECとPCとVCとFEC、ECとPCとVCとDFEC等が好ましい。前記の組合せのうち、2種類の組み合わせとしては、ECとVC、ECとFEC、PCとFEC、VCとFEC等の組み合わせが好ましく、3種類以上の組み合わせとしては、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとVCとFEC、PCとVCとFEC、ECとPCとVCとFEC等の組合せが好ましい。
【0033】
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等の対称鎖状カーボネート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルが好適に挙げられる。
鎖状エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60〜90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%以上であれば非水電解液の粘度が高くなりすぎず、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が低下して広い温度範囲での電気化学特性が低下するおそれが少ないので上記範囲であることが好ましい。
前記鎖状エステルの中でも、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、プロピオン酸メチル、酢酸メチルおよび酢酸エチルから選ばれるメチル基を含む鎖状エステルが好ましく、特にメチル基を有する鎖状カーボネートが好ましい。
また、鎖状カーボネートを用いる場合には、対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートの両方が含まれるとより好ましく、対称鎖状カーボネートの含有量が非対称鎖状カーボネートより多く含まれると更に好ましい。
鎖状カーボネート中に対称鎖状カーボネートが占める体積の割合は、51体積%以上が好ましく、55体積%以上がより好ましい。上限としては、95体積%以下がより好ましく、85体積%以下であると更に好ましい。対称鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートが含まれると特に好ましい。
非対称鎖状カーボネートはメチル基を有するとより好ましく、メチルエチルカーボネートが特に好ましい。
上記の場合に一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましい。
【0034】
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、広い温度範囲での電気化学特性向上の観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が10:90〜45:55が好ましく、15:85〜40:60がより好ましく、20:80〜35:65が特に好ましい。
【0035】
その他の非水溶媒としては、ピバリン酸メチル、ピバリン酸ブチル、ピバリン酸ヘキシル、ピバリン酸オクチル等の第3級カルボン酸エステル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸エチルメチル、シュウ酸ジエチル等のシュウ酸エステル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等の鎖状エーテル、ジメチルホルムアミド等のアミド、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル等のリン酸エステル、スルホラン等のスルホン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等のラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル等のモノニトリル、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン等のスルトン化合物、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン−2−オキシド(1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、5−ビニル−ヘキサヒドロ1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド等の環状サルファイト化合物、メタンスルホン酸2−プロピニル、メチレンメタンジスルホネート等のスルホン酸エステル化合物、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、ビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物等から選ばれるS=O結合含有化合物、無水酢酸、無水プロピオン酸等の鎖状のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、3−スルホ−プロピオン酸無水物等の環状酸無水物、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼンなどの環状ホスファゼン化合物、シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物や、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、アニソール、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)等の芳香族化合物が好適に挙げられる。
【0036】
上記の非水溶媒は通常、適切な物性を達成するために、混合して使用される。その組合せは、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとラクトンとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとエーテルとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状エステルとの組み合わせ等が好適に挙げられる。
【0037】
〔電解質塩〕
本発明に使用される電解質塩としては、下記のリチウム塩、オニウム塩が好適に挙げられる。
【0038】
(リチウム塩)
リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO等の無機リチウム塩、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso−C7、LiPF(iso−C7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF(SONLi、(CF(SONLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が好適に挙げられる。これらの中でも、LiPF、LiBF、LiN(SOCFおよびLiN(SOから選ばれる少なくとも1種が好ましく、LiPF6、LiBFおよびLiN(SOCFから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0039】
(オニウム塩)
また、オニウム塩としては、下記に示すオニウムカチオンとアニオンを組み合わせた各種塩が好適に挙げられる。
オニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N,N−ジエチルピロリジニウムカチオン、スピロ−(N,N')−ビピロリジニウムカチオン、N,N'−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、N−エチル−N’−メチルイミダゾリニウムカチオン、N,N'−ジエチルイミダゾリニウムカチオン、N,N'−ジメチルイミダゾリウムカチオン、N−エチル−N'−メチルイミダゾリウムカチオン、N,N'−ジエチルイミダゾリウムカチオン等が好適に挙げられる。
アニオンの具体例としては、PFアニオン、BFアニオン、ClOアニオン、AsFアニオン、CFSOアニオン、N(CFSOアニオン、N(CSOアニオン、等が好適に挙げられる。
【0040】
これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
これら全電解質塩が溶解されて使用される濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.7M以上がより好ましく、1.1M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.5M以下が更に好ましい。
【0042】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液に対して2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物や2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0043】
本発明の非水電解液は、下記の第1〜第4の電気化学素子に使用することができ、非水電解質として、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用し得る。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。中でも、本発明の非水電解液は、電解質塩にリチウム塩を使用する第1の電気化学素子用(即ち、リチウム電池用)または第4の電気化学素子用(即ち、リチウムイオンキャパシタ用)として用いることが好ましく、リチウム電池用として用いることが更に好ましく、リチウム二次電池用として用いることが最も適している。
【0044】
〔第1の電気化学素子(リチウム電池)〕
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称する。また、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。本発明のリチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、およびニッケルから選択される1種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiCo1−xNi(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn3/2、LiCo0.98Mg0.02等が挙げられる。また、LiCoOとLiMn、LiCoOとLiNiO、LiMnとLiNiOのように併用してもよい。
【0045】
また、過充電時の安全性やサイクル特性を向上したり、Li基準で4.3V以上の充電電位での使用を可能にするために、リチウム複合金属酸化物の一部は他元素で置換してもよい。例えば、コバルト、マンガン、ニッケルの一部をSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cu、Bi、Mo、La等の少なくとも1種以上の元素で置換したり、Oの一部をSやFで置換したり、またはこれらの他元素を含有する化合物を被覆することもできる。
これらの中では、LiCoO、LiMn、LiNiOのような満充電状態における正極の充電電位がLi基準で4.3V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物が好ましく、LiCo1−x(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn3/2、LiMnOとLiMO(Mは、Co、Ni、Mn、Feなどの遷移金属)との固溶体のようなLi基準で4.4V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物がより好ましい。高充電電圧で動作するリチウム複合金属酸化物を使用すると、充電時における電解液との反応により特に広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができる。
特にMnを含む正極の場合に正極からのMnイオンの溶出に伴い電池の抵抗が増加しやすい傾向にあるため、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすい傾向にあるが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができるので好ましい。
【0046】
更に、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。特に鉄、コバルト、ニッケルおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種以上含むリチウム含有オリビン型リン酸塩が好ましい。その具体例としては、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO等が挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等から選ばれる1種以上の元素で置換したり、またはこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePOまたはLiMnPOが好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
【0047】
また、リチウム一次電池用正極としては、CuO、CuO、AgO、AgCrO、CuS、CuSO、TiO、TiS、SiO、SnO、V、V12、VO、Nb、Bi、BiPb,Sb、CrO、Cr、MoO、WO、SeO、MnO、Mn、Fe、FeO、Fe、Ni、NiO、CoO、CoOなどの、一種もしくは二種以上の金属元素の酸化物あるいはカルコゲン化合物、SO、SOClなどの硫黄化合物、一般式(CFで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)などが挙げられる。中でも、MnO、V、フッ化黒鉛などが好ましい。
【0048】
上記の正極活物質10gを蒸留水100mlに分散させた時の上澄み液のpHとしては10.0〜12.5である場合、一段と広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が得られやすいので好ましく、更に10.5〜12.0である場合が好ましい。
また、正極中に元素としてNiが含まれる場合、正極活物質中のLiOHなどの不純物が増える傾向があるため、一段と広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が得られやすいので好ましく、正極活物質中のNiの原子濃度が5〜25atomic%である場合が更に好ましく、8〜21atomic%である場合が特に好ましい。
【0049】
正極の導電剤は、電解液に対して化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。また、グラファイトとカーボンブラックを適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1〜10質量%が好ましく、特に2〜5質量%が好ましい。
【0050】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm以上であり、より好ましくは、3g/cm以上であり、更に好ましくは、3.6g/cm以上である。なお、上限としては、4g/cm以下が好ましい。
【0051】
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛など〕、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、LiTi12などのチタン酸リチウム化合物等を1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが更に好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合或いは結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、例えば鱗片状天然黒鉛粒子に圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、球形化処理を施した黒鉛粒子を用いることにより、負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましく、0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、広い温度範囲での電気化学特性が一段と良好となるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、TEMにより確認することが出来る。
高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって広い温度範囲での電気化学特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では広い温度範囲での電気化学特性が良好となる。
【0052】
また、負極活物質としてのリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、Ge及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
【0053】
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.5g/cm以上であり、特に好ましくは1.7g/cm以上である。なお、上限としては、2g/cm以下が好ましい。
【0054】
また、リチウム一次電池用の負極活物質としては、リチウム金属又はリチウム合金が挙げられる。
【0055】
リチウム電池の構造には特に限定はなく、単層または複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート電池等を適用できる。
電池用セパレータとしては、特に制限はされないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層または積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
【0056】
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも広い温度範囲での電気化学特性に優れ、更に、4.4V以上においても特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることが出来るが、本願発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることが出来る。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜30Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、−40〜100℃、好ましくは−10〜80℃で充放電することができる。
【0057】
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
【0058】
〔第2の電気化学素子(電気二重層キャパシタ)〕
本発明の第2の電気化学素子は、電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この電気化学素子に用いられる最も典型的な電極活物質は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。
【0059】
〔第3の電気化学素子〕
本発明の第3の電気化学素子は、電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。この電気化学素子に用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。これらの電極活物質を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応にともなうエネルギー貯蔵が可能である。
【0060】
〔第4の電気化学素子(リチウムイオンキャパシタ)〕
本発明の第4の電気化学素子は、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子である。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF6などのリチウム塩が含まれる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の電解液の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1〜23、比較例1〜2
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiNi1/3Mn1/3Co1/3(正極活物質、正極活物質10gを蒸留水100mlに分散させた時の上澄み液のpHは10.8);94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cmであった。また、非晶質炭素で被覆された人造黒鉛(負極活物質、d002=0.335nm)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cmであった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1に記載の組成の非水電解液を加えて、2032型コイン電池を作製した。
【0063】
〔高温充電保存後の低温特性の評価〕
初期の放電容量
上記の方法で作製したコイン電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで3時間充電し、0℃に恒温槽の温度を下げ、1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電して、初期の0℃の放電容量を求めた。
高温充電保存試験
次に、このコイン電池を85℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.2Vまで3時間充電し、4.2Vに保持した状態で3日間保存を行った。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電した。
高温充電保存後の放電容量
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後の0℃の放電容量を求めた。
高温充電保存後の低温特性
高温充電保存後の低温特性を下記の0℃放電容量の維持率より求めた。
高温充電保存後の0℃放電容量維持率(%)=(高温充電保存後の0℃の放電容量/初期の0℃の放電容量)×100
また、電池の作製条件及び電池特性を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例24〜25、比較例3
実施例2、実施例18、比較例1で用いた負極活物質に変えて、ケイ素(単体)(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。ケイ素(単体);80質量%、アセチレンブラック(導電剤);15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、負極シートを作製したことの他は、実施例2、実施例18、比較例1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例26〜27、比較例4
実施例2、実施例18、比較例1で用いた正極活物質に変えて、非晶質炭素で被覆されたLiFePO(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。非晶質炭素で被覆されたLiFePO;90質量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたことの他は、実施例2、実施例18、比較例1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
上記実施例1〜10のリチウム二次電池は何れも、本願発明の非水電解液において2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物を含まない場合の比較例1のリチウム二次電池や、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物に替えて直鎖ジニトリル化合物を含む場合の比較例2のリチウム二次電池に比べ、広い温度範囲での電気化学特性が顕著に向上している。
また、上記実施例11〜23のリチウム二次電池は何れも、本願発明の非水電解液において2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物および2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖のジニトリル化合物を含まない場合の比較例1、直鎖のジニトリル化合物のみを含む場合の比較例2のリチウム二次電池に比べ、広い温度範囲での電気化学特性が顕著に向上している。以上より、本発明の効果は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、本願発明の2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖の主鎖が炭素数2以上4以下である分枝ジニトリル化合物を0.001〜5質量%を含有し、かつ、非水溶媒がフッ素原子を有する環状カーボネートを0.1〜30体積%含有する場合、もしくは、2つのニトリル基を連結するアルキレン鎖が炭素数2以上6以下である直鎖ジニトリル化合物を0.001〜5質量%含有する場合に特有の効果であることが判明した。
また、実施例24〜25と比較例3の対比から、負極にケイ素(単体)を用いた場合や、実施例26〜27と比較例4の対比から、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩を用いた場合にも同様な効果がみられる。従って、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことは明らかである。
【0070】
更に、本発明の非水電解液は、リチウム一次電池の広い温度範囲での放電特性を改善する効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の非水電解液を使用すれば、広い温度範囲での電気化学特性に優れた電気化学素子を得ることができる。特にハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、バッテリー電気自動車などに搭載される電気化学素子用の非水電解液として使用される場合、広い温度範囲での電気化学特性が低下しにくい電気化学素子を得ることができる。